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アフガニスタン事業 第一フェーズ(2003∼2005)事業評価

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アフガニスタン事業 第一フェーズ(2003∼2005)事業評価
アフガニスタン事業
第一フェーズ(2003∼2005)事業評価
社団法人シャンティ国際ボランティア会
2006 年 12 月
はしがき
シャンティ国際ボランティア会(SVA)は、2001 年 9 月 11 日にアメリカで起こった同時多発テロ事
件を機に始まった米英軍によるアフガニスタンへの空爆以来、国内への緊急救援活動を開始した。
当初はパキスタンのペシャワールからの食糧支援が中心であったが、2002 年に入って東部ナンガ
ハール州のジャララバード市に拠点を移し、これまで復興のための教育支援活動を続けてきた。
東南アジアでの活動が主であった SVA にとって、イスラーム国家でかつパシュトゥン人を中心と
するアフガニスタンの多民族地域という活動地は、未知の世界への挑戦であった。しかも、治安上
も危険度がかなり高い地域であることから、現地に派遣されるスタッフにとっては緊張の連続であっ
た。紛争後の復興支援という意味では、カンボジアにおける経験がアフガニスタン支援と類似する
部分が多いが、自然環境や社会環境も全くといっていいほど異なり、特にイスラーム原理主義に基
づくタリバーン政権後の教育支援ということで、困難な点が多々あった。
本報告書は、SVA が 2001 年末からアフガニスタンに対する緊急食糧支援活動を実施した後、
正式にカルザイ暫定政権から許可を得て 2003 年 1 月から 2005 年 12 月までの 3 年間を第一フェ
ーズとして、東部ナンガハール州を中心に実施した図書館事業の事業評価報告書である。
ジャララバード市にアフガニスタン事務所を開設して以来、SVA の第一フェーズ事業としては、
図書館活動のほかに、住民参加型の学校建設事業も行われた。双方の事業は学校教育や地域
における社会教育とも関連しているものであるが、今回の評価活動はその中でも特に絵本などを
活用して進めている図書館活動の中で、子どもたちへの教授法の効果をなるべく考察したいという
観点から行われた。
もちろん、今回の評価活動はあくまでも内部評価であり、作業に費やす時間や予算、マンパワー
の問題などの限界もあって、充分な評価ができたとは言い切れない。しかし、内部とはいえ、カンボ
ジアで同じ図書館事業を実施してきたスタッフの客観的な視点も取り入れ、SVA 内部においてもな
るべく自身の能力強化や情報シェア、相互交流にも役立つように心がけた。
2006 年は、同時多発テロ事件が発生してから丸 5 年が過ぎた年であり、地域的にはナンガハー
ル州に限られているものの、アフガニスタンという国そのものの変化を観察する上でも節目の年で
あったと思う。今日も、度々自爆テロなどの問題は続いており、紛争から復興に向けてのアフガニス
タンの道のりはまだまだ険しいが、これまで試行錯誤しながら継続してきた図書館活動が、少しず
つでもアフガニスタンの人々に受け入れられ、自らの事業として地域に根付いていってくれることを
期待したい。アフガニスタンでの図書館事業は、まだ緒に就いたばかりである。
2006 年 12 月吉日
シャンティ国際ボランティア会
専務理事
秦
辰也
目次
第1章
アフガニスタン概要 ........................................................................................... 2
1-1
基礎データ ................................................................................................................ 2
1-2
歴史 .......................................................................................................................... 2
1-3
ナンガハール州概況 ................................................................................................. 3
1-4
教育事情 ................................................................................................................... 4
第2章
事業の概要 .......................................................................................................... 6
2-1
2003 年度 .................................................................................................................. 6
2-2
2004 年度 .................................................................................................................. 7
2-3
2005 年度 .................................................................................................................. 9
第3章
評価方法 ........................................................................................................... 11
3-1
評価の目的 .............................................................................................................. 11
3-2
評価方法 ................................................................................................................. 12
3-3
各データの詳細....................................................................................................... 13
3-4
調査団構成 .............................................................................................................. 13
3-5
評価日程 ................................................................................................................. 14
第4章
評価結果
∼学校建設事業∼ ........................................................................... 14
4-1
効率性 .................................................................................................................... 14
4-2
目標達成度 .............................................................................................................. 18
4-3
インパクト .............................................................................................................. 19
4-4
妥当性 ..................................................................................................................... 19
4-5
持続可能性 .............................................................................................................. 21
4-6 学校建設事業評価のまとめ ...................................................................................... 22
第5章
評価結果
∼図書館事業∼ ............................................................................... 22
5-1
効率性 ..................................................................................................................... 22
5-2
目標達成度性 .......................................................................................................... 27
5-3
インパクト .............................................................................................................. 29
5-4
妥当性 ..................................................................................................................... 32
5-5
自立発展性 .............................................................................................................. 34
5-6
図書館事業評価のまとめ ........................................................................................ 35
第6章
結論、提言、教訓 ............................................................................................. 36
6-1
結論 ........................................................................................................................ 36
6-2
提言 ........................................................................................................................ 37
6-3
教訓 ........................................................................................................................ 39
1
第1章
1-1
アフガニスタン概要
基礎データ
国名:
アフガニスタン・イスラム共和国
政府:
共和国政府
立地:
南西アジア、パキスタン北西部、イラン東部、中国西部
地域区分:
領土(面積)
:
アジア
総面積:647,500 平方 km(日本の 1.7 倍)
気候:
乾燥、半乾燥地帯、寒い冬と暑い夏
標高:
最低点:アム・ダリヤ
人口:
27,755,775 人(2002 年 7 月)
乳児死亡率:
144.76 人/1000 人(2002 年)
誕生時余命:
全体:46.6 歳、男:47.32 歳、女:45.85 歳
女性一人当たりの出産
率:
民族:
258m、最高点:ノシャーク 7,485m
5.72 人/1 人(2002 年)
パシュトゥン人 44%、タジク人 25%、ハザラ人 10%、ウズ
ベク 8%、少数(トルクメン、バルーチ、その他)13%
スンニ派イスラム教徒 84%、シーア派イスラム教徒 15%
宗教:
パシュトゥン語 35%、ダリ語 11%、30 の少数言語 4%
言語:
(読み書きできる 15 歳以上の人口)36%、男:51%、女:
識字率:
人口一人当たり GDP:
21%
購買力平価
250 ドル
(2004 年)
(データ元:在日アフガニスタン大使館)
1-2
歴史
1919 年に第三次英ア戦争を経て、英国から独立宣言をして以降、アフガニスタンは 30 年
以上に及ぶ政情不安・紛争・内戦などの混乱に陥った。ソ連侵攻期(1979 年-1992 年)には、
共産主義政権下、アフガニスタンの国内の統治が試みられたが、政情不安のため、ソ連が
軍事介入に踏み切った。一方で、反ソ連派であったムジャヒディーンを裏で米国が支援す
るなど米ソ連代理戦争と発展した。1
1989 年にジュネーブ和平協定に従ってソ連が撤退し
た後のアフガニスタンは、国際社会の関心を失うと同時に、国内ではムジャヒディーンた
ちが統一政治体制を取られないまま、内戦へと突入した。この間、アフガニスタン全土で
内戦により治安は悪化し、社会基盤は壊滅状態となり、多くの人々が近隣国へ難民として
1
国レベルの平和構築アセスメント(PNA)-平和構築に係る情報収集・分析-、関口正也、
独立行政法人国際協力機構、(2004)p9.
2
逃れていった。こうした中、1996 年にタリバンが全土の 8 割を掌握し、暫定政権としてタ
リバン政権を発足した。タリバン政権発足後は、一時的な治安回復もみられたが、反タリ
バン政府による反撃が続く一方で、女性の人権侵害をきっかけに国際社会から非難を受け
た。2001 年にはバーミヤンの大仏破壊や米国貿易センタービルなどの同時多発テロを引き
起こしたといわれるテロ組織アル・カーイダをタリバン政権が援護しているとし、米国主
導による軍事攻撃が行われた。この際難民の数は再び増加を辿り、同年末には 350 万人を
超えたといわれている。2
2004 年 10 月にはアフガニスタン史上初の大統領選挙が行われ、カルザイ大統領率いる政
権が発足し、アフガニスタン・イスラム移行政府を引き継いだ。2004 年 12 月には新憲法が
発布された。新憲法に基づいて、2005 年 9 月には議会選挙が行われ、議会が発足された。
新政府は、治安回復、インフラ整備、ケシ栽培撲滅などに重点を置きながら、各セクター
の開発への意欲を見せている。
1-3
ナンガハール州概況
ナンガハール州は、アフガニスタン首都カブールより東へ約 200 キロに位置する。ナン
ガハール州の州都であるジャララバード市は、アフガニスタンの東部 4 州(ナンガハール
州、クナール州、ラグマン州、ニューリスタン州)の中心的な都市でもある。パキスタン
と国境を接するナンガハール州は、古くから流通の町として発展してきた。21 郡から成り
立ち、約 1,089,000 人3(ただし、帰還難民など流動的な人数は含まれていないとみられる)、
その人口の 8 割はパシュトゥン人で占め、そのほかにパシャイ族やシーク教徒などが少数
派として見られる。パシュトゥン人コミュニティは様々な部族で構成されており、今日で
も部族内の掟により地域ごとに統率されている。ナンガハール州では、ムジャヒディーン
の対ソ連戦争、そしてその後の内乱により、多くの人々が隣国であるパキスタンへと難民
として流出した。タリバンの時代には比較的治安は安定していたといわれ、一部の難民が
帰還し、2001 年の米軍空爆後には 40 万人以上の難民が帰還した報告されている。4
ナン
ガハール州内のほとんどの学校は、戦争・内乱で破壊され、数校がマドラッサ(宗教学校)
として、開校した以外は閉鎖されていた。地方の村落では、教員が難民として流出したま
まで、小学校低学年程度しか終了していない村人が教壇に立っているところも少なくない。
パシュトゥン地域は、文化上の特徴も際立っており、女性に対しての生活上の規制が強い。
女性の結婚年齢も低い上、成人女性が一人で外出することは困難である。女性の社会進出
は、市内ではほとんど皆無に等しい。タリバン時代には一切禁止された女性の社会進出で
あるが、現在では、教員や医者、看護婦など一部の職種においては認められている。
軍閥の解体や民兵の武装解除と社会復帰はナンガハール州の治安を左右するものである。
2
同上
Afghanistan Statistical Yearbook, Transitional Islamic Government of Afghanistan,
Central Statistics office (2003)
4 UNHCR 発表(2003)
3
3
また、旱魃の激しいナンガハール州で唯一換金作物であった芥子栽培は軍閥の資金源とも
言われ、その撲滅が最優先課題である。教育の復興は、治安の安定のためにもニーズが高
い。
1-4
教育事情
1-4-1 アフガニスタンの教育事情
近代のアフガニスタンでは、1929 年にアフガニスタン国王となったナディル・シャーの
努力によって教育への関心が高まり、1931 年に発布された憲法では、政府の責任において
すべての子どもに初等教育を与えることが明記された。5
しかし、その後、政情不安によ
り、初等教育は十分に普及しなかった。1975 年の成人非識字率は 88%と推定され、1960 年
代から 70 年代にかけての小学校就学者の平均年間増加率は 13%だといわれている。6
ソ
連の軍事侵攻、ムジャヒディーンによる内戦により、ほとんどの学校が破壊され、占拠さ
れた。タリバン時代には、女子の就学が原則禁止された。この間、知識人や教育者の暗殺
が相次いだことから、多くの知識人は諸外国へと難民化した。
2001 年末、タリバン政権の崩壊し暫定政権の樹立後、ユニセフの支援により教育省が実
施した「バック・トウー・スクール」キャンペーン(以下、BTS キャンペーン)が起爆剤と
なり、2002 年から 2005 年の間に約 400 万人(うち 3 分の1が女子児童)の子どもが学校へ
登録したほか、教員数も 10 万人を超えたと報告された。7
一方で、学校環境整備や教員研
修、カリキュラムの改訂など教育分野における課題は山積している。全国約 7600 校の公立
校の中で、約 3 分の 2 の校舎が何かしらのダメージを受けており、3 分の 1 の学校で校舎が
ないため、子ども達は、木陰での青空学級、テントやモスクなどで勉強している。8 また、
半数の学校では教員が不足しており、教員の資格を持つものの、高等教育を受けている教
員は全体の 15%以下9であり、特に、地方では資格を持つ教員の確保が困難となっている。
カリキュラムの改訂が進まず、30 年前のカリキュラムを使っている地域もあり、副教材は
皆無に等しい。
2005 年度に教育省が発表した重点項目では、教育政策の改善、インフラ整備、カリキュ
ラム及び教科書の見直し、教員養成、設備向上、ノンフォーマル教育の改善などを上げて
いる。特に、カリキュラム・教科書の見直し及び教員養成では、教育の質的向上を掲げて
おり、暗記法が主流であるアフガニスタンの教育現場を根本的に見直すものだといえる。10
アフガニスタンの教育―20 世紀の教育とアフガン社会―、サイフ R.サマディ(内海成治
訳・解説)、
(2004)p2.
6 同上
7 ユニセフ”Media Release” (2004)
8 教育省発表 (2004)
9 3 と同様
10 Education and Vocational Training Public Investment Programe-National
Development Budget SY1384-1387-,Government of Afghanistan, (2005)
5
4
【アフガニスタンのカリキュラム】
* ナンガハール州ジャララバード市内の学校例(1 週間の科目数)
Subject
Grade
1
2
3
4
Remark
5
6
Quran
2
2
2
2
2
2
宗教
Religious Education
2
2
2
2
2
2
宗教
Pashuto
8
8
8
6
6
6
国語
Dari
0
0
0
3
3
3
国語
English
0
0
0
3
3
3
外国語
Mathematics
5
5
5
5
5
5
算数
Life 0
0
0
2
2
2
社会
History and Geography
0
0
0
2
2
2
社会
Life Skills
2
2
2
0
0
0
道徳
Writing
2
2
2
2
2
2
道徳、技術、家庭、体育
Technology and Drawing
2
2
2
2
2
2
Sport
1
1
1
1
1
1
Total
24
24
24
30
30
30
Language
and
Environment
*
1 時間の科目授業は 45 分
1-4-2
(2005 年度)
ナンガハール州の教育事情
ナンガハール州教育局によれば、ナンガハール州で公立校は 301 校で、6,763 名の教員が
登録されている。182,705 名の男子児童、90,663 名の女子児童が学校に通っている。その内、
全体の 30%の 100 校に校舎がない。52 校が女子校であるが、その 25%の 13 校に校舎がな
い。11校舎のない学校では、野外における青空教室で授業が行われているが、旱魃の厳しい
ナンガハール州では、木が少なく木陰がない学校もあり、炎天下は暑さのために授業は中
断しがちである。また、冬季や雨季も学校は休校となる。
就学率は約 60%だといわれているが、未就学児は、家事労働やその他の労働に従事して
おり家計を助けている。また、学校に行く最低限の費用がまかなえず学校に行けない子ど
ももいる。女子に関しては、結婚適齢期にあたる 14・15 歳くらいになると両親は学校に行
かせたがらない。都市部の設備の整った学校以外では、小学校 4 年生になると女子の就学
率が激減する。登録されている教員中、実際に高等教育を受けたのは数%と見られており、
地方では小学校も卒業できていない教員が多々いる。
11
ナンガハール州教育局データ(2005)
5
1-4-3
教育事業展開における懸念事項
アフガニスタンの教育復興を妨げる大きな要因のひとつは、反政府派の教育に対する執
拗な妨害であろう。タリバンなどを代表する反政府派の掲げる教育とは、全てにおいてイ
スラム教を基礎にしたものであり学問において西欧研究のように全て科学的に検証される
ことをひどく嫌う。また、女子教育に対する考え方にも、大きな違いがある。イスラム教
においては、男女の役割が明確にされており、公の仕事は男性、家事など内事は女性が従
ずるという考え方の中、女性が必要以上の教育を受ける必要がないという。よって、決し
て宗教教育や基本的な識字教育などに関して禁止しているわけではないといえる。
もともとはこのような背景の中で、アフガン政府が自国の教育理念を確立していく必要
があるのだが、国際社会からのプレッシャーや教育支援などの波に押され、後回しになっ
てしまう中で、共学の学校が開設されたり、大きなカリキュラムの編成がなされたり、な
ど単に西欧化教育を採用したに過ぎない、というのが反政府派の感情であろう。
一方で、2002 年の教育省とユニセフが行ったバック・トウー・スクールキャンペーン依
頼、反政府派による学校や教育事業に携わる NGO などへの脅威は年々増している。学校襲
撃、NGO 襲撃などが行われたほか、タリバンと名乗る反政府勢力からは教育に携わる全て
の NGO 職員を攻撃のターゲットにするなどの脅威文が発表された。教育支援を展開してい
く上で、こういった反政府勢力の動向や治安への配慮は欠かせないものであり、短期間で
解決の糸口が見出せない以上長期に渡ってこのような状況下において、安全に継続的に事
業を行っていくかという点を計画時に考慮しなければならない。
第2章
事業の概要
アフガニスタン事務所の事業はカウンターパートや治安の問題により、頻繁な活動の変
更を余儀なくされた。添付の、当初の PDM、変更理由を参照。
2-1
2003 年度
事務所の整備が遅れたため、1、2 月の時点で正式採用を行ったスタッフは 2 名であった。
3、4 月で事務所スタッフ及び警備スタッフの雇用を行い、実際に事業が開始できる状態に
なるのは 7 月以後となった。
【学校建設】
・ ダライヌール郡スタン村スタン小学校
・ バティコット郡タキアガレイ村タキアガレイ小学校
ネジャットセンターが中心となって事業調査を行ったダライヌール郡スタン村の建設地
を再度事前調査し、建設のための準備を進めた。しかし、建設エンジニアの雇用に関して
ネジャット側と調整が遅れ、事業開始が大幅に遅れた。8 月に建設エンジニア不在のままプ
6
ラナーとしてエンジニアを雇用、具体的な設計図や見積もりが上がり地域住民との話し合
いを進めていった。
9 月にダライヌール郡スタン村スタン小学校(JPF ご支援)の建設工事及びバティコット
郡タキアガレイ村タキアガレイ小学校(WCRP ご支援)の建設工事が開始された。タキア
ガレイ小学校はその後順調に進み、翌年の 3 月に無事に竣工式を迎えたが、ダライヌール
郡スタン村スタン小学校に関しては、運搬に関する住民との調整に時間がかかった上、地
域の住民間での権力抗争などの問題が発生し、治安面に関する考慮から建設工事を中止し、
変更願いを提出した。
【図書館事業】
<移動図書箱活動>
図書館事業に関しては、宗教や文化への配慮事項の再度見直しが必要となり、当初計画
をそのまま実行することは困難となった。移動図書箱活動においては、建設校及びその周
辺校を手探り的に行い学校の反応を様子見ることとなった。また、絵本の確保が予想以上
に困難となり、隣国パキスタン、イランなどからの絵本を入手、翻訳し訳文を貼り付ける
作業を行ったが効率が悪く、タイトル数は 10 タイトルほどしか集まらなかった。
<絵本出版>
絵本出版に関しては、中心となるスタッフが早期に確保でき、ナンガハール州内でのお
はなし収集から開始し、書き下ろし作業までは順調であったが、絵描き、印刷所の確保に
時間がかかった。1-3 タイトルに関しては、ナンガハール州内で絵描きが見つかり、書い
てもらったがそれ以降連絡が取れなくなってしまったので、カブール市内の看板屋を1件
1件周りサンプル取りを行った。印刷所はジャララバード市に1件開設されたため、その
印刷所に発注したが、製本の技術がなく、印刷した絵本全てをやり直しという悪質のもの
となった。
<コミュニティ文庫>
絵本に関する子どもたちの嗜好、地域の反応やスタッフの能力強化などを目的とし、事
務所近くの民家の1室を借り、コミュニティ文庫を子ども向けに開設した。当初の対象人
数は近所の子どもたち 30 人程で、スタッフ1名で行う予定であったが、連日 100 名以上の
子どもたちが訪れるほどの盛況となり、今後の事業計画への盛り込みを検討。
2-2
2004 年度
【学校建設事業】
・ ラル・プール郡チャオキノール村チャオキノール小学校
7
・ ゴシュタ郡アハマディ村アハマディ小学校
・ バティコット郡チャルディヒ村チャルディヒ高等学校小学部第1校舎(2003 年度より繰
越事業)
・ ラル・プール郡グルダック村グルダック小学校
・ バティコット郡チャルディヒ村チャルディヒ高等学校小学部第2校舎
2003 年度事業であったダライヌール郡スタン村スタン小学校の学校建設を、2004 年度事
業に持ち越し、バティコット郡チャルディヒ村チャルディヒ高等学校小学部の校舎建設を
行った。この時点で独自のコ型の SVA 建設モデル校の設計図を考案し、13 教室(図書室、
職員室)の校舎となった。バティコット郡タキアガレイ村タキアガレイ小学校に引き続い
て WCRP のご支援によりラル・プール郡チャオキノール村チャオキノール小学校建設、同
郡グルダック村グルダック小学校、法瀧寺様ご支援によりゴシュタ郡アハマディ村アハマ
ディ小学校、JICA のご支援によりバティコット郡チャルディヒ村チャルディヒ高等学校小
学部第 2 校舎の建設を行った。
【図書館事業】
<学校図書室(モデル図書室)設立>
当会建設校であるラル・プール郡チャオキノール小学校、バティコット郡チャルディヒ
小学校、ゴシュタ郡アハマディ小学校の 3 校の学校校舎建設完了をうけ、図書室設置を行
った。図書室は教室と同じ大きさ(4.5m*6m)で、プラスティックカーペットを敷き、机、
本棚を寄贈した。約 300 冊の絵本を本棚に常設し、学校の教員達とともに装飾を行った。
<教員ワークショップ>
ナンガハール州の 4 つの郡で小学校の教員を対象に図書館活動に関するワークショップ
を行った。ワークショップは 3 日間で構成されており、絵本や図書館活動に関する基礎知
識の構築を目指すとともに、実践を取り入れ、図書館活動を行うにあたっての具体的指導
を行った。教員は、レクチャーを受けるより、参加するほうが積極的で、紙芝居作りや、
絵本の読み聞かせなど、実際に活動を行い、問題点や向上点などを和んだ雰囲気の中話し
合った。絵本に関しては、宗教や文化などの背景など様々な議論が展開された。ワークシ
ョップ終了時に、各学校に 150 冊の絵本を寄贈した。
教員ワークショップを行った学校一覧は添付資料参照のこと。
<移動図書箱活動>
当会建設校には、1ヶ月に1度、ワークショップ対象校には 2 ヶ月に 1 度の割合で移動
図書箱活動行った。移動図書箱活動では、絵本寄贈前には絵本 40 冊の図書箱を各学校に貸
し出すと共に、約 30 分程度、学校内にて図書館活動を行っている。ワークショップ終了後
8
には、寄贈した絵本及び、新しいレクリエーション活動を紹介する活動を行っている。1,000
人を超える児童数の学校がほとんどのため、1 回の活動で図書館活動を経験できる児童の数
は限られており、1 回の活動で 1∼3 クラス合同の児童を相手に行っている。
<絵本出版>
教員養成学校の代表及び教育局の推薦者、地域の児童作家などボランテイアで構成された
図書出版委員会の協力を元に、出版絵本の選定や構成などを行った。この年は、全部で 8
タイトルの絵本が完成し、当会建設校及びワークショップ対象校、コミュニティ文庫に配
布された。絵本出版の一番の難関は、画家の不足であり、ジャララバードでは画家が見つ
からず、カブールやペシャワールなどでも画家を探した。絵本出版にあたっては経験の無
い画家が多く、絵の構成は当会スタッフが行い、画家と話あいながら進めていった。ナン
ガハール州では、印刷を行う技術が発展しておらず、ペシャワールのパシュトン語の構成
ができる印刷会社にて、印刷を行った。
<コミュニティ文庫運営>
毎日平均約 50∼100 名の子ども達がコミュニティ文庫を訪れる。午前と午後の部とそれ
ぞれ、おはなし読み聞かせなどの図書館活動に加え、識字や学習教室が行われ、子ども達
はそれぞれ興味のある時間に参加している。常設絵本は約 400 冊で、絵本や子ども向けの
雑誌、また日本から寄贈された本などである。子ども達は、学校や家の手伝い、特に下の
妹弟の面倒を見ることで忙しく、時間の制約のない文庫は盛況であった。
スタッフは、子どもの絵本の嗜好や、図書館活動のあり方などを直接子どもと触れ合う
ことにより、アフガニスタンでどのような図書館活動を推進していけるのかを模索してい
る。また、市内の学校の中では、文庫の評判が広まり、時折、教員が訪れ文庫活動を見学
している。
2-3
2005 年度
【学校建設事業】
・ ダライヌール郡アムラ村アムラ小学校
・ ダライヌール郡ドダラク村ドダラク小学校
・ バティコット郡ザルバチャ村ザルバチャ小学校
2005 年度は当初 4 校の建設を予定していたが、資金未調達により 1 校は 2006 年度に繰り
越されることとなった。2003 年から 2005 年度までの 3 ヵ年で 10 校を建設するというプロ
トコールを教育省と契約しており、2006 年度の 1 校で 3 ヵ年計画が終了することとなる。
経済省の方針や教育省の方針の変更などで、原則として、NGO の学校建設事業が法的に
禁止され、民間資金や一部の政府資金で行う建設に関しては特別許可を取得することによ
9
って認可される法律が施行された(ただし、日本の NGO は日本大使館を通して申請して、
アフガニスタン政府に建設許可をとれば建設できる)。また、認可にあたっては、建設基準
が政府の発行したガイドラインにのっとっているもののみ、とされたため、建設費の高騰
が課題となった。加えて、2005 年の 10 月に起こったパキスタン大地震で多くの学校が被害
にあったことは、SVA の建設においても耐震構造の配慮など見直しが必要となった。
【図書館事業】
<図書活動ワークショップ>
2004 年度に引き続いて 2 度目に当たる図書活動ワークショップは、約 800 名の教員を対
象にしているが、夏休みに行う予定であったワークショップは州・国の議会選挙による治
安の悪化を理由に 12 月から 2 月の間に行うことに変更となった。現在ワークショップ対象
校 24 校中、15 校が図書室を設置しており、8 校が図書室教員を置いている。図書室を設置
できない学校の多くの理由は、教室数が足りないことで、校長室や職員室の一角に本を置
いている。図書室職員は、教育局の予算上教員を増加することは難しく、教授する教員数
でも足りてない中で図書室職員を置く、ということが難しいとされている。
ワークショップ対象校一覧は別紙参照。
<移動図書箱活動>
木製の箱に約 40 冊の絵本・本を詰め、対象校である 24 校に月 1・2 回のペースで訪問し
た。当会のスタッフと教育局職員であるアジ・ザエル氏が対象校を訪問し、約 30 分から 1
時間ほどおはなし読み聞かせやゲーム紹介などの活動を行った。学校では運動場が確保で
きないところが多く、体育の時間に図書室を開放したり読書の時間にしている学校もあっ
た。
移動図書箱活動を通して行ったモニタリングによると、SVA が活動を始めた当初では、
図書室を設置した学校は皆無ではあった。SVA および他団体の支援もあり、現在では SVA
対象校 24 校のうち、15 校が図書室もしくは図書を置くためのスペースを学校内に設け活動
を開始している。残りの 9 校に関しては、図書はあるものの、図書室や図書を置くための
スペースとして確保できていない。
<絵本・紙芝居出版>
ナンガハール州を中心に 2003 年度より約 80 話のおはなしを収集した。ナンガハール州
教育大学副学長や教授、ナンガハール州教育局職員、児童文学作家、児童心理学専門家な
ど8名が絵本選考出版委員会にボランティアで集まり、当会スタッフとともにおはなしを
選考した。
おはなし選定の基準は、a. 言語、b. アフガン文化に沿っている、 c.政治的でない、 d. 攻
撃意欲をそそるものではない、 e. 平和を推進するもの、 f. 真摯で教育を推進するものと
10
定めている。
画家は、2003 年度より当会の絵本の絵を手がけているハミッド氏に引き続きお願いした。
新規画家を探しているが、新しい分野のためだけに難しかった。アフガニスタン国内では、
カラー印刷や製本を手がけている業者は皆無であったため、印刷会社も今年も引き続き隣
国パキスタン、ペシャワール市内の印刷会社に依頼をした。出版された絵本は、ナンガハ
ール州内の 24 校と当会の運営するコミュニティ文庫へと配布した。
<コミュニティ文庫運営>
ジャララバード市チャライマラストーン地区に一軒家を借り、コミュニティ文庫として
開設した。常設図書は絵本や本など約 700 冊。小学生を主な対象者とし、開館時間は、午
前 8 時半から午後 3 時半(昼時は1時間閉館)
。ジャララバード市内のほとんどの学校が 2
シフト制のため、学校が午前と午後しかない。よって、学校に行かない時間に文庫を利用
する子どもたちが多い。文庫では、おはなし読み聞かせやゲーム遊びなどの活動が毎日当
会スタッフおよびナンガハール州情報文化局職員によって行われた。また、工作や宗教教
育・識字教育などを行った。子どもの数や年齢はばらばらのため、担当スタッフは対象児
に合せて活動を構成しなければならない。
2005 年度および今後のもうひとつの目標は生活が厳しい子どもたち(ストリートチルド
レン)や学校に行けない(行かない)子どもたちが文庫に来られるような活動を計画した。
今後は、識字教室や技能訓練など楽しみながら行える活動を取り入れて、そういった子ど
もたちが文庫に訪れるようにと検討した。文庫をコミュニティに理解してもらうために、
母の日を設け文庫を開放した。文庫にくる子どもたちの母親を招待し、文庫活動を紹介し
た。約 20 名の母親が集まり、1日文庫活動を楽しんだ。また、文庫に訪れることのできな
い女性が家でも絵本や本を楽しめるようにとの声から利用者は多いため、今年より貸し出
しを行った。
<学校図書室設置>
2004 年度の学校建設校への図書室設置が繰り越され、ラル・プール郡グルダック村グル
ダック小学校、バティコット郡チャルディヒ村チャルディヒ高等学校小学部第 2 校舎にて
図書室設置を行った。2005 年度の対象校においては、学校建設終了後の 2006 年度に繰り越
された。
第3章
3-1
評価方法
評価の目的
アフガニスタン事務所が開設以来、第 1 フェーズ事業として図書館活動、学校建設が行
われた。2005 年末で第 1 フェーズが終了したため評価を行った。
11
評価を行った理由として、(1)これまでの成果と問題点を整理し、スタッフ間での共有を
図ることにより、戦略的な第 2 フェーズの計画立案を可能とすること、(2)SVA 海外事業運
営のミニマム・スタンダードにも終了時及び継続時に評価をする必要性が示されているた
めである。
特にアフガニスタン事務所が行った事業の内容だけではなく、事務所立ち上げやカウン
ターパートの選択など運営面での経験は、今後 SVA が他国に新規事務所立ち上げの際によ
い教訓になる。
それゆえに第 2 フェーズへの方向性付けのみならず、アフガニスタン事務所の経験が他
の SVA 事務所の事業や管理運営面の参考になることが予想される。
3-2
評価方法
評価基準として、開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development:
OECD)の開発援助委員会(Development Co-operation Directorate: DAC)の評価 5 項目(効率性、
目標達成度、インパクト、妥当性、自立発展性)を用いた。
最初に評価用のプロジェクトデザインマトリックスである、PDM(E)を作成。その指標及
び指標入手方法に従いデータの収集を行った。
収集したデータ源は事務所にあった既存のデータ(例:研修会の参加者リスト、研修会
評価票、絵本の配布リストなど)、教育省及びナンガハール州教育局のデータ、今回現地訪
問の際行ったインタビューである。
1.
既存のデータ
事務所開設からのタイムラインの流れに従い行ってきた活動・投入を確認した。使用した
資料は、アフガニスタン事務所の各事業課が毎月書いている月間報告書、SVA の隔月ニュ
ースレターである「シャンティ」、年次報告書、アフガニスタン事務所が不定期に出してい
るメールニュースを参照した。全ての資料に目を通し、マトリックスに数字を含め関連情
報を打ち込み整頓した。
活動の実績や事業の効率性、インパクト等を測るため、研修会時に収集していた参加者
アンケート、移動図書館を行う度にスタッフが書いていた移動図書館報告書、コミュニテ
ィ図書館利用者数、配布報告のデータをまとめた。
2.
教育省及びナンガハール州教育局のデータ
事業の妥当性で政府の政策との一致の度合いを見るために、教育省から出された 3 年計
画に目を通した。また生徒数や教員の数はナンガハール州教育局が出している統計資料を
利用した。
3.
インタビュー
12
投入した備品や活動が行われている度合いを直接見て、活動の対象者の声を生で聞くた
めにインタビューを行った。
短期間の評価活動のため、治安や道路状況を考慮して評価を行う学校を選択。当会の建
設校 2 校、建設校を含め図書館活動を行っている学校 4 校を対象とした。評価質問票に従
ってスタッフがインタビューを行った。質問票への記述は、インタビューをしたスタッフ
が行う場合もあれば、一人のスタッフがインタビューをし、もう一人のスタッフが質問票
に記述することもあった。
インタビューの対象は、校長、教員、学校に通う児童である。児童へのインタビューは
外国からの評価団が行うと、模範児童のみが選ばれる可能性を考慮し、アフガン人スタッ
フが行う。
3-3
各データの詳細
【今回の訪問時にインタビューを通じて入手したデータ】
訪問学校数:
4 校(16.7%)
回答者:
• 校長 4 人(男性 3 人、女性 1 人)
• 教員 13 人(男性 10 人、女性 3 人)
【研修会の評価アンケート】
学校数:
24 校(全対象校)
回答者:
678 人(回答率 67.7%)
【子どもへのアンケート】
学校数:
20 校(対象校の 83.3%)
回答者数:
524 人
内訳:
小学 1 年
2年
3年
4年
5年
6年
無回答
81 人
83 人
102 人
108 人
81 人
66 人
3人
15%
16%
19%
21%
15%
13%
1%
3-4
調査団構成
調査団メンバーは下記の通り。本事業に関わってきたメンバーと、外部者として SVA カ
ンボジアから鎌倉が参加した。基本的に、SVA の内部評価であった。
伊藤
丈二:
SVA アフガニスタン事務所
所長
山本
英里:
SVA アフガニスタン事務所
プロジェクトマネジャー
市川
斉:
SVA 東京事務所
海外事業課
13
課長補佐、アフガニスタン担当
鎌倉
幸子:
SVA カンボジア事務所
図書館事業課調整員
ワヒド・アハマッド・ザマニ:SVA アフガニスタン事務所
コーディネーター
ハニフ・サフィー:SVA アフガニスタン事務所図書館事業コーディネーターアシスタント
ジャミラ:
3-5
SVA アフガニスタン事務所学校図書活動推進オーガナイザー
評価日程
2006 年
3 月 5 日(日)
イスラマバードからアフガニスタン首都カブールへ移動
3 月 6 日(月)
カブールからジャララバード移動
評価の日程の打ち合わせ
3 月 7 日(火)
ナンガハール州ラル・プール郡チャウキノール小学校
3 月 8 日(水)
ナンガハール州バティコット郡チャルディヒ高等学校小学校男子部
3 月 9 日(木)
ナンガハール州ジャララバード市ビビアイシャ高等学校
ナンガハール州ジャララバード市タジロバビ高等学校
3 月 10 日(金) まとめの会議、作業分担
第4章
4-1
4-1-1
評価結果
∼学校建設事業∼
効率性
事業開始前と後の教室数の変化と活用度
第一フェーズで建設された 9 校全てが当会建設前は校舎が1棟もなく、青空教室が行わ
れていた。校舎 2 棟の建設が行われたバティコット郡チャルディヒ小学校のみ、2 棟目建設
開始時には1棟目校舎が存在していた(ただし、その 1 棟目は当会が 4 ヶ月前に建設した)。
当会の建設事業を通じて、タキアガレイ小学校で 6 教室、チャルディヒ高等学校小学校
男子部 24 教室、その他に学校 12 教室が提供され、子ども達が雨風を凌げる校舎の中で勉
強をする機会を提供することができた。
しかし依然として、建設校に青空教室が存在する。評価で訪れたチャオキノール小学校
及びチャルディヒ高等学校小学校男子部共に、多くの青空教室が現在でも開かれている。
その理由として、生徒数が多く建設した校舎では入りきらない、高等学校と併設されてい
るため校舎を小学校のみではなく高等学校でも利用することがあげられる。
青空教室は一見、青空の下豊かな自然の中で勉強している習慣のように捉えられること
が多いが、実際には大変な困難な状況の中、学校を運営している。アフガニスタンでは、
夏季休暇に入る前にすでに 40 度近く気温が上がり、冬休み前後の開校時には氷点下近くま
で気温が下がる。平地とはいえ、岩石だけまたは砂漠のような地形に座っての授業を強い
られ、地域によっては、腰を下ろすこともままならず、中腰で勉強をしている女子生徒の
姿も見られる。また、季節の変わり目には猛烈な砂嵐が襲い、時には家屋さえ吹き飛ばし
14
てしまう。雨はほとんど降らないが、ひとたび降れば、舗装されていない道は数メートル
歩くのも困難となり、夏の豪雨では、雪解け水が流れ込み川の氾濫などを招く。
一方、教員たちは日常生活の中で、青空教室のデメリットをこう訴えている。村人たち
は用事がある度に教員や生徒たちに話しかけるため、授業が中断し、また、放牧の家畜が
生徒のノートを食いちぎるなど到底授業にならないという。せっかくのテスト用紙が強風
でまったり、出席表はすぐにぼろぼろになってしまう。
2003 年
郡
学校名
建設前
建設後
6 教室、職員室、倉
バティコット郡
タキアガレイ小学校
0 教室 (青空学校)
ラル・プール郡
チャオキノール小学校
0 教室 (青空学校) 12 教室、図書館
庫
2004 年
郡
ゴシュタ郡
バティコット郡
ラル・プール郡
バティコット郡
学校名
建設前
アハマディ小学校
建設後
0 教室 (青空学校) 12 教室、図書館
チャルディヒ高等学校小学校男子
部(その1)
グルダック小学校
0 教室 (青空学校) 12 教室、図書館
0 教室 (青空学校) 12 教室、図書館
チャルディヒ高等学校小学校男子 12 教 室 、 図 書 館
部(その2)
注)
12 教室、図書館
2005 年
郡
学校名
建設前
建設後
バティコット郡
ザルバチャ小学校
0 教室 (青空学校) 12 教室、図書館
ダライヌール郡
アムラ小学校
0 教室 (青空学校) 12 教室、図書館
ダライヌール郡
ドダラク小学校
0 教室 (青空学校) 12 教室、図書館
注)
SVA がチャルディヒ高等学校小学校男子部(その1)を建設したために、建設前の
状態が「12 教室、図書館」となっている。
4-1-2
投入備品の活用度合い
学校建設における 3 年間の主な投入物は、一校あたり 12 教室と図書室のある校舎1棟(チ
ャルディヒ高等学校小学校男子部のみ 2 棟)、教員用の備品、生徒用の文房具品である。概
ね良好に活用されているが、一部問題が見られた。
① 学校校舎
チャルディヒ高等学校小学校男子部及びチャオキノール小学校とも、建設された校舎は
15
授業に利用されている。当会は小学校校舎を建設したが、チャルディヒ高等学校小学校男
子部では、教室の一部が高等学校として使用されており小学生は引き続き青空教室で授業
を受けているなど、当初の目的と異なる形で利用されている。当初、男女共学の前提で建
設したにも関わらず、男子のみが使用している例も見られた。
② 黒板
黒板はタキアガレイ小学校を除き、各建設校に 13 枚配布された。黒板は各教室と図書室
に備え付けられている。チャルディヒ高等学校小学校男子部及びチャオキノール小学校と
も、インタビュー及び観察の結果利用されている。
③ 教員用机、椅子
各教室と図書室に机と椅子一式が配布されている。チャルディヒ高等学校小学校男子部
及びチャオキノール小学校ともすべての机、椅子が活用されている。
④ 棚
図書室をのぞく各教室に書棚が配布されている。チャルディヒ高等学校小学校男子部及
びチャオキノール小学校とも教科書置き場などとして活用されている。また、一部、紙が
乱雑においてあるなど、棚の基本的な使い方について知らないと見受けられる例もあった。
⑤ グラス棚
職員室に置かれている。チャルディヒ高等学校小学校男子部及びチャオキノール小学校
とも書類入れなどの棚として利用されている。
⑥ 床用マット
チャルディヒ高等学校小学校男子部及びチャオキノール小学校とも利用されている。
⑦ ファイル
チャルディヒ高等学校小学校男子部及びチャオキノール小学校とも職員室で書類入れと
して活用されている。
⑧ アフガニスタンの地図
チャルディヒ高等学校小学校男子部及びチャオキノール小学校とも配布した地図が壁に
張られており活用されている。
⑨ 児童用の文房具品
学校に在籍する児童に文房具一式を配布した。配布された教材一覧は添付資料参照のこ
と。
学校建設申請時の子どもの数にあわせて文房具を購入している。しかしチャルディヒ高
等学校小学校男子部では、その後の生徒数の増加し在庫分では対応できないという理由で、
配布されず保管されているものも見られた。
4-1-3
トイレの利用度
チャウキノール小学校、チャルディヒ高等学校小学校男子部には、ユニセフの資金で現
地の NGO が建設したトイレがあるが、使用されておらず当会にトイレワークショップの依
16
頼があった。観察の結果、2 校ともトイレは使用されている。
しかし、チャルディヒ高等学校小学校男子部のトイレは、トイレの穴に用を足さず、わ
きに汚物があるなど問題が見られた。穴に用を足すのは研修会のマニュアルでも示されて
いる事項なので、それが伝わるような研修会のデザインと児童への唱導活動が必要である。
4-1-4 投入規模の妥当性に関して
2003 年度から 2005 年度で 9 校を対象に学校建設事業を行った。どの学校も青空教室であ
ったため、事業前の教室数は 0 である。しかし、9 校中 9 校とも学校校舎が建設後も教室数
が足りず青空教室を行っている。この課題に対して、当初の投入規模が対象校に対して妥
当かどうかをアフガニスタン事務所で話あった結果が次の課題が挙げられた。
① 基礎調査の課題
建設候補地の選定は、以下の手順で実施した。
1)教育局より校舎建設の優先度が高い学校一覧リストを取得
2)ユニセフのデータや現地情報などを基に SVA の支援規模と見合った学校を選択する。
3)カンボジアの学校建設調査表を参考に、現地スタッフが調査を行う(この調査は後
ほどの図書館活動に影響するため、図書館事業課のスタッフができるだけ携わるよ
うにしている)。
4)調査終了後、調査結果を元に日本人調整員が現地を訪問し事業実施の可能性の高い
学校を絞っていく。
5)エンジニアが現地を訪れ建設自体が可能かどうかを調査する。
しかし、調査段階での課題は対象地域の人口や世帯数など公式なデータに乏しく、校長
や長老などに尋ねても正確なデータを取得することができない。また学校の就学児童数に
関しても公式なデータの発表は 2003 年度までにとどまり、増加数など把握することが困難
となった。その結果、推定した児童数を元にした校舎建設を余儀なくされた。投入後、児
童数が急増するなどの問題が起こった。
② 予測困難な人口の流動性
東部地域全体で約 40 万人の帰還難民が報告されているが、帰還難民の定住地域は郡ごと
にしか発表されておらず、村単位で帰還率まで予測するのが困難であった。また、学校や
診療所などの設備が整っているところに人々が集中するため、校舎建設が帰還難民の定住
を促す一因となり、児童の就学率が急増するという事態を招いた。
③ 学校の絶対数の不足
学校建設しても、子どもの就学児童の自然増により教室数が足りないという現状がある。
その上、学校の絶対数が足りないため、建設する教室数を増やしても、根本的な問題解決
17
にはならない。また、現状では、州や郡全体の学校の絶対数が足りていないとはいえ、教
員数が足りないために、単に学校建設をすれば課題が解決するわけでもない。一方、政府
が州や郡の子どもの人口に応じて、学校建設を実施するというよりは、地域のモチベーシ
ョンに頼っているため、地域によって学校の数に差が出てきている。
④ 建設費の高騰による支援規模の縮小
毎年高騰する建設費に、SVA の資金調達が追いつかず学校建設の規模を拡大することは
難しい状況にある。そのため、実際に必要な規模の学校建設を一度の学校建設事業で行う
ことが困難になってきている。
上記の課題を踏まえて、今後このような問題を克服するために以下の点を改善していく。
・
現在新たに出ている人口調査などのデータを基礎調査段階で参考にする。
・
現在では、最低教室数 12 教室しか学校建設の許可がでないが、教育省、州教育局とも
調整し、小規模の学校建設の可能性を探る。具体的には、12 教室が必要な学校であれば、
1校舎(4 教室)ずつ、3 年間かけて建設するという計画である。
・
建築構造や資材などの見直しを、他団体などの専門家を得て実施する。
学校建設事業自体が政府の規制などにより、激減したため、必要性は以前より高い。国境
地域においては、学校施設が無いため、越境をし、パキスタン国内にあるマドラッサ(宗
教学校)に通う子どもたちが増加しているという報告もある。そういった中で、多少 1、2
校でも継続して公立小学校の整備をしていくことは必要であると同時に、一旦規制がかか
った学校建設事業の必要性を今一度政府へと提言していく意味でも数ではなく質の高い建
設事業の継続の必要性は残る。
4-2
4-2-1
目標達成度
生徒数の変化
校舎建設後の生徒数は増加しているものの、建設校以外の学校を比較してもほぼ同じ割
合生徒数の増加が見られる。生徒数の増加はナンガハール州全体に見られる傾向なので、
学校建設のみが与えたインパクトとは言いがたい。
ナンガハール州全体もしくは建設した郡全体のデータをまとめ比較。図書館活動のみを
行っている学校と比較したが、変化は見られなかった。
4-2-2
教員数の変化
生徒の増加率と同様に他校と比較しても増加率に違いが見られない。
4-2-3
外部条件
18
生徒数の増減が起こる影響として治安状況、自然災害が挙げられる。チャウキノール小
学校、チャルディヒ高等学校小学校男子部とも、建設終了後の治安の悪化は見られず、良
好である。
ただ両校とも地震の影響で校舎にひびが入るなどの被害が見られた。
4-3
4-3-1
インパクト
子どもの変化
チャウキノール小学校、チャルディヒ高等学校小学校男子部両校とも、建設後子ども達
にポジティブな変化があったと回答があった。チャルディヒ高等学校小学校男子部は「雨
が降ると休みがちだった子ども達が学校に来るようになった。休み時間もきちんと過ごす
ようになった」などと出席率の増加、子どものモラルの向上を挙げた。チャウキノール小
学校は、「勉強をよくするようになった」と子どもの学習意欲の高まりを挙げた。
4-3-2
住民の変化
両校ともポジティブな変化が見られた。チャルディヒ高等学校小学校は「地域住民が子
どもを学校へ就学させるようになった」、チャウキノール小学校は「両親の意識に変化が生
まれた」と教育に対する意識の向上をあげていた。
4-3-3
他校へのインパクト
両校とも建設後、他校の校長、教育関係者が視察に訪れた。
4-3-4
教育内部効率の変化
両校とも、留年者数、退学者数の記録がなく、データ収集ができなかった。
ナンガハール州では全て手作業による児童数のデータ収集・管理をしており、地方におい
ては入学時、進級時の登録児童数を記録するのに精一杯である。よって、データ収集に時
間がかかるほか、州教育局でも全学校のデータ管理に追いついていない。2004 年よりユニ
セフの支援で、各学校の学年毎の基礎データをコンピューターを使って、デジタルでデー
タ管理をした。しかし、SVA の独自の調査によると州教育局の収集データと各学校の登録
した児童数の相違などが見られた。
また、退学率や留年率の概念そのものがあいまいであり、20 歳までは何度学校に復学して
も良い制度を導入している学校や、保留扱いにしている学校などがあり、統一されていな
い。留年率に関しても、留年の理由に関してそれぞれ明確にしていないため、留年した数
から一概に問題提起はしにくい。そのため、内部効率の変化は測定できなかった。
4-4
4-4-1
妥当性
アフガニスタン政府の教育政策との合致
19
本事業は1)校舎建設、2)備品の製作、配布、3)コミュニティ参加の促進という点
でアフガニスタン教育省が進めている政策と合致している。
アフガニスタン教育省は 3 カ年計画(2005∼2007 年)の中で学校建設を通じたインフラ
の整備の必要性を教育方針の最重要課題の一つとして挙げている。学校建設を通じて、男
女平等な基礎教育へのアクセスを拡大させる計画である。治安の回復と共に 420 万人12の子
どもが学校に登録し、これからも
校舎の状況
生徒数の増加が予想されるアフ
ガニスタンではその受け皿とな
全壊
る学校の新築、改修工事が急務で
問題なし
31%
37%
ある。
校舎の状況について問題が見
られない学校は全体の 37 パーセ
10%
13
ント のみである。今後 3 年間で、
不完全な建築状態
7,000 校の建設が必要とされてい
7%
8%
7%
深刻ではないが少々の
崩壊箇所あり
大半が崩壊状態
る。
一部崩壊
また教育省は適切な学習環境を提供するためにも、生徒のための机、椅子、教員が使用
する黒板などの備品を同時に設置する必要があると述べている。特に机と椅子は 250 万セ
ット14が不足しており、それが原因で二部制、三部制で授業を行わざるを得ない学校が存在
する。本事業は、建設校に黒板、教員用机、生徒用机、椅子、書棚、床用のマット、ゴミ
箱、白板を配布。教員や生徒の教授・学習環境に必要な備品である、ペン、穴あけ器、フ
ァイル、チョーク、黒板消し、ホッチキス、セロテープと入れ物、ノート、定規、アフガ
ニスタンの地図、地球儀、A4 サイズの紙、模造紙、マジックペンを供給した。
教育省が NGO の学校建設に期待する事柄として、地域住民の参加、技術向上と現地のリ
ソースの有効利用をあげている。地域を巻き込んだ活動を通じ、地域住民のオーナーシッ
プやパートナーシップが促進され、積極的に管理維持や修繕を行うなど、持続可能性の高
まりが期待される。当事業では、開始時に教育省建設局及び州教育局という行政サイドの
みではなく、ジルガと協議を行っている。また住民に土地の提供、セキュリティの確保の
役割を担ってもらうなど、住民参加型の建設方式を導入した。
4-4-2
ナンガハール州及びコミュニティのニーズとの合致
対象地域であるナンガハール州では、長年の戦争の影響でジャララバード市内中心部以
外の学校はほとんど破
ナンガハール州
ジャララバード市内
就学率(%)
ナン ガハール州合計
ナン ガハール州地方
12 Ministry of Education, “Education and Vocational Training Public Investment Programme:
79and Budget” Ministry of Education, 2004, p3
1383-1385 Education Development Plan
72
13 Ministry of Education, “The Tokyo
68
Appeal for
Education” Ministry
of Education, 2004,
64 p10
63
14 Ministry of Education, “Education and Vocational Training Public Investment Programme:
54
48 p3
1383-1385 Education Development Plan and Budget” Ministry of Education, 2004,
男女
39
男子
女子
20
男子
男子
男女
女子
31
男女
女子
壊され、学校教育も閉ざされていた。特にタリバン政権下においては、女子教育の禁止の
ために多くの女子が教育の機会を失った。公立学校は州内で 301 校(小学校を併設してい
る中学校、高校を含む)あるが、公立校が存在しない地域も多数ある。また、公立学校で 3
分の 2 の学校が校舎の修復・建設を必要としており、校舎のある学校でも狭い教室に子ど
もが溢れている状況である。2002 年、ユニセフと教育省が協力して行った、
「バック・トウ
ー・スクール」キャンペーンにより就学児童が急増し、その傾向は依然続いている。現在
の小学校から高校までの在籍児童・生徒数は約 27 万人。小学生の就学率は 54%(男子 68%、
女子 39%)15である。また就学率は都市部と辺境地に差が大きな差が見られ、ジャララバー
ド市内比較し地方は半分程度の割合となっている。
校舎のない中での授業は、子どもにとっても非常に厳しく、木陰やテントで授業を受け
ているものの、春から夏の暑さは厳しく、時には砂嵐のある中での授業を強いられている。
また、校舎がないため、女性教員が教壇に立つことは、この地域の文化上大変困難であり、
校舎建設は、女子児童、女性教員にとって、地域の特性・文化を考慮した上でも必要不可
欠である。
そのため、ナンガハール州における学校建設のニーズは高いと言える。
4-5
4-5-1
持続可能性
校舎の耐久性
チャルディヒ高等学校小学校男子部及びチャオキノール小学校とも、地震や子どものい
たずらのために建設校の校舎にひびが入るなどの問題が見られた。しかし、他の校舎は、
建設後の状態は非常に良好で耐久性の高い、校舎建設ができた。また、アハマディ小学校
は、この地域で起こったことがなかった水害に見舞われた。数ヶ月間に及び土台の水没を
余儀なくされたが、ほとんど校舎が傷むことなく持ちこたえ、結果的に耐久性の高さを実
証する結果となった。
【チャルディヒ高等学校小学校男子部】
屋根
⇒
雨が浸透する
ガラス、ネット
⇒
子どもが壊す
【チャオキノール小学校】
壁、屋根、柱
4-5-2
⇒
地震でひび
修繕作業の可能性
チャルディヒ高等学校小学校男子部及びチャオキノール小学校とも校舎修繕のための資
材は村で調達可能である。しかし学校は予算を持ち合わせていない。修理が必要な際、ジ
15
Securing Afghanistan's Future: Technical Annex on Education (2004) p8
21
ルガにかけて予算を募るシステムをとっている。
4-6 学校建設事業評価のまとめ
評価 5 項目
評価結果
根拠
・ 校舎が一棟もなかった学校に校舎を建設した。
・ 建設した後も青空教室が存在するなど、数的な規
模はまだ不足状態にある。
効率性
高
・ 配布した備品も活用されている。
・ 配布後生徒数が変わり文房具を配布していない学
校もあった。
・ トイレも使用されている。
・ 生徒数、教員数は増加しているものの、建設して
目標達成度
中
いない学校と比較するとあまり変化は見られな
い。
・ 子どもの態度や出席率、地域住民の意識に変化が
見られた。
インパクト
高
・ 他校の校長、教育関係者が学校訪問に来るように
なった。
・ 教育内部効率はデータの不足から分析できなかっ
た。
妥当性
高
・ 政府との教育方針と合致している。
・ 校舎の壁や屋根にひびが入るなどの問題が見られ
自立発展性
中
た。
・ 修繕はジルガにかけて予算を募るシステムが存在
している。
第5章
5-1
評価結果
∼図書館事業∼
効率性
5-1-1 『成果①
教員が図書館活動を行う技能を得る』について
【研修会参加者数】
2004 年、2005 年、事業対象校 24 校の全教員に対する研修会を開催した。2004 年度は 800
名、2005 年度 1,002 名の教員が参加した。
インタビューした校長 4 名中全員が当会主催の研修会に参加した。4 名中 1 回の研修会の
み参加したのは 1 名(25%)、2 回とも参加したのが 3 名(75%)であった。インタビューを行
22
った教員 13 名中、一度も参加したことがないと返答したのが 1 名(8%)いた。
2005 年度に行った 2 回目の研修会に行ったアンケート調査(回答者 678 名)では、310
名(46%)が 1 回目と 2 回目の両研修会に参加したが、366 名(54%)は 1 回のみ参加して
いた。2 名は無回答であった。
【移動図書館活動に参加した教員数】
評価時にインタビューした 4 名の校長全員が、当会が行った移動図書館活動に参加した
ことがある。1 名は今までに 2 回、1 名は 4 回、2 名は数え切れないほど参加した。教員は
13 名中、10 名(77%)が参加したことがあり、3 名(23%)はないと返答した。
【研修の評価】
研修会の評価は、2005 年度の研修会参加者に記述してもらった評価アンケートをベース
に行った。回答数は 1,002 名中 678 名。回答率は 68%であった。
678 名中ほぼ全員に近い 670 名(99%)が、「興味深い研修会であった」と評価。興味を
持たなかったと返答したのが 3 名、無回答が 5 名であった。興味を持った点として、講義
全体(348 回答)、おはなし読み聞かせ(163 回答)、絵本について(83 回答)、心理学(46
回答)、グループワーク(32 回答)、実践の時間(17 回答)、協力の仕方(5 回答)、図書館
員について(4 回答)、計画の立て方(3 回答)、質疑応答(1 回答)があげられた。
678 名中 170 名(25%)が、研修会の難易度が高いと返答した。指摘された困難だった点
として、絵の描き方が分らない(78 回答)、おはなし読み聞かせ(34 名)
、心理学(30 回答)、
研修会開催期間が短すぎる(11 回答)、給料の低さや交通費の低さなど経済的問題(2 回答)、
図書館運営の講義(2 回答)があげられた。これは研修会の内容に対するものと参加者の能
力的問題という二側面が見られる結果となった。
666 名(98%)が、「研修会は効果的なものである」と返答した。1 名は効果を感じない、
11 名が無回答であった。あげられた点として、教えるのに大変役立つ(392 回答)、よい教
授法である(101 回答)
、活動を通じて子ども達の学習速度が上がる(86 回答)、道徳心の
向上(29 回答)、指導計画が立てやすくなる(5 回答)、生徒の学習意欲が向上(5 回答)、
知りたいと思う意欲が向上(5 回答)となっている。
研修会に対する意見、要望が 611 名(90%)から寄せられた。期間や頻度を増やして欲し
いという回答が大半を占めた。開催期間を長くして欲しい(198 回答)、もう一度研修会を
開催して欲しい(171 回答)、定期的に開催して欲しい(68 回答)、大変ためになる研修会で
あった(52 回答)、私達にとって新しい技術である(21 回答)、日当・交通費をもっと多く
支給して欲しい(15 回答)、カリキュラムに組み入れられるべきである(14 回答)
、もっと
本を出版して欲しい(13 回答)、図書館員を配属させないといけない(4 回答)などがあげ
られた。
23
5-1-2
『成果②
図書館活動に必要な図書が整備される』について
【図書の配布とその活用】
配布の記録によるとすべての対象校に本の配布が行われている。2003 年には配布を行っ
ていないが 2004 年、2005 年の 2 年間に、当会出版の絵本、日本の絵本に訳が貼られている
絵本、ウルドゥ語・イラン語の絵本、BBC(他団体)の絵本、大人向けの一般図書、合計
14,316 冊を配布した。
評価インタビューを行った 4 校とも、当会が配布した本を保有していた。しかし図書室
にある本に埃がかぶっている、新品の本が多いなど、観察から図書室が使用されているか
疑問視される学校もあった。
【備品の配布とその活用】
配布の記録によると、全ての対象校に移動図書箱の配布が行われた。評価インタビュー
を行った 4 校とも、移動図書箱を保有していた。3 校(75%)が使用していると返答してい
るのに対し、1 校(25%)は図書室を設置したため移動図書箱を使用していない。3 校中 1 校
は移動図書箱を図書室で本棚として使用、1 校は教室を巡回、1 校は体育の時間に使用して
いる。
【投入規模の妥当性】
①
図書館活動備品
2003 年から 2005 年の建設校 9 校に関しては、本棚(大)1 個、本棚(小)を 4 個、本棚
(木製)及び読書用の丸テーブルを供与16した。配布した図書の数に対して妥当であったが、
今後図書数が増加されれば、備品も必要となってくることが予測されるため、第2フェー
ズでは見直しが求められる。
本棚は、各国のものを参考にしたが、薄っぺらな本をいかに本棚に納めるかということ
ころを工夫した。立てて置く棚では本が曲がってしまうため、横にしておくスペースを増
やすなどの工夫が必要であった。本棚自体の改革も必要とされる。
また、読書用のテーブルに関しても子ども達が床に座って読む地方の学校と机や椅子を
使用する市内の学校とではニーズに差があるため、今後も学校にあわせた図書室備品が必
要になる。
②
図書
第1フェーズでは、児童数に関係なく図書の数を一貫して配布した。ただし、午前と午
後とで別の教員が学校活動を行っている周囲の学校に関しては、2 年分の図書を配布した。
図書の配布に関しては、児童数と比例させるべきか議論があったが、児童数というよりむ
丸テーブルはチャルディ小学校第 2 校舎、2005 年度学校のみ。タキアガレイ小学校は、
本棚(大、小)なし。
16
24
しろ図書室の有無や図書管理のキャパシティが問われた。教員のやる気や興味は、人数や
地方、都市部に関わらないが、実際に科目を教授した経験ない教員にとっては副教材どこ
ろか、通常の教科書ですら活用するのが困難な状況の中、図書の活用までには至らないと
いう状況であった。
③
人的資源(スタッフ、カウンターパート)
スタッフに関しては、予算上の都合もあり、最低限のスタッフで行った。女性のスタッ
フを起用することが重要な一方で、文化・習慣上の理由から女性スタッフが自由に外出し
たり、男性との接触を行ったりすることが難しく、活動にも制限がある。そのため、女性
スタッフのみで一活動の責任を担うことが難しい。その辺りはアフガニスタン特有の条件
として、今後のスタッフ体制の中で考慮されるべき点だといえる。
その他に関しては、他事務所と同様の課題だと思われるが、長年の戦乱につき、きちん
とした教育を受けられなかったスタッフが多く、英語やコンピューターなどができても基
本的な母国語の使用ができなかったりとすることがあったり、地域コミュニティとの調整
などには、特異な経験を要したりするため、活動ごとに役割分担するというより仕事の内
容によって、役割分担がなされるため、能力強化や専門性の指導などで多少難しい部分が
あったが、スタッフが定着するにつれて得意分野が明確になり、得意分野にあった役割分
担を行うことで向上した。
5-1-3
『成果③
カウンターパートが絵本・おはなし読み聞かせ及び図書館活動について
理解する』について
【研修会を受けたカウンターパートの数および活動内容】
2004 年に高校の教員である 3 名がプレゼンテーターとして州教育局より選出された。3
名は研修会への参加のみではなく、準備から関わってもらった。研修会は 24 回開催された
が、2 名は 24 回、1 名は 23 回参加。準備も含めた起動日数も 71 日、74 日、76 日と 1 年の
約 2 割は当会の活動に充てられた。またプレゼンテーターとして、SVA の活動紹介、図書
館活動の紹介、教材の説明、紙芝居を用いたおはなし、お絵描きなどの講義も行った。
2005 年になると、1 名を除き 2 名は辞めてしまう。その代わり新しく 3 名の教員と 2 名
の州教育局関係者が加わり、合計 6 名となる。24 回行った研修会の内、1 名は 19 回、1 名
13 回、1 名 12 回、1 名 11 回参加となっている。州教育局職員は、研修会を受講したのみで
講義は担当しなかった。4 名の教員兼選出のトレーナーは SVA の図書館事業の紹介、図書
館活動の紹介、絵本の価値の紹介、紙芝居、おはなし、ハンドクラフト教材作りの講義部
分を担当、アシスタントをした。
5-1-4
コミュニティ文庫の利用者数
2004 年度の文庫を訪れた子どもの合計は 19,108 名、2005 年度は 27,981 名で、利用者は
25
増加している。
2005 年度の内訳として、男子 13,536 名、女子 14,445 名と女子の利用者の方が多い。年齢
別に比較すると 10 代以上の利用者数は、男子の方が多くなる。利用者は午前中の方が午後
よりも多い。この傾向が顕著に見られるのが女子で、多くは午前中に利用している。男子
も午前中のほうが多少多いものの、大差はない。
2005 年度の 1 年間の月ごとのデータを見ると、月平均の利用者数は減少傾向にある。特
に 9 月以降の減少が見られる。特に 10 代前の子どもの利用者の減少率が高い。
【コミュニティ文庫の活用度】
コミュニティ文庫に通う 7 人にインタビューを行った。家から文庫までの距離は平均し
て 12 分。文庫に通っている年数は平均 2 年であった。コミュニティ文庫へは週平均 6 回と
開館日(金曜日を除き、週 6 日間開館)は毎日来ている。
友人の紹介で来るようになったのが 4 人、兄の紹介が 2 人、近所の人の紹介が 1 人であ
った。
参加している活動は、ゲーム、タラナ17、おはなし読み聞かせ、イスラムと続く。好きな
活動はタラナ、テコンドー、スポーツとなっている。子ども達はコミュニティ文庫で行わ
れている様々な活動に参加していると言える。
参加している活動
好きな活動
ゲーム
7
タラ ナ
7
タラナ
5
イ スラ ム
テコンドー
4
テコン ドー
2
3
お絵かき
2
ミシン ・手工芸
スポーツ
1
紙芝居
1
0
スポーツ
2
4
6
8
【コミュニティ文庫とカウンターパートの能力向上】
17
5
6
おはなし・読み聞かせ
詩の朗読
26
1
0
2
4
6
カウンターパートである情報文化局職員が、コミュニティ文庫でパートタイムの仕事を
している。実際、その職員はおはなし読み聞かせ、ゲーム、読書、物語作りを担当してお
り、活動を行う能力がついたと言ってよい。また副次的効果として、職員の勤める情報文
化局とのやり取りの中で、先方からの問題・苦情が減ったという効果が見られている。
また教員養成学校の学生がボランティアとして関わっており、卒業後コミュニティ文庫
で得た技術を赴任先の学校で活用することが期待される。
もう1つのカウンターパートである教育局の職員は関わっていない。
コラム:コミュニティ図書館の子ども達
当初実験的に始めたコミュニティ文庫であるが、アフガニスタンの子ども達の絵本や遊
びなどの嗜好を直接知ることができる場となった。
文庫には 1 日約 100 名近くの子どもが訪れる。これは、市内の学校が午前と午後の 2 部
制になっているところが多く、午前と午後にそれぞれ学校のない子ども達がやってくるか
らである。9 割以上の子ども達が学校に通っている。文庫に来る子ども 52 名(男児 30 名、
女児 22 名)に質問した結果の一部である。
46%の子どもが難民として隣国へ出た経験のある子どもであり、60%の子どもが戦争体
験があると答えている。勿論、これは言葉の「難民」や「戦争」という言葉の定義の理解が統
一されているかどうかによって違ってくるため、データだけでは把握できないが、それで
も何らかの長年の戦乱が原因で何らかの特別体験を受けた子ども達がほとんどだと言う
ことがわかった。そういった子ども達を抱える以上、図書館活動にも何らかの配慮が必要
なのでは感じた。(2005 年度「アフガニスタン初等教育改善事業のこれまでの成果」より)
5-2
5-2-1
目標達成度性
図書スペースを設置した学校数
評価時の 2006 年 4 月時点で、図書室を設置した学校は 24 校中 15 校(63%)となってい
る。対象校 24 校中、6 校は当会の学校建設の対象校でもある。タキアガレイ小学校を除い
た 5 校では、1 教室を図書室として割り当てた。タキアガレイ小学校を含む残りの 19 校は
移動図書箱と図書の配布を行った。ビビアイシャ小学校のように移動図書箱配布後、自分
達で 1 教室を図書室として設置した学校がある。そのため建設校以外でも図書室の設置が
進んだ。
図書館員を配属しているのは 24 校中 8 校(38%)に留まっている。教員の不足から、専
属の図書館員の配属が困難なため当会は対象校の教員全員を研修会に参加してもらうなど
の処置を取っている。
27
5-2-2
図書活動を取り入れている学校数
インタビューをした教員 13 名全員(100%)が、おはなし前に行うゲームを実施してい
る。頻度として 4 名が週 1 回、7 名が週 2 回、2 名が週 3 回行っている。13 名全員(100%)
がすばなしを行っている。5 名が週1回、8 名が週 2 回行っていると返答した。絵本を使っ
たおはなしは 12 名(92%)が行っている。4 名が週 1 回、7 名が週 2 回、1 名が週 3 回絵本
を使っておはなしを行っている。 研修会にも参加したことのあるタジルバウィ小学校の教
員は、当会が学校に来ないためお絵本を使ったおはなしが未だにできないと答えている。
12 名(92%)の教員がペーパークラフトを行っているが、1 名(8%)は、学校にペーパーク
ラフトのプログラムがないので行っていないと返答している。
5-2-3
活動に参加した子どもの数
対象校 24 校中 20 校(83%)に在籍する児童を対象に活動参加の有無について聞き取り
を行った。525 人にインタビューを行い有効数 509 人(97%)、欠損値 16 人(3%)であっ
た。
読書活動及びおはなし読み聞かせに活動に参加した子どもは約半分となった。特記点と
しては低学年の参加が少なく、高学年になるに従い、活動に参加した子どもの割合が増加
している。
270 人(53%)と約半数が読書をしたことがあると返答した。残りの 239 人(47%)はし
たことがない。学年ごとに見てみると、低学年(1 年生、2 年生)では、読書をしたことが
ない児童が、したことのある児童よりも多い。3 年生から値が逆転し、読書経験のある児童
がない児童を上回る傾向が見られる。高学年になると参加したことがある子どもが 6 割を
超える。
おはなし読み聞かせ活動は、223 人(44%)が参加した経験があり、286 人(56%)がし
たことない。参加したことのない児童の割合の方が多い。ほぼどの学年においても参加し
ていない児童の割合が多いが、特に差が出ているのが 1 年生、2 年生で、30%以上の開きが
見られる。3 年生から参加していない子どもの割合は多少高いが、ほぼ横ばい。唯一 5 年生
はおはなし読み聞かせに参加した児童が、してない児童を上回る。
読書活動における児童の参加度
読書活動
参加した
ことあり
学年
1 年生
2 年生
合計
なし
度数
31
44
75
1 年生の%
41.3%
58.7%
100.0%
度数
28
53
81
2 年生の%
34.6%
65.4%
100.0%
28
3 年生
4 年生
5 年生
6 年生
総計
度数
52
43
95
3 年生の%
54.7%
45.3%
100.0%
度数
63
48
111
4 年生の%
56.8%
43.2%
100.0%
度数
51
31
82
5 年生の%
62.2%
37.8%
100.0%
度数
45
20
65
6 年生の%
69.2%
30.8%
100.0%
度数
270
239
509
全体の%
53.0%
47.0%
100.0%
おはなし読み聞かせ活動における児童の参加度
おはなし読み聞かせ
活動
参加した
なし
ことあり
学年
1 年生
2 年生
3 年生
4 年生
5 年生
6 年生
総計
5-3
合計
度数
24
52
76
1 年生の%
31.6%
68.4%
100.0%
度数
26
56
82
2 年生の%
31.7%
68.3%
100.0%
度数
44
50
94
3 年生の%
46.8%
53.2%
100.0%
度数
54
56
110
4 年生の%
49.1%
50.9%
100.0%
度数
44
38
82
5 年生の%
53.7%
46.3%
100.0%
度数
31
34
65
6 年生の%
47.7%
52.3%
100.0%
度数
223
286
509
全体の%
43.8%
56.2%
100.0%
インパクト
5-3-1 児童の態度の変化
校長と教員の観察から、図書活動を開始してから次のような効果が報告された。
【語学力の向上】
29
校長、教員全員が子どもの語学力が向上したと認識している。具体的には、読書及びお
はなし読み聞かせ活動が行われるようになってから、子どもの教科に対する理解の速度が
速まった、読解力が向上した、ダリ語・パシュトゥン語の能力が向上したという点を挙げ
ている。
内容
回答数
理解が早くなった
6
読解力
5
ダリ・パシュトゥン語
4
書く力
3
話す力
2
数学
1
語彙力
1
学ぶ意欲の向上
1
積極的になった
1
【知識の向上】
校長、教員全員が、図書館活動を通じて子どもの知識が向上したと回答している。歴史、
国語、芸術、道徳、宗教、数学、生物、地理など多分野において知識の向上が見られた。
内容
回答数
歴史
6
ダリ・パシュトゥン語
3
絵画
3
道徳
3
宗教
2
数学
1
文化
1
地理
1
生物学
1
本とは何か
1
人助け
1
無回答
1
【子どもの態度の変化】
すべての校長、教員が子ども達の態度にプラスの効果を確認している。回答の多くは、
30
他人を敬うようになった、善悪の区別、礼儀正しくなるなど道徳の向上に関する効果であ
る。また中には子ども本人の変化だけではなく、家族の仲がよくなったという、家族全体
への波及効果も見られる。学校に来るようになったという、出席率の向上を挙げた教員も
いる。
内容
回答数
他の人を尊敬するようになった
5
善悪の区別がつくようになった
2
礼儀正しくなった
2
家族仲がよくなった
2
学校に来るようになった
2
積極的になった
1
道徳を理解するようになった
1
よい行いをするようになった
1
喧嘩が減った
1
色を覚えた
1
教育された(賢くなった)
1
おはなしを他の人にするようになった
1
5-3-2
地域住民へのインパクト
評価で訪問した 2 校(50%)が地域住民へのプラスの効果を認識している。1 校は、女性
が知識を得る機会を得ることができるようになった、1 校が地域住民も学校図書室から本を
借りられるようになったことを理由として挙げている。
5-3-3
他校へのインパクト
評価で訪問した 4 校中 3 校(75%)が学校図書館及び活動の外部視察を受け入れた。1 校
は教育局、1 校は郡教育局からの視察であった。1 校は無回答であった。教育局関係の視察
はあるが、他校からのスタディーツアー等の受け入れは未だないため、近隣の学校へのイ
ンパクトは確認できない。
5-3-4
教育内部効率の変化
図書館活動の対象校 24 校の教育内部効率は、活動開始前の年と後を比較しても、改善し
ている学校もあれば、悪化している学校もある。そのために図書館活動の教育内部効率へ
インパクトは確証できない。
5-3-5
政府の方針へのインパクト
31
政府の方針へのインパクトは現時点で見られない。カウンターパートの研修を行ってい
るが、選出されているのが州教育局や郡教育局職員ではなく、学校の教員であるため政策
サイドに声を届けまでに時間を要する。
5-4
5-4-1
妥当性
政府の方針と認識度
インタビューした校長の 4 名に 3 名(75%)は図書館活動と政府の方針が一致している
と返答している。
教育省は 3 年計画の中で、教員の教授法を見直し教員の質向上を促すことを重要課題と
している。それに伴い、児童中心の教授法(Child-centered approach)を推し進め、必要な教
育教材の開発を行う計画である。その目標を達成するためと図書室の設置と備品の供給が
活動として記載されている18。本事業は、建設校及びその周辺校に図書室の設置、移動図書
箱活動を行うことにより、児童中心の教授法を紹介し、研修会を通じて教員のキャパシテ
ィビルディングを行っている。
また教育省は 3 年計画の中で、教育のインフラ整備の一環として、1,036 校における図書
室の整備、図書室に必要な備品や図書の設置を挙げている。しかし図書設置に関するドナ
ーは決定していない状況である。
しかしこの図書館活動に関する記述は、ユニセフなどのドナーサイドが出した計画で、
教育省が自ら立案したものではない。そのため政府内でのコンセンサスは疑問である。
5-4-2
出版物のニーズ
子ども対象の出版物は、中流家庭以上を対象にしたと思われる雑誌が約 30 年以上前に存
在し、援助団体などが支援した刊行物も見受けられたが、どれも不定期発行で、内戦に突
入して以来姿を消した。
聖典以外の図書自体がほとんど見られず、絵本に関しては皆無に等しい。大学では専門
書などを保存しているが古いものばかりである。娯楽用には詩集やアフガニスタンに伝わ
るとんち話などが出版されているが、数は少なく、不定期に再発行されている。
また、難民として海外で生活した際に絵本や本、新聞などから遠ざかっていた人が多く、
活字を読む習慣がほとんどない。識字率の低下の背景には、文字を覚えても日常的に接す
る機会もなく忘れてしまうという問題がある。
そのため出版物へのニーズは高い。
5-4-3
学校のニーズとの合致
インタビューを行った校長全員が図書館活動は学校のニーズに合致していると返答して
18
Ministry of Education, “Education and Vocational Training Public Investment Programme:
1383-1385 Education Development Plan and Budget” Ministry of Education, 2004, p13-14
32
いる。理由としては、知識の向上を促す、子どもの能力向上、出席率の向上、就学者数の
増加、興味深い学習プログラム、読書活動の必要性があげられている(各 1 回答)。
すべての教員も図書館活動は学校側のニーズと一致していると返答。理由として、おは
なし読み聞かせの必要性(2 回答)、学校に来る子どもの数の増加、歴史に対する理解の促
進、道徳の向上、子どもが楽しめる遊びの提供、理解力の促進(各 1 回答)をあげている。
その内教員 3 人は、理由に対して無回答であった。
しかし、授業を行う教室すら不足しているナンガハール州内の学校の中では図書館活動
の優先順位は低いのが現状である。図書室のスペースを設けている学校はジャララバード
市内の少数の学校に限られている。図書を所有している学校では、職員室や教室の一部に
図書を保管しており、当会の事業実施校においては図書箱を活用してもらっている。図書
館員がいないので、図書の管理はずさんであるが、独自に貸し出しを始めたり、授業で図
書を活用したりなど、積極的に図書を活用していきたいという姿勢はみられる。しかし、
市内の学校や地方でも郡の中心校は児童数が多いため、授業の2部制を導入しており、最
低限のカリキュラムをこなすのにも精一杯であり、読書推進のための時間を設けることが
困難となっている。そのため、読書推進のために、体育の時間や社会の時間を利用してい
るケースもある。
5-4-4
地域住民とのニーズの合致
全ての校長、教員が図書館活動と学校のニーズに相関関係を見出している反面、地域の
ニーズとの整合性については無回答が目立った。
2 校(50%)の校長は図書館活動と地域のニーズは合致していると答えつつも、理由につ
いては、具体的な返答が得られなかった。
インタビューをした教員 13 名中 10 名(77%)の教員は図書館活動と地域のニーズの合
致を認識しているが、3 名(23%)はニーズとの一致が見られないと返答している。ニーズ
との合致が見られると返答した理由として、知識の向上(4 回答)、子ども達が学校に行く
のを見て親が喜んでいる、おはなし読み聞かせがこの地域でも大切だと思われる(各 1 回
答)という例があげられた。しかし 4 名の教員は合致していると返答しつつも、具体例を
あげることができなかった。
識字率向上という点でコミュニティのニーズと合致している。ナンガハール州の山岳
部においても「文字の読み書きは出来なくて良い。」という声はなく、ほとんどの親が非識
字者の中で、子どもたちには最低限の読み書きを習得させたいと思っている。コミュニテ
ィ自身が気づいていないケースとして下記の点はアフガニスタンの地方コミュニティでの
問題点としてあげられる。
① 日常生活の中で「文字」と接する習慣がなく、日常生活の中でも必要性がないため、た
とえ文字を習得していたとしても忘れてしまう。
② 子どもの生活空間が家族や親族間に限られているため、行動範囲が狭く成長に必要な経
33
験を積むことができない。特に、女子児童に関しては、10代半ばから個人で外出でき
る範囲は限られる。
図書館活動を通して、上記のようなケースへの間接的アプローチにもなるといえる。
5-4-5
子どものニーズとの合致
全ての校長、教員が、子ども達は図書館活動を好きだと感じている。
校長 4 名、教員 13 名のインタビューでは、子どもが一番好きな本は「絵本(9 回答)」、
次は「短い話(4 回答)」となっている、当会の絵本出版は子ども達の嗜好と一致しており、
妥当性が高いといえる。
好きな本の種類
絵本
短い話
『息子、お父さんとおじいさん』
笑い話
物語
歴史
漫画
美術関係
タラナ
すべて
教科書
面白い絵が描かれている本
『協力』
0
●『
1
2
3
4
5
6
7
8
9
』は、SVA が出版した絵本のタイトル
●「タラナ」とは詩の朗読の一種
5-5
5-5-1
自立発展性
学校側の体制
インタビューした校長 4 名中 2 名は、SVA が撤退したら活動は停止すると返答している。
理由としては、経済的理由、SVA なしでは心もとない(各 1 回答)となっている。
またインタビューを行った校長、教員の何名かは図書館活動を行っていく上で阻害要素
的な問題があると報告している。4 名の校長のうち 2 名は「研修会には参加したが技術的に
未熟なため」
図書館活動を続けていくのに支障があると返答した。また 13 名の教員のうち、
34
10
8 名(62%)の教員が「図書館活動は難しい」と述べた。理由として、学校に図書館活動を
専門で行う図書館員が配置されていないこと(4 回答)、校舎の不足から図書室が設置でき
ない、給料が安い、子どもの生活が貧しい、技術不足(各 1 回答)があげられた。また難
しいと返答しておきながら、理由を答えない教員が 3 名いた。
今後も当会が紹介した図書館活動を教員に伝えていくかという質問に対し、伝えていく
と返答したのは校長 4 名中 1 名のみ(25%)。あとの 3 名は、設備が整っていない、活動を
紹介するための備品がない、将来はするかもしれないが今は予定がないという理由で(各 1
回答)、技術の移転を行う計画はない。
本の追加配布であるがインタビューで訪れた 4 校中全校が SVA 以外からも本の配布を受
けていると返答している。配布先は、Relief(3 校)、WHO(1 校)である。配布を受けてい
ると返答しつつも、具体的な配布先を述べられなかった学校が 1 校ある。
5-5-2
州教育局の体制
2004 年度に選出したカウンターパートの 3 名の内、2 名を次年度に変更、2005 年より参
加した州教育局職員の 2 名も研修会を受講したのみで講義は行わないなど、名選面、技術
面で事業の持続可能性は低いといえる。
5-6
図書館事業評価のまとめ
評価 5 項目
評価結果
根拠
・ 研修会の内容の評価が高い。
・ 対象校の全教員を対象に研修会を行っているが、2
回参加した教員、1 回のみの教員とばらつきが見
られる。
・ 備品が全対象校に配布されている。活用の度合い
は疑問視される学校もある。
・ カウンターパート選出のプレゼンテーターは、研
効率性
中
修会の講義を行う能力を得ている。
・ プレゼンテーターが変更された。
・ コミュニティ文庫の利用者は年々上昇。しかし
2005 年度の後半に減少傾向が見られた。
・ コミュニティ文庫では様々な活動が行われ、子ど
も達が参加している。
・ コミュニティ文庫を通じて情報文化局の職員が育
成を受けた。しかし教育局職員は関わっていない。
目標達成度
やや低い
・ 24 校中 15 校が図書室を設置した。特記すべき点
は当会が図書室設置を行った 5 校以外の学校でも
35
独自に図書室設置を行ったことである。
・ 図書館員の配置は 24 校中 8 校に留まっている。
・ おはなし読み聞かせ、ペーパークラフトなど活動
を行っていると返答した教員が 9 割を超えている
半面、参加したことがあると返答する子どもは 5
割程度である。
・ 子どもの語学力、知識、態度の変化が見られた。
・ 地域住民への効果も見られている。
インパクト
中
・ 他校や政府方針へのインパクトは見られない。
・ 教育内部効率の変化は、図書館活動だけではイン
パクトがあったと確証できない。
・ 政府の方針と一致している。しかし図書館の方針
はドナーが作ったものであるため、教育局内の認
識度は不明である。
・ 出版物が皆無に等しいアフガニスタンではニーズ
妥当性
高い
が高い。当会出版の本は子どもの本に対する好み
と一致している。
・ 学校のニーズとは一致しているが、校舎や教員不
足の問題から優先順位が低くなる傾向も見られ
る。
・ SVA の支援が終わると 50%の学校は図書館活動の
継続ができないと返答している。
・ SVA の伝えた技術を教員に引き続き伝えていくと
自立発展性
やや低い
返答した校長も 4 人に 1 人となっている。
・ 本の配布は SVA 以外からも受けられる。
・ 州教育局職員は研修会を受講したのみで、講義は
行っていない。またコミュニティ文庫でのトレー
ニングにも参加していない。
第6章
6-1
結論、提言、教訓
結論
評価 5 項目それぞれに課題は残されている部分もある。しかし事業立ち上げも含めた最
初の 3 年間フェーズと考えると、短期間のうちにこれだけの成果を出したことは評価でき
る。
学校建設は、効率性、インパクト、妥当性ともに高くなっている。青空教室だった学校
に建設したということで、校舎や備品がきちんと利用され、登校する子ども達も学習能力
36
を伸ばすなどポジティブな態度の変化が見られている。政府の方針との合致性も高い。
プロジェクト目標で挙げている建設校の生徒数の増加であるが、建設校以外の学校と比
較しても増加率に違いが見られない。次回の調査では外部条件などを検討しデータを収集
する学校を選択する必要がある。上位目標の指標である「教育内部効率の変化」だが、学
校側の記録や生徒数の管理方法が整備されていないことから、留年者、退学者の数をつか
んでいない学校が多く、データの入手ができなかった。
図書館活動は、人材育成、子どもの読書習慣の向上などソフト面の活動なので学校建設
と比較すると全体的に課題が残る点が多い。しかし、対象校 24 校中 10 校が図書の配布後、
自主的に図書室を設置するなど積極的な動きも見られる。コミュニティ文庫も 2005 年の後
半に減少傾向が見られるものの多くの子どもが参加している。これらの学校やコミュニテ
ィ文庫がモデルとなり活動の拠点として機能していくことが期待される。
コミュティ文庫がモデルになるためにはカウンターパートの育成の場になりえることで
ある。情報文化局の職員が定期的に来て活動の手伝いをしているが、教育局職員は関わっ
ていない。アンテナショップ的な機能を持たせるのであれば、その施設を使用し、両カウ
ンターパートの育成及び教育省の方針へのアドボカシー活動への取り組みの方法を確立す
る必要がある。
活動も全対象校へ図書の配布がされたものの、観察から図書がすべて新しく、使用され
ているか疑問視される学校もあった。また 9 割の教員が、おはなしなど活動を行っている
と返答した反面、活動に参加した子どもは 5 割となっている。自立発展性に関しては半数
の学校は SVA の支援が終了すると活動の継続ができないと返答している。図書館活動の自
立発展性向上は SVA だけではなくカウンターパートと一緒に協力して考慮していく必要が
ある。
活動の成果の伸びの大きな阻害要因に事業運営面での問題が挙げられる。特記する点と
して、カウンターパートの問題から、学校建設の予定地の変更、多くのスタッフの退職、
経理の不適切な処理など多くの弊害が見られた。また事業開始から約 2 年間はその問題解
決のために多くの時間と労力が取られた。新しい対象地域では信頼できるカウンターパー
トとの連携が不可欠であることは間違いない。そのカウンターパートの選択基準、問題が
起こった時の対処法など設定していく必要がある。また今回のアフガニスタン事務所の経
験は今後の教訓として新しい国で活動を行う際には、活かしていくべきである。
提言
6-2
6-2-1
SVA に対して
・ 事前調査を行う時は、単一の現地の団体をパートナーとして行うのではなく、他団体
の活動も調査し、公平性、客観性を保つ必要がある。今回の調査の事業地に関しても
全行程ネジャットセンタープログラムになっていた。受け入れ団体がなければ事前調
査も行うのが困難だったと理解するが、他団体からの情報も得て包括的に行うべき活
37
動について理解し、事業を形成していく必要がある。
・ 長期事業の立ち上げにおいては正式な調査を最低 2 度、違うメンバーで行う。調査隊
のジェンダー配慮も必要。また、緊急救援プログラムなどがきっかけで立ち上げた場
合、緊急救援プログラム自体の評価や関連団体評価などを調査の時点で行うというこ
とも必要と思われる。
・ 調査段階と実際に活動を開始してからの計画変更がスムーズに行かなかったため活
動の展開が大幅に遅れた。事前調査を徹底し、前提条件が整わず計画変更を余儀なく
するという状況を避けるべきである。
・ 事務所を新規開設する際には、開始年度の事業計画への配慮、総務・経理など実務部
門での人事配置の配慮、事務所開設自体の目標、計画の明確化が必要。
・ カウンターパートの選択に関して基準を持つ必要がある。
・ 配布した図書が活用されるために研修会とプラスしてモニタリングを通じた技術指
導を強化する。
・ コミュニティ文庫の位置づけを確立する必要がある。モデルやアンテナショップ的な
機能を持たすのであれば、活動に広がりを持たせ、カウンターパートを中心に人材が
育成されるシステム作りを行う。
・ 立ち上げの最初の数年は見直しや建て直しなど必ず出てくる。よって、最初の数年に
関しての事業見直しや変更などもう少し柔軟性を持つことも必要。すでにレギュラー
サイクルである程度事業が確立している他事務所と同じようには行かないと考えら
れる。
・ 3 年ごとに評価をするシステムになっているが、ゼロから立ち上げた事業に関しては
評価の基準やサイクルを見直す必要がある。図書館活動においては、実際に活動が計
画に沿って行われたのは 2004 年からであり、今回の評価対象の学校も事業開始より
1∼2 年後の成果を見ている状態である。
6-2-2
州教育局に対して
・ 留年率、退学率を正しく記録するシステムを作る必要がある。
・ 州教育局選出のトレーナーが 1 年で変更になっている。技術を定着させるためにも
・ 校舎や教員不足から図書館活動への認識が低いとされているが、今後不足が解消され
た後を考慮し、図書館活動を教育省の方針の一つとして組み込んで欲しい。
6-2-3
学校に対して
・ 子どもが校舎を破損させてしまうケースがあるので、子ども達に校舎を使用に関して
オリエンテーションを行うなどの取り組みを行って欲しい。
38
6-3
教訓
アフガニスタンでの活動の持続可能性を達成するために考慮しなければならない点は大
きく3つに分かれる。一つは、活動自体が地域に根付くためにはどうするべきか、2つ目
は、団体として存在価値を高め、アフガニスタン特有の文化や宗教的価値観と統合するこ
と、3つ目は、治安への配慮であろう。
6-3-1
活動の持続性
アフガニスタンで、「教育」、「図書」というのは、政治的かつ宗教、習慣に密接に結びつ
く。そういった政治活動や政治色が強い宗教運動などに巻き込まれないようにする必要が
ある。「子ども達への教育活動の一環である。」という点を政府、学校、地域などに理解を
広める必要がある。
「子ども図書館」においては、両親の日を設け、図書館自体を開放する、
また新しい活動を行う際には、両親や地域コミュニティ等に紹介し、了解を得るための工
夫を行う。
6-3-2
団体の持続性
団体としてアフガニスタンで持続して活動を行っていく際に留意する点は、政府や地域
コミュニティとの関連作り及び治安への配慮である。政府の方針が変更されやすい。政府
との連携をすると同時に一定の距離を置きながら活動をすることが必要である。また、中
央政府の方針が必ずしも地方政治に浸透しているとは限らず、時に内部紛争に無意識のう
ちに巻き込まれる可能性がある。そのためには、地方政治や地域コミュニティとのネット
ワークを構築し、独自に情報収集を行う必要がある。
また、団体を担っていくのは、パーソナルであり、スタッフの構成は団体の持続を可能
にする大きな要因である。アフガニスタンでは、長年の紛争により多くの若者が基礎教育
の機会を失っている。基礎教育を受けていない若者でも、事務的スキルを獲得し、英語や
コンピューターなど得意とするが、逆に社会的知識に欠けている場合もある。能力があっ
ても、アフガニスタン特有の習慣・文化の中で、地域住民とやり取りが得意とは限らない。
交渉社会の中、政府や地域指導者達とコミュニケーションできる人材は必須である。また、
高給与を求めて、職を転々とし定着しない場合、事務所全体のバランスが崩壊し、治安上
「家族的事務所」というモットーも崩れてくる。汚職や内部犯行による事件に巻き込まれ
やすい環境となる。このような背景を踏まえてスタッフを構成する必要がある。
6-3-3
治安への配慮
アフガニスタンで事業を行うにあたって核となるが、治安の問題である。仮に、何らか
の事件に巻き込まれた場合、SVA だけでなく外部に多大な影響を与える可能性がある。特
に国際スタッフ(日本人スタッフ)が事件に巻き込まれた場合は、国際的問題に発展する
ほか、日本国のアフガニスタン援助に対しても影響を与えかねない。このため、団体とし
39
て事務所及びスタッフの治安危機管理を行うことは必須である。
40
コラム:平和構築と図書館活動
∼見えない敵との戦いが終わる日を∼
アフガニスタンでの図書館活動が多くの課題を抱える中、何故継続が必要なのかと確か
に自問が絶えない。しかし、子ども達に接してみると、心の傷を負っている子どもが多い
とはいえ、子どもはどこの世界の子ども同じだと感じる。それなのに、どうしてアフガニ
スタンの子どもは成長したときに戦争へと走ってしまったのだろうか。
ニューリスタンの山奥で、少年兵(11 歳くらい)に何故軍閥の兵士になることを選んだの
か尋ねた。「敵を倒すため」と答える彼に、誰が敵なのか尋ねると首をかしげたまま沈黙
した。敵などいないのだと周囲にいたアフガン人が答えた。しかし、村で食べ物がなくな
ると親は子どもを兵士として出すという。そうすれば 3 食は食べられるからである。そう
して、子どもは知らない「敵」と戦い続けるのである。タリバンの兵士のほとんどがマド
ラッサ(宗教学校)を卒業していることで知られているが、こういったマドラッサでは貧困
の子ども達に食事を与えて受け入れたという。子ども達にしてみれば、食べるものがなく
なったときに助けてくれたのがマドラッサ(宗教学校)なのである。
例え小さな活動でもアフガニスタンでの図書館活動は、今後の平和構築に大きく貢献で
きるのではないかといえる。子ども達が幼い頃から世界観を広げることは、相互理解に欠
かせず、相互理解なくして戦争は止められないからである。国際化が進む中で、ナンガハ
ールの田舎の人たちは未だに異教徒を見ただけで汚れると信じこんでいる人はたくさん
いる。それが様々な情報を得た上での選択であれば仕方がないが、孤立した世界が生み出
していることであれば悲しいことである。
戦争しか知らない子どもたちと平和を共に考えていく、そんな図書館活動を続けていけ
たらと考える。
(2005 年度「アフガニスタン初等教育改善事業のこれまでの成果」より)
41
アフガニスタン事業
第一フェーズ(2003~2005)事業評価
添付資料
添付資料一覧

添付資料 1:教育協力プロジェクト運営の基準(ミニマム・スタンダード)

添付資料 2:活動対象地域:学校建設データシート

添付資料 3:建設校への配布備品・文房具リスト

添付資料 4:学校建設後の教室数変化表

添付資料 5:SVA 出版図書一覧

添付資料 6:絵本配布実績表(2003~2005)

添付資料 7:図書の使用状況聞き取り

添付資料 8:2005 年

添付資料 9:研修会を受けたカウンターパートの数とプレゼンテーターとして参加した回数

添付資料 10:2004・2005 年度

添付資料 11:各学校図書室及び図書館員の配置状況

添付資料 12:事業 PDM

添付資料 13:プロジェクトの計画変更について

添付資料 14:プロジェクト実施体制

添付資料 15:SVA アフガニスタン事務所安全退避方針
コミュニティ文庫利用者数
学校別研修会参加者数
添付資料 1
教育協力プロジェクト運営の基準
提案理由
SVA の教育協力事業のガイドラインとしては、定款および海外事業の活動指針がある。
しかしながら、現在課題となっている事業の見直しの基準がないため、事業を改善するに
あたって何を基準に事業を見なおせばよいのかがはっきりしていない。
なお、この文書は、「基準」であるので、「~であった方が望ましい」というレベルでは
なく、「~でなければならない」レベルのことのみを内容としている。また、海外での緊急
救援事業はこの基準は適用されない。
·
全プロセスの共通なこととして

·
SVA の定款および海外事業の活動指針と合致していなければならない。
発掘時

ニーズ調査を行い、以下の項目を含む報告書を作成しなければならない。①対象
国・地域の経済社会文化政治状況、②教育状況・政策、③他の援助団体の動向、
④満たされていないニーズと SVA ができることの提案。
·
形成時

プロジェクト形成調査を行わなければならない。

プロジェクトデザインマトリックス(PDM)を作成し、①プロジェクト目標、
②成果、③活動、④投入(予算、人員)、⑤指標、⑥データ入手手段、⑦外部条件、
⑧実施期間、⑨ターゲットグループ、⑩ハンドオーバーする相手を明確にしなけ
ればならない。

成果と目標達成度を明確にするモニタリングのメカニズムを作らなければならな
い。

モニタリング、評価を事業計画に盛りこみ、予算化しなければならない

現在実施中の事業でPDMのない事業は、これを作成し、実施期間、ハンドオー
バーする相手を明確にしなければならない。
·
実施時

PDMの指標のベースライン調査を行わなければならない。

年に1回、モニタリング報告書を作成し、成果、プロジェクト目標の達成度を指
標を使って報告しなければならない。
添付資料 1

·
PDM は、モニタリングに基づいて、必要があれば変更してもよい。
評価時

終了時に海外事業の活動指針に基づいて評価を行わなければならない。

プロジェクトの継続が必要な場合、評価に基づいて、PDMを作成しなければな
らない。
·
実施手続き

東京事務所海外事業課は、以下をチェックし、海外事務所を支援しなければなら
ない。

PDM

モニタリングシステム

基準が各プロジェクトで遵守されているか
添付資料2
活動対象地域: 学校建設
2003年
郡
学校名
建設着工
建設終了 建設期間
仕様
支援者
備考
バティコット郡
タキヤガレイ小学校
2003年9月3日 2004年3月12日 6ヶ月9日 6教室、職員室、倉庫
WCRP日本委員会2002
2003年11月1日 2004年7月30日 9ヶ月
ラルプール郡
チャオキノール小学校
12教室,図書館
WCRP日本委員会2003
*ネジャットセンターの紹介により事業を開始したダライヌール郡スータン村での小学校建設。2003年7月にスタートしたが、コミュニティ内の派閥抗争のため、11月に建設断念。基礎工事をはじめた
2004年
郡
学校名
建設着工
建設終了
建設期間
仕様
支援者
ゴシュタ郡
アハマディ小学校
2004年1月5日 2004年9月20日 9ヶ月半
12教室、図書館
法瀧寺
バティコット郡
ラルプール郡
バティコット郡
チャルデイヒ高等学校小学校男子部(その1)
グルダック小学校
チャルデイヒ高等学校小学校男子部(その2)
2004年1月15日 2004年8月15日 7ヶ月
2004年11月8日 2005年5月28日 6ヶ月半
2004年12月23日 2005年5月28日 5ヶ月
12教室、図書館
12教室、図書館
12教室、図書館
JPF
WCRP日本委員会2004
JICA CEP
郡
コット郡
ダライヌール郡
学校名
ザルバザチャ小学校
アムラ小学校
2005年9月12日 2005年6月30日 9ヶ月半
2005年9月25日 2005年6月30日 9ヶ月
仕様
12教室,図書館
12教室,図書館
ダライヌール郡
ドゥダラク小学校
2005年9月18日
12教室,図書館
支援者
NGO支援無償
NGO支援無償
草の根・アフガン寺小屋プロ
ジェクトinしまね
備考
壁の追加工事あり。
05年7月水害発生の
ため、使用中断。
2005年
建設着工
建設終了
2006年8月末日(予定)
建設期間
備考
*着工日は契約日を仮に記入
*着工日は契約日を仮に記入
添付資料3
学校に配布した文房具品
No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
備品名
数量
5
21
50
13
13
13
5
13
2
13
13
13
13
13
50
ファイル(大)
ファイル(小)
ボールペン
登録ノート
チョーク
白紙
穴あけパンチ
黒板消し
鉛筆削り
ホチキス
ホチキス針
定規
セロハンテープ
テープホルダー
ノート
単位
個
個
本
冊
箱
パック
個
個
個
個
箱
個
個
個
冊
備考
1パック500枚入り
学校に配布した学校用備品
No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
備品名
数量
13
13
12
1
13
2
1
4
1
机
椅子
棚
グラス棚
黒板
丸テーブル
本棚(大)
本棚(小)
本棚(木製)
単位
台
脚
架
架
架
卓
架
架
架
備考
タキアガレイ小学校(8)
タキアガレイ小学校(8)
タキアガレイ小学校(8)
タキアガレイ小学校はなし
タキアガレイ小学校(8)
チャルディ第2学校及び2005年度学校のみ
タキアガレイ小学校はなし
タキアガレイ小学校はなし
チャルディ第2学校及び2005年度学校のみ
子ども用文房具
No
1
2
3
4
5
6
7
8
備品名
ノート(大)
ノート(小)
定規
色鉛筆(12色)
ボールペン
鉛筆
消しゴム
鉛筆削り
数量
2
2
1
1
2
2
2
1
単位
冊
冊
セット
箱
本
本
個
個
*子どもへの配布数は、人数変動から各学校へと任せた。
*QTYはSVAが当初計画したもの
備考
*基本的には申請時の子どもの数
添付資料4
活動対象地域: 学校建設後の教室数変化表
2003年
郡
学校名
バティコット郡
タキヤガレイ小学校
ラルプール郡
チャオキノール小学校
建設前
0教室 (青空学校)
0教室 (青空学校)
建設後
現時点での青空教室数
6教室、職員室、倉庫 4青空教室
11教室、職員室、図書室 3青空教室
学校名
アハマディ小学校
チャルデイヒ高等学校小学校男子部(その
グルダック小学校
チャルデイヒ高等学校小学校男子部(その
建設前
0教室 (青空学校)
0教室 (青空学校)
0教室 (青空学校)
11教室、職員室、図書室
建設後
現時点での青空教室数
11教室、職員室、図書室 6青空教室
11教室、職員室、図書室
11教室、職員室、図書室 4青空教室
11教室、職員室、図書室 13青空教室
学校名
ザルバザチャ小学校
アムラ小学校
ドゥダラク小学校
建設前
0教室 (青空学校)
0教室 (青空学校)
0教室 (青空学校)
建設後
現時点での青空教室数
11教室、職員室、図書室 20青空教室(12男子児童、8女子児童)
11教室、職員室、図書室 11教室
8教室、図書館、職員室 9教室
2004年
郡
ゴシュタ郡
バティコット郡
ラルプール郡
バティコット郡
2005年
郡
バティコット郡
ダライヌール郡
ダライヌール郡
*1)ただし、中・高等部も含む
*1)
添付資料5
SVA出版図書一覧
No
1
2
3
4
5
6
タイトル
An Old Man
おじいさん
The Ant & Frog
ありとかえる
Cooperation
協力
The Grand Father, Farther, and Son
おじいさん、父、息子
The Result of Untruth
不誠実の結果
NAZO ANA
ナゾアナ
The Result of Schism
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
Friendship
友達
Two Cats
2匹の猫
A Wolf and a Shepherd
おおかみと羊かい
The Mouse and the Rabbit
ねずみとウサギ
Kings of the Birds
鳥の王様
Servant Boy
少年ニッキ
The Falcon, Deer and the Mouse
ファルコンと鹿とねずみ
Gulalai
グラライ
Fire and Fight
炎と戦い
Own House
自分の家
Unity
絆
Remorse
不注意
Samanak
サマナック
Black Poison
黒い毒
White Teeth
白い歯
The Blind Man and the Man with One Leg
目の見えない男と片足の男
* 全ての絵本は右開きとなります。
種類
出版年
ご支援者
絵本
2003 DENTSU Charity Bookfair Club (Japan)
絵本
2003 DENTSU Charity Bookfair Club (Japan)
絵本
2003 DENTSU Charity Bookfair Club (Japan)
絵本
2003 JAPAN PLATFORM
絵本
2003 JAPAN PLATFORM
絵本
2004 WCRP Women's Committee
絵本
2004 WCRP Women's Committee
絵本
2004 MIZUHO
絵本
2004 JBBY
絵本
2004 General Donation
絵本
2004 WCRP Women's Committee
絵本
2004 SHINYO-EN
絵本
2004 WCRP Women's Committee
絵本
2005 WCRP Women's Committee
絵本
2005 WCRP Women's Committee
絵本
2005 金/丈二さん関係者
絵本
2005 金/MIYOKO MEMORIAL
絵本
2005 金
絵本
2005 金/丈二さん関係者
絵本
2005 MIYOKO MEMORIAL
絵本
2005 General Donation
財団法人 島根国際センターアフガニスタン子どもピース基
財団法人 島根国際センターアフガニスタン子どもピース基
財団法人 島根国際センターアフガニスタン子どもピース基
財団法人 島根国際センターアフガニスタン子どもピース基
紙芝居
2005 MR.FUJITA
紙芝居
2005 MIYOKO MEMORIAL
添付資料6
絵本配布実績表(2003~2005)
2003
学校名
郡
SVA出版本
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
Ahmadi
Ghoshta
Core
Chaknawar
Lalpur
Core
Takia Gary
Batikote
Core
Chardhi No 1
Batikote
Core
Chardhi No 2
Batikote
Core
Gul Dag
Lalpur
Core
Bari Kab
Batikote
Satellite
Hameed Baba
Ghoshta
Satellite
Naswan No 2
Bibi Aisha
Alai Girls
Mia Omar No 1
Lacha Pur
Jalalabad
City
Jalalabad
City
Jalalabad
City
Jalalabad
City
Batikote
Nasrat
Abdul Wakeel
Mia Omar No 2
Abdul Rahim Niazi
Sarband
Jalalabad
City
Jalalabad
City
Jalalabad
City
Jalalabad
City
Ghoshta
Jalalabad
City
Jalalabad
City
Istiqlal
Nazo Ana
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Satellite
Chardhi Girls
Batikote
Satellite
Qala e Shahi Girls
Darainoor
Satellite
Amla Girls
Darainoor
Satellite
Qala e Shahi Boys
Darainoor
Satellite
Tajrobawi
Jalalabad
City
Satellite
合計
2004
学校の形態
日本の本
ウルドゥ語/イラン語 その他(大人向け)
SVA出版本
日本の本
2005
ウルドゥ 語/イ ラン語
BBC
その他(大人向け)
SVA出版本
日本の本
合計
ウルドゥ語/イラン語
BBC
その他(大人向け)
150
0
40
44
45
300
0
0
0
0
579
150
41
24
57
48
300
0
0
0
0
620
150
41
24
57
48
300
0
0
0
0
620
150
0
40
48
45
300
0
0
0
0
583
0
0
0
0
0
384
0
0
100
50
534
0
0
0
0
0
500
0
0
100
50
650
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
100
0
0
50
20
200
0
0
0
0
370
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
200
0
0
100
40
400
0
0
0
0
740
3,500
82
234
1,655
818
8,184
0
0
200
100
14,316
添付資料 7
2006 年 3 月 20 日
図書使用状況(アフガニスタン事業評価)
チャウキノール小学校訪問(3 月 7 日)
Mohamand Gulab 氏(校長)と Tourkhan(事務長)にインタビュー。
図書館の様子
・ ほこりをかぶった本が散乱している。
・ その後、2~3 人の先生が本を整理しだした。
・ 本の使われ具合をチェックした結果は以下の通り。
SVA 本の No.1(2 冊)
、No.3(1 冊)
、No.4(3 冊)
、No.5(3 冊)の傷みが激しいので、使われていると
感じる。しかし、No.6 以降はほとんど使われていない様子。また、BBC の絵本は、
「The story of rabbit」
「石鹸の話」
「Three cow and the wolf」がそれぞれ 1 冊ずつ、よく読まれていた。→絵本の配布時期を確
認すること。
・ 余談だが、我々が写真を撮ろうとすると児童がよってくるが、それを追い払うのに、先生方が子供達に石
を投げていた。
・ 20 歳まで小学校に何度でも来ることができる。→よって、留年はわかるが、退学は正確にはわからない。
チャルディヒ高等学校小学校男子部 No.1 と No.2(3 月 8 日訪問)
・ 配布した教室内の棚の中をチェックしたが、紙が散乱していて、ほとんど使われていない模様。
・ ある NGO が絵本をどかしたらしいとの情報が当会スタッフよりはいったが、訪問した時には、きちんと
並べられていた。
・ 小学校 No.1 の図書室では、SVA 出版絵本の No.1~No.5(各 2~3 冊)が良く使われていて、No.4 の絵本
はワークショップで行ったように、絵本を糸で直して使われていた。
・ 小学校 No.2 の図書室は、きれいに本が並べられているだけで、使った形跡はない。
ビビアイシャ高等学校(3 月 9 日訪問)
もともと女子校だったこともあり、男子はいるものの先生の子どもが来ているだけというように、身内が多
い。よって、男子がいても、学年の小さい子が多い。Principle と Head Master の両方がいる。SVA のワーク
ショップ後、自分達で図書室を作った。図書館員は先生方が交代で行う。
・ SVA 出版絵本 No.4、No.5、No.8 と「2 匹の猫」の絵本が比較的に使われているが、全体的にほとんど使
われていない感じ。
・ 図書室は、毎日開館し、子供達も借りにきていると言う説明(ただし、その割には、本が傷んでいない?)
。
タジロバビ高等学校(3 月 9 日訪問)
・ タジロバビは、実験的なという意味もあり、教員養成大学付属高校という意味あいが強い。SVA の隣。
・ 小学部男子だけで 3,770 人、小学校女子部で 2,000 人いる。校長先生は 2 人いて、1~3年生だけで 21
クラス、4~6 年生が 25 クラスとのこと。
・ 午後に訪問したため、中学校男子が主に教室を使っていた。
・ 図書室での授業を見学したが、本は使われていない感じ。その際、SVA 出版絵本「不誠実の結果」を使っ
て、子供達が劇を行っていた。
・ 校長先生曰く、
「日本は焼け跡から再建した。日本と同じように教育に力をいれたい。
」また、この校長先
生も、日本とアフガンが独立した年は同じという偉大な勘違いをしていた。
【図書室を回っての所感】
タリバン時代には絵本を禁じられていて、その当時の先生が半分以上学校に残っていることを考えると、絵
本が学校におけて、読み聞かせが受け入れられていること自体が大きな進歩とも言えるだろう。
課題として、初期の絵本は使われているが、その後の 1 年間は使われていないように感じる。詳細は、事業
評価に譲るが、使われない原因として、図書の冊数に比べて児童数が圧倒的に多いこと。図書館員がいないこ
とが考えられる。建設校については、当会スタッフが月に1~2 回巡回していることを考えると、学校の先生
とどこまで使用について話し合っているのか、モニタリングの方法が適切か検討の余地があるかもしれない。
添付資料8
2005年 コミュニティ文庫利用者数(合計)
男子
午前
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
合計
前期CGR (1~6月)
後期CGR (7~12月)
男子
午後
女子
午前
3-6歳 7-10歳 11-15歳 合計 3-6歳 7-10歳 11-15歳 合計 3-6歳 7-10歳 11-15歳
415 370 270 1,055 160
270
475
905
265
310
155
200 190 179 572 195
240
277
712
275
240
165
152 276 323 751 106
186
234
526
209
288
271
167 190 210 567 167
198
220
585
180
170
160
130 276 311 717
93
159
227
479
202
295
273
186 262 346 794 131
192
237
560
255
281
305
240 240 238 718 230
235
225
690
345
322
351
216 216 216 648 212
212
212
636
320
320
320
93
93
93 279
87
88
98
273
170
170
170
110 110 220 440 127
152
220
499
220
275
220
95 103 180 378 119
162
180
461
160
185
160
40
50
51 141
30
55
65
150
135
59
85
2,044 2,376 2,637 7,060 1,657 2,149 2,670 6,476 2,736 2,915 2,635
-13%
-6%
4% -5% -3%
-6% -11%
-8%
-1%
-2%
12%
-26% -23% -23% -24% -29% -21% -19% -22% -14% -25% -21%
CGR(Compound Growth Rate)
成長率
女子
午後
合計 3-6歳 7-10歳 11-15歳
730
65
220
290
680
140
220
291
768
128
203
189
510
162
167
179
770
128
203
189
841
153
176
186
1,018 355
320
325
960
310
310
320
510
73
67
115
715
61
49
220
505
33
37
140
279
14
21
100
8,286 1,622 1,993 2,544
2%
15%
-4%
-7%
-19% -42% -36% -18%
合計
合計
575
651
520
508
520
515
1,000
940
255
330
210
135
6,159
-2%
-28%
男子
1,960
1,284
1,277
1,152
1,196
1,354
1,408
1,284
552
939
839
291
13,536
-6%
-23%
女子
1,305
1,331
1,288
1,018
1,290
1,356
2,018
1,900
765
1,045
715
414
14,445
1%
-23%
総計
3,265
2,615
2,565
2,170
2,486
2,710
3,426
3,184
1,317
1,984
1,554
705
27,981
-3%
-23%
備考
添付資料8
2005年 コミュニティ文庫利用者数(平均)
男子
午前
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
合計
3-6歳 7-10歳
26
23
10
10
7
12
10
11
6
12
8
12
11
11
10
10
5
5
5
5
5
6
5
6
108 123
男子
午後
11-15歳
17
9
14
12
14
16
11
10
5
10
10
6
134
合計 3-6歳 7-10歳
66
10
17
29
10
12
33
5
8
33
10
12
31
4
7
36
6
9
33
10
11
29
10
10
16
5
5
20
6
7
21
7
9
18
4
7
365
86
113
女子
午前
11-15歳
30
14
10
13
10
11
10
10
6
10
10
8
141
合計 3-6歳 7-10歳
57
17
19
36
14
12
23
9
13
34
11
10
21
9
13
25
12
13
31
16
15
29
15
15
16
10
10
23
10
13
26
9
10
19
17
7
339
146
149
女子
午後
11-15歳
10
8
12
9
12
14
16
15
10
10
9
11
135
合計 3-6歳 7-10歳
46
4
14
34
7
11
33
6
9
30
10
10
33
6
9
38
7
8
46
16
15
44
14
14
30
4
4
33
3
2
28
2
2
35
2
3
430
80
100
合計
11-15歳
18
15
8
11
8
8
15
15
7
10
8
13
134
総計
合計 男子 女子
36
123
82
204
33
64
67
131
23
56
56
112
30
68
60
128
23
52
56
108
23
62
62
123
45
64
92
156
43
58
86
145
15
32
45
77
15
43
48
90
12
47
40
86
17
36
52
88
314
704
744 1,448
開館日数
16
20
23
17
23
22
22
22
17
22
18
8
添付資料9
研修会を受けたカウンターパートの数とプレゼンテーターとして参加した回数
1) 2004年度 (研修会開催回数:24回、合計72日間)
No
名前
性別
開始日2004年8月8日 終了日2004年10月13日
参加した研修回数
研修会での講義内容
・ 紙芝居
24
・ 図書で使用する教材の説明
・ SVAの図書館事業紹介
24
・ 図書館活動の紹介
・ 紙芝居
23
・ お絵描き
起動日数
役職
1 Shahaga
男
Nangarhar Boys High School教員
74
2 Daud Shah
男
Mia Omar Boys High School教員
76
3 Gull Bota
女
Bibi Zainab Girls High School教員
71
2) 2005年度 (研修会開催回数:24回、合計72日間)
No
名前
性別
役職
開始日2005年12月10日 終了日2006年2月8日
起動日数
午前
午後
研修会での講義内容
1 Fateh Mohammad 男
Nangarhar Boys High School教員
28
14
2 Daud Shah
男
Mia Omar Boys High School教員
19
38
3 Maleka
女
Naheed Shahid Middle School教員
3
30
4 Gull Shan
女
Bibi Aisha Middle School教員
34
5
5 Gull Nabi
6 Abdul Qayum
男
男
ナンガハール州教育局総務課職員
ナンガハール州教育局学校・教員指導課
0
0
0
0
・ 紙芝居
・ 絵本の価値
・ SVAの図書館事業紹介
・ 図書館活動の紹介
・ ハンドクラフト教材作り
・ おはなし
・ 研修会で使用する教材の準備・配布手伝い
(教員たちの紙芝居作りのアシスト)
・ 研修会で使用する教材の準備・配布手伝い
(教員たちの紙芝居作りのアシスト)
・ 研修会を受講したのみ
・ 研修会を受講したのみ
*研修会は3日間の日程で行われる。研修会の参加回数は、3日間=1ワークショップ
*起動日数は、カウンターパートが実際に研修会に関わってくれた日数
*ワークショップより多い日数分は事前ワークショップを本人たちが受講したり、準備に手伝ったりした日数
参加した研修回数
13
19
11
12
0
0
添付資料10
2004・2005年度 学校別研修会参加者数
2006年4月現在
No
学校名
郡
参加者数
2004年
2005年
1 Mia Omar No1
2 Mia Omar No2
Jalalabad
45
62
Jalalabad
57
61
3 Nazo Ana
4 Istiqlal
Jalalabad
28
40
Jalalabad
18
19
5 Nasrat
6 Bibi Aisha
Jalalabad
74
92
Jalalabad
38
81
7 Abdul Rahim Niazi
8 Naswan No2
Jalalabad
26
27
Jalalabad
80
90
9 Tajrobawi
10 Akai Girls
Jalalabad
92
97
Jalalabad
64
61
11 Abdul Wakeel
12 Hameed Baba
Jalalabad
57
80
Goshta
29
57
13 Sarband
14 Bari Kab
Batikote
13
14
Batikote
17
24
15 Lacha Pur
16 Amla Girls
Darainoor
15
17
Darainoor
15
20
17 Qala e Shahi Boys
18 Qala e Shahi Girls
Darainoor
14
14
Goshta
24
21
19 Ahmadi
20 Takia Garay
Goshta
9
14
Batikote
6
16
21 Chardhi Girls
22 Chardhi Boys
Batikote
25
16
Batikote
27
46
23 Chawkinor
24 Gul Dag
Lalpur
14
17
Lalpur
13
800
16
1,002
Total
添付資料11
図書室の設置状況と図書館員の配置
2006年4月現在
No
学校名
1 Mia Omar No1
郡
図書室
図書館員
Jalalabad
あり
2 Mia Omar No2
3 Nazo Ana
Jalalabad
あり
Jalalabad
あり
4 Istiqlal
5 Nasrat
Jalalabad
Jalalabad
あり
6 Bibi Aisha
7 Abdul Rahim Niazi
Jalalabad
あり
Jalalabad
あり
8 Naswan No2
9 Tajrobawi
Jalalabad
あり
Jalalabad
あり
10 Alai Girls
11 Abdul Wakeel
Jalalabad
あり
Jalalabad
あり
12 Hameed Baba
13 Sarband
Goshta
あり
Batikote
あり
14 Bari Kab
15 Lacha Pur
Batikote
あり
Darainoor
あり
16 Amla Girls
17 Qala e Shahi Boys
Darainoor
あり
18 Qala e Shahi Girls
19 Ahmadi
Goshta
20 Takia Garay
21 Chardhi Girls
Batikote
あり
Batikote
あり
22 Chardhi Boys
23 Chawkinor
Batikote
Darainoor
Goshta
Lalpur
Lalpur
24 Gul Dag
合計
割合
あり
あり
あり
あり
あり
あり
あり
15
62.50%
9
37.50%
添付資料 12
ナンガハール州における初等教育改善事業
PDM (1)
対象地域
受益者
126 校(ダライヌール郡 51 校、ロダット郡 44 校、
アチン郡 31 校)の教員 260 人、児童 11,960 人(児
童 46 人の教員 1 人で計算)
データ入手方法
ナンガハール州ダライヌール郡、ロダット郡、アチン郡
プロジェクト要約
上位目標
子どもが知識を増やし、技能を伸ばし、態度を発達させる
プロジェクト目標
初等教育が改善する
成果
1.
小学校の施設が 12 校建設され、住民によって維持管理される
2.
教員がおはなしを授業に取り入れる
3.
児童が本に接する機会を得る
4.
カウンターパート組織の能力が強化される
5.
おはなしが教員研修、養成課程に取り入れられる
指標
カウンターパート
カウンターパート:ネジャットセンター
協力機関:ナンガハール州教育局、各郡教育局、ナンガ
ハール州情報文化局、ジャララバード教員養成学校
外部条件
2005 年までに
2005 年までに
· 就学率の向上
· 出席率の向上
· 子ども中心の教授法が普及する
2005 年までに
1-1 建設、維持管理されている学校数
·
·
·
県教育局、各学校のデータ
県教育局、各学校のデータ
観察、インタビュー
研修を受けた教員が退職しない
1-1 プロジェクト報告書、モニタリング
教員の給与が政府によって支給される
活動
1-1 学校委員会の教化
1-2 住民参加による学校施設の建設
1-3 保護者向けの啓発ワークショップ
1-4 住民により学校施設の維持管理
1-5 モニタリング、文具の配布:年に 3 回
1-6 教員給与支払いのための県教育局へ働きかけ
2-1 おはなし研修マニュアルの開発
2-2 おはなし研修の実施:12 回×20 人=240 人
2-3 フォローアップ
3-1 パシュトゥー語の図書の購入:130 校×15 タイトル×3 冊
3-2 パキスタンでの図書購入、パシュトゥー語への翻訳、訳文貼り付け:130 校×20 タイトル×3 冊
3-3 紙芝居の購入、パシュトゥー語への翻訳、訳文貼り付け:130 校×5 タイトル×1 部
3-4 パシュトゥー語図書の出版:10 タイトル×2,000 部発行、130 校×10 冊配布
3-5 図書箱と図書の配布
4-1 ネジャット/SVA 教育事業ユニットの設立
4-2 ユニットスタッフのタイ、カンボジアでの研修
4-3 日本の専門家によるスタッフのおはなし研修
4-4 経理システムについての調整、研修
4-5 OJT による研修
5-1 県教育局、教員養成学校への働きかけ
5-2 県教育局、教員養成学校の職員への研修
5-3 教員養成学校への図書の配布
2-1 おはなしを授業に取り入れている教員の割合
2-2 教員と児童の間のコミュニケーションが改善された割合
3-1 配布された本が利用されている学校の割合
2-1 モニタリング
2-2 モニタリング
3-1 モニタリング
4-1 ネジャットセンターがおはなしの研修をできるようになる
4-2 ネジャットセンターが教育事業を運営できるようになる
5-1 教員養成学校により教員養成、教員研修課程におはなしの研修が取り入
れられる
4-1 観察
4-2 観察
5-1 養成、研修課程
投入
●SVA
人材:プロジェクトマネージャー1 人、調整員 1 人、図書館活動専門家 1 人(短期)
資金:1 億 1100 万円
住民、政府機関がプロジェクトに反対しない
前提条件
治安状況が悪化しない
●ネジャットセンター
ジャララバード、ペシャワール、カブール事務所のスペースの提供
人材:プロジェクトマネージャー1 人、調整員 1 人、学校建設エンジニア 1 人、研修トレーナー2 人、図書編集者 1 人、図書開発
補助 1 人、総務 1 人、ドライバー2 人、お手伝い 1 人、警備員 2 人
*PDM(2)がコンピューターの問題で行方不明
SVA アフガニスタン事務所評価
添付資料 12
ナンガハール州における初等教育改善事業
PDM (3):2003 年 9 月 20 日作成
対象地域
ナンガハール州ジャララバード市、ダライヌール郡、バチコット郡、ラル・プール郡、ナジアン郡、コギャニ郡、他 1 郡
プロジェクト要約
上位目標
子どもの心身ともに健全な発達が保障される
プロジェクト目標
ナンガハール州における初等教育が改善する
成果
1.
小学校の施設が 10 校建設され、住民によって維持管
理される
2.
3.
受益者
100 校の教員 200 人、児童 9,200 人(児童 46 人の教員 1
人で計算)
指標
データ入手方法
2005 年までに
2005 年までに
· 就学率の向上
· 出席率の向上
· 子ども中心の教授法が普及する
2005 年までに
1-1 建設、維持管理されている学校数
·
·
·
県教育局、各学校のデータ
県教育局、各学校のデータ
観察、インタビュー
研修を受けた教員が退職しない
1-1 プロジェクト報告書、モニタリング
教員の給与が政府によって支給される
各学校の教員が本の重要性を理解し、通常授業に取
り入れることによって教授法が改善され、子ども達
が主体的に学ぶようになる
2-1 おはなしを授業に取り入れている教員の割合
2-2 教員と児童の間のコミュニケーションが改善された割
合
2-3 配布された本が利用されている学校の割合
2-1 モニタリング
2-2 モニタリング
事業に関わるスタッフ及びカウンターパートの事業
実施能力が強化される
3-1 スタッフが教員事業を運営実施できるようになる
3-2 州教育局(または州情報文化局)が図書館活動の実施
に意欲を示す
3-3 教員養成学校により教員養成、教員研修課程におはな
しの研修が取り入れられる
3-1 観察、報告書
3-2 観察、懇談
活動
1-1 住民参加による学校建設
1-2 文房具の配布
1-3 校舎維持・管理のためのワークショップ実施
1-4 トイレ・ワークショップの実施
1-5 モニタリングの実施
2-1 学校図書室(モデル図書館)設立
2-2 図書室専門員、教員ワークショップの実施
2-3 移動図書箱活動の実施
2-4 パシュトゥー語絵本の出版
2-5 コミュニティ文庫の実施
2-6 モニタリングの実施
2-7 パシュトゥー語の図書の購入、パシュトゥー語への翻
訳、訳文貼り付け(日本語、イラン語、ウルドゥ語の絵本
購入)
3-1 スタッフの能力強化(海外研修、実務研修)
3-2 カウンターパートの能力強化
3-3 教員養成学校への図書配布、職員への研修
カウンターパート
カウンターパート:ネジャットセンター
協力機関:アフガニスタン教育省学校建設局及び初等教育
局、ナンガハール州教育局、各郡教育局、ナンガハール州
情報文化局、ジャララバード教員養成学校
外部条件
2-1 モニタリング
3-3 養成、研修課程
投入
●SVA
人材派遣:プロジェクトマネージャー1 人、調整員 1 人、図書館活動専門家 1 人(短期)
人材雇用:
調整員 1 人、学校建設エンジニア 1 人、学校建設アシスタント 1 人、図書館活動責任者 1 人、研修トレーナー2 人、
図書編集者 1 人、図書アシスタント 1 人、編集アシスタント 1 人、コミュニティ文庫手伝い 1 人、事務所管理責任者
1 人、フィールドコーディネーター1 人、経理・総務 1 人、コック 1 人、ドライバー3 人、警備員及び手伝い(事務所、
宿舎)7 人、カブール・サブ事務所責任者 1 人
資金提供
住民政府機関がプロジェクトに反対しない
前提条件
治安状況が悪化しない
●ネジャットセンター
カブール事務所スペースの提供
スタッフの斡旋、セキュリティー強化、アドバイス
SVA アフガニスタン事務所評価
添付資料 12
アフガニスタン難民子ども支援事業
PDM:2003 年 6 月 30 日作成
対象地域
パキスタン・ペシャワール市ボード市場
プロジェクト要約
上位目標
難民の子どもの知識、態度、価値が発達、改善される
プロジェクト目標
子ども達の精神状態が安定し、学ぶことの重要性に気づく
成果
1.
2.
3.
4.
5.
子どもが本に接する機会を得る
子どもが学ぶ機会を得る
アフガンの伝統・文化を学ぶ
子どもの健康状態が改善される
カウンターパートの能力が向上する
活動
1-1 子どもが母国語の絵本を読める
1-2 絵本の読み聞かせを実施する
1-3 ストーリーテーリングを実施する
2-1 識字学級を運営する
2-2 計算を教える
2-3 工作、その他のクラスを運営する
3-1 アフガンの伝統・文化を知る講座を実施する
3-2 アフガンの伝統音楽を学ぶクラスを実施する
4-1 子どもに対する健康相談を実施する
4-2 親に対するソーシャル・ワークを実施する
5-1 日本人専門家を招聘してローカルスタッフの研修を実
施する
5-2 スタッフの実務研修を実施する
指標
受益者
アフガニスタン難民の子ども 3,000 人
データ入手方法
カウンターパート
外部条件
2005 年までに
2005 年までに
親、コミュニティとの懇談、ヒアリング、スタッフ報告
センターに来る子ども達が積極的にセンターへの活動に関
わるようになる
2005 年までに
1.
スタッフ報告
1.
センターの文庫に来所する子どもの人数
2.
スタッフ報告
2.
センターの活動に来所する子どもの人数
3.
スタッフ報告、ヒアリング
3.
センターの活動に来所する子どもの人数、理解度の
4.
スタッフ報告、ヒアリング
割合
5.
スタッフ報告、スタッフとの面談
4.
センターのメディカル・ワーカーがチェックした子
どもの割合
5.
スタッフの仕事を報告、モニターにより定期チェッ
クする
投入
●SVA
人材
プロジェクトマネージャー1 人、調整員 1 人、
資金
パキスタン政府がアフガニスタン難民に対する政策を急変
しない
センターが安定して運営できる
パキスタン政府の NGO に対する対応が急激に変化しない
前提条件
難民の置かれている状況が急激に変化しない
●ネジャットセンター
情報提供、車両有償賃与
人材(SVA がすべて給与支給、運営指導)
ローカル・コーディネーター1 人、教育チーム 3 人、文庫スタッフ、メディカルスタッフ、ソーシャルワーカー、ロジ
スティック担当(ドライバー兼任)、チャウキダール、クック
SVA アフガニスタン事務所評価
添付資料 12
ナンガハール州における初等教育改善事業
PDM(E):図書館事業
対象地域
受益者
対象地域の教員、対象地域の児童
データ入手方法
ナンガハール州 8 郡
プロジェクト要約
上位目標
小学校の学校教育環境が改善される
指標
2005 年までに
· 児童の態度の変化
· 教育内部効率の変化
2005 年までに
· 図書館活動を取り入れている事業実施校数
· 学校で図書館活動に接した子どもの数
· 本を読んだことのある子どもの数
· 図書室もしくは図書スペースを設置した学校数
2005 年までに
1-1 ワークショップの参加者数
1-2 移動図書活動に参加した教員数
1-1 SVA ワークショップの参加リスト
1-2 モニタリングシート
② 図書館活動に必要な図書が整備される
2-1 SVA 出版本の配布数
2-2 図書の配布数
2-3 備品(移動図書箱)の配布数
2-1 SVA の配布リスト
2-2 SVA の配布リスト
2-3 SVA の配布リスト
③ カウンターパートが絵本・おはなし読み聞かせ及び図
書館活動について理解する
3-1 研修を受けたカウンターパートの人数
3-2 州教育局のスタッフがワークショップ実施にプレゼン
テーターとして参加した回数
3-1 カウンターパート用の研修会出席簿
3-2 SVA の活動レポート
④ 事業スタッフの事業実施能力が強化される
4-1 内・外部研修(国内外)を受けた数
4-1 研修会報告書
プロジェクト目標
事業実施校において、教員により図書館活動が行われる
成果
① 教員が図書館活動を行う技能を得る
活動
1-1 図書館活動ワークショップ
1-2 移動図書館活動
2-1 絵本の翻訳、配布
2-2 絵本及び紙芝居出版、配布
2-3 移動図書箱の製作、配布
3-1 教育局推薦スタッフの育成
3-2 情報文化局職員育成
3-3 コミュニティ文庫の運営 (モデル図書館運営)
4-1
4-2
4-3
4-4
事業スタッフの事業に関する能力強化トレーニング
事業スタッフの事務能力強化トレーニング
海外交流研修
図書館活動スタッフ会議への参加
1. 評価質問票
2. 評価質問票
1. モニタリングシート
2. モニタリングシート
3. 図書室の貸出し簿
4. SVA の記録
1人
運営費
車両 1 台
プロジェクト運営維持費
学校が閉鎖されない
校長が事業に反対しない
マリックが事業に反対しない
大規模な自然災害が起こらない
人材
ジャララバード
プロジェクトマネージャー(日本人)1 人
コーディネーター 1 人
図書館事業コーディネーターアシスタント 1 人
子ども図書館担当 2 人 (内一人は移動図書箱担当と兼任)
学校図書推進活動オーガナイザー 1 人
出版担当スタッフ 1 人
出版アシスタント 1 人
子ども図書館ボランティア 2 人
パートタイム事務員 1 人
情報文化局職員 1 人
ドライバー 1 人
子ども文庫警備員 2 人
事務所警備員 3 人
カブール
ロジスティック担当
カウンターパート
SVA、ナンガハール州教育局(カウンターパート)
外部条件
教育省の方針が変更されない
宗教者が反対しない
投入
資材、備品
出版絵本
紙芝居
パシュトゥン語、ダリー語絵本
ウルドゥー語、イラン語絵本
日本語絵本
移動図書箱
本棚
机、椅子
子ども用テーブル
文房具類
カーペット
地図などの教材
ホワイトボード
ワークショップマニュアル
ワークショップ用の文房具(絵の具など)
文庫用の本棚
文庫用の子どもテーブル
文庫用ゲーム類
文庫用の教材、文房具
·
·
製作、印刷した教材の搬入が大幅に遅れない
研修を受けた校長、教員が勤務を続ける
前提条件
·
治安が安定している
·
カウンターパートが事業に協力する
SVA アフガニスタン事務所評価
添付資料 12
ナンガハール州における初等教育改善事業
PDM(E): 学校建設事業
対象地域
ナンガハール州 8 郡
プロジェクト要約
上位目標
小学校の学校教育環境が改善される
指標
受益者
対象地域の教員、対象地域の児童
データ入手方法
2005 年までに
· 児童の態度の変化
· 教育内部効率の変化
1.
2.
評価質問票
評価質問票
プロジェクト目標
設備の整った小学校へのアクセスが提供される
2005 年までに
·
SVA 建設校における児童の登録増加人数
·
教員の増加人数
1.
2.
州教育局の生徒登録表
州教育局の教員登録票
成果
① 校舎不足が解消される
2005 年までに
1-1 使用されている建設された学校の教室の数
1-2 一教室あたりの生徒数の変化
1-1 活動レポート
1-2 活動レポート
② 必要な備品が整備される
2-1 教材、備品の使用状況
2-2 文房具の使用状況
2-1
2-2
③ トイレが利用される
3-1 トイレの利用状況
3-1 評価の質問票
投入
資材、備品
校舎
ベランダ
備え付け椅子
教員用棚
教員用机、椅子
カーペット(プラスチック、敷きカーペット)
教員用文房具(ファイル、ホッチキスなど)
黒板
維持管理マニュアル
活動
1-1 学校建設
1-2 校舎維持、管理のワークショップ
2 文房具の配布
3 トイレワークショップ
人材
プロジェクトマネージャー(日本人)1 人
コーディネーター 1 人
建設事業コーディネーターアシスタント 1 人
学校建設アシスタント 1 人
モニタリングスタッフ 1 人
サイトエンジニア 3 人
事務所警備員 1 人
ドライバー 2 人
経理担当 1 人
カウンターパート
SVA、ナンガハール州教育局(カウンターパート)
外部条件
教育省の方針が変更されない
宗教者が反対しない
学校が閉鎖されない
校長が事業に反対しない
マリックが事業に反対しない
大規模な自然災害が起こらない
評価質問票
SVA の配布報告書
注文していた資材の搬入が遅れない
前提条件
·
治安が安定している
·
カウンターパートが事業に協力する
運営費
車両 2 台
発電機 2 台
プロジェクト運営費
SVA アフガニスタン事務所評価
添付資料 13
プロジェクトの計画変更について
初等教育改善事業を目指し、図書館事業と学校建設事業で、3 年後にローカル NGO に移
行するはずだった事業であるが、事業内容及びカウンターパートの変更を余儀なくされた。
以下のその原因と対処方法について、述べたい。
1)事業内容の変更
添付資料 12:事業 PDM を参照
2)カウンターパートの変更
MOU を 03 年 1 月末に結び、2 月には NGO 登録を済ませ、4 月に事務所を開設した。し
かし、事務所開設当初から様々な課題があり、2005 年からカウンターパートを変更して現
在に至っている。
特に、初年度(2003 年)に多くの課題があったが、主だったものは以下の通りである。
・ N の指名したローカル・コーディネーターの退職(3 月)
・ 建設事業スタッフの欠員が続く(4~7月)
・ 事業の運営体制についての見解の違い(4月以降)
・ 不適格な経理処理(6 月)
・ スータン村での事業中止(11 月)
・ 事務所の家主問題による事務所引越し(11 月)
N も SVA も、現在も友好的な関係を保つ、事務所開設当初からネジャットから移籍
したスタッフが、ローカルのトップのワヒド初め、7 人ほど継続して働いていることを
考えれば、基本的には、友好関係には大きな問題もなく、今後も協力していくことが確
認されている。しかし、共同で UNIT を立ち上げて事業を実施していくことを断念せざ
るをえなかったことについて、その原因は、以下の通りである。
・ 外部条件が大幅に変更したこと。
当初より難民帰還が順調に進み、パキスタンに残るアフガスタン人の状況も変化し、
よりニーズの高い人々の多くが、アフガニスタンに戻った。それに伴い、N も予定より
早くペシャワールからカブールへ事務所を移し、ペシャワール事務所を撤収する状況に
いたった。
・ 事業内容について
教育事業については、ほとんど未知数であり、それを充分に把握しながら、治安の確保
が優先された。その結果、事業の開始当初から、事業のスタンス、捉えが違い、採用ス
タッフについての考えにも差があった。また、事業の共同実施というのは、現実的に非
常に難しく、2 年目からは、アフガニスタン事業については SVA,パキスタン事業につ
いては、N というように分けた。こうなると、ユニットとして、事業を組むことの意義
添付資料 13
が薄らいだ。
・ N の責任者が長期不在にならざるをえなかったこと
契約直後から、偶然にも諸事情により N の代表が家族のいる海外に滞在することにな
った。それが研修も兼ねてであったが、その代理となるはずだった副代表も、N 自体の
運営に追われ、ジャララバードの事業について問題が起きた際に対応することができな
かった。
・ 経理基準の違い
MOU では、SVA の経理コードに準じて、N が経理処理をすることになっていたが、N
自身独自の経理コードを持っていたこともあり、組織内にダブルスタンダードが存在す
る形となった。また、日本の NGO と違い、経理基準が明確でない部分もあり、アフガ
ニスタンの NGO では経理処理が問題なくても、日本の NGO では不適切な場合もあっ
た。
【主に MOU による 2003 年と 04 年の比較】
2003 年
契 約 2003~05 年
2004 年
2004 年のみ。
年数
概要
・共同事業として位置付ける。具体的に ・アフガニスタンの事業は SVA が責任を持
UNIT を立ち上げ、人材を提供し、事業を ち、パキスタン(ペシャワール)の事業は N
立ち上げる。ジャララバードをメイン事務 が責任を持つ。
所として、カブール、ペシャワールをサブ
事務所とする。
責 任 ・ SVA は事業直接費とサブ事務所管理 ・ SVA は、N に対してアドバイザー料とし
所在
費として、事業経直接費(宿舎借上費、
て2万ドル、パキスタンの ACC 事業に
他の費用を含め一部除く)の 10%を支
対して運営費を 2 万ドル支払う。
払う。
・ N は、サブ事務所の SVA の利用の便宜
・ N は、SVA のセキュリティと事業のアド
バイスに責任を持つ。
をはかる。
経 理 ・ ペシャワールに銀行口座を開設して、 ・ACC の経理コードは、N の方式に従う。
処理
共同で管理をする(ただし、実現せず)。
・ 経理コードは、SVA のコードに従う。
・ 出納業務は本部事務所で行い、その他
の経理業務は、ぺシャワール副事務所
が行う。
そ の ・ワヒドは、ネジャットの担当スタッフと ・ワヒドは、SVA スタッフ。
他
して、SVA に出向。
添付資料 13
2)教訓
・ 緊急時のカウンターパートが必ずしも復興支援のカウンターパートとなりえないこと。
ただし、アフガニスタンの場合は治安の配慮、文化的には、一度紹介されたアフガニス
タン人との関係がつきまとうこと、また、N からのスタッフ 7 人が立ち上げ、当初から
継続して働いていることを考えると、当初の選択は必ずしも、間違えではなかったと言
える。ただ、契約期間については、3 年間というのは、結論としては長かったと考えら
れる。例えば、相手との関係を見極める上で、半年から 1 年間、または、単発のプロジ
ェクトのみで組むなど、最初から全面的にカウンターパートとせず、徐々に小規模の事
業を通じて、相手を見極め、関係を構築していくことが重要である。
・ また、今回、事業の発掘、スタッフと理事との合同調査団という形態で、現地調査を実
施した。理事の方々は時間の制約もあり、事前にスタッフがある程度の事前調査をして、
現地に入る配慮が必要だったと考える。
・ ただ、3 年間通してカウンターパートを決めたこと、当初から対等な形での合同の事業
実施については、今後、慎重にすべきと考える。特に、金銭面、意思決定期間について
は、基本的には当会独自でロジを組むなどの方向も必要である。そういった意味では、
3 年間という期間で組みのではなく、1 年ごとに事業を組むと言うのも、今後の方向と
しては検討されても良いかと考える。
・ 一方、新規事業計画にあたっては、今回のように緊急救援から復興支援ということも選
択肢として考えられる。よって、通常から、SVA の活動範囲であるアジアの子どものお
かれている状況が困難な国・地域を絶えず意識し情報共有して、今回のような事業開始
もありえることも組織全体で認識していれば、事業開始がもう少しスムーズにできたの
ではとも言えるだろう。
添付資料 14
プロジェクトマネージャー
アフガニスタン事務所実施体制 2003~2005
コーディネーター
マネージメントボデイ*1
現地コーディネー
ター
学校建設事業課*4
ACC*2/ペシャワール
図書館事業課*5
総務(オペレーション)課*6
図書館事業リーダー 1 名
経理
1名
連絡係り
学校建設事業アシスタント 1 名
学校図書活動推進スタッフ 2 名
運転手
1名
1名
1名
コミュニティ文庫スタッフ 2 名
事務所チャオキドール 5 名
サイトエンジニア (1 校 1 名、建設期間のみ
出版スタッフ 1 名
宿舎チャオキドール 3 名
雇用)
コミュニティ文庫チャオキドール 2 名
学校建設プラナー
1名
モニタリングスタッフ
運転手
1名
建設期間のみ借車運転手 1 名
運転手
カブール連絡所*3 1 名
チャオキドール 3 名
1名
情報文化局スタッフ 1 名(コミュニティ文庫)
教育局スタッフ 1 名 (移動図書箱活動)
1.
現時点では、コーディネータークラス以上の日本人及びアフガン人によって構成。事務所の管理面や人事決定などを行う。責任分割することによって、複雑なアフガニスタンの人間関係に個人が巻
き込まれないように配慮した形式。
2.
2003 年度は、SVAとネジャットセンターと共同でACC(別途借家にて設立)を運営した。2004 年度にはネジャットセンターに全面委託。2005 年度からは、ネジャットセンターがコミュニティ
ベースに活動を移行したため、ペシャワールに 1 名ロジ及び連絡係として配置。
3.
カブール事務所設立は 2005 年より。それまでは、ロジ及び連絡係として 1 名配置。
4.
建設関係の人が固まったのは主に 2004 年後半から。それまでは異動が激しく現在の体制に落ち着いたのは 2005 年度に入ってから。
5.
2003 年、2004 年のコミュニティ文庫は主にパートタイムスタッフによってまかなわれ、2004 年後半より正式スタッフが配置された。研修会の期間(約 6 ヶ月間)は教育局推薦職員(教員)が派遣
される。
6.
総務関係は人が出入りが激しく、現在まで適当な人材が雇用できていないが、当初予定では総務・ロジスタッフとそれぞれ 1 名ずつ雇用予定。経理も 2005 年度前半より落ち着いた。チャオキドール・
運転手は基本的に総務の管轄となっているが、それぞれの課に関わる車両関連の費用管理は各課が行っている。
添付資料 14
【体制に関しての補足説明】
1.マネージメントボディを基本にした体制に関して
当初は、マネジメントボディ=ネジャットセンター代表及びSVA代表という形式で立ち上がった。
ネジャットセンターが主に人事などアフガン側の諸事項に対して対応をし、日本人側の対応をSVA
が行うという目的であった。ネジャットセンターとの正式なユニット体制が終了した後も、複雑なア
フガン社会・人間関係への対応を個人の責任に偏らないために継続してこの体制を取っている。もと
もと 3 年間という期限付きの体制であったため、マネージメントボディの体制見なおしなどに関して
はこれまでは行ってきて折らず、今後の課題である。
2.実務をこなすスタッフ雇用の困難
2003 年度はアフガニスタン国内、ナンガハール州においてもいわゆる援助ブームの年であり限ら
れた人材の獲得競争が激しい時期であった。このため、援助団体の給与は増加し、SVAの設定した
給与を許容範囲内で増加をしたとしても英語やコンピューターなど実務をこなせるスタッフの獲得
が大変困難となった。
3.
女性スタッフ雇用の困難
アフガニスタン国内でも保守的な地域として知られるナンガハール州での女性スタッフの雇用は
難航した。それでも、女性にアクセスできるスタッフの必要性は高く、何度か入れ替わりをしながら
現在は 3 名のスタッフが働いている。
4.エンジニア雇用の困難
2003 年、2004 年は、各国、団体の支援による建設ラッシュとなり、各団体がエンジニア獲得のた
めに給与を吊り上げた。SVAは、アフガン社会を良く知るネジャットセンターのアドバイスで信用
の置ける人材の雇用を試みたが、当初予定していたサブコントラクト形式での建設活動を行わず、S
VAが独自に建設活動を展開するという方向性に転換したことから、エンジニアの雇用が必須となっ
た。サブコントラクト形式の場合は、モニタリングや予算指導を行う役割のスタッフ 1 名の雇用を計
画していたが、資材購入・運搬などを含め全てSVAで施工するため、管理を担当するエンジニア、
現場指導を行うエンジニア、労働者などへの支払い・購入を行うモニタリングスタッフが必要となっ
た。
添付資料 15
2004 年 3 月
第1回改訂:2004 年 6 月
第 2 回改訂:2004 年 9 月
SVA アフガニスタン事務所
安全・退避方針
はじめに
以下の SVA 安全対策は、アフガニスタン事務所内に駐在している SVA スタッフが従うべき規定である。この安
全対策は UN の安全管理体制、また、ANSO(Afghanistan Non-governmental Security Office)の安全対策に基
づいているものであるが、これらの団体と SVA が同時に安全保障計画を実施する必要はない。プロジェクトマネ
ージャーは UN、ANSO、各大使館、他の国際機関など(特に同じ地域のもの)の情報源からセキュリテイ情報を集
める必要がある。
1)アフガニスタン事務所におけるセキュリテイ・フェーズ
アフガニスタン事務所におけるセキュリテイ・フェーズは、通常セキュリテイ・フェーズと緊急セキュリテイ・フェー
ズの 2 通りとする。
A. 通常セキュリテイ・フェーズ
通常セキュリテイ・フェーズは、東京事務所本部の決定の元に、アフガニスタンにおける根本的な事業方針を
左右するものである。全 4 段階に分かれ、4 ヶ月以上の長期間におけるスタッフの配置や治安に関する設備、人
員増強などの事務所運営方針にも関わる。通常セキュリテイ・フェーズ決定の宣言は東京事務所と現地事務所
が合意のもとに行う。 国際職員は、事務所が決定する緊急セキュリテイ・フェーズによる行動制限に従わなけれ
ばならない。個人行動をやむをえなくする際は、事務所に同意書を提出し、プロジェクトマネージャーの判断を
仰ぐ。
① セキュリテイ・フェーズ宣言担当者
現地事務所:プロジェクトマネージャー
東京事務所:アフガニスタン事業担当者
② セキュリティー・フェーズ
a. 第 1 フェーズ (Precautionary)
全般
* 大使館、ANSO、国連及び国際 NGO の動向を把握し、危機管理を徹底する。
* 最低限必要な通信設備を備えると共に警備体制を整える。
* 他機関との連携を取るための協力体制を構築し、事務所設置地域での治安の動向・避難ルートに関して
の最新情報を常に得る。
* 事務所・宿舎においては、国連や国際機関の安全基準を参考に、事務所を設置する。
* R&R を規定する。
国際職員
添付資料 15
b. 第 2 フェーズ (Restricted Movement)
全般
* 事業地への訪問が制限されるため、それに見合った体制作りを整える。事業の計画や完了期間に余
裕を持たせる。
* 現地スタッフによって事業を行う体制を整える。
* 警備体制を強化する。
国際職員
* 例外時以外は、任命された国際職員以外はフィールドには出ない。
* 必要最低限の外出にとどめる。
* 他国際機関及び政府の門限と連動し、門限を適用する。
c. 第 3 フェーズ (Relocation/Program suspension)
全般
* フィールドでの事業活動を延期及び中止する。
* 最低限の事業(終了間近であるもの、事務所内で進められる作業など)は、主要現地スタッフによって行
う。
* 主要現地スタッフ以外の現地スタッフは自宅待機とするが、事業の延期・中止に基づき、現地スタッフを縮
小する。
* 資料やデータなどを整理し、必要であればペシャワール(もしくはカブール)へ運ぶ。
* 現地での情報収集や他機関と連携し、事業活動の可能性を調査する。
国際職員
* 連絡調整として配置するもしくは配置しない。
d. 第 4 フェーズ (Office Evacuation)
全般
* 事務所を閉鎖もしくは撤退する。
B. 緊急セキュリテイ・フェーズ
緊急セキュリテイ・フェーズは、現地事務所が現地の状況の変化に応じて、プロジェクトマネージャー(不在の
場合は任命を受けた職員)およびアフガニスタン事業担当者の決定において、速やかに行動を取るための基準
である。状況が落ち着けば現地事務所判断により解除する。
それぞれのフェーズ期間が長期化した場合及び改善の見込みが低い場合には、東京本部の判断を仰ぐ。
② セキュリテイ・フェーズ
a. Green City (予防措置)
安全基準に従い通常業務が可能な状態。援助活動地域において、治安が比較的安定している。
職員全員・事務所
添付資料 15
* スタッフは、安全状況やセキュリテイーの情報についてプロジェクトマネージャーの通告を受け、特にプ
ロジェクトサイト地域では常に団体で行動する。
* 事務所は ANSO 安全保障会議に定期的にスタッフを送り、常に情報を更新する。
* フィールドに出る際は、通信設備をなるべく持ち歩くよう心がける。
* 毎週開催されている ANSO 会議に必ず参加する。
国際職員
* スタッフは、事務所、宿舎両方とも 24 時間いつでも車を使用できる状態にしておく。
* 事務所及び宿舎に 24 時間警備を配置し、ガードとの連絡、主なスタッフとの連絡が常にとれるよう通信設
備(携帯、ラジオ、スラヤ)を装備する。
b. White City (行動制約)
活動地域において、何らかの事件が確認される、または警告される。
職員全員・事務所
* ANSO が警戒態勢を取っている地域では、行動を必要最小限にとどめる。
* 車は、緊急事態に備え、常にガソリンを満タンにしておく。
* 書類や資料などわかりやすいところに保管しておく。ガソリンやデイーゼルなどの資源を備えておく。
国際職員
* プロジェクトマネージャーが例外として許可しない限りフィールドへの出張は延期する。
* スタッフは、日没前に帰宅し、夜間の行動は最小限にとどめる。
* 食料や燃料を余分に用意する。
c. Yellow City (移転・プログラム中止)
活動地域において、何らかの治安を脅かす事件が短期間で連続して確認/予想される。
職員全員・事務所
* プロジェクトマネージャーが任命したスタッフ主スタッフ以外は、自宅待機する。
* プロジェクトマネージャー及び事業コーディネーターの判断により事業を一時延期もしくは中止する。
* コンピューター内のデータは CD-ROM やデイスクに保存する。
*
重要な資料やものを荷造りする。
* 必要最小限の現金を金庫にいれ、緊急避難後に行われるそれぞれのタスクに担当者を現地スタッフのな
かから選任する。
* 必要な車両以外は事務所以外の場所(スタッフの家もしくは宿舎)に移動する。
国際職員
* プロジェクトマネージャ-及びコーデイネーターは、最小限の運営に携わると共に、事務所が閉鎖できるよ
う準備を行い緊急避難に備える。
* 他の臨時職員や家族は即座に隣国に移動する。ANSO のアドバイスに従い、自宅待機とする。
d. Red City (避難)
活動地域において、活動の続行が不可能になり、援助職員の滞在が極めて危険であると判断される。
職員全員・事務所
* 安全が確認されるまで、任命された現地スタッフ以外は事務所には行かず、各自自宅で待機する。
添付資料 15
* 警備職員のみ事務所に残る。(警備職員の安全対策に関しては、別途作成。
* 避難策を国際職員に通告する。事務所に鍵をかける担当者を選任し、貴重品をどのように保管するか指
示する。
* ペシャワールまで残りの荷物や情報を運ぶ担当者を 1 名任命する。
国際職員
* 必要最低限の荷物をまとめ、一時避難する。
* アフガニスタンへの期間のめどが経たず、退避期間が 2 週間以上となる場合には、執行部(事務局長)、
JAA 事務所長(不在の場合は国際職員)が協議してその後の動き(例:避難先国に継続して待機、または
一時帰国など)を判断し通達を出す。
2) フェーズ勧告の判断基準に関して
A. 通常セキュリテイ・フェーズ
執行部(事務局長)は、日本国内で東京が得られる情報や現地事務所との協議によりセキュリテイ・フェーズの
段階を通達する。通常セキュリテイ・フェーズの判断基準は、下記の通りとし、治安状況に主な動きがない場合
には 1 年おきに見直しを行う。
* 緊急セキュリテイ・フェーズの適用状況
* 他機関の動向
* ANSO などによる治安情報の分析など
B. 緊急セキュリテイ・フェーズ
プログラムマネージャー(不在の際のは国際職員)は、現地の情報及び他機関の動向(上記に記述)などから
判断し、決定する。判断根拠及び具体的な対処方法を東京本部執行部に連絡する。同時に、または決定し次
第避難ルート(フライト名など含む)を東京本部執行部に、アフガニスタン担当に連絡する。(緊急を用紙、執行
部(事務局長)との連絡が取れない場合は、この限りではない。
主要な判断基準:
1) ANSO セキュリテイ情報
2) N セキュリテイ情報
3) 機関の動向
4) 地情報
各フェーズ勧告の具体的判断基準に関して
① Green City
White City

国連が White City を勧告する。

他の国際 NGO がフィールドワークを取りやめる。

ANSO より White City の連絡がはいる。

実際に事件が起きている。(または現地情報などで確認できる。)

日本国内で得られる情報(東京事務所から JAA 事務所へ連絡)

現地情報
② White City

Yellow City
国連が Yellow City を勧告する。
添付資料 15

国連の活動が一時停止する。

他の国際 NGO が国際職員は減員する。

ANSO の勧告

大使館勧告

治安に関わる事件が 72 時間に 1 件以上起こり、継続性がある場合。

現地情報

日本国内で得られる情報(東京事務所から JAA 事務所へ連絡)
③ Yellow City
Red City

国連の国際職員が退避する。

他の国際 NGO の国際職員が退避する。

ANSO の勧告

大使館勧告

現地情報

実際に事件が起きている。
3) 避難方法
避難方法は、下記の 2 通りとし、治安状況を現地スタッフを協議し決定する。
(ア) コンボイ:IRC (International Relief Committee)を中心とする他の国際機関と、政府軍の護
衛を受けながら ANSO などにより決定された最適非難先へと避難する。
(イ) 独自ルート:顧問スタッフと共に、独自で避難する。
参考避難ルート
ジャララバード-カブール(陸路移動)
ジャララバード-ペシャワール(陸路移動)
カブール-隣国(ドバイ、アゼルバイジャンなど)(空路)
ジャララバード-ペシャワール/イスラマバード(空路)
4) 通信設備
* スラヤ
* 携帯電話
* VHF ラジオ
* 衛星固定電話
* R-Began
5) 現地事務所と東京本部の連携
通常時
* 東京本部アフガン担当者は、ANSO ジャララバードとメール登録をし、直接情報を取り入れる。
* JAA 事務所は、必要と思われる情報を東京本部アフガン担当者に連絡し、執行部への連絡は担当者が判
断をする。
緊急時
添付資料 15
* 混乱や不必要な情報交換を避けるため、JAA からの情報は公式なものに絞り、東京本部執行部及びアフガ
ン担当者に定期的に連絡を取る。(毎 6 時間後、12 時間後、24 時間後など)
* メールの連絡が困難な際には、安全確認の電話連絡を入れる。
6) 現地スタッフの給与に関して
緊急時の現地スタッフ給与の支払い、方法について別途規定を設ける。
7) 医療に関して
医療機関の選定、緊急時の搬送法、個人スタッフの持ち物(パスポートなど含む)を明確にしておく。
8) 連絡網に関して
国際職員が退避する場合、ローカル・コーデイネーターレベルの現地スタッフを連絡係として任命する。その
他の現地スタッフの連絡網を作成する。
10) 避難解除
通常セキュリテイ・フェーズ
アフガニスタンの業務再開については、情報・外部の動き(国連、国際 NGO,ANSO,大使館、現地情報など)を
基に、執行部(事務局長)と JAA 事務所長(不在の場合は国際職員)が協議して判断を行い、事務局長名で正
式な「避難解除通達」を通達する。
緊急セキュリテイ・フェーズ
アフガニスタンの業務再開については、情報・外部の動き(国連、国際 NGO,ANSO,大使館、現地情報など)を
基に、執行部(事務局長)と JAA 事務所長(不在の場合は国際職員)が協議して判断を行い、現地事務所長判
断で、業務再開する。
また、事務所の開閉に関しては、JAA 事務所長と協議ののち、任命した現地スタッフの判断にて行うものとする。
(連絡がうまく取れない場合は、この限りではない。)
11) 参考
ジャララバードの想定するセキュリテイ不安
a. 地元軍閥による武装兵士がいたるところに存在する。
b. 軍隊派遣
c. ロケット、爆発物による攻撃増加
d. IED による攻撃の増加
e. 芥子栽培に対する地元、地方政治、国連機関などによる緊張の高まり
f.
特別対象地域への攻撃(NGOs、学校、病院、銀行、公マーケット)
g. 幹線道路以外の道路の使用が危険
h. 避難先経路の確保が困難
i.
空路が閉ざされる
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