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成功の秘訣はアイデアと信用 そして諦めずに継続する力
巻頭インタビュー|東証マザーズ上場を果たした企業発ベンチャー 成功の秘訣はアイデアと信用 そして諦めずに継続する力 (株)クリエイト・レストランツ 代表取締役社長 岡本 晴彦 氏 入れ替わりの激しい外食産業界に 「マルチブランド・マルチロケーション」 という新しい戦略で参入し、 大型商業施設などに次々と新しい展開を進める (株) クリエイト・レストランツ。 三菱商事社員時代に社内ベンチャー制度を利用してこの会社を興した岡本晴彦社長に、 起業までの経緯と成功の秘訣を伺った。 聞き手:企業内ベンチャー推進協議会 理事 西山昭彦(東京ガス(株) 西山経営研究所所長)、Text:Apis 山崎玲子 出向先で出会った人と仕事が、 岡本晴彦 OKAMOTO Haruhiko 株 式 会 社クリエイト・レストランツ代 表 取 締 役 社 長。1987年 に 三 菱 商 事 (株)に入社。1996年に日本ケンタッ キー・フライド・チキンに出向し「Soup Stock Tokyo」 の立ち上げに参画。三菱 商事に戻り2000年にオリエンタルラ ンドと三菱商事の合弁会社による「レ インフォレストカフェ」誘致、1997年 にクリエイト・レストランツを立ち上げ。 2003年に三菱商事を退社し現職。 たるメンバーに感化されたわけですね。 ですね。そうした事例は前例があったん 件で大騒ぎをしていましたから、こっそ に絞り、大きな商業施設や駅ビル、観 くりを提案できる人材が育てられればと KFCにはどのくらいいらしたのですか? ですか? り小さいビジネスを起こすには絶好のタ 光地、百貨店などの立地を選びました。 思います。 岡本:2年半です。三菱商事に戻ると、 岡本:当時は、社会動向を受けて商社も イミングでした(笑)。 あとは、今までにない提案です。デベ 西山:企業発のベンチャー事業で成功す 西山:まずは外食産業に関わった経緯か ちょうど新浪 剛史氏(現・ローソン社長) 先行き不安な状態でした。そこで、やる 西山:しかし、最初から事業がすんなり ロッパーは、とにかく目新しく訴求力の る秘訣は? らお聞かせ願えますか。そもそも、商社 が、当社も外食に突っ込むぞと頑張って 気のある個人は会社と共同でベンチャー といったわけではないですよね?一番苦 ある店が欲しいわけです。当社の会長の 岡本:まず、周囲に批判する人がいたら、 は法人相手の事業は得意ですが、飲食産 いました。そうはいっても、三菱商事は 事業をやっていいという制度ができたん 労なさったのはどのあたりですか。 後藤は元々は飲食店の二代目ですから世 その人と上手くやること。あえて意見も 業は個人が相手ですよね。 KFC以外、外食産業経験はほとんどな です。それなら自分の会社を作ろうと決 岡本:まず、資金繰りです。2000年に 界中のレストランを見て回った経験と 取り入れてみる。そうすることでみんな 岡 本: 三 菱 商 事 時 代 に 日 本 ケ ン タ ッ かったので、 「Soup Stock Tokyo」のよう 意しました。 は、御殿場のアウトレットと舞浜のイク ネットワークで、魅力的な店舗提案がで 納得する。自分ひとりで100点満点にし キー・フライド・チキン (KFC)に出向し なベンチャー的手法もあるねということ 西山:すばらしいタイミングですね。し スピアリへの大きな出店計画がありまし きる。もちろん優秀なプランナーはたく ようとしないで、少し抜けた企画がみん たんです。そこで、消費者と直に向き合 で、外食産業に株主として出資し、そこ かし、立案に関して障害はなかったんで た。しかし、開業前の店作りで既に資金 さんいますが、経営まで手がけるところ なの意見を加えてうまくいった、とでき う仕事もおもしろいなと感じました。飲 に取締役として出向したりもしました。 すか? 三菱商事としては決して大きな はない。もう、税金や家賃は滞納、月末 はまずありません。また、当社は三菱商 れば一番いいですね。 食業の経営手法も間近に見ることがで 2000年にはアメリカのテーマレストラン 事業ではありませんよね。 支払いは翌月初にまわす自転車操業です 事の資本が入っているおかげで、実績が それから、とにかく諦めないこと。思考 きたし、そこで同じく三菱商事から出 「レインフォレストカフェ」をオリエンタ 岡本:直前に手がけた「レインフォレス (笑)。給料と食材費だけは信用問題です 少なくても信用はあったのではないかと 停止しないで何らかの方法を考えてみ 向していた遠山正道氏*と一緒に「Soup ルランドと提携し、日本への誘致を企画 トカフェ」 事業は、 三菱商事的には初め から遅らせることはできません。頼りに 思います。 る。やったことは失敗であっても必ず将 Stock Tokyo」の立ち上げにも携わる機 した結果、イクスピアリに出店すること ての事業分野だったんです。だから、事 した東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀 西山:人事関係のオペレーションはいか 来の糧になります。そして、雑音には耳 会を得たんです。当時のKFC社長は大 が出来ました。しかし、大企業同士の合 業規模の割に注目度は高く、私はレスト 行)からも三菱商事の債務保証がなきゃ がでしたか? を貸さず余計なものは全部そぎ落とし 河原毅氏。外食業界のバイブルを作った 弁というのは意志決定ひとつとっても非 ラン事業に関して社内では頭ひとつ出た だめだと断られ、結局、家内に内緒で自 岡本:それは厳しかったです。一番苦労 て、その会社が守るべき最低限の本質を といわれる方で、彼の周辺にいらっしゃ 常に大変で、自分がやりたいこととは違 感じになったんです。それから、これは 宅を抵当に入れ、中小向けの金融から融 したのは人の入れ替えですね。経理に関 しっかりと守っていくことです。どんな る外食業界のキーパーソンや、現会長の う気がしました。 新浪氏を見習ったんですが、彼はいつも 資を受けました。私は大きな仕事をする しては最初の6カ月で3人くらい部長を代 障害があっても、続けることができれば まずトップに相談をするんです。間の ときは「○○を買ったことにしよう」と思 えました。三菱ブランドで優秀な方を採 苦しいことの見返りに楽しいことも必ず 人をみんなすっ飛ばして。嫌われても うことにしてるんです。だから、今度は 用できても、大企業経験者は帳簿の些細 待っていますよ。 将来を変えた 後藤にお会いできたことも大きな財産で した。 ・・・ 社内制度も活用し、直談判で会社を興す 気にしない。 「最終意志決定者に直接話 *現、Soup Stock Tokyo経営、 (株) スマイルズ代表取締役会長 西山:外食産業のおもしろさと、錚々 西山:そこでベンチャーに挑戦するわけ をして進めることが大事だ」と常々おっ しゃっていたので、私も当時の上司だっ た後藤雅治氏(現・菱食社長)にアポを 「家をなくしたことにしよう」と(笑)。 ・・・ 新規参入のコンペでは、 三菱ブランドも味方に付ける 取って、直接、会社を興したいと話しま なところで大騒ぎしたりする。しかし、 小さな会社ではそんなことよりもっと大 事なことがあったりするんです。 ・・・ 自分ひとりで満点にせず、 周囲の意見を加え事業をまとめる した。そこで 「まあ、いいんじゃない」と 西 山: そ し て、2005年 に 上 場。IPOも いう言葉をいただいたら、すかさず常 いけるぞと思われたのはいつ頃ですか? 務も賛成だと社内に言いふらしました 岡本:売り上げが100億を超えた2003 西山:事業の今後のビジョンはどのよう (笑) 。批判もありましたが、最終的には 年ですね。2004年で100億をクリアす に描かれていますか。 「もう、やることになってるんだろう」と ると三菱商事には言っていたので、そう 岡本:外食のプロフェッショナルが育つ いう意味では順調でした。 会社ができればと思いますね。既存のマ いう雰囲気でしたね。 西山:最初の出資比率はどのくらいの割 西山:急成長の秘訣は何ですか? 立地 ニュアルやブランドといったシステムの 合だったんですか。 環境にあわせてオーダーメイドで店舗を なかに人間をはめ込むのではなく、人を 岡本:最初は三菱商事が34%、パート 組み立てるのが御社の強みではあります 起点にしてシステムを作る。時代ととも ナーである現会長の後藤が66%。その が、大型商業施設では当然コンペティ に店も変化するし、経営も形態によって 直後に自分も2%ほど出資しました。折 ションで他社とも競い合うわけですよね。 異なりますが、そういう経験をみんなで しも社内はローソンの筆頭株主となった 岡本:まず、出店は集客の見込める場所 共有し伝承し、新しい時代にあった店づ Look up! 【株式会社クリエイト・レストランツ】 三 菱 商 事の 社内ベンチャーとして 1999年 に ス タ ート、2005年 に マザーズ 上場を果 たした 新しい 戦 略のレストランビジネス企業。料理 のジャンルや店舗形態を立 地や顧 客 特 性に合わせて企画し、運営ま ですべてを直営で行う「マルチブラ ンド・マルチロケーション」戦略によ り、 全 国 に109ブ ランド、365店 舗を展 開している。寿司からエス ニックまでバリエーション豊かな店 舗展開が 強み。社 員 数1,147人、年 商約320億円(2007年2月現在) 左:岡本晴彦氏 右:西山昭彦 巻頭インタビュー 巻頭インタビュー