...

DNA認識コード

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

DNA認識コード
Ⅰ
DNA認
識コー ド
鈴木 理
転写因子による 口NA結 合の特異性を記述するルール (
口NA認 識コー ド)は20年 近 く議
Database Center for Life Science Online Service
論の対象となってきた。今日の総説,教科書はその存在に否定的である。筆者は多数の転
写因子の構造/一次配列とその結合特異性を比較し,DNA認
識コードが存在すること,そ
れが化学コードと立体化学地図の組合せで記述できることを主張している。前者は結合に
使われるアミノ酸と塩基の組合せを記述し,後者は結合に使われるアミノ酸と塩基位置を
記述する。化学コー ドは普遍的,立体化学地図はDNA結
【DNA】
【転 写 因 子 】 【
分 子識 別】
は じめ に 分 子 生 物 学 の セ ン トラ ル ドグ マ (図1a)
確 立 され て か ら40年
合様式に特異的である。
が
が 経 過 し よ う と して い る。 少 し考
い るか ら 「ア ミノ 酸 配 列 か ら標 的 核 酸 配 列 を 予 測 す る
ル ー ル (DNA認
識 コー ド)が 存 在 す るか 」 と い う問 題
え て み る と こ の 図 式 はあ ま り に も単 純 化 さ れ た 記 述 で
で あ る。 こ の よ うな ル ー ル の解 明 は1000以
上 にお よぶ
あ る こ と に気 づ く。 も し核 酸 が す べ て で あ る な ら 等 価
転 写 因 子 の 研 究 , ひ い て は 生 物 学 全 体 に 影 響 を与 え る
な遺 伝 情 報 を も つ細 胞 は同 じ形 と機 能 しか も た な い こ
と と も に遺 伝 子 工 学 上 の 応 用
(た と え ば , 既 存 転 写 因
とに な ら な い か 。 実 は, 各 細 胞 中 で は遺 伝 情 報 の ご く
子 の結 合 特 異 性 を 変 え る ), ま た 蛋 白質 工 学 に与 え る影
わ ず か しか 使 わ れ て お らず , ど の情 報 を 発 現 す る か に
響
よ っ て , 別 の形 態 と機 能 が 得 られ る の で あ る 。 遺 伝 子
稿 で は そ の よ うな ル ー ル が 存 在 す る こ と, ま た そ れ が
発 現 は遺 伝 子 産 物 で あ る 蛋 白質 の 一 群
どの よ う に 記 述 され る か を議 論 し た い 。
「
転 写 因子 」 に
(
た とえ ば 新 型 転 写 因 子 の 設 計 ) も少 な くな い 。 本
よ っ て 制 御 さ れ て い る。 転 写 因 子 が 結 合 し た遺 伝 子 だ
け が 転 写 され る。 今 日 ま で に千 単 位 の 転 写 因 子 が 同 定
さ れ て お り, そ れ ぞ れ の 転 写 因 子 は別 の 遺 伝 子 の 発 現
に 関 与 す る 。 し た が っ て 核 酸 と蛋 白質 の 制 御 は双 方 向
で あ る と考 え る必 要 が あ る (
図1b) 。
DNA認
識 コ ー ド (DNA recognition helix) とい う
考 え 方 の 起 源 は20年
核 酸 か ら 蛋 白質 へ の情 報 の 流 れ の 解 明 の 歴 史 で 三 連
コ ー ドの 発 見 は画 期 的 で あ っ た 。 逆 の 流 れ で これ に 匹
に は通 常DNAに
前 に さ か の ぼ る 。tRNAの
な い三 重 塩 基 結 合 が ある。 塩 基 対 に も
う1個 余 分 な 塩 基 が 結 合 し て い る の で あ る 。Seeman
敵 す る の は転 写 因 子 が 核 酸 配 列 を識 別 す る ル ー ル (DNA
ら1)
*1は第3の
認 識 コー ド) の 解 明 で あ ろ う。 標 的 遺 伝 子 を 選 択 す る
Arg-G,Asn/Gln-Aと
塩 基 を ア ミ ノ酸 で 置 換 す る こ と に よ り
い う2例
た め に は転 写 因 子 は核 酸 配 列 が “読 め ” な け れ ば な ら
を予 測 し た 。 こ の2例
な い 。 転 写 因 子 の 構 造 は そ の ア ミノ 酸 配 列 で 決 ま っ て
い だ され て い る 。
Masashi DNA Suzuki,MRC Recognition Labaratory of Molecular Biology,Hills 構造中
Road,Cambridge,CB2 の ア ミノ 酸-塩 基 結 合
は の ち に 多 くの 結 晶 構 造 中 に 見
2QH,UK
Code
1597
2
蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol.39
No.10(1994)
者 の参 入 に よ り一 段 と加 熱 し た。DNA結
大 き さ は発 展 しつ つ あ っ たNMR技
合 ドメ イ ンの
術 に と って 手 ご ろ
だ っ た の で あ る 。 皮 肉 な こ と に約2ダ
ースほ どの構造
(
表1) が 決 定 され て み る と, い くつ か の構 造 間 に 多 少
の 共 通 性 は あ る も の の コ ー ド と よべ る ほ どの も の は存
在 し な い と信 じ ら れ る よ う に な っ た 。HTHに
Matthews3)
は “no code for recognition”
関 して
と明 解 に 結
論 し て い る。
一方 で
, 当 初 は 遺 伝 学 的 方 法 , 最 近 で は フ ッ トプ リ
ン ト法 やPCR法
の 発 展 を背 景 に結 合 特 異 性 の非 構 造 学
的 研 究 も進 ん だ 。Lacリ
プ レ ッサ ー の 発 見 者M?ller-
Hillは 遺 伝 学 実 験 に 基 づ い てHTH蛋
白質問 にコー ド
Database Center for Life Science Online Service
が 存 在 す る と主 張 し た が4)
, コー ドそ の もの は 明 確 に書
図l
DNA認
き下 され て お らず , 構 造 学 者 た ち の 評 価 は低 い。 当 初
識 コ ー ドの 意 味
(a) 分 子生 物 学 の セ ン トラル ドグマ 。DNAか
ら蛋 白質 へ と一 方
向 に情 報 は流 れ る。 したが っ て 蛋 白 質 は 遺 伝 子 産 物 とよ ば れ る。
DNAと
蛋 白 質 を関 係 づ け るル ー ル は三 連 コ ー ドに総 括 され る 。
(b) 本 稿 の 観 点 。 蛋 白 質 の 一群 (
転 写 因 子 ) は 転 写 を制 御 す る。
した が っ て 両 者 の 制 御 は 双 方 向 的 で あ る 。 逆 方 向 の ル ー ル を 総
括 す る の がDNA認
ー ル ) で あ る。
識 コー ド (
転 写 因 子 がDNA配
列 を識 別 す る ル
簡 単 な コ ー ドが あ る と考 え られ たZnF5,6)も, 最 近 明 ら
か に され た 結 晶 構 造 中 で フ ィ ン ガ ー が 必 ず し も同様 に
DNAに
結 合 し な い , そ れ ど こ ろかDNAに
結 合 しな い
フ ィ ンガ ー もあ る こ とが 明 らか に な る に お よん で7)疑 問
視 され て い る。 教 科 書 や 総 説 で は,DNA認
識 コー ドは
否 定 的 に と り あ げ られ る か , 無 視 さ れ る こ とが 多 い 。
筆 者 が こ の 問 題 に 関 心 を もつ よ う に な っ た の は1992
次 の重 要 な過 程 はDNA結
合 モ チ ー フ の 発 見 で あ る。
多 くの転 写 因 子 が 同 定 され そ の 一 次 配 列 が 決 定 さ れ る
年 末 か らで あ る。 転 写 因 子 結 晶 構 造 の総 説 を書 い て い
る際,真 核生 物転 写 因子 で , 同一 グ ルー プ とはまった
に つ れ 数 種 の構 造 的 枠 組 み が 頻 繁 に 使 わ れ る こ とが わ
く考 え られ て い な か っ た , ジ ッパ ー 蛋 白 質 , ホ メ オ 蛋
か っ た。 ヘ リ ッ ク ス-タ ー ン-ヘ リ ッ ク ス (HTH) やZn
白質 , ピス トンH5,
フ ィ ン ガ ー (ZnF) が1970∼1980年
白 質 な どが , 非 常 に似 た 認 識 ヘ リ ッ ク ス を使 っ て 異 な
代 に同定 され る と
ヘ リ ッ クス-ル ー プ-ヘ リッ クス 蛋
認 識 コー ド解 明 へ の 期 待 は高 ま っ た 。 私 事 な が ら筆 者
る塩 基 配 列 に 結 合 す る こ と に気 づ い た8)
。 この グ ルー プ ,
もSPKKモ
プ ロ ー ブ ヘ リ ッ ク ス (PH) はヘ リ ッ ク ス 上 の4つ
チ ー フ を1988年
とSauer2) は1984年
にHTHの
に 提 唱 して い る *2。Pabo
総説 のなかで初 めて
の位
置 を使 っ て 塩 基 に結 合 し, この 位 置 を 占 め る ア ミ ノ酸
(DNA) 認 識 コ ー ド と い う 言 葉 を 使 っ て い る。1980
を 変 え る こ とに よ り, 異 な る標 的DNAを
∼1990年
の ア ミ ノ酸 と塩 基 の 結 合 ル ー ル が 書 き下 され れ ばPHの
代 に か け て, 多 くの結 合 モ チ ー フがDNA結
選 択 す る。 こ
合 に α ヘ リ ッ クス を使 用 す る こ とが 明 らか に され た。 こ
DNA認
の ヘ リ ッ ク ス は認 識 ヘ リ ッ ク ス と よ ば れ る。
に 思 わ れ た 。 結 局 , 一 応 の 解 答 を 発 表 す る まで に1年
この10年
間 に 結 晶 学 者 がDNA-転
写 因子 複 合体 の
識 コー ドが 解 明 され る。 そ して それ は簡 単 そ う
を 要 し た9)
。PHの
コー ドの 仕 組 み が わ か る と, 他 の モ
構 造 を次 々 に解 明 し た 際 , コ ー ド と い う概 念 が 念 頭 に
チ ー フ,ZnF,HTH,
あ っ た こ とは まちが い な い 。 構 造 決 定 レー ス はNMR学
ド も同 様 に説 明 で き る こ と が わ か っ た の で あ る。
*1
最近 ,Seeman氏
よ り手 紙 をい た だ き, よ り詳 し い歴 史 を知 っ た 。 同 氏 はtRNAで
え に達 した もの の 論 文 を発 表 す る こ とが で きず ,tRNAグ
ホル モ ンレセ プ ターな どの コー
は な く他 のRNA結
ル ー プ に参 加 し た の ち, この 論 文 はRichに
晶 構 造 に 基 づ き, こ の考
よ っ てPNAS誌
に発 表 され た
との こ とで あ る。
*2 筆 者 が 大 学 院 生 で あ った こ ろ,DNA結
合 の構 造 学 的 研 究 はHTHか
ヌ ク レ オ ソ ー ム に 限 られ て い ま し た。真 核 性 転 写 因 子 は大 量
に得 られ な か っ た か らで す 。 筆 者 は どち らか と い う とヌ ク レ オ ソー ム派 でHTHの
α ヘ リ ッ ク ス がDNAに
結 合 す る とい う 話 が 発 表
され は じめ た と き, とて も信 じ られ な い 気 持 ち で あ っ た こ とを覚 え て い ます。 自 らが こ の 問 題 に将 来 関 係 す る と は とて も思 い ま せ ん で
した。
1598
Ⅱ
DNA認
表1 転 写 因子-DNA複
合 体 の結 晶 構 造
識 コー ド
3
種 塩 基 が複 数 種 ア ミノ酸 と結
合 で きる こ とがわ か り1対1の
結 合 ル ール は存在 しない こ と
が わ か っ た 。 し か しな が ら結
合 特 異 性 の 大 部 分 がDNA主
構i(major groove)
内で の ア
ミノ 酸 側 鎖 とDNA塩
基 の化
学 的 接 触 に 由 来 す る こ と は疑
い え な い 。 他 の部 分 , ア ミノ
酸 主 鎖 やDNAの
リ ン酸 骨 格
は大 き く変 わ り え な い か ら で
あ る 。 不 思 議 な こ とに最 近 の
Database Center for Life Science Online Service
筆 者 の論 文9)に至 るまで ア ミノ
酸 側 鎖 とDNA塩
基 の結合 ル
ー ル が 系 統 だ て て議 論 さ れ る
こ とはな か った 。DNA認
識コ
ー ドを 理 解 す る た め に は まず
この ル ー ル
(
化 学 コー ド ;
chemical code) を理 解 す る 必
要 が あ る。
しか し な が ら化 学 コ ー ドだ
け で は認 識 コー ドを理 解 す る
こ とは で きない。PHの
に はAsnは
第1位
許 容 され るがGln
はされ ない。 この ような制約
は化 学 コ ー ドだ け で は理 解 で
き な い 。 転 写 因 子 と核 酸 の 相
互 作 用 は よ り高 次 に は3次 元
空 間 内 で の 面 と面 の 接 触 と し
て 記 述 され る。 結 合 の 立 体 関
α ヘ リ ッ クス を 使 ってDNAを
認 識 す る 転 写 因 子 を リス トす る。 こ れ 以 外 に2,3の β シ ー ト型
因 子 の 構 造 が 知 られ て い る 。a) 結 晶 化 に 使 わ れ たDNAの
ー ド名。
長 さ。b)Protein Data Bankで
のコ
係 (binding-geometry)
の結
果 , 接 触 す る ア ミノ 酸 , 塩 基
の 面 上 の 位 置 が 決 ま りそ れ ぞ
れ の 接 触 に対 す る立 体 化 学 的
制 約 (ア ミノ 酸 の 大 き さ な ど)
が 生 じ る。 これ を 記 述 す る の が 立 体 化 学 ル ー ル (stereochemical rule) で あ る 。
化 学 コー ドは 普 遍 的 で ど の結 合 様 式 に も適 用 で き る
1. 化 学 コ ー ドと 立 体 化 学 ル ー ル
初 期 の 論 文1,2)
中 で 予 想 さ れ た コ ー ドは ア ミノ 酸 側 鎖
とDNA塩
基 間 の 単 純 な 結 合 ル ー ル で あ っ た 。 その 後 ,
結 晶 構 造 中 で 同 種 ア ミノ 酸 が 複 数 種 塩 基 と結 合 し, 同
のに対 し, 立体 化 学ルールはDNA結
体 関 係 の 結 果 で あ る。 こ の2つ
る こ とに よ りそのDNA結
合様 式 に特有 な立
の ル ー ル を組 み合 わ せ
合 様 式 のDNA認
識 コー ドは
記 述 され る。
1599
4
蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol.39 No.10(1994)
DNA主
溝 中 の化学 基 で疎
水 性 が 強 い の はT塩
基 のメチ
ル 基 で あ る 。 した が っ てAla
(
側 鎖 は メ チ ル 基 か らな り水 素
結 合 を つ くれ な い ) の相 手 は
Tで
しか な い 。C塩 基 上 で は
こ の メ チ ル 基 は2個
の芳香 環
性 水 素 原 子 に置 換 され てお り,
疎 水 性 は 低 く, よ り疎 水 性 の
高 い ア ミ ノ酸 (Valな ど )の 相
手 に しか な れ な い。
AspやGluは
水素 結合 受容
Database Center for Life Science Online Service
基 を もつ が供 与 基 を もたず , よ
図2 転 写 因 子 と の 結 合 に 使 わ れ るDNA化
学基
(a) 塩 基 対 の 模 式 図。 主 溝 (M) 側 の水 素 結 合 受容 基 (ac)
, 供 与 基 (dn)の 位 置 を示 す 。 唯
一 の疎 水 基 (
● ),T塩 基 の メ チ ル 基 の 位 置 も示 す 。 こ れ らが 転 写 因 子 ア ミ ノ酸 の 認 識 標 的 と
な る。 (b)DNAが
右 巻 き らせ ん を形 成 す る た め, 図 に 示 す 方 向 の 距 離 が こ れ と反 対 方 向 の 距
離 よ り も短 くな る。 単 一 ア ミノ酸 に よ る2塩
基 対 の 架 橋 は常 に この 短 い 方 向 に 起 こ る。 ク リ ッ
ク鎖 (手 前 :C)と ワ トソ ン鎖 (向 こ う :W) の定 義 。 右 か ら左 へ と増 える 塩 基 対 の ナ ンバ ー(i,
十1) な ど に注 意 。
i
っ て供 与 基 を もつC/A塩
基 と
しか 結 合 しな い 。 逆 にLysや
Argは
供 与 基 し か も たず , 受
容 基 を も た な いC塩
合 で きな い 。G塩
基 に は結
基が 負 に帯
電 し て い る の に対 しCは
正 に
帯 電 し て い る 。 した が っ てG
が 強 い水 素 結 合 受 容 基 ,Cは
強 い 供 与 基 で あ る。 よ っ て
Lys/ArgはGに
結 合 しや す
く,Asp/GluはCに
結 合 しや
す い 。AsnやGlnは
水素 結合
受 容 基 と供 与 基 の 両 方 を もち ,
や は り両 方 を もつA塩
基 と2
対 の水 素結 合 で接触 で きるの
で これ を好 む1)
。SerやCysは
受 容 基 と して も供 与 基 と し て
も使 え る化 学 基 (OHやSH)
を も ち, どの 塩 基 と も結 合 で
図3
DNAと
きる。 したが って その塩基 識
の 結合 に使 わ れ る ア ミノ酸 側 鎖の 特 徴
ア ミノ酸 は そ の体 積
軸 )・に よ っ て4グ
(
横 軸 ) と側 鎖 の 長 さ (
α 炭 素原 子 か ら先端 の 化 学 基 ま で の 原 子 の 数 :縦
ル ー プ に分 類 され る ;小 型
(s), 中 型
(m), 大 型
(l) 芳 香 族 (a)。 各側
鎖 は水 素 結 合 受 容 基 を もつ も の (◇ ), 供 与 基 を もつ もの (○ ), 疎 水 基 を もつ も の (● ), そ れ
らの 組 合 せ な ど に分 類 され る。
別 能 は低 い。
この よ う に し て 可 能 性 の あ
る相 手 を リス ト し (
表2a)
特
異 性 の 高 い もの を選 ぶ (
表2b)
こ とが で きる9)n今 日 まで に構
2. ア ミ ノ 酸-塩 基 結 合 対
造 決定 され た結晶 中 の接触 の統 計 を とるこ とに よって
塩 基 とア ミ ノ 酸 側 鎖 の 接 触 は水 素 結 合 か 疎 水 結 合 を
介 す る 。 両 者 の 化 学 基 (図2,3)
を調 べ れ ば 結 合 の 相
手 を リス トす る こ とが で き る (
表2) 。
1600
以 上 の 議 論 が 正 しい こ と が 調 べ ら れ て い る9)
。
Ⅲ
DNA認
Database Center for Life Science Online Service
表2 識 コー ド
5
化 学 コー ド
図2, 図3に 示 す 塩 基 , ア ミ ノ 酸 の 特 徴 か らDNA主
溝 での
結 合 相 手 を書 き出 す こ とが で き る。 実 際 に結 晶 中 にみ られ る
例 の統 計 か らも こ の 表 は確 認 さ れ て い る9)
。特異性 の高 さは
そ の ア ミノ酸 が1つ の塩 基 と だ け 強 く結 合 す る (+ +),2つ
の塩 基 と結 合 す る (+ )な ど して 評 価 さ れ る。s: 小 型 ,m:
(a) の 中 で 特 異 性 の 高 い も の を 選 択 し,
塩 基 の種 類 と ア ミノ 酸 の サ イ ズ を基 に 分 類
した。
中型 ,l: 大 型 ,a: 芳 香 族 。
な い 。 しか し な が ら簡 単 な モ デ ル を使 っ
て , 過 去 に報 告 され て い る例 を す べ て 含
め て , 結 合 相 手 を 予 測 す る こ と は可 能 で
ある (
表2c) 。 こ の モ デ ル の 要 点 は, 架
橋 (bridging) は短 い距 離 に あ る2つ
の化
学基 を ア ミノ酸が 結 ぶ こ とによって起 こ
る, そ してDNAが
右 巻 き らせ ん で あ るた
め 短 い距 離 は常 に 左 側 塩 基 対 の手 前 の 塩
基 と右 側 塩 基 対 の 向 こ うの 塩 基 を結 ぶ 方
向 に形 成 さ れ る (
図2b)
る 。 詳 細 は , 文 献9を
と い う こ とで あ
参 照 され たい。
こ れ 以 外 に も, ア ミ ノ 酸 が 塩 基 と リ ン
酸 基 の 両 方 に 結 合 した り,2ア
2塩 基 と単 一 ア ミ ノ 酸 接 触 の 組 合 せ 。 左 側 に 同 一 核 酸 鎖 の2塩
基 , 右 側 に異 な る3核 酸 鎖 の2塩 基 へ の 結 合 の 組 合 せ を 示 す。
C(i) な どの 定 義 は 図2bを
参照。
相 互 作 用 し な が ら1も
ミノ酸 が
し くは2塩 基 と結
合 し た りす る 例 も あ る が , や は り文 献9
を参 照 さ れ た い 。
3.2塩
基対 の架 橋
結 晶 構 造 中 に は 同 一 の ア ミ ノ酸 が2塩
DNA鎖
上 の , あ る い は別 のDNA鎖
触 す る 例 が み られ る。DNA2塩
基
(
同一の
上 の2塩 基 )と接
基 対 の立 体 関 係 は複 雑
な立 体 化 学 効 果 の結 果 で , 簡 単 に記 述 す る こ と は で き
1. 結合 の立 体 関 係
立 体化 学 ルール は転写 因 子 の認 識 ヘ リックスのDNA
1601
6
蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.39 No.10(1994)
ヘ リックス のDNAに
対 す る傾
きが 決 ま り,DNA側
を向 く4
つ の 位 置1,4,5,8が 塩 基 に 結
合 す る。HTH(
図4b,
図5
c) や レ セ プ タ ー タ イ プ (図5
b, 以 下C4と
略 )の認 識 ヘ リ
ツ ク ス に はDNAと
反対 側 に
別 の ヘ リ ッ ク ス が ほ ぼ垂 直 に
結 合 して い て , 認 識 ヘ リ ッ ク
ス は 回転 の大 きな 自由 度 を も
た な い 。 蛋 白 質 内相 互 作 用 に
使 わ れ る疎 水 基 やZn2+ 結 合 に
使 わ れ るHis基
Database Center for Life Science Online Service
DNA塩
,Cys基
は,
基 を 向 く側 に 位 置 で
き な い の で , こ の結 果 , 塩 基
結 合 に使 わ れ る ア ミノ 酸 位 置
が 決 ま る。
結 晶 構 造 の 座 標 を使 っ て 認
識 ヘ リ ッ ク ス の結 合 角 度 を 計
算 す る こ とが で き る (
図6) 。
同 一 の結 合 様 式
HTH)
(た と え ば
内 で は 角 度 が 非 常 に似
て い る。 つ ま りDNAに
結合
す る角 度 は結 合 様 式 に よ っ て
決 ま っ て い る と い う こ と に注
目 し て ほ し い 。 これ が 結 合 様
式 に特有 な立体 化学 ル ール が
存在 す る理 由で ある。
図4 認識 ヘ リッ クス上 の ア ミノ酸 位置
(a)PHの2,7,9,11,12位
を 塩 基 性 /親 水 性 ア ミ ノ酸 が 占 め リ ン酸 基 に結 合 す る。1,4,5,8位
興 味 深 いの はZnFで
,認 識
が塩 基 との結 合 に 使 わ れ る 。 結 晶 構 造 中 で リン酸 基 に結 合 す る ア ミノ酸 を下 線 で , 塩 基 に結 合
ヘ リ ッ ク ス の背 の β シー トの
す る ア ミノ酸 を 白 枠 文 字 で 示 す 。 図5aも
ど ち らのβ ス トラ ン ドが リン
参 照 。 (b)1型HTH蛋
白質 の2つ
の α ヘ リックス
(枠 で 示 す )の 配 列 を 示 す 。 太 字 は 共 通 して使 用 され て い る 疎 水 基 の 位 置 , 下 線 は 共 通 して 使 用
され て い る小 型 ア ミノ 酸 の位 置 を示 す 。Trpリ
プ レ ッサ ー は こ の枠 組 か ら は ず れ て い る こ と に
酸 基 に結 合 す るか に よ っ て
注 意 。 他 の 目THと 違 う タ イ プ の ア ミノ 酸 が 使 わ れ て い る位 置 を 白 枠 文 字 で 示 す 。 実 際Trpリ
ZnFが
プ レ ッサ ー の 認 識 ヘ リ ッ ク ス は1型HTHの
づ くか が 決 ま り,2つ の結 合 モ
それ と は異 な る (
図6b参
照 )。
ど ち ら のDNA鎖
に近
ー ドが 生 じ る (
図5d∼f) 。 実
に対 す る位 置 関 係 か ら生 ず る。 認 識 ヘ リ ック ス上 に は,
は これ がZnFに
(1)
塩 基 と直 接 結 合 す る位 置 , (2)リ ン酸 基 と結 合 す る
あ る。
コー ドが な い7)と疑 わ れ た理 由 の 一 つで
位 置 ,(3)
転 写 因 子 の 他 の 部 分 と結 合 す る位 置 な どが あ
る。 (2)
と(3)
に よ ってDNAに
対 す る位 置 関 係 が 決 ま り,
(1)
に よ って 結 合 特 異 性 が 決 まる。PH型
1602
chart)
認 識 ヘ リ ックス
立 体 化 学 ル ー ル は接 触 す るア ミノ酸 と塩 基 の 位 置 , そ
鎖 の リ ン酸
れ ぞ れ の 接 触 に使 用 さ れ る ア ミノ 酸 サ イ ズ な ど を 記 述
図5a) 。 この 結 果 , 認 識
す る もの で 地 図 の 形 に ま と め ら れ る (図7) 。 こ の ル ー
は5つ の 塩 基 性-親 水 性 ア ミノ 酸 でDNA両
基 と結 合 し て い る 。 (
図4a,
2. 立 体 化 学 地 図 (stereochemical Database Center for Life Science Online Service
DNA認
図5 転 写 因 子 の 構 造 とDNA結
識 コー ド
7
合
(a) プ ロ ー ブヘ リ ッ ク ス (PH)の2,7,9,11,12位 は リ ン酸 基 に 結 合 す る。 この 結 果1,4,5,8位 がDNA側
を 向 き, 塩 基 認 識 に使 用 さ れ
る。C: ク リ ック 鎖 ,W: ワ トソ ン鎖 。 (b)C4の0,3位
はCysが
占 めZn2+ に結 合 す る。6,7位 は 芳 香 族 ア ミノ酸 が 占 め , も う1本 の
ヘ リ ッ ク ス と疎 水 的 に 結 合 す る 。 これ らはDNAと
反 対 側 に位 置 す る。1,4,5,9位が塩 基 認 識 に使 わ れ る 。 (c)HTHの4,7,8位
は残 り
の蛋 白 質 部 を向 い て い て 疎 水 性 ア ミノ酸 が配 置 さ れ る。4位
6位 が 塩 基 認 識 に使 用 され る。 (d)∼ (f)ZnFのDNA結
は も う1本
の α ヘ リ ッ ク ス との 結 合 に 使 わ れ る 。DNAの
Xは 非 特 異 的 に しか 結 合 して い な い フ ィン ガ ー を示 す。 他 の フ ィ ン ガ ー がAとBに
結 合 の 違 い は フ ィ ン ガ ー の β シー トの どち ら側 がDNAリ
ル を理 解 す るた め に はア ミノ酸 とDNA塩
分 類 さ れ る こ と に 注 意 。 (e,f)A,Bタ イ プ のDNA
ン酸 基 に結 合 す るか に よ る。
基 の大 きさと
形 の 理 解 が 必 要 で あ る。
DNAか
側 を 向 く1,2,5,
合 様 式 を示 す 。 (d) 結 晶 構 造 座 標 を使 っ て計 算 した 認 識 ヘ リ ッ ク ス の傾 き。
核 酸 塩 基 の 大 き さ も同 様 に大 事 だ が4つ
で 分 類 とい うほ どの こ と もない 。Alaは
ら少 し 離 れ た 位 置 に ア ミ ノ酸 が あ る とす る。
T塩
基 に 結 合 す る。Valは
しかな いの
小 型 ア ミノ 酸 で
中 型 ア ミノ酸 でTも
し くは
こ の ア ミ ノ 酸 が 接 触 す る塩 基 の位 置 は ア ミノ 酸 側 鎖 の
C塩 基 に 結 合 す る。 とこ ろがAla-TはVal-Cと
長 さ に依 存 す る (
長 い 側 鎖 は よ り遠 く まで 届 く)。 短 か
き る ら しい10)
。Tの
す ぎ る側 鎖 はDNAに
の 余 分 な 炭 化 水 素 基 が う ま く補 え る の で あ る 。 す な わ
し この ア ミノ 酸 がDNAに
達 しない か もしれ な い。 一 方 , も
非 常 に近 い と大 きい ア ミノ酸
ちValはT塩
メチ ル基 に 相 当 す るCの
置 換で
空 間 をVal
基 と結 合 す る と き に は本 来 の 中 型 ア ミノ
は許 容 さ れ な い か も しれ な い (
単 に 空 間 が な い とい う
酸 と し て ,C塩 基 と結 合 す る と き に はAlaと
理 由 で )。 した が っ て立 体 化 学 地 図 上 の 接 触 はア ミノ酸
ア ミノ 酸 と し て 挙 動 す る こ とに な る。 同 様 の 二 重 性 は
サ イ ズ を特 定 し た う え で 記 述 され な けれ ば な らな い 。
疎 水 性 ア ミ ノ酸 全 般 に あ る と思 わ れ る。
ア ミ ノ酸 を そ の 側 鎖 の長 さ と体 積 に 従 って4分
類 (
小
型 , 中 型 , 大 型 , 芳 香 族 )す る (図3) 。 芳 香 族 は形 が
特 殊 で あ る が , 大 型 と考 え て よ い こ とが 多 い 。
同 じ小 型
3. アミ ノ酸サ イズ の重要 性
ア ミノ酸 サイズがDNA結
合 に重 要 である例 を補 足 す
1603
Database Center for Life Science Online Service
8
蛋 白質 核 酸 酵 素 図6 認 識 ヘ リ ッ ク ス のDNAに
Vol.39 No.10(1994)
対 す る傾 き
(a) 傾 き を定 義 す る パ ラ メ ー タ。DNAら
側 を 向 く疎 水 基 の 位 置 (HTHの 第4位
せ ん軸 は ヘ リ ッ ク ス に近 接 す る4塩 基 対 程 度 を 用 い て 決 定 す る。 ヘ リ ッ ク ス の 中心 は蛋 白 質
, も し くは そ れ に相 当 す る位 置 ) を使 っ て 定 義 す る 。 (b) 結 晶 構 造 座 標 を使 っ て 計算 した α と
β。 表1に 示 す結 晶構 造 中, 座 標 が 公 開 され た も の を使 用 し た 。P:PH,H:HTH,C2H2:A型ZnF,C6:Gal4。HTHの5例
た パ ッチ を形 成 す る こ とに 注 意 。PHとHTHのα
,β は 比 較 的 似 て い る がdが 異 な る。 認 識 ヘ リッ ク ス がDNAに
で 結 合 す る と両 端 の主 鎖 を使 っ た接 触 が起 こ る ;TrpR(N末
端 ),Gal4(C末
端 )。 この よ う に して 認 識 で き るDNA配
が接近 し
対 し垂 直 に近 い 角 度
列 の 種 類 は限 ら れ
て い る と考 え ら れ る。
る 。 転 写 因 子GLIは5つ
のZnFを
もつ 。5つ
似 た構 造 を もつ が そ の3つ はDNAに
同 じ よ う なZnFの
ともよ く
強 く結 合 しな い11)
。
あ る もの が そ もそ もDNAに
結合 し
な い な ら認 識 コ ー ドな ど存 在 し な い と思 うか も しれ な
いが, そ うで はない。
ZnFの
DNAに
認 識 ヘ リ ッ ク ス のN末
PH型
端 に比 し て
端 に,大 きい
端 に大 き な ア ミノ 酸 が 配 置 され る
強 く結 合 で きな い の で あ る (
図5dの
ィ ン ガ ーA,Bと
古 典 的 なHTH,
は小 型 ア ミノ 酸
(
図5c) 。I型
リ プ レ ッ サ ー ,Croな
の
ど) で
(
図4b) ,Ⅱ 型 のHTH(HNF3,
LexA) で は 中型 ア ミノ酸 が こ こに 配 置 さ れ る。Mybは
もつ 。 第3HTHがDNAに
す る の に 対 し第1, 第2は
一 つ は第1
, 第2で
Ⅱ強 く結 合
強 く結 合 しな い 。 この 理 由 の
は問 題 の 位 置 に 大 型 ア ミノ酸 が あ る
た め で あ ろ う。
端 に配 置 さ れ る の が 望 ま しい 。 そ うで
な い と, と くにN末
とDNAに
端 はC末
に は小 さい ア ミノ酸 がN末
ア ミノ 酸 がC末
HTH(
型HTHを3つ
非 常 に近 い (
図5d) 。 し た が っ て認 識 ヘ リ ック
ス 上DNA側
て , リ ン酸 糖 骨 格 に 非 常 に接 近 す る
悪 い フ ィ ン ガ ーXを
認 識 ヘ リ ッ ク ス の 第1位
良いフ
こ こ ま で の議 論 で 立 体 化 学 ル ー ル は “結 合 様 式 ” に
参 照 )。
特 有 で あ る と あ い まい に い っ て き た 。 こ の “結 合 様 式 ”
に はAsn,Val,Ile,
と は厳 密 に は特 定 の様 式 の 認 識 ヘ リ ッ ク ス の こ とで あ
Hisし か 見 つ か ら な い。 この す べ て か 中 型 ア ミノ酸 で あ
る。 こ の 位 置 はや は りN末
4. 転 写 因 子 の 全 構 造 と 認 識 ヘ リ ッ ク ス
る。 認 識 ヘ リッ クス の タ イプ は, 大 雑 把 に はDNA結
合
端 で 塩 基 に 近 く, 大 きす ぎ
モ チ ー フ と対 応 す る。 構 成 要 素 の ヘ リ ッ ク ス は 全 体 構
る ア ミノ 酸 は 許 容 で きな い 反 面 , 小 さ す ぎ る ア ミ ノ酸
造 か ら完 全 に は独 立 し え な い か らで あ る 。 しか し両 者
はDNAに
は必 ず し も1対1に
HTHの
1604
達 し な い の で あ ろ う。
認 識 ヘ リ ックス の第3位
・
はDNA結
合 に際 し
対 応 しな い 。PH型
認 識 ヘ リッ クス
は ジ ッパ ー そ の 他 種 々 の 蛋 白 質 構 造 (folding)に 見 い
Ⅳ
Database Center for Life Science Online Service
DNA認
図7 9
立 体化 学地 図
結 合の立体 化学 ルール
(
接 触 す る ア ミノ酸 , 塩 基 位 置, 使 用 さ
れ る ア ミ ノ酸 の サ イ ズ ) は地 図 の 形 に ま と め る こ とが で き る。
表2の
識コー ド
化 学 コ ー ドと こ の 立体 化 学 地 図 がDNA認
な 部 分 を構 成 す る 。 こ の地 図 はDNA主
識 コ ー ドの 主 要
溝 を蛋 白 質 側 か らス ケ ッ
チ し た も の で, 中 央 が 認 識 ヘ リ ック ス (
左 側 がN末
2本 のDNA鎖
を 図4a,
端 ), 上 下 が
(
下 側 が ク リ ッ ク鎖 , 上 側 が ワ トソ ン鎖 )で あ る 。c
図5aと
比 較 され た い。
図8 PHの 特 異 的 なDNA結
合
a∼eは 結 晶構 造 の ス ケ ッチ ,f∼jは 生 化 学 /遺 伝 学 に よ っ て 結 合
特 異 性 の 明 らか に され て い る例15,40∼42)
の 予 測 で あ る。 各 図 は,
図7cの
形 式 で 書 か れ て い る。 例 の う ちb,f,g,h,
」は ジ ッ パ
ー 蛋 白 質 ,c,iは ホ メ オ 蛋 白質 で あ る。Oは 特 異 性 の 高 い 接 触
(図3) を示 す。g,hのNnはAsnが
と を示 す
第1位
, 第2位
を占め るこ
(
本 文参 照 )。
だ さ れ る し, 特 定 の 蛋 白 質 構 造 , た とえ ば ウ ィ ン グ ヘ
リ ッ ク ス (winged helix)11)は1型 ,Ⅱ 型 のHTH認
ヘ リ ッ ク ス やPH型
識
認識 ヘ リックスを もち うる。 ホメ
オ ドメ イ ン は 蛋 白 質 構 造 と して はHTH(
も し くは ウ ィ
酸 塩 基 接 触 を ま とめ る。 これ ら の 結 晶 構 造 を も とに 図
7の 立 体 化 学 地 図 が つ くら れ た わ け で あ る。
認 織 ル ー ル の検 定 法 の第 一 は転 写 因 子 のDNAへ
の接
ン グ ヘ リ ッ ク ス ) で あ る け れ ど もそ の 認 識 ヘ リ ッ ク ス
触 が ル ー ル を使 っ て 矛 盾 な く説 明 で き る こ と を確 認 す
はHTH型
る こ とで あ る。 結 晶 構 造 の 決 定 され て い な い , しか し
で は な くPH型
で あ る8)
。
な が らDNA結
合 特 異 性 の 知 られ て い る 同 タ イプ の転 写
因 子 にル ー ル を応 用 して , これ らのDNA結
合 特異 性が
説 明 さ れ る こ と も確 認 す る 必 要 が あ る 。 実 際 多 くの 転
1. 塩 基 一ア ミ ノ 酸 接 触 の 予 想
本 節 で は 化 学 コ ー ドと立 体 化 学 ル ー ル を使 っ て 認 識
コ ー ドが 記 述 さ れ る こ と を 議 論 す る。
図8∼11に
実 際 に 結 晶 構 造 中 に 見 い だ され る ア ミノ
写 因 子 列 が ル ー ル に従 う こ とが 確 認 さ れ て い る
∼11) 。ZnFに
(
図8
は き わ め て 多 くの 例 が 報 告 され て い て,
残 念 な が ら こ こ に 記 述 す る ス ペ ー ス は な い (Suzuki,et
al.:未 発 表 )。
1605
10
Vol.39 No.10(1994)
Database Center for Life Science Online Service
蛋 白 質 核 酸 酵 素 図9 HTHの
特 異 的DNA結
合
a∼fは 結 晶 構 造 の ス ケ ッチ ,g∼kは
る 。Ⅱ 型 のHTHは
C4型
転 写 因 子 の み の 構 造 が 明 ら か に さ れ て い る例 の 予 測 , 他 は 生 化 学 /遺 伝 学 を基 に し た4)
予 測 であ
のHTH。
各 図 は 図7aの 形 式 で 書 か れ て い る。
● で 示 す 。他 は1型
の 例 を使 って も う少 し説 明 す る。 ス テ ロ イ ドホ
す る の だ が ,4つ の う ち の1つ
の位 置 (
転 写 因子 によっ
ル モ ン 依 存 性 に転 写 を 制 御 す る 一 群 の 転 写 因 子 が 知 ら
て異 な る ) が 小 型 ア ミノ 酸 に 占 め られ て
れ て い る。 グ ル コ コ イ ドレ セ プ タ ー12)とエ ス トロ ゲ ン
型 ア ミノ酸 で はDNAに
レ セ プ ター13)に 関 して はDNAと
れ な い た め , 一 見 異 な っ て み え た だ け な の で あ る。
の共結 晶構 造 が知 ら
れ て い る (図10c,d) 。 ま っ た く別 タ イ プ と思 わ れ た
転 写 因 子GATA1の
構 造 とDNA結
合 はNMRに
よっ
さ てC4型
(
お そ ら く小
届 か な い た め )塩 基 認 識 に使 わ
の立体 化学 地 図が わ か る と (
図10a)
れ を 結 晶 構 造 の 知 られ て い な い 他 のC4型
こ
転写因子,
て研 究 され て14)
, そ の 構 造 はホ ル モ ン レセ プ タ ー に 似 る
Tailless(TLL)
が ,DNA結
合 様 式 は ま っ た く異 な る と報 告 され た 。3
そ れ ら の 結 合 特 異 性 が 説 明 さ れ る こ と を確 認 で き る。
つ の 構 造 の 塩 基 一ア ミノ酸 接 触 を比 較 す る と共 通 の パ タ
生化学 や遺伝 学 実験 に よっ て立体 化 学 ル ールが 補 わ
ー ンが 浮 か ん で くる (
図10a)
。3つ の 転 写 因 子 は4ア
ミノ 酸 位 置 (1,4,5,9)
を使 っ て 等 価 な塩 基 位 置 を 認 識
1606
とHNF4に
れ る こ ともあ る。PH型
あ て はめ て (
図10e,f)
因 子 の なか に は第2位
のAsnが
そ の 特 異 性 に重 要 で あ る例 が あ る15)
(
図8g,e) 。PHの
識 コー ド
11
Database Center for Life Science Online Service
DNA認
図10 b∼dは
C4の
特 異 的DNA結
合
結 晶/NMR構 造 の ス ケ ッチ ,e,fは 予 測 例 で あ る 。aは 各 例 に 示 され た 接 触 の 統 計 を示 す 。 実 線 はb∼d,
接 触 を示 す 。 各 図 は図7bの
第2位
破 線 はe,fに み ら れ る
形 式 で 書 か れ て い る。
は リ ン酸 基 に結 合 す るの で これ は 一 見 ル ー ル に
反 す る。 こ れ は塩 基 に結 合 す る第1位
リ ン酸
同 様 に塩 基 に 結 合 し て い る も の と思 わ れ る。 結 晶 構 造
側 鎖 を 介 し て相 互 作 用 し
に も実 験 上 の 誤 差 が 含 まれ て い る。 実 験 的 に 決 ま る の
て い る とす る と理 解 で き る。 きわ めて似 た 例 (Gln-Gln)
は電子 密度分 布 図で あっ て,論 文 に報 告 されて い る図
がHTH構
造 中 に見 つ か っ て い る16)
。作 用 を介 して第
は , そ れ に あ う よ う に組 み立 て た “モ デ ル ” にす ぎ な
側 鎖 の 方 向 が 変 わ り結 合 特 異 性 が 変 化 す る
い こ と も忘 れ て は な らな い。
基 に 結 合 す る第2位
1位Asnの
のAsnが
のAsnと
な い 。 結 合 様 式 全 般 か ら考 え てE2やGCN4のAsnと
わ け で あ る。
434リ プ レ ッサ ー や434Cro(
図9a,d) の 第5位
型 ア ミノ 酸 は結 晶 構 造 中 でC2/C3塩
2. 結 晶/NMR構
造 と予 想の ずれ
因 子 ,Matα2( 図8d)
は原 報17)で はDNAに
基 に非 常 に 近 いが
通 常 の水 素 結 合 距 離 よ りは離 れ てい る 。 多 くのHTH蛋
立 体 化 学 地 図 と結 晶 構 造 とが 完 全 に は一 致 し な い 例
も あ る。PH型
の大
の 第1位
のAsn
向 い て い る と しか 記 載 され て い
白質 例 で 大 型 の第5ア
ミノ酸 とC2/C3塩
基 は特 異 的 な
対 とな っ て い る (図9)。 結 晶 構 造 を さ ら に 調 べ て み る
と この 側 鎖 と塩 基 の 間 に は水 分 子 もな く不 自 然 な “真
1607
12
蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.39 No,10(1994)
Glu( 第3位
)-C塩 基
(
図11
a,c) 接 触 は原 報18)に は記 載
さ れて い な いが立体 化学地 図
(図7)
に は示 さ れ て い る 。
NMRの
構 造 決 定 に も まだ
か な り 問 題 が 残 っ て い る。 ホ
メオ ドメイ ンのDNA結
合 は結
晶 解 析19)に よ って もNMR測
定20)に よ っ て も研 究 され たが ,
塩 基 一ア ミノ 酸 接 触 は両 者 で か
Database Center for Life Science Online Service
な り異 な っ て い る。 こ れ は
Lys/Argか
ら リ ン酸 基 へ の結
合 がNMRに
よ る構 造 決 定 で
考 慮 され て い ないた めであ ろ
う。 水 素 結 合 に関 与 す る 水 素
原 子 の シ グ ナ ル は 多 くブ ロ ー
ドニ ング を起 こしNOEを
で きな い こ と, 強 いNOEと
図11 ZnFの
結 晶構 造 の スケ ッチ
水
素 結 合 と は 必 ず し も一 致 しな
多 数 の 予 測 例 が あ るが こ こ に記 す ス ペ ー ス は な い (Suzuki,et al.:投
d,eの
測定
稿 準 備 中 )。 各 図 は 図7
形 式 で書 か れ て い る。
い こ と な ど も考 慮 す る必 要 が
あ ろ う。
3. 結 合 特 異 性 の 検 定
前 項 , 前 々 項 で は認 識 ル ー
ル で 転 写 因 子 と認 識DNA配
列 の 結 合 が ル ー ル を使 っ て説
明 で き る こ と を議 論 した 。 本
項 で はル ール の選 択性 を検定
し た い 。 両 者 は必 要 条 件 と必
要十 分 条件 の関係 にある。前
者 は あ るDNA配
列 と転 写 因
子 配 列 が う ま く調 和 す る こ と
を 示 す 。 しか し も しそ の よ う
なDNA配
列 が 多 数 あ れ ば,
結 局転 写 因 子 に選択性 が な い
こ と に な っ て し ま う。 特 定 の
図12
C4型
転 写 因 子の 結 合特 異 性
化 学 コ ー ド と立 体 化 学 ル ー ル を使 ってC4型
因 子 ア ミノ 酸 配 列 とDNA4塩
基 対 の “相 性 ” をス
コ ア す る こ とが で きる 。 ス コア (
横 軸 )は 基 本 的 に は 接 触 の数 を数 えて10倍 した も の で 結 合 エ
ネ ル ギ ー を反 映 す る も の で あ る。 縦 軸 は 同 点 を ス コ ア したDNA配
256あ る)。 結 晶 構 造 中 で確 認 され た配 列 を 矢 印 で 示 す 。
列 の 数 を示 す (
全 部 で44=
DNA配
列 を選 択 で きるため に
は そ の 配 列 が 他 と違 っ て 特 別
に “好 ま し く” み え な け れ ば
な ら な い 。 これ は転 写 因 子 配
空 状 態 ” に な っ て い る。 溶 液 中 で これ ら が 接 触 す る と
列 の な か に 特 異 性 の 高 い ア ミノ 酸 が 適 切 に矛 盾 な く配
考 え るの は 自然 であ ろ う。 同 様 の理 由 でZnF因
置 さ れ て い る か と い う問 題 で あ る 。
1608
子Zifの
DNA認
識 コー ド
13
この 問題 を議 論 す るた め,
簡単 な コ ン ピュー タプ ログラ
ム を デ ザ イ ン し た (Suzuki,
Yagi, 投稿 中 )。 この プ ロ グ ラ
ム は 与 え られ た転 写 因子 配 列
と3∼4塩
基 配 列 に対 して接
触 を 予 測 す る。 結 晶 構 造 決
定 , 未 決 定 の転 写 因 子 例
(図
8∼11) に対 し て 実 行 した 結 果
はきわ め て良好 で あ った。 こ
れ は ル ー ル 自体 に 矛 盾 が な い
こ とを 意 味 す る (前 項 , 前 々
Database Center for Life Science Online Service
項 参 照 )。
こ の プ ロ グ ラ ム を使 っ て 転
写 因 子 配 列 とDNA配
列 の相
性 の ス コ ア をつ ける。 ス コア
は 基 本 的 に は接 触 の 数 で 結 合
エ ネ ル ギ ー を反 映 す る もの で
あ る。DNA配
列 を シ ャ ッフル
し て ス コ ア が どの よ う に分 布
す るか , そ して 実 際 の 認 識 配
列 が そ の な か で 高 得 点 を得 る
か 調 べ て み る 。 多 くの 例 で ,
認 識 配 列 は最 高 得 点 を得 る が
時 に は 同 得 点 を と る 他DNA
配 列 が 存 在 す る と い う結 果 を
得た
(図12) 。 認 識 配 列 は通
常 , 上 位2∼3%
中 にあ り, 逆
に い う と こ の プ ロ グ ラ ム を使
っ て 残 りの97∼98%
の配 列 を
除 外 で き る の で あ る。 これ は
認 識 コ ー ド を使 っ て 高 い 確 率
で結合 部 位 の 予測 が で きる こ
と を示 す と と も に , 転 写 因 子
が 結 合 部 位 を選 択 す る機 構 が
説 明 さ れ た とい う こ とで あ る
図13 図12と
きる
結 合DNA配
列 の予 測
(
必 要 十 分 条 件 )。
同 じプ ロ グ ラ ム を使 用 し て制 御DNA配
(
両DNA鎖
列 内 の転 写 因 子 結 合 部 位 を 予 測 す る こ と が で
に 沿 って ス コ ア をプ ロ ッ トした )。 両 鎖 に 対 す る ス コ ア が 上 下 対 称 に プ ロ ッ
トされ て い る こ と に注 意 。 (a)TTKは2つ
のZnFを
実際 の認 識配 列 が必 ず し も
も つ。 ど ち ら か だ け で は 結 合 位 置 の 予 測
唯 一最 高 得 点 を とらない理 由
は難 しい が 両 方 の フ ィ ン ガ ー を使 う と予 測 は可 能 で あ る。 実 験 的 に確 認 され た 結 合 部 位 をバ ー
は 不 明 で あ る。 立 体 化 学 ル ー
で示 す 。 (b)THⅢAは9つ
の フ ィ ンガ ー を もつ 。 そ の うち の特 異 性 の 高 い フ ィ ン ガ ー (F2と
F3) の5SRNAプ
ロモ ー タ ー 内結 合 配 列 を 予測 した もの 。実 験 的 に 確 認 され た 結 合 部 位 を バ ー
ル も し くはス コ ア リングが ま
で示 す 。
だ 不 完 全 で あ る の か も しれ な
1609
Ⅴ
14
蛋 白質 核 酸 酵素Vol.39 No.10(1994)
DNA結
合 ル ー ル は特 異 性 が 高 く, 認 識 コ ー ドとよぶ の
にふ さわ しい 。
α ヘ リ ッ クス はDNAの
な い か ら,DNAの
主 溝 に沿 うだ けの 曲 率 を もた
片 側 に しか 接 触 で きな い。 これ は1
本 の 認 識 ヘ リ ッ ク ス が 認 識 で き る 塩 基 対 数 は5以 下 (3
∼5)で あ る こ と を意 味 す る 。 生 物 の 転 写 シ ス テ ム を制
御 す る た め に 何 塩 基 対 識 別 で き る 必 要 が あ るか を議 論
す る こ と は や さ し くな い 。 経 験 的 に は1本
の認識 ヘ リ
ック ス で は不 十 分 で あ り, 多 くの 転 写 因 子 は2∼3本
の
特 異 性 の 高 い 認 識 ヘ リ ッ ク ス を もっ て い る。2本 の認 識
Database Center for Life Science Online Service
ヘ リ ック ス はDNA上
に タ ン デ ム に並 べ る こ とも, 対 称
に置 く こ と もで き る。
タ ン デ ム 型 の 代 表 はZnFで
あ る 。 フ ィ ン ガー が 結 合
す る塩 基 対 数 と, 結 合 部 位 間 の 塩 基 対 数 は フ ィ ン ガ ー
のA/Bタ
イプ に依存 す る (
図14a) 。Aフ
4塩 基 対 と結 合 し, 隣 のAフ
ィンガ ー は
ィ ン ガ ー と1塩 基 対 を 共
有 し な が ら3塩 基 対 ご と に 並 ぶ の に 対 し,Bフ
ィンガ
ー は5塩 基 対 と結 合 し4塩 基 対 ご と に並 ぶ ら しい 。
ZnFを
無 限 数 同 一 のDNAに
あ ろ う。 これ はDNAの
並 べ る こ とは不 可 能 で
構 造 周 期 とDNA結
合 単 位 の構
造 周 期 を 完 全 に一 致 させ る こ とが 難 しい ためで ある。GLI
の5フ
ィ ン ガ ー の う ち 強 く結 合 して い る の は2つ
にす
ぎな い 。 実 際 , 多 くの マ ル チ フ ィ ン ガ ー 因 子 の結 合 特
異 性 はそ の う ちの2∼3のZnFの
図14
る (TFⅢAの
スパ ー シ ン グル ー ル
(a) タ ンデ ム 型 の 例 (ZnF)
。ZnFの カ バ ー す る 塩 基 対 数 は その
A/Bタ イ プ に よ る。 異 な る タ イ プ の フ ィ ン ガ ー2つ が カ バ ー す
る塩 基 対 を 示 す 。TTK,GL1は
結 晶 構 造 ,MBPは
結 合特 異 性か
例 , 図13参
対 称 型 の典 型 は1型
結 合特 異性で説 明で き
照 )。
のHTH蛋
白 質 で あ る。 これ ら
は ホ モ ニ 量 体 を形 成 す る 。 筆 者 は こ れ ら の認 識 ヘ リ ッ
らの 予 測 例 で あ る。 斜 線 は接 触 す る 塩 基 を 示 す。 (b) 対 称 型 の
ク ス の ロ ー カ ル なDNAら
例 (1型HTH) 。1型HTH蛋
似 て い る と述 べ た (図6) 。 と こ ろ が 教 科 書 (
文 献21の
のDNA配
白質 は二 量 体 を形 成 して ,2回 対 称 性
列 を 認 識 す る 。2つ の 直接 結 合 部 位 間 の 塩 基 対 (
スペー
シ ン グ), 認 識 ヘ リ ッ ク スN-C方
向 の2回
対 称 軸 に対 す る 向 き
(direction)は二 量 体 形 成 の あ り方 , つ ま り蛋 白 質 全 体 の 構 造 で
決 ま る 。 こ れ らの 差 もDNA配
列 の 識 別 に 使 わ れ る。
図7.27) に はHTH蛋
せ ん軸 に対 す る傾 きは非 常 に
白 質 問 でDNAに
結合 す る角度
は異 な る と書 か れ て い る。 見 解 の 相 違 が 生 じる原 因 は,
後 者 が ス ペ ー サ ーDNA(
認 識 ヘ リ ッ ク ス の結 合 す る4
塩 基 対 の 間 の塩 基 対 )の 違 い を 無 視 し て る た め で あ る。
い。 あ る いは転 写 因 子 は実 際 に複 数 のDNA配
列 を同 程
度 に 選 択 す る の か も しれ な い。
この プ ロ グ ラム はDNA認
HTH蛋
白 質 の 個 々 の 認 識 ヘ リックス は ロー カルなDNA
に同 じ よ う な 角 度 で 結 合 す る。 し か し 二 量 体 と グ ロ ー
識 ル ー ル が 結 合DNA配
列
バ ル なDNAと
の 結 合 はス ペ ー サ ーDNAの
塩 基対 数 と
を 予 測 で き る ほ ど特 異 的 で あ る こ と を 示 し て お り, 実
2回 対 称 軸 に相 対 的 な認 識 ヘ リ ッ ク ス のN-C方
際 この プ ロ グ ラム を使 っ て結 合DNA部
っ て 変 わ り う る。 こ の2つ
位 を制 御DNA
配列 内 に同定 す る ことが で き る (
図13) 。 し た が っ て
1610
の パ ラ メ ー タ はHTH蛋
質 問 で変化 して い る (
図13b) 。
向 によ
白
DNA認
これ は同 様 に ホ モ ニ 量 体 を形 成 す る ジ ッ パ ー 蛋 白質
15
の ア ミ ノ 酸 の 組 合 せ 数 は天 文 学 的 で あ る か ら, そ の な
が 同 じ ス ペ ー シ ン グ の 二 量 体 しか 形 成 で き な い の と対
か に は 現 在 知 られ て い な い 特 別 な ル ー ル
照 的 で あ る。 ジ ッパ ー 蛋 白 質 が 同 じ二 量 体 形 成 因 子 (ジ
ミノ 酸 間 相 互 作 用 な ど) が あ る か も しれ な い 。 制 限 酵
ッパ ー )を 使 う の に対 し,HTH蛋
素 の よ う な 別 の タ イ プ の核 酸 認 識 に ど こ まで 同様 の 理
白質 は それ ぞ れ 異 な
る構 造 因 子 を 介 し て 二 量 体 を形 成 す る。 ジ ッ パ ー 蛋 白
(た と え ば ア
論 が 通 用 す る か とい う論 議 もお も し ろ いか も しれ な い 。
質 の 認 識 ヘ リ ッ ク ス (PH) の結 合 特 異 性 が 非 常 に高 い
し か し な が ら立 体 化 学 ル ー ル と化 学 コ ー ド と い う枠 組
の に対 し,Ⅰ 型HTHの
み は 大 き く変 化 す る こ と は な い と信 じ る。
認 識 ヘ リ ック ス の 結 合 特 異 性
は低 い (ス コ ア で 上 位5∼6%
)。 この 甘 さ は スペ ー シ ン
現 在 研 究 さ れ て い る転 写 因 子 数 は千 の 単 位 で そ の 数
グ の 差 で 補 わ れ て い る と考 え られ る。 認 識 ヘ リ ッ ク ス
は さ ら に 増 加 しつ つ あ る。 一 人 の研 究 者 が 簡 単 に , 全
が ま っ た く同 じで も二 量 体 形 成 が 異 な れ ば別 の ス パ ー
体 像 を つ か め る状 況 で は な い 。 友 人 のY氏
シ ング塩 基 対 数 が 要 求 され結 合DNA配
Database Center for Life Science Online Service
識 コー ド
列 を 区別 で きる
の 名 前 を 聞 くだ け で
は転 写 因 子
(
歴 史 の 年 代 を棒 暗 記 さ せ られ た
か らで あ る。 こ れ 以 外 に も対 称 型 とタ ン デ ム 型 を 組 み
苦 い 記 憶 が あ る の か )虫 酸 が走 る そ うで あ る。 実 際 , 状
合 わ せ る ホ ル モ ン レ セ プ タ ー の よ うな興 味 深 い 例 が あ
況 の 混 乱 は転 写 因 子 の 不 規 則 な名 前 を見 た だ けで も わ
る。
か る。 同 一 の転 写 因 子 に5つ 別 名 が あ る ぐ らい は驚 く
生 物 の転 写 系 に お け る 核 酸 と蛋 白質 の コ ミ ュニ ケ ー
シ ョ ン の体 系 は 言 語 の 体 系 の よ う に組 み 立 て られ て い
る 。 言 語 に お け る 語 彙 (lexicon)に相 等 す る の が 化 学
に値 し な い 。 第3462番
目の 転 写 因 子 を研 究 す る の も大
事 だ が , 別 の ア プ ロ ー チ も必 要 で あ る 。
現 在 の生 物 学 の状 況 は19世
紀後 半, 進化 論前夜 の博
コ ー ドで あ る。 化 学 コー ドさ え使 えれ ば た と え ば転 写
物 学 の状 況
因 子 の結 合 特 異 性 を変 え る実 験 ぐ らい は組 め る 。 よ り
技 術 的 発 展 に よ っ て 今 まで 不 可 能 だ っ た 高 質 の情 報 が
高 次 の理 解 の た め に は構 文 論 (syntax)が 必 要 と な る 。
大 量 に得 られ る よ う に な っ た。 生 物 物 理 学 の 発 展 に よ
最 も基 本 的 な 構 文 論 が 立 体 化 学 ル ー ル で あ る。 これ に
っ て 年 間 決 定 さ れ る 蛋 白 質 構 造 の 数 は200に
よ っ て4つ
と して い る 。 月 ∼ 金 まで 研 究 室 で 雑 誌 を開 け ば1日1
程 度 の 言葉
(ア ミノ酸 ) を組 み 合 わ せ て 文
(
活 気 と混 乱 ) に似 て い る 。 分 子 生 物 学 の
達 しよ う
(
認 識 ヘ リ ッ ク ス )を つ くる 方 法 が わ か る。 文 に は い く
つ 新 構 造 が 発 表 さ れ て い る (!!)とい う割 合 で あ る 。 こ
つか タ イプ
れ ら を 背 景 と し て 生 物 学 は 質 的 に転 換 す る で あ ろ う。
(
異 な る タイ プの認識 ヘ リックス) があ っ
て こ れ ら を 組 み 合 わ せ て 文 章 をつ くる文 法 が ス ペ ー シ
ン グルー ルで あ る。
RNAワ
博 物 学 が 博 物 学 で 終 わ ら なか った よ う に21世
紀 の生
物 学 を 予 想 す る こ と は不 可 能 に 近 い 。 ダ ー ウ ィ ン 自身
ー ル ドに 代 表 され る よ うに核 酸 の重 要 性 ば か
り強 調 さ れ る が ,4つ の 塩 基 と20の
ア ミノ酸 とい う構
成 要 素 は転 写 系 全 体 を大 き く制 御 して お り (ど の よ う
で す ら自 らを生物 学者 とよぶ こ とはな か った。彼 は自
ら を 博 物 学 者 と定 義 して い た の で あ る。
本 稿 の 内 容 を さ らに理 解 す る た め に は,Suzuki,Yagi
な遺 伝 子 制 御 が 可 能 か ), 原 始 細 胞 の誕 生 も この立 場 か
(Proc.Natl.Acad.Sci.USA:
ら議 論 され るべ き で あ る と筆 者 は信 じ て い る。
も に お 読 み くだ さ る こ と を お す す め す る。
投 稿 中) を文 献8,9と
本 稿 の 中 の 結 合 角 度 の計 算 に関 す る部 分 はMark
と
Gerstein博
士
(現 :ス タ ン フ ォ ー ド大 )との共 同研 究 , コ ン ピ ュー タ プ ログ ラ ム
おわ りに
本 稿 で はDNA認
識 コー ドが存 在 す る こ と,
に 関 す る部 分 は八 木 直 人 博 士 (東 北 大 医 学 部 ) との 共 同研 究 に よ
る こ と を記 し ます 。
そ れ が 化 学 コ ー ド と立 体 化 学 地 図 と して 総 括 で き る こ
と を議 論 し た 。 これ は, 認 識 コ ー ドの す べ て が 書 きつ
ケ ン ブ リ ッジ で オ フ ィス を共 有 して い るCyrus
Chothia博
ま た, 筆 者 自身 が 悩 み な が ら少 しずつ 前 進 した この1年
く され た こ とを 主 張 す る もの で は ない。 新 しいDNA結
士に
感 謝 し ます 。 氏 は こ の仕 事 が ま だ どう進 むか わ か らな か っ た と き,
あ ま り, 常
に そ の 価 値 を理 解 し そ の正 当性 を確 信 して くれ ま し た。
合 様 式 が 見 つ か れ ぼ そ の様 式 の 立 体 化 学 地 図 が 必 要 と
な る。 β シー トを使 っ たDNA識
低 い で あ ろ うが , 副 溝
別 や, 特 異 性 はず っ と
(minor groove)
を使 っ た識 別
も議 論 す る こ とが で きる 。 水 分 子 を介 したDNA転
写
因 子 の 結 合 は ま だ あ ま り よ く理 解 され て いな い 。4位 置
文
献
1)Seeman,N.C.,Rosenberg,J.M.,Rich,A:Proc.
Natl.Acad.Sci.USA,73,804-808(1976)
1611
16
蛋 白 質 核 酸 酵素 Vol.39
No.10(1994)
2)Pabo,C.O.,Sauer,R.T.:Ann.Rev.Biochem.,
23)Hegde,R.S.,Grossman,S.R.,Laimins,L.A.,
53,293-321(1984)
Sigler,P.B.:Nature,359,505-512(1992)
3)Matthews,B.W.:Nature,335,294-295(1986)
24)Ferre-D'Amar?,A.R.,Prendergast,G.C.,Ziff,
4)Lehming,N.,Sartorius,J.,Kisters-Woike,B.,
E.B. ,Burley,S.K.
von Wilcken-Bergmann,B.,Muller-Hill,B:in
Nucleic
Acids
and
Molecular
Biology
5 (eds.
Eckstein,F.,Lilley,D.M.J.),pp.114-125,
Springer-Verlag,Heidelberg(1991)
27)Jordan,S.R.,Pabo,C.O.:Science,242,893-899
,:Proc.Natl.Acad.
7
(1988)
Sci.USA,90,2256-2260(1993)
28)Anderson,J.E.,Ptashne,M.,Harrison,S.C.:
Nature,326,846-852(1987)
:EMBO J.
29)Aggarwal,A.K.,Rodgers,D.W.,Drottar,M.,
,12,3221-3226(1993)
Ptashne,M.,Harrison,S.C.:Science,242,899-
9)Suzuki,M.:Structure,2,317-326(1994)
10)Konig,P.,Richmond,T.:J.Mol.Biol.,233,139Database Center for Life Science Online Service
.
,13,180−189(1994)
(1991)
,Berg,J.M。
1707(1993)
907(1988)
154(1993)
30)Wolberger,C.,Dong,Y.,Ptashne,M.,Harrison,
S.C.:Nature,335,789-795(1988)
11)Clark,M.L.,Halay,E.D.,Lai,E.,Burley,S.
K.:Nature,364,412-420(1993)
31)Mondrago,A.
12)Luisi,B.F.,Xu,X.W.,Otwinowski,Z.,Freed-
,Harrison,S.C.
:J.Mol.Biol.,
219,321-334(1991)
man,L.P.,Yamamoto,K.R.,Sigler,P.B.:
32)Rodgers,D.W.,Harison,S.C.:Structure,1,227-
Nature,352,497-505(1991)
239(1993)
13)Schwabe,J.W.,Chapman,L.,Finch,J.T.,
33)Shultz,S.C.,Shields,G.C.,Steitz,T.A.:Sci-
Rhodes,D.:Cell,75,567-578(1993)
ence,253,1001-1007(1991)
14)Omichinski,J.G.,Clore,G.M.,Schaad,O.,Fel-
34)Brennan,R.G.,Roderick,S.L.,Takeda,Y.,
senfeld,G.,Trainer,C.,Appella,E.,Stahl,W,S.
Matthews,B.W.:Proc.Natl.Acad.Sci,USA,
J.,Gronenborn,A.M.:Science,261,438-446
87,8165-8169(1990)
(1993)
35)Feng,J.-A.,Johnson,R.C.,Dickerson,R.E.
Science,263,348-355(1994)
15)Suckow,M.,vonWilcken-Bergmann,B.,
M廿11er-Hill,B.
:EMBO J.
36)Fairall,L.,Schwabe,J.,Chapman,L.,Finch,J.
T.,Rhodes,D.:Nature,366,483-487(1993)
,12,1193-1200(1993)
16)Pabo,C.O.,Aggarwal,A.K.,Jordan,S.R.,
Beamer,L.J.,Obeysekare,U.R.,Harrison,S.
37)Marmorstein,R.,Carey,M.,Ptashne,M.,Har-
C.:Science,247,1210-1213(1990)
rison,S.C.:Natacre,356,408-414(1992)
17)Wolberger,C.,Vershon,A.K.,Liu,B.,Johnson,
38)Otwinowski,Z.,Shevitz,R.W.,Zhang,R.-G.,
A.D.,Pabo,C.O.:Cell,67,517-528(1991)
Lawson,C.L.,Joachimiak,A.,Marmostein,R.
18)Pavletich,N.P.,Pabo,C.O.:Science,252,809-
Q.,Luisi,B.F.,Sigler,P.B.:Nature,335,321-
817(1990)
329(1988)
19)Kissinger,C.R.,Liu,B.,Martin-Blanco,E.,
39)Lawson,C.L.
Kornberg,T.B.,Pabo,C.O.:Cell,63,579-590
(1990)
:Nature,366,178-182
40)Hu,J.C.,Sauer,R.T.:in
Molecular
Structure,Garland
Publishing,New
London(1991)
22)Ellenberger,T.E.,Brandl,C.S.,Struhl,K.,
Harrison,S.C.:Cell,71,1223-1237(1992)
Nucleic
Acids
and
6 (eds.Eckstein,F.,Lilley,
Heidelberg(1992)
,9,3085-3092(1990)
21)Branden,C.,Tooze,J.:Introduction
Biology
D.M.),pp.82-101,Springer-Verlag,Berlin-
Affolter,M.,Gehring,W.J.,W?thrich,K.:
EMBO J.
,Carey,J.
(1993)
20)Otting,G.,Qian,Y.Q.,Billeter,M.,Muller,M.,
1612
:EMBOノ
Berkower,C.,Pabo,C.O.:Nature,254,267-270
7) 7) Pavletich,N.P.,Pabo,C.0.:Science,261,1701-
8)Suzuki,M.
G.,Burley,S.K.
26)Clarke,N.D.,Beamer,J.L.,Goldberg,H.R.,
5)Klevit,R.E.:Science,253,1367-1393(1991)
6)Desjarlais.J.R.
:ハJature,363,38-45(1993)
25)Ferre-D'Amar?,A.R.,Pognonec,P.,Roeder,R.
to Protein
York
and
41)Suckow,M.,von
Wilcken-Bergmann,B.,
Muller-Hill,B.:Nucl.Acids
Res.,21,2081-2086
(1993)
42)Treissman,J.,Harris,E.,Wilson,D.,Desplan,
C.:BioEssays,14,145-150(1992)
Fly UP