...

さまざまな動作における 補助人工心臓のカニューレに生じる負荷の比較

by user

on
Category: Documents
17

views

Report

Comments

Transcript

さまざまな動作における 補助人工心臓のカニューレに生じる負荷の比較
資料 2
さまざまな動作における
補助人工心臓のカニューレに生じる負荷の比較
九州大学大学院工学研究院
野口博司
2011年1月26日実施
2011年2月
8日実施
1.供試体
本実験では実際に患者に装着される血液ポンプおよびカニューレを用いた.図1に血液ポンプの正面
写真を示す.青色のタイラップは脱血側,もう一方は送血側である.また,脱・送血カニューレの反対
側に見える金属製パイプはポンプを駆動する装置に接続する駆動チューブを差し込む口である.カニュ
ーレは塩化ビニル製で外径 17mm, 内径 11mm である.今回は実際に血液ポンプから抜ける事故が起
きた脱血用カニューレを実験対象とした.
図1
2.測定方法
今回の実験では,ある動作がカニューレの変形に及ぼす影響を評価する方法として,ひずみゲージを
用いてカニューレ表面のひずみを測定する方法を用いた.図2に脱血用カニューレにひずみゲージを接
着した状態の写真を示す.ひずみゲージはカニューレの円周方向に 90 度おきに計 4 枚貼付した.4 枚
貼付することによって曲げもしくは引張りによる最大のひずみを検出することができる. 図3にひず
みゲージを接着したカニューレおよび血液ポンプの全景を示す.
図2
図2
ひずみゲージの位置
1
図3
ひずみゲージをはった補助人工心臓セット
測定は,図3に示した血液ポンプとカニューレのセットを被験者に装着し,特定の動作をする過程で
行った.固定は看護師が製作したポシェットに血液ポンプを収納し,幅 3cm 程度の紐を首もしくは腰に
まわすことで行った.ひずみゲージから得られたデータはパソコンに取り込み,測定後に解析した.
今回の測定では,カニューレの支持方法および動作が及ぼす影響を測定するために,いくつかのパタ
ーンで測定を行っている.以下にパターンの説明・写真およびリストを示す.リストの番号は後方で示
す写真および実験データに対応する.
3.
3.1
実験条件
カニューレの固定方法とカニューレの長さ
事故以前から九大で用いられてきたカニューレの長さとほぼ同じにして、図4の固定方法でカニューレ
を固定した。
2
図4
3.2
カニューレの固定方法
血液ポンプの支持方法
種々の動作による血液ポンプが動くことにより、カニューレには負荷がかかる。そこで血液ポンプを
以下の方法で支持している。
3.2.1 首のみの支持
事故以前から九大で用いられており,事故時の装着方法である.
図5
支持方法1(首のみ)
3
3.2.2 (首+腰)の支持
事故以前から九大で用いられてきた支持方法である.
図6
支持方法2(首+腰)
3.2.3 (首+腰+ループ+固定)の支持
新たに提案された方法で,ループを腰紐に支持する方法である.
図7
支持方法4(首+腰+ループ+固定)
4
3.3
動作説明.
動作
I,45度仰臥位から立位へ
J,立位から45度仰臥位へ
K,仰臥位で駆動チューブを巻き込んで立位へ
L,立位で駆動チューブを踏む(長め)
M,やや前かがみの立位で駆動チューブを踏む(動作 L よりチューブ短め)
N,立位から座位(椅子)へ
O,座位(椅子)から立位へ
P,座位(椅子)で駆動チューブを踏んで立位へ
表1
5
3.3.1
動作I・・・45度仰臥位から立位へ
↓
図8
動作I・・・45度仰臥位から立位へ
6
3.3.2 動作J・・・立位から45度仰臥位へ
↓
図9
動作J・・・立位から45度仰臥位へ
7
3.3.3 動作K・・・仰臥位で駆動チューブを巻き込んで立位へ
↓
図10
動作K・・・仰臥位で駆動チューブを巻き込んで立位へ
8
3.3.4 動作L・・・立位で駆動チューブを踏む(長め)
図11
動作L・・・立位で駆動チューブを踏む(長め)
3.3.5 動作M・・・やや前かがみの立位で駆動チューブを踏む(動作 L よりチューブ短め)
図12
動作M・・・やや前かがみの立位で駆動チューブを踏む(動作 L よりチューブ短め)
9
3.3.6 動作N・・・立位から座位へ
↓
図13
動作N・・・立位から座位へ
10
3.3.7 動作O・・・座位から立位へ
↓
図14
動作O・・・座位から立位へ
11
3.3.8 動作P・・・座位で駆動チューブを踏んで立位へ
↓
図15
動作P・・・座位で駆動チューブを踏んで立位へ
12
4.
実験結果
4.1 動作 I・・・45 度仰臥位から立位へ
10000
曲げΔε=5700μ
引張Δε=700μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
0
}引張ひずみ
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
I-1(首紐のみ)
10000
曲げΔε=6300μ
引張Δε=700μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
I-2(首紐+腰紐)
10000
曲げΔε=3500μ
引張Δε=800μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
I-4(首紐+腰紐+駆動チューブ固定)
図16
動作Iの実験結果.
13
10
15
4.2 動作 J・・・立位から 45 度仰臥位へ
10000
曲げΔε=3800μ
引張Δε=800μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
J-1(首紐のみ)
10000
曲げΔε=5900μ
引張Δε=800μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
J-2(首紐+腰紐)
10000
曲げΔε=3300μ
引張Δε=1200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
0
}引張ひずみ
-2000
0
5
時間 [秒]
10
J-4(首紐+腰紐+駆動チューブ固定)
図17
動作Jの実験結果.
14
15
4.3 動作 K・・・仰臥位で駆動チューブを巻き込んで立位へ
12000
10000
曲げΔε=8600μ
引張Δε=1500μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
}曲げひずみ
2000
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
K-1(首紐のみ)
10000
曲げΔε=4600μ
引張Δε=1200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
K-2(首紐+腰紐)
10000
曲げΔε=5000μ
引張Δε=1000μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
K-4(首紐+腰紐+駆動チューブ固定)
図18
動作Kの実験結果
15
10
15
4.4 動作 L・・・立位で駆動チューブを踏む
10000
曲げΔε=200μ
引張Δε=200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
0
}引張ひずみ
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
L-1(首紐のみ)
10000
曲げΔε=500μ
引張Δε=200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
L-2(首紐+腰紐)
10000
曲げΔε=400μ
引張Δε=200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
L-4(首紐+腰紐+駆動チューブ固定)
図19
動作Lの実験結果
16
10
15
4.5 動作 M・・・やや前かがみの立位で駆動チューブを踏む
10000
曲げΔε=700μ
引張Δε=500μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
0
}引張ひずみ
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
M-1(首紐のみ)
10000
曲げΔε=700μ
引張Δε=300μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
M-2(首紐+腰紐)
10000
曲げΔε=600μ
引張Δε=300μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
M-4(首紐+腰紐+駆動チューブ固定)
図20
動作Mno実験結果
17
10
15
4.6 動作 N・・・立位から座位へ
10000
曲げΔε=2600μ
引張Δε=200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
}曲げひずみ
2000
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
N-1(首紐のみ)
10000
曲げΔε=5100μ
引張Δε=400μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
}曲げひずみ
2000
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
N-2(首紐+腰紐)
10000
曲げΔε=5200μ
引張Δε=500μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
}曲げひずみ
2000
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
N-4(首紐+腰紐+駆動チューブ固定)
図21
動作Nの実験結果
18
10
15
4.7 動作 O・・・座位から立位へ
10000
曲げΔε=2600μ
引張Δε=200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
}曲げひずみ
2000
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
O-1(首紐のみ)
10000
曲げΔε=4900μ
引張Δε=200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
O-2(首紐+腰紐)
10000
曲げΔε=5300μ
引張Δε=600μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
0
}引張ひずみ
-2000
0
5
時間 [秒]
O-4(首紐+腰紐+駆動チューブ固定)
図22
動作Oの実験結果
19
10
15
4.8 動作 P・・・座位で駆動チューブを踏んで立位へ
10000
曲げΔε=4900μ
引張Δε=200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
P-1(首紐のみ)
10000
曲げΔε=4900μ
引張Δε=400μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
2000
}曲げひずみ
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
10
15
P-2(首紐+腰紐)
10000
曲げΔε=3600μ
引張Δε=1200μ
ひずみ [×10‐6]
8000
6000
4000
}曲げひずみ
2000
}引張ひずみ
0
-2000
0
5
時間 [秒]
P-4(首紐+腰紐+駆動チューブ固定)
図23
動作Pの実験結果
20
10
15
5.追加実験結果
4章の固定方法では、血液ポンプが(黄色いバンドから)ずれてしまい、引張ひずみは検出できな
かった。そこで、ずれにくい固定方法での実験結果を追記する。
5.1 カニューレの固定
図24
カニューレの固定
5.2 血液ポンプの支持方法
5.2.1 首のみの支持
21
図25
支持方法1‘
(首のみ)
5.2.2 (首+腰+ループ+固定)の支持
.
図26
固定方法4‘
5.3 動作説明
5.3.1 動作E・・・エルゴメーターの使用
図27
動作Eの説明
22
5.3.2 動作F・・・チューブを踏んで座位から立位へ
↓
図28
動作Fの説明
23
5.4 実験結果
5.4.1 動作 E・・・エルゴメーター
10000
青線・・・曲げひずみ
赤線・・・引張ひずみ
曲げΔε=2000μ
10000
6000
4000
2000
0
-2000
0
曲げΔε=2600μ
8000
ひずみ [×10‐6]
ひずみ [×10‐6]
8000
青線・・・曲げひずみ
赤線・・・引張ひずみ
6000
4000
2000
0
10
20
30 首のみ
40
50
時間 [秒]
E-1
-2000
0
60
10
20
40
50
60
E-4 首+腰+ループ+固定
首のみ
図29
30
時間 [秒]
動作Eの実験結果
5.4.2 動作 F・・・チューブを踏んで座位から立位へ
10000
青線・・・曲げひずみ
赤線・・・引張ひずみ
曲げΔε=3400μ
10000
6000
4000
2000
0
-2000
0
曲げΔε=3200μ
8000
ひずみ [×10‐6]
ひずみ [×10‐6]
8000
青線・・・曲げひずみ
赤線・・・引張ひずみ
6000
4000
2000
0
10
20
時間 [秒]
F-1
30
-2000
0
40
F-4
首のみ
図30
10
動作Fの実験結果
24
20
時間 [秒]
30
首+腰+ループ+固定
40
6.カニューレのかかる荷重
図31
に、カニューレにかかる軸力とひずみ(ひずみの位置は図2と同じ)を示す。
図31
カニューレに加わる軸力とひずみの関係
25
Fly UP