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電気自動車と普通充電器の互換性確認会
JARI Research Journal 20140604 【研究活動紹介】 電気自動車と普通充電器の互換性確認会 The Interoperability between Electric Vehicles and EVSEs 矢野 勝 *1 Masaru YANO 沼田 智昭*1 Tomoaki NUMATA 1. 開催背景 2009 年の三菱自動車 i-MiEV の発売に象徴され るように,第3次電気自動車ブームが到来してい る.一般的にガソリン自動車に比べて電気自動車 およびプラグインハイブリッド自動車(以下,総 称して EV)の航続距離は半分もしくはそれ以下 であり,それを補うために全国各所に公共の充電 器が設置されている.しかし,市場において EV および充電器の種類が増加するに従い,充電が不 成立となる事例が報告されはじめた.そのような 事例の発生を未然に防ぐために IEC 等の国際標 準 1) や JARI 充電器認証/互換性技術基準 2)が制 定されているが,これらが市場で必要とされるル ールの全てを網羅していないことが課題と考えら れる. この問題を解決する方法の一つとして,実際に 製品同士を相互に接続させることにより互換性を 評価するイベント(以下,互換性確認会)の開催 が考えられる.この例として,家電機器のホーム ネットワークの基盤構築を目指すエコーネットコ ンソーシアムは,ECHONET Lite規格3)に則る製 品に対して,互換性確認会を定期的に開催してい る.そして,この場で確認された課題について, 必要に応じて規格に反映させるなど,互換性の向 上につなげている. これらを鑑み,市場におけるEVと充電器の互換 性課題を解決する手段として,互換性確認会を開 催した.その具体的な内容と,実施結果について 述べる.なお,充電器は急速充電器と普通充電器 に分けられるが,本件は普通充電器に対する取り 組みである. *1 一般財団法人日本自動車研究所 JARI Research Journal 大野 和之 *1 Kazuyuki OHNO 黒田 英二 *1 Eiji KURODA 2. 実施目的 互換性確認会の開催目的の第一は互換性課題の 把握である.他方,充電器メーカ(特に小規模の 企業)とEVメーカとの交流の促進による情報交換 の活発化は,互換性問題の発生を未然に防ぐ手段 として重要である.よって,充電器メーカとEV メーカの交流の促進も実施目的の一つに加えた. 3. 実施方法 上述の目的を達成するため,国内で販売中のEV を5台(4社),同じく国内で販売中,もしくは年度 内に販売予定の普通充電器を15基(15社)集め,合 計75の組合せで互換性確認会を実施した. 3. 1 実施概要 互換性確認会の実施概要を表1に示す.本互換 性確認会は主催を一般社団法人電動車両用電力供 給システム協議会(EVPOSSA) ,協賛は一般社団 法人日本自動車工業会(JAMA) ,一般財団法人日 本自動車研究所(JARI)が担った.なお,実施方 法の検討や,当日の運用はJARIが担当した. FC・EV研究部 表1 互換性確認会実施概要 項目 内容 主 催 EVPOSSA 協 賛 JAMA, JARI 開催日時 2013年10月22日~24日 会 JARIつくば研究所 場 参加対象 国内で普通充電器を販売 または販売予定のメーカ 国内でEVを販売しているメーカ 参加枠 EV5台(4社)、普通充電器15基(15社) 評価項目 共通評価項目,任意の評価項目 評価者 各メーカ担当者 (主に普通充電器メーカ) - 1 - (2014.6) 具体的な実施手順としてEVと普通充電器の組 合せの変更手順を図1に示す.JARIつくば研究所 の施設内において,EV5台を定位置に置き,それ に合わせて普通充電器5基を配置した. 1.5時間で 各組み合わせの評価を終えた後,普通充電器を時 計回りに移動させる形で一日に5回組合せを変更 した.充電器メーカが毎日入れ替わることで,3 日間で延べ75組の評価を行った. EV4 EV2 C B D ヘッドライト EV5 図1 る方法として、会社・機種情報が特定できない匿 名情報として取り扱うこととした。 4. 実施結果 4. 1 実施状況 評価中の会場の様子を図2に示す.当日の作業を 予定通り行うため,評価内容の事前展開,電源の 着脱を容易にするプラグ・コンセント化,普通充 電器の移動に台車を利用,当日の経過時間の呼び かけ等によって,無事故で計画通りに評価を終え ることができた. EV1 A E 充電口 EVと普通充電器の組合せ変更手順 3. 2 評価項目 EVPOSSA,JAMA,JARIの本確認会の企画会 にて,限られた時間内で重要な評価が実施できる よう,最低限評価すべき21項目の共通評価項目 (ノウハウを含むため現時点では公開不可)を決 定した. 共通評価項目では、現行IEC61851-1に定めら れた基本的な充電動作に加えて、以下の項目につ いても評価していることが特徴である。 ・付加機能の確認 :充電タイマへの対応等 ・意地悪な操作への対応 :ロック解除レバーの長押し等 ・異常状態への対処:停電 また、共通評価項目が終了した後の残りの時間 はEVメーカ、充電器メーカ双方が希望する評価を 実施できることとし,特有の制御ロジックや機能 等の評価を任意に行えることとした。 図2 評価中の会場の様子 4. 2 課題の把握 3日間の評価を経て,充電不成立につながる 種々の課題が見つかった.その課題の一部とその 対策案を表2に示す.課題としては,EV,普通充 電器のどちらの原因によるものも確認した.また, IEC61851-1などの標準に従っていないものや, IEC61851-1には記載されていない内容によるも のも複数確認した. 現在,本確認会で発見された課題の再発防止策 として,JARI充電器認証/互換性技術基準への項 目追加,また関係各社との充電不具合情報等の情 報共有が効果的と考えられる. 3. 3 評価結果の共有 互換性のある充電環境の構築のために、本確認 会において他社の事例を知ることも有用であるた め,各組合せで評価された互換性課題を参加した 全メーカで共有することとした.ただし,評価さ れた課題には各社の制御ロジック等が露呈するも のや,まだ発表前の普通充電器の機密情報も含ま れる可能性がある.そのため、評価結果を共有す JARI Research Journal - 2 - (2014.6) 表2 課題の一部とその対策案 Q. EVメーカ(EVメーカであれば充電器メーカ)の互換性に 関する考え方を知ることができた 互換性課題 対策案 EVのタイマー作動時に,EVが充 充 電 器 は EVの タ イ マ 電を開始する前に充電器側がス ー 機 能 に 対応 す る こ リープした事例 とが望ましい 充電器のタイマー作動時に,EV 充 電 器 に EVが ス リ ー がスリープした事例 1 社(5%) 1 社(5%) ①そう思う 0 社(%) ②どちらかと言えばそう思う 6 社(32%) プ か ら 復 帰す る シ ー ③どちらかと言えば思わない 11 社(58%) ケンスを追加 特定のEVとの組合せでは,通信 充 電 器 メ ーカ に 事 例 信号にノイズが重畳し,充電器 を周知 ④思わない(既に知り得た範囲 内) 未回答 図4 アンケート結果: 側が誤判定を出した事例 双方の互換性に対する考え方の理解 4. 3 メーカ間の交流の促進 互換性課題の把握の他,もう一つの目的として 交流の促進がある.その取り組みの結果として, 評価後にアンケートをした結果を図3に示す. 「新 たなコネクションを得られたか?」との質問に対 して, 「そう思う」 「どちらかと言えばそう思う」 が全体の89%を占め,交流の促進の目的を達成し たと言える.また,本確認会を通じた双方の互換 性の考え方に関する理解の促進結果を図4に示す. 「EVメーカ(EVメーカであれば充電器メーカ)の 互換性に関する考え方を知ることができた」との 質問に対して, 「そう思う」 「どちらかと言えばそ う思う」が全体の90%を占め,双方の互換性に対 する考え方の理解が促進されたものと考えられる. Q.EVメーカ(EVメーカであれば充電器メーカ)との新た なコネクションが得られたか? 1 社(5%) 1 社(5%) ①そう思う 6. 謝辞 本確認会を開催するにあたり,計画を主導され た自動車メーカの関係各位,また,普通充電器メ ーカをとりまとめ頂いたEVPOSSAの関係各位か ら多くのご協力,ご尽力をいただいたことを深く 感謝致します. 0 社(%) ②どちらかと言えばそう思う 5 社(26%) 図3 ③どちらかと言えば思わない 12 社(63%) ④思わない (既にコネクション有り) 未回答 アンケート結果:EVメーカ(EVメーカであれば充電 器メーカ)との新たなコネクションの獲得(EVメー カ4社,充電器メーカ15社) 5. まとめと今後の計画 市場におけるEVと普通充電器 の互換性課題を 解決する手段として,互換性確認会を実施した. EV5台,普通充電器15基の全75の組合せに対して, 21の共通評価項目および各社任意の項目で評価 し,充電不成立に至る可能性がある種々の課題を 確認することができた.また,EVメーカと普通充 電器メーカとの間にコネクションを設ける機会と して本確認会を実施し,89%の参加者が新たなコ ネクションを設けることができたと回答した. 今後は,本確認会で得られた課題を充電不成立 の発生防止につなげるため,JARI充電器認証互換 性技術基準への項目追加について検討する.また, 本確認会も市場の動向によって実施する必要があ ると考える. 参考文献 1) IEC 61851-1:Electric vehicle conductive charging system - Part 1: General requirements, Ed. 2.0, 2010 2) JARI A 0201 EV/PHEV用AC普通充電器互換性技術基 準, 2012 3) http://www.echonet.gr.jp JARI Research Journal - 3 - (2014.6)