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図形に対する見方や考え方を広げる指導方法の工夫

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図形に対する見方や考え方を広げる指導方法の工夫
平成 21 年度
理数教育ステップアップ研修
実践記録
図形に対する見方や考え方を広げる指導方法の工夫
-小学校第6学年算数移行単元「立体を調べよう」の実践を通して-
(実践者
新発田市立外ヶ輪小学校
片野
一輝)
現行第5学年の単元「立体を調べよう」では,取り上げる立体図形を柱体(角柱・円柱)として
いる。しかし,より一般的に図形にかかわり,進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる
という視野に立って考えると,小学校段階でも錐体を取り上げることが望ましい。柱体と錐体を同
単元で取り上げ,それぞれの性質や関係性についての理解を深めることで,図形に対する見方や考
え方を広げる力を育てることができるからである。
本実践では,立体図形の性質や関係性についての理解を深めるための工夫として,具体物を操作
して構成要素(辺・面・頂点)を見つけたり,各錐体と立体図形の構成要素との関係を二次元表に
まとめたりする。また,この二次元表をもとに立体図形相互の関係性について類推したり,帰納的
に考えたりして分かったことについて数式化するなどの工夫を学習活動に取り入れていく。
はじめに,円柱や円錐についての概念を理解し,構成要素や性質を見つける学習活動を進めた。
その過程で,取り上げる立体図形の範囲を広げ,角柱や角錐との違いについても考えていくことが
できるようにした。
立体図形相互の関係性についてのきまりを類推したり,帰納的に考えたりする力を高め,数式化
やそのよさに気付くなど立体図形の見方や考え方について深く追究する楽しさを味わう姿が見ら
れた。
1
「理数の面白さや深く追究する楽しさなどを味わわせる」ための構想
(1)教科と単元の特性
算数の学習の特性の一つは,漠然としていたものを明確にしていくことができるという点である
と考える。すなわち,社会における様々な事象について児童が直感的に考えたものを,根拠を明ら
かにし,より一般的,客観的にしていく過程が算数の学習の特性である。この特性が算数の学習の
面白さにつながっていると考える。図形領域においては,他領域と比べると,事象に対して,より
直接的,より視覚的に学習を進めることができる。したがって,児童の直感的な考えは,より顕著
に表現される。
平成 20 年8月に改訂された小学校学習指導要領解説(算数編)では,角柱や円柱の体積の求め方,
縮図や拡大図,対称な図形などを扱うこととなり,量と測定領域及び図形領域において多くの指導
内容が中学校から移行となった。これまで以上に,小学校段階において,図形に対する見方や考え
方を広げる力の育成が求められてきている。
本単元では,それぞれの立体図形がもつ概念や特徴,性質について,算数的活動を通して直感的
方法で調べていくことができる。これは,類推や帰納的な考え方の素地を育てることにもつながる。
この類推や帰納的な考え方に基づき,児童が課題に対して深く追究することを通して,理数の面白
さを味わわせていきたいと考える。まずは,児童自身にそれぞれの立体がどのような構成要素をも
っているのかについてじっくりと観察させ,その特徴を発見したときに,さらに深く追究すること
の楽しさが生まれるような学習展開を目指したい。
1
(2)指導の構想
本時は,いくつかの立体を分類し終わった段階での学習である。ここでは,角錐の構成要素(面
の数・頂点の数・辺の数)に着目することで,それぞれの角錐がどのような構成になっているのか
を調べたり,共通するきまりはあるかどうかを発見したりすることを期待する。
はじめに,一般的な建築物の例(シャルトル大聖堂)の写真を提示し,その建築物の構成が複雑
な立体図形であることを確認する。この立体図形を作成する方法を考えることから,複雑な立体図
形の構成要素について考える方法を学習するという本時の課題へと迫っていく。その後,立体図形
の実物を手に取って観察し,目に見えるものから分かる情報を二次元表にまとめていく。この過程
で,有限個の事象から分かることをもとに,一般化を図る帰納的な考え方の有効性を味わうことが
できる。
本来,小学校の指導内容では,角錐を取り上げていないが,より一般性のある結果を導き出すた
めに比較して考える視点を取り入れ,構成要素について調べた前時の角柱と本時の角錐の二つの立
体について取り上げる。その分,構成要素を共通の視点で分類し,より一般的に比較していく学習
展開が期待できる。
また,角錐を取り上げることにより,三つの数(面の数・頂点の数・辺の数)の間に成り立つオ
イラーの定理{(面の数)+(頂点の数)=(辺の数)+2}を発見していくことが考えられる。こ
の発見を基に,さらに追究を進め,どのような角柱や角錐でも頂点や辺の数をすぐに見つけること
ができるという数式化のよさや類推する楽しさを味わうことができると考える。
(3)指導の手立て
①
立体図形の構成要素を二次元表にまとめることで,類推や帰納的な考え方を促す
六十四角錐という構成が複雑な立体図形を提示し,すぐに辺や面の数が分からない思いを引き
出すようにする。このような複雑な立体図形の構成要素を簡単に求めるために,本学習を進めて
いくことを確認する。その後,既習の三角錐の構成要素を求めることが,六十四角錐の構成要素
を求めることにつながることに気付けるようにする。
はじめに,三角錐,四角錐,六角錐の模型を操作する活動を通して各錐体と立体図形の構成要
素との関係について分かったことを二次元表にまとめていく。すると,二次元表の縦や横の数値
的な関係に目を向けることができる。さらに,五角錐の構成要素を類推し,模型で確かめていく。
その後,三角錐から六角錐までで分かったことを生かして,七角錐から八角錐までの構成要素を
二次元表から帰納的に考えていくことができるようにする。
ここで,二次元表から分かることをもとに,十六角錐や本時の導入場面で提示した六十四角錐
の構成要素の数について考え,構成要素を模型で確認する。この過程が最終的には,何角錐であ
ろうとも,模型を操作せずに,面や辺,頂点の数を見つけることができる思考を育てることにつ
ながると考える。
②
立体図形の構成要素から分かったことを数式化する
柱体や錐体の構成要素を調べる学習を通して,分かったことを二次元表にまとめることで立体
図形の性質に気付いていくことができる。なぜなら,立体図形の学習では,関数的な見方や考え
方が大きくかかわっているからである。すなわち立体図形は,ある要素が決まれば他の要素も必
然的に決まってくるという性質をもっている。例えば,底面の形が決まれば,側面の数も決まる。
2
もちろん,辺の数や頂点の数も決まる。一つの立体図形を観察するだけでは分からないことでも,
複数の立体図形について相互の関係性を関数的に見ることで,立体図形が有する様々な性質に気
付いていくのである。
立体図形が有する性質がどのようなものであるかを明解に表現しているものが数式である。記
号や文字を使うことで,どのような立体図形に対しても共通した式で考えを進めることができる。
漠然としていたものが明確になる場面でもある。そこに数学的に考える楽しさがある。
立体図形の構成要素をまとめた二次元表の縦や横の数値的な関係性を数式に表すことで,より
合理的に面や辺,頂点の数を見つけることができる思考を育てることができると考える。
③
立体図形や数式化の一般化を図るため錐体を取り上げる
教科書で取り上げている立体図形の種類は,三角柱,四角柱(すべての面が長方形の直方体・
正方形の面を二つ含む直方体・立方体・台形の面を二つ含む跳び箱型),五角柱,六角柱,円柱で
ある。しかし,小学校段階で錐体を取り上げることで視野を広げ,柱体の特徴や性質を錐体と比
較しながらより明確に理解することができる。つまり,より一般的に図形にかかわる姿が期待で
きると考える。
柱体の構成要素を調べ,分かったことを二次元表にまとめ,数式化していく。同様にして,錐
体の構成要素を調べ,分かったことを二次元表にまとめ,数式化していく。その過程で,円柱と
円錐が立体図形の中でも特別な性質をもっていることに気付いていくと考えられる。
また,角柱と角錐の両方を取り上げることで,構成要素のきまりについてそれぞれの数式から
共通する新たな数式(オイラーの定理)についても思考を広げることができ,数式化の側面から
も一般化が期待できる。
④
言 …言語活動
< □
指導と評価の計画(全12時間)
次
時
3
8
目
標
学
習
内
容
活 角柱,円柱,角錐, ○直方体,
立方体ではない立体
□
円錐の概念を理
解する。
活 円柱,円錐の特徴
□
や性質を理解す
る。
の特徴を調べる。
○「角柱」「円柱」「角錐」「円
錐」の定義,用語「底面」
「側
面」の意味を知る。
○用語「三角柱」
「四角柱」
「三
角錐」
「四角錐」などを知る。
○円柱や円錐の底面や側面の
大きさや形,数をまとめる。
9
活 角柱の特徴や性
□
質を理解する。
活 …活用を図る学習活動 >
□
評価と方法
(重点評価項目に評価方法を明示)
関 立体図形の構成要素に着目して,
□
柱体や錐体の特徴を調べようと
している。
考 構成要素に着目して,柱体や錐体
□
の特徴をとらえている。
表 柱体や錐体の特徴を調べること
□
ができる。
知 角柱や角錐の概念を理解してい
□
る。
言 立体図形の構成要素に着目
□
知 円柱や円錐の概念,円柱や円錐の
□
して,円柱や円錐の特徴を
底面,側面の大きさや形,数を理
調べて発表し,検討する。
解している。
○角柱の底面や側面の大きさ
や形をまとめる。
3
(発言・ノート)
関 立体図形の構成要素に着目して,
□
角柱の特徴を調べようとしてい
る。
○角柱の面の数や頂点の数,辺
考 構成要素に着目して,角柱の特徴
□
の数をまとめる。
言 立体図形の構成要素に着目
□
して,角柱の特徴を調べて
をとらえている。
表 角柱の特徴を調べることができ
□
発表し,検討する。
る。
(発言・ノート)
知 角柱の底面や側面の大きさや形,
□
面や頂点,辺の数を理解している。
10
活 角柱,角錐の特徴
□
や性質について
○角錐の底面や側面の大きさ
関 立体図形の構成要素に着目して,
□
や形をまとめる。
角錐の特徴を調べようとしてい
の理解を深める。 ○角錐の面の数や頂点の数,辺
11
(本時)
の数をまとめる。
る。
考 構成要素に着目して,角錐の特徴
□
○角錐の面や頂点,辺の数のつ
ながりから分かることを数
をとらえている。
考 角錐の面,頂点,辺の数のつなが
□
式化する。
りからオイラーの定理を考える
○オイラーの定理を知る。
ことができる。(発言・ノート)
○角柱についてもオイラーの
表 角錐の特徴を調べることができ
□
定理が成り立つかどうかを
る。
知 角錐の底面や側面の大きさや形,
□
考える。
言 立体図形の構成要素に着目
□
面や頂点,辺の数を理解している。
して,角錐の特徴を調べて
発表し,検討する。
2
授業の実際
(1)二次元表にまとめることで,類推や帰納的な考え方を促す場面
本時では,六十四角錐の面の数,頂点の数,辺の数,底面の形,側面の形などについて考えるこ
とが課題の一つであった。しかし,六十四角錐の構成要素を一つ一つ数えるのは困難である。そこ
で,観察することが容易な角錐に着目させることから児童の思考を整理した。
<話者 → T:教師,C:児童>
話
者
話
し
合
い
の
内
容
~既習の立体図形に着目させていく場面~
T
「これ(六十四角錐)を作って。」と言われたらどう?
C1
側面が細かくて難しい。
C2
面の数を減らせば作れる。
C3
底面の角が多すぎて難しい。
C4
三角錐とか四角錐とかなら作れる。
<授業記録より>
このような児童とのやりとりを,適宜学習展開に取り入れた。そして,図形領域の特性を生か
し,単元を通して類推や帰納的に考える素地を身に付けていけるようにするため,課題に対する
見方・考え方を広げることができるように取り組んだ。
三角錐と四角錐と六角錐については一人一人に模型を準備し,操作しながら観察することがで
4
きるようにした。五角錐については,模型なしで類推し,七角錐以降についても,三角錐・四角
錐・五角錐・六角錐について分かったことをもとに帰納的に考える場面を設定した。そこで,分
かったことを整理しながら類推したり,帰納的に考えたりしていくことができるようなワークシ
ート(下表,以下「二次元表」と称する)を使用した。
類推
類推
類推
(10 時・11 時で使用したワークシート)
帰納的な考え方
この二次元表を活用したことで,9割弱(20/23 人)の児童が自力で立体図形の構成要素をまと
めることができた。残りの児童についても,二次元表の見方を説明することでまとめることができ
た。児童の振り返りからは,立体図形の構成要素を二次元表にまとめたことで,新たな疑問が生ま
れたり,発見が促されたりしている様子がうかがえた。
また,立体図形の構成要素をまとめた二次元表を見て気付いたことの中には,「角錐を上(主頂
点)から見ると,上(主頂点)から見た面の数と底面を足すと面の数の合計になる。」「角(頂点)
が増えていくと面や辺の数も増えていくし,増え方にはきまりがある。」など,二次元表にまとめ
たものと模型を合わせて考えた発言があり,立体図形の構成要素について,類推や帰納的に考える
過程で立体図形に対する見方や考え方の高まりもうかがえた。
(2)立体図形の構成要素から分かったことを数式化する場面
立体図形の構成要素を二次元表にまとめたことで,二次元表の縦や横の数値的な関係を関数的に
見て,立体図形相互の関係性に気付くことができた児童が多くいた。角錐について,二次元表にま
とめたことで気付いた関係性は以下のとおりである。
【二次元表の縦の関係性で気付いたこと】
○
底面の形について,三角錐の場合は三角形,四角
錐の場合は四角形と照応していること。
○
面の数と頂点の数が等しいこと。
○
面や頂点の数が,□角錐の□より1つ多いこと。
○
辺の数が,□角錐の□の2倍になっていること。
【二次元表の横の関係性で気付いたこと】
○
面の数,頂点の数が1つずつ増えていること。
○
辺の数が2つずつ増えていること。
5
○
辺の数と,面の数や頂点の数との差が2,3,4・・・と増えていること。
○
側面の形が,すべて三角形であること。
この過程で,右記のような表現方法を活用
している児童が三名いた。いわゆる構成要素
を数式化している姿である。そこで,全体発
表の際,他の児童にも分かるように,この表
現方法を紹介する場を設けた。すると,文字
に当てはめて辺や面の数を求め,どの場合で
も成立するかを確認する様子が見られ,数式
化の合理性に驚きの声もあった。そのときの
話し合いの様子を下記に示す。
<話者 → T:教師,C:児童>
話
者
話
し
合
い
の
内
容
~辺の数についての気付きを紹介する場面~
C1
辺の数は,ほにゃらら(~)の数×2。
C2
・・・ん?
C3
ほにゃらら(~)錐のほにゃらら(~)の数×2。
T
ほにゃらら(~)錐の数×・・・。ほにゃらら(~)ってのは例えば?
C4
五角錐だとすれば,五角錐の数で・・・。
C5
あっ,そういうことか。分かった。
C6
五角錐の5の数×2ってこと。
T
これなら,これ×2ってこと?
C7
そうすると辺の数になるってこと?
T
これが 10 ってなっているけど,これは?
C8
辺の数。
T
辺の数,これって当ってる?
C9
当っている。
C10
あっ,だって七角錐だって,7×2だし。
T
七角錐だと,何々?
C11
ほら,7×2をすれば,14 で辺の数になっている。
T
これだと,これで本当に当ってるかい?おっ,当ってるね。
これね。おっ,いいんじゃない?
<授業記録より>
数式化することができていたC1が,辺の数における気付きを紹介するが,大多数の児童は理解
できていない状態だった。しかし,C4でより具体的に説明をすることで,数人の児童が理解し,
C1の考えをC8が補足し始める。理解できていなかったC7も,当てはめてみることで理解をし
始め,C10 の反応を見ることができた。
数式化することで,漠然としていたものが明確になったり,立体図形の性質に対する思考が深ま
ったりしている様子がうかがえる。
6
(3)立体図形や数式化の一般化を図るため錐体を取り上げる場面
角錐の構成要素を調べて数式化したことで,角柱についても同様の数式があるかどうかについて
目を向ける児童がいた。さらに,角錐と角柱とで面の数が一つ違う理由は底面の数によるものであ
ること,底面が増えることに伴って頂点の数も増え,頂点を結ぶ辺の数も増えることなど,立体図
形の構成的な側面について数式から考えることができた。
【角錐の面・頂点・辺の関係について】
A角錐の場合
面の数
A+1
頂点の数
A+1
辺の数
A×2
【角柱の面・頂点・辺の関係について】
A角柱の場合
面の数
A+2
頂点の数
A×2
辺の数
A×3
また,
{(
)□(
)□(
)=2}の(
)には数字,□には演算記号が入るというヒントを
出すことで,新たな数式であるオイラーの定理{(面の数)+(頂点の数)-(辺の数)=2}を導
くことができた。角錐の学習で取り上げたオイラーの定理であったが,前時に学習した角柱でも成
立する数式であることに気付くことができた。数式の一般化という点でも錐体を取り上げた有効性
がうかがえる。円柱と円錐についても数式が成り立つかどうかを考える児童が数名いた。しかし,
成り立たないことを知り,面・頂点・辺の数を表す数式やオイラーの定理の例外に気付くことがで
きた。このように,円柱や円錐は柱体・錐体の中でも特殊な立体図形であることを知り,立体図形
の見方や考え方における思考の深まりが見られた。
3
実践の考察とまとめ
(1)類推や帰納的な考え方の育成
単元を通して帰納的に考える素地を育てようと取り組んできた。そのため,立体に対する児
童の直感を大切にして単元構成をしてきた。この直感を算数的活動から導き出すために,でき
る限り立体模型を準備し,実際に立体模型を操作しながら観察を進めることができるようにし
た。最初は,立体模型を眺めたりなぞったりしながら観察をしていた児童も,徐々に念頭操作
で観察できる児童が増えてきた。
本時では,六十四角錐という構成が複雑な立体図形について構成要素を求める場合,3次8
時に学習をしている角錐の構成要素を調べていくことで,一般化した上で求めることがきると
いう考え方を導き出すことができた。また,観察した立体図形の構成要素を二次元表にまとめ
たことで,四角錐と六角錐という構成が簡単な立体図形の中でも,中間にある五角錐の構成要
素を類推したり,七角錐,八角錐,十六角錐と帰納的に考えたりしたことで,何かきまりがあ
るのではないかという関数的に二次元表を見る点にも目を向けることができた。児童の感想か
らは,難しさを感じながらも,このような考え方に着目して類推の楽しさや帰納的に考える方
法を味わうことができた内容が多かった。
7
(2)漠然としているものを明確にする数式化のよさ
文字(A,X など)を用いた式は,中学校から一部移行となった内容である。教科書によって単
元配列は異なっており,立体図形の前に学習する場合と後に学習する場合がある。本校は,後者で
ある。したがって,現段階としては理解が難しく,立体図形の単元での活用は困難であろうと考え
ていた。しかし,立体図形の性質を考える際に記号(□,~)を用いた式で考えることができた児
童がいた。この発想をもとに,数式化の考え方を進めることができた。
立体図形の構成要素について観察して分かったことを
二次元表にまとめたことで,面の数・頂点の数・辺の数,
面の形や大きさという一つ一つがバラバラであったも
のが相互に関係性のあるものとして見ることができて
きた。さらに,それをもとに立体図形の性質を考えると
いう手順を踏んだことで,相互の関係性を数式という形
に表現することができた。これは,直感的に見ていたも
のが整理され,より一般的に,客観的に表現されていく
過程である。
このような過程が算数の学習のよさである。何より,
「今日の学習でよかったことは,式を使うと
簡単に辺などの数を求めることができたこと。」という立体図形の性質を明確にできた喜びが児童の
振り返りからうかがえた。
(3)柱体と錐体を取り上げることで生まれた新たな気付き
錐体を取り上げたおかげで,柱体との違いに目を向けながら学習を進める児童の姿が見られた。
柱体の中だけの比較もあるが,立体図形に対する見方や考え方を広げるという点から考えると,柱
体と錐体を比較しながら学習ができた点は有効であった。なぜなら,柱体と錐体を同単元で学習し
たことで,相互の関係性から新たな気付きも生まれたからである。それぞれの立体図形の構成要素
について数式で表すことはできるが,多少の違いがある。
その根拠を立体図形の構成要素に立ち返りながら数式の
意味を考える様子があった。これは,立体図形の性質を
深く追究している表れであると言える。
また,角錐の面や頂点,辺の数の関係について考えた
数式をもとに,オイラーの定理を導くことができた。こ
の考えを生かして,角柱においても同じ定理が成り立つ
ことに気付いたり,円柱や円錐では成り立たないことに
気付いたりと,数式の一般化を図るという点においても
よさがうかがえた。
【参考文献】
○「小学校学習指導要領解説
算数編」(文部科学省
○「子どもに向きあう授業づくり」(生田孝至
○「算数・数学指導事典」(仲田
紀夫
他
東洋館出版社)2008 年8月
図書文化)2006 年 11 月
著
著
著
教育出版センター)1985 年4月
8
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