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駅舎保存活用構想
資料5 (案) 浜寺公園駅及び諏訪ノ森駅 駅舎保存活用構想 平成20年9月 堺 市 目 次 1.はじめに....................................................................................................... 1 2.駅舎の歴史的価値等と現況について ............................................................... 2 (1)浜寺公園駅駅舎 ..................................................................................... 2 (2)諏訪ノ森駅駅舎 ..................................................................................... 2 3.駅舎の保存活用方策について ......................................................................... 3 (1)浜寺公園駅駅舎について ........................................................................ 3 (2)諏訪ノ森駅駅舎について ........................................................................ 4 4.関連事項について.......................................................................................... 5 用語集 ................................................................................................................ 6 1 1.はじめに 南海本線浜寺公園駅及び諏訪ノ森駅西駅舎は、それぞれ明治40年、大正8年に建 築された歴史的建造物であり、平成10年に国の登録有形文化財となっている。 しかし、今般、南海本線連続立体交差事業に伴い、両駅舎が支障となるとともに、 新駅舎が建設されることから両駅舎の保存及び活用が課題となっている。 本市では、こうした貴重な財産である文化財を保存し継承するために、平成 3 年に 「堺市文化財保護条例」を制定し、市内における文化財の指定や調査、保存・活用など の活動を行うと同時に、国、所有者、市民等と一体となり、地域の個性あるまちづく りの一助となるような取組みを進めている。 こうした中で、平成18年度に駅舎の保存活用のあり方を考える取組みとして、地 元市民などによる市民ワークショップ・勉強会を開催し、 「駅舎保存活用に向けて(市 民ワークショップからの提案)」がまとめられ、平成19年度に学識経験者、鉄道事 業者、市民で構成する「浜寺公園駅及び諏訪ノ森駅駅舎保存活用懇話会」を開催し、 両駅舎を保存し、活用するための検討を行い、実現に向けた方策としてまとめられた ものが、本市に提案された。 本構想は、これまでの経緯を踏まえ、駅舎の保存活用の考え方や方向性を明らかに することで、今後、市民、鉄道事業者、堺市等、様々な主体が連携しながら、それ ぞれの役割をもち、具体的な取組み進めていくための方針を明確化することを目的 に策定するものである。 ■位置図 浜寺公園駅駅舎 諏訪ノ森駅西駅舎 1 2.駅舎の歴史的価値等と現況について (1)浜寺公園駅駅舎 浜寺公園駅駅舎(明治 40 年(1907 年)建築)は、辰野片岡事務所設計による、木造、 鉄板葺き、平屋建てのハーフティンバー様式の建物であり、現位置、現役で現存する 最古級の木造駅舎の一つとして全国的にも非常に希少性は高く、日本の近代建築の中 でもその価値を高く評価されている建物である。当駅舎は、明治時代から浜寺公園や 海水浴場などの海辺のリゾート地の玄関口として、また高級住宅地の玄関口としてふ さわしいデザインの駅舎であり、南海難波駅より浜寺公園駅までを最初に複線化、電 化した区間であることからその当時は主要ターミナルとしての位置づけにあったも のと考えられる。 現在、駅舎の待合室は「南海ステーションギャ ラリー」として広く一般に開放されており、明治 時代の雰囲気の残る室内で様々な催し物が開催 され、積極的に活用されている。このように、浜 寺公園駅駅舎は、100 年以上にわたり地域のシン ボルとして親しまれており、この地域ならではの 歴史と文化を感じさせる、独特の歴史的景観を形 成している建築物である。 (2)諏訪ノ森駅駅舎 諏訪ノ森駅西駅舎(大正 8 年(1919 年)建築)は、木造、スレート葺き、平屋建て の 48 ㎡程度の小規模な駅舎である。入り口上方のステンドグラスが特徴となってお り、屋根、破風、待合室など、セセッションの影響を受けたと思われるデザインが随 所に見られる。当駅舎は、現役で現存する木造駅舎の一つとして希少性は高く、大阪 府内では、浜寺公園駅駅舎とともに、駅舎としてはじめて登録有形文化財に登録され ている(1998 年)ことや、土木学会「現存する重要な土木構造物 2800 選」、「近畿の 駅百選」にも選定されている。 本駅舎のステンドグラスには、浜寺から淡路 島にむかっての当時の海岸の様子が描かれて おり、この地域ならではの歴史と文化が感じら れ、諏訪ノ森駅西駅舎は、小さいながらも、地 域のシンボルとして、地域に溶け込んだ建築物 となっている。 2 3.駅舎の保存活用方策について (1)浜寺公園駅駅舎について ●次世代へ文化財的価値が継承できるような保存活用方策とする。 ●保存場所は、新駅舎に近接して配置する。 ●活用については、中央部分は、新駅舎のエントランスとする。また、両側部分 は、来場者が集い・憩いの場とし、施設運営については、市民や民間活力を活 かす。 【留意事項】 ・歩行者・自転車動線や建物管理等のスペースを確保するため、新駅舎との間に 必要な空間をとる。また、このスペース部には、現在のプラットフォームの屋 根を活用した庇などの設置検討を行い、新駅舎との接続性に配慮するとともに、 スロープを設置するなどバリアフリー化への対応を図る。 ・現在の建物の意匠を考慮し、駅舎前面の階段等を残す。 ・新駅舎へのスムーズな動線を考慮し、新駅自由通路中心と駅舎中心とを一致さ せる。 ・活用方策については、市民、南海電気鉄道、堺市等も含め、コスト意識を持っ た運営形態を検討する。 ■浜寺公園駅駅舎の配置と動線のイメージ 注)駅前広場及び駅施設は計画段階のものである 3 (2)諏訪ノ森駅駅舎について ●次世代へ文化財的価値が継承できるような保存活用方策とする。 ●保存場所は、新駅舎と離して配置する。 ●活用については、来場者が集い・憩いの場とし、施設運営については、市民や 民間活力を活かす。 【留意事項】 ・駅舎を配置するにあたり、駅前広場及び新駅施設の機能に支障となる場合は、建 物の部分的な切取り等を検討する。 ・駅舎の配置方向としては、新駅の出入口と近くなるように、出入口は東側に向け る。 ・活用方策については、市民、南海電気鉄道、堺市等も含め、コスト意識を持った 運営形態を検討する。 ■諏訪ノ森駅駅舎の配置と動線のイメージ 注)駅前広場及び駅施設は計画段階のものである 4 4.関連事項について (1)新駅舎や駅前広場など周辺施設のデザインについて 新駅舎のデザインについては、保存活用する駅舎や新設する駅前広場など、周辺 施設と調和し、一体的な景観形成が図れるよう検討する。 (2)連続立体交差事業の工事中の駅舎活用について 連続立体交差事業の工事期間中の有効活用を図るため、将来の施設運営のための 試験的な運用などを検討する。 (3)活用方策及び復元の検討について 駅舎の歴史的な調査等の結果を踏まえ、文化財的な価値が損なわれないように 配慮した活用を検討する。なお、浜寺公園駅舎については、その歴史的な価値を考 慮し、建築当時への復元も含めて検討する。 (4)移転・保存の工事方法等の検討について 駅舎の曳家や解体などの移転・保存工事方法、内装・間仕切りなどの改築内容、 建物の耐震・耐火対策については、最終的な保存場所及び活用方策などを考慮して 検討する。 (5)駅施設の記録について 駅舎及び駅施設の記録を将来へ向けて保存することを目的に、収集した文献、既 存資料、写真などをまとめ、現状の記録保存を行う。 (6)地域まちづくりについて 本駅舎保存活用に関わる活動を契機として、市民、南海電気鉄道、堺市との協働 により、駅舎周辺の地域のまちづくりへさらに貢献していくものとする。 5 用語集 か 改札外コンコース(かいさつがいこんこーす)........................................... p.3(図中) 改札口の外部の空間。切符売り場などがこの空間に該当する。 近畿の駅百選(きんきのえきひゃくせん) .............................................................. p.2 2000 年から 2003 年までの 4 年間で、国土交通省近畿運輸局管内(京都府、大阪府、滋賀 県、兵庫県、奈良県、和歌山県)の特徴ある駅を公募等で募集し、選考委員会で 100 駅を選 定したもの。 現存する重要な土木構造物 2800 選(げんぞんするじゅうようなどぼくこうぞうぶつ 2800 せん) .... p.2 土木学会が橋やトンネル、駅など現存する重要な土木構造物について、分類・体系化し、 その重要度や評価ポイントを掲載した文献。 さ 市民ワークショップ・勉強会(しみんわーくしょっぷ・べんきょうかい) .................... p.1 駅舎について、市民の理解を深め、駅周辺を含めたまちづくりなどを考えるために、平成 18 年度に実施されたワークショップ。 「ワークショップ」とは、もともと仕事場、作業所、工房といった意味であるが、まちづ くりにおいては、参加者が共に作業を行いながら発想を出し合い、合意形成していく手法。 自由通路(じゆうつうろ) .................................................................................... p.3 線路をまたぐことのできる通路。 ステンドグラス(すてんどぐらす)......................................................................... p.2 さまざまな着色ガラスを組み合わせて絵画や模様などを表した板ガラス。 教会堂の窓など に多く用いられている。 スレート葺き(すれーとぶき)............................................................................... p.2 屋根工事の葺き方の一種。仕上げ面がスレート(石綿をセメントで固めた薄板)になること からこのように呼ばれている。 セセッション(せせっしょん)............................................................................... p.2 19 世紀に起こった機能性や合理性を重視して過去の美術様式から分離しようとした建築 上、美術工芸上の運動。建築やデザインに大きな影響を及ぼした。 6 た 耐震・耐火対策(たいしん・たいかたいさく)........................................................ p.5 地震や火事などの災害に対応するための方策。 辰野片岡事務所(たつのかたおかじむしょ) ........................................................... p.2 明治の代表的建築家である辰野金吾(1854~1919)が、1905 年に片岡安と大阪で設立した 設計事務所。辰野金吾は明治の建築界に大きな影響を及ぼした人物で、工部大学校教授、東 京帝国大学学長を歴任した。現存する代表作には、日本銀行本店(1896) ・同大阪支店(1903) ・ 東京駅(1914)・大阪市公会堂(1917)がある。 鉄板葺き(てっぱんぶき) .................................................................................... p.2 屋根工事の葺き方の一種。仕上げ面が鉄板になることからこのように呼ばれている。 登録有形文化財(とうろくゆうけいぶんかざい)..................................................... p.1 1996 年の文化財保護法改正により創設された「文化財登録制度」に基づき、保存及び活 用についての措置が特に必要とされる文化財建造物として、文化財登録原簿に登録された有 形文化財をいう。 土木学会(どぼくがっかい)................................................................................. p.2 「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学 術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、1914 年に社団法人として設立され た団体。 な 南海本線連続立体交差事業(なんかいほんせんれんぞくりったいこうさじぎょう) ...... p.1 石津川付近から高石市域にかけて鉄道を高架化し、合わせて側道、駅前線の整備を行うこ とにより 7 箇所の踏切を除去し、安全で円滑な交通の確保、一体的なまちづくりの実現、良 好な生活環境の確保を図っていく都市計画事業。高架化される駅として、諏訪ノ森駅と浜寺 公園駅となっている。 は ハーフティンバー(half-timber)様式(はーふてぃんばーようしき) ......................... p.2 木造住宅建築の一様式で柱・梁・斜材をそのまま外部に現し、その間の壁体を石材・土壁 あるいはレンガで充填したもの。イギリスで 1450 年~1650 年頃に盛んに行われた方式であ る。 7 破風(はふ) ....................................................................................................... p.2 軒裏の構造材を保護したり、隠したりする部材。 バリアフリー化(ばりあふりーか)......................................................................... p.3 障害者や高齢者などの生活に支障となる障害を取り除くための方策。道路や床の段差をな くしたり、ゆるやかなスロープを作ったりする。 曳家(ひきや) ................................................................................................... p.5 建築物を解体せずにそのまま水平移動させて、他の場所に移す方法をいう。「曳屋」とも いう。 復元(ふくげん) ................................................................................................ p.5 建設当時などのある時代の形態に戻すこと。 ま 間仕切り(まじきり) ........................................................................................... p.5 部屋の仕切りのこと。 8