...

6 植物の花のつくりと実や種子

by user

on
Category: Documents
75

views

Report

Comments

Transcript

6 植物の花のつくりと実や種子
6
生命のつながり(5)
植物の花のつくりと実や種子
*単元目標*
植物の結実の様子について興味・関心を持って追求する活動を通して、植物の受
粉と結実が関係していることについて条件を制御して調べる能力を育てるととも
に、それらについての理解を図り、生命を尊重する態度を育て植物の結実の条件に
ついての見方や考え方を持つことができるようにする。
●花にはおしべやめしべなどがあり、花粉がめしべの先につくとめしべのもとが実に
なり、実の中に種子ができること。
第1次
花のつくり(4時間)
1-1(1時間)
アサガオの花のつくりはどうなっているか調べる。
観察1
1-2・3(2時間) アサガオのおしべとめしべのつくりを調べる。
観察2
1-4(1時間)
観察3
アサガオの花粉の様子を顕微鏡で調べる。
(P70・71)
1-1
花のつくり
*指導のポイント*
花が咲いた後の様子を写した写真を手掛かりにして、花のどの部分がどのように実に
なるのかを話し合う。予想を確認するためにはつぼみから実までの観察が必要である
ことを気付くようにする。
アサガオの花が咲いてから実や種子になるまでどのように変化していくかを予想
しよう。
アサガオの花が咲いた後、どのようになるだろうか。
z
花は枯れてしまうよ。
z
花のあとには実や種子ができるよ。
アサガオの花のどの部分が実や種子になるのだろうか。
z
花のもとに実ができるんじゃないかな。
z
種子は実の中にあったよ。
*アサガオについて(教材に使う理由)
z
低学年から親しまれている植物であること。
z
栽培が比較的容易であること。
z
花の数が多いので実験の材料を得やすいこと。
z
鉢植えにしておけば、室内などで実験する際に作業がしやすいこと。
??
アサガオの花のつくりを調べよう。
*観察1
アサガオの花のつくりと、雄しべと雌しべを観察する。
*準備物*
アサガオの花・ピンセット・虫めがね・記録用紙・色鉛筆
結果
アサガオの花はどのようなつくりになっていただろうか。
z
外側から「がく、花びら、雄しべ、雌しべ」の順についていました。
z
雌しべは1本で、もとがふくらんでいたよ。
z
花びら花弁が筒のようになっていて、1枚しかなかったよ。
他の植物の花はどのようなつくりになっていただろうか。
z
ツルレイシは雄しべだけの花と雌しべだけの花があるんだよ。
z
ほかの植物にも雄しべ雌しべがある。
考察
観察の結果をまとめましょう。
z
花びらとがく、雄しべ、雌しべがあった。
z
雌しべのもとが膨らんでいた。
結論
※アサガオの雌しべは1本、雄しべは普通5本であるが、6~8本のものもある。
※アサガオの花(両性花)ツルレイシなどの花(単性花)を比較することで花によってつくりが
違うことに気付かせる。
(P72・73)
1-2・3
おしべとめしべのつくり
*指導のポイント*
花が開く前と後の雌しべを観察する。また、雄しべの先にあるやくのあたりに、花粉
があることに気付かせることによって、雄しべの花粉が雌しべにつき、受粉すること
に気付くようにする。
花が開く前と後で、おしべとめしべには、どのような違いが見ら
?
?
れるだろうか。
*観察2
虫めがねで、花が開く前とあとのおしべとめしべを観察し、記録する。
*準備物*
アサガオの花・虫めがね・カッターナイフ・ピンセット・記録用紙・(ツルレイシ)
※花びらだけに切れ目を入れて、手で裂く。
※少しふくらんだつぼみを選ぶとよい。(花の色が透けて、縞模様が見え始めたくらいのも
の。)
結果
開いている花の雌しべの先は、どのようになっていたか。
z
雌しべの先に花粉がついていたよ。
z
雌しべの先についている花粉は振っても落ちなかったよ。
つぼみの時の雌しべの先はどのようになっていたか。
z
雌しべの先に花粉がついていなかった。
z
雌しべの先を見たら、ぶつぶつしていたよ。
z
雌しべの先を触ったら、ねばねばしていたよ。
z
花が開くと雄しべの花粉が雌しべの先につくんだよ。
考察
観察の結果からわかったことをまとめよう。
z
花が開く前は、雄しべにも雌しべにも花粉はついていなかった。
z
花が開いたあとは、雄しべと雌しべに花粉がついていた。
結論
※花粉が入った袋をやく(葯)という。
※雄しべの先が雌しべの先までのびて、花粉がつくことを確認する。
*アサガオの開花時間と雄しべの観察
アサガオの花は、気温の低い日、曇りや雨で暗い日、湿度の高い日には長時間開花して
いつこともある。しかし好天で明るい日や気温の高い日には早く閉じてしまう。そのため、
学習は午前中の早い時間に行うことが望ましい。もしその時間にできない場合は、朝のう
ちにアサガオの花を摘み取り、袋に入れて冷蔵庫に保管しておくと開いた状態を保つこと
ができる。また、雄しべは花びらの内側についていて、開花後は花びらとともに落ちてし
まうので注意する。
(P74・75)
1-4
花粉のつくり
*指導のポイント*
開いたアサガオの花の花粉をピンセットや顕微鏡を適切に操作して、形などを観察す
る。
?
?
花粉を調べよう
*観察3
雄しべからとった花粉をスライドガラスにつけ、顕微鏡で観察する。
*準備物*
アサガオの花・顕微鏡・スライドガラス(ホールグラス、カバーガラス)・記録用紙
※普通、顕微鏡観察では、カバーガラスを使うが、花粉を観察する際は使わないので、対
物レンズを近づけすぎてレンズを汚さないように注意する。
※直射日光があたらない明るいところに顕微鏡を置いて観察する。
*花粉の観察
花粉の採取は、セロハンテープを利用しても児童に簡単にできる。野外に出てセロハン
テープの粘着面に花粉をつけさせ、その後、教室の机上でスライドガラスに貼りつける。
この時テープとスライドガラスに空気が入らないように丁寧に密着させるとよい。
花粉の大きさや形、色は植物の種類によって異なる。アサガオの花粉を顕微鏡で調べるこ
とによって、ほかの花の花粉にも興味・関心が広がることが考えられる。自然物からじか
に感動を味あわせるよい機会になる。いろいろな花粉を調べながら、形や大きさの違いを
虫媒花、風媒花などの植物の特徴と併せて考えられるようにするとよい。
*資料「花粉の運ばれ方」について
受粉にはアサガオのように同一個体内で受粉する花(自家受粉)のほかに、他の花の花
粉が運ばれて受粉する花(他花受粉)がある。
ツルレイシやヘチマなどの植物は雄花と雌花が離れているので、どのようにして花粉が雌
花まで運ばれてくるのかを考えさせるようにする。
花に昆虫が集まっていることや花粉症など自分の生活経験から花粉の運ばれ方を想起さ
せ、考えさせてもよい。
また、調べ学習として本、図鑑、インターネットなどを利用して花粉の運ばれ方、花粉
の大きさや形などを調べさせてもよいだろう。
*花粉の運ばれ方と特徴
昆虫によって運ばれるヘチマやコスモスなどの花粉は突起があったり、粘り気があった
りして、昆虫につきやすくなっている。昆虫が移動するとき、昆虫の体についた花粉が花
から花へと運ばれる(虫媒花)。また、花には花びらの色、花の香り、蜜など昆虫を呼び寄せ
る仕組みがあることに注目させてもよい。
花びらが不明確なトウモロコシ、ススキ、マツなどは花粉が風で運ばれる風媒花である。
花粉は、一般に小さくて軽く、さらさらして、風に飛ばされやすくなっている。
(P76・77)
第2次
花粉のはたらき(4時間)
2-1・2(2時間)
雌しべの先に花粉をつけた花と花粉をつけない花をつく
って、実ができるか調べる。
2―3(1時間)
実験の結果をまとめ、これまでに学習した人やメダカも含
めた生命のつながりについてまとめる。
2-4(1時間)
「ふりかえろう」「学んだことを生かそう」を行う。
実験
2-1・2
花粉のはたらき
*指導のポイント*
受粉すると、雌しべのもとが育ち結実することについて、条件を整えて実験し確かめる
ことによって、花粉のはたらきを実感できるようにする。
??
実ができるためには、受粉が必要なのだろうか。
*準備物*
アサガオの花(つぼみ)
・カッターナイフ・ピンセット・虫めがね・記録用紙
モール(色の違うもの2種類)・ポリエチレンの袋(または果樹用の袋)
計画
受粉しなければ実はできないのか、調べる方法を考えよう。
z
雄しべをすべて取ってしまうと、花粉がなくなるので受粉しないと思う。
z
花が咲く前(つぼみのうち)に雄しべをとらないと受粉しちゃうよ。
z
雄しべをとっても、他の花の花粉がつくかもしれないから、袋をかぶせないとい
けないよ。
*実験
アサガオは受粉しなければ実ができないのかを調べるために、花粉をつけた花と
つけない花で実験をする。
考察
実験の結果からわかったことをまとめよう。
z
受粉させた花は雌しべのもとがふくらんできた。これが実になると思う。
z
受粉させた方は緑色をしている。
z
花粉をつけない花は雌しべのもとがふくらまなかった。
z
受粉させなかったほうは緑色がうすいよ。
結論
※花粉が出ていない(やくが開いていない)ことを確かめて雄しべを全部取る。
※つぼみはくきにつけたまま実験を行う。
※実験中の花が、虫などによってほかのアサガオの花の花粉で受粉するのを防ぐために、
袋をかけておく。
*アサガオの受粉実験について
翌朝開きそうなつぼみは毎日観察していれば、ほぼ間違いなくわかるようになる。失敗
した場合も、アサガオは花の数が多いので繰り返し実験ができる。
教科書には、つぼみのみで実験を行っているような図が載っているので、児童には茎か
らつぼみをとらないで実験することを確認しておくとよい。
また、この実験では、袋をモールできつくしばらないことに注意しておくとよい。袋を
かけて花がしぼんだあと、ずっと袋をかけておくと湿気がこもってしまい花が腐ってしま
うので、花がしぼんだらすぐに袋を取り外すとよい。
(P78・79)
2-3
生命のつながり
*指導のポイント*
実験の結果から、植物の実や種子が受粉という生命の営みによってできるという見方
をできるようにする。また、それをもとに、植物や動物は生命を世代を代えながら過
去から未来へとつなげていることをこれまでの学習をもとに考えさせる。
*アサガオの実について
受粉後の雌しべのもとは、毎日観察しても目立った変化は起こらない。1 週間おきくらい
に大きさや色の変化を観察し、記録する程度がよい。
先に花粉がつかなかった雌しべのもとはやがて緑色が薄くなり、花びらなどが落ちてし
まうが、受粉した雌しべの基部は少しずつ育って実になり、中に種子ができる。
実の表面の皮が薄茶色に変わる頃になると、中の種子も皮が黒くなり固くなっている。
*ツルレイシでの実験
ツルレイシは比較的花の数が多く、児童にも取り扱いやすいので、受粉の実験に活用して
欲しいもののひとつである。
ツルレイシはアサガオと異なり、花が開いてから受粉する。開花の前日、つぼみのうちか
ら雌花にポリエチレン袋などをかぶせ、虫などによって花粉が運ばれ、受粉しないように
する。花がしぼんだら袋は取り外した方がよい。
ツルレイシは、雌花に実ができるが、受粉が行わなければ、雌花のもとの成長は見られな
い。また天候や栄養などの条件により受粉が行われたものもすべて育つとは限らない。袋
をかけない花でも雌花の基部が成長しないで、やがて落ちてしまうものもある。
*実と種子
アサガオ、ヒマワリ、イネなどの植物は雌しべのもと(子房)が成熟して果実となる(実
とも呼ぶ)。果実の中には種子が入っている。
アサガオのように乾燥した果実の皮(果皮)と種子が分かれた植物や、ヒマワリやイネの
ように果皮と種子が密着して分かれない植物もある。そのため、ヒマワリやイネなどは果
実全体と「たね」と呼ぶことが多い。そのため、一般的にあるいは農業的に使われる
「たね」と生物学上の種子とで違いがある。
※イネの実は「もみ」とよばれる。
*パイナップルの種子
南国の果物の代表のようなパイナップル。この果物の種子はどこにあるのだろうか。実は
普段果実だと思って食べている部分は花のもとにある台のような部分である。パイナップ
ルは、いくつもの花の集合体でそのまま実になり肥大してくっついたものである。よく調
べてみると、その中に小さな種子を見つけられることがある。
(P80・81)
※5学年生の生命のつながり(1)~(5)のまとめとしてこれまでに学習したことを振
り替えさせるようにしたい。
*生命のつながりについて
植物は、種子が発芽し、成長して花を咲かせ、たくさん結実して種子をつくり、次の世代
へと生命が受け継がれていく。また、メダカや多くの動物も受精卵から変化しながら成体
となり、また受精卵をつくって次の世代へ生命を受け継いでいく。
人も親から子へ、子から孫へと生命が受け継がれている。この大きな生命の営みを極めて
簡単に図示したものである。
これらの図(絵)や写真、文章などを使って、生命の連続性とその仕組みを感じ取らせ、
生命を尊重する態度を育んでいきたい。
*資料「イネの受粉と品種改良」について
イネの品種は300種類以上もあり、味や量、病気や冷害などに対する強さは品種によっ
て異なる。新しい品種をつくるためには、これらを人工的に組み合われて、試行錯誤を繰
り返して、より良いものを選抜してつくる。
児童にも、新しい品種をつくるためにはどうしたらよいかを考えさせてもよい。そのよう
な活動を通して、よい品種を選び、受粉させることで両方のいいところをもった新しい品
種を作り出す大きな努力が続けられていることに気づかせるのもよい。
2-4
ふりかえろう・学んだこと生かそう
ふりかえろう
ア
① ○
花びら
イ
○
めしべ
オ
② ○
おばな
カ
○
めばな
ウ
○
おしべ
エ
○
がく
カ の花のもとがふくらんでいるのでめばなで○
オ はふくらんでいないのでおばなだと考
○
えた。
③ 花の中のおしべの花粉がめしべの先につくことを受粉といい、そのあと、めしべのもと
が育って実になる。その中には種子ができる。
*ふりかえろうの補足
①外側から、がく、花びら、雄しべ、雌しべの順になっていることを確認しておきたい。
②追加問題
○アサガオやツルレイシの雌しべはどのようにして受粉するか。
学んだことを生かそう
ミツバチは、イチゴの花のみつを吸うときに、体に花粉がつき、その花粉がめしべにつ
いて受粉するので温室の中にミツバチを放してイチゴの受粉をしている。
*学んだことを生かそうの補足
ハウスの中でイチゴを大量に栽培するにはミツバチを飼うと都合がよい。野生の訪花昆虫
で栽培する農家の人たちもいるが、多くの農家ではミツバチを飼育し、それを利用して確
実に受粉させるように工夫している。
そこで、児童が花と昆虫の関係を踏まえてこのような農家の工夫を説明できるようにした
い。
ほかに、ミツバチで行う受粉がうまくいかなかったときのことなどを想像させて、話し合
わせてもよい。
*この単元でおさえるべきところ*
†
花には雄しべと雌しべ、がく、花びらがあること
†
花粉が雌しべの先につく(受粉する)と雌しべのもとが実になり、実の中に種子
ができること
†
顕微鏡の正しい使い方
Fly UP