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巻頭インタビュー|東証二部上場を果たした企業発ベンチャー
不屈の精神で挑んだ
サービスの流通創造という夢
株式会社ベネフィット・ワン代表取締役社長 白石 徳生
白石 徳生
SHIRAISHI Norio
株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長
氏
今や、
企業の福利厚生もアウトソーシングの時代。
会員制のスケールメリットを活かし、
ホテルなどの宿泊
を会員に安価で提供する福利厚生代行業の先駆けである
(株)
ベネフィット・ワン。
その事業は、
あらゆる
サービスを利用者と結びつける
“流通創造”
の道を突き進む。
パソナグループの営業マンから社内起業し
た白石徳生社長に、
その経緯を伺った。 (聞き手:企業発ベンチャー協議会 理事 西山昭彦(東京ガス(株)西山経営研究所所長) Text&Phot:Apis 山崎玲子)
基本的に理詰めで考える性格
営業も徹底して効率を考えます
西山:ご実家も自営業ですが、起業さ
れたのはその影響もありますか?
白石: 確かに、昔から自分も何か商
売をやるつもりでいましたね。小学
生のころ、くじ付きのコーラの王冠
を集めるのに、友達は自動販売機の
栓抜きを磁石で探って集めているの
に、僕はパチンコ屋で捨てられる王
冠を山ほどもらってきた。そういう
工夫は昔から得意でした。学生時代
にはバリ島への旅費を稼ぐのに、現
地の安い音楽テープを仕入れて学園
祭で販売したり。そして在学中に、
先輩の紹介でパソナのアメリカ法人
のインターンを経験し、その縁から
パソナの外資系企業の営業を手伝う
ようになったんです。
西山:そこでトップセールスとなり、
24歳でセールスマネージャーに抜擢
された。その秘訣は何でしょう。
左:西山 昭彦 右:白石 徳生氏
2
巻頭インタビュー
白石:僕は理詰めで考えるタイプなん
ブーム。こうした、アイデアの蓄積
です。派遣の営業はタイミングが勝
や周りの環境が絶妙につながって、
ネットによる福利厚生サービス事業
負。訪問頻度を増やして担当者に覚え
てもらえれば、必要なときに依頼をい
ただけます。だから、ひたすら飛び込
み営業です。担当に会えなければ名
刺を残し、何度でも通う。
「担当者に会
いたい」
と粘るより、10回も通えば「ど
んな人だ?」と大抵は会ってもらえま
す。外資系企業の人事とのパイプづ
くりには、異業種交流会を毎週開いて
いました。効率は徹底的に考えます。
西山:そして、入社6年目に新設され
た社内ベンチャーコンテストに応募。
事業構想はすでにあったのですか。
白石:当時、僕は社内でアメリカのア
ウトソーシング・ビジネスの研究会
に参加していました。それから、社
内催事のたびに得意先を回って景品
用にデッドストックの提供をお願い
していたんですが、これは必ずビジ
ネスになると考えていたんです。そ
して、時代は第一次インターネット
1967年東京生まれ。拓殖大学在学中にパソ
ナのアメリカ法人でインターンシップを経験。
卒業後、1990年に
(株)パソナジャパン
(現:
フジスタッフ)に入 社 。1 9 9 6 年にパソナグ
ループの社内ベンチャー第1号として
(株)
ビジ
ネス・コープ(現:ベネフィット・ワン)
を設立し、
2000年より現職。
といったトップシェア企業に入って
いただき、事業を優位に展開するこ
とができました。
起業環境が悪いと言いますが
競合が少ないのはチャンスです
西山:今後の事業展開はどのように
考えていらっしゃいますか。
白石:私たちの事業は、単に福利厚
生のアウトソーシングではなく、
「サー
ビスの流通創造」という社会インフ
ラに近いものだと思うんです。今、
サービス業で流通システムが整って
いるのは旅行業界くらいですが、今
後は教育、医療、ヘルスケアなども
同じような形になるはずです。こう
したサービス業の需給を平準化させ
るよう、両者のマッチングを行いつ
つ、レストランの空席のようなデッド
ストックの販売、休眠ラインを活用
西山:事業は最初から順調だったの
西山:成功の秘訣は、やはり社長の
交渉力と優れたビジネスモデルに、
資本が揃ったことでしょうか。
白石:もちろん、ビジネスモデルは
大切ですが、最終的にはメンバーだ
と思います。社内ベンチャーは、資
本、人、ブランドなどの面で圧倒的
に有利ですが、必ずしも事業の成
功率は高くない。これは、気持ちに
甘えが出るからです。僕は、最初か
ら転籍してパソナに戻るつもりはな
かったし、ほかのメンバーも同じ気
持ちで転籍してきました。その意味
では、たたき上げのベンチャーと同
じです。そこに、社内ベンチャーの
ですか。
白石:会社からは、2年以内に単月
メリットが加わったからこそ、勝て
ると確信できたんです。
黒字の達成をいわれていたんですが、
サービス開始に向けて社員を20人近
くに増やした結果、経費は月次2千万
円に膨らみました。しかし売上は一
西山:企業発ベンチャーでは、インセ
ンティブの不足や親会社の管理の厳
しさがデメリットになるという話も聞
きますが、そのあたりはどうですか。
向に上がらず、最後は社員を8人に
絞って、なんとか単月黒字を達成し
白石:僕たちは固定給でしたし、上
場も考えていませんでした。インセ
ました。この時期が一番辛かったで
す。その後、2000人規模の大手企業
の受注を契機に、すべてがうまく回
り出しました。金融危機に見舞われ
ンティブより「失敗できない、絶対
成功させる!」という危機感や強い
思いの方が事業の原動力になると思
います。親会社の干渉は、パソナ自
た金融業界の営業でも、三菱商事の
力添えもあって契約がとれました。
身ベンチャーを積極的に推進してい
る会社ですから、ありませんでした
西山:三菱商事に出資をお願いした
ことが、ここで効いたわけですね。
白石:資本政策は大事ですね。その
後の増資でも、東京海上や日本生命
が、三菱商事からは数字や報告関係
を非常に細かく要求され、社内管理
体制を整えざるを得ませんでした。
それも今では私たちの財産です。
の形ができあがりました。
西山:それが、ビジネス・コープ
(現:
ベネフィット・ワン)ですね。最初
の出資はどのような配分ですか。
白石: パソナが55%、パソナソフト
バンクから5%。そして、この事業
は信用第一ということで三菱商事に
30%の出資をお願いしました。あと
は、日本ケンタッキーフライドチキ
ンが5%、CSKが5%です。
インセンティブのメリットより
失敗できない危機感が原動力
した受注生産ビジネスなど多様なサ
ブテーマによる展開が考えられます。
すでに、新しい事業部を7つ立ち上げ
て、展開を進めています。
偉そうなことを言っても、上がやらな
ければ100%下もやりません。だから、
常に見られていることを意識し、ムー
ドメーカーに徹するようにしています。
西山:最後に起業を考えている読者
の方にメッセージを。
白石:まず、起業したいと思うこと。
次に行動すること。そして、志を同じ
くする仲間をできるだけ集める。ここ
までやって、諦めなければ必ず成功し
ます。赤字になろうが倒産しようが、
やり続ければいいんです。1度会社が
倒産しても復活した人はいくらでもい
ます。それから、日本はベンチャーに
資金が集まらない、環境が悪いとい
う人もいますが、逆にベンチャーが
増えれば競争も厳しくなりますよ。ラ
イバルが少ないことは最大のチャン
スです。長所は短所、短所は長所と
考えて頑張ってほしいですね。
西山:創業期を経て、現在の社長の
役割は、どんなことにあるとお考え
ですか。
白石:いろいろな企業の社長と視察旅
行などは積極的に行きますね。毎週ラ
ンチをするより、1回旅行に行った方
が絶対に仲良くなれます。しかし、最
近は営業より企業の価値感やビジョン
を社内で共有させていく役割が重要だ
と感じています。それから、強い組織
であるためには、個人が強くなる必要
があります。それには練習が必要です
が、スポーツでも強いチームは練習を
しないと居づらくなる雰囲気がありま
す。そのムードをつくるのが社長です。
【株式会社ベネフィット・ワン】
1996年、パソナグループの社内ベ
ンチャー制度第1号、
( 株)ビジネス・
コープとして 企 業 の 福 利 厚 生 代 行
事業を開始。福利厚生サービス「ベ
ネフィット・ステーション」を通じ、レ
ジャー・育児・介護、カルチャーから冠
婚 葬 祭まで あらゆるサ ービスを提
供。サービスの流通創造をめざす。
2004年にJASDAQ、2006年に
は東証二部上場を果たし、近年では
C R M や ヘ ルスケア 、インセンティ
ブ事業などにも取り組み、市場の拡
大を進める。社員数789人、年商約
137.91億円
(2010年9月現在)
巻頭インタビュー
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