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セルオートマトンの漸近挙動(生命的なものへの動力学ア
プローチ-変わることで意味をもつものの研究-(北大数学
科複雑系数理グループ))
行木, 孝夫
物性研究 (1999), 71(4): 701-704
1999-01-20
http://hdl.handle.net/2433/96510
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
生命的なものへの動力学アプローチ (
北大数学科複雑系数理グループ)
セルオートマトンの漸近挙動
行木 孝夫
セルオー トマ トンとは空間 ・時間 ・状態の全てが離散値 をとる力学系である。1
95
0年代 に 自己
組織系のモデル として ノイマ ンによって導入 され 、1
9
8
0年代 にはウォル フラム らに よって力学系
的な視点か らその挙動の分類が提唱 され た。近年 は離散化 した保存系 のモデル として も注 目され
てい る。
力学系 としてセルオー トマ トンの挙動 を見 ると、ア トラクタへ落 ち込 む までの遷移的な状態 に
多様性が見 られ るようであ る。私 はこれ をエルゴ- ド理論の観点か ら解析 してい る。
Z
D をとる。 連続写像 T:
X ー X が次 を
状態空間 として 、有限集合 A の無 限直積空間 X = A
CA)とよぶ ことにす る。
満たす時 、セル オー トマ トン (
A ⊂ ZD を与え られた有 限格子 、fを Aか ら A へ の写像 とす る。 任意の x∈X につ
いて一様 に (
TX)
i-I(
xi
+i
;
j∈A)となる。
す なわ ち 、CA は空 間的に一様 な規則 Jで時間発展 を決める格子上の力学系である。 一次元系
D- 1で A- iO,1)とLI T を (
,I)
i- Xi-1+ xi+lmOd2とすれば 、簡単な例 となるo
xo- AZとお き、x n -∩
芸=1Tkxoを考 え よう.x n はランダムな初期配置か ら Tの nステ ッ
プ作用後 に許容 され る配置の全体であ り、各 nについて シフ ト不変集合 とな る.
エ ン トロピーの時間発展 を 、l
/- P 。'-1 として hp- huで定義す る。 つ ま り、エ ン トロピー
は格子上の確率測度の時間発展 を反映す る ものと考える。このとき、エ ン トロピーの時 間発展 (
減
少皮)について 、
hi
L
(
Xn+1
,
g)≦hu(
Xn,
0
)+
⊥
hd
du.
f
l
ここで 、d(
W)-# wT
(
W)は単語 Wの多重度 といい 、fl
wl
(
W)6
まW を像 に もつ単語の全体 を表す。
d(
W)の指数関数 的な発散のレー トは次 の極限であ り、
hd(
y)-n
l
i
J
o
gd(
wn(
y)
)
(
1
)
これ は U-a
.
C
.
で存在す る。 また、確率測度 として配位空間の平衡状態 を与える Gi
bbs測度 をと
れば 、この不等式の等号が成立す る。
この結果はシフ トの測度論 的エ ン トロピーとい う熱力学的な量のの時間変化が局所 的
な規則 Jに よって決 まることを示 してい る。
また 、別の熱力学的な量であ る位相圧力 (自由エ ネルギ ー)
P(
V,
Xn)について は不変集合 を適
a
t
eが決 まることがわか っている。 現在 、それぞれ
切 に定義す るとその安定性 に依存 して収束の r
o(
e
-nc),o(
e
-vac),
o(
n1
C)(
C は定数)とい う挙動 を示す例が構成で きてい る。
- 701 -
研究紹介
この r
a
t
eが遅いほど、数値実験で見 ることので きる軌道は複雑な構造が長 く碓持 され るように
a
t
eによって決 まるものであるか ら、Jとい う局所的な規則が不
観測 され る。 その時間は上記の r
変集合の安定性 とい う幾何 的な量 を通 じて 自由エネルギーの時間変化 を定めているといえ る。
1 準備
有限集合 Aの無限直積空間 X =AZDをとる。連続写像 T:
X ー X が次 を満たす時 、セルオー
CA)とよぶ。
トマ トン (
定義 1
.
1A⊂ ZD を与えられた有限格子 、fを Aか ら A への写像 とす る。 任意の x∈X につい
TX)
i-I(
xi
+i
;
i∈A)となる.
て一様 に (
す なわち 、CA は空 間的に-様 な規則
D - 1で A-(
0,
1)とL
fで時間発展 を決める格子上 の力学系である。一次元系
Tを (
TX)
i- Kill+ xi+1mOd2とすれば 、簡単 な例 となる.
コンウェ
イの LI
FE をは じめ、個 々の規則 については様 々な ものが提唱 され 、研究 されて きた 。 系統的な
数値実験 としては ウォルフラムが有名である。
以下では CAの挙動を格子上の平行移動 (
シフト)と関連付けて調べ る手段 を紹介す る。 定義 1
.
1
は CA の直接的な定義であるが 、次の定義はこれ と同値である。
定義 1.
2AZD上の連続写像
T が各方向のシフ ト C
'
i
,(
i-
1,・・・
,
D)と可換 とな るとき、cA と
よぶ。
シフ トとの可換性 を利用す ることで、数値実験で見 られ る挙動の性質をエルゴ- ド理論の立場か
ら捉 えることがで きる。 今後は全て一次元格子上で考 える。
2 シフ トの熱 力学的量 と CA のダ イナ ミクス
2.
1 エン トロピーの減少率
xo-AZとお き、x n -∩
芸=1
Tk
xoを考えよう。x n はランダムな初期配置か ら T の nステ ッ
プ作用後 に許容 され る配置の全体であ り、各 nについてシフ ト不変集合 となる。
エ ン トロピーの時間発展 を、I
/- FL。T-1として hp- huで定義す るOつ まり、エ ン トロピーは
格子上の確率測度の時間発展 を反映す るもの と考えるO まず 、エン トロピーの定義 をあたえ よう。
1pをシフ ト不変集合 x ⊂xo上のシフ ト不変確率測度 とす る。 エ ン トロピー hpは
定義 2.
n
l
i
;
三
∑
pl
al
,
-,
a
n
]
l
ogpl
al
,
- ,a
n
]
a
l
,
・
・
・
,
an∈A
と定義する.ここで 、と
al
,・・・
,
a
n
]-'
(
x- (
xi
)
i
∈Z∈AZ;3:1-al,・.I
,Xn-a
n)であ り、i
L
l
a
_n
,
-,
a
n
]
は単語 a_n,
,
anの出現確率を表す。
- 70
2-
生命的なものへの動力学アプローチ (
北大数学科複雑系数理グループ)
この とき、エ ン トロピーの時間発展 (
減少度)について、
hp(
Xn+1
,
C
,
)≦hv(
Xn,
c
r
)+
/x n
hd
dL
,
.
ここで 、d(
W)-#瑞 (
W)は単語 Wの多重度 といい 、f
l
wf
(
W)は W を像 にもつ単語の全体 を表すo
a(
W)の指数関数的な発散のレー トは次の極限であ り、
hd(
y)=l
i
m 土l
o
gd(
wn(
y)
)
(
2)
nー∞ n
これ は U-a.
C
.で存在す る. また、確率測度 として配位空間の平衡状態 を与 える Gi
bbs測度 をと
れば 、この不等式の等号が成立す る.A
Z上の Gi
bbs測度 とは 、AZ上の連続関数 U(
I
)を決めた
時に P,
C1
,
C2>0として
p(
l
x
o
・-xm-1
】
)
C1≦
e
xp(
一mp-∑㌫
となるものであ る。 ここで (
gx)
i-
1U(
Ji
x))
≦
C2
Xj+1は平行移動 を表す写像であ り、Gi
bbs測度 はポテンシャ
ル関数 U による歪みの もとで-様な単語の出現確率 を表 している。
以上はシフ トの測度論 的エ ン トロピーの時間変化に関す る議論であ り、個別の規則 Jに関わ ら
ず成立す るものであった。
2.
2 不変 集 合 とワー ドエ ン トロピ ーの減 少率
もう少 し規則 に条件 をつけて議論を続ける。 次の条件 を満たす シフ ト不変かつ 丁不変集合 y を
単 に不変集合 と画 王う。
1.y に 丁を制限す ると恒等写像 になると仮定する。
2
.x∈Y に対 して任意の有限な摂動 7を加えて も、有限の N が存在 して Tn7X∈Y とな る。
3.上の摂動の幅 を W(
73)とす ると、W(
TX)>W(
TTX)
不変集合の安定性を示す指標 を定義 しよう。
定義 2.
2 rを有限摂動全体 とし、r
,
r
l
,
r
2を以下で定義す る。
r
(
n,
x
)- 7∈r,T(
l
T
n
r
)
=n(
N;
TN(
γE)
EY)
r
l
(
n) - S
upr(
n,
X)
3
7
∈Y
r
2
(
n
)=l
i
普r ,x)
(n
シフトの ワ- ドエ ン トロピ-
h(
X)-n
l
i
u 三l
o
g#W (
X,
n)
ー 70 3
-
研究紹介
について 、r
l
(
n
)と r
2
(
n)とが高 々定数倍 しか異ならない場合 、h(
Xn)- h(
X∞)は Oに収束す る
が 、その収束の r
a
t
eは不変集合の安定性 γによって決 まると思われ る。
V
7
t
C
)
,o(-1
C)(
Cは定数)とい う挙動 を示す例が構成で きて
現在 、それぞれ 0(
e
-nC),o(
e
-
n
いる。これは 、V を有 限座標のみに依存する関数 とした場合に、ワー ドエ ン トロピーのかわ りに
位相圧力 (自由エネルギ ー)
P(
V,
Xn)をとって も成 り立 っている。
この r
a
t
eが遅いほど、数値実験で見 ることので きる軌道は複雑な構造が長 く維持 され るように
観測 され る。 つ ま り、局在化 した軌道が長 く維持 され るので 、ウォル フラムの提唱 した クラス 4
の一面をと りだ していると予想 している。
参考文献
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