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8 電磁石の性質

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8 電磁石の性質
8
電磁石の性質
*単元目標*
電磁石の導線に電流を流し、電磁石の強さの変化について興味・関心を持って追求
する活動を通して、電流のはたらきについて条件を制御して調べる能力を育てると
ともに、それらについての理解を図り、電流のはたらきについての見方や考え方を
もつことができるようにする。
z
電流に流れているコイルは、鉄心を磁化するはたらきがあり、電流の向きが変
わると電磁石の極が変わること。
z
電磁石の強さは、電流の強さや導線の巻き数によって変わること。
(P22・23)
第1次
電磁石の極(3時間)
1-1(1時間)
電磁石のしくみについて学び、電磁石を作る。
1-2(1時間)
作った電磁石がはたらくか確かめる。
1-3(1時間)
電流の向きと電磁石の極の関係を調べる。
1-1
実験1
コイルと電磁石
*指導のポイント*
教科書やそのほかの資料を活用して電磁石に関する興味を高め、製作や探求の意欲を高
めるようにする。
*単元を始める前に
本単元の導入では、児童に「電気を使っても磁石ができるんだ」という驚きや感動をもた
せたい。そのためには、p23の強力電磁石のように、乾電池1個でできた電磁石にぶら
下がっても落ちないといったダイナミックな事象提示はとても有効である。
児童に「自分も電磁石を作ってみたい」という思いを抱かせることができれば、意欲的に
学習をすすめることができる。
電磁石とはどういうものだろう。
① 教師が演示したり、児童に体験させたりする。
1
電磁石を作ろう。
①
電磁石がどのようなものかを説明する。
②
教科書p23の(電磁石の作り方)を参考に電磁石を作る。
*準備物*
強力な電磁石、鉄釘(6.5cm~9cm)
、エナメル線(太さ0.3~0.4mm)、
ストロー、セロハンテープ、両面テープ、工作用紙、乾電池、乾電池ホルダー、導線、
アルミニウム箔、はさみ、ニッパー、千枚通し
*電磁石にならなかった場合の原因
もし電流を流しても磁石にならなかったら、次のようなことが原因と考えられる。
原因1:エナメル線の端の塗料を削り落としていない。
→エナメル線は導線の周りに塗料が塗ってあることを説明し、それをはがす。
原因2:正しい回路ができていない。
→導線とエナメル線のつなぎ方が緩くないかなどを再度確認する。
※
鉄が磁石につくのは、磁化しやすい(強磁性体という)からである。鉄以外の強磁性
体はニッケルなどがある。
※
ダイナミックな事象提示をして(不思議だな)と思わせるとよい。
※
鉄釘は焼きなましてから使用すると効果的である。
※
同じ向きにまくのが重要。
*電磁石を作るときの留意点
①エナメル線
事前に教師が200回巻のコイルを作り、各児童に何m配れ
ばよいか確認しておく。
もつれないよう、空き箱(大きさは箱入りチョコレートくら
い)などに巻いてから配るとよい。
輪を作ったまま引き伸ばすと折れ目がこぶ状になってしま
う。被覆がはがれたり線が切れたりする原因になるので、そ
のような場合は必ずもとに戻すようにする。
②鉄釘
長さは、6.5~9cmくらいが使いやすい。焼きなまし(ガスレンジなどで熱し、青っ
ぽく変色したらゆっくり空気中で冷やすこと)をしてから使ったほうがよい。
2
(P24・25)
1-2
電磁石のはたらき
*指導のポイント*
実験を通して、電流が流れているときだけ磁石のはたらきが現れることをとらえさせ
る。またそれは棒磁石にはない特徴であることを把握させる。
電磁石ができたかたしかめてみよう。
*準備物*
電磁石、乾電池、乾電池ホルダー、導線、スイッチ、クリップ(多めに)、紙、
方位磁針、工作用紙
電磁石ができたことを確かめるためには、どうすればよいだろうか。
z
計画
回路に電流を流したりとめたりしたときの、電磁石にクリップがひき
つけられるようすを比べる。
z
電磁石とクリップの間に紙を入れ、クリップを引きつけるようすを調
べる。
z
回路に電流を流したまま、方位磁針に近づける。
話し合ったことをもとに調べよう。
電磁石ができたことを確認できただろうか。
z
電流を流したとき、クリップがついた。
z
紙を間に挟んでも、クリップはついた。
z
電磁石が近づいたとき、方位磁針の針はふれた。
*電磁石の巻き方と極の関係
電磁石の極は、電流の向きとエナメル線の巻き方によっ
て変わる。
電磁石のどちらかの端を見て、右図を参考に考えるとよ
い。
※
イ…焼きなましをしないと、クリップが数本ついて
しまうことがある。
※
電流が流れているときだけ磁石になることを捉えさせる。
※
クリップをまっすぐに伸ばして、短く切ったものを使ってもよい。
※
電磁石を東西の方向から近づけると、方位磁針の動く様子を観察できる。
3
1-3
電磁石の極
*指導のポイント*
電磁石の極について実験を通して調べ、棒磁石と異なる性質があることに気づかせる。
かん電池のつなぎ方を反対にすると、電磁石のN極やS極はどう
なるのだろうか。
?
*準備物*
z
電磁石、乾電池、乾電池ホルダー、導線、スイッチ、方位磁針
仮説
乾電池のつなぎ方を反対にすると、コイルの中を流れる電流の向きが
反対になる。だから、電磁石のN極やS極が反対になると思う。
*実験1
方位磁針のふれ方で電磁石の極を調べる。
結果
乾電池の向きを変えると、電磁石の極はどうなっただろうか。
z
反対になった。
結論(p26)
※
第3学年、第4学年の学習を想起させる。
※
反対側にも方位磁石を置くとより詳しく調べられる。
※ 乾電池を逆に入れられない場合はホルダーごとつなぎかえる。
(P26・27)
第2次
電磁力の強さ(7時間)
2-1(1時間)
電磁石の強さは何によって変わるかを調べるために、
変える条件と変えない条件を分けて実験計画を立て
る。
2-2・3(2時間) 電磁石の強さと電流の大きさや巻き数の関係を調べ
る。
2-4(1時間)
実験2-2
電磁石の強さと電流の大きさや巻き数の関係をまと
める。
2-5・6(2時間) 作ってみよう「電磁石の性質を利用しておもちゃを作
ろう」を行う。
2-7(1時間)
実験2-1
「ふりかえろう」、「学んだことを生かそう」を行う。
4
2-1
電磁石を強くする方法
*指導のポイント*
既習事項や過去の経験などをもとにして、どのようにしたら電磁石を強くすることが
できるか考えさせ、調べ方について話し合わせる。
?
電磁力が鉄を引き付ける力をもっと強くするにはどうしたら
よいだろうか。
*準備物*
電磁石、乾電池(2個)
、乾電池ホルダー(2個)、導線、スイッチ、クリップ、
簡易検流計、
〔電源装置、電流系〕
計画
*話し合おう
電磁石を強くする方法を考えてみよう。
z
電流を大きくする。
z
コイルの巻き数を増やす。
z
鉄釘を太くする
条件をそのように変えればよいだろうか。
z
乾電池が1個の場合と2個の場合を比べる。→(実験2-1へ)
z
コイルの巻き数が、100回巻の場合と200回巻の場合を比べる。→(実
験2-2へ)
z
※
それ以外の条件は、すべて同じにする。
4学年の学習を想起させる。
*電磁石を強くする実験の導入
教科書p26の吹き出しなどを参考に、第4学年の電気学習を想起させるとよい。乾電池
2個を直列につなぐと回路に流れる電流は大きくなり、豆電球は明るくなった。同様に「電
流」が電磁石を強くする要因になるかもしれないという予想が沸き起これば、児童は問題
解決の糸口を科学的に思考することができるだろう。
「他にはないだろうか」と助言すれば、巻き数や鉄心の太さなどに着目していくだろう。
z
電流の大きさを変える方法
z
コイルの巻き数を変える方法
乾電池の数
コイルのまき数
乾電池の数
コイルのまき数
1個
100回
1個
100回
2個
100回
1個
200回
5
*条件に目を向けながら調べること
第5学年で育成すべき問題解決の能力は、「自然の事物・現象の変化やはたらきをそれら
に関わる条件に目を向けながら調べること」である。
その意味では、ここで扱う電磁石の強さを調べる実験(実験2-1・2-2)は格好の教
材であり、大事に扱いたい。
※条件統一
←重要!!
はたらきを変化させる要因が何かを調べるためには、比べたい要因以外の条件をすべ
て統一することがとても大事である。そうでなくては、正しく比較したことにならな
くなり、はたらきを変化させる要因を正しく突きとめることはできない。
実験2-1においては、「電流の大きさ、(乾電池の数)」という要因のみを変え、そ
れ以外の条件(コイルの巻き数、導線の長さなど)はすべて同じにする。
同様に、実験2-2においても、「コイルの巻き数」という要因のみを変え、それ以
外の条件(電流の大きさ(乾電池の数)、導線の長さなど)はすべて同じにする。
「理科嫌い」という言葉が世の中に出て久しいが、電気に関するこの実験辺りから物
理系の実験に苦手意識をもつ児童も多い。実験の時間も十分に確保したい。
(P28・29)
2-2・3
電磁石の強くする要因
*指導のポイント*
比較する要因(電流の大きさやコイルの巻き数)だけを変え、他の条件は統一する方法
で実験させる。的確に操作して正しい結果を得られるようにする。
*準備物*
電磁石、乾電池(2個)
、乾電池ホルダー(2個)、導線、スイッチ、クリップ、
簡易検流計、
〔電源装置、電流系〕
コイルに流れる電流を大きくしたら、電磁石は強くなるだろうか。
z
仮説
強くなると思う。なぜそう考えたかというと、4年生の時、回路に流れる電
流を大きくしたら、豆電球が明るくなったりモーターが早く回ったりした。
だから、乾電池の数を増やすと電磁石は強くなると思う。
簡易検流計の使い方学ぼう。
*実験2-1
電磁石がクリップを引きつけるようすで、乾電池の数と電磁石の強さの関係を調
べる。
6
結果
どちらの電磁石がクリップを多く引きつけたか。
z
乾電池が2個の方がクリップを多く引きつけた。
※
予想して実験を行う。予想した理由も明らかにしておくとよい。
※
電磁石がクリップを引き付けるようすを調べる→数を数えておく。
(より定量化された
データにする)
*簡易検流計の使用上の注意点と目盛りの読み方
簡易検流計の切り替えスイッチは、最初は電磁石側(電流計の場合は最大電流側)にする
ことを徹底させておく。
「まめ電球」側にして実験すると、針が振り切ってしまい故障して
しまうことがある。
目盛りは、算数科で学習したことのあるはかりと同じようにして読む。数値が書かれた目
盛りの間に、目盛りが4つあるので、1目盛りは0.2になる。
仮説
コイルの巻き数を多くしたら、電磁石は強くなるだろうか。
磁石で黒板に紙を貼るとき、磁石を2つ重ねると分厚い画用紙でも留められる。
同じように、巻き数を増やしたらその分だけ電磁石の力は強くなると思う。
*実験2-2
電磁石がクリップを引きつけるようすで、乾電池の数と電磁石の強さの関係を調
べる。
どちらの電磁石がクリップを多く引きつけたか。
z
結果
200回巻のほうがクリップを多く引きつけた。
※数値化されたデータをグラフに整理するなどの活動を入れるとよい
*電源装置について
検証実験を繰り返すうちに、児童はもっと安定した、もっと大きい電流を流してみたいと
いう願いをもつようになる。この時に電源装置を提示する。そうすることで、児童の願い
に沿った形で、電源装置を使ったより定量的な実験を行えるようになる。
ただし、実験の際に回路に流れる電流量を大きくしすぎると、エナメル線が非常に熱くな
って危険なので、その点に十分注意する。
(P30・31)
7
2-4
電磁石の強さ
*指導のポイント*
実験の結果をもとに話し合い、電磁石を強くする方法について考察し、まとめさせる。
結果
調べた結果を発表し合い、確かめ合おう。
z
乾電池2個を直列につないだ方が、クリップを多く引きつけた。
z
200回巻コイルのほうが、クリップを多く引きつけた。
乾電池の数と引きつけたクリップの数の関係、コイルの巻き数引きつけたクリッ
プの数の関係を、表にまとめよう。
(定量的なデータを示すようにする)
考察
表からわかったことをまとめよう。
z
電流を大きくすると電磁石は強くなる。
z
巻き数を多くすると電磁石は強くなる。
結論(p30)
※
表にまとめた方がわかりやすい。
※
教科書p27の条件の表に結果の欄を書き足していてもよい。
電流計の使い方
※
-たんし…黒色
+たんし…赤色
※
+端子と+極は赤色の導線でつなぐ。
※
電流計だけを乾電池につなぐと短絡(ショート)回路を作った状態になり、火花が散
ることもある。
*結果と考察の違い
結果と考察は違う。これを児童に説明するとき、どのようにしたらよいだろうか。
わかりやすく言えば、「結果は目で見たこと」、「考察はそれをもとに頭で考えたこと」で
ある。結果と考察の間に「結果の処理を入れる」と、考察しやすくなる。
たとえば、結果が数の羅列だったとする。それを表にしたり、グラフにしたりすると、傾
向を捉え、一般化しやすくなる。すなわち、“見えなかったものが見えてくる”(=考察が
深まり、言語化しやすくなる)のである。
*資料「電流の大きさを表す単位…アンペア(A)」について
資料では、A(アンペア)という単位の話から始まり、アンペアが児童の身近でどのよう
な理由で表示されているかが書かれている。
また、私たちの生活は今や電気なしには成り立たない。しかし、Aなどの単位を扱うため
8
か、電気の学習が苦手な人は多い。電気に関するエピソードを交えながら、楽しく学習で
きるようにしていきたい。
例えば、次のような話題がある。
z
世界初の電球を発明したエジソンはフィラメントに日本(京都)の竹を使った。
z
フィラメントはシャープペンシルの芯でも発光可能である。
z
「アンペア」はアンペールという人の名前からつけた。
(P32・33)
*資料「わたしたちのくらしと電磁石」について
わたしたちの身の回りには、電磁石を用いた製品が数多く存在する。
モーターには、電磁石が使われている。つまり、回転力を必要とする電化製品には電磁石
が使われている。例えば、洗濯機や扇風機をはじめ空気を吸い込むためのファンが取りつ
けられている掃除機などに使われている。
モーターは通常、電磁石と永久磁石の組み合わせで構成されている。大きな動力(回転力)
を得ようとすれば、大電流と強力な磁力が必要となる。
一般家庭の中にあって最も強力なモーターを使っている電化製品に洗濯機がある。流す電
流も大きいが、洗濯機の底部にある永久磁石がとても強力である。
身近な生活の中で電磁石がどのように使われているかを調べることは、本単元の学習が世
の中でどのように役立っているかを知るうえで有効である。
*電気自動車
電気自動車は、バッテリーに蓄えた電気でモーターを回転されて走る。そのためガソリン
車のように排ガスを出さず、走行時の振動や騒音も少ないというメリットがある。
近年では長距離走行が可能なバッテリーが開発されたり、短時間で充電が可能なスタンド
も設置されたりしているので、普及が促進されている。
しかし価格が高いという大きな問題がある。
*モーターが回転するしくみ
教科書p32の写真のような模型用モーターは、永久磁石の中に回転可能な電磁石が入っ
ている。モーターは、電磁石と永久磁石とが反発・引き合いを繰り返し、その力で回転す
る。多くの児童は、なぜ回転が連続するのかに疑問をもつだろう。実は、整流子という部
品によって、半回転ごとに電磁石に流れる電流の向きを逆にすることができるようになっ
ている。
小学校では電流の流れる向きを変えると電磁石の極が変わることを捉える程度であるの
で、あまり深入りせず、半回転ごとに極が逆になるという説明に留める。詳しくは中学校
で学習する。
*ムラタセイコちゃん
ムラタセイコちゃんは、
(株)村田製作所が開発した一輪車走行が可能なロボットである。
9
倒れそうで倒れない動きの楽しさと不思議さで、多くに人を魅了するロボットである。
倒れそうで倒れないのは、腹部にあるジャイロセンサーという部品で制御しているからで
ある。このセンサーで前後左右の傾きを検知し、前後は車輪を、左右は腹部に組み込んだ
円盤を回転させて、倒れないようにしている。
このロボットにもモーターが4個使われている。
教科書6年―2p67にはムラタセイサク君が掲載されている。
*リニアモーターカー
リニアモーターカーは、電磁石を使って車体を浮上させ、列車を高速運転できる。走行路
面と車体に電磁石を取り付け、たがいに反発するように極をつくり出すことで車体が浮上
する。浮上することで摩擦がなくなり、高速で走行できる。
また、推進時は、車体側面に取りつけられた電磁石と路面横の推進案内用電磁石との吸
引・反発を利用している。
(P34・35)
2-5・6
作ってみよう
*指導のポイント*
電磁石を使ったおもちゃを作ることによって、電磁石の性質について実感を伴った理解
を得ることができるようにする。
電磁石の性質を利用したおもちゃを作ろう。
① 図案を描き、電磁石をどこにどのように使うのか明記する。
② 製作に必要なものは、出来る限り自分で用意する。
③ 遊ぶ際はあらかじめ使用上の注意を確認しておく。
④ 完成したら友達と紹介し合い、
「電磁石がどこにどのように使われているのか」と
いう視点から感想を発表し合う。
*準備物*
エナメル線、ストロー、割り箸、空き箱、セロハンテープ、乾電池、スイッチ、導線
工作用紙、ボルト、ナット、厚紙、フェライト磁石、時計皿、ペトリ皿など
*作ってみようについて
できれば教科書の事例をヒントにして、自分のアイデアを凝らしたおもちゃを作るように
させたい。さらに、故障した場合にその原因を探り補修することができれば、電磁石の原
理がわかっているといえる。また製作にあたっては次のことに注意させる。
z
短絡(ショート)回路を作らないようにする。
z
乾電池を何個も直列につなぐと発熱して危ない。
z
磁石でつりさげたものは、高く持ち上げすぎない。
10
*電磁石を用いたおもちゃ
電磁石を用いたおもちゃは不思議な動きをするものが多く、児童の心を惹きつける。教科
書に例示したおもちゃのほかにも、次のようなおもちゃがある。
*アルミ缶分別機
教科書の「クレーンゲーム」と原理は同じ。傾斜をつけて空き缶を転がし、電磁石が引
きつけた缶(スチール缶)と通過した缶(アルミ缶を)区別する。
*缶ジュース持ち上げ機
電流を大きくしたりコイルの巻き数を増やしたりして、中にジュースが入ったスチール缶
を持ち上げて移動させ、別の場所に置ける。
*電気ベル
「電磁石ができれば鉄につく(その際棒が金属板をたたく)→鉄
についた瞬間に電流が流れない(その際棒が金属板から離れる)」
という動作が連続するようにすれば、電気べルができる。
*強力な電磁石
鉄心に大型のボルトなどを使い、コイルの巻き数を増やすと、教
科書P30の写真のような大型ホチキスでもつりさげることがで
きる。それを完成させた児童はとても感動する。ただし発熱によ
って電磁石が熱くなるので火傷に注意する。
(P36・37)
*時空を超えた共同研究
19世紀初頭の科学者たちの研究は、めざましいものだった。電池の発明から電磁石が発
明されるまで、わずか25年であった。当時の科学者たちの研究は次の通りである。
1800年
イタリアのボルトが、「電池」を発明。導線に電流を流しているときの変
化について、じっくり確かめられるようになった
1820年
デンマークのエルステッドが「電流の周辺に磁気が発生」することを発見。
1820年
フランスのビオとサバールの二人が、「電流の大きさと発生する磁気の強
さの公式」を発表。
1822年
フランスのアペールが「電流によって発生する磁気は、電流の方向に向か
って直角面に右回りの方向にできる」法則を発見。
1825年
イギリスのスタージャンが「電磁石」を発明。
1831年
イギリスのフィデラーが「磁気から電気が発生」することや「電磁誘導現
象」を発見。
11
その後も、マクスウェルやエジソンへと受けつがれた。
電気や磁気の研究は、ある科学書の研究成果を別の科学者が受けついで発展した。いわば、
時空を超えた共同研究だったのである。
*ウィリアムスタージャンについて
イギリス人のスタージャンは靴屋であり、電気実験は単なる趣味であったようだ。
スタージャンは、ニスを塗って脱縁した鉄心に針金を巻きつけ、さらに鉄心をU字形に曲
げて磁極を一方に集まる装置を作った。これに電流を流すと装置の12倍に相当する4㎏
の重さを持ち上げることに成功した。
これが世界最初の電磁石であり、電磁石の命名はスタージャンによる。
2-7
ふりかえろう・学んだことを生かそう
ふりかえろう
①
z
鉄を引きつける
z
極(N極・S極)がある。
② 回路に流れる電流の向きを変える。
③
z
電磁石に流れる電流を大きくする。
z
コイルの巻き数を増やす。
*ふりかえろうの補足
①
同じ性質
z
異極どうし(N極とS極)は引き合い、同極どうし(N極とN極・S極とS極)は退
け合う。
(参考)違う性質
z
磁石は常に磁石だが、電磁石は電流を流したときだけ磁石になる。
z
磁石は強さを変えることはできないが、電磁石は電流の大きさやコイルの巻き数を変
えれば強さを変えることができる。
z
磁石は極が決まっているが、電磁石は電流の向きで極を変えられる。
学んだことを生かそう
電流を流したり流さなかったりすることで、物をくっつけたりはなしたりして、移動さ
せることができるから。
12
*学んだことを生かそうの補足
電磁石は電流の大きさやコイルの巻き数を変えれば強力にすることができるので、写真の
ように重い鉄のかたまりでも引きつけることができると気づかせたい。
*この単元でおさえるべきところ*
†
電流の流れているコイルは、鉄心を磁化するはたらきがあること
†
電流の向きが変わると、電磁石の極が変わること
†
電磁石の強さは、電流の大きさや導線の巻き数によって変わること
†
簡易検流計の使い方
(P38・39)
*ジャンプ(発展)
「電流が生み出す磁石のはたらき」について
小学校の学習指導要領では「コイルに鉄心を入れて電流を流すと、電磁石ができる」とし
ている。すなわち、基本的には鉄心がない場合は扱わない。しかし、実際には鉄心がなく
ても電磁石ができる。このことは、観察力のある児童なら自由試行する中で容易に発見で
きる。
中学校では、電磁石を強くする条件の一つに「コイルに鉄心を入れる」ことを学習する。
*電流で磁石を再生
教科書p36に「2つのことを1つにしてみると、新しいアイデアが生まれることがあり
ます。」と書いてあるが、磁化用コイルもそうである。
第3学年で学習した「磁石に鉄をつけておくと鉄も磁石になる」ということと、前述の「鉄
心がないコイルでも、電流を流せば電磁石になる」ということを一つにすると、磁化用コ
イルができる。
児童から、「先生これも発明だね」という声が上がったら、大いにほめてほしい。
※
磁化用コイルでは棒磁石を真ん中に入れてからスイッチを入れる。端に置くと飛び出
すことがあり危険である。
*ビジュアルに磁場の世界を確認する
電磁石や永久磁石がつくる力が及ぶ空間を、磁場という。しかしどのような力がはたらい
ているのかを見ることは難しい。そこで、電磁石の上に透明なプラスチックを置き、その
上に砂鉄(鉄粉)をまき、砂鉄のようすをみるという方法がある。
これを第3学年のときに経験した児童もいるだろう。そうだとしても、実際に電磁石を作
る磁場の模様を見た児童からは歓声が上がる。
13
またプラスチック板を何枚か重ねれば、立体的に見ることもできる。さらに、砂鉄でなく
小さな方位磁針を敷き詰めてみると、電流を流した瞬間や切った瞬間に一斉に方位磁針の
針が動くのが確認でき、電流を流したときだけ磁場ができることがわかる。
*電流で動くおもちゃ作り
このおもちゃは、電流によってコイルに生じる磁力とフェライト磁石の磁力との間の反
発・吸引を利用したものである。
製作するうえでのポイントは、コイルの両端部分のエナメル線の削り方にある。一方は被
覆をすべてはがすが、もう一方は半分だけはがす。
このようにしないと、理論的には連続回転しない。つまり、半回転は通電して電磁石とな
り、半回転は通電せずに慣性で回転するようなしくみになっている。
うまく回転させるこつは、コイルをきれいな筒型にすること、紙コップにあける穴を大き
くして確実にエナメル線の端とクリップが接触するようにすること、フェライト磁石の位
置を巧みに調整することなどである。
また教科書ではエナメル線を10回巻くように例示しているが、コイルの直径や磁石間の
長さを小さくすれば巻き数の少ないコイルでも回転する。
①
単1乾電池にコイルを巻く。巻いたエナメル線を形が崩れないように引き抜く。
③
2つの穴を結んだ線がコップの口と平行になるようにする。
④
穴の中心にクリップの下端がくるとよい。
*準備物*
エナメル線、乾電池、乾電池ホルダー、フェライト磁石(片面 1 極)4 個、クリップ、
紙コップ、紙やすり、導線
*さいたま市青少年宇宙科学館のゲーム
これはボールサーキットというゲームである。鉄球がコイルに近づいたとき、電流を流し
てコイルを電磁石にすることで鉄球を加速させる。制限時間内にコースに鉄球が何周でき
るか競うゲームである。
*MRIについて
MRIは、Magnetic
Resonace
Imagingの略称で「磁気共鳴映
像法(またはその装置)
」のことである。磁気映像によって体内のようすを探ることができ
る。
MRIは微量の磁力を与えるだけで体内のようすを探ることができる。そのため、X線撮
影に比べ、人体への影響が比較的少ない検査方法だと考えられている。
14
Fly UP