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解答例
series 情報誌 第 12 号 ( 2014.1 ) 1 「数学を楽しもう」no.6 解説編 豆腐を右図のように 64 個の直方体に切り分けるとき、最低 6 回包丁を入れる必要があることを証明せよ。 【証明】 内部の直方体に着目する。直方体は 6 つの面で構成されるので、それぞれの面が 切り離されるには包丁を最低 6 回使う必要があるから。 【解説】 ほとんど「当たり前」であるが、どのような表現であれば説得力があるかが問われている。 2 任意の多面体の頂点 ( vertex ), 辺 (edge ), 面 ( face ) のそれぞれの数を v, e, f とするとき、 v -e+ f =2 であることを証明せよ。(オイラー Euler の多面体定理) 【証明】 任意の多面体がゴムでできていて、引き伸ばすことができると考える。 多面体のひとつの面を取り除き、多面体をその面で引き伸ばして平面図 D A HB E 形する(右図)。このとき、元の多面体と平面図形との関係は、頂点の 面EFGHを 取り除き、 平面になる ように引き 引き伸ばす。 C G F H 数と辺の数は等しく、面の数が 1 つ少ないが、頂点や辺や面の接続関係 は変わらない。従って、平面図形で v - e + f の関係を調べればよい。 E 平面図形の内部の辺を取り除く操作を繰り返し、外周の多角形を残す A G D B C F ことを考える。一辺を取り除くとき、その両端の頂点の繋がり具合(辺 が 3 本または 4 本以上集まるか)に応じて、次の 3 つの場合がある。 ① 両端の頂点が消える場合 ② 一方の頂点が消える場合 ③ 両端の頂点が残る場合 頂点の数 v が 2、辺の数 e が 3、 頂点の数 v が 1、辺の数 e が 2、 頂点の数 v は変わらな いが、 面の数 f が 1 減る ※ 頂点が消え、辺がつながる 面の数 f が 1 減る 辺の数 e と面の数 f が 1 減る ※ 頂点が消え、辺がつながる ※ 辺のみが消える ①②③いずれの場合の操作においても、 v- e+ f の値は変わらない。 操作が終了し多角形になったとき、n 多角形では v = e= n, f = 1 であるから、v - e+ f =1 である。 よって、平面図形では、常に v - e + f =1 となる。 平面図形を多面体に戻したとき、面の数 f が 1 だけ増えるので、 v - e + f =2 となる。 3 正三角形 ABC において、三角形の内部の点 P から 3 辺 AB, BC, CA に下ろした垂線の長さの和は一定であることを証 明せよ。 【証明】 点 P から各辺に下ろした垂線の足を L, M, N とし、正三角形の一辺の長さを a 、面積を S とする。 A 点 P がどこにあっても、面積の関係は S =△APB+△BPC+△CPAである。 1 1 1 2S つまり a ・ PL+ a ・ PM+ a ・ PN= S + PL+PM+PN= =一定 2 2 2 a L N P B M C 4 三角形 ABC について、次の問に答えよ。(入試における関連問題:2000 東北大、2013 東大など多数) (1) 3 辺 AB, BC, CA をそれぞれ 1 辺とする正三角形 BPC, CQA, ARB を三角形ABC の外側に作る。 このとき、正三角形 BPC, CQA, ARB の外接円は 1 点 F で交わることを証明せよ。また、4AFB =4BFC =4C FA = 120, であることを証明せよ。(点 F をフェルマー ( Fermat ) 点という。) (2) (1) の F は、直線AP, BQ, CR の交点であることを証明せよ。(これをフェルマー点の定義とすることもある。) (3) △ABC が 120, 以上の内角をもたないとき、点 F は 3 つの頂点 A, B, C からの距離の和が最小となる点であることを 示せ。120, 以上の角があるときはどうなるか。(この点をシュタイナー ( Steiner ) 点という。) R 【(1) の証明】 四角形AFBR, AFCQ において、∠R=∠Q=60, であり、 A Q それぞれ円に内接するので、相対する内角の和は 180, なので ∠AFB=∠AFC=120, +∠BFC=120, F B 四角形BFCP において、∠BFC+∠BPC=180, であるから、四角形 C BFCP は円に内接する。これは△BCPの外接円にほかならない。 【(2) の証明】 弦AR に対する円周角の関係から∠AFR=∠ABR=60, であり、 P ∠AFC=120, であるから、 R ∠RFC=∠RFA+∠AFC=60,+ 120, =180, A Q つまり、R, F, C は一直線上にある。A,F,P と B,F,Q も同様である。 【解説】 F 作図で点F を求めるとき、外接円の交点を求めるより直線の交点を求める B C ほうが簡単であるので、こちらを Fermat 点の定義とすることが一般である。 【(3) の証明】 点A, B, C をそれぞれ通り、AF, BF, CF に垂直な直線 l , m, n を引き、 これらの直線が作る三角形を△LMN とする。 P N l I A M 四角形AFBN において、∠AFB=120, ,∠FAN=∠FBN=90, より、 ∠LNM=60, である。同様に、∠NLM=∠LMN=60, であるから、 △LMN は正三角形となる。 △LMN の内部に任意の点G をとり、G から△LMN の各辺に下ろし n F B C G J た垂線の足をそれぞれ I, J, K とする。GI+GJ+GK は G をどこにとっ K m ても一定であるから、 L AF+FB+FB=GI+GJ+GK…① ここで、GI は G と直線 l との最短距離であり、直線 m , n についても同様である。 よって、GI≦GA, GJ≦GB, GK≦GC である。また、これと①より N AF+FB+FB=GI+GJ+GK≦GA+GB+GC つまり、点F において、F と A, B, C との距離の和が最小となる。 FM △ABC の内角の1つが 120, 以上の場合、Fermat 点は△ABC の外部にくる ので、Steiner 点と一致しない。(右図の場合、Steiner 点は A である。) 【解説】 A B C Steiner点の議論は平面上の n 個の点を結ぶ最短連絡網を求める問題に一般化され、「最小 Steiner 木 A ( minimal steiner tree ) 問題」と呼ばれている。例えば「4 つの町を繋ぐ最短の道路網を作 D る」などの切実な社会問題と結びついている。この問題は n が増えると指数関数的に計 算量が増える難問として有名であり、コンピュータを駆使して挑戦されている。 B C