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メトキシ基、アセチル基およびスク シノイル基の特異な置換度

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メトキシ基、アセチル基およびスク シノイル基の特異な置換度
JP 2008-501009 A 2008.1.17
(57)【要約】
ヒドロキシル基、メトキシ基、アセチル基およびスク
シノイル基の特異な置換度を有する高分子ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCA
S)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテー
ト(HPMCA)が開示される。該高分子は、難溶性薬物とそ
うした高分子とを含む組成物の製造に使用すると、水溶
解濃度および/または物理的安定性を向上させる。
(2)
JP 2008-501009 A 2008.1.17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物と高分子とを含む組成物であって、該高分子はヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス ア セ テ ー ト サ ク シ ネ ー ト (HPMCAS)で あ り 、 か つ 該 HPMCASの ア セ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSA C )
と ス ク シ ノ イ ル 基 の 置 換 度 (DOSS )が 次 の 条 件 を 満 た す こ と を 特 徴 と す る 組 成 物 :
DOSS ≧ 約 0.02、
DOSA C ≧ 約 0.65、 お よ び
DOSA C + DOSS ≧ 約 0.85。
【請求項2】
DOSA C ≧ 約 0.70で あ る 、 請 求 項 1に 記 載 の 組 成 物 。
10
【請求項3】
DOSA C ≧ 約 0.72で あ る 、 請 求 項 2に 記 載 の 組 成 物 。
【請求項4】
DOSA C + DOSS ≧ 約 0.88で あ る 、 請 求 項 1に 記 載 の 組 成 物 。
【請求項5】
HPMCASが 次 の 条 件 を 満 た す 請 求 項 1に 記 載 の 組 成 物 :
DOSS ≧ 約 0.02、
DOSA C ≧ 約 0.7、 お よ び
DOSA C + DOSS ≧ 約 0.9。
【請求項6】
20
薬物と高分子とを含む組成物であって、該高分子はヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス ア セ テ ー ト (HPMCA)で あ り 、 か つ 該 HPMCAの ア セ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSA C )は 約 0.15以 上 で
あることを特徴とする組成物。
【請求項7】
DOSA C ≧ 約 0.6で あ る 、 請 求 項 6に 記 載 の 組 成 物 。
【請求項8】
DOSA C は 約 0.2∼ 約 0.5の 範 囲 で あ る 、 請 求 項 7に 記 載 の 組 成 物 。
【請求項9】
DOSA C は 約 0.25∼ 約 0.45で あ る 、 請 求 項 8に 記 載 の 組 成 物 。
【請求項10】
30
3
HPMCAは 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 約 24.0 (J/cm )
1 / 2
で あ る 、 請 求 項 6∼ 9の い ず れ か 1項 に
記載の組成物。
【請求項11】
高 分 子 の メ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSM )は 約 1.6以 上 で あ り 、 か つ 約 2.15以 下 で あ る 、 請 求 項 1
∼ 10の い ず れ か 1項 に 記 載 の 組 成 物 。
【請求項12】
高 分 子 の メ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSM )は 約 1.75以 上 で あ り 、 か つ 約 2.0以 下 で あ る 、 請 求 項 1
1に 記 載 の 組 成 物 。
【請求項13】
薬 物 は 難 溶 性 薬 物 で あ る 、 請 求 項 1∼ 12の い ず れ か 1項 に 記 載 の 組 成 物 。
40
【請求項14】
組 成 物 は 難 溶 性 薬 物 と 高 分 子 と を 含 む 非 晶 質 固 体 分 散 体 を 含 む 、 請 求 項 13に 記 載 の 組 成
物。
【請求項15】
組 成 物 は 難 溶 性 薬 物 と 高 分 子 と の 物 理 的 混 合 体 を 含 む 、 請 求 項 13に 記 載 の 組 成 物 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異な置換度の組み合わせを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースア
セ テ ー ト サ ク シ ネ ー ト (HPMCAS)お よ び ヒ ド ロ キ シ プ ロ ピ ル メ チ ル セ ル ロ ー ス ア セ テ ー ト (H
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(3)
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PMCA)に 、 こ れ ら の 高 分 子 と 難 溶 性 薬 物 と を 含 有 す る 、 水 溶 解 濃 度 を 高 め た お よ び /ま た は
物理的安定性を高めた組成物に、そうした組成物を調製する方法に、またそうした組成物
の使用方法に、関する。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物はしばしば特定の所期治療効果を実現するための高分子を、コーティング剤
として、持続放出または制御放出用の放出制御剤として、安定化剤として、懸濁化剤、錠
剤用結合剤として、また増粘剤として使用する高分子を含めて、含有する。
【0003】
HPMCASは 元 々 、 医 薬 製 剤 用 の 腸 溶 高 分 子 と し て 、 ま た 写 真 フ ィ ル ム 用 の ハ レ ー シ ョ ン 防
10
止 剤 と し て 、 開 発 さ れ た 。 米 国 特 許 第 4,226,981号 (Onda et al.)明 細 書 を 参 照 。 腸 溶 高 分
子は胃の酸性環境に耐えて原形を保ち続ける高分子であり、そうした高分子でコーティン
グした製剤は薬物を酸性環境での失活または分解から保護し、または薬物による胃の炎症
を 防 ぐ 。 HPMCASは 現 在 、 信 越 化 学 (東 京 )が AQOATの 商 品 名 で 販 売 し て い る 。 信 越 化 学 は 、
置 換 度 の 組 み 合 わ せ を 変 え る こ と に よ り 異 な る pHレ ベ ル で 消 化 管 を 保 護 す る よ う に し た 3
グ レ ー ド の AQOATを 製 造 し て い る 。 す な わ ち AS-LFお よ び AS-LGグ レ ー ド (Fは 微 粉 末 を 、 Gは
顆 粒 を 、 そ れ ぞ れ 指 す )は 約 pH 5.5以 下 に 、 AS-MFお よ び AS-MGグ レ ー ド は 約 pH 6.0以 下 に
、 ま た AS-HFお よ び AS-HGグ レ ー ド は 約 pH 6.8以 下 に 、 そ れ ぞ れ 対 応 す る 。 各 グ レ ー ド の AQ
OATポ リ マ ー の 規 格 は 次 の と お り で あ る 。
【0004】
20
【表1】
30
【0005】
難 溶 性 薬 物 と HPMCASと を 含 有 す る 製 剤 は 有 効 で あ る と す で に 判 明 し て い る が 、 信 越 化 学
の AQOAT高 分 子 は そ う し た 製 剤 の 調 製 に 必 要 と さ れ る 性 質 が 限 ら れ て い る 。
【0006】
待たれるのは、溶出薬物濃度および組成物中の薬物安定性を特に高めるように設計され
た HPMCASま た は HPMCA高 分 子 で あ る 。 ま た 、 高 濃 度 化 /制 御 放 出 用 途 を 含 む 数 多 く の 用 途 に
合わせて医薬組成物に使用される高分子の性質を調節することも課題となっている。
【発明の開示】
【0007】
40
発明の概要
本発明は、医薬組成物に難溶性薬物と併用したときに性能が高まる結果となるような、
種 々 の 置 換 度 を 組 み 合 わ せ た HPMCAS高 分 子 を 提 供 す る 。 本 発 明 は 一 態 様 で 、 HPMCAS高 分 子
で あ っ て 、 該 高 分 子 の ア セ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSA C )と ス ク シ ノ イ ル 基 の 置 換 度 (DOSS )を
DOSS ≧ 約 0.02、
DOSA C ≧ 約 0.65、 お よ び
DOSA C + DOSS ≧ 約 0.85
と な る よ う に 定 め た HPMCAS高 分 子 を 提 供 す る 。
【0008】
別 の 態 様 で 、 本 発 明 は (a)難 溶 性 薬 物 と (b)HPMCAS高 分 子 と を 含 有 す る 医 薬 組 成 物 で あ っ
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(4)
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て 、 該 高 分 子 の ア セ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSA C )と ス ク シ ノ イ ル 基 の 置 換 度 (DOSS )を
DOSS ≧ 約 0.02、
DOSA C ≧ 約 0.65、 お よ び
DOSA C + DOSS ≧ 約 0.85
となるように定めたことを特徴とする医薬組成物を提供する。
【0009】
本 発 明 は 次 の う ち 1つ ま た は 複 数 の 利 点 を 提 供 す る 。 HPMCAS高 分 子 は 、 難 溶 性 薬 物 の 、
使用環境での溶出薬物濃度を高めるような置換基置換度の組み合わせを有する。該高分子
を難溶性薬物特に疎水性薬物の非晶質固体分散体の形成に使用すると、分散体中の薬物量
を多くしながら貯蔵中も均質性を維持する一方で、使用環境での溶出薬物濃度を高めるこ
10
とが可能になる。本発明の高分子は、過飽和水溶液からの急速結晶化を起こしやすい薬物
と組み合わせて使用すれば、高薬物濃度を維持し、以って薬物の生体吸収を促進する効果
が 特 に 見 ら れ る 。 ま た 、 難 溶 性 薬 物 と 本 発 明 の 高 分 子 の 分 散 体 は 商 用 グ レ ー ド の HPMCASで
調製した分散体と比べて物理的安定性も改善しよう。本発明の高分子はまた、難溶性薬物
の可溶化体との配合物および混合体の調製に使用して薬物濃度を高めるという際にも有用
である。
【0010】
本 発 明 は ま た HPMCA高 分 子 を 提 供 す る 。 本 発 明 は 一 態 様 で 、 該 高 分 子 の ア セ チ ル 基 の 置
換 度 (DOSA C )が 約 0.15以 上 で あ る HPMCA高 分 子 を 提 供 す る 。
【0011】
20
本 発 明 は さ ら に 別 の 態 様 で 、 ア セ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSA C )が 約 0.6以 下 で あ る HPMCA高 分
子を提供する。
3
本 発 明 は 別 の 態 様 で 、 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 約 24.0 (J/cm )
1 / 2
以 下 で あ る HPMCA高 分 子
を提供する。
【0012】
本 発 明 は な お 別 の 態 様 で 、 (a)難 溶 性 薬 物 と (b)HPMCA高 分 子 と を 含 有 す る 医 薬 組 成 物 で
あ っ て 、 該 高 分 子 の ア セ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSA C )が 約 0.15以 上 で あ る 医 薬 組 成 物 を 提 供 す
る。
【0013】
本 発 明 の HPMCA高 分 子 は 、 個 別 の 医 薬 組 成 物 の 要 求 特 に 該 組 成 物 を 水 性 使 用 環 境 に 投 与
30
したときの溶出薬物濃度の引き上げという要求に合わせた新規の置換度の組み合わせを有
す る 。 本 願 発 明 者 は 、 該 HPMCA高 分 子 を 過 飽 和 水 溶 液 か ら の 急 速 結 晶 化 を 起 こ し や す い 薬
物と組み合わせて使用すれば、高薬物濃度を維持し、以って薬物吸収を促進するという効
果が特に見られることを発見した。
【0014】
さ ら に 、 追 加 の ア セ チ ル 基 は HPMCAの 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー を HPMCの そ れ よ り も 低 く す る
結 果 と な る 。 そ の た め 、 親 油 性 薬 物 は HPMC中 よ り も HPMCA中 で の 溶 解 度 が 高 く な り 、 結 果
的 に 物 理 的 安 定 性 の 高 い 、 お よ び /ま た は 物 理 的 安 定 性 が 同 じ な ら 薬 物 含 量 の 多 い 、 非 晶
質固体分散体が得られる。
【0015】
40
ま た 、 HPMCに ア セ チ ル 基 を 追 加 し て HPMCAを 形 成 す る と 有 機 溶 媒 へ の 溶 解 度 が HPMCよ り
も 高 い HPMCA高 分 子 が 得 ら れ る 結 果 と な る 。 そ の た め 有 機 溶 媒 の 使 用 が 可 能 と な り 、 難 溶
性薬物で非晶質固体分散体を形成するときに有利である。また、固形製剤にコーティング
を施すときに選択肢が多くなるという利点もある。
【0016】
さ ら に 、 HPMCAは 非 イ オ ン 性 、 非 酸 性 で あ る た め 、 あ る 種 の 条 件 下 で 酸 感 受 性 の 薬 物 お
よび添加物を急速に分解しかねないイオン性、酸性または腸溶性の高分子と違って、酸感
受 性 の 薬 物 ま た は 添 加 物 の 化 学 分 解 を 招 か な い 。 こ れ ら の 性 質 は い ず れ も HPMCAを 医 薬 組
成物用の望ましい高分子にする。
【0017】
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本 願 発 明 者 は ま た 、 PHMCA高 分 子 に は 難 溶 性 薬 物 の 水 溶 液 中 の 濃 度 を 高 め る 以 外 に も 用
途があることを発見した。たとえば本発明の高分子は医薬組成物からの薬物放出の制御ま
たは遅延のためのコーティング剤として、またはマトリックス剤として、有用である。
【0018】
本発明に関する上記や他の目的、特徴および利点は以下、発明の詳細な説明を考察すれ
ば容易に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好ましい態様の詳細な説明
HPMCASと HPMCAは 置 換 型 セ ル ロ ー ス 系 高 分 子 で あ る 。 「 置 換 型 セ ル ロ ー ス 系 高 分 子 」 と
10
は、糖繰り返し単位上のヒドロキシル基の少なくとも一部分と化合物との反応によるエス
テル結合またはエーテル結合置換基の形成により修飾されたセルロース系高分子を意味す
る。セルロースは次の一般式で示される繰り返し単位を有する:
【化1】
20
【0020】
HPMCASと HPMCAは 2-ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 (-OCH2 CH(CH3 )OH。 以 下 、 ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ
キ シ 基 )を 糖 繰 り 返 し 単 位 に 、 該 繰 り 返 し 単 位 上 の 任 意 の ヒ ド ロ キ シ ル 基 上 で の 置 換 に よ
り、または別のヒドロキシプロポキシ基上のヒドロキシル基に、次のようにエーテル結合
させて含む:
【化2】
30
【0021】
HPMCASと HPMCAは ま た 、 メ ト キ シ 基 (-OCH3 )を 糖 繰 り 返 し 単 位 に 、 該 繰 り 返 し 単 位 上 の 任
意のヒドロキシル基上での置換により、次のようにエーテル結合させて含む。
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(6)
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【化3】
10
【0022】
HPMCASと HPMCAは ま た 、 ア セ チ ル 基 (-COCH3 )を 糖 繰 り 返 し 単 位 に 、 該 繰 り 返 し 単 位 上 の
任意のヒドロキシル基上での置換により、次のようにエステル結合させて含む。
【化4】
20
HPMCASは ま た 、 ス ク シ ノ イ ル 基 (-COCH2 CH2 COOH)を 糖 繰 り 返 し 単 位 に 、 該 繰 り 返 し 単 位
上の任意のヒドロキシル基上での置換により、次のようにエステル結合させて含む。
【化5】
30
40
【0023】
こ う し て 、 本 願 明 細 書 お よ び 特 許 請 求 の 範 囲 で 使 用 す る HPMCASは 、 2-ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ
キ シ 基 (-OCH2 CH(CH3 )OH)、 メ ト キ シ 基 (-OCH3 )、 ア セ チ ル 基 (-COCH3 )お よ び ス ク シ ノ イ ル
基 (-COCH2 CH2 COOH)を 含 む セ ル ロ ー ス 系 高 分 子 を 意 味 す る 。 該 高 分 子 は 、 そ の 性 能 お よ び
性質を実質的に損なわない限りで、他の置換基を少量含んでもよい。
【0024】
こ う し て 、 本 願 明 細 書 お よ び 特 許 請 求 の 範 囲 で 使 用 す る HPMCAは 、 2-ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ
キ シ 基 (-OCH2 CH(CH3 )OH)、 メ ト キ シ 基 (-OCH3 )お よ び ア セ チ ル 基 (-COCH3 )を 含 む セ ル ロ ー
ス系高分子を意味する。該高分子は、その性能および性質を実質的に損なわない限りで、
50
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他の置換基を少量含んでもよい。
【0025】
該高分子の任意の一置換基の量は該高分子の置換度をもって表す。該高分子の置換基ま
たは基の「置換度」はセルロース鎖上の糖繰り返し単位上で置換される該置換基の平均個
数 を 意 味 す る 。 該 置 換 基 は 糖 繰 り 返 し 単 位 上 の 3個 の う ち 任 意 の ヒ ド ロ キ シ ル 基 と の 置 換
に よ り 該 繰 り 返 し 単 位 に 直 接 結 合 し て も よ い し 、 糖 繰 り 返 し 単 位 上 の 3個 の う ち 任 意 の ヒ
ドロキシル基との置換により該繰り返し単位に結合したヒドロキシプロピル置換基を介し
て結合してもよい。たとえばアセチル置換基は次のように、糖繰り返し単位上のヒドロキ
シル基に、またはヒドロキシプロピル置換基上のヒドロキシル基に、結合してもよい。
【化6】
10
20
【0026】
DOSは 糖 繰 り 返 し 単 位 上 の 任 意 の 置 換 基 の 平 均 個 数 を 表 す 。 た と え ば 、 糖 繰 り 返 し 単 位
上 で 平 均 1.3個 の ヒ ド ロ キ シ ル 基 が メ ト キ シ 基 に よ り 置 換 さ れ る と す れ ば 、 DOSM は 1.3と な
ろ う 。 別 の 例 と し て 、 糖 繰 り 返 し 単 位 上 の 3個 の う ち 2個 の ヒ ド ロ キ シ ル 基 が メ ト キ シ 基 に
よ り 置 換 さ れ る と す れ ば 、 DOSM は 2.0と な ろ う 。 さ ら に 別 の 例 と し て 、 糖 繰 り 返 し 単 位 上
の 3個 の う ち 1個 の ヒ ド ロ キ シ ル 基 が ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 に よ り 置 換 さ れ 、 糖 繰 り 返 し
単 位 上 の 残 り 2個 の う ち 1個 の ヒ ド ロ キ シ ル 基 が メ ト キ シ 基 に よ り 置 換 さ れ 、 ま た 該 ヒ ド ロ
30
キ シ プ ロ ポ キ シ 基 上 の ヒ ド ロ キ シ ル 基 が メ ト キ シ 基 に よ り 置 換 さ れ る と す れ ば 、 DOSH P は 1
.0と な り 、 ま た DOSM は 2.0と な ろ う 。
【0027】
以下、高分子上の種々の置換基の置換度を変える好適な方法、薬物、および医薬組成物
を調製する方法について、さらに詳しく説明する。
【0028】
HPMCAS
信 越 化 学 に よ り 供 給 さ れ て い る 先 行 技 術 HPMCAS高 分 子 は 次 の よ う な 一 般 的 な 置 換 度 の 組
み 合 わ せ を 有 す る が (比 較 例 を 参 照 )、 値 の 範 囲 は 表 に 示 す よ う に 信 越 化 学 か ら 入 手 し た 多
数の異なるロットの高分子に関するものである:
【0029】
40
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【表2】
10
20
【0030】
本 願 発 明 者 は 次 い で 、 HPMCASの 置 換 度 を 変 え る こ と に よ り 、 若 干 の 難 溶 性 の 、 特 に 疎 水
性 の 、 薬 物 の 、 分 散 体 中 の 溶 解 度 を さ ら に 高 め ら れ る よ う な 新 規 グ レ ー ド の HPMCASが 調 製
可能であることを発見した。これは物理的に安定した、薬物含量の多い非晶質固体分散体
を も た ら す 結 果 と な っ た 。 こ う し た 新 規 グ レ ー ド の HPMCASに 関 す る さ ら な る 研 究 か ら 、 あ
る種の薬物の可溶化体との分散体または混合体は薬物の濃度を高め、また結晶化または析
出をさらに抑制することが判明した。
【0031】
特 に 本 願 発 明 者 は 、 性 能 と 有 用 性 を 高 め た HPMCAS高 分 子 で は DOSA S が 、 お よ び /ま た は ア
30
セ チ ル 基 と ス ク シ ノ イ ル 基 の 合 計 置 換 度 (す な わ ち DOSA S +DOSS )が 、 商 用 グ レ ー ド の HPMCAS
よりも高くなることを発見した。特定の理論または作用機構にこだわるつもりはないが、
高 DOSA S が 望 ま し い の は 、 疎 水 基 が 多 く な る た め 該 高 分 子 に 対 す る 難 溶 性 薬 物 の 溶 解 度 の
上昇につながるのではないかと考えられる。それと同時に、スクシノイル基の置換度は少
な く と も 、 該 高 分 子 を pH 7∼ 8で 水 溶 性 ま た は 水 分 散 性 に す る に 足 る 値 で あ る の が よ い 。
【0032】
本 願 発 明 者 は 、 性 能 と 有 用 性 を 高 め た 医 薬 組 成 物 用 HPMCAS高 分 子 が 高 DOSA S で あ る こ と
を 発 見 し た 。 た と え ば 、 一 実 施 形 態 で は DOSA S は 約 6.5以 上 で あ る 。 DOSA S は 好 ま し く は 約 7
.0以 上 で あ り 、 な お 好 ま し く は 約 7.2以 上 で あ る 。
【0033】
40
本 願 発 明 者 は ま た 、 性 能 と 有 用 性 を 高 め た 医 薬 組 成 物 用 HPMCAS高 分 子 の ス ク シ ノ イ ル 基
の 置 換 度 は 極 小 で あ る の が よ い こ と を 発 見 し た 。 た と え ば 、 一 実 施 形 態 で は DOSS は 約 0.02
以 上 で あ る 。 DOSS は 好 ま し く は 約 0.03以 上 で あ り 、 な お 好 ま し く は 約 0.05以 上 で あ る 。
【0034】
さ ら に 、 HPMCAS上 の ア セ チ ル 基 と ス ク シ ノ イ ル 基 の 合 計 置 換 度 は 極 小 値 よ り も 高 い の が
よ い 。 た と え ば 、 一 実 施 態 様 で は DOSA S +DOSS ≧ 約 0.85で あ る 。 好 ま し く は DOSA S +DOSS
≧ 約 0.88で あ り 、 な お 好 ま し く は DOSA S +DOSS ≧ 約 0.90で あ る 。 本 願 発 明 者 は こ う し た
ア セ チ ル 基 と ス ク シ ノ イ ル 基 の 合 計 置 換 度 の HPMCASが 医 薬 組 成 物 用 に 有 用 で あ る こ と を 発
見した。
【0035】
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メ ト キ シ 基 の 置 換 度 に 関 し て は 、 HPMCAS高 分 子 の DOSM は 約 1.6∼ 約 2.15で あ る の が 好 ま
し い 。 DOSM は 約 1.7以 上 、 さ ら に は 約 1.75以 上 で も よ い し 、 ま た 約 2.1以 下 、 さ ら に は 約 2.
0以 下 で も よ い 。 本 願 発 明 者 は こ う し た メ ト キ シ 基 置 換 度 の HPMCASが 医 薬 組 成 物 用 に 有 用
であることを発見した。
【0036】
DOSH P は 好 ま し く は 約 0.10∼ 約 0.35の 範 囲 で あ る 。 DOSH P は ま た 約 0.15∼ 約 0.30の 範 囲 で
も よ い 。 本 願 発 明 者 は こ う し た ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 置 換 度 の HPMCASが 医 薬 組 成 物 用 に
有用であることを発見した。
【0037】
本願発明者はまた、該高分子に対する難溶性薬物の溶解度を高めるにはアセチル基、ス
10
クシノイル基およびメトキシ基の合計置換度が高いのがよいことを発見した。これら基の
合計置換度が高ければセルロース繰り返し単位上の未反応ヒドロキシ基の置換度は低くな
る。未反応ヒドロキシル基は該高分子の親水性を著しく高めるため、該高分子に対する難
溶 性 薬 物 の 溶 解 度 を 低 下 さ せ る お そ れ が あ る 。 た と え ば 、 一 実 施 形 態 で は DOAA S +DOAS +DOS
M
≧ 約 2.7で あ る 。 好 ま し く は DOAA S +DOAS +DOSM ≧ 約 2.8で あ り 、 な お 好 ま し く は DOAA S +
DOAS +DOSM ≧ 約 2.85で あ る 。
【0038】
本願発明者は、これらの基準に合致する高分子で調製した製剤組成物が本願明細書で述
べる対照組成物と比較して薬物濃度の上昇または物理的安定性の向上またはその両方につ
ながることを発見した。
20
【0039】
本 願 発 明 者 は ま た 、 疎 水 性 薬 物 と HPMCASの 、 物 理 的 安 定 性 を 高 め た 非 晶 質 固 体 分 散 体 が
該薬物と該高分子の溶解度パラメーターの差を小さくすることにより得られることを発見
し た 。 特 定 の 理 論 ま た は 作 用 機 構 に こ だ わ る つ も り は な い が 、 HPMCASと 薬 物 の 溶 解 度 パ ラ
メ ー タ ー の 差 が 小 さ い と 、 高 分 子 /薬 物 分 散 体 の 混 合 自 由 エ ネ ル ギ ー は 低 い と 考 え ら れ る
。分散体の混合自由エネルギーが低ければ低いほど、高分子に対する薬物の熱力学的溶解
度は高くなる。これは、分散体中の薬物含量が一定なら、薬物と高分子の溶解度パラメー
タ ー の 差 が 小 さ い ほ ど 、 分 散 体 の 物 理 的 安 定 性 が 高 ま る (す な わ ち 熱 力 学 的 に 安 定 で あ る
か 、 ま た は 後 述 の よ う に 薬 物 濃 厚 相 と 薬 物 希 薄 相 へ の 相 分 離 が 低 速 に な る )こ と を 意 味 す
る。あるいは物理的安定性が同じなら、薬物含量を少なくし、ただし溶解度パラメーター
30
は大きくして、調製した分散体と比較して、薬物含量をさらに多くした分散体の形成が可
能 で あ る こ と を 意 味 す る 。 薬 物 と HPMCASの 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー の 、 置 換 度 に 基 づ く 計 算 方
法については後で述べる。
【0040】
HPMCA
本 願 発 明 者 は 、 あ る 種 の 難 溶 性 薬 物 特 に 疎 水 性 薬 物 (す な わ ち 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 約 2
3
2 (J/cm )
1 / 2
未 満 の 薬 物 )の 、 HPMCと の 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 、 薬 物 と 高 分 子 の 溶 解 度 パ ラ
3
メ ー タ ー が 不 釣 合 い で あ る た め (溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は HPMCの ほ う が 約 25 (J/cm )
1 / 2
大き
い )、 物 理 的 安 定 性 が 低 く な り や す い こ と を 発 見 し た 。 本 願 発 明 者 は 、 HPMCに ア セ チ ル 基
を 追 加 し て HPMCAを 形 成 さ せ る と 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 低 く な る た め 、 HPMCAと の 分 散 体 に
40
し た 薬 物 の 物 理 的 安 定 性 が 高 ま る こ と を 発 見 し た 。 さ ら に 研 究 を 進 め る と 、 HPMCAは 他 の
多数の医薬用途にも適した性質を有することが判明した。
【0041】
HPMCA上 の ア セ チ ル 基 の 置 換 度 は 、 医 薬 組 成 物 へ の 有 用 性 を 維 持 し な が ら 、 広 範 囲 に 変
化 さ せ る こ と が で き る 。 DOSA S は 好 ま し く は 約 0.05で あ る 。 DOSA S が こ の 値 を 下 回 る HPMCA
は 性 質 が HPMCと 類 似 す る た め 、 本 発 明 に は 包 含 さ れ な い 。
【0042】
高 濃 度 化 が 望 ま し い 場 合 の 実 施 形 態 で は 、 HPMCAは 生 理 的 pH 1∼ 8の 範 囲 で 水 溶 解 性 ま た
は 水 分 散 性 で あ る の が よ い 。 好 ま し く は 、 HPMCAは pH 1∼ 8の 範 囲 の 少 な く と も 一 部 分 で 水
溶 解 度 が 約 0.1 mg/mL以 上 で あ る 。 し か し 、 DOSA S の 値 が 高 す ぎ る と 、 HPMCAは 疎 水 化 し す
50
(10)
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ぎて、もはや水溶解性または水分散性ではなくなる。
【0043】
従 っ て 、 一 実 施 形 態 で は DOSA S は 約 0.60以 下 で あ り 、 好 ま し く は 約 0.50以 下 で あ り 、 よ
り 好 ま し く は 約 0.45以 下 で あ る 。 HPMCAは DOSA S 値 が 約 0.60以 下 で あ れ ば 水 溶 解 性 ま た は 水
分散性であることを本願発明者は発見した。
【0044】
別 の 実 施 形 態 で は 、 DOSA S の 範 囲 は 約 0.15∼ 約 0.6好 ま し く は 約 0.20∼ 約 0.50好 ま し く は
約 0.25∼ 約 0.45で あ る 。
さ ら に 別 の 実 施 形 態 で は 、 HPMCA高 分 子 は 、 DOSA S が 十 分 に 高 い た め 、 溶 解 度 パ ラ メ ー タ
3
ー が 約 24.0 (J/cm )
3
23.8 (J/cm )
1 / 2
1 / 2
以 下 で あ る 。 好 ま し く は 、 HPMCA高 分 子 は 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 約
3
以 下 で あ り 、 な お 好 ま し く は 約 23.6 (J/cm )
1 / 2
10
以 下 で あ る 。 HPMCAの 溶
解 度 パ ラ メ ー タ ー の 推 計 方 法 は 本 明 細 書 で 開 示 す る 。 メ ト キ シ 基 置 換 度 (DOSM )が 約 1.88で
あ り 、 ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 置 換 度 (DOSH P )が 約 0.25で あ る と き 、 こ れ は DOSA S で は 約 0.25
超 好 ま し く は 約 0.30超 よ り 好 ま し く は 約 0.35超 に 相 当 す る 。
【0045】
HPMCAを 制 御 放 出 マ ト リ ッ ク ス 剤 と し て 使 用 す る 実 施 形 態 で は 、 DOSA S は 約 0.2以 上 で あ
る の が よ い 。 組 成 物 か ら の 薬 物 の 放 出 速 度 を 調 節 す る た め に DOSA S を も っ と 高 く し て も よ
い 。 従 っ て 、 DOSA S は 約 0.3以 上 、 約 0.4以 上 、 約 0.5以 上 、 約 0.6以 上 、 約 0.7以 上 、 約 0.8
以 上 、 約 0.9以 上 、 さ ら に は 約 1.0以 上 で も 、 制 御 放 出 マ ト リ ッ ク ス 剤 と し て な お 有 効 で あ
ろう。
20
【0046】
コ ー テ ィ ン グ 剤 と し て 使 用 す る 場 合 に は 、 DOSA S を 約 0.2∼ 約 1.0の 範 囲 と す る の が よ い
。
HPMCA高 分 子 は ま た 、 DOSM を 約 1.6∼ 約 2.15の 範 囲 と す る の が 好 ま し い 。 DOSM は 約 1.7以
上 で も 、 さ ら に は 約 1.75以 上 で も よ い 。 DOSM は 約 2.1以 下 で も 、 さ ら に は 2.0以 下 で も よ い
。 本 願 発 明 者 は こ う し た メ ト キ シ 基 置 換 度 の HPMCAが 医 薬 組 成 物 用 に 有 用 で あ る こ と を 発
見した。
【0047】
DOSH P は 好 ま し く は 約 0.10∼ 約 0.35の 範 囲 で あ る 。 DOSH P は ま た 約 0.15∼ 約 0.30の 範 囲 で
も よ い 。 本 願 発 明 者 は こ う し た ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 置 換 度 の HPMCAが 医 薬 組 成 物 用 に
30
有用であることを発見した。
【0048】
別 の 実 施 形 態 で は 、 メ ト キ シ 基 と ア セ チ ル 基 の 合 計 置 換 度 (DOSS +DOSM )は 約 1.9以 上 、 よ
り 好 ま し く は 約 2.0以 上 、 最 も 好 ま し く は 約 2.1以 上 で あ る 。
【0049】
HPMCASと HPMCAの 合 成
HPMCASと HPMCAの 合 成 方 法 は 技 術 上 周 知 で あ る 。 た と え ば 米 国 特 許 第 4,226,981号 (Onda
et al.)明 細 書 お よ び Comprehensive Cellulose Chemistry by Kelmm et al. (1998; pp.
164-195, 207-249)を 参 照 (そ れ ら の 教 示 は こ こ に 参 照 に よ り 開 示 さ れ る )。 HPMCASと HPMCA
は 本 明 細 書 で 示 す よ う に 、 o-(ヒ ド ロ キ シ プ ロ ピ ル )-o-メ チ ル セ ル ロ ー ス (す な わ ち HPMC)
40
を そ れ ぞ れ 無 水 酢 酸 と 無 水 酢 酸 +無 水 コ ハ ク 酸 で 処 理 し て 合 成 し て も よ い 。 HPMCの 供 給 元
に は Dow (Midland, Michigan)、 信 越 化 学 (東 京 )、 Ashland Chemical (Columbus, Ohio)、
Aqualon (Wilmington, Delaware)、 Colorcon (West Point, Pennsylvania)な ど が あ る 。
多 様 な HPMC出 発 物 が 入 手 可 能 で あ り 、 ヒ ド ロ プ ロ ポ キ シ お よ び メ ト キ シ 置 換 基 の 置 換 度 に
差 が あ る 。 当 業 者 に は 自 明 で あ ろ う が 、 HPMC出 発 物 の 選 択 は 生 成 す る 高 分 子 の 溶 解 度 パ ラ
メ ー タ ー や 他 の 性 質 に 影 響 を 及 ぼ そ う 。 好 ま し い 実 施 形 態 で は HPMCは DOSM の 範 囲 が 1.76∼
2.12、 DOSH P の 範 囲 が 0.18∼ 0.35、 ま た 見 か け 粘 度 が 2.4∼ 3.6 cpで あ る 。 そ う し た 高 分 子
の 例 は Dow (Midland, Michigan)の E3 Prem LVグ レ ー ド や 信 越 化 学 の Pharmacoat Grade 60
3 type 2910な ど で あ る 。 あ る い は 、 技 術 上 周 知 の 方 法 を 用 い て HPMCを セ ル ロ ー 化 か ら 合
成してもよい。たとえばセルロースを水酸化ナトリウムで処理して膨化アルカリセルロー
50
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ス と し 、 次 い で ク ロ ロ メ タ ン と プ ロ ピ レ ン オ キ シ ド で 処 理 し て 、 HPMCを 生 成 す る 。 Compre
hensive Cellulose Chemistry by Kelmm et al.(1998)を 参 照 。 HPMC出 発 物 は 分 子 量 が 約 6
00∼ 60,000 Da、 好 ま し く は 約 3,000∼ 50,000 Da、 な お 好 ま し く は 約 6,000∼ 30,000 Daで
ある。
【0050】
HPMCの エ ス テ ル 化 は 一 般 に 2つ の 一 般 手 順 が あ る 。 第 1の 手 順 で は 、 HPMCを ま ず カ ル ボ ン
酸溶媒たとえば氷酢酸、プロピオン酸または酪酸に分散または溶解させる。カルボン酸は
加 熱 し て HPMCの 溶 解 を 促 進 す る よ う に し て も よ い 。 そ の 温 度 は 約 50∼ 120℃ の 範 囲 で も よ
い が 、 約 85℃ で あ る の が 好 ま し い 。 好 ま し く は 、 HPMCは 溶 媒 に 溶 解 す る が 、 溶 媒 中 に 分 散
させるだけでも、満足な性質をそなえた高分子はなお得られよう。
10
【0051】
カ ル ボ ン 酸 と HPMCの 混 合 液 に は カ ル ボ ン 酸 ア ル カ リ 塩 た と え ぱ 酢 酸 ナ ト リ ウ ム ま た は 酢
酸カリウムを含める。カルボン酸アルカリ塩はエステル化触媒として作用する。反応混合
液 中 の カ ル ボ ン 酸 ア ル カ リ 塩 の 濃 度 は 一 般 に 約 1∼ 20 wt%の 範 囲 で あ り 、 約 5∼ 20 wt%が 好
ましい。
【0052】
一 般 に 、 反 応 混 合 液 中 の HPMCの 濃 度 は 一 般 に 約 1∼ 50 wt%の 範 囲 で あ り 、 約 5∼ 30 wt%が
好ましい。
HPMCAの 合 成 で は 、 反 応 混 合 液 を 調 製 し た ら 、 無 水 酢 酸 を 加 え て エ ス テ ル 化 反 応 を 開 始
させる。反応物の添加量は最終産物の所期のエステル化度によって決まる。
20
【0053】
反 応 が (一 般 に 約 4∼ 24時 間 で )完 了 し た ら 、 た と え ば 塩 (塩 化 ナ ト リ ウ ム な ど )で 飽 和 さ
せ た 多 量 の 水 を 添 加 し て HPMCAを 沈 殿 さ せ る 。 次 い で 、 沈 殿 物 を 高 温 水 で 十 分 に 洗 浄 し 不
純 物 を 除 く 。 HPMCAが 有 機 溶 媒 に 溶 解 度 で あ る と き は 、 随 意 に 沈 殿 物 を ア セ ト ン ま た は THF
な ど の よ う な 有 機 溶 媒 に 溶 解 し 、 次 い で 再 沈 殿 さ せ 、 た と え ば 湯 で 洗 浄 し て も よ い 。 HPMC
Aは 完 全 に 乾 燥 さ せ て か ら 使 用 す る 。
【0054】
HPMCASの 合 成 で は 、 反 応 混 合 液 を 調 製 し た ら 、 無 水 コ ハ ク 酸 と 無 水 酢 酸 を 加 え て エ ス テ
ル 化 反 応 を 開 始 さ せ る 。 2反 応 物 は 反 応 容 器 に 同 時 に ま た は 連 続 的 に 添 加 し て も よ い 。 あ
る い は 、 一 方 の 反 応 物 の 一 部 分 を ま ず 反 応 容 器 に 添 加 し 、 次 い で 第 2反 応 物 の 一 部 分 を 添
30
加するというやり方を交互に繰り返し、所期量の各反応物を添加しつくすようにしてもよ
い。反応物の添加量は最終産物の所期のエステル化度によって決まる。一般に、各反応物
は 過 剰 量 を 、 通 常 は 化 学 量 論 量 の 1.0∼ 5.0倍 を 使 用 す る が 、 化 学 量 論 量 の 10倍 、 50倍 、 さ
ら に は 100倍 の 過 剰 量 の 反 応 物 を 使 用 し て も よ い 。
【0055】
反 応 が (一 般 に 約 4∼ 24時 間 で )完 了 し た ら 、 反 応 混 合 液 に 多 量 の 水 を 添 加 し て 高 分 子 を
沈殿させる。該高分子はプロトン化体では水不溶解性である。この水は塩基を添加しない
限 り 低 pHの ま ま で あ り 、 該 高 分 子 は 酸 性 水 に 不 溶 解 性 の ま ま で あ る 。 次 い で 、 沈 殿 物 を 水
で十分に洗浄し不純物を除く。随意に沈殿物をアセトンなどの有機溶媒に溶解し、次いで
水に再沈殿させ洗浄してもよい。該高分子は完全に乾燥させてから使用する。
40
【0056】
HPMCか ら HPMCASま た は HPMCAを 合 成 す る 第 2の 手 順 で は 、 HPMCを 塩 基 触 媒 た と え ば ピ リ ジ
ン ま た は α -ピ コ リ ン と 共 に 有 機 溶 媒 た と え ば ア セ ト ン ま た は ジ メ チ ル ホ ル ム ア ミ ド 中 に
分 散 ま た は 溶 解 さ せ る 。 反 応 混 合 液 中 の HPMC濃 度 は 約 1∼ 70 wt%の 範 囲 で あ り 、 好 ま し く
は 約 5∼ 50 wt%で あ る 。 HPMCAを 合 成 す る 場 合 は 、 次 に 、 前 述 の よ う に 無 水 酢 酸 を 加 え 、 反
応 混 合 液 を 約 40∼ 120℃ に 、 約 2∼ 120時 間 加 熱 す る 。 HPMCASを 合 成 す る 場 合 は 、 次 に 、 前
述 の よ う に 無 水 コ ハ ク 酸 と 無 水 酢 酸 を 加 え 、 反 応 混 合 液 を 約 40∼ 120℃ に 、 約 2∼ 120時 間
加熱する。
【0057】
エ ス テ ル 化 反 応 完 了 後 、 多 量 の 5∼ 15%硫 酸 ま た は 塩 酸 を 反 応 混 合 液 に 加 え て 混 合 液 を 酸
50
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性化し、高分子をプロトン化し、またその結果として高分子を沈殿させ、その沈殿物を水
で十分に洗浄して不純物を除き、乾燥させて高純度の粉体または粒体とする。
【0058】
得 ら れ る 高 分 子 は 一 般 に 、 分 子 量 が 出 発 物 HPMCの 約 1.7倍 で あ る 。 従 っ て 、 該 高 分 子 は
分 子 量 が 約 1,000∼ 約 100,000 Daの 範 囲 で あ る の が 好 ま し く 、 ま た 約 5,000∼ 約 80,000 Da
の 範 囲 、 さ ら に は 約 10,000∼ 約 50,000 Daの 範 囲 で あ る の が な お 好 ま し い 。 HPMCAを 制 御 放
出用マトリックス剤またはコーティング剤として使用する場合などさらに高分子量が求め
ら れ る よ う な 実 施 形 態 で は 、 HPMCAの 分 子 量 を 約 1,000∼ 約 1,000,000 Daの 範 囲 と し て も よ
い。
【0059】
10
高分子上のヒドロキシプロポキシ基、メトキシ基、アセチル基およびスクシノイル基の
置 換 度 は 、 技 術 上 周 知 の 方 法 を 用 い て 求 め る こ と が で き る 高 分 子 上 の 置 換 基 の wt%か ら 求
め る こ と か で き る 。 た と え ば 参 照 に よ り 開 示 さ れ る 米 国 特 許 第 4,226,981号 明 細 書 お よ び
日 本 医 薬 品 添 加 物 規 格 1993(pp. 182-187)を 参 照 。 置 換 基 の wt%は 高 分 子 上 の 置 換 基 量 の 解
析方法として業界で一般に受け入れられている。しかし、本願発明者はセルロース骨格上
の置換基の置換度は任意のグレードの高分子の、医薬組成物への使用効果を決する、もっ
と 意 味 の あ る パ ラ メ ー タ ー と な る こ と を 発 見 し た 。 特 に 高 分 子 上 の 1成 分 の 置 換 度 が 変 化
す る と き は 、 他 成 分 の 置 換 度 は 元 の ま ま で あ る 。 し か し 、 wt%が 変 化 す る と き は 、 た と え
置 換 度 に 変 化 が な く て も 、 1成 分 の wt%の 変 化 の 結 果 と し て 該 高 分 子 の 各 成 分 の wt%に 変 化
が 生 じ る 。 こ れ は wt%が す べ て の 置 換 基 を 含 め た セ ル ロ ー ス 繰 り 返 し 単 位 の 全 重 量 に 基 づ
20
くためである。
【0060】
慣 例 に よ り 、 ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 の wt%は 糖 鎖 に 結 合 し た ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 (
す な わ ち -OCH2 CH(CH3 )OH)の 質 量 に 基 づ い て 報 告 さ れ 、 メ ト キ シ 基 の wt%は 糖 鎖 に 結 合 し た
メ ト キ シ 基 (す な わ ち -OCH3 )の 質 量 に 基 づ い て 報 告 さ れ 、 ア セ チ ル 基 の wt%は ア セ チ ル 基 (
す な わ ち -COCH3 )の 質 量 に 基 づ い て 報 告 さ れ 、 ま た ス ク シ ノ イ ル 基 の wt%は ス ク シ ノ イ ル 基
(す な わ ち -COCH2 CH2 -COOH)の 質 量 に 基 づ い て 報 告 さ れ る 。 こ こ で は 、 置 換 基 の wt%を 論 じ
るときはこの慣例に従う。
【0061】
Rashan et al. (Journal of AOAC International, Vol.86, No.4, pp. 694-702, 2003)
30
は 高 分 子 上 の ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 と メ ト キ シ 基 の wt%を 求 め る 手 順 を 次 の よ う に 規 定
し て い る 。 高 分 子 試 料 60∼ 70mgを バ イ ア ル に 分 取 す る 。 こ の 同 じ バ イ ア ル に ア ジ ピ ン 酸 70
‾130mgと 57wt%ヨ ウ 化 水 素 酸 水 溶 液 2mLを 加 え る 。 次 い で o-キ シ レ ン 2mLを バ イ ア ル に 加 え
、 バ イ ア ル に キ ャ ッ プ を し 、 計 量 す る 。 次 い で バ イ ア ル を 150℃ に 加 熱 し 、 定 期 的 に 振 と
う す る 。 1時 間 加 熱 し た 後 、 バ イ ア ル を 室 温 ま で 放 冷 し 、 バ イ ア ル を 再 計 量 し 、 10mg未 満
の 減 量 を 確 認 す る 。 2相 を 分 離 さ せ 、 約 1.5mLの 上 層 o-キ シ レ ン を ピ ペ ッ ト で 取 り 出 し 、 小
さ な ガ ラ ス バ イ ア ル に (底 の 水 層 を 乱 さ ず に )移 す 。 次 に 、 取 り 出 し た こ の o-キ シ レ ン 層 1m
Lを 正 確 に 計 量 し 10mL容 量 フ ラ ス コ に 入 れ 、 フ ラ ス コ 容 量 ま で メ タ ノ ー ル で 希 釈 し 十 分 に
かき混ぜる。これを「試験試料」として表示する。
【0062】
40
標 品 溶 液 は 次 の 要 領 で 調 製 し た 。 約 2mLの o-キ シ レ ン を 10mL容 量 フ ラ ス コ に 入 れ る 。 次
に 約 200μ Lの ヨ ー ド メ タ ン を フ ラ ス コ に 加 え 、 加 え た ヨ ー ド メ タ ン の 重 量 を 記 録 す る 。 次
い で 約 34μ Lの 2-ヨ ー ド プ ロ パ ン を フ ラ ス コ に 加 え 、 加 え た 2-ヨ ー ド プ ロ パ ン の 重 量 を 記
録 す る 。 次 に o-キ シ レ ン を 加 え て フ ラ ス コ 容 量 と し 、 か き 混 ぜ る 。
【0063】
次 に 、 8mLバ イ ア ル に 80∼ 90mgの ア ジ ピ ン 酸 を 加 え る 。 こ の 同 じ バ イ ア ル に ヨ ウ 化 水 素
酸 2mL(57wt%水 溶 液 )を 加 え 、 バ イ ア ル を 振 と う す る 。 約 1.5mLの 上 層 o-キ シ レ ン を ピ ペ ッ
ト で 取 り 出 し 、 小 さ な ガ ラ ス バ イ ア ル に 移 す 。 次 に 、 取 り 出 し た こ の o-キ シ レ ン 層 1mLを
正 確 に 計 量 し 10mL容 量 フ ラ ス コ に 入 れ 、 フ ラ ス コ 容 量 ま で メ タ ノ ー ル で 希 釈 し 十 分 に か き
混ぜる。これを「標品」として表示する。
50
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【0064】
「 試 験 試 料 」 と 「 標 品 」 を 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (HPLC)に よ り 次 の 要 領 で 分 析 す
る 。 移 動 層 Aは 90/10 v/v水 /メ タ ノ ー ル か ら な り 、 移 動 層 Bは 15/85 v/v水 /メ タ ノ ー ル か ら
な っ た 。 「 試 験 試 料 」 ま た は 「 標 品 」 10μ Lを 、 AQUASIL( 登 録 商 標 ) カ ラ ム (5μ m, C18 1
25Å , 150× 4.60mm)を 備 え た HPLCに 注 入 す る 。 送 液 量 は 1.0mL/分 で あ り 、 グ ラ ジ エ ン ト は
次 の と お り : 0.00分 -70%移 動 層 A、 30%移 動 層 B; 8.00分 -40% A、 60% B; 10.00分 -15%A、 85
%B; 17.00分 -15%A、 85%B; 17.01分 -70%A、 30%B。 検 出 は UVに よ り 、 波 長 254nmで 行 う 。
【0065】
高分子試料のヒドロキシプロポキシ基とメトキシ基の量を計算するために、「標品」の
結 果 を 基 に し た 化 学 種 iに 関 す る 標 品 感 度 係 数 (RFi )を 次 式 か ら 計 算 す る :
10
【数1】
式 中 、 As t d , i は 化 学 種 iの ピ ー ク 面 積 、 DFs t d , i は 化 学 種 iの 希 釈 係 数 、 Vs t d , i は 「 標 品 」
の 調 製 に 使 用 し た o-キ シ レ ン の 容 量 、 Ws t d , i は 「 標 品 」 の 調 製 に 使 用 し た 化 学 種 iの mg表
20
示 の 重 量 、 ま た PFi は 化 学 種 iの 純 度 係 数 で あ る 。 感 度 係 数 は ヨ ー ド メ タ ン と 2-ヨ ー ド プ ロ
パンの両方について計算する。
【0066】
「 試 験 試 料 」 中 の 化 学 種 iの 量 は 次 式 か ら 計 算 す る :
【数2】
30
式中、変数は前記のとおりであるが、ただし値は「標品」ではなく「試験試料」に関する
も の で あ る 。 ヨ ー ド メ タ ン と 2-ヨ ー ド プ ロ パ ン の 両 方 の 量 は こ の よ う に し て 計 算 す る 。
【0067】
次 に 、 高 分 子 中 の メ ト キ シ 基 (-OCH3 )の 量 (wt%)を 次 式 に よ り 計 算 す る :
【数3】
式 中 Wi o d o m e t h a n e は 前 式 に よ り 与 え ら れ る 。
【0068】
高 分 子 中 の ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 (-OCH2 CH(CH3 )OH)の 量 (wt%)を 同 様 に し て 次 式 に よ
り計算する:
40
(14)
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【数4】
式 中 W2 - i o d o p r o p a n e は 前 式 に よ り 与 え ら れ る 。
【0069】
10
高 分 子 中 の ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 と メ ト キ シ 基 の wt%を 求 め る も う 1つ の 手 順 は 日 本 医
薬 品 添 加 物 規 格 1993(pp. 182-187)に 掲 載 さ れ て い る 。
【0070】
HPMCASの ア セ チ ル 基 と ス ク シ ノ イ ル 基 の wt%ま た は HPMCAの ア セ チ ル 基 の wt%は 次 の よ う
に HPLC法 で 求 め て よ い 。 ま ず 12.4mgの 高 分 子 試 料 を ガ ラ ス バ イ ア ル に 入 れ る 。 さ ら に バ イ
ア ル に 4mLの 1.0 N NaOHを 加 え 、 マ グ ネ チ ッ ク ス タ ー ラ ー を 使 用 し て 4時 間 撹 拌 し 、 高 分 子
を 加 水 分 解 す る 。 次 い で 4mLの 1.2 M H3 PO4 溶 液 を 加 え て 、 溶 液 pHを 3未 満 に 引 き 下 げ る 。
試 料 溶 液 バ イ ア ル を 数 回 逆 さ に し て 完 全 に 混 合 す る 。 後 は 試 料 溶 液 を 0.22μ mシ リ ン ジ フ
ィ ル タ ー で ろ 過 し て HPLCバ イ ア ル に と り 、 分 析 に 回 す 。
【0071】
20
対 照 と し て 、 高 分 子 の 非 加 水 分 解 試 料 を 調 製 す る た め に 、 高 分 子 102.4mgを バ イ ア ル に
分 取 す る 。 こ の バ イ ア ル に 4mLの 20mM KH2 PO4 溶 液 (pH 7.50)(1.0N水 酸 化 ナ ト リ ウ ム 溶 液 を
添 加 し て pHを 調 整 )を 加 え 、 マ グ ネ チ ッ ク ス タ ー ラ ー を 使 用 し て 4時 間 撹 拌 し 、 高 分 子 を 溶
解 さ せ る 。 次 い で 、 4mLの 25mM H3 PO4 溶 液 を 加 え て 、 溶 液 か ら 高 分 子 を 沈 殿 さ せ る 。 バ イ
ア ル を 数 回 逆 さ に し て 完 全 に 混 合 す る 。 後 は 対 照 溶 液 を 0.22μ mシ リ ン ジ フ ィ ル タ ー で ろ
過 し て HPLCバ イ ア ル に と り 、 分 析 に 回 す 。
【0072】
試 料 溶 液 と 対 照 溶 液 は Phenomenex AQUA( 登 録 商 標 ) 5μ , C18 カ ラ ム (ガ ー ド カ ラ ム 無
し )を 使 用 し て HPLCで 、 試 料 検 出 @215nm、 試 料 サ イ ズ 10μ Lと し て 、 分 析 し た 。 移 動 層 は 20
mM KH2 PO4 (pH 2.8)で あ り 、 送 液 量 は 周 囲 温 度 で 1.00mL/分 で あ る 。 一 連 の 酢 酸 お よ び コ ハ
30
ク 酸 の 標 品 を 校 正 用 に 調 製 す る 。 HPLC分 析 か ら 、 試 料 溶 液 お よ び 対 照 溶 液 の 酢 酸 と コ ハ ク
酸の濃度を求める。
【0073】
加水分解試料溶液中の酢酸とコハク酸の濃度および非加水分解対照溶液中の遊離の酢酸
と コ ハ ク 酸 の 濃 度 か ら 、 HPMCASの ア セ チ ル 基 と ス ク シ ノ イ ル 基 の 含 量 を 計 算 す る 。 関 連 の
計算式は次のとおりである:
【数5】
および
40
(15)
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【数6】
式 中 、 [Acetic Acid]f r e e と [Succinic Acid]f r e e は そ れ ぞ れ 非 加 水 分 解 対 照 溶 液 中 の 遊 離
の 酢 酸 と コ ハ ク 酸 の 濃 度 で あ り 、 ま た [Polymer]f r e e は 非 加 水 分 解 対 照 溶 液 中 の 当 初 添 加 H
10
PMCAS濃 度 で あ る 。 濃 度 の 単 位 は い ず れ も mg/mLで あ る 。
【0074】
高分子のアセチル基とスクシノイル基の含量は次式で求められる:
【数7】
20
および
【数8】
30
式 中 、 [Acetic Acid]H y d と [Succinic Acid]H y d は そ れ ぞ れ 加 水 分 解 試 料 溶 液 中 の 酢 酸 と コ
ハ ク 酸 の 濃 度 で あ り 、 [Acetic Acid]f r e e と [Succinic Acid]f r e e は そ れ ぞ れ 非 加 水 分 解 対
照 溶 液 中 の 遊 離 の 酢 酸 と コ ハ ク 酸 の 濃 度 で あ り 、 ま た [Polymer]f r e e と [Polymer]H y d は そ
れぞれ非加水分解対照溶液中と加水分解試料溶液中の当初添加高分子濃度である。濃度の
単 位 は い ず れ も mg/mLで あ る 。
【0075】
以上の分析から、高分子上のメトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、アセチル基および
ス ク シ ノ イ ル 基 の wt%が 得 ら れ る 。 こ の 情 報 を 基 に 、 次 の 手 順 に 従 っ て 高 分 子 上 の 各 置 換
基の置換度を計算する。
【0076】
ま ず 、 高 分 子 の 骨 格 部 分 (す な わ ち 高 分 子 の う ち 、 メ ト キ シ 基 、 ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ
基 、 ア セ チ ル 基 お よ び ス ク シ ノ イ ル 基 を 除 い た 部 分 )の wt%を 次 式 に よ り 求 め る :
【数9】
次 に 、 高 分 子 100gmあ た り の 骨 格 部 分 の モ ル 数 Mb a c k b o n e を 次 式 か ら 計 算 す る :
40
(16)
JP 2008-501009 A 2008.1.17
【数10】
【0077】
こ の 式 は 、 メ ト キ シ 基 と ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 の wt%は 糖 繰 り 返 し 単 位 上 の ヒ ド ロ キ
シ ル 基 の 一 部 分 を な す 酸 素 を 含 む が ア セ チ ル 基 と ス ク シ ノ イ ル 基 の wt%は そ れ を 含 ま な い
10
と い う 事 実 を 説 明 す る 。 当 業 者 に は 自 明 で あ ろ う が 、 こ の 式 は 近 似 式 に す ぎ ず 、 高 分 子 10
0gmあ た り の 骨 格 部 分 の 実 際 の モ ル 数 を 決 定 す る に は 反 復 計 算 が 必 要 で あ る 。 し か し 、 本
願 発 明 者 は こ の 近 似 式 が 一 般 に 、 高 分 子 上 の 置 換 基 の wt%の 測 定 誤 差 の 範 囲 内 の 置 換 度 計
算値もたらす結果となり、また置換度の決定に要する計算回数を大幅に減らすことを発見
した。本明細書では、置換度はこの近似式を用いて計算する。
【0078】
次 い で 、 置 換 基 の 置 換 度 (DOSi 、 iは 置 換 基 を 表 す )を 、 次 の よ う に 置 換 基 の モ ル 数 (置 換
基 の wt%を 置 換 基 の モ ル 重 量 で 割 っ て 計 算 )を 骨 格 モ ル 数 で 割 っ て 、 求 め る :
【数11】
20
【数12】
30
【数13】
および
40
(17)
JP 2008-501009 A 2008.1.17
【数14】
【0079】
難溶性薬物
10
用語「薬物」は通常の用語であり、哺乳動物特に人間に投与したときに有益な、予防的
な 、 お よ び /ま た は 治 療 的 な 性 質 を 示 す 化 合 物 を 表 す 。 薬 物 は 「 難 溶 性 薬 物 」 で あ る の が
好 ま し い 。 す な わ ち 生 理 的 pH (た と え ば pH 1∼ 8)で の 最 小 水 溶 解 度 が 約 0.5mg/mL以 下 で あ
る薬物をいう。本発明は薬物の水溶解度が低下するほど有用性が増す。従って、本発明の
組 成 物 は 水 溶 解 度 が 約 0.2mg/mL未 満 の 難 溶 性 薬 物 用 と し て 好 ま し い が 、 水 溶 解 度 が 約 0.1m
g/mL未 満 の 難 溶 性 薬 物 用 と し て な お 好 ま し く 、 水 溶 解 度 が 約 0.05mg/mL未 満 の 難 溶 性 薬 物
用 と し て な お 好 ま し い 、 水 溶 解 度 が 約 0.01mg/mL未 満 の 難 溶 性 薬 物 用 と し て さ ら に な お 好
ま し い 。 一 般 に 、 該 薬 物 は (1 回 )用 量 /水 溶 解 度 比 (dose-to-aqueous solubility ratio)
が 約 10mL超 で あ り 、 な お 一 般 的 に は 約 100mL超 で あ る が 、 こ の 場 合 、 水 溶 解 度 (mg/mL)は US
P模 擬 胃 腸 緩 衝 液 を 含 め た 生 理 学 に 意 味 の あ る 水 溶 液 (た と え ば pH値 が 1∼ 8の 水 溶 液 )中 で
20
観 測 さ れ る 最 低 値 で あ り 、 ま た 用 量 は mg単 位 で あ る 。 従 っ て 、 用 量 /水 溶 解 度 比 は 用 量 (mg
)を 水 溶 解 度 (mg/mL)で 割 る こ と に よ り 求 め ら れ よ う 。
【0080】
難溶性薬物は本発明にとって好ましい種類とは言え、本発明の利益を享受するには薬物
は難溶性である必要はない。所期の使用環境で相当の水溶解度を示す薬物でさえも、治療
効力の確保に必要な用量を少なくし、または薬効の急速な発現が望ましいときに薬物吸収
速度を速められれば、本発明によって可能となる水溶解濃度の向上と生体利用率の改善の
利 益 を 享 受 す る こ と は で き る 。 そ う し た 場 合 に は 、 薬 物 の 水 溶 解 度 は 最 高 1∼ 2mg/mL程 度
で も 、 さ ら に は も っ と 高 い 20∼ 40mg/mL程 度 で も よ い 。
【0081】
30
好ましい種類の薬物の非限定的な例は降圧薬、抗不安薬、抗凝固薬、抗けいれん薬、血
糖降下薬、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗腫瘍薬、β遮断薬、抗炎症薬、抗
精神病薬、向知性薬、コレステロール降下薬、トリグリセリド降下薬、抗アテローム性動
脈硬化剤、抗肥満薬、自己免疫疾患治療薬、性的不能治療薬、抗菌・抗真菌薬、催眠薬、
抗パーキンソン病薬、抗アルツハイマー病薬、抗生物質、抗うつ薬、抗ウイルス薬、グリ
コーゲンホスホリラーゼ阻害薬、およびコレステリルエステル輸送タンパク質阻害薬であ
る。
【0082】
列挙した各薬物は製薬上許容しうる形態をすべて包含するものとする。「製薬上許容し
うる形態」は立体異性体、立体異性体の混合体、鏡像体、溶媒和物、水和物、同形体、多
40
形体、仮晶、中性型、塩型およびプロドラッグを含めて製薬上許容しうる一切の誘導体ま
たは変異体を意味する。降圧薬の具体例はプラゾシンやニフェジピン、ベシル酸アムロジ
ピン、シリマゾシン、ドキサゾシンである; 血糖降下剤の具体例はグリピシドやクロルプ
ロパミドである; 性的不能治療薬の具体例はシルデナフィルやクエン酸ルデナフィルであ
る; 抗腫瘍薬の具体例はクロラムブシルやロムスチン、エキノマイシンである; イミダゾ
ー ル 系 抗 腫 瘍 薬 の 具 体 例 は ツ ブ ラ ゾ ー ル (tubulazole)で あ る ; 高 コ レ ス テ ロ ー ル 症 用 薬 の
具体例はアトルバスタチンカルシウムである; 抗不安薬の具体例は塩酸ヒドロキシジンや
塩酸ドキセピンである; 抗炎症薬の具体例はベータメタゾンやプレドニゾロン、アスピリ
ン、ピロキシカム、バルデコキシブ、カルプロフェン、セレコキシブ、フルルビプロフェ
ン 、 (+)-N-{ 4-[3-(4-フ ル オ ロ フ ェ ノ キ シ )フ ェ ノ キ シ ]-2-シ ク ロ ペ ン テ ン -1-} -Nヒ ド ロ
50
(18)
JP 2008-501009 A 2008.1.17
キシウレアである; バルビツール酸塩系催眠薬の具体例はフェノバルビタールである; 抗
ウイルス薬の具体例はアシクロビルやネルフィナビル、デラベルジン、ビラゾールである
; ビ タ ミ ン /栄 養 剤 の 具 体 例 は レ チ ノ ー ル ビ タ ミ ン Eで あ る ; β 遮 断 薬 の 具 体 例 は チ モ ロ ー
ルやナドロールである; 催吐薬の具体例はアポモルフィンである; 利尿剤の具体例はクロ
ル タ リ ド ン や ス ピ ロ ノ ラ ク ト ン で あ る ;抗 凝 固 薬 の 具 体 例 は ジ ク マ ロ ー ル で あ る ; 強 心 剤
の 具 体 例 は ジ ゴ キ シ ン や ジ ギ ト キ シ ン で あ る ; ア ン ド ロ ゲ ン 薬 の 具 体 例 は 17-メ チ ル テ ス
トステロンやテストステロンである; 鉱質コルチコイドの具体例はデスオキシコルチコス
テ ロ ン で あ る ; ス テ ロ イ ド 系 催 眠 薬 /麻 酔 薬 の 具 体 例 は ア ル フ ァ キ サ ロ ン で あ る ; 同 化 剤
の具体例はフルオキシメステロンやメタンステノロンである; 抗うつ薬の具体例はスルピ
リ ド や [3,6-ジ メ チ ル -2-(2,4,6-ト リ メ チ ル -フ ェ ノ キ シ )-ピ リ ジ ン -4-イ ル ]-(1-エ チ ル プ
10
ロ ピ ル )-ア ミ ン 、 3,5-ジ メ チ ル -4-(3'-ペ ン ト キ シ )-2-(2',4',6'-ト リ メ チ ル フ ェ ノ キ シ )
ピリジン、ピロキシジン、フルオキセチン、パロキセチン、ベンラファキシン、セルトラ
リンである; 抗生物質の具体例はカルベニシリンインダニルナトリウムや塩酸バカンピシ
リ ン 、 ト ロ レ ア ン ド マ イ シ ン 、 塩 酸 ド キ シ サ イ ク リ ン 、 ア ン ピ シ リ ン 、 ペ ニ シ リ ン Gで あ
る; 抗感染薬の具体例は塩化ベンザルコニウムやクロルヘキシジンである; 冠拡張薬の具
体例はニトログリセリンやミオフラジンである; 催眠薬の具体例はエトミデートである;
炭酸脱水素酵素阻害薬の具体例はアセタゾラミドやクロルゾラミドである; 抗真菌薬の具
体例はエコナゾールやテルコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、グリセオフル
ビンである; 抗原虫薬の具体例はメトロニダゾールである; 駆虫薬の具体例はチアベンダ
ゾールやオクスフェンダゾール、モランテルである; 抗ヒスタミン薬の具体例はアステミ
20
ゾ ー ル や レ ボ カ バ ス チ ン 、 セ チ リ ジ ン 、 レ ボ セ チ リ ジ ン 、 デ ス ロ ラ タ ジ ン (decarboethoxy
loratadine)、 シ ン ナ リ ジ ン で あ る ; 抗 精 神 病 薬 の 具 体 例 は ジ プ ラ シ ド ン や オ ラ ン ゼ ピ ン
、塩酸チオチキセン、フルスピレリン、リスペリドン、ペンフルリドールである; 胃腸薬
の具体例はロペラミドやシサプリドである; の具体例はである; の具体例はである; の具
体例はである; セロトニン拮抗薬の具体例はケタンセリンやミアンセリンである; 麻酔薬
の具体例はリドカインである; 血糖降下薬の具体例はアセトヘキサミドである; 制吐薬の
具体例はジメンヒドリナートである; 抗菌薬の具体例はコトリモキサゾールである; ドー
パ ミ ン 作 動 薬 の 具 体 例 は L-DOPAで あ る ; 抗 ア ル ツ ハ イ マ ー 病 薬 の 具 体 例 は THAや ド ネ ペ ジ
ル で あ る ; 抗 潰 瘍 薬 /H2拮 抗 薬 の 具 体 例 は フ ァ モ チ ジ ン で あ る ; 鎮 静 /催 眠 薬 の 具 体 例 は ク
ロルジアゼポキシドやトリアゾラムである;
30
【0083】
血管拡張薬の具体例はアルプロスタジルである; 抗血小板薬の具体例はプロスタサイク
リ ン で あ る ; ACE阻 害 薬 /降 圧 剤 の 具 体 例 は エ ナ プ リ ラ ト (enalaprilic acid)や キ ナ プ リ ル
、リシノプリルである; テトラサイクリン系抗生物質の具体例はオキシテトラサイクリン
やミノサイクリンである; マクロライド系抗生物質の具体例はエリスロマイシンやクラリ
スロマイシン、スピラマイシンである; アザライド系抗生物質の具体例はアジスロマイシ
*
*
ン で あ る ; グ リ コ ー ゲ ン ホ ス ホ リ ラ ー ゼ 阻 害 薬 の 具 体 例 は [R-(R S )]-5-ク ロ ロ -N-[2-ヒ
ド ロ キ シ -3-{ メ ト キ シ メ チ ル ア ミ ノ } -3-オ キ ソ -1-(フ ェ ニ ル メ チ ル )プ ロ ピ ル -1H-イ ン
ド ー ル -2-カ ル ボ キ サ ミ ド や 5-ク ロ ロ -1H-イ ン ド ー ル -2-カ ル ボ ン 酸 [(1S)-ベ ン ジ ル -(2R)ヒ ド ロ キ シ -3-((3R,4S)-ジ ヒ ド ロ キ シ -ピ ロ リ ジ ン -1-イ ル )-3-オ キ プ ロ ピ ル ]ア ミ ド で あ
る ; お よ び コ レ ス テ リ ル エ ス テ ル 輸 送 タ ン パ ク 質 (CETP)阻 害 薬 の 具 体 例 は (2R,4S)-4-[(3,
5-ビ ス -ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -ベ ン ジ ル )-メ ト キ シ カ ル ボ ニ ル -ア ミ ノ ]-2-エ チ ル -6-ト リ フ
ル オ ロ メ チ ル -3,4-ジ ヒ ド ロ -2H-キ ノ リ ン -1-カ ル ボ ン 酸 エ チ ル エ ス テ ル 、 別 名 ト ル セ ト ラ
ピブである。
【0084】
トルセトラピブは次の式で示される:
40
(19)
JP 2008-501009 A 2008.1.17
【化7】
10
【0085】
CETP阻 害 薬 特 に ト ル セ ト ラ ピ ブ お よ び そ う し た 化 合 物 を 調 製 す る 方 法 は 米 国 特 許 第 6,19
7,786号 お よ び 第 6,313,142号 の 各 明 細 書 、 国 際 公 開 第 WO 01/40190A1号 、 第 WO 02/088085A
2号 お よ び 第 WO 02/088069A2号 の 各 パ ン フ レ ッ ト で 開 示 さ れ て お り 、 こ れ ら の 特 許 文 書 は
参照により開示される。トルセトラピブは通常、ヒト消化管の管内液といった水性環境で
20
は 難 溶 性 で あ る 。 ト ル セ ト ラ ピ ブ の 水 溶 解 度 は 約 0.04μ g/mL未 満 で あ る 。 ト ル セ ト ラ ピ ブ
は溶解度を高めた形で消化管に提供されなければ、消化管内の薬物濃度を十分に高くする
ことにより血中に十分に吸収され、所期の治療効果が現れるようにすることはできない。
CETP阻 害 薬 は ま た 米 国 特 許 第 6,723,752号 明 細 書 で も 、 (2R)-3-{ [3-(4-ク ロ ロ -3-エ チ ル フ ェ ノ キ シ )-フ ェ ニ ル ]-[[(1,1,2,2,-テ ト ラ フ ル オ ロ -エ ト キ シ )-フ ェ ニ ル ]-メ チ ル ]-1,1
,1-ト リ フ ル オ ロ -2-プ ロ パ ノ ー ル な ど 、 多 数 が 開 示 さ れ て い る 。 さ ら に 米 国 特 許 出 願 第 10
/807838号 明 細 書 (2004年 3月 23日 出 願 )お よ び 米 国 特 許 出 願 第 60/612863号 明 細 書 (2004年 9
月 23日 出 願 )で 開 示 さ れ て い る CEPT阻 害 薬 た と え ば (2R,4R,4aS)-4-[ア ミ ノ -3,5-ビ ス -(ト
リ フ ル オ ロ メ チ ル -フ ェ ニ ル )-メ チ ル ]-2-エ チ ル -6-(ト リ フ ル オ ロ メ チ ル )-3,4-ジ ヒ ド ロ
キ ノ リ ン -1-カ ル ボ ン 酸 イ ソ プ ロ ピ ル エ ス テ ル も 含 ま れ る 。
30
【0086】
さ ら な る CEPT阻 害 薬 は 、 JTT-705別 名 S-[2-([[1-(2-エ チ ル ブ チ ル )シ ク ロ ヘ キ シ ル ]カ ル
ボ ニ ル ]ア ミ ノ )フ ェ ニ ル ]2-メ チ ル プ ロ パ ン チ オ ア ー ト 、 お よ び 国 際 公 開 第 WO 04/020393
号 パ ン フ レ ッ ト で 開 示 さ れ て い る も の 、 た と え ば S-[2-([[1-(2-エ チ ル ブ チ ル )シ ク ロ ヘ キ
シ ル ]カ ル ボ ニ ル ]ア ミ ノ )フ ェ ニ ル ]2-メ チ ル プ ロ パ ン チ オ ア ー ト 、 ト ラ ン ス -4-[[[2-[[[[
3,5-ビ ス (ト リ フ ル オ ロ メ チ ル )フ ェ ニ ル ]メ チ ル ](2-メ チ ル -2H-テ ト ラ ゾ ー ル -5-イ ル )ア
ミ ノ ]メ チ ル ]-4-(ト リ フ ル オ ロ メ チ ル )フ ェ ニ ル ]エ チ ル ア ミ ノ ]メ チ ル ]-シ ク ロ ヘ キ サ ン
酢 酸 お よ び ト ラ ン ス -4-[[[2-[[[[3,5-ビ ス (ト リ フ ル オ ロ メ チ ル )フ ェ ニ ル ]メ チ ル ](2-メ
チ ル -2H-テ ト ラ ゾ ー ル -5-イ ル )ア ミ ノ ]メ チ ル ]-5-メ チ ル -4-(ト リ フ ル オ ロ メ チ ル )フ ェ ニ
ル ]エ チ ル ア ミ ノ ]メ チ ル ]-シ ク ロ ヘ キ サ ン 酢 酸 、 参 照 に よ り 開 示 さ れ る 自 己 所 有 の 米 国 出
40
願 第 09/918,127号 お よ び 第 10/066,091号 明 細 書 で 開 示 さ れ て い る 薬 物 、 お よ び 参 照 に よ り
開 示 さ れ る 以 下 の 特 許 文 書 で 開 示 さ れ て い る 薬 物 で あ る : DE 19741400 A1; DE 19741399
A1; WO 9914215 A1; WO 9914174; DE 19709125 A1; DE 19704244 A1; DE 19704243 A1; E
P 818448 A1; WO 9804528 A2; DE 19627431 A1; DE 19627430 A1; DE 19627419 A1; EP 7
96846 A1; DE 19832159; DE 818197; DE 19741051; WO 9941237 A1; WO 9914204 A1; WO
9835937 A1; JP 11049743; WO 0018721; WO 0018723; WO 0018724; WO 0017164; WO 0017
165; WO 0017166; WO 04020393; EP 992496; お よ び EP 987251。
【0087】
一般通念に反して、本発明の組成物によりもたらされる水溶解濃度と生体利用率の相対
的な水準は一般に難溶性、疎水性の薬物ほど高まる。実際、本願発明者は基本的に水不溶
50
(20)
JP 2008-501009 A 2008.1.17
性で高疎水性である、一連の物理的性質を特徴とする薬物群を認識した。この薬物群は「
疎水性薬物」というが、本発明の高分子を使用して調製すると、水溶解濃度と生体利用率
が劇的に向上する。加えて、疎水性薬物と本発明の高分子からなる組成物は商用グレード
の高分子と比較して物理的安定性も増している可能性がある。
【0088】
疎 水 性 薬 物 の 第 1の 性 質 は 疎 水 性 が き わ め て 高 い こ と で あ る 。 疎 水 性 が き わ め て 高 い と
は 、 薬 物 の Log P値 が 4.0以 上 、 5.0以 上 、 さ ら に は 5.5以 上 で あ る こ と を 意 味 す る 。 Log P
は 、 オ ク タ ノ ー ル 相 と 水 相 が 互 い 平 衡 に 達 し た と き の 、 (1)オ ク タ ノ ー ル 相 中 の 薬 物 濃 度
の (2)水 相 中 の 薬 物 濃 度 に 対 す る 比 の 常 用 対 数 で あ り 、 疎 水 性 の 指 標 と し て 広 く 受 け 入 れ
ら れ て い る 。 Log Pは 実 験 的 に 求 め て よ い し 、 技 術 上 周 知 の 方 法 を 使 用 し て 計 算 し て も よ
10
い 。 計 算 値 を Log Pに 使 用 す る と き は 、 一 般 に 受 け 入 れ ら れ る Log P計 算 方 法 を 使 用 し て 計
算 さ れ る 最 高 値 を 使 用 す る 。 計 算 Log P値 は し ば し ば 計 算 方 法 で 、 た と え ば Clog P、 Alog
P、 Mlog Pな ど と 呼 ぶ 。 Log Pは ま た 、 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン 法 た と え ば Crippenの フ ラ グ
メ ン テ ー シ ョ ン 法 (27 J.Chem.Inf.Comput.Sci. 21 (1987)); Viswanadhanの フ ラ グ メ ン テ
ー シ ョ ン 法 (29 J. Chem. Inf. Comput. Sci. 163 (1989)); ま た は Brotoの フ ラ グ メ ン テ
ー シ ョ ン 法 (19 Eur.J.Med.Chem.-Chim.Theor.71 (1984)で 推 定 し て も よ い 。 好 ま し く は 、
Log P値 は Crippen、 Viswanadhanお よ び Brotoの 各 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン 法 を 使 用 し て 推 計
した値の平均を使用して計算する。
【0089】
疎 水 性 薬 物 の 第 2の 性 質 は 、 開 示 の 方 法 で 計 算 し た 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 低 い こ と で あ
3
る 。 そ の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は 約 22(J/cm )
3
ら に は 約 20(J/cm )
1 / 2
1 / 2
3
以 下 で も 、 約 21.5(J/cm )
1 / 2
20
以下でも、さ
以下でもよい。
【0090】
疎水性薬物は一般に、主にこれらの性質の結果として水溶解度がきわめて低い。水溶解
度 が き わ め て 低 い と は 、 生 理 学 に 意 味 の あ る pH(pH 1∼ 8)で の 最 低 溶 解 度 が 約 100μ g/mL未
満 を 、 ま た し ば し ば 約 10μ g/mL未 満 を 、 意 味 す る 。 加 え て 、 疎 水 性 薬 物 は し ば し ば 用 量 /
溶解度比がきわめて高い。薬物を普通のやり方で経口投与する場合、水溶解度がきわめて
低 い と し ば し ば 、 胃 腸 管 液 か ら の 薬 物 の 吸 収 が 悪 く な る 。 超 難 溶 性 薬 物 で は 、 用 量 (経 口
投 与 さ れ る 薬 物 量 )が 増 す ほ ど 吸 収 は ま す ま す 困 難 に な る 。 従 っ て 、 疎 水 性 薬 物 の 第 2の 性
質 は き わ め て 高 い 用 量 (mg)/溶 解 度 (mg/mL)比 で あ る 。 き わ め て 高 い 用 量 /溶 解 度 比 は 、 場
30
合 に よ り 用 量 /溶 解 度 比 が 1000mL以 上 、 5,000mL以 上 、 さ ら に は 10,000mL以 上 で あ る こ と を
意味する。
【0091】
疎水性薬物はまた一般に、絶対生体利用率がきわめて低い。特に、この薬物群の絶対生
体 利 用 率 は 、 製 剤 化 し な い で (す な わ ち 薬 物 単 体 で )経 口 投 与 し た 場 合 、 約 10%未 満 で あ り
、 ま た し ば し ば 約 5%未 満 で あ る 。
【0092】
本 発 明 の 高 分 子 を 含 有 す る 組 成 物 に 使 用 し て う ま く 行 く 疎 水 性 薬 物 に CETP阻 害 薬 が あ る
。 CETP阻 害 薬 と 本 発 明 の 高 分 子 と の 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 結 晶 質 薬 物 の 単 体 と 比 較 し て 、 in
vitro、 in vivoの 両 方 で 生 体 利 用 率 と 高 濃 度 化 が 劇 的 に 向 上 す る 。
40
【0093】
本 願 発 明 者 は 、 本 発 明 の 高 分 子 と CETP阻 害 薬 と を 含 有 す る 組 成 物 が 3-ヒ ド ロ キ シ -3-メ
チ ル グ ル タ リ ル 補 酵 素 A還 元 酵 素 (HMG-CoA還 元 酵 素 )阻 害 薬 と 併 用 し て も よ い こ と を 発 見 し
た 。 一 実 施 形 態 で は 、 一 体 型 製 剤 が (1) CETP阻 害 薬 と 本 発 明 の 高 分 子 と を 含 む 非 晶 質 固 体
分 散 体 お よ び (2) HMG-CoA還 元 酵 素 阻 害 薬 を 含 有 す る 。 一 態 様 で は 、 HMG-CoA還 元 酵 素 阻 害
薬 は ス タ チ ン 類 と い う 一 群 の 治 療 薬 か ら 選 択 さ れ る 。 HMG-CoA還 元 酵 素 阻 害 薬 は 好 ま し く
は、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチ
ン、セリバスタチン、リバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、コンパクチン、ダル
バスタチン、フルインドスタチン、ロスバスタチン、ピチジスタチン、ジヒドロコンパク
チン、およびそれらの製薬上許容しうる形態からなる群より選択される。「製薬上許容し
50
(21)
JP 2008-501009 A 2008.1.17
うる形態」は任意の製薬上許容しうる誘導体または変異体たとえば立体異性体、立体異性
体の混合体、鏡像体、溶媒和物、水和物、同形体、多形体、塩型およびプロドラッグを意
味 す る 。 よ り 好 ま し い 実 施 形 体 で は 、 HMG-CoA還 元 酵 素 阻 害 薬 は ア ト ル バ ス タ チ ン 、 ア ト
ル バ ス タ チ ン の 環 化 ラ ク ト ン 体 、 そ う し た 化 合 物 の 2-、 3-ま た は 4-ヒ ド ロ キ シ 誘 導 体 、 お
よびそれらの製薬上許容しうる形態からなる群より選択される。さらになお好ましくは、
HMG-CoA還 元 酵 素 阻 害 薬 は ア ト ル バ ス タ チ ン ヘ ミ カ ル シ ウ ム 三 水 和 物 で あ る 。 そ う し た 製
剤 の 詳 細 は 、 参 照 に よ り 開 示 さ れ る 自 己 所 有 の 係 属 米 国 出 願 第 10/739,750号 (2003年 12月 1
8日 提 出 )明 細 書 で 開 示 し て い る 。
【0094】
酸感受性薬物
10
本発明の一実施形態では、薬物は酸感受性薬物である。すなわち、該薬物は酸性化学種
の存在下に化学反応するかまたは他の形で分解する。酸感受性薬物はしばしば、酸性条件
下で反応性である官能基を含む。たとえばスルホニルウレア、ヒドロキサム酸、ヒドロキ
シアミド、カルバマート、アセタール、ヒドロキシウレア、エステル、アミドなどである
。そうした官能基を含む薬物は酸性化学種の存在下に加水分解、ラクトン化、またはエス
テル交換などの反応をこうむりやすい。
【0095】
酸感受性薬物は実験的に次の要領で特定してもよい。薬物試料を酸性溶液に投与し、薬
物 濃 度 と 時 間 の 関 係 を グ ラ フ に す る 。 酸 性 溶 液 の pHは 1∼ 4と す る の が よ い 。 酸 感 受 性 薬 物
は 、 酸 性 溶 液 に 薬 物 を 投 与 し て か ら 24時 間 以 内 に 薬 物 濃 度 が 1%以 上 低 下 す る よ う な 薬 物 を
20
い う 。 1%の 薬 物 濃 度 低 下 が 6∼ 24時 間 で 起 き た ら 、 そ の 薬 物 は 「 低 酸 感 受 性 」 で あ る 。 1%
の 薬 物 濃 度 低 下 が 1∼ 6時 間 で 起 き た ら 、 そ の 薬 物 は 「 中 酸 感 受 性 」 で あ る 。 1%の 薬 物 濃 度
低 下 が 1時 間 未 満 で 起 き た ら 、 そ の 薬 物 は 「 高 酸 感 受 性 」 で あ る 。 本 発 明 は 、 低 、 中 、 高
と薬物の酸感受性が増すほど、有用性が増す。
【0096】
以下、酸感受性薬物の具体例をほんの一例として示す。列挙した中性型、製薬上許容し
うる塩、およびプロドラッグをすべて包含するものとする。酸感受性薬物の例: キノキサ
リ ン -2-カ ル ボ ン 酸 [4(R)-カ ル バ モ イ ル -1(S)-3-フ ル オ ロ ベ ン ジ ル -2(R), 7-ジ ヒ ド ロ キ シ
-7-メ チ ル オ ク チ ル ]ア ミ ド ; キ ノ キ サ リ ン -2-カ ル ボ ン 酸 [1-ベ ン ジ ル -4-(4,4-ジ フ ル オ ロ
-シ ク ロ ヘ キ シ ル )-2-ヒ ド ロ キ シ -4-ヒ ド ロ キ シ カ ル バ モ イ ル -ブ チ ル ]-ア ミ ド ; キ ノ キ サ
30
リ ン -2-カ ル ボ ン 酸 [1-ベ ン ジ ル -4-(4,4-ジ フ ル オ ロ -ヒ ド ロ キ シ -シ ク ロ ヘ キ シ ル )-2-ヒ ド
ロ キ シ -4-ヒ ド ロ キ シ カ ル バ モ イ ル -ブ チ ル ]-ア ミ ド ; (+)-N-{ 3-[3-(4-フ ル オ ロ フ ェ ノ キ
シ )フ ェ ニ ル ]-2-シ ク ロ ペ ン テ ン -1-イ ル } -N-ヒ ド ロ キ シ ウ レ ア ; オ メ プ ラ ゾ ー ル ; エ ト
ポシド; ファモチジン; エリスロマイシン; キナプリル; ランソプラゾール; およびプロ
ガビド。
【0097】
HPMCAは 酸 性 で は な く 中 性 の 高 分 子 な の で 、 酸 感 受 性 薬 物 を 含 有 す る 組 成 物 に は 特 に 有
用 で あ る 。 酸 感 受 性 薬 物 と HPMCAと を 含 有 す る 組 成 物 は 結 局 、 酸 感 受 性 薬 物 と HPMCASな ど
のような酸性高分子とを含有する組成物よりも化学的安定性が増す。
【0098】
40
溶解度パラメーター
溶解度パラメーターは物質の凝集性と付着性を相関させ予測するときに使用される技術
上周知の指標である。溶解度パラメーターに関する完全な説明は、参照により開示される
Barton's Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters (CRC Pr
ess, 1983)(以 下 Barton)に 記 載 さ れ て い る 。
【0099】
任意の化合物について溶解度パラメーターを求める方法はいくつかあるが、「溶解度パ
ラ メ ー タ ー 」 は 本 願 で は 、 本 願 で も Barton (pp. 61-66)で も 述 べ て い る よ う に 、 原 子 団 ・
基 に 固 有 の モ ル 凝 集 エ ネ ル ギ ー 定 数 か ら 計 算 し た Hildebrandの 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー を 意 味
3
す る 。 Hildebrandの 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は 単 位 が (J/cm )
1 / 2
である。具体的には、化合物
50
(22)
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iに 関 す る 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー δ i は 次 式 か ら 計 算 さ れ る :
【数15】
式 中 zは 化 合 物 i内 の 寄 与 原 子 団 (contributing group)を 表 し 、 Uz は 該 寄 与 原 子 団 の (25℃
で の )モ ル 蒸 発 エ ネ ル ギ ー で あ り 、 ま た Vz は 該 寄 与 原 子 団 の (25℃ で の )モ ル 体 積 で あ る 。
以下の表は種々の原子団のモル蒸発エネルギーおよびモル体積への寄与を示す。従って、
化合物の化学構造がわかれば、式Vと次表の原子団寄与から溶解度パラメーターを計算す
ることができる。
【0100】
10
(23)
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【表3】
10
20
30
(24)
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【表4】
10
20
30
【0101】
た と え ば 、 CETP阻 害 薬 の (2R,4S)-4-[(3,5-ビ ス -ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -ベ ン ジ ル )-メ ト キ
シ カ ル ボ ニ ル -ア ミ ノ ]-2-エ チ ル -6-ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -3,4-ジ ヒ ド ロ -2H-キ ノ リ ン -1-カ
ル ボ ン 酸 エ チ ル エ ス テ ル (別 名 ト ル セ ト ラ ピ ブ )は 化 学 構 造 が す で に 示 さ れ て い る 。 ト ル セ
トラピブの原子団寄与は前記の表から得られるので、それをまとめると次のようになる:
40
(25)
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【表5】
10
【0102】
次いで、これらの値は次のように式Vに挿入することができる:
【数16】
20
【0103】
同じ手順を用いて高分子の溶解度パラメーターを計算することができる。高分子の場合
30
には、各繰り返し単位内の平均原子団数を計算し、原子団寄与の値を使用して溶解度パラ
メ ー タ ー を 計 算 す る 。 た と え ば HPMCASは 次 の よ う な 一 般 構 造 を 示 す :
【化8】
40
50
(26)
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【0104】
信 越 化 学 か ら は 「 中 」 グ レ ー ド の HPMCAS(AQOAT-M)が 得 ら れ る が 、 そ の 置 換 基 は 次 の と
お り で あ る : 7.3wt%ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 、 23.1wt%メ ト キ シ 、 9.3wt%ア セ チ ル 、 お よ び 1
1.2wt%ス ク シ ノ イ ル 。 こ う し た 置 換 基 の 組 み 合 わ せ と 前 述 の 手 順 に 従 う と 、 種 々 の 置 換 基
の 置 換 度 は 次 の よ う に な る : 0.25ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 、 1.89メ ト キ シ 、 0.55ア セ チ ル 、
お よ び 0.28ス ク シ ノ イ ル 。 こ の 置 換 度 と セ ル ロ ー ス 骨 格 の 構 造 を 使 用 し て 、 HPMCAS-Mの 溶
解度パラメーターは次のように計算される:
【表6】
10
20
【0105】
次いで、これらの値は次のように式Vに挿入することができる:
【数17】
30
【0106】
こ の 手 順 を 用 い 、 種 々 の 商 用 グ レ ー ド の HPMCASの 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー を 計 算 す る こ と が
で き る 。 3グ レ ー ド の AQOT高 分 子 (信 越 化 学 )の 平 均 置 換 度 を 用 い る と 、 溶 解 度 パ ラ メ ー タ
ー は 次 の よ う に な る (比 較 例 1を 参 照 )。 こ れ ら の デ ー タ に よ れ ば 、 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー の
小 さ な 差 が 高 分 子 の 性 質 に 有 意 の 変 化 を も た ら す こ と が あ る 。 た と え ば 実 施 例 3に 示 す よ
う に 、 HPMCASの Mグ レ ー ド 中 の 薬 物 ト ル セ ト ラ ピ ブ の 溶 解 度 は 25∼ 30wt%で あ る が 、 Hグ レ
ー ド 中 の 薬 物 ト ル セ ト ラ ピ ブ の 溶 解 度 は 35∼ 40wt%で あ る 。 こ う し た 溶 解 度 の 大 幅 な 上 昇
は 、 高 分 子 の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー の わ ず か 0.21の 上 昇 に 伴 う に す ぎ な い 。
40
(27)
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【表7】
10
【0107】
前 述 の よ う に 、 商 用 グ レ ー ド の HPMCASと 比 べ て 本 発 明 の HPMCAS高 分 子 は DOSA C 値 が 高 い
、 お よ び /ま た は ア セ チ ル 基 +ス ク シ ノ イ ル 基 合 計 値 (DOSA C + DOSS )が 高 い 。 こ う し た 置 換
度の組み合わせでは一般に、本発明では溶解度パラメーターが商用グレードの場合と比べ
て 低 く な る 。 そ こ で 一 実 施 形 態 で は 、 本 発 明 の HPMCAS高 分 子 は 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 21.9
9未 満 、 好 ま し く は 約 21.90未 満 、 な お 好 ま し く は 約 21.80未 満 、 そ し て 最 も 好 ま し く は 約 2
1.75%未 満 で あ る 。
【0108】
医薬組成物
一実施態様では、本発明は難溶性薬物と本発明の高分子とを含有する医薬組成物を提供
20
する。本発明の組成物中の薬物量に対する高分子量は薬物および高分子上の置換基の置換
度 の 組 み 合 わ せ に 依 存 し 、 ま た 薬 物 /高 分 子 (重 量 )比 0.01∼ 約 100(た と え ば 薬 物 1wt%∼ 99w
t%)の 広 範 囲 に わ た ろ う 。 ほ と ん ど の 場 合 、 薬 物 /高 分 子 比 は 0.05(4.8wt%薬 物 )よ り も 高 く
、 約 20(95wt%薬 物 )よ り 低 い の が 好 ま し い 。
【0109】
好 ま し い 実 施 形 態 で は 組 成 物 は 高 薬 物 含 量 で あ る 。 「 高 薬 物 含 量 」 は 医 薬 組 成 物 が 約 40
wt%以 上 の 薬 物 を 含 む こ と を 意 味 す る 。 好 ま し く は 、 医 薬 組 成 物 は 約 45wt%以 上 の 薬 物 を 含
む が 、 な お 好 ま し く は 約 50wt%以 上 の 薬 物 を 含 む 。 そ う し た 高 薬 物 含 量 は 医 薬 組 成 物 の 質
量を低く抑える意味で好ましい。
【0110】
30
難溶性薬物と本発明の高分子はどのような方法で組み合わせてもよい。一実施形態では
、組成物は難溶性薬物と本発明の高分子の組み合わせを含む。「組み合わせ」は本願では
、難溶性薬物と本発明の高分子が互いに物理的に接触してもよいし、近接してもよいが、
物理的に混合する必要はないことを意味する。たとえば、組成物は技術上周知のような多
層 錠 剤 と し 、 1つ ま た は 複 数 の 層 が 難 溶 性 薬 物 を 含 み 、 別 の 1つ ま た は 複 数 の 層 が 高 分 子 を
含むようにしてもよい。他の例はコート錠であって、難溶性薬物または高分子またはその
両方が核錠を形成し、その上を難溶性薬物または高分子またはその両方を含むコート層で
覆う。あるいは、組み合わせは難溶性薬物と本発明の高分子を粒子状のまま混合した単純
な乾燥混和体でもよい。それぞれの粒子は粒径とは無関係に、個別の物理的性質をバルク
の場合と同じに保持する。
40
【0111】
難溶性薬物と高分子との組み合わせは任意慣用のやり方で、たとえば難溶性薬物、高分
子、および所期の製剤を形成するための他の任意好適の添加物などを含む乾燥成分を、V
ブレンダー、プラネタリーミキサー、ボルテックスブレンダー、ミル、押出機たとえばツ
インスクリーン押出機、粉砕法などにより混合して形成してもよい。成分の組み合わせは
、機械的エネルギーを使用するボールミルやローラーコンパクターなどにより造粒法で行
ってもよい。組み合わせには湿式の高剪断造粒機または流動層造粒機を用いてもよいが、
そこでは溶媒または湿潤剤を成分に添加するかまたは高分子を溶媒に溶かし造粒液として
使用する。高分子はコーティングとして、難溶性薬物を含む混合物から打錠法で予備成形
した錠剤に施してもよい。これはスプレーコート法で、たとえばパンコーターまたは流動
50
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層コーターを使用して行う。
【0112】
あるいは、本発明の組成物は同時投与してもよい、すなわち難溶性薬物と高分子とを別
々に、ただしほぼ同じ時間内に、投与してもよい。従って難溶性薬物はたとえば独自の剤
形で、それとは別個の剤形をとる高分子とほぼ同じ時間に、投与することができる。別個
に 投 与 す る 場 合 に は 、 難 溶 性 薬 物 と 高 分 子 は ど ち ら も 互 い に 60分 以 内 に 投 与 し 、 使 用 環 境
内で両方が共存するようにするのが好ましい。同時に投与しない場合には、難溶性薬物よ
りも高分子のほうを先に投与するのが好ましい。
【0113】
一実施形態では、難溶性薬物を本発明の高分子と混和させる。本願では「混和させた」
10
または「混和体」は、難溶性薬物と高分子が組成物中で互いに物理的に接触または近接し
ていることを意味する。たとえば難溶性薬物と高分子は前記の方法を用いて乾式または湿
式造粒してもよい。あるいは、難溶性薬物と高分子は後述のような非晶質固体分散体でも
よい。あるいは、難溶性薬物は高分子で少なくとも部分的にコーティングした粒体でもよ
い。「粒子」は薬物が結晶質の場合には個別の結晶を意味し、非晶質の場合には非晶質体
に 薬 物 を 含 む 個 別 粒 子 を 意 味 す る 。 一 般 に 、 そ の 粒 径 は 約 0.1μ m∼ 約 500μ mの 範 囲 で も よ
い。高分子で「少なくとも部分的にコーティングした」とは、該高分子が薬物粒子の表面
の一部分を少なくとも部分的に被覆することをいう。高分子は薬物粒子の一部分を被覆す
るだけでもよいし、薬物粒子の全表面を完全に被覆しても、またカプセルで包んでもよい
。好ましいのは難溶性薬物と高分子の混和体である。組成物を水性使用環境に投与すると
20
、 薬 物 と 高 分 子 は 近 接 し た 状 態 で 一 緒 に 溶 出 し 始 め 、 高 濃 度 化 お よ び /ま た は 生 体 利 用 率
の改善が図られる結果的となるためである。これと対照的なのは、たとえば薬物を含有す
る核錠を腸溶高分子でコーティングしてなる腸溶コート錠であり、そこでは使用環境内で
はまず高分子が溶出し、次いで核錠から薬物から溶出するという順序になる。そうした制
御放出製剤では、高分子と薬物は近接した状態で一緒に溶出し始めないため濃度または生
体利用率の向上は実現しないという可能性がある。
【0114】
好ましい実施形態では、組成物は難溶性薬物と高分子の組み合わせを含むが、該難溶性
薬 物 は 可 溶 化 体 で あ る 。 「 可 溶 化 体 」 は 、 難 溶 性 薬 物 の 結 晶 質 体 の 溶 解 度 と 比 べ て 約 1.1
倍 以 上 、 好 ま し く は 約 1.25倍 以 上 、 な お 好 ま し く は 約 2.0倍 以 上 、 水 性 使 用 環 境 を 過 飽 和
30
させることができる形態の薬物を意味する。すなわち可溶化体は、難溶性薬物単独の結晶
質 体 (ま た は 結 晶 質 体 が 不 明 の 場 合 に は 非 晶 質 体 )に よ っ て も た ら さ れ る 平 衡 薬 物 濃 度 に 対
し て 、 少 な く と も 約 1.1倍 、 好 ま し く は 少 な く と も 約 1.25、 な お 好 ま し く は 少 な く と も 約 2
.0倍 で あ る 難 溶 性 薬 物 の 最 大 溶 出 薬 物 濃 度 を も た ら す 。 あ る い は 、 可 溶 化 体 の 使 用 環 境 内
の 薬 物 濃 度 -時 間 曲 線 下 面 積 (AUC)は 対 照 組 成 物 の そ れ の 少 な く と も 約 1.1倍 、 好 ま し く は
少 な く と も 約 1.25、 な お 好 ま し く は 少 な く と も 約 2.0倍 で あ る 。 対 照 組 成 物 は 難 溶 性 薬 物
単 独 の 最 低 エ ネ ル ギ ー の 、 ま た は 最 も 安 定 し た 、 結 晶 質 体 (す な わ ち バ ル ク 結 晶 質 体 の 難
溶 性 薬 物 )で あ る か 、 ま た は 結 晶 質 体 が 不 明 の 場 合 に は 非 晶 質 体 で あ る 。 対 照 組 成 物 は 難
溶性薬物の溶解度に実質的な影響を及ぼす可溶化剤等の成分を一切含まないものとし、ま
た難溶性薬物は対照組成物中では固形状態であるものとする。
40
【0115】
可溶化体は後述のように高濃度化高分子または低分子量水溶性物質の中に難溶性薬物の
非晶質固体分散体を含んでよい。可溶化体はまた、難溶性薬物の結晶質易溶体の塩; 難溶
性薬物の高エネルギー結晶質体; 難溶性薬物の水和物または溶媒和物の結晶質体; 難溶性
薬 物 の 非 晶 質 体 (非 晶 質 ま た は 結 晶 質 の い ず れ か で 存 在 す る よ う な 難 溶 性 薬 物 の 場 合 ); 難
溶 性 薬 物 (非 晶 質 ま た は 結 晶 質 )と 可 溶 化 剤 と の 混 合 体 ; ま た は 水 性 ま た は 有 機 液 体 に 溶 出
した難溶性薬剤の溶液を含んでもよい。そうした可溶化体は、参照により開示される同一
出 願 人 に よ る 米 国 特 許 出 願 第 09/742,785号 (2000年 12月 20日 提 出 )明 細 書 で 開 示 さ れ て い る
2
。 可 溶 化 体 は ま た 、 難 溶 性 薬 物 を 少 な く と も 20m /gの 表 面 積 を も つ 担 体 に 吸 着 さ せ て 含 む
固体吸着質であって、該固体吸着質中の難溶性薬物の少なくとも主要部分は非晶質である
50
(29)
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ことを特徴とする固体吸着質を含んでもよい。そうした固体吸着質は、参照によりその全
体 が 開 示 さ れ る 同 一 出 願 人 に よ る 同 時 係 属 米 国 特 許 出 願 第 10/173,987号 (2002年 6月 17日 提
出 )明 細 書 で 開 示 さ れ て い る 。 可 溶 化 体 は ま た 、 参 照 に よ り そ の 全 体 が 開 示 さ れ る 同 一 出
願 人 に よ る 同 時 係 属 米 国 特 許 出 願 第 10/175,643号 (2002年 6月 19日 提 出 )明 細 書 で 開 示 さ れ
ているタイプの自己乳化型脂質基剤中に製剤化した難溶性薬物を含んでもよい。
【0116】
非晶質固体分散体
別の実施形態では、難溶性薬物と高分子を組み合わせて非晶質固体分散体を形成させる
。「非晶質固体分散体」は難溶性薬物の少なくとも一部分が非晶質体として高分子中に分
散している固形物をいう。非晶質固体分散体が好ましいのは、非晶質固体分散体はしばし
10
ば in vitroお よ び in vivo使 用 環 境 中 で 高 溶 出 薬 物 濃 度 を 実 現 し う る た め で あ る 。
【0117】
「非晶質」は長距離三次元並進秩序をもたない物質をいうが、また本質的に秩序をもた
な い 物 質 だ け で な く 、 わ ず か な が ら も 何 ら か の 秩 序 (た だ し 三 次 元 に は 満 た な い お よ び /ま
た は 短 距 離 に 限 ら れ る 秩 序 )を も つ 物 質 を も 含 む も の と す る 。 部 分 的 に 結 晶 質 の 物 質 お よ
び 中 間 相 た と え ば 一 次 元 ま た は 二 次 元 並 進 秩 序 を も つ も の (液 晶 )、 ま た は 配 向 無 秩 序 の も
の (配 向 無 秩 序 結 晶 )、 ま た は 立 体 配 座 無 秩 序 の も の (立 体 配 座 無 秩 序 結 晶 )も ま た 「 非 晶 質
」に包含されるものとする。
【0118】
好ましくは、非晶質固体分散体中の薬物の少なくとも主要部分は非晶質である。薬物の
20
「 主 要 部 分 」 と い う 用 語 は こ こ で は 、 分 散 体 中 の 薬 物 の 少 な く と も 約 60%が 結 晶 質 体 で は
なく非晶質体であることを意味する。分散体中の非晶質体として存在する薬物の重量分率
が上昇すると、使用環境内の薬物の水溶解濃度は上昇しやすくなることが判明している。
従って、分散体中の薬物の「主要部分」は非晶質であり、また分散体中の薬物は実質的に
非晶質であるのが好ましい。「主要部分」と「実質的に非晶質」とはここでは、結晶質体
の 薬 物 量 が そ れ ぞ れ 約 40wt%、 約 25wt%を 超 え な い こ と を 意 味 す る 。 な お 好 ま し く は 、 分 散
体 中 の 薬 物 は 「 ほ ぼ 完 全 に 非 晶 質 」 で あ る 、 す な わ ち 結 晶 質 体 の 薬 物 の 量 は 約 10%以 下 で
あ る 。 結 晶 質 薬 物 の 量 は 粉 末 X線 回 折 、 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM)分 析 、 示 差 走 査 熱 量 分 析 (D
SC)、 ま た は 他 の 標 準 定 量 法 で 測 定 し て も よ い 。
【0119】
30
非晶質薬物は純固相として、高分子中に一様に分散させた薬物の固溶体として、または
これらの状態やその中間の状態の任意の組み合わせとして、存在しうる。薬物が難溶性で
あり、また濃度または生体利用率の改善が望ましい場合には、分散体は「実質的に一様」
とし、高分子全体に可能な限り一様に非晶質薬物を分散させるのが好ましい。実質的に一
様である本発明の分散体は一般に、非一様分散体と比べて、物理的により安定であり、高
濃度化特性や生体利用率にも優れる。「実質的に一様」は、固体分散体の比較的純粋な、
非 晶 質 の 領 域 に 存 在 す る 薬 物 が 比 較 的 少 な く 、 薬 物 全 量 の 約 20%未 満 、 な お 好 ま し く は 約 1
0%未 満 で あ る こ と を 意 味 す る 。 好 ま し い 実 施 形 態 で は 、 分 散 体 は 高 分 子 中 に 一 様 に 分 散 さ
せた薬物の固溶体を含む。
【0120】
40
薬 物 と 高 分 子 の ガ ラ ス 転 移 温 度 が 十 分 に 離 れ て い る (約 20℃ 超 )場 合 に は 、 非 晶 質 固 体 分
散体内の比較的純粋な非晶質薬物領域に存在する薬物の重量分率は非晶質固体分散体のガ
ラ ス 転 移 温 度 (Tg )を 調 べ る こ と で 求 め ら れ る 。 Tg は 本 願 で は 、 ガ ラ ス 質 の 物 質 が 次 第 に 加
熱 さ れ て い く と き に ガ ラ ス 状 態 か ら ゴ ム 状 態 へ の 、 比 較 的 急 速 な (た と え ば 10∼ 100秒 間 で
の )物 理 的 変 化 を 示 す 特 徴 的 な 温 度 を い う 。 高 分 子 、 薬 物 ま た は 分 散 体 な ど の よ う な 非 晶
質 物 質 の Tg は 種 々 の 方 法 た と え ば DMA法 、 膨 張 計 法 、 誘 電 率 測 定 法 、 DSC法 で 測 定 す る こ と
が で き る 。 厳 密 な 値 は 方 法 に よ っ て や や 異 な る 場 合 も あ る が 、 互 い に 10∼ 30℃ の 範 囲 に 収
ま る の が 普 通 で あ る 。 非 晶 質 固 体 分 散 体 が 単 一 の Tg を 示 す 場 合 に は 、 非 晶 質 固 体 分 散 体 内
の 比 較 的 純 粋 な 非 晶 質 薬 物 領 域 に 存 在 す る 薬 物 の 量 は 一 般 に 約 10wt%未 満 で あ り 、 非 晶 質
固体分散体が実質的に一様であることを裏付ける。純粋非晶質薬物粒子と純粋非晶質高分
50
(30)
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子 粒 子 と の 単 純 な 物 理 的 混 合 体 の 場 合 は そ れ ぞ れ が 異 な る 、 従 っ て 2つ の Tg を 示 し 、 こ れ
と 対 照 的 で あ る 。 2つ の 異 な る Tg を 示 す 非 晶 質 固 体 分 散 体 で は 、 薬 物 Tg の 近 傍 に 1つ と 残 り
の 薬 物 /高 分 子 分 散 体 に 1つ と な る が 、 薬 物 の 少 な く と も 一 部 分 は 比 較 的 純 粋 な 非 晶 質 領 域
に存在する。比較的純粋な非晶質領域に存在する薬物の量を求めるには、まず実質的に一
様な分散体の校正曲線を作成して非晶質固体分散体対該分散体中の薬物含量の関係を求め
る。
【0121】
こ れ ら の 校 正 デ ー タ お よ び 薬 物 /高 分 子 分 散 体 の Tg か ら 、 比 較 的 純 粋 な 非 晶 質 領 域 に 存
在する薬物の重量分率が求められる。あるいは、比較的純粋な非晶質領域に存在する薬物
の 量 は 薬 物 Tg の 近 傍 に お け る 転 移 に 対 応 す る 熱 容 量 の 大 き さ を 本 質 的 に 非 晶 質 薬 物 お よ び
10
高分子の物理的混合体からなる校正曲線と比較して求めてもよい。いずれの場合にも、非
晶質固体分散体内の比較的純粋な非晶質薬物領域に存在する薬物の重量分率が全薬物量の
約 20wt%未 満 で あ れ ば 、 な お 好 ま し く は そ の 約 10wt%未 満 で あ れ ば 、 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 実
質的に一様であるとみなされる。
【0122】
濃度と生体利用率の向上を目いっぱい図るには、特に使用前に長時間貯蔵している場合
に、薬物は極力非晶質状態に留まるのが好ましい。本願発明者は、これが最もうまく行く
の は 非 晶 質 分 散 体 の ガ ラ ス 転 移 温 度 Tg が 分 散 体 の 貯 蔵 温 度 を か な り 上 回 る と き で あ る こ と
を 発 見 し た 。 特 に 、 非 晶 質 分 散 体 の ガ ラ ス 転 移 温 度 Tg は 少 な く と も 約 40℃ で あ る の が 好 ま
し く 、 ま た 少 な く と も 約 60℃ で あ る の が な お 好 ま し い 。 Tg は 分 散 体 中 の 水 分 に 規 定 さ れ 、
20
ま た 該 水 分 は 分 散 体 を 取 り 巻 く RHに 規 定 さ れ る た め 、 こ れ ら の Tg 値 は 貯 蔵 時 に 観 測 さ れ る
RH(相 対 湿 度 )と 平 衡 状 態 に あ る 量 の 水 分 を 含 む 分 散 体 の Tg を い う 。 本 発 明 の 態 様 は 、 分 散
体が薬剤を高分子中に分散させた固体の、実質的に非晶質な分散体であってかつ薬物自体
は 比 較 的 低 Tg (約 70℃ 以 下 )で あ る よ う な 態 様 で は 、 分 散 体 の 高 分 子 の Tg は 約 40℃ 以 上 で あ
る の が 好 ま し く 、 約 70℃ 以 上 で あ る の が な お 好 ま し く 、 約 100℃ を 超 え る の が な お 好 ま し
い 。 非 晶 質 薬 物 の 結 晶 質 状 態 へ の 変 換 は 、 (1)分 散 体 の (貯 蔵 RHで の ) Tg と (2)貯 蔵 温 度 の
相 対 値 に 関 係 す る の で 、 本 発 明 の 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 比 較 的 低 い 温 度 で 、 比 較 的 低 い RHで
貯蔵するときは、長時間にわたって非晶質状態を維持する傾向があろう。また、そうした
分散体の包装の面からも、水分の吸収を妨げたり吸湿剤たとえば乾燥剤を含めたりして水
分 の 吸 収 を 妨 げ ま た は 遅 ら せ る こ と に よ り 、 貯 蔵 時 の Tg を 高 く し 、 以 っ て 非 晶 質 状 態 を 維
30
持しやすくことが可能である。同様に、低温で貯蔵してもまた非晶質状態を維持しやすく
なる。
【0123】
非晶質固体分散体の調製
本 発 明 の 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 、 薬 物 の 60wt%以 上 が 非 晶 質 状 態 と な る よ う な 任 意 周 知 の
方法で調製してよい。そうした方法の例は機械的方法、熱的方法、および溶媒法などであ
る 。 機 械 的 方 法 の 例 は 混 合 粉 砕 や 押 出 で あ り 、 溶 融 法 の 例 は 高 温 溶 融 、 solvent modified
fusionお よ び 溶 融 -凝 固 法 で あ り 、 ま た 溶 媒 法 の 例 は 溶 媒 沈 殿 、 ス プ レ ー コ ー ト お よ び ス
プ レ ー ド ラ イ な ど で あ る 。 押 出 法 に よ る 分 散 体 の 調 製 を 説 明 し て い る 米 国 特 許 第 5,456,92
3号 お よ び 第 5,939,099号 明 細 書 ; 混 合 粉 砕 法 に よ る 分 散 体 の 調 製 を 説 明 し て い る 米 国 特 許
40
第 5,340,591号 お よ び 第 4,673,564号 明 細 書 ; お よ び 溶 融 -凝 固 法 に よ る 分 散 体 の 調 製 を 説
明 し て い る 米 国 特 許 第 5,707,646号 お よ び 4,894,235号 明 細 書 を 参 照 − 以 上 の 文 献 は 参 照 に
より開示される。一実施形態では、非晶質固体分散体の調製に使用される方法は、前述の
ように、実質的に一様な分散体をもたらす。
【0124】
薬 物 の 融 点 が 比 較 的 低 く 、 一 般 に 約 200℃ 未 満 好 ま し く は 約 160℃ 未 満 で あ る と き は 、 熱
お よ び /ま た は 機 械 エ ネ ル ギ ー を も た ら す 押 出 法 ま た は 溶 融 -凝 固 法 が し ば し ば 、 ほ ぼ 完 全
に非晶質である分散体の形成に適する。たとえば薬物と高分子を、水を加えてまたは水を
加 え ず に 、 混 合 し 、 混 合 物 を 2軸 押 出 機 に 送 る 。 処 理 温 度 は 、 高 分 子 の 置 換 度 や 水 を 加 え
る 場 合 は 水 の 量 に よ り 決 定 さ れ る 薬 物 と 高 分 子 の 融 点 次 第 で 約 50℃ ∼ 約 200℃ の 間 で も よ
50
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い。一般に薬物と高分子の融点が高くなるほど処理温度も高くなる。一般に処理温度は、
満 足 な (ほ ぼ 完 全 に 非 晶 質 で あ り 、 実 質 的 に 一 様 で あ る )分 散 体 を 生 成 す る 限 り で 、 最 も 低
くする。
【0125】
そうした熱的方法を使用して非晶質固体分散体を調製する方法は同一出願人による同時
係 属 の 米 国 出 願 10/066,091号 明 細 書 で 説 明 さ れ て お り 、 該 明 細 書 は 参 照 に よ り 開 示 さ れ る
。
【0126】
非晶質固体分散体を調製する別の方法は「溶媒処理」法であり、薬物と高分子を共通溶
媒で溶解させるものである。溶媒が「共通」であるとは、溶媒が、化合物の混合体でもよ
10
いが、薬物と高分子の両方を溶解させることを意味する。薬物と高分子の両方が溶解した
ら、溶媒は留去するか、または非溶媒と混合して除去する。例示的な方法にはスプレード
ラ イ 、 ス プ レ ー コ ー ト (パ ン コ ー テ ィ ン グ 、 流 動 層 コ ー テ ィ ン グ な ど )、 高 分 子 お よ び 薬 物
溶 液 と CO2 、 水 、 ま た は 他 の 何 ら か の 非 溶 媒 と を 急 速 に 混 合 し て 沈 殿 さ せ る 方 法 な ど が あ
る。好ましくは、溶媒が除去されると実質的に一様な非晶質固体分散体が形成される結果
となる。溶媒法が好ましいが、それは実質的に一様な非晶質固体分散体がしばしば形成さ
れるためである。
【0127】
溶媒法用の好適な溶媒は、それに対して薬物と高分子が互いに溶解性である任意の化合
物 で あ る 。 溶 媒 は 揮 発 性 で あ り 、 沸 点 が 150℃ 以 下 で あ る の が 好 ま し い 。 加 え て 、 溶 媒 は
20
比 較 的 低 毒 性 で あ り 、 ICH (International Committee on Harmonization)ガ イ ド ラ イ ン の
許容レベルまで非晶質固体分散体から除去しうるのがよい。このレベルまで溶媒を除去す
るにはトレイ乾燥などのような後処理が必要となる場合もある。好ましい溶媒は水; アル
コールたとえばメタノールやエタノール; ケトンたとえばアセトンやメチルエチルケトン
、メチルイソブチルケトン; それに他のさまざまな溶媒たとえばアセトニトリル、塩化メ
チレン、テトラヒドロフランなどである。揮発性のもっと低い溶媒たとえばジメチルアセ
ト ア ミ ド ま た は ジ メ チ ル ス ル ホ キ シ ド を 使 用 し て も よ い 。 50%メ タ ノ ー ル +50%ア セ ト ン と
いった混合溶媒や水との混合物なども、それらに高分子と薬剤が十分に溶解してスプレー
ドライ法が実行可能である限り、使用可能である。一般に、難溶性薬物は疎水性であるた
め 、 水 分 30wt%未 満 の 非 水 性 溶 媒 が 好 ま し い 。
30
【0128】
HPMCAに は HPMCよ り も 多 く の 有 機 溶 媒 に 対 し て 溶 解 性 で あ る と い う 利 点 が あ る 。 そ の た
め 、 薬 物 と 高 分 子 を 溶 解 す る よ う な 溶 媒 の 選 択 の 幅 が 広 が る 。 加 え て 、 HPMCAは HPMCよ り
も有機溶媒に対して高溶解性であり、高濃度の高分子を含む供給液の使用が可能になり、
HPMCと 比 べ て プ ロ セ ス の 効 率 化 に な る 。
【0129】
好ましい溶媒除去法はスプレードライ法である。「スプレードライ」は便宜的な用語で
あ り 、 液 体 混 合 物 を 小 さ な 液 滴 に 分 解 (噴 霧 )し 、 液 滴 か ら の 溶 媒 蒸 発 の た め の 強 い 駆 動 力
によりスプレードライ装置内で混合物から溶媒を急速に除去する方法を幅広くいう。スプ
レ ー ド ラ イ 方 法 /装 置 に つ い て は Perry’ s Chemical Engineer’ Handbook, pp. 20-54∼ 2
40
0-57 (Sixth Edition 1984)で 概 説 さ れ て い る 。 ス プ レ ー ド ラ イ 方 法 /装 置 に つ い て さ ら に
詳 し く は Marshall, “ Atomization and Spray-Drying,” 50 Chem. Eng. Prog. Monogr.
Series 2 (1954)お よ び Masters, Spray Drying Handbook (Fourth Edition 1985)を 参 照
。溶媒蒸発のための強い駆動力は一般に、スプレードライ装置内の溶媒分圧を乾燥液滴温
度 で の 溶 媒 蒸 気 圧 よ り も 十 分 に 低 く 維 持 す る こ と に よ り 供 給 さ れ る 。 こ れ は 、 (1)ス プ レ
ー ド ラ イ 装 置 内 の 圧 力 を 不 完 全 真 空 (た と え ば 0.01∼ 0.50気 圧 )に 維 持 す る ; ま た は (2)液
滴 を 温 乾 燥 ガ ス と 混 合 す る ; ま た は (3)前 記 (1)と (2)を 同 時 に 行 う 、 こ と に よ っ て 実 現 さ
れる。加えて、溶媒蒸発に要する熱の少なくとも一部分はスプレー液の加熱により供給し
てもよい。
【0130】
50
(32)
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薬物と高分子を溶媒と共に含んだ供給液は多様な条件の下でスプレードライし、しかも
許容しうる性質の分散体を生成することができる。たとえば種々のタイプのノズルを使用
してスプレー液を噴霧し、以ってスプレー液をスプレードライ室内に小液滴の集合として
導 入 す る こ と が で き る 。 液 の ス プ レ ー に は 、 形 成 さ れ る 液 滴 が 十 分 に 小 さ く 、 (溶 媒 蒸 発
の た め )十 分 に 乾 燥 し 、 ス プ レ ー ド ラ イ 室 の 壁 に 付 着 し た り 覆 っ た り す る こ と が な い 限 り
、ほぼ任意のタイプのノズルを使用してよい。
【0131】
液滴の最大粒径はスプレードライヤーのサイズ、形状およびフローパターンに左右され
る が 、 一 般 に ノ ズ ル を 出 る と き の 液 滴 は 約 500μ m未 満 が よ い 。 非 晶 質 固 体 分 散 体 の 形 成 に
使用してもよいタイプのノズルの例は二流体ノズル、噴水型ノズル、フラットファン型ノ
10
ズル、圧力ノズル、ロータリーアトマイザーである。好ましい実施形態では、同一出願人
に よ る 同 時 係 属 の 米 国 出 願 10/351,568号 明 細 書 (参 照 に よ り 開 示 さ れ る )で 開 示 さ れ て い る
ように、圧力ノズルを使用する。
【0132】
スプレー液はスプレーノズルに広範囲の温度と流量で送ることができる。一般に、スプ
レ ー 液 の 温 度 は 溶 媒 の 凝 固 点 の す ぐ 上 か ら (液 を 加 圧 す る た め )周 囲 圧 力 沸 点 +約 20℃ ま で
の間であり、場合によってはさらに高くしてもよい。スプレーノズルへのスプレー液の流
量はノズルのタイプ、スプレードライヤーのサイズ、スプレードライ条件たとえば乾燥ガ
スの入口温度や流量などに応じて広範囲に変動しうる。一般にスプレードライ法ではスプ
レー液からの溶媒の蒸発エネルギーは主に乾燥ガスに由来する。
20
【0133】
乾燥ガスは原理的にはほぼ任意のガスでよいが、安全上の理由から、また非晶質固体分
散体中の薬物や他の材料の不本意な酸化を抑える意味で、窒素、窒素富化空気またはアル
ゴ ン な ど の 不 活 性 ガ ス を 使 用 す る 。 乾 燥 ガ ス は 一 般 に ド ラ イ 室 に 約 60℃ ∼ 約 300℃ 好 ま し
く は 約 80℃ ∼ 約 240℃ の 温 度 で 導 入 す る 。
【0134】
液滴の体積比表面積が大きく、溶媒蒸発の駆動力も大きいことから、液滴は急速に凝固
す る 。 そ の 凝 固 時 間 は 約 20秒 未 満 が よ い が 、 約 10秒 未 満 さ ら に は 約 1秒 未 満 が な お 好 ま し
い。こうした急速な凝固はしばしば、粒子が薬物濃厚相と高分子濃厚相に分離することな
く一様均一な分散体を維持するうえできわめて重要である。好ましい実施形態では、同一
30
出 願 人 に よ る 同 時 係 属 の 米 国 出 願 10/353,746号 明 細 書 (参 照 に よ り 開 示 さ れ る )で 開 示 さ れ
ているように、スプレードライヤーの高さと体積を調節することにより、液滴がスプレー
ドライヤーの内壁に衝突する前に乾いてしまうよう十分な時間的余裕を与える。前述のよ
うに、大幅な高濃度化と生体利用率の向上を図るためには、可能な限り一様な分散体を得
ることがしばしば必要である。
【0135】
凝 固 し た 後 の 固 体 粉 末 は 一 般 に 、 ス プ レ ー ド ラ イ 室 内 に 約 5∼ 60秒 間 留 ま り 、 そ の 間 に
溶媒が固体粉末からさらに留去される。ドライヤー出口での固体分散体の最終溶媒分は低
いのがよい。そのほうが非晶質固体分散体内の薬物分子の運動性が抑制され、安定性が増
す か ら で あ る 。 一 般 に 、 ド ラ イ ヤ ー 出 口 で の 非 晶 質 固 体 分 散 体 の 溶 媒 分 は 10wt%未 満 好 ま
40
し く は 2wt%未 満 が よ い 。 形 成 さ れ た 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 、 ト レ イ 乾 燥 、 流 動 層 乾 燥 、 マ イ
クロ波乾燥、ベルト乾燥、ロータリー乾燥、真空乾燥などの技術上周知の、好適な乾燥方
法を用いて乾燥させて残留溶媒をさらに除去する。
【0136】
ス プ レ ー ド ラ イ 方 法 と ス プ レ ー ド ラ イ 装 置 に つ い て は Perry’ s Chemical Engineer’ H
andbook, Sixth Edition 1984 (R. H. Perry, D. W. Green, J.O. Maloney, eds.) McGra
w-Hill Book Co. 1984, pp. 20-54∼ 20-57 で 概 説 さ れ て い る 。 ス プ レ ー ド ラ イ 方 法 と ス
プ レ ー ド ラ イ 装 置 に つ い て さ ら に 詳 し く は Marshall, “ Atomization and Spray-Drying,
” 50 Chem. Eng. Prog. Monogr. Series 2 (1954)を 参 照 。
【0137】
50
(33)
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非 晶 質 固 体 分 散 体 は 通 常 、 小 粒 子 の 形 を と る 。 そ の 平 均 粒 径 は 500μ m未 満 、 ま た は 100
μ m未 満 、 ま た は 50μ m未 満 、 ま た は 25μ m未 満 で も よ い 。 非 晶 質 固 体 分 散 体 を ス プ レ ー ド
ライ法で形成するとき、得られる分散体はそうした小粒子の形をとる。非晶質固体分散体
を 他 の 方 法 た と え ば 溶 融 -凝 固 法 ま た は 押 出 法 な ど で 形 成 す る と き は 、 得 ら れ る 分 散 体 を
篩い分け、分級、または他の方法で微細化する。
【0138】
薬物と高分子とを含む非晶質固体分散体が形成されたら、種々の加工処理により分散体
を製剤化することができる。すなわち乾燥、造粒、粉砕などの処理である。
【0139】
非晶質固体分散体は造粒により粒径を大きくし、分散体を取り扱いやすくし、また好適
10
な 剤 形 に し て も よ い 。 平 均 顆 粒 径 は 50∼ 1000μ mで あ る の が 好 ま し い 。 造 粒 工 程 は 前 述 の
ように組成物の乾燥の前後いずれになってもよい。この目的のためには乾式または湿式造
粒法がある。乾式造粒法の一例ではローラーコンパクターを使用する。湿式造粒法にはい
わゆる低剪断および高剪断造粒や、流動層造粒がある。これらの方法では、粉粒成分を混
合した後で組成物に造粒液を混合して造粒しやすくる。造粒液の例は水、エタノール、イ
ソ プ ロ ピ ル ア ル コ ー ル 、 n-プ ロ パ ノ ー ル 、 種 々 の ブ タ ノ ー ル 異 性 体 、 お よ び そ れ ら の 混 合
体である。高分子を造粒液と共に加えて、分散体を造粒しやすくしてもよい。好適な高分
子の例は、さらなる高濃度化につながる高分子、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロ
キシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどである。
【0140】
20
湿式造粒法を使用する場合には、造粒組成物はしばしば乾燥してから後続工程に移る。
湿式造粒との関連で使用する好適な乾燥法の例は前述と同じものである。非晶質固体分散
体を溶媒法で調製する場合には、組成物を造粒してから残留溶媒を除去する。乾燥工程で
は、残留溶媒と造粒液が組成物から同時に除去される。
【0141】
組成物を造粒化した後は、粉砕して所望の粒径を実現するようにしてもよい。好適な組
成物粉砕法の例はハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、ローラーミル、カッティン
グミル、および技術上周知の他の粉砕機を使用する方法が含まれる。
【0142】
物理的安定性
30
難溶性薬物と本発明の高分子とを含む非晶質固体分散体は一般に物理的安定性が増して
い る 。 「 物 理 的 安 定 性 」 ま た は 「 物 理 的 に 安 定 (な )」 は 本 願 で は 、 (1)分 散 体 中 に 存 在 す
る 非 晶 質 薬 物 の 結 晶 化 傾 向 ま た は (2)分 散 体 が 一 様 で あ る と き 、 該 薬 物 が 薬 物 濃 厚 領 域 へ
と 分 離 す る (薬 物 濃 厚 領 域 中 の 薬 物 は 非 晶 質 ま た は 結 晶 質 で あ る )傾 向 の い ず れ か を い う 。
従 っ て 、 他 と 比 較 し て 物 理 的 に よ り 安 定 し た 分 散 体 と は 次 の う ち い ず れ か で あ る : (1)分
散 体 中 で の 薬 物 結 晶 化 速 度 が 遅 い 、 ま た は (2)薬 物 濃 厚 領 域 の 形 成 速 度 が 遅 い 。 特 に 本 発
明 の 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 十 分 な 安 定 性 を 有 す る た め 、 25℃ 、 10%RH条 件 下 で 3週 間 貯 蔵 し て
分 散 体 中 の 薬 物 の 約 10wt%未 満 が 結 晶 化 す る だ け で あ る 。 好 ま し く は 、 25℃ 、 10%RH条 件 下
で 3週 間 貯 蔵 し て 分 散 体 中 の 薬 物 の 約 5wt%未 満 が 結 晶 化 す る だ け で あ る 。
【0143】
40
特定の理論または作用機構にこだわるつもりはないが、非晶質固体分散体一般に物理的
安 定 性 の 点 か ら 次 の 2つ に 分 類 さ れ る と 考 え ら れ る : (1)熱 力 学 的 に 安 定 な 非 晶 質 固 体 分 散
体 (分 散 体 中 の 非 晶 質 薬 物 に 結 晶 化 駆 動 力 は ほ と ん ど ま た は ま っ た く 存 在 し な い )お よ び (2
)動 力 学 的 に 安 定 ま た は 準 安 定 な 非 晶 質 固 体 分 散 体 (非 晶 質 薬 物 に 結 晶 化 駆 動 力 が 存 在 す る
も の の 、 薬 物 の 分 子 運 動 性 が 低 い た め 結 晶 化 速 度 は 許 容 レ ベ ル ま で 遅 く な る )。
【0144】
熱力学的に安定な非晶質固体分散体では、高分子に対する非晶質薬物の溶解度はほぼ薬
物含量に等しいか、それを上回るのがよい。薬物含量は非晶質固体分散体中の薬物重量の
重 量 分 率 を い う 。 場 合 に よ っ て は 、 薬 物 含 量 が 溶 解 度 を や や (す な わ ち 10∼ 20%)上 回 っ て
も、結晶化駆動力がきわめて小さいため、なお物理的に安定である。
50
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【0145】
本願発明者は、難溶性薬物特に疎水性薬物では、高分子に対する非晶質体薬物の溶解度
が (1)薬 物 の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー と (2)高 分 子 の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー と の 差 に 関 連 す る こ と
を発見した。特定の理論または作用機構にこだわるつもりはないが、薬物の溶解度パラメ
ーターと高分子の溶解度パラメーターとの差が小さければ小さいほど高分子に対する薬物
の溶解度は高くなると考えられる。薬物の溶解度パラメーターと高分子の溶解度パラメー
ターとの差が小さくなると、高分子に対する薬物の溶解度は高くなる。非晶質固体分散体
の物理的安定性のほうは、高分子に対する薬物の溶解度が高くなるにつれて、増す。
【0146】
3
従 っ て 、 一 実 施 形 態 で は 、 HPMCA高 分 子 は 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 約 24.0(J/cm )
3
で あ る 。 好 ま し く は HPMCA高 分 子 は 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー が 約 23.8 (J/cm )
3
な お 好 ま し く は 約 23.6 (J/cm )
1 / 2
1 / 2
1 / 2
以下
10
以下であり、
以 下 で あ る 。 以 下 、 薬 物 と HPMCAの 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー
の計算手順を説明する。
【0147】
特 に 本 願 発 明 者 は 、 難 溶 性 薬 物 (溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー δ D )の HPMCA(溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー
2
δ P )に 対 す る 溶 解 度 が 一 般 に 、 (δ D -δ P ) が 約 2以 上 で あ り か つ 薬 物 の 融 点 が 約 100℃ 以 上
で あ る と き に は 、 約 25wt%未 満 で あ る こ と を 発 見 し た 。 従 っ て 、 高 薬 物 含 量 の (す な わ ち 薬
2
物 含 量 が 約 25wt%以 上 で あ る )非 晶 質 固 体 分 散 体 は 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー の 差 (δ D -δ P ) が 約
2.0以 上 で あ る 場 合 に は 、 一 般 に 熱 力 学 的 に 安 定 で は な い 。 分 散 体 が (後 述 の よ う に )動 力
学的に安定ではない場合には、薬物は時間の推移と共に相分離を起こす可能性がある。従
20
2
っ て 一 実 施 形 態 で は 、 (δ D -δ P ) は 約 2未 満 で あ る の が 好 ま し く 、 約 1.8未 満 さ ら に は 約 1.
5未 満 な ら さ ら 好 ま し い 。 本 願 発 明 者 は 、 こ の 関 係 を 満 た す 非 晶 質 固 体 分 散 体 が そ れ 以 外
の分散体と比べて高薬物含量になり、かつ熱力学的により安定になることを発見した。
【0148】
分 散 体 中 の 薬 物 含 量 が 高 分 子 に 対 す る 薬 物 の 溶 解 度 を 10∼ 20%上 回 る (す な わ ち 分 散 体 が
薬 物 で 過 飽 和 に な っ て い る )場 合 に は 、 分 散 体 は 熱 力 学 的 に 安 定 で は な く 、 ま た 分 散 体 中
の非晶質薬物の薬物濃厚領域への相分離に関する駆動力が存在する。そうした薬物濃厚相
は 非 晶 質 で か つ 微 細 (粒 径 約 1μ m未 満 )で も 、 非 晶 質 で か つ 比 較 的 大 き く (粒 径 約 1μ m超 )て
も 、 あ る い は 結 晶 質 で も よ い 。 相 分 離 の 後 は 、 分 散 体 は 次 の 2相 か ら な る 可 能 性 が あ る : (
1)主 に 薬 物 を 含 む 薬 物 濃 厚 相 、 お よ び (2)高 分 子 中 に 非 晶 質 薬 物 を 分 散 さ せ て 含 む 第 2相 。
30
薬物濃厚相内の非晶質薬物はそのうち非晶質体から低エネルギー結晶質体へと変化してい
く 可 能 性 が あ る 。 そ う し た 分 散 体 の 物 理 的 安 定 性 は 一 般 に 、 薬 物 含 量 を 一 定 と す れ ば 、 (1
)非 晶 質 薬 物 の 分 子 運 動 性 が 低 下 す る ほ ど 、 ま た (2)非 晶 質 薬 物 の 薬 物 濃 厚 相 か ら 結 晶 化 傾
向が低下するほど、増大する。
【0149】
一 般 に 高 Tg 値 の 分 散 体 ほ ど 分 子 運 動 性 は 低 く な り 、 ま た 物 理 的 安 定 性 は 高 く な る 。 分 散
体 の Tg 値 は 分 散 体 中 の 薬 物 の 分 子 運 動 性 の 間 接 的 な 指 標 で あ る 。 Tg 値 が 高 く な る ほ ど 分 子
運 動 性 は 低 く な る 。 従 っ て 、 分 散 体 の 貯 蔵 温 度 (Ts t o r a g e ) (単 位 K)に 対 す る Tg の 比 は 与 え
られた貯蔵温度での薬物の相対的な運動性の正確な指標となる。相分離を最小化するには
、 分 散 体 中 の 非 晶 質 薬 物 の 運 動 性 を 低 く す る の が 望 ま し い 。 こ れ は Tg /Ts t o r a g e 比 を 約 1超
に 維 持 す る こ と に よ り 実 現 さ れ る 。 一 般 的 な 貯 蔵 温 度 は 適 度 な 湿 度 (一 般 に 約 20∼ 75%の 相
対 湿 度 )な ら 5∼ 40℃ の 範 囲 で あ る た め 、 50%RHで の 分 散 体 の Tg は 約 30℃ 以 上 で あ る の が 好
ま し く 、 約 40℃ 以 上 な ら な お 好 ま し く 、 約 50℃ 以 上 な ら 最 も 好 ま し い 。
【0150】
非 晶 質 固 体 分 散 体 の Tg は 、 (1)高 分 子 の Tg 、 (2)難 溶 性 薬 物 の Tg お よ び (3)分 散 体 中 の 高
分 子 と 薬 物 の 相 対 量 な ど 、 い く つ か の 因 子 に 左 右 さ れ る 。 密 度 が ほ ぼ 同 じ で あ る 2つ の 非
晶 質 物 質 の 一 様 混 合 体 に 関 す る Tg (多 数 の 薬 物 と 高 分 子 で 近 似 的 に 成 立 )は 次 の Gordon-Ta
ylor式 (M. Gordon and J.S. Taylor, J. of Applied Chem., 2, 493-500, 1952)か ら 推 定
しうる:
40
(35)
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【数18】
式 中 w1 と w2 は 成 分 1お よ び 2の 各 重 量 分 率 で あ り 、 Tg 1 と Tg 2 は 成 分 1お よ び 2の 各 ガ ラ ス 転
移 温 度 で あ り 、 Tg , 1 , 2 は 成 分 1お よ び 2の 混 合 体 の ガ ラ ス 転 移 温 度 で あ り 、 ま た Kは 両 成 分
10
の 自 由 体 積 に 関 す る 定 数 で あ る 。 従 っ て 特 定 の 難 溶 性 薬 物 に つ い て 、 高 分 子 の Tg が 高 く
な れ ば な る ど 、 分 散 体 中 の 薬 物 の 重 量 分 率 は 大 き く な り 、 し か も 分 散 体 の Tg が 約 30℃ よ
りも高く維持されることになる。
【0151】
本 願 発 明 者 は 、 本 発 明 の 新 規 HPMCAS高 分 子 の Tg 値 が 50%RHで 約 80℃ 以 上 で あ り 、 ま た 一
般 的 に は 50%RHで 約 90℃ 以 上 で あ る こ と を 発 見 し た 。 従 っ て 、 難 溶 性 薬 物 と そ う し た 高 Tg
値 の 本 発 明 HPMCAS高 分 子 と を 含 む 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 、 薬 物 含 量 に も 左 右 さ れ る が 、 一 般
に動力学的に安定である。
【0152】
本 願 発 明 者 は 、 本 発 明 の 新 規 HPMCA高 分 子 の Tg 値 が 50%RHで 約 100℃ 以 上 あ る こ と を 発 見
20
し た が 、 対 照 的 に HPMCの 場 合 は 50%RHで 約 96℃ で あ る 。 従 っ て 、 難 溶 性 薬 物 と そ う し た 高 T
g
値 の 本 発 明 HPMCA高 分 子 と を 含 む 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 、 薬 物 含 量 に も 左 右 さ れ る が 、 一 般
に動力学的に安定である。
【0153】
別 の 実 施 形 態 で は 、 難 溶 性 薬 物 と 本 発 明 の HPMCAS高 分 子 と を 使 用 し て 形 成 し た 非 晶 質 固
体分散体は対照組成物と比べて物理的安定性が向上する。物理的安定性の評価に使用した
対 照 組 成 物 は 基 本 的 に 等 量 の 薬 物 を 等 量 の HPMCAS中 に 含 ま せ た 非 晶 質 固 体 分 散 体 か ら な る
が 、 た だ し HPMCASは 商 用 グ レ ー ド の HPMCAS (た と え ば AQOAT-L, Mま た は H)で あ る 。
【0154】
一態様では、薬物と本発明の高分子とを含む「試験組成物」中の薬物の結晶化速度を、
30
対照組成物中の薬物の結晶化速度と比較することにより、物理的安定性の改善が明らかに
されよう。薬物の結晶化速度は、試験組成物または対照組成物中の結晶質状態にある薬物
の重量分率を代表的な貯蔵環境において時間の経過と共に測定することにより、求められ
よ う 。 こ れ に は 任 意 の 標 準 物 理 測 定 法 た と え ば X線 回 折 、 DSC、 固 体 NMRま た は 走 査 型 電 子
顕 微 鏡 (SEM)分 析 が 使 用 さ れ よ う 。 物 理 的 に 安 定 し た 試 験 組 成 物 中 の 薬 物 は 対 照 組 成 物 中
の薬物よりも結晶化速度が遅くなろう。好ましくは、試験組成物中の薬物の結晶化速度は
対 照 組 成 物 中 の 薬 物 の そ れ の 90%未 満 で あ り 、 な お 好 ま し く は 80%未 満 で あ ろ う 。 従 っ て 、
た と え ば 対 照 組 成 物 中 の 薬 物 が 1%/週 の 速 度 で 結 晶 化 す る と す れ ば 、 試 験 組 成 物 中 の 薬 物
は 0.9%/週 以 下 の 速 度 で 結 晶 化 す る こ と に な ろ う 。 し ば し ば 、 試 験 組 成 物 中 の 薬 物 の 結 晶
化 速 度 は 約 10%未 満 (あ る い は 実 施 例 の 場 合 は 0.1%/週 未 満 )と い う よ う に さ ら に 劇 的 な 改 善
40
が観測される。
【0155】
別 の 態 様 で は 、 試 験 組 成 物 と 対 照 組 成 物 に つ い て 薬 物 /高 分 子 分 散 体 か ら 薬 物 の 相 分 離
速度を比較することにより、物理的安定性の改善が明らかにされよう。「相分離速度」は
、もともと非晶質薬物の一様な分散体として高分子中に存在していた薬物が薬物濃厚非晶
質領域へと分離していく速度を意味する。分散体からの薬物の相分離速度は前述の測定法
で測定してもよい。好ましくは、試験組成物中の薬物の相分離速度は対照組成物中の薬物
の 相 分 離 速 度 の 90%以 下 で あ り 、 な お 好 ま し く は 80%以 下 で あ る 。
【0156】
物理的安定性の改善は、薬物と本発明の高分子とを含む「試験組成物」中の薬物の相分
50
(36)
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離速度を対照組成物中の薬物の相分離速度と比較することにより、明らかにしてもよい。
薬 物 の 相 分 離 速 度 は 分 散 体 の 示 差 走 査 熱 量 分 析 (DSC)で 行 っ て も よ い 。 相 分 離 し た 薬 物 領
域 を 有 す る 組 成 物 の DSC分 析 で は 次 の 2ガ ラ ス 転 移 温 度 (Tg s )が 示 さ れ よ う : (1)純 粋 の 非 晶
質 薬 物 の Tg と 同 じ ま た は 近 い 、 相 分 離 薬 物 に 対 応 す る Tg ; お よ び (2)該 薬 物 の Tg よ り も ず
っ と 高 い 、 薬 物 が 相 分 離 し て い っ た 分 散 体 に 対 応 す る Tg 。 相 分 離 し た 薬 物 の 存 在 量 は 、 相
分 離 し た 薬 物 に 対 応 す る 熱 現 象 の 大 き さ (す な わ ち 熱 容 量 )を 非 晶 質 薬 物 単 体 の 標 準 と 比 較
して求めてもよい。
【0157】
本発明の組成物によって得られる物理的安定性の改善の解析には物理的安定性の相対的
な 改 善 度 を 用 い て も よ い 。 「 物 理 的 安 定 性 の 相 対 的 な 改 善 度 」 は 、 (1)対 照 組 成 物 中 の 薬
10
物 結 晶 化 ま た は 相 分 離 速 度 と (2)試 験 組 成 物 中 の 薬 物 結 晶 化 ま た は 相 分 離 速 度 の 比 で あ る
。 た と え ば 対 照 組 成 物 中 の 薬 物 が 10wt%/週 の 速 度 で 相 分 離 し 、 ま た 試 験 組 成 物 中 の 薬 物 が
5wt%/週 の 速 度 で 相 分 離 す る と し た ら 、 相 対 的 な 改 善 度 は 2と な ろ う (10wt%/週 ÷ 5wt%/週 )
。好ましくは、本発明の組成物がもたらす物理的安定性の相対的な改善度は対照組成物(
基本的に等量の薬物と等量の高分子とを含む対照組成物からなるが、ただし高分子は商用
グ レ ー ド で あ る )の 少 な く と も 1.25で あ り 、 よ り 好 ま し く は 2.0、 な お 好 ま し く は 3.0で あ
る 。 好 ま し く は 、 対 照 組 成 物 に 使 用 す る 商 用 グ レ ー ド の HPMCAS高 分 子 は 信 越 化 学 の HPMCAS
-Mで あ り 、 ま た HPMCA高 分 子 用 は E3 Prem LVグ レ ー ド の HPMC (Dow Chemical Co., Midland
, Michigan)で あ る 。
【0158】
20
物理的安定性の評価では便宜上、特定の貯蔵条件や貯蔵時間を選んでもよい。組成物が
前述の安定性基準を満たすかどうかを調べる安定性試験では、試験組成物と対照組成物を
40℃ 、 75%RHで 6か 月 貯 蔵 す る 。 試 験 組 成 物 の 安 定 性 の 改 善 は 短 期 間 で 、 た と え ば 3∼ 5日 で
、明らかになる場合もあろうから、薬物によっては貯蔵期間を短縮してもよい。ほぼ周囲
条 件 に 等 し い た と え ば 25℃ 、 60%RHと い っ た 貯 蔵 条 件 の 下 で 組 成 物 を 比 較 す る と き は 、 貯
蔵 期 間 は 数 か 月 ∼ 2年 に す る 必 要 が あ ろ う 。
【0159】
本発明の組成物では物理的安定性が改善するため、十分な物理的安定性を維持しながら
薬 物 含 量 の 多 い (た と え ば 薬 物 :高 分 子 比 の 高 い )非 晶 質 固 体 分 散 体 を 形 成 す る こ と が 可 能
になる。すなわち、薬物と高分子とを含む組成物であって、薬物と高分子の溶解度パラメ
30
ーターが開示の基準を満たすことを特徴とする組成物は、そうした基準を満たさない非晶
質固体分散体よりも薬物を多く含み、しかも十分な物理的安定性を維持しうる可能性があ
る。
【0160】
高濃度化
別の実施形態では、本発明の組成物は高濃度化型である。「高濃度化型」は、組成物中
に十分な量の高分子が存在するために、そうした高分子を欠く対照組成物と比べて、水性
使用環境での溶解薬物濃度が高まることを意味する。「使用環境」はここでは、動物たと
えば哺乳動物特に人間の消化器官、真皮下、鼻腔内、頬側、包膜内、眼内、耳内、皮下腔
、 膣 、 動 ・ 静 脈 血 管 、 肺 気 道 ま た は 筋 肉 内 組 織 と い っ た in vivo環 境 か 、 ま た は リ ン 酸 緩
40
衝 生 理 食 塩 水 (PBS)、 酵 素 抜 き の 人 工 腸 液 (SIN)、 モ デ ル 絶 食 状 態 十 二 指 腸 (MFD)液 、 ま た
は 絶 食 状 態 モ デ ル 液 な ど の 試 験 溶 液 の in vitro環 境 を い う 。 高 濃 度 化 は in vitro溶 出 試 験
、 in vivo試 験 の い ず れ で 判 定 し て も よ い 。 そ う し た in vitro試 験 溶 液 に よ る in vitro溶
出 試 験 で の 薬 物 濃 度 の 向 上 は in vivoで の 薬 物 濃 度 お よ び 生 体 利 用 率 の 向 上 の 優 れ た 指 標
と な る こ と が 判 明 し て い る 。 好 適 な PBS溶 液 は 20mMリ ン 酸 ナ ト リ ウ ム (Na2 HPO4 )、 47mMリ ン
酸 カ リ ウ ム (KH2 PO4 )、 87mM mM NaClお よ び 0.2mM KClを 含 む 水 溶 液 を NaOHで pH 6.5に 調 整
し た も の で あ る 。 好 適 な SIN液 は pH 7.4に 調 整 し た 50mM KH2 PO4 で あ る 。 好 適 な MFD液 は 同
じ PBSに 7.3mMの タ ウ ロ コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム と 1.4mMの 1-パ ル ミ ト イ ル -2-オ レ オ イ ル -sn-グ
リ セ ロ -3-ホ ス ホ コ リ ン を 加 え た も の で あ る 。 好 適 な 絶 食 状 態 モ デ ル 液 は 同 じ PBSに 29.2mM
の タ ウ ロ コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム と 5.6mMの 1-パ ル ミ ト イ ル -2-オ レ オ イ ル -sn-グ リ セ ロ -3-ホ
50
(37)
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ス ホ コ リ ン を 加 え た も の で あ る 。 特 に 本 発 明 の 組 成 物 の 溶 出 試 験 は 、 該 組 成 物 を in vitro
試験溶液に加えてかき混ぜ、溶出を促して行うか、または開示のように膜透過試験で行っ
てもよい。
【0161】
一態様では、本発明の組成物は水性使用環境に投与するとき、対照組成物によってもた
ら さ れ る 最 高 薬 物 濃 度 (MDC)の 1.25倍 以 上 の MDCを も た ら す 。 言 い 換 え る と 、 対 照 組 成 物 に
よ っ て も た ら さ れ る MDCが 100μ g/mLで あ る と し た ら 、 高 濃 度 化 高 分 子 を 含 む 本 発 明 の 組 成
物 で は MDCが 少 な く と も 125μ g/mLに な る 。 よ り 好 ま し く は 、 本 発 明 の 組 成 物 に よ っ て 実 現
さ れ る 薬 物 の MDCは 対 照 組 成 物 に よ っ て も た ら さ れ る MDCの 2倍 以 上 、 な お 好 ま し く は 3倍 以
上 、 最 も 好 ま し く は 5倍 以 上 で あ る 。 意 外 に も 、 該 組 成 物 は 水 溶 解 濃 度 が き わ め て 大 幅 に
10
高まる可能性がある。場合によっては、本発明の組成物によってもたらされる超疎水性薬
物 の MDCは 対 照 組 成 物 の MDCの 10倍 以 上 、 50倍 以 上 、 200倍 以 上 、 500倍 以 上 、 さ ら に は 1000
倍以上である。
【0162】
対 照 組 成 物 は 通 常 、 非 分 散 体 の 薬 物 単 体 (一 般 に 熱 力 学 的 に 最 も 安 定 し た 結 晶 質 状 態 の
結 晶 質 薬 物 単 体 、 ま た は 薬 物 の 結 晶 質 状 態 が 不 明 で あ る 場 合 に は 非 晶 質 薬 物 単 体 )で あ る
か、または試験組成物中の高分子と等量の不活性希釈剤を薬物に加えたものである。不活
性とは該希釈剤が高濃度化型ではないことを意味する。
【0163】
あるいは、本発明の組成物は水性使用環境に、対照組成物によってもたらされる薬物濃
20
度 -時 間 曲 線 下 面 積 (AUC)の 1.25倍 以 上 の AUCを 、 使 用 環 境 へ の 導 入 時 点 と そ の 後 約 270分 経
過 後 ま で の 間 に 、 少 な く と も 90分 間 に わ た り も た ら す 。 よ り 好 ま し く は 、 本 発 明 の 組 成 物
に よ っ て も た ら さ れ る 水 性 使 用 環 境 AUCは 対 照 組 成 物 に よ っ て も た ら さ れ る そ れ の 2倍 以 上
、 な お 好 ま し く は 3倍 以 上 、 最 も 好 ま し く は 5倍 以 上 で あ る 。 あ る 種 の 疎 水 性 薬 物 で は 、 該
組 成 物 は 前 記 対 照 組 成 物 の AUCの 10倍 以 上 、 25倍 以 上 、 100倍 以 上 、 さ ら に は 250倍 以 上 の A
UCを も た ら す 。
【0164】
あるいは、本発明の組成物は人間または他の動物に経口投与するとき、好適な対照組成
物 を 投 与 す る と き に 観 測 さ れ る 値 の 1.25倍 以 上 の 血 中 薬 物 濃 度 AUCを も た ら す 。 好 ま し く
は 、 こ の 血 中 AUCは 対 照 組 成 物 に よ っ て も た ら さ れ る 値 の 約 2倍 以 上 、 好 ま し く は 約 3倍 以
30
上 、 好 ま し く は 約 4倍 以 上 、 好 ま し く は 約 6倍 以 上 、 好 ま し く は 約 10倍 以 上 、 さ ら に な お 好
ま し く は 約 20倍 以 上 で あ る 。 そ う し た 組 成 物 は 相 対 生 体 利 用 率 が 対 照 組 成 物 の 約 1.25倍 ∼
約 20倍 で あ る も 言 え る 。 従 っ て 、 in vitro、 in vivo、 ま た は 両 方 の 性 能 基 準 を 満 た す と
評価される組成物は本発明に包含される。
【0165】
あるいは、本発明の組成物は人間または他の動物に経口投与するとき、好適な対照組成
物 を 投 与 す る と き に 観 測 さ れ る 値 の 1.25倍 以 上 の 最 高 血 中 薬 物 濃 度 (Cm a x )を も た ら す 。 好
ま し く は 、 こ の 血 中 Cm a x は 対 照 組 成 物 に よ っ て も た ら さ れ る 値 の 約 2倍 以 上 、 好 ま し く は
約 3倍 以 上 、 好 ま し く は 約 4倍 以 上 、 好 ま し く は 約 6倍 以 上 、 好 ま し く は 約 10倍 以 上 、 さ ら
に な お 好 ま し く は 約 20倍 以 上 で あ る 。
40
【0166】
薬 物 の 高 濃 度 化 を 評 価 す る 一 般 的 な in vitro試 験 は 次 の 要 領 で 行 う こ と が で き る : (1)
十 分 な 量 の 試 験 組 成 物 (す な わ ち 難 溶 性 、 酸 感 受 性 ま た は 疎 水 性 薬 物 と 高 分 子 の 分 散 体 )を
かき混ぜながら試験液中に投与し、薬物が全量溶出したとしたら、理論薬物濃度が薬物平
衡 濃 度 を 少 な く と も 2倍 上 回 る よ う に す る ; (2)別 個 の 試 験 で 、 適 量 の 対 照 組 成 物 を 等 量 の
試 験 液 に 加 え る ; そ れ か ら (3)試 験 液 内 の 試 験 組 成 物 の 測 定 MDCお よ び /ま た は AUCが 対 照 組
成 物 に よ っ て も た ら さ れ る 値 の 1.25倍 以 上 と な る か ど う か を 判 定 す る 。 こ う し た 溶 出 試 験
を行う場合には、試験組成物または対照組成物の使用量は、薬物が全量溶出したとしたら
、 薬 物 濃 度 が 該 薬 物 の 水 溶 解 度 (す な わ ち 平 衡 濃 度 )の 2倍 以 上 、 好 ま し く は 10倍 以 上 、 最
も 好 ま し く は 100倍 以 上 と な る よ う な 量 で あ る 。 難 溶 性 薬 物 と 高 分 子 を 含 む 試 験 組 成 物 に
50
(38)
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よ っ て は 、 MDCを 求 め る に は さ ら に 多 量 の 試 験 組 成 物 を 投 与 す る 必 要 が あ ろ う 。
【0167】
溶出薬物濃度は一般に試験液を時間の関数としてサンプリングし、薬物濃度と時間の関
係 を グ ラ フ に し て 計 測 し て 、 MDCお よ び /ま た は AUCが 確 定 さ れ る よ う に す る 。 MDCは 試 験 期
間 に 計 測 さ れ た 最 高 薬 物 溶 出 濃 度 と す る 。 水 性 AUCは 濃 度 -時 間 曲 線 を 、 使 用 環 境 へ の 組 成
物 導 入 時 点 (時 点 0)か ら 270分 後 (時 点 270分 )ま で の 間 の 任 意 の 90分 間 に つ い て 積 分 し て 求
め る 。 一 般 に 、 組 成 物 が MDCに 短 時 間 で た と え ば 約 30分 未 満 で 到 達 す る と き 、 AUCの 計 算 に
使 用 す る 時 間 間 隔 は 90分 に 等 し い 。 し か し 、 こ の 任 意 の 90分 の 間 に 組 成 物 の AUCが 本 発 明
の基準を満たす場合には、形成される組成物は本発明の範囲内にあるものみなされる。
【0168】
10
誤った測定をもたらすような薬物粒子を避けるために、試験溶液はろ過または遠心分離
す る 。 「 溶 出 薬 物 」 は 一 般 に 、 0.45μ mシ リ ン ジ フ ィ ル タ ー を 通 る 物 質 ま た は 遠 心 分 離 後
も 上 清 に と ど ま る 物 質 を い う 。 ろ 過 に は 13mm、 0.45μ mの フ ッ 化 ビ ニ リ デ ン 製 シ リ ン ジ フ
ィ ル タ ー TITAN( 登 録 商 標 ) (Scientific Resourcesの 市 販 品 )を 使 用 す る こ と が で き る 。
遠 心 分 離 は 一 般 に ポ リ プ ロ ピ レ ン 製 マ イ ク ロ 遠 心 チ ュ ー ブ を 使 用 し て 13,000Gで 60秒 行 う
。他の類似のろ過または遠心分離を使用しても同様の効果は得られる。たとえば他タイプ
のマイクロフィルターを使用すると前記のフィルターの場合より数値が高めになることも
低 め に な る こ と も あ る (± 10-40%)が 、 好 ま し い 分 散 体 の 識 別 は 可 能 に し て く れ る 。 こ う し
た「溶出薬物」の定義は単量体の溶媒和薬物分子だけでなく、広範囲に化学種たとえばサ
ブ ミ ク ロ ン の 高 分 子 /薬 物 集 合 体 た と え ば 薬 物 凝 集 体 、 高 分 子 と 薬 物 の 混 合 凝 集 体 、 ミ セ
20
ル 、 高 分 子 ミ セ ル 、 コ ロ イ ド 粒 子 ま た は ナ ノ 結 晶 、 高 分 子 /薬 物 複 合 体 、 お よ び 指 定 溶 出
試験のろ液または上清に存在する他の含薬物化学種などをも包含するはずである。
【0169】
本 発 明 の 組 成 物 の 評 価 に は in vitro膜 透 過 試 験 も ま た 使 用 で き る が 、 詳 し く は 実 施 例 で
説明する。
【0170】
こ の 膜 透 過 試 験 の さ ら な る 詳 細 は 、 参 照 に よ り 開 示 さ れ る 同 時 係 属 の 米 国 暫 定 出 願 第 60
/557,897号 (名 称 「 医 薬 組 成 物 評 価 の 方 法 と 装 置 (Method and Device for Evaluation of
Pharmaceutical Compositions)」 ; 2004年 3月 30日 提 出 )明 細 書 に 記 載 す る 。
【0171】
30
一 般 に 、 薬 物 濃 度 の 向 上 を 評 価 す る 代 表 的 な in vitro膜 透 過 試 験 は 、 実 施 例 で 詳 述 す る
よ う に 供 給 液 と 透 過 液 の 両 貯 留 部 の 間 に 薬 物 透 過 性 膜 を 設 け 、 次 い で (1)十 分 な 量 の 試 験
組 成 物 (す な わ ち 難 溶 性 、 酸 感 受 性 ま た は 疎 水 性 薬 物 と 高 分 子 の 分 散 体 )を 供 給 液 中 に 投 与
し 、 薬 物 が 全 量 溶 出 し た と し た ら 、 理 論 薬 物 濃 度 が 薬 物 平 衡 濃 度 を 少 な く と も 2倍 上 回 る
よ う に す る ; (2)別 個 の 試 験 で 、 等 量 の 対 照 組 成 物 を 等 量 の 試 験 液 に 加 え る ; そ れ か ら (3)
試験組成物によってもたらされる測定最大薬物流束が対照組成物によってもたらされる値
の 1.25倍 以 上 と な る か ど う か を 判 定 す る 。 本 発 明 の 組 成 物 は 、 前 記 試 験 で 水 性 使 用 環 境 に
投 与 し た と き に 、 対 照 組 成 物 に よ っ て も た ら さ れ る 値 の 1.25倍 以 上 と な る 最 大 薬 物 流 束 を
もたらせば、高濃度化したことになる。本発明の組成物によってもたらされる最大流速は
好 ま し く は 、 対 照 組 成 物 に よ っ て も た ら さ れ る 最 大 流 速 の 約 1.5以 上 、 な お 好 ま し く は 2倍
40
以 上 、 さ ら に な お 好 ま し く は 約 3倍 以 上 で あ る 。
【0172】
あ る い は 、 本 発 明 の 組 成 物 は 人 間 ま た は 他 の 動 物 に 投 与 し た と き 、 生 体 利 用 率 ま た は Cm
a x
を 向 上 さ せ る 結 果 と な る 。 組 成 物 中 の 薬 物 の 相 対 生 体 利 用 率 お よ び Cm a x は 通 常 の 方 法 を
用 い て 動 物 ま た は 人 間 で in vivo試 験 す る こ と が で き る 。 ク ロ ス オ ー バ ー 試 験 な ど の よ う
な in vivo試 験 は 、 薬 物 と 高 分 子 と の 組 成 物 が 前 述 の よ う な 対 照 組 成 物 と 比 較 し て 相 対 生
体 利 用 率 ま た は Cm a x を 向 上 さ せ る か ど う か を 判 定 す る た め に 使 用 し て も よ い 。 in vivoク
ロスオーバー試験では、難溶性薬物と高分子とを含む試験組成物を半群の被験者に投与し
、 然 る べ き ウ ォ ッ シ ュ ア ウ ト 期 間 (例 : 1週 間 )の 後 に 同 じ 被 験 者 に 、 試 験 組 成 物 と 等 量 の
結 晶 質 薬 物 を 含 む (た だ し 高 分 子 は 含 ま な い )対 照 組 成 物 を 投 与 す る 。 残 り 半 群 の 被 験 者 に
50
(39)
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は最初に対照組成物を投与し、次いで試験組成物を投与する。相対生体利用率は試験群に
関 し て 測 定 し た 血 中 (血 清 ま た は 血 漿 )薬 物 濃 度 -時 間 曲 線 下 面 積 (AUC)を 、 対 照 群 に 関 す る
血 中 AUCで 割 っ て 求 め る 。 好 ま し く は 、 こ の 試 験 /対 照 比 は 個 別 被 験 者 に 調 べ 、 次 い で 全 被
験 者 の 平 均 を 求 め る 。 in vivo試 験 に よ る AUCと Cm a x の 決 定 で は 縦 軸 (y軸 )に 血 清 ま た は 血
漿 薬 物 濃 度 を と り 、 横 軸 (x軸 )に 時 間 を と る 。 投 与 し 易 く す る た め 、 投 与 媒 体 を 使 用 し て
も よ い 。 投 与 媒 体 は 水 が 好 ま し い が 、 組 成 物 を 溶 解 し な い ま た は 薬 物 の in vivo水 溶 解 度
を変化させない限りで、試験または対照組成物を懸濁させるための物質を含んでもよい。
AUCと Cm a x の 決 定 方 法 は 周 知 で あ り 、 ま た Welling, “ Pharmakokinetics Processes and M
athematics,” ASC Monograph 185 (1986)な ど に も 記 載 さ れ て い る 。
【0173】
10
添加物と剤形
組成物を錠剤、カプセル剤、懸濁用粉末剤、クリーム剤、経皮パッチ剤、デポ剤などに
製剤化するには、組成物に他の添加物を加えるのが有用な場合もあろう。薬物と高分子と
の組成物は、該薬物を実質的に変性させない限りどんな方法でも、他剤形の成分に加える
こともできる。本発明の組成物が非晶質固体分散体の形をとる場合には、添加物は該分散
体 と 物 理 的 に 混 合 し て も お よ び /ま た は 該 分 散 体 に 含 有 さ せ て も よ い 。
【0174】
非常に有用な添加物の一種は界面活性剤である。好適な界面活性剤の例は脂肪酸および
アルキルスルホン酸塩たとえばラウリル硫酸ナトリウム; 市販界面活性剤たとえば塩化ベ
ン ザ ル コ ニ ウ ム (HYAMINE( 登 録 商 標 ) 1622; Lonza, Inc., Fairlawn, New Jersey); ス
20
ル ホ コ ハ ク 酸 ジ オ ク チ ル ナ ト リ ウ ム 別 名 DOCUSATE SODIUM ( 登 録 商 標 ) (Mallinckrodt S
pec. Chem., St. Louis, Missouri); ポ リ オ キ シ エ チ レ ン ソ ル ビ タ ン 脂 肪 酸 エ ス テ ル (TWE
EN( 登 録 商 標 ) , ICI America Inc., Wilmington, Delaware; LIPOSORB( 登 録 商 標 ) P-2
0, Lipochem, Inc., Patterson, New Jersey; CAPMUL( 登 録 商 標 ) POE-0, Abitec Corp.
, Janesville, Wisconsin); 天 然 界 面 活 性 剤 た と え ば タ ウ ロ コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム 、 1-パ ル
ミ ト イ ル -2-オ レ オ イ ル -sn-グ リ セ ロ -3-ホ ス ホ コ リ ン 、 レ シ チ ン 、 お よ び 他 の リ ン 脂 質 お
よ び モ ノ -、 ジ -グ リ セ リ ド ; そ れ に ポ リ オ キ シ エ チ レ ン -ポ リ オ キ シ プ ロ ピ レ ン ブ ロ ッ ク
コポリマー別名ポロキサマーなどである。そうした物質は、湿潤を促すことによる溶出速
度 の 引 き 上 げ と そ れ に よ る 最 高 溶 出 濃 度 の 引 き 上 げ に 、 ま た 溶 解 薬 物 と の (錯 体 形 成 、 包
摂錯体形成、ミセル形成、または結晶質または非晶質固形薬物の表面への吸着といった)
30
機構を介した相互作用による結晶化または沈殿の抑制に、有利に使用することができる。
こ れ ら の 界 面 活 性 剤 の 使 用 量 は 組 成 物 の 約 5wt%を 限 度 と す る 。
【0175】
酸 、 塩 基 ま た は 緩 衝 液 な ど の pH調 整 剤 も 有 益 で あ り 、 組 成 物 の 溶 出 を 遅 ら せ た り (た と
え ば ク エ ン 酸 ま た は コ ハ ク 酸 な ど の 酸 )逆 に 組 成 物 の 溶 出 速 度 を あ げ た り す る (酢 酸 ナ ト リ
ウ ム や ア ミ ン な ど の 塩 基 )。
【0176】
本 発 明 の 組 成 物 に は 他 の 慣 用 の 医 薬 品 添 加 物 も 、 技 術 上 周 知 の 添 加 物 を 含 め て (Remingt
on: The Science and Practice of Pharmacy, 20
t h
ed., 2000)、 使 用 し て も よ い 。 一 般
に、添加物たとえば賦形剤、崩壊剤、着色剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、着香剤など
40
は通例の目的に、かつ一般的な量を、組成物の性質に悪影響を及ぼさない限りで、使用し
て も よ い 。 こ れ ら の 添 加 物 は 薬 物 /高 分 子 組 成 物 の 形 成 後 に 、 該 組 成 物 を 錠 剤 、 カ プ セ ル
剤、座剤、懸濁剤、懸濁用粉末剤、クリーム剤、経皮パッチ剤、デポ剤などに製剤化する
ために使用してもよい。
【0177】
他のマトリックス剤、賦形剤、増量剤の例は乳糖、マンニトール、キシリトール、ブド
ウ 糖 、 シ ョ 糖 、 ソ ル ビ ト ー ル 、 圧 縮 性 糖 (compressible sugar)、 微 結 晶 セ ル ロ ー ス 、 粉 末
セルロース、でんぷん、アルファー化でんぷん、デキストレート、デキストラン、デキス
トリン、ブドウ糖、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン
酸三カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポロキサマー
50
(40)
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たとえばポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどである。
薬物錯化剤または可溶化剤の例はポリエチレングリコール、カフェイン、キサンテン、
シクロデキストリンなどである。
【0178】
崩壊剤の例はでんぷんグリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウ
ム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポ
ビ ド ン (ポ リ ビ ニ ル ポ リ ピ ロ リ ド ン )、 メ チ ル セ ル ロ ー ス 、 微 結 晶 セ ル ロ ー ス 、 粉 末 セ ル ロ
ース、でんぷん、アルファ化でんぷん、アルギン酸ナトリウムなどである。
【0179】
錠剤結合剤の例はアカシアやアルギン酸、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナ
10
トリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアールガム、水添野菜油、ヒ
ドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル
セルロース、メチルセルロース、液状ブドウ糖、マルトデキストリン、ポリメタクリレー
ト、ポピドン、アルファ化でんぷん、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ショ糖、トラガ
カント、ゼインなどである。
【0180】
滑沢剤の例はステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステア
リン酸、水添野菜油、ライトミネラルオイル、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイ
ル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸
ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸亜鉛などである。
20
流動促進剤の例は二酸化ケイ素、タルク、コーンスターチなどである。
【0181】
本発明の組成物は経口、経鼻、経直腸、経膣、皮下、静脈内、経肺などを比限定的に含
む多様な経路で送達することができる。一般に経口が好ましい。
本発明の組成物はまた、多様な剤形の薬物として投与することができる。例示的な剤形
は、ドライで、または水または他の液体でペースト、スラリー、懸濁液または溶液に還元
して、経口服用するための粉末または顆粒剤; 錠剤; カプセル剤; 多顆粒製剤; 丸剤など
である。種々の添加物を本発明の組成物と共に混合、粉砕、造粒して上記の剤形に適した
物質としてよい。
【0182】
30
本発明の組成物は種々の形態に製剤化し、液体媒体中に懸濁させた粒子として投与され
るようにしてもよい。そうした懸濁液は製造時には液体またはペーストとして製剤化して
もよいし、粉末として製剤化し、後で、ただし経口投与の前に、液体一般に水を加えるよ
うにしてもよい。懸濁液へと還元されるそうした粉末はしばしばサシェ剤または経口懸濁
剤 (POC)と い う 。 そ う し た 製 剤 は 任 意 周 知 の 方 法 で 製 造 し 還 元 し て よ い 。 最 も 単 純 な や り
方は粉末として製剤し、水を加えかき混ぜて還元するものである。あるいは、液体および
粉末として製剤し、合わせてかき混ぜ、経口懸濁液としてもよい。さらに別の実施形態で
は 、 2種 類 の 粉 末 と し て 製 剤 し 、 最 初 に 一 方 の 粉 末 に 水 を 加 え て 還 元 し 溶 液 と し て 、 そ れ
に 第 2の 粉 末 を 合 わ せ て か き 混 ぜ 、 懸 濁 液 と す る 。
【0183】
40
一般に薬物の分散体は乾燥状態で長期貯蔵するように製剤するのが薬物の化学的、物理
的安定性の促進になり好ましい。
本発明の他の特徴や実施形態は、本発明の所期の範囲の限定ではなく例示を目的とする
以下の実施例から明らかになろう。
【実施例】
【0184】
比較例1
信 越 化 学 (東 京 )か ら 種 々 の グ レ ー ド の AQOAT高 分 子 を 数 ロ ッ ト 購 入 し た 。 高 分 子 の メ ト
キ シ 、 ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 、 ア セ チ ル お よ び ス ク シ ノ イ ル 置 換 基 の wt%は 各 ロ ッ ト の 分
析証明書に記載されていた。これらのデータから種々の置換基の置換度を、開示の手順で
50
(41)
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計 算 し た 。 Table 1は メ ー カ ー の 品 質 保 証 書 に よ る 種 々 の グ レ ー ド に 関 す る 値 の 範 囲 と 平
均、および種々のグレードの高分子に関する置換度の計算値の範囲と平均である。また図
1に 評 価 し た AQOAT高 分 子 の 種 々 の グ レ ー ド と ロ ッ ト に 関 す る DOSS 対 DOSA C の グ ラ フ を 示 す
。
【0185】
これらの計算置換度を用いて、高分子の平均置換度から高分子の溶解度パラメーターを
開 示 の 方 法 で 計 算 し た 。 こ れ ら の 計 算 結 果 に 加 え て 、 50%RHで DSCに よ り 測 定 し た 高 分 子 の
Tg も ま た Table 1に 示 す 。
【表8】
10
20
30
【0186】
実施例で使用した薬物
以下の実施例では次の薬物を使用した。
薬 物 1は [2R,4S]4-[(3,5-ビ ス -ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -ベ ン ジ ル )-メ ト キ シ カ ル ボ ニ ル -ア
ミ ノ ]-2-エ チ ル -6-ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -3,4-ジ ヒ ド ロ -2H-キ ノ リ ン -1-カ ル ボ ン 酸 エ チ ル
エステル別名トルセトラピブであり、次の構造をもつ:
【化9】
40
【0187】
ト ル セ ト ラ ピ ブ は 水 溶 解 度 が 0.1μ g/mL未 満 で あ り 、 Log P値 が Crippen、 Viswanadhanお
50
(42)
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よ び Brotoの 各 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン 法 を 使 用 し て 推 計 し た 値 の 平 均 で 7.0で あ る 。 非 晶 質
薬 物 1の Tgは DSCで 29℃ で あ っ た 。 ト ル セ ト ラ ピ ブ の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は 前 述 の よ う に 20
3
.66(J/cm )
1 / 2
である。
【0188】
薬 物 2は [2R,4S]4-[ア セ チ ル -(3,5-ビ ス -ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -ベ ン ジ ル )-ア ミ ノ ]-2-エ
チ ル -6-ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -3,4-ジ ヒ ド ロ -2H-キ ノ リ ン -1-カ ル ボ ン 酸 イ ソ プ ロ ピ ル エ ス
テルであり、次の構造をもつ:
【化10】
10
【0189】
薬 物 2は 水 溶 解 度 が 1μ g/mL未 満 で あ り 、 Log P値 が Crippen、 Viswanadhanお よ び Brotoの
各 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン 法 を 使 用 し て 推 計 し た 値 の 平 均 で 6.7で あ る 。 非 晶 質 薬 物 2の Tgは
20
3
DSCで 46℃ で あ っ た 。 薬 物 2の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は 前 述 の 要 領 で 計 算 す る と 20.35(J/cm )
1 / 2
であった。
【0190】
薬 物 3は [2R,4S]4-[(3,5-ビ ス -ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -ベ ン ジ ル )-メ ト キ シ カ ル ボ ニ ル -ア
ミ ノ ]-2-エ チ ル -6-ト リ フ ル オ ロ メ チ ル -3,4-ジ ヒ ド ロ -2H-キ ノ リ ン -1-カ ル ボ ン 酸 イ ソ プ
ロピルエステルであり、次の構造をもつ:
【化11】
30
【0191】
薬 物 3は 水 溶 解 度 が 1μ g/mL未 満 で あ り 、 Log P値 が Crippen、 Viswanadhanお よ び Brotoの
各 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン 法 を 使 用 し て 推 計 し た 値 の 平 均 で 7.8で あ る 。 非 晶 質 薬 物 3の Tgは
3
DSCで 30℃ で あ っ た 。 薬 物 3の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は 前 述 の 要 領 で 計 算 す る と 20.45(J/cm )
1 / 2
であった。
【0192】
薬 物 4は (2R)-3-[[3-(4-ク ロ ロ -3-エ チ ル フ ェ ノ キ シ )フ ェ ニ ル ][[3-1,1,2,2-テ ト ラ フ ル
オ ロ エ ト キ シ ]フ ェ ニ ル ]メ チ ル ]ア ミ ノ ]-1,1,1-ト リ フ ル オ ロ -2-プ ロ パ ノ ー ル で あ り 、 次
の構造をもつ:
40
(43)
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【化12】
10
【0193】
薬 物 4は 水 溶 解 度 が 1μ g/mL未 満 で あ り 、 Log P値 が Crippen、 Viswanadhanお よ び Brotoの
各 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン 法 を 使 用 し て 推 計 し た 値 の 平 均 で 10.0で あ る 。 非 晶 質 薬 物 4の Tg
は DSCで 約 -15℃ で あ っ た 。 薬 物 4の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は 前 述 の 要 領 で 計 算 す る と 22.9(J/
3
cm )
1 / 2
であった。
【0194】
20
薬 物 5は 5-(2-(4-(3-ベ ン ゾ イ ソ チ ア ゾ リ ル )-ピ ペ ラ ジ ニ ル )エ チ ル -6-ク ロ ロ オ キ シ ン ド
ール別名ジプラシドンであり、次の構造をもつ:
【化13】
30
【0195】
薬 物 5の 遊 離 塩 基 の 形 態 は 水 溶 解 度 が 0.1μ g/mL未 満 で あ る が 、 HCl塩 形 態 の 水 溶 解 度 は
約 10μ g/mLで あ る 。 薬 物 4は Log P値 が Crippen、 Viswanadhanお よ び Brotoの 各 フ ラ グ メ ン
テ ー シ ョ ン 法 を 使 用 し て 推 計 し た 値 の 平 均 で 4.7で あ る 。 非 晶 質 薬 物 5(遊 離 塩 基 )の Tg は DS
C分 析 で 約 72℃ で あ り 、 (遊 離 塩 基 の )Tm は 224℃ で あ っ た 。 薬 物 4の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は
3
前 述 の 要 領 で 計 算 す る と 29.29(J/cm )
1 / 2
であった。
【0196】
薬 物 6は 1-[4-エ ト キ シ -3-(6,7-ジ ヒ ド ロ -1-メ チ ル -7-オ キ ソ -3-プ ロ ピ ル -1H-ピ ラ ゾ ロ [
4,3-d]ピ リ ミ ジ ン -5-イ ル )フ ェ ニ ル ス ル ホ ニ ル ]-4-メ チ ル ピ ペ ラ ジ ン ク エ ン 酸 塩 、 別 名 ク
エン酸シルデナフィルであり、次の構造をもつ:
40
(44)
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【化14】
10
【0197】
薬 物 6は pH 6緩 衝 液 に 対 す る 溶 解 度 が 約 20μ g/mLで あ り 、 ま た Log P値 が Crippen、 Viswa
nadhanお よ び Brotoの 各 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン 法 を 使 用 し て 推 計 し た 値 の 平 均 で 1.98で あ
る 。 非 晶 質 薬 物 6の Tg は DSC分 析 で 約 84℃ で あ る 。
【0198】
薬 物 7は キ ノ キ サ リ ン -2-カ ル ボ ン 酸 [4(R)-カ ル バ モ イ ル -1(S)-3-フ ル オ ロ ベ ン ジ ル ]-2(
S),7-ジ ヒ ド ロ キ シ -7-メ チ ル -オ ク チ ル ]ア ミ ド で あ り 、 次 の 構 造 を も つ :
20
【化15】
30
【0199】
薬 物 7の 遊 離 塩 基 形 態 は 水 溶 解 度 が 約 330μ g/mLで あ り 、 ま た Log P値 が Crippen、 Viswan
adhanお よ び Brotoの 各 フ ラ グ メ ン テ ー シ ョ ン 法 を 使 用 し て 推 計 し た 値 の 平 均 で 2.0で あ る
。 非 晶 質 薬 物 7(遊 離 塩 基 )の Tg は DSC分 析 で 約 69℃ で あ り 、 ま た (遊 離 塩 基 の )Tm は 約 165℃
3
で あ る 。 薬 物 7の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー は 前 述 の 要 領 で 計 算 す る と 30.14(J/cm )
1 / 2
であった
。 薬 物 7は 酸 感 受 性 薬 物 で あ る 。
40
【0200】
HPMCAS高 分 子 の 合 成
Table 2に 示 す 置 換 度 を も つ 高 分 子 1を 次 の 手 順 で 合 成 し た 。 水 冷 却 器 と ス タ ー バ ー を 備
え た 250mL丸 底 フ ラ ス コ に 100mLの 氷 酢 酸 を 加 え 、 85℃ の 油 浴 に 入 れ た 。 こ れ に 、 10.0367g
の HPMC (Dow E3 Prem LV; メ ー カ ー の 分 析 証 明 書 に よ れ ば DOSM は 1.88、 DOSH P は 0.25)と 10
.1060gの 酢 酸 ナ ト リ ウ ム を 加 え 、 溶 解 さ せ た 。 HPMCが 完 全 に 溶 解 し た 後 、 1.1831gの 無 水
コ ハ ク 酸 を 加 え 、 2.5時 間 反 応 さ せ た 。 そ の 後 、 過 剰 量 (41.362g)の 無 水 酢 酸 を 加 え 、 さ ら
に 21時 間 反 応 さ せ た 。
【0201】
合 計 24時 間 ほ ど の 反 応 時 間 後 に 反 応 混 合 物 を 約 700mLの 水 に 注 ぎ 、 高 分 子 を 沈 殿 さ せ た
50
(45)
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。 次 い で 、 ブ フ ナ ー 漏 斗 を 使 用 し て 高 分 子 を 単 離 し 、 追 加 の 水 3× 75mLで 洗 っ た 。 単 離 し
十 分 に 乾 燥 さ せ た ら 、 高 分 子 を 約 150mLの ア セ ト ン に 溶 解 し 、 約 500mLの 水 に 再 沈 殿 さ せ た
。 最 後 に 、 ブ フ ナ ー 漏 斗 を 使 用 し て 高 分 子 を 回 収 し 、 減 圧 乾 燥 さ せ て 、 9.2gの オ フ ホ ワ イ
トの固形物を得た。高分子のアセチル基とスクシノイル基の置換度を前述の手順を用いて
計 算 し た 。 結 果 は Table 2の と お り で あ る 。 メ ト キ シ 基 と ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 の 置 換
度 は 、 HPMCメ ー カ ー の 分 析 証 明 書 に 記 載 さ れ た 値 の ま ま 変 わ ら な か っ た と 想 定 し た 。
【0202】
こ の 高 分 子 の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー を 、 前 述 の Bartonの 原 子 団 寄 与 法 を 用 い て 計 算 し た 。
計 算 結 果 は Table 2に 示 す 。 高 分 子 の Tg も 50%RHで DSCに よ り 求 め た 。 こ れ も Table 2に 示 す
。
10
【0203】
前 記 と 同 様 に し て (た だ し 例 外 は Table 3に 記 載 )追 加 の HPMCAS高 分 子 を 合 成 し た が 、 そ
の 置 換 度 と Tg は Table 2に 示 す と お り で あ る 。 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー も 開 示 の 手 順 で 計 算 し
た (Table 2)。 さ ら に 、 図 1に 本 発 明 の 高 分 子 に つ い て DOSS 対 DOSA C の グ ラ フ を 示 す 。
【0204】
【表9】
20
【0205】
30
(46)
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【表10】
10
20
【0206】
HPMCA高 分 子 の 合 成
Table 4に 示 す 置 換 度 を も つ 高 分 子 7を 次 の 手 順 で 合 成 し た 。 水 冷 却 器 と ス タ ー バ ー を 備
え た 250mL丸 底 フ ラ ス コ に 約 50mLの 氷 酢 酸 を 加 え 、 85℃ の 油 浴 に 入 れ た 。 こ れ に 、 5.0031g
の HPMC (Dow E3 Prem LV; メ ー カ ー の 分 析 証 明 書 に よ れ ば DOSM は 1.88、 DOSH P は 0.25)と 5.
0678gの 酢 酸 ナ ト リ ウ ム を 加 え 、 溶 解 さ せ た 。 HPMCが 完 全 に 溶 解 し た 後 、 1.530gの 無 水 酢
酸 を 加 え て 、 混 合 物 を 7.75時 間 反 応 さ せ た 。
30
【0207】
反 応 混 合 物 を 約 800mLの 飽 和 塩 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 に 注 ぎ 、 高 分 子 を 沈 殿 さ せ た 。 次 い
で、ブフナー漏斗を使用して高分子を単離し、湯で洗った。高分子を減圧乾燥させて、オ
フホワイトの固形物を得た。高分子のアセチル基の置換度を前述の手順を用いて計算した
。 結 果 は Table 4の と お り で あ る 。 メ ト キ シ 基 と ヒ ド ロ キ シ プ ロ ポ キ シ 基 の 置 換 度 は 、 HPM
Cメ ー カ ー の 分 析 証 明 書 に 記 載 さ れ た 値 の ま ま 変 わ ら な か っ た と 想 定 し た 。
【0208】
こ の 高 分 子 の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー を 、 前 述 の Bartonの 原 子 団 寄 与 法 を 用 い て 計 算 し た 。
計 算 結 果 は Table 4に 示 す 。 高 分 子 の Tg も 50%RHで DSCに よ り 求 め た 。 こ れ も Table 4に 示 す
。 HPMC (Dow E3 Prem LV)の 値 も 同 様 で あ る 。
【0209】
前 記 と 同 様 に し て (た だ し 例 外 は Table 5に 記 載 )追 加 の HPMCA高 分 子 を 合 成 し た が 、 そ の
置 換 度 と Tg は Table 4に 示 す と お り で あ る 。 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー も 開 示 の 手 順 で 計 算 し た (
Table 4)。
【0210】
40
(47)
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【表11】
10
20
【0211】
【表12】
30
40
【0212】
非晶質固体分散体の調製
分散体1
50
(48)
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50wt%薬 物 1と 50wt%高 分 子 1の 非 晶 質 固 体 分 散 体 を 、 ス プ レ ー ド ラ イ 法 に よ り 次 の 要 領 で
調 製 し た 。 100mg薬 物 1と 100mg高 分 子 1を ア セ ト ン 35gmに 溶 解 し て ス プ レ ー 液 を 調 製 し た 。
こ の 溶 液 を ス プ レ ー ド ラ イ に は 、 竪 型 11cm径 ス テ ン レ ス 鋼 パ イ プ の ト ッ プ キ ャ ッ プ に ア ト
マイザーを備えた「ミニ」スプレードライヤーを使用した。このアトマイザーは噴霧ガス
が 70℃ で 、 流 量 15gm/分 で ノ ズ ル に 送 ら れ る 二 流 体 ノ ズ ル (Spraying System Co. 1650フ ル
イ ド キ ャ ッ プ お よ び 64エ ア キ ャ ッ プ )で あ り 、 ス プ レ ー 液 は シ リ ン ジ ポ ン プ に よ り 室 温 で
、 流 量 1.3mL/分 で ノ ズ ル に 送 ら れ る 。 パ イ プ 底 部 に は ろ 紙 と サ ポ ー テ ィ ン グ ス ク リ ー ン を
固定して、固形スプレードライ物質は回収し、窒素と蒸発溶媒は排出しうるようにした。
ス プ レ ー ド ラ イ 作 業 の パ ラ メ ー タ ー は Table 6の と お り で あ る 。
【0213】
10
分 散 体 2∼ 13
分 散 体 1と 同 じ 要 領 で 、 た だ し Table 6に 示 す よ う な 変 更 を 加 え な が ら 、 追 加 の ス プ レ ー
ド ラ イ 分 散 体 を 調 製 し た 。 分 散 体 1∼ 11は 、 最 終 分 散 体 の 薬 物 含 量 が 50wt%で あ っ た 。 分 散
体 12と 13は 薬 物 5の HCl塩 を 使 用 し た が 、 最 終 分 散 体 の 薬 物 含 量 は 薬 物 5(HCl塩 )の 10wt%ま
た は 活 性 薬 物 5の 9.2wt%で あ っ た 。
【表13】
20
30
40
【0214】
50
(49)
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分 散 体 14∼ 16
分 散 体 1と 同 じ 要 領 で 、 た だ し Table 7に 示 す よ う な 変 更 を 加 え な が ら 、 追 加 の ス プ レ ー
ド ラ イ 分 散 体 を 調 製 し た 。 分 散 体 14∼ 16は 、 最 終 分 散 体 の 薬 物 含 量 が 50wt%で あ っ た 。
【0215】
分 散 体 17
50wt%薬 物 1と 50wt%高 分 子 10の 非 晶 質 固 体 分 散 体 を 、 ス プ レ ー ド ラ イ 法 に よ り 次 の 要 領
で 調 製 し た 。 高 分 子 10(6gm)を メ タ ノ ー ル 1000mLに 加 え 、 そ れ に THFを 1000mL加 え た 。 混
合 物 を か き 混 ぜ 、 沸 点 近 く ま で 約 45分 間 加 熱 し 、 高 分 子 を 溶 解 さ せ た 。 混 合 物 は 高 分 子 を
全 量 加 え た 後 は や や 濁 っ た 。 混 合 物 を 室 温 に 冷 ま し 、 6gmの 薬 物 1を 加 え 、 か き 混 ぜ な が ら
溶 解 さ せ た 。 こ の ス プ レ ー 液 を 高 圧 ポ ン プ で 、 高 圧 ノ ズ ル (Schlick 3.5)付 き ス プ レ ー ド
10
ラ イ ヤ ー (Niroタ イ プ XP Portable Spray-Dryer + Liquid-Feed Process Vessel(PSD-1))
に 送 っ た 。 PSD-1は 9イ ン チ の 乾 燥 延 長 室 を 設 け て 、 ド ラ イ ヤ ー 内 滞 留 時 間 を 延 ば し 、 生 成
物がドライヤーの、角度の付いた部分に到達する前に乾燥してしまうようにした。スプレ
ー ド ラ イ ヤ ー は ま た 、 1/16イ ン チ の ド リ ル ホ ー ル を 設 け 開 口 面 積 1%と し た 316 SS円 形 拡 散
板を備えていた。この小開口面積は乾燥ガスの流れをスプレードライヤー内の生成物の再
循環の抑制に振り向けた。作業中、ノズルは拡散板と同一平面にあった。スプレー液のノ
ズ ル へ の 給 送 に は Bran + Lubbe N-P31高 圧 ポ ン プ を 使 用 し た 。 ポ ン プ の 後 ろ に は ノ ズ ル 部
の脈動を抑制するためのパルセーションダンパーを設けた。スプレー液のスプレードライ
ヤ ー へ の 送 液 圧 力 は 300psig、 送 液 量 は 約 100g/分 で あ っ た 。 拡 散 板 越 し に 乾 燥 ガ ス (窒 素
ガ ス な ど )を 130℃ の 入 口 温 度 で 循 環 さ せ た 。 蒸 発 溶 媒 と 乾 燥 ガ ス は 65℃ の 出 口 温 度 で ス プ
20
レードライヤーを出た。調製された非晶質固体分散体はサイクロンで回収し、真空デシケ
ーターで事後乾燥した。
【0216】
分 散 体 18
分 散 体 17と 同 じ 要 領 で 、 た だ し Table 7に 示 す よ う な 高 分 子 11を 使 用 し て 、 分 散 体 18を
調 製 し た 。 分 散 体 18は 、 最 終 分 散 体 の 薬 物 1含 量 が 50wt%で あ っ た 。
【0217】
分 散 体 19∼ 20
分 散 体 1と 同 じ 要 領 で 、 た だ し 薬 物 と 高 分 子 は Table 7に 示 す よ う 変 更 し て 、 ス プ レ ー ド
ラ イ 分 散 体 を 調 製 し た 。 分 散 体 19と 20は 、 最 終 分 散 体 の 薬 物 含 量 が そ れ ぞ れ 75wt%、 25wt%
で あ っ た 。 分 散 体 19に は 薬 物 6の ク エ ン 酸 塩 を 、 ま た 分 散 体 19に は 薬 物 5の HCl塩 を 、 そ れ
ぞれ使用した。
【0218】
分 散 体 21
分 散 体 1と 同 じ 要 領 で 、 た だ し Table 7に 示 す 例 外 の も と に 、 分 散 体 21を 調 製 し た 。 分 散
体 21は 、 最 終 分 散 体 の 薬 物 7含 量 が 50wt%で あ っ た 。
30
(50)
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【表14】
10
20
【0219】
対 照 分 散 体 1∼ 7
30
実 施 例 1の 方 法 を 使 用 し て Table 6に 示 す よ う な 対 照 分 散 体 を 調 製 し た が 、 た だ し 分 散 体
高 分 子 に は 信 越 化 学 (東 京 )か ら 入 手 し た 商 用 グ レ ー ド の HPMCASを 使 用 し た 。
【0220】
対照分散体8
Table 7に 示 す よ う に 薬 物 5の 対 照 分 散 体 (対 照 分 散 体 8)を 調 製 し た が 、 方 法 は 分 散 体 1の
場 合 に 準 じ た 。 た だ し 、 分 散 体 高 分 子 に は Dow Chemical Company(Midland, MI)か ら 入 手
し た 商 用 グ レ ー ド の HPMC、 E3 Perm LVを 使 用 し た 。
【0221】
対照分散体9
Table 7に 示 す よ う に 薬 物 7の 対 照 分 散 体 (対 照 分 散 体 7)を 調 製 し た が 、 方 法 は 分 散 体 1の
40
場 合 に 準 じ た 。 た だ し 、 分 散 体 高 分 子 に は HPMCA-LF(Shin Etsu AQOAT-LF; 東 京 )か ら 入 手
し た 商 用 グ レ ー ド の HPMC、 E3 Perm LVを 使 用 し た 。
【0222】
実施例1
高 濃 度 化 の in vitro評 価
分 散 体 2、 3、 4お よ び 10を マ イ ク ロ 遠 心 法 を 使 用 し て in vitro溶 出 試 験 で 評 価 し た 。 こ
の 方 法 で は 、 ス プ レ ー ド ラ イ 分 散 体 3.6mgを 2mLマ イ ク ロ 遠 心 チ ュ ー ブ に 加 え た 。 チ ュ ー ブ
を 37℃ の 超 音 波 浴 に 入 れ 、 pH 6.5、 290 mOsm/kgの リ ン 酸 緩 衝 生 理 食 塩 水 (PBS) 1.8mLを 加
え た 。 ボ ル テ ッ ク ス ミ キ サ ー を 使 用 し て 試 料 を 手 早 く 約 90秒 間 混 合 し た 。 薬 物 が 全 量 溶 出
し た 場 合 の 理 論 最 高 薬 物 濃 度 は 1000μ g/mLで あ っ た 。 試 料 を 13,000G、 37℃ で 1分 間 遠 心 分
50
(51)
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離 し た 。 上 清 を 試 料 と し て 採 取 し (100μ L)、 200μ Lの メ タ ノ ー ル で 希 釈 し 、 次 い で HPLCで
分 析 し た 。 次 い で チ ュ ー ブ を ボ ル テ ッ ク ス ミ キ サ ー で 混 合 し 、 次 の 試 料 採 取 時 ま で 37℃ で
静 置 し た 。 試 料 は 4分 、 10分 、 20分 、 40分 、 90分 お よ び 1200分 時 点 に 回 収 し た 。
【0223】
前 述 の 手 順 を 用 い て 、 た だ し マ イ ク ロ 遠 心 チ ュ ー ブ に 0.18mgの 結 晶 質 薬 物 を 入 れ 、 1.8m
Lの PBSと 混 合 し て 、 in vitro対 照 試 験 を 行 っ た 。
【0224】
こ れ ら の 溶 出 試 験 の 結 果 を ま と め る と Table 8の よ う に な る 。 こ れ は 試 験 当 初 90分 の 薬
物 最 高 溶 出 濃 度 (MDC9 0 )、 90分 後 の 水 性 濃 度 -時 間 曲 線 下 面 積 (AUC9 0 )、 お よ び 1200分 時 点
の 濃 度 (C1 2 0 0 )で あ る 。
10
【表15】
20
【0225】
Table 8の 結 果 は 本 発 明 の 分 散 体 が 結 晶 質 対 照 よ り も 高 濃 度 化 す る こ と を 示 し て い る 。
薬 物 1で は 、 分 散 体 2、 3お よ び 4の MDC9 0 は 結 晶 質 対 照 の そ れ の そ れ ぞ れ 42倍 、 31倍 お よ び 3
9倍 で あ り 、 ま た AUC9 0 は 12.5倍 、 21.6倍 お よ び 18.2倍 で あ っ た 。 薬 物 3で は 、 分 散 体 10の M
DC9 0 は 結 晶 質 対 照 の そ れ の 68倍 で あ り 、 ま た AUC9 0 は 9倍 で あ っ た 。
30
【0226】
実施例2
in vivo試 験
in vivo試 験 で 、 分 散 体 1お よ び 4を 経 口 懸 濁 液 (OPC)と し て 雄 性 ビ ー グ ル 犬 に 投 与 し 、 分
散 体 の 性 能 を 評 価 し た 。 OPCは ヒ ド ロ キ シ プ ロ ピ ル セ ル ロ ー ス METHOCEL( 登 録 商 標 ) (Dow
Chemical Co.) 0.5wt%を 含 む 溶 液 に 懸 濁 さ せ て 投 与 し た が 、 そ の 調 製 は 次 の よ う に 行 っ た
。 ま ず 、 7.5gの METHOCELを 秤 量 し 、 約 490mLの 湯 (90∼ 100℃ )に 徐 々 に 加 え 、 METHOCEL懸 濁
液 を 調 製 し た 。 METHOCELを 全 量 加 え た と こ ろ で 懸 濁 液 に 1000mLの 水 (室 温 )を 加 え 、 氷 水 浴
に 入 れ た 。 METHOCELが 全 量 溶 解 し た ら 、 2.55gの ポ リ オ キ シ エ チ レ ン 20ソ ル ビ タ ン モ ノ オ
レ ア ー ト (TWEEN 80)を 加 え 、 TWEEN 80が 完 全 に 溶 解 す る ま で 混 合 物 を か き 混 ぜ て 、 ス ト ッ
40
ク懸濁液を調製した。
【0227】
OPCを 調 製 す る た め に 、 90mgA量 の 薬 物 1が 得 ら れ る よ う 十 分 な 量 の 試 験 組 成 物 を 正 確 に
秤 量 し 、 乳 鉢 に 入 れ た (mgAは mgの 活 性 薬 物 で あ る )。 20mLの ス ト ッ ク 懸 濁 液 を 乳 鉢 に 加 え
、 乳 棒 で 試 験 組 成 物 と 混 ぜ た 。 追 加 の METHOCEL懸 濁 液 を か き 混 ぜ な が ら 徐 々 に 加 え 、 合 計
400mLの ス ト ッ ク 懸 濁 液 を 乳 鉢 に 加 え る よ う に し た 。 懸 濁 液 を フ ラ ス コ に 移 し 、 OPCと し た
。 こ の 操 作 を 分 散 体 1お よ び 4に つ い て 行 っ た 。 加 え て 、 90mgAの 非 晶 質 薬 物 1を 含 む OPCも
同じ方法で調製した。
【0228】
6頭 の 雄 性 ビ ー グ ル 犬 に そ れ ぞ れ OPCを 投 与 し た 。 試 験 当 日 、 絶 食 状 態 ま た は 摂 食 直 後 (5
50
(52)
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0gmド ッ グ フ ー ド )の 犬 に 強 制 飼 養 ま た は 注 射 で OPCを 投 与 し た 。 投 与 前 と 投 与 後 種 々 の 時
点 で 犬 の 頸 静 脈 か ら 採 血 し た 。 各 血 漿 試 料 100μ Lに 5mLの メ チ ル -tert-ブ チ ル エ ー テ ル (MT
BE)と 1mLの 500mM炭 酸 ナ ト リ ウ ム 緩 衝 液 (pH 9)を 加 え 、 試 料 を 1分 間 ボ ル テ ッ ク ス し 、 次 い
で 5分 間 遠 心 に か け た 。 試 料 の 水 性 部 分 を ド ラ イ ア イ ス /ア セ ト ン 浴 で 凍 結 し 、 MTBE層 を デ
カ ン ト し 、 ボ ル テ ッ ク ス エ バ ポ レ ー タ ー で 蒸 発 さ せ た 。 乾 燥 後 の 試 料 を 100μ Lの 移 動 相 (3
3%ア セ ト ニ ト リ ル と 67%の 0.1%ギ 酸 水 溶 液 )に 還 元 し た 。 分 析 は HPLCで 行 っ た 。
【0229】
こ れ ら の 試 験 の 結 果 は Table 9の と お り で あ る が 、 本 発 明 の 組 成 物 が 対 照 の 非 晶 質 薬 物 1
と比べて薬物濃度と相対生体利用率を高めることを示す。絶食状態では、本発明の分散体
は非晶質薬物単体と比べて濃度を高めた。それどころか非晶質薬物は絶食状態ではほとん
10
ど 取 り 込 ま れ な か っ た が 、 本 発 明 の 分 散 体 は Table 9に 示 す よ う な Cm a x お よ び AUC0 - 1 2 値 を
示 し た 。 摂 食 直 後 で は 、 分 散 体 1は 非 晶 質 薬 物 1と 比 べ て 5.6倍 の Cm a x を も た ら し 、 ま た 7.3
倍 の AUC0 - 1 2 値 を も た ら し た 。
【表16】
20
【0230】
実施例3
30
高分子に対する薬物の溶解度の評価
分 散 体 の ダ ブ ル ス キ ャ ン DSC分 析 に よ り HPMCAS高 分 子 に 対 す る 薬 物 の 溶 解 度 を 次 の よ う
に 求 め た 。 DSC分 析 は 、 イ ン ジ ウ ム で 校 正 し た TA Instruments DSC2920ま た は Mettler DSC
821の い ず れ か で 行 っ た 。 DSC試 料 は 分 散 体 2∼ 4mgを ピ ン ホ ー ル 付 き の ア ル ミ パ ン に 秤 量
し た 。 試 料 を 窒 素 雰 囲 気 下 、 約 -20℃ か ら 5℃ /分 ず つ 約 140℃ ま で 加 熱 し た 。 こ の 分 析 で は
一 般 に 、 純 粋 な 非 晶 質 薬 物 の Tg と 比 べ て ず っ と 高 い 、 分 散 体 に 関 す る 単 一 Tg が 現 れ た 。 こ
の Tg を 超 え て 加 熱 す る と 、 高 分 子 に 対 す る 薬 物 の 溶 解 度 が 薬 物 含 量 よ り も 低 け れ ば 、 薬 物
は分散体から相分離する。
【0231】
次 い で 試 料 を 冷 却 し 、 前 述 の 手 順 を 使 っ て 2回 目 の ス キ ャ ン を し た 。 高 分 子 に 対 す る 薬
物 の 溶 解 度 が 分 散 体 中 の 薬 物 濃 度 よ り も 低 け れ ば 、 2回 目 の ス キ ャ ン は 2つ の Tg (分 離 し た
非 晶 質 薬 物 の Tg と 低 薬 物 含 量 分 散 体 の -高 分 子 に 対 す る 薬 物 の 溶 解 度 に 等 し い 薬 物 含 量 に
対 応 す る -Tg )を 示 し た 。 相 分 離 し た 非 晶 質 薬 物 の 量 は そ の 相 分 離 し た 非 晶 質 薬 物 の 熱 容 量
の大きさと純粋の非晶質薬物対照の熱容量と比較して推定した。これらのデータから、高
分 子 に 対 す る 薬 物 の 溶 解 度 を 求 め た 。 こ れ の 試 験 の 結 果 を ま と め た の が Table 10で あ る 。
40
(53)
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【表17】
10
20
【0232】
30
こ れ ら の デ ー タ は 、 薬 物 1、 薬 物 2お よ び 薬 物 3で は 薬 物 と 高 分 子 の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー
2
の 差 (δ D -δ P ) が 小 さ け れ ば 小 さ い ほ ど 高 分 子 に 対 す る 薬 物 の 溶 解 度 は 大 き く な る こ と を
示している。
【0233】
薬 物 4の 結 果 は こ の 傾 向 に は 従 わ な い 。 こ れ は 薬 物 4の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー 計 算 が 、 こ の
薬 物 の 高 Log Pの た め (約 10)、 正 確 で な い た め と 考 え ら れ る 。 薬 物 4の 実 際 の 溶 解 度 パ ラ メ
3
ー タ ー は 22.9 (J/cm )
1 / 2
という計算値よりも低いと考えられる。いずれにせよ、データ
は 本 発 明 の HPMCASに 対 す る 薬 物 4の 溶 解 度 は 商 用 グ レ ー ド Mよ り も 高 い こ と を 示 し て い る 。
【0234】
実施例4
物理的安定性の向上
本 発 明 の HPMCAS高 分 子 に よ っ て 実 現 さ れ る 物 理 的 安 定 性 の 向 上 を 実 際 に 示 す た め に 、 分
散 体 1と 対 照 2の 各 試 料 を 恒 温 恒 湿 炉 に 入 れ 、 Table 11記 載 の 条 件 下 に 6週 間 置 い た 。 こ れ
ら の 条 件 下 で の 貯 蔵 後 、 分 散 体 を 実 施 例 3に 記 載 の 手 順 を 用 い て DSC分 析 し た 。 最 初 の ス キ
ャ ン か ら 、 相 分 離 薬 物 量 を 熱 容 量 か ら 推 定 し た 。 結 果 を Table 11に 示 す 。 Table 11に は 薬
物 の 相 分 離 速 度 も 示 す が 、 こ れ は 相 分 離 薬 物 量 を 6週 で 割 っ た も の で あ る 。
40
(54)
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【表18】
10
【0235】
Table 11の デ ー タ は 、 分 散 体 を 低 湿 度 で 貯 蔵 す る ほ ど (40℃ /25%RHと 40℃ /75%RH)相 分 離
速度が下がることを示している。本発明の分散体は対照分散体に対する物理的安定性の相
対 的 改 善 度 が 1.6と な っ た 。
【0236】
実施例5
結晶化の抑制
20
本 発 明 の HPMCAS高 分 子 は 次 の 試 験 で 薬 物 の 結 晶 化 を 抑 制 す る こ と を 示 し た 。 ま ず 、 分 散
体 12お よ び 13を in vitro溶 出 試 験 で 評 価 し た 。 試 験 は 実 施 例 1に 記 載 の マ イ ク ロ 遠 心 法 で
、 た だ し 2.04mgの 分 散 体 を 別 々 に マ イ ク ロ 遠 心 チ ュ ー ブ に 加 え て 、 2連 で 行 っ た 。 次 に 、
モ デ ル 絶 食 状 態 十 二 指 腸 (MFD)液 試 料 1.8mLを チ ュ ー ブ に 加 え 、 ボ ル テ ッ ク ス ミ キ サ ー を 使
用 し て 試 料 を 手 早 く 90秒 間 混 合 し た 。 薬 物 が 全 量 溶 出 し た 場 合 の 理 論 最 高 薬 物 濃 度 は 100
μ gA/mLで あ っ た (μ gAは μ gの 活 性 薬 物 で あ る )。 試 料 を 回 収 し 、 Kromasil C4カ ラ ム (250m
m× 4.6mm)使 用 の HPLCで 分 析 し た 。 移 動 相 は 0.2vol% H3 PO4 /ア セ ト ニ ト リ ル (体 積 比 45/55)
で あ っ た 。 薬 物 濃 度 は 245nmで の UV吸 光 度 を 薬 物 5標 準 の 吸 光 度 と 比 較 し て 計 算 し た 。
【0237】
対 照 と し て 、 3.6mgAの 薬 物 5(HCl塩 体 )を 別 個 の マ イ ク ロ 遠 心 チ ュ ー ブ に 加 え 、 薬 物 が 全
30
量 溶 出 し た 場 合 の 薬 物 濃 度 が 約 200μ gA/mLと な る よ う に し た 。 結 果 を Table 12に ま と め る
。 薬 物 5と 本 発 明 の 高 分 子 か ら な る 非 晶 質 固 体 分 散 体 は 結 晶 化 の 抑 制 だ け で な く 高 濃 度 化
に も な っ た こ と が 明 ら か で あ る 。 分 散 体 12お よ び 13の MDC9 0 値 は 対 照 結 晶 質 薬 物 5の そ れ の
そ れ ぞ れ 3.5倍 、 3.0倍 で あ り 、 ま た AUC9 0 値 は そ れ ぞ れ 2.6倍 、 2.7倍 で あ っ た 。 さ ら に 、 1
200分 後 の 溶 出 薬 物 5の 濃 度 (C1 2 0 0 )は 分 散 体 12お よ び 13の ほ う が 結 晶 質 対 照 よ り も そ れ ぞ
れ 1.7倍 、 1.4倍 も 高 か っ た 。
【表19】
40
【0238】
実施例6
高 濃 度 化 の in vitro評 価
50
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膜 透 過 試 験 を 用 い て 分 散 体 14を 次 の 要 領 で in vitro評 価 し た 。 ポ リ プ ロ ピ レ ン 多 孔 質 膜
Accurel( 登 録 商 標 ) PP 1E を Membrana GmbH (Wuppertal, Germany)よ り 入 手 し た 。 膜 は
磯 プ ロ ピ ル ア ル コ ー ル で 洗 浄 し 、 メ タ ノ ー ル で す す ぎ 洗 い (超 音 波 浴 、 周 囲 温 度 で 1分 )し
、次いで周囲温度で風乾した。次に、膜試料をプラズマ室に入れ、膜の供給側をプラズマ
処 理 し て 親 水 性 に し た 。 プ ラ ズ マ 室 の 雰 囲 気 を 500mtorrの 圧 力 で 水 蒸 気 で 飽 和 さ せ た 。 次
に 高 周 波 (RF)出 力 を 使 用 し て 誘 導 結 合 プ ラ ズ マ を 環 状 電 極 を 介 し て プ ラ ズ マ 室 へ と 50ワ ッ
ト の 出 力 設 定 で 45秒 間 発 生 さ せ た 。 プ ラ ズ マ 処 理 膜 の 表 面 に 付 着 す る 水 滴 の 接 触 角 は 約 45
° で あ っ た 。 同 じ 膜 の 透 過 側 に 付 着 す る 水 滴 の 接 触 角 は 約 110° 超 で あ っ た 。
【0239】
透 過 液 貯 留 部 は プ ラ ズ マ 処 理 膜 の 試 料 を 内 径 約 1イ ン チ (2.54cm)の ガ ラ ス 管 に エ ポ キ シ
10
系 接 着 剤 [LOCTITE( 登 録 商 標 ) E-30CL HYSOL( 登 録 商 標 ) ; Henkel Loctite Corp, Rock
y Hill, Connecticut]で 接 着 し て 作 製 し た 。 膜 の 配 置 は 膜 の 供 給 側 が 透 過 液 貯 留 部 の 外 側
を、膜の透過側が貯留部の内側を、それぞれ向くようにした。透過液貯留部の有効膜面積
2
は 約 4.9cm で あ っ た 。 透 過 液 貯 留 部 を ガ ラ ス 製 の 供 給 液 貯 留 部 に 入 れ た 。 供 給 液 貯 留 部 に
マ グ ネ チ ッ ク ス タ ー バ ー を 入 れ 、 供 給 液 貯 留 部 を ス タ ー プ レ ー ト に セ ッ ト し 、 試 験 中 100r
pmで 撹 拌 す る よ う に し た 。 な お 、 ス タ ー プ レ ー ト は 試 験 中 、 37℃ に 維 持 し た 恒 温 槽 に 入 れ
ておいた。試験装置およびプロトコルの詳細は、参照により開示される同時係属の米国暫
定 出 願 第 60/557,897号 (名 称 「 医 薬 組 成 物 評 価 の 方 法 と 装 置 (Method and Device for Eval
uation of Pharmaceutical Compositions)」 ; 2004年 3月 30日 提 出 )明 細 書 に 記 載 す る 。
【0240】
20
供 給 液 を 調 製 す る た め 、 供 給 液 貯 留 部 に 1.2mgの 分 散 体 試 料 を 秤 量 し た 。 こ れ に 、 7.3mM
の タ ウ ロ コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム +1.4mMの 1-パ ル ミ ト イ ル -2-オ レ オ イ ル -sn-グ リ セ ロ -3-ホ ス
ホ コ リ ン (0.5%NaTC/POPC)を 含 む PBSで あ る 前 述 の MFD液 5mLを 加 え た 。 供 給 液 中 の 薬 物 1濃
度 は 、 薬 物 が 全 量 溶 出 し た 場 合 に は 、 120 μ g/mLと な る よ う に し た 。 供 給 液 を ボ ル テ ッ ク
ス ミ キ サ ー で 1分 間 混 合 し た 。 供 給 液 に 膜 を 接 触 さ せ る 前 に 、 透 過 液 貯 留 部 に 20wt%デ カ ノ
ー ル /デ カ ン を 5mL入 れ た 。 試 験 の 時 点 0は 膜 を 供 給 液 に 接 触 さ せ て 置 い た と き で あ る 。 指
定 時 点 に 透 過 液 試 料 を 50μ L回 収 し た 。 透 過 液 試 料 は 250μ Lの IPAで 希 釈 し 、 HPLCで 分 析 し
た。
【0241】
対 照 と し て 、 結 晶 質 薬 物 1(C1A)単 体 0.6mgAを 加 え 、 薬 物 が 全 量 溶 出 し た 場 合 に 薬 物 濃 度
30
が 約 120μ gA/mLと な る よ う に し た 。
2
膜 を 透 過 す る 薬 物 の 最 大 流 束 (単 位 は μ g/cm -分 )は 、 時 点 0∼ 60分 の デ ー タ に 最 小 二 乗
2
法 を 行 う こ と で 直 線 の 傾 き を 求 め 、 傾 き に 透 過 体 積 (5mL)を 掛 け 、 膜 面 積 (4.9cm )で 割 っ
て 、 決 定 し た 。 こ の 分 析 結 果 は Table 13に ま と め る が 、 薬 物 1の 最 大 流 束 を も た ら す の は
分 散 体 14で あ り 、 そ の 値 は 結 晶 質 薬 物 の 値 の 1.3倍 で あ っ た 。 こ れ は 高 分 子 7を 使 用 し て 調
製 し た 分 散 体 が 水 性 供 給 液 中 の 薬 物 1の 高 濃 度 化 す る 効 果 が あ っ た こ と を 示 す 。
【表20】
40
【0242】
分 散 体 15、 17お よ び 18に つ い て 、 in vitro膜 透 過 試 験 を 前 述 の 手 順 で 行 っ た が 、 た だ し
供 給 液 は 摂 食 直 後 を モ デ ル 化 す る よ う 設 計 し て 、 29.2mMの タ ウ ロ コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム +5.6
50
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mMの 1-パ ル ミ ト イ ル -2-オ レ オ イ ル -sn-グ リ セ ロ -3-ホ ス ホ コ リ ン (2%NaTC/POPC)を 含 む PBS
と し た 。 対 照 C1Aも ま た 同 じ 条 件 で 試 験 し た 。
【0243】
膜 を 透 過 す る 薬 物 の 最 大 流 束 は 前 述 の 手 順 を 使 用 し て デ ー タ か ら 計 算 し た が 、 結 果 は Ta
ble 14の と お り で あ る 。 こ れ ら の デ ー タ に よ れ ば 、 薬 物 1と 本 発 明 の HPMCA高 分 子 か ら な る
分 散 体 は 結 晶 質 対 照 と 比 べ て 供 給 液 中 の 薬 物 1を 高 濃 度 化 す る 。 分 散 体 15、 17お よ び 18は
、 結 晶 質 対 照 の そ れ の そ れ ぞ れ 1.5倍 、 4.7倍 、 2.8倍 の 最 大 流 束 を も た ら し た 。
【表21】
10
20
【0244】
実施例7
高 濃 度 化 の in vitro評 価
分 散 体 19(75:25 薬 物 6:高 分 子 17)の 膜 透 過 試 験 に よ る in vitro評 価 を 、 実 施 例 6の 要 領
で 、 た だ し 透 過 液 貯 留 部 に 60wt%デ カ ノ ー ル /デ カ ン を 入 れ て 行 っ た 。 供 給 液 は MFD液 (0.5%
NaTC/POPC)を 使 用 し て 調 製 し た 。 供 給 液 中 の 薬 物 6の 濃 度 は 薬 物 が 全 量 溶 出 し た 場 合 に 50
0μ g/mL(354μ gA/mL)と な る よ う に し た 。
【0245】
対 照 と し て 、 結 晶 質 薬 物 6単 体 を 使 用 し た 。 薬 物 濃 度 は 薬 物 6が 全 量 溶 出 し た 場 合 に 354
μ gA/mLと な る よ う に し た 。
30
2
膜 を 透 過 す る 薬 物 の 最 大 流 束 (単 位 は μ g/cm -分 )は 、 時 点 0の 濃 度 -時 間 曲 線 の 接 線 を 推
定 す る こ と に よ り 求 め た 。 結 果 は Table 15に ま と め る が 、 薬 物 6と 高 分 子 17か ら な る 分 散
体 19は 高 濃 度 化 に 効 果 が あ り 、 薬 物 6の 最 大 流 束 を 結 晶 質 薬 物 の 値 の 1.3倍 に す る こ と を 示
す。
【表22】
40
【0246】
実施例8
高 濃 度 化 の in vitro評 価
分 散 体 19は 次 の 要 領 で 、 マ イ ク ロ 遠 心 溶 出 試 験 で も 評 価 し た 。 こ の 試 験 で は 、 3.6mgの
分 散 体 19と 1.27mgの 結 晶 質 薬 物 6を そ れ ぞ れ マ イ ク ロ 遠 心 チ ュ ー ブ に 加 え た 。 チ ュ ー ブ を 3
50
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7℃ の 恒 温 槽 に 入 れ 、 7.3mMの タ ウ ロ コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム + 1.4mMの 1-パ ル ミ ト イ ル -2-オ
レ オ イ ル -sn-グ リ セ ロ -3-ホ ス ホ コ リ ン を 含 む リ ン 酸 緩 衝 生 理 食 塩 水 (PBS) 1.8mL (pH 6.5
、 290 mOsm/kg)を 各 チ ュ ー ブ に 加 え た 。 薬 物 6濃 度 は そ の 全 量 が 溶 出 た ら 500mgA/mLと な る
よ う に し た 。 ボ ル テ ッ ク ス ミ キ サ ー を 使 用 し て 試 料 を 手 早 く 約 60秒 間 混 合 し た 。 試 料 を 13
,000G、 37℃ で 1分 間 遠 心 分 離 し た 。 上 清 を 試 料 と し て 採 取 し 、 メ タ ノ ー ル で (体 積 比 )1:6
希 釈 し 、 次 い で HPLCで 分 析 し た 。 次 い で チ ュ ー ブ の 内 容 物 を ボ ル テ ッ ク ス ミ キ サ ー で 混 合
し 、 次 の 試 料 採 取 時 ま で 37℃ で 静 置 し た 。 試 料 は 4分 、 10分 、 20分 、 40分 、 90分 お よ び 120
0分 の 時 点 に 回 収 し た 。
こ れ ら の 試 料 で 実 現 さ れ た 薬 物 6の 濃 度 を 使 用 し て 、 時 点 0∼ 90分 の 間 の 薬 物 最 高 濃 度 (M
DC9 0 )と 時 点 0∼ 90分 の 間 の 曲 線 下 面 積 (AUC9 0 )の 値 を 決 定 し た 。 結 果 は Table 16の と お り
10
である。
【表23】
20
【0247】
デ ー タ か ら 明 ら か な よ う に 、 分 散 体 19は 薬 物 6を 結 晶 質 薬 物 6の 場 合 よ り も 高 濃 度 化 し た
。 分 散 体 19で は MDC9 0 は 結 晶 質 薬 物 の 場 合 の 4.3倍 で あ り 、 AUC9 0 は 2.6倍 で あ っ た 。
【0248】
実施例9
高 濃 度 化 の in vitro評 価
分 散 体 20(25:75 薬 物 5:高 分 子 18)の 膜 透 過 試 験 に よ る in vitro評 価 を 、 実 施 例 7の 要 領
で 行 っ た 。 薬 物 5の 対 照 分 散 体 (対 照 8) (25:75 薬 物 5: HPMC E3 Prem)も 比 較 の た め 試 験 し
30
た 。 供 給 液 中 の 薬 物 5の 濃 度 は 薬 物 が 全 量 溶 出 し た 場 合 に 100μ g/mL(88μ gA/mL)と な る よ
うにした。
【0249】
別 の 対 照 と し て 、 結 晶 質 薬 物 5の 単 体 を 使 用 し た 。 薬 物 濃 度 は 薬 物 5が 全 量 溶 出 し た 場 合
に 88μ gA/mLと な る よ う に し た 。
【0250】
膜 を 透 過 す る 薬 物 5の 最 大 流 束 は 実 施 例 6に 記 載 の 手 順 で デ ー タ か ら 計 算 し た 。 結 果 は Ta
ble 17に ま と め る 。 こ れ ら の デ ー タ に よ れ ば 、 薬 物 5と 本 発 明 の HPMCA高 分 子 か ら な る 分 散
体 20は 高 濃 度 化 に 効 果 が あ り 、 分 散 体 20で は 結 晶 質 対 照 (C5A)と 比 べ て 約 1.4倍 の 最 大 流 束
が も た ら さ れ た 。 ま た 、 HPMCで 調 製 し た 分 散 体 (対 照 8)は 結 晶 質 対 照 と 比 較 し た 高 濃 度 化
効 果 が な か っ た 。 こ れ ら の デ ー タ は 、 本 発 明 の HPMCA高 分 子 が HPMCで 調 製 し た 分 散 体 の 改
善にもなることを示している。
40
(58)
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【表24】
10
【0251】
実施例10
in vivo試 験
分 散 体 17(50:50 薬 物 1: HPMCA高 分 子 10)を 、 ヒ ド ロ キ シ プ ロ ピ ル セ ル ロ ー ス METHOCEL(
登 録 商 標 ) (Dow Chemical Co.) 0.5wt%を 含 む 溶 液 に 懸 濁 さ せ て 経 口 懸 濁 液 (OPC)と し て 雄
性 ビ ー グ ル 犬 に 投 与 し た 。 ま ず 、 7.5gの METHOCELを 秤 量 し 、 約 490mLの 湯 (90∼ 100℃ )に 徐
々 に 加 え 、 METHOCEL懸 濁 液 を 調 製 し た 。 METHOCELを 全 量 加 え た と こ ろ で 懸 濁 液 に 1000mLの
水 (室 温 )を 加 え 、 氷 水 浴 に 入 れ た 。 METHOCELが 全 量 溶 解 し た ら 、 2.55gの ポ リ オ キ シ エ チ
20
レ ン 20ソ ル ビ タ ン モ ノ オ レ ア ー ト (TWEEN 80)を 加 え 、 TWEEN 80が 完 全 に 溶 解 す る ま で 混 合
物をかき混ぜて、ストック懸濁液を調製した。
【0252】
OPCを 調 製 す る た め に 、 90mgA量 の 薬 物 1が 得 ら れ る よ う 十 分 な 量 の 試 験 組 成 物 を 正 確 に
秤 量 し 、 乳 鉢 に 入 れ た 。 20mLの ス ト ッ ク 懸 濁 液 を 乳 鉢 に 加 え 、 乳 棒 で 試 験 組 成 物 と 混 ぜ た
。 追 加 の METHOCEL懸 濁 液 を か き 混 ぜ な が ら 徐 々 に 加 え 、 合 計 400mLの ス ト ッ ク 懸 濁 液 を 乳
鉢 に 加 え る よ う に し た 。 懸 濁 液 を フ ラ ス コ に 移 し 、 OPCと し た 。 加 え て 、 90mgAの 非 晶 質 薬
物 1を 含 む OPCも 同 じ 方 法 で 調 製 し た 。
【0253】
6頭 の 雄 性 ビ ー グ ル 犬 に そ れ ぞ れ OPCを 投 与 し た 。 試 験 当 日 、 絶 食 状 態 ま た は 摂 食 直 後 (5
30
0gmド ッ グ フ ー ド )の 犬 に 強 制 飼 養 ま た は 注 射 で OPCを 投 与 し た 。 投 与 前 と 投 与 後 種 々 の 時
点 で 犬 の 頸 静 脈 か ら 採 血 し た 。 各 血 漿 試 料 100μ Lに 5mLの メ チ ル -tert-ブ チ ル エ ー テ ル (MT
BE)と 1mLの 500mM炭 酸 ナ ト リ ウ ム 緩 衝 液 (pH 9)を 加 え 、 試 料 を 1分 間 ボ ル テ ッ ク ス し 、 次 い
で 5分 間 遠 心 に か け た 。 試 料 の 水 性 部 分 を ド ラ イ ア イ ス /ア セ ト ン 浴 で 凍 結 し 、 MTBE層 を デ
カ ン ト し 、 ボ ル テ ッ ク ス エ バ ポ レ ー タ ー で 蒸 発 さ せ た 。 乾 燥 後 の 試 料 を 100μ Lの 移 動 相 (3
3%ア セ ト ニ ト リ ル と 67%の 0.1%ギ 酸 水 溶 液 )に 還 元 し た 。 分 析 は HPLCで 行 っ た 。
【0254】
こ れ ら の 試 験 の 結 果 は Table 18の と お り で あ る が 、 本 発 明 の 組 成 物 が 対 照 の 非 晶 質 薬 物
1と 比 べ て 薬 物 濃 度 と 相 対 生 体 利 用 率 を 高 め る こ と を 示 す 。 絶 食 状 態 で は 、 本 発 明 の 分 散
体は非晶質薬物単体と比べて濃度を高めた。それどころか非晶質薬物は絶食状態ではほと
ん ど 取 り 込 ま れ な か っ た が 、 本 発 明 の 分 散 体 は Table 18に 示 す よ う な Cm a x お よ び AUC0 - 1 2
値 を 示 し た 。 摂 食 直 後 で は 、 分 散 体 17は 非 晶 質 薬 物 1と 比 べ て 3.9倍 の Cm a x を も た ら し 、 ま
た 3.4倍 の AUC0 - 1 2 値 を も た ら し た 。
40
(59)
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【表25】
10
【0255】
実施例11
化学的安定性の評価
加 速 劣 化 試 験 で 高 い 温 度 お よ び 相 対 湿 度 (RH)に 暴 露 す る 前 後 の 薬 物 の 効 力 を モ ニ タ ー す
る こ と に よ り 、 分 散 体 21(薬 物 7 + HPMCA高 分 子 16)と 対 照 9(薬 物 7+HPMCAS-LF)を 評 価 し た
。 分 散 体 21と 対 照 9を 恒 温 恒 湿 槽 に 40℃ 、 75%RHで 貯 蔵 し た 。 貯 蔵 前 後 の 分 散 体 の 効 力 は HP
LCで 決 定 し た 。 Kromasil C4 HPLCカ ラ ム を 使 用 し た 。 移 動 相 は 0.2vol% H3 PO4 /ア セ ト ニ ト
20
リ ル (体 積 比 45/55)で あ っ た 。 245nmで UV吸 光 度 を 測 定 し た 。 薬 物 7の 効 力 は 、 ス プ レ ー ド
ライ前の当初の溶液中に存在していた薬物の量を基準にした、分散体中に元々存在してい
た 薬 物 の 理 論 量 に 対 応 す る 全 HPLCピ ー ク 面 積 の %で あ っ た 。 結 果 は Table 19の と お り で あ
る。
【表26】
30
【0256】
Table 19の デ ー タ は 、 酸 感 受 性 薬 物 7を HPMCAS-LFな ど の よ う な 酸 性 高 分 子 中 に 分 散 さ せ
ると、薬物が急速に劣化することを示す。本発明の中性高分子中に分散させた場合、薬物
40
は 40℃ 、 75%RHで 21日 貯 蔵 後 で 、 54を 超 え る (93÷ 1.7)化 学 的 安 定 性 の 相 対 的 改 善 度 を 示 し
、高効力を維持した。
【0257】
実施例12
高 濃 度 化 の in vitro評 価
75wt%薬 物 6と 25wt% HPMCA高 分 子 16と の 物 理 的 混 合 体 を 実 施 例 8に 記 載 の マ イ ク ロ 遠 心 溶
出 試 験 で 評 価 し た 。 薬 物 6濃 度 は そ の 全 量 が 溶 出 た ら 500mgA/mLと な る よ う に し た 。 同 じ 試
験 で は 、 75wt%薬 物 6と 25wt% HPMC (Dow E3 Prem LV)と の 物 理 的 混 合 体 も 評 価 し た 。
こ れ ら の 試 料 で 実 現 さ れ た 薬 物 6の 濃 度 を 使 用 し て 、 時 点 0∼ 90分 の 間 の 薬 物 最 高 濃 度 (M
DC9 0 )と 時 点 0∼ 90分 の 間 の 曲 線 下 面 積 (AUC9 0 )の 値 を 決 定 し た 。 結 果 は Table 20の と お り
50
(60)
JP 2008-501009 A 2008.1.17
である。
【表27】
10
【0258】
デ ー タ か ら 明 ら か な よ う に 、 薬 物 6と 本 発 明 の HPMCA高 分 子 16と の 物 理 的 混 合 体 は 薬 物 6
を 、 薬 物 6と HPMCと の 物 理 的 混 合 体 (対 照 )と 比 べ て も 、 ま た 結 晶 質 薬 物 6と 比 べ て も 、 高 濃
度 化 し た 。 本 発 明 の 組 成 物 に よ っ て 実 現 さ れ る MDC9 0 は HPMCと の 物 理 的 混 合 体 の 場 合 の 1.6
倍 で あ り 、 ま た 結 晶 質 薬 物 の 場 合 の 4.3倍 で あ っ た 。 本 発 明 の 組 成 物 に よ っ て 実 現 さ れ る A
UC9 0 は HPMCと の 物 理 的 混 合 体 の 場 合 の 1.6倍 で あ り 、 ま た 結 晶 質 薬 物 の 場 合 の 2.0倍 で あ っ
20
た。
【0259】
本明細書で使用した用語や表現は限定語ではなく説明語として使用しており、従ってそ
うした用語や表現の使用には、開示の特徴またはその部分との等価物を排除するものでは
なく、本発明の範囲は後続の特許請求の範囲によってもっぱら限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【 図 1 】 図 1は 、 3商 用 グ レ ー ド の HPMCAS (AQOAT; 信 越 化 学 、 東 京 )と 本 発 明 の 高 分 子 に 関
す る ス ク シ ノ イ ル 基 の 置 換 度 (DOSS )と ア セ チ ル 基 の 置 換 度 (DOSA S )を 比 較 し た グ ラ フ で あ
る。データの詳細については実施例を参照。
30
(61)
【図1】
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(62)
【国際調査報告】
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(63)
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61K 31/519
(2006.01)
A61K 31/519
A61K 31/498
(2006.01)
A61K 31/498
A61P 43/00
(2006.01)
A61P 43/00
111 A61P 25/18
(2006.01)
A61P 25/18
A61P
(2006.01)
A61P
3/06
3/06
(81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),
EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,
CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,
CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,L
T,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN
,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW
(72)発明者 バブコック,ウォルター クリスチャン
アメリカ合衆国,オレゴン 97701,ベンド,リサーチ ロード 64550,ベンド リサ
ーチ インコーポレイティド
(72)発明者 フリーゼン,ドウェイン トーマス
アメリカ合衆国,オレゴン 97701,ベンド,リサーチ ロード 64550,ベンド リサ
ーチ インコーポレイティド
(72)発明者 リヨン,ディビッド キース
アメリカ合衆国,オレゴン 97701,ベンド,リサーチ ロード 64550,ベンド リサ
ーチ インコーポレイティド
(72)発明者 ミラー,ウォレン ケニヨン
アメリカ合衆国,オレゴン 97701,ベンド,リサーチ ロード 64550,ベンド リサ
ーチ インコーポレイティド
(72)発明者 スミシー,ダニエル トッド
アメリカ合衆国,オレゴン 97701,ベンド,リサーチ ロード 64550,ベンド リサ
ーチ インコーポレイティド
Fターム(参考) 4C076 AA16 BB01 CC01 CC17 CC21 CC29 EE33A EE33B EE33E EE33F
FF16 FF31 FF34
4C086 AA02 BC28 BC80 CB05 CB06 GA07 GA10 GA12 GA16 MA02
MA05 MA07 MA10 MA21 MA52 NA03 NA05 NA11 ZA18 ZA81
ZC20 ZC33
4C206 AA01 AA02 FA31 KA01 KA17 MA02 MA05 MA14 MA17 MA28
MA41 MA72 NA03 NA05 NA11 ZA02
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