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社会学の基礎知識 ・・・・・・・・・・・・・・ 社 会 学 ・・・・・・・・・・・・・

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社会学の基礎知識 ・・・・・・・・・・・・・・ 社 会 学 ・・・・・・・・・・・・・
社会学の基礎知識
・・・・・・・・・・・・・・
社
会
学
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安 立 清 史
概要
社会福祉士と社会学
社会学は、私たちが生きているこの現代社会を、客観的かつ総合的に理解しトータルに把握しようとする知的ないとなみ
である。社会の表面的な変化や流動現象だけでなく、社会の奥底で進行している社会構造の変動や、それにともなう人びと
の生活や意識の変化などを理解し、現代社会がどのように存立し、これから先どこへ行こうとしているのかを的確に把握す
ることはたいへん重要である。とりわけ社会福祉士として、社会全体の福祉に携わろうとされる人びとにとって重要なこと
となる。
社会福祉士に要請される社会学的な知識は以下のように大きくまとめることが出来る。 まず第一に、現代社会の基本的
な性格について理解すること。現代社会は、大きく見渡すと、産業社会からポスト産業社会へと移行する転換期にある。日
本の近代化・産業化は 1960 年代の高度経済成長の時代、その後の石油ショックなどをへて、現在、ポスト産業社会(脱工業
化社会)という新しい段階に入ったといわれる。それにともないさまざまな社会構造の大きな変動が進行している。この変
動の全体、およびそれが人びとの生活や意識にいかなる影響を及ぼしているかについて理解しておくことが、まず第一に必
要である。 第二に、こうした縦軸のおおきな社会変動が生み出す、横軸の社会変化の諸相を具体的に把握しておく必要が
ある。現代社会の大きな社会変動を理解したのち、その社会の変動が、いかなる原因によって起こり、いかなる帰結をもた
らしているかを把握する必要がある。
「現代社会と科学技術」
(科学技術、巨大科学、エネルギー問題、資源問題、環境破壊問題、公害問題、情報化社会、科学
技術の社会的コントロールなど)では、ポスト産業社会を根本で押し進めている科学技術やそれにともなう諸社会現象につ
いての理解を行う。 また産業社会からポスト産業社会への社会構造変動がもたらす重要な帰結として、都市化と地域社会
の変貌があげらる。伝統的な共同体にもとづく地域社会が解体し、大規模な都市化がすすみ、人口や経済の都市集中が進む。
それは都市生活にも地域社会にも、ともにさまざまな歪みをもたらすことになる。地域社会も都市もともに大規模に変貌し
つつある。伝統的な共同体の代わりに、新たなコミュニティが地域社会の核として必要となってくる。こうしたことを「現
代社会と地域社会」では理解する必要がある。
第三に、こうした社会構造変動によって人びとの日常生活や意識がどのように変化しつつあるのかについても社会学的に
理解することが必要である。
その中で最も重要なのは、家族の変容である。家族は、社会を構成する基本単位であるが、産業化の過程で伝統的な大家
族制や家父長制は、しだいに変質し、近代家族、とりわけ核家族化してきた。
「現代社会における家族」では、こうした家族
の構造的な変化を、その歴史的な変容過程においてとらえ、現代の家族がいったいどのような問題をはらんでいるのかを理
解することが重要である。
その他、
「現代社会における社会問題」として、社会構造に根拠をもつ社会の諸矛盾、たとえば労働、貧困、逸脱行動、公
害、環境・自然破壊、差別、教育などの諸問題など現代社会の社会問題のさまざまな様相を的確に理解し、
「現代社会と専門
職」においては、そうした社会問題と取り組む専門職としてのソーシャル・ワーカーの位置づけを理解し、また専門職者が
いかなる社会的な位置をしめ、
専門職の社会的性格や社会的責任などにかんしてもきちんと理解しておくことが必要となる。
以上が、社会福祉士に要請される社会学の概略である。
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産業社会の変動と社会生活および意識の変動
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社会学とは何か
社会学とは、われわれの生きているこの現代社会を、客観的に科学的かつ総合的に捉えようという知的な作業であり、い
わばある時代や社会の自己認識のための学と言えよう。社会学の研究対象は、たんなる個人の集合ではなく、人びとの社会
的な関係行為が固有の集団的な諸現象を生み出す場合に、そこにあらわれる社会的な諸法則、社会的行為、制度や規範とい
った集合的な諸現象などを研究対象とする。社会学は、社会や文化、人びとの生活や意識の構造や機能、変動と展開を、人
間の社会的行為とかかわらせながら、個人と社会との関係を理論的・実証的にトータルに把握することをめざす社会科学の
一部門なのである。
社会学の成立
社会学が、変貌する社会の自己認識のための学として成立したのは、産業革命による大規模な社会変動を経験した 19 世紀
の西欧においてであった。社会学という言葉を創出したのはオーギュスト・コント(1798-1857) であるが、彼や彼の師であ
るサン・シモンらは、産業革命による大きな社会変動の大波の中にあったフランス社会の再組織化のために社会学を構想し
ていた。当時のフランス社会は、産業革命やそれにひきつづく社会の大規模な変動によって、それまでの伝統的な共同体や
社会秩序が解体しはじめ、それによって近代的ないみでの「個人」が生み出され、新しい社会秩序や社会の再組織化が緊急
な問題となっていた。すなわち、
「社会」学の成立は、共同体からの個人の解放以後、とりわけ近代市民社会の成立と同時的
であり、社会が変動する中で、その変動の原因を分析し、変動の行方を分析し、それをコントロールしようとする問題意識
とともに生まれたと言えよう。
近代化
近代化とは、歴史の実質から見れば、封建社会から資本主義的社会への移行過程(封建的土地所有関係の一掃、資本制的
生産様式の確立、市民的自由権の保証など)を指す。イギリスでは14∼15世紀、フランスでは15∼16世紀に、封建
的土地所有関係がの解体が進み、商品生産に結びつく独立自営農民層が成立。ピューリタン革命(1642 ∼49) や名誉革命
(1688)、フランス大革命(1789)などを通じて近代化が展開してゆく。
近代化の指標としては、①政治における民主主義 ②経済における資本主義 ③産業における手工業・マニュファクチュ
アから工場生産への移行 ④教育における国民義務教育の普及 ⑤軍備における国民軍の成立 ⑥意識における共同体から
の解放 などがあげられる。
産業社会
産業社会とは、経済学的には、①生産における高度の社会的分業 ②科学技術の革新が生産過程に内蔵されていること ③
生産における剰余価値がふたたび高水準の投資として生産過程に投資されること、を意味する。
産業主義(インダストリアリズム)とは、C.カーらを主唱者とする理論で、マルクス主義的な社会理論に対抗し、発展
途上国が共産主義化することなく工業化してゆく道を示そうとしたものである。この理論によれば、近代化・産業化によっ
て、社会体制の差異が消滅し、初期状態において異なっていた諸社会が類似した産業社会に収斂してゆくとされた。
ポスト産業社会
ポスト産業社会とは、
「後期」産業社会というベクトルと、
「脱」産業社会という二つの異なるベクトルの合力によって方
向づけられる社会である。それは産業社会がさらに高度化し成熟し、知識集約型社会となり、資源やエネルギーよりも多く
情報によって支配される社会となることであり、同時に消費や社会生活の面では、たんなる物質財から、教育・福祉・娯楽
といった広義のサービス財へと社会的な要求が移ってゆき、ダニエル・ベルの言う「人間相互間のゲームを基本的な原理と
して運営される社会」つまり社会全体が、産業社会を脱してゆく過程でもある。
ポスト産業化社会は、脱工業化社会とも脱産業社会とは言われるが、その実質は、先進資本主義諸国において 1960 年代か
らはじまった産業構造の大規模な転換と、それにともなう人びとの意識や要求の構造的転換とを二つの大きな基軸とする社
会構造変動である。
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現代社会と科学技術
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産業革命
技術的側面からみれば、生産過程で用いられる労働手段が、従来の道具から機械に代わり、その結果、旧来の家内工業や
マニュファクチュアが駆逐されて工場制生産が成立することを意味する。社会的側面からみれば、機械のもつ競争力によっ
て小商品生産者層の没落がおこり、資本家と近代的賃金労働者階級とが形成される過程であり、これにより生産様式として
の資本主義が確立することになる。典型的には、1770 年代から 1830 年代にかけてのイギリスにおいて、紡績機械の発明を
端緒とする綿工業において開始されたが、その他の諸産業にも連鎖的に波及し、また運輸・交通手段の変革(交通革命)
、農
業革命などへも展開した。
技術革新
新技術の実用化により生産過程・情報過程に大規模な変化が生じること。とりわけ第二次世界大戦後の技術革新は、エレ
クトロニクス、システム技術など情報過程にかかわるものが多く、宇宙開発などの巨大プロジェクトから波及するものが多
い。
巨大科学
現代科学は、巨大な装置、巨額の予算、巨大な人的組織を必要とする巨大なプロジェクトによる研究開発となることを言
う。宇宙科学、原子力開発、軍事技術などがその典型である。それゆえ巨大科学においては、国家と産業界が一体となって
研究開発を進めることになるため、研究開発の方向に制限が生じたり、軍産複合体が生じたり、研究者の細分化が生じたり
とさまざまな問題も起こってくる。
情報化社会
情報組織・技術の3C革命(コンピューター・自動制御装置・通信機器)により実現した情報革命の結果生じた、情報を
生産し、加工し、処理し、操作し、消費する社会機構が肥大化し、社会を制御する情報過程が巨大化した社会。
テクノクラシー
語義的には「技術による支配」
「技術者政治」をいみする。現代の飛躍的に発展した科学・技術を最大限駆使することによ
って社会を全体的に管理・運営・操作することが出来るというシステム的社会観の総称。こうした時代にあってはたんなる
官僚ではなく、科学的知識や技術を有した技術官僚(テクノクラート)が社会や組織の意思決定に大きな影響力を及ぼすと
考えられる。
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現代社会と専門職
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専門職
本来は、聖職者・医者・法律家など、長期の教育訓練をつうじて習得した学問的知識と技能とによって営業の独占的な地
位を獲得した職業をさす。専門職者は、職業上の倫理綱領をもち、職業集団を形成し、高い社会的地位や有利な経済的特権
を享受した。現代ではこうした「古典的」専門職の他に、多様な技術専門職、
「企業内」専門職など、さまざまな専門職の形
態があらわれてきている。
専門化
グリーンウッドによれば、ある職業が専門職業であるためにら次の5つの属性をそなえることが必要である。①技術を支
える体系的理論 ②クライアントへの専門的権威 ③一連の特権・権力などをコミュニティに承認させること ④利他性と
公的サービスへの志向をもつ規制的職業倫理綱領 ⑤価値・規範・象徴などの専門的文化。
専門化は、おもにイギリスとアメリカで進展し、アングロ・アメリカ病とまで言われることもあるが、職務の機能的独立
性を保証するため、担当者に大幅な権限と責任を与え、同時に、職務の相互依存性をおしすすめるものである。
専門家支配
アメリカの医療社会学者フリードソンによる概念。仕事の内容や条件の主要部分を専門職のみがコントロールする権限を
付与された職業では、専門職化がすすむにつれて、受益者よりは職務の遂行者側の都合を優先して方法を志向する自己中心
的態度や微視的技術の過度の洗練と社会的要請の虫という近視眼的な傾向が起こり、他の職業やクライアント、行政から自
律し、専門家による支配が進むことを言う。
準拠集団
人が自分自身を関連づけることによって、自己の態度や判断の形成に影響を受け、比較や同調の拠り所とする集団のこと
を準拠集団(レファレンス・グループ)という。準拠集団は一般に家族や友人集団、自分の属する専門家集団など身近の所
属集団からなることが多いが、しかし現在その人が所属していない集団や過去に所属したことのある集団、将来所属したい
と思っている集団など非所属集団もまた準拠集団となりうる。
高度に分化した現代社会では人は複数の集団に同時に所属し、
社会的な移動も頻繁であるから、個人の態度や意志決定を理解するには、その人の準拠集団の選択過程を知ることが重要と
なる。代表的な理論家としては R.K. マートンがいる。
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現代社会における家族
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家族
家族とは、配偶関係や血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団である。すなわち夫婦・親子・き
ょうだいなど少数の近親者を主要な成員とし、成員相互の深い感情的包落で結ばれた、第一次的な福祉追求の集団が家族で
ある。つまり社会的に承認された性関係である夫婦関係を中心として、子どもや親、きょうだい等の近親者によって構成さ
れる小集団という側面と、それが人間の持つ基本的な欲求を充足する機能をもつ集団であるという機能的側面とをあわせも
つ。
親族
一定の人びとが親子関係、夫婦関係、およびそれらの組合せを通じて特有の社会関係を取り結ぶ現象である。一般に「未
開」社会、伝統社会においては親族現象がきわめて重要であり社会構造の中核を成すが、近代社会では親族の重要性が低下
するのが通例である。親族関係には、血縁関係と婚姻関係がある。
血縁関係と婚姻関係
血縁関係とは、先祖を共有しあっていることを認知しあっている関係である。しかし必ずしも生物学的な血のつながりと
は同義ではない。血縁関係の認知の仕方は社会によって異なり、父系社会、母系社会という単系社会と、父系・母系とが平
等に辿られる双系社会とがある。
婚姻関係にかんしては、配偶者の人数にかんする規則(単婚と複婚)
、結婚後の夫婦の居住場所に関する規則(夫方居住、
妻方居住、新居住)
、通婚圏に関する規則(内婚、外婚など)等のさまざまな関係がある。
家族と世帯(図)
世帯は、住居と大部分の生計を共同する人びとからなる集団、と定義される。世帯はだいたいにおいて家族関係を含んで
いるが、同居人・使用人といった家族員でない者をも含む。家族は居住親族集団として、その大部分は同居して同一世帯を
成すことが多いが、就学・就職、あるいは長期入院などの別居家族員は別世帯を成す。つまり他出家族員も家族の一員であ
るが、同一世帯ではない。この関係を図示すれば次のようになる。
(図)
核家族
核家族とは、夫婦とその子からなる家族である。アメリカの人類学者マードックの核家族説(1949)は、父親−母親−子供
の3単位結合を人間社会に存在するあらゆる家族に普遍的な核的要素とみなした。マードックによれば、核家族は、家族が
性・生殖・経済・教育という4つの基本機能をはたすための最小単位であり、現象的にはそれじたいの形態で存在すること
もあるし、さまざまに複雑な家族形態(複婚家族や拡大家族など)を構成する核としても存在すると言う。この説には批判
もあるが、現在では、核家族は夫婦家族とともに近代家族を象徴する代表的な概念として受入れられている。とりわけ産業
化にともなう家族の変動を「核家族化」として捉える有力な理論を生み出した。
定位家族と生殖家族
定位家族(原家族)とは、その人の意思とは無関係に、選択の余地なく運命的にそこに産み落とされ、育てられる家族の
ことである。他方、自らが結婚により選択的に形成する家族のことを生殖家族(結婚家族)という。
ハリスのT核
ひとつの生殖家族の背後には二つの定位家族が存在し、T字型の核家族結合が成立する。イギリスの社会人類学者ハリス
は図の形からこのような結合をT核(T型親族核)とよんだ。
(図)
複合家族・直系家族・夫婦家族
複合家族は、一子による家族継承(直系家族)のかたちをとらず、他の子どもたちも結婚後も同居してともに家業に従事
するかたちの家族である。一般には同居の既婚子を男子に限ることが多い。夫婦家族では、子は成長して親もとを去り、自
分の生殖家族を作る。こうした家族類型は、社会や地域、階層などの違いに応じてさまざまに現れるが、人類学的研究によ
れば、家族形態は全体として夫婦家族制へと移行してゆくと考えられている。
(図)
家族周期
家族は、結婚によって形成され、育児期・教育期・子の独立期・老後期などの段階を経て夫婦の死亡によって消滅するが、
この全過程(生活のライフサイクル)を家族周期とよぶ。
家族の基礎的機能
家族のはたす機能については諸説あるが、マードックの4機能説(性・生殖・経済・教育)
、パーソンズの2機能説(子ど
もの基礎的社会化と成人の安定化)
、ライスの単機能説(子どもの愛育的社会化)
、オグバーンの7機能説(主機能−性・扶
養、副機能−経済・教育・宗教・娯楽・保護・地位付与)などが有名である。
老親扶養の形態
老親扶養の内容は大きく分けて、経済的援助・身辺介護・情緒的援助に分類されうる。その形態としては、老親と子ども
の同居型・近居型・遠居型がありうる。
老親扶養の動向
欧米では、老親と接触頻度の高い別居子は多くの場合娘であり、母と娘たちの結合が親族互助関係網の骨格を形成してい
ると言われる。日本では、別居老親と接触頻度の高いのは息子、それも長男の家族であることが多い。
日本では伝統的に長男の家族との同居型が多かったが、近年見られる傾向は、いわゆるベッタリ同居型から生活分離のあ
る同居へ、さらに同居から近居型へと扶養形態が推移してきていることである。
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現代社会における地域社会
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コミュニティとアソシエーション
コミュニティとは、一定地域の住民が、その地域の共同体にたいして特定の帰属意識をもち、自らの政治的自律性と文化
的独自性を持った場合をいう。他方、アソシエーションとは、特定の共同の関心や目的を実現するために作られる組織をい
う。コミュニティとアソシエーションとは互いに無関係な概念ではなく、コミュニティは、ある程度の包括性や自足性をも
った社会や集団をさし、アソシエーションは、全体的なコミュニティを基盤として、派生的・人為的に形成される特定の機
能を分担するための集団である。
アメリカの社会学者マッキーヴァーはコミュニティを地域性と共同性によって包括的に定義し、都市や農村はもちろん国
家や世界までをもコミュニティとアソシエーションの関係から把握しようとしたが、これに対しては今日では批判がある。
ボランタリー・アソシエーション(自発的結社)
利害関心の分化と異質化が進んだ近代社会において、利害関心を充足し実現するためにそれを共通してもつ他者との合意
をもって結成し維持している集団を自発的結社(随意集団)という。政党・労働組合・職業団体などの多様な集団がこの性
格をそなえる。
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
マルクス、テンニース、M.ヴェーバーらの社会理論における、社会の基礎的な二類型である。とりわけテンニースの『ゲ
マインシャフトとゲゼルシャフト』(1887)が有名。ゲマインシャフトとは、人びとが有機的に結びついた共同社会をさし、
人びとの本質意志にもとづく結合「信頼に満ちた親密な共同生活」をいう。ゲゼルシャフトとは、諸個人が互いに自己の目
的を達成するために形成した社会関係、選択意志にもとづく社会であり、
「相互に独立した人間たちの単なる併存、機械的な
集合体」をさす。テンニース自身は、ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの移行を歴史的・客観的な事実とみていた。
第一次集団と第二次集団
第一次集団とはアメリカの社会学者クーリーが命名した集団類型で、成員間の直接的接触にもとづく親密な関係とこれに
もとづく協同とを特徴とする集団である。第二次集団とは、成員間の間接的な接触を特徴とする大規模な集団をさす。第一
次集団は、家族・近隣集団・遊戯集団等の直接的接触にもとづく成員間の親密な関係と協同を特徴とし、無意識的に形成さ
れるインフォーマルな関係である。第二次集団は、間接的および非人格的な相互作用によって特殊な関心を満たすための大
規模な集団であり、社会的相互作用の短期性・間接性・限定性を特徴とする。現代社会では第二次集団が優越しているが、
しかしその内部に第二次集団が自生してくるという事実がしばしば観察される。なお、第二次集団という命名はクーリーの
ものではなく、後世の命名である。
フォーマル・グループとインフォーマル・グループ
フォーマル・グループとは、公式に成文化された役割にもとづいて形成されている集団をさす。企業でも官庁でも組織図
が示しているのはこれである。インフォーマル・グループとは、非公式集団とも訳され、フォーマル・グループの内部に自
生的に発生する私的関係からなる集団である。職場仲間の集団、友人集団、サークル集団などがこれにあたる。フォーマル・
グループでは効率性が志向され、形式的・没人間的役割関係が支配するが、インフォーマル・グループでは人格的交流や心
理的安定を求める欲求がグループ形成の動機となる。インフォーマル・グループは、アメリカの産業社会学者メーヨーらの
行ったホーソーン実験以来、人間関係論学派によって注目されるようになった。
ホーソーン実験
メーヨーらがウェスタン・エレクトリック社のホーソーン工場において行った実験により、たんなる物的労働条件だけで
は作業効率があがらず、人間的満足を第一原理とする人事管理、という、それまでの能率一辺倒のテイラー・システム(科
学的管理法)を克服する発見をみた。この実験により、職場集団が、フォーマルな組織とインフォーマルな人間関係との構
造的二重性をおびていることや、フォーマルな組織の合理化や官僚制化の進行につれ、インフォーマルな人間関係は、成員
の人間的欲求の充足や心理的安定化などの役割をはたし、職場成員の情緒的な基盤となり、職務行動の潜在的な準拠集団と
しても機能することが解明された。
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現代社会における社会問題
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社会問題
社会問題とは、社会構造的な根拠をもって発生し、それゆえその解決には社会構造の変革や社会制度の整備が必要となる
ような問題群のことである。社会問題の解決過程には、政府や行政による上からの政策的努力と、したからの住民運動や社
会運動などがともに関与する。社会問題は、社会ごとに、また歴史的に変化してゆく。20 世紀前半までの社会問題とは主と
して労働問題をいみしていた。労働者をめぐる貧困、失業、過酷な労働条件、農村の窮乏、都市のスラム化などである。し
かし第二次大戦後、とりわけ高度成長以後の日本では、深刻な社会問題は、公害問題、自然・環境破壊問題、都市問題、過
疎問題、教育問題、差別問題などへと変わってきている。
大衆社会
大衆社会とは、近代資本主義の展開によって現れた、異質な属性や背景をもつ匿名の多数者からなる未組織の集合体であ
る大衆が構成する社会である。その特徴のひとつは、個人と国家とを媒介する中間集団(個人や第一次集団と国家や全国組
織との中間にあって、両者を媒介している自発的結社や職業集団)の無力化であり、ミルズやコーンハウザーらは、中間集
団の解体によって甲羅を剥がされた蟹のように原子化され無力化された大衆が一元的に操作される危険を大衆社会の病理と
みている。
スティグマ
ある人が、他の人びとと異なっている望ましくないと見なされる印をスティグマ(烙印)という。身体上の障害や個人的
な性格上の欠点、さらには人種・民族・宗教などの集団的な印がスティグマとして操作され社会的な差別を生み出す。ゴフ
マンは、このスティグマを属性としてではなく、人間の関係の病とみてスティグマの社会学を構想した。
ラベリング理論
逸脱行動を理解するうえでは、逸脱行動じたいよりも、逸脱行動を行った者にたいして社会がラベルを貼りつける(ラベ
リング)過程こそが決定的に重要であるとして、その過程を分析する逸脱理論の立場である。
アノミー
アノミーとは、社会的規範の動揺・弛緩・崩壊などの社会解体によって生じる行為や欲望の無規制状態のことである。フ
ランスの社会学者デュルケームは、アノミーを集団間の規制の弛緩や崩壊、人びとの欲望の脱規制化として説明している。
とくに重要なのは後者で、社会の急激な変動が人びとの社会的地位の変化をもたらし、それが同時に社会的規範の弛緩や欠
落をまねくと、その結果、人びとの欲望を抑える社会的規制がなくなり、欲求不満や焦燥が激しく高じる、それがアノミー
であると説明される。とりほけ経済的繁栄の時期には、人びとの欲望が強く刺激され、社会的規範を無視してまで高まる傾
向が強いのでアノミーが起こりやすいとされる。この観点からデュルケームは産業化の発達にともなって生じる自殺の増加
を分析した。
『自殺論』(1897)がとくに有名である。
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参 考 文 献
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社会学の学習を進めていくにあたって、参考になるであろう文献を紹介しておく。
1 見田宗介他編『社会学事典』弘文堂。たんに社会学についての事実や知識がつまって
いるだけでなく、社会学的な思考法について書かれている。社会学についての基本的な知識と考え方を学ぶにはもっとも適
当な事典である。
2 石川晃弘他編『社会学小辞典』有斐閣。コンパクトに社会学的な知識がまとめられて
いて便利である。
3 塩原勉他『社会学の基礎知識』有斐閣。社会学における基礎的なターム(用語)を、
問題と回答のかたちにまとめてあり、初学者に便利。
4 森岡・望月『新しい家族社会学』培風館。家族社会学の標準的なテキスト。
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