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米国DOE のクリーンエネルギー技術開発動向
PEC 海外石油情報(ミニレポート) 平成14年6月6日 PISAP ミニレポート 2002-11 ミニレポート 2002-11 米国 DOE のクリーンエネルギー技術開発動向 <クリーンエネルギー> 米国ブッシュ政権のエネルギー政策は海外石油依存度を削減するために石炭および原子力 発電を促進すると同時に、クリーンエネルギーの開発戦略を確実にすることである。そこで、最 近公表された米国政府のエネルギー政策動向および米国エネルギー省(DOE)のクリーンエネ ルギー技術開発動向を紹介する。 1.米国政府のエネルギー政策動向 ・米国の2000年における発電源構成割合は、石炭52%、原子力20%、天然ガス16%、水力7%、 石油 3%、新エネルギー2%となっている。一方 2002 年度の化石エネルギー研究開発関連の 国家予算は約 7.45 億ドルで、これはクリントン政権の 2001 年度とほぼ同額であるが、大きな違 いはこの予算の中で石炭のクリーン化関連の予算を新たに計上し、他の化石エネルギーの予 算を削減したことである(資料1)。このような背景のもとで、ブッシュ政権は最近石炭および原子 力をはじめとして水力、風力、地熱等のクリーンエネルギー関連の方針を打ち出している。 (1) 石炭火力、原子力に力点(資料2) ・ブッシュ政権は化石エネルギー予算 7.45 億ドルの中の 1.5 億ドルを石炭クリーン化にまわし、 また米国の電気需要の増加に対処するため、この予算とは別に最近原子力発電およびクリー ン石炭発電プラントの新たな建設に 3.33 億ドルを支援することにした。このうち石炭発電に関 しては 3.30 億ドルが投入されている。この金額を含めて今後 10 年間でクリーン石炭技術の開 発に 20 億ドルの予算が見積もられている。石炭火力に関しては排出ガスの NOX 除去装置の 新設が促進される。この関連でDOEは、高硫黄の低品位炭を用いている古い石炭発電プラン トを所有する企業に対して、同プラントから排出される大気エミッションおよび温室効果ガスを 削減するための新技術企画を 8 月 1 日までに立案しなければならないと発表した。(石炭クリ ーン化政策の詳細については後刻まとめる予定) ・米国内発電の 20%のシェアを持つ原子力発電プラントは二酸化炭素や二酸化硫黄のような 有害エミッションを排出しないことから推進される。原子力発電所の新たな建設に 300万ドルが 支援されるが、これとは別に DOE は原子力発電所新設用の新用地確保のために 2 年間で 4850万ドルの支援を行う計画を発表した。2企業がアイダホ州、南カロライナ州、オハイオ州で 新プラント建設を検討している。 PEC 海外石油情報(ミニレポート) (2) 風力発電を助成(資料3) ・米国政府は風力発電支援プロジェクトとして税額控除措置を 2001 年 12 月 31 日まで実施して いた。これは風力発電に対して 1.5 セント/kW・h(米国電力料金:平均 6.9 セント/kW・h)の 税額控除をするもので、ブッシュ大統領は 3 月にこの優遇税制を 2003 年 12 月 31 日まで延長 すると発表した。また、GE Power Systems 社が Enron Wind社の風力事業を買収したことを受け て、大企業が風力タービン製造業を買収することにより風力発電事業に参入することが予想さ れる。2001 年は本事業が加速した年であり、今後数年間は風力発電の伸びが年間 25~30% になると予想されている。 (3) 水力発電増加を期待(資料4) ・ブッシュ政権は「水力発電が最も成功率の高い再生可能エネルギーであり、今後水力がエネ ルギー資源として徐々に増加していくことを期待している」と 4 月に発表した。第二次世界大戦 中米国西部で活躍した水力発電を過去のものとして葬ることはできないとしている。水力発電 はダムや水力タービンは魚や野生動物の生態系に影響を及ぼすとして、環境保護グループ から反対が多いが、ブッシュ政権は従前のクリントン政権とは逆に水力を支持している。ブッシ ュエネルギープランでは、水力を風力のような間欠性資源とのハイブリッドの形で発電システ ムに取り入れることも検討されている。DOE は魚にやさしいタービンの共同開発を産業界に呼 びかけているが、産業界の予算要求 1 億ドル(年間)に対して DOE の 2003 年度予算は 750 万ドルと少ない。 (4) 西部地区で地熱発電を推進(資料5) ・DOE は米国西部地区への地熱エネルギーの供給を目的として、ネバダ大学の地熱エネルギ ーの研究に 94 万ドルの支援を行った。ネバダ州の Yacca 山が核廃棄物貯蔵の候補地とされ ているので、州政府は再生可能エネルギーを提唱している。特に同地区は地熱の宝庫であり、 いかなる廃棄物も出さない地熱エネルギーを推進している。 2.DOE の研究開発動向 2.1 DOE 研究所の研究開発 DOE に所属する 21 の国立研究所の研究内容は、毎月2回発行されている DOE Pulse に発表され ている。公表された最新の研究テーマの中から、クリーンエネルギーに関する研究を紹介する。 (1) 太陽電池(資料6) ・DOE は太陽電池の研究を促進している。Lawrence Berkeley National Laboratory は、無機半導 体を有機半導体フィルムに組み込んだハイブリッド太陽電池パネルを開発した。また、 National Renewable Energy Laboratory では太陽電池の研究が最終段階に来ており、同研究所 PEC 海外石油情報(ミニレポート) で開発したプロトタイプの太陽電池システムは Siemens Solar 社でテストされ、その結果次第で 実用化が計画されている。 (2) 地熱発電(資料5) ・次の 3 研究所が地熱技術の研究開発を実施している。 Idaho National Engineering and Environmental Laboratory(地質科学) Sandia National Laboratory(地質科学、探査、掘削) National Renewable Energy Laboratory(エネルギーシステム、研究、試験) (3) 天然ガスの改質(資料7,8) ・Argonne National Laboratory は燃料電池用高純度水素を安価に製造するために、天然ガスを 水素に改質するセラミック膜を開発している。この膜の成分は鉄、コバルト、ストロンチウムの酸 化物であり、硫黄耐性に優れている。本研究は、DOE のエネルギー政策である"Vision 21" program(無公害・高効率発電プラントの建設)の中の重要テーマである。 (4) バイオマス(資料9,10) ・Idaho National Engineering and Environmental Laboratory は小麦および他の穀物由来のバイオ マスをバイオプロセスおよび化学的分離技術により燃料および化学品に変換する研究開発を 大学および企業と共同で行っている。 (5) 再生可能エネルギー(資料 11,12) ・National Renewable Energy Laboratory は再生可能エネルギーの研究開発を目的とする Xcel Energy program の一環として、次の 3 つの研究プロジェクトを実施している。 ① バイオマスからエネルギー生産する際に排出される汚染物質を除去するためのフィルタ ーを開発する。 ② メソポーラスな酸化チタンフィルムからなる新しい太陽電池(new solid state Titania solar cell)を開発する。 ③ 固体高分子型燃料電池用の新規電気触媒(electrocatalyst)を開発する。この触媒は直接メ タノール燃料電池(DMFC)にも利用できる。 2.2 DOE のクリーンエネルギー開発助成 DOE はこのほど、クリーンエネルギーの開発プロジェクト 14 件に総額 1050 万ドルを助成するこ とを決定した。廃棄物の燃料利用、分散型発電、天然ガスSS、LPG改質装置等が含まれている。 この中の主なテーマを研究機関とともに紹介する。(資料 13) PEC 海外石油情報(ミニレポート) ・Kentucky Division of Energy(Frankfort, Ky.) 埋め立て地や池に廃棄されている石炭および木材廃棄物から発熱量 9,000 - 10,000Btu/lb の プレミアム燃料を生産開発する。 ・Association of State Energy Research and Technology Transfer Institutions(Madison, Wis.) マイクロタービン発電機、小型産業用タービン、燃料電池および他の分散型発電技術を開発 し、性能テストを行う。コージェネによりエネルギー効率を高める。 ・Idaho Department of Water Resources Energy Division(Boise, Idaho) 米国州間高速道路の LNG/CNG 供給ステーションを開発する。 ・Maryland Energy Administration(Annapolis, Md.) 鉄道機関車の燃料節減およびエミッション削減のためにエンジンアイドリングの低減化技術を 開発する。 ・Texas State Energy Conservation Office(Austin, Texas) LPG 改質装置を開発し、これを 5~10kW 固体高分子型燃料電池に適用し、フィールドテスト を行う。 ・State of Connecticut 市販のエアコンシステム用にオイルフリーの高効率、高性能の遠心コンプレッサーを開発す る。 (参考資料) 1. 米国の 2002 年度化石エネルギー関連予算(案)、PEC2001 海外石油情報(0112) 2. Bush admin to spend $333 million on clean energy. REUTERS NEWS SERVICE 04/03/2002 3. U.S. Wind Power Industry Gets Tax Credit Boost and Global Wind Power Industry Seeing Strong Growth http://www.ase.org/programs/industrial/whatsnew032202.htm 4. White House seeks boost of `under appreciated' hydropower. INSIDE ENERGY/ WITH FEDERAL LANDS 29/04/2002 PEC 海外石油情報(ミニレポート) 5. DOE AWARDS NEVADA UNIVERSITY FUNDS FOR GEOTHERMAL RESEARCH. FEDERAL TECHNOLOGY REPORT 18/04/2002 6. DOE LAB RESEARCHERS REPORT ADVANCES IN SOLAR TECHNOLGY. FEDERAL TECHNOLOGY REPORT 04/04/2002 7. With membranes, hydrogen may replace gasoline http://www.ornl.gov/news/pulse/pulse_v105_02.htm 8. Making Hydrogen Today: Argonne’s Fuel-Reforming Technology http://www.hydrogen.anl.gov/fuelcells/index.html 9. Building a new use for crop waste http://www.ornl.gov/news/pulse/pulse_v106_02.htm 10. Bioenergy Initiative http://www.inel.gov/energy/bioenergy/ 11. Research projects advance renewable energy http://www.ornl.gov/news/pulse/pulse_v99_02.htm 12. NREL Awarded Xcel Energy Contracts for Renewable Research http://www.nrel.gov/hot-stuff/press/xcel.html 13. Energy Department and States Team Up on Clean Energy Research http://www.energy.gov/HQPress/releases02/febpr/pr02031.htm 本資料は、財団法人石油産業活性化センター 石油情報プラザの情報探査で得られた情報 を、整理、分析したものです。無断転載、複製を禁止します。 問合せ先: 財団法人石油産業活性化センター 石油情報プラザ 安藤 TEL 03-5402-8508 E-mail [email protected]