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空調システム制御の最適設定による省エネルギー効果と室内温熱環境

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空調システム制御の最適設定による省エネルギー効果と室内温熱環境
空調システム制御の最適設定による省エネルギー効果と室内温熱環境に関する研究
吉田 健一
3. 空調システムシミュレーションの方法
1. はじめに
各機器と制御ロジック、及び各室のモデルを作成し、これ
民生業務用施設の運用段階におけるエネルギー消費のう
ち、約半分は空調設備によるものと言われている。よって、
らを組み合わせることで空調システムをモデル化した。空調
今なお増加し続けている民生業務部門のエネルギー消費量
システムシミュレーションの概要を図 2 に示す。機器モデル
を減らすためには、空調設備の省エネルギーが不可欠となる。
はメーカー提供の性能曲線や仕様書を基に作成し、モデルの
特に、既存建物の運用段階におけるエネルギー消費は、その
推定精度を高めるために、実測値を用いてモデルパラメータ
膨大なストック数のために全体に占める割合が大きく、その
AHU
削減は極めて重要である。そのような背景のもと、既往研究
により、既存建物を対象とした省エネルギー支援ツール開発
の一環として、その重要な要素技術のひとつである空調シス
テム運用の最適化ツールの開発が進められてきた 1)。また、
西系統
熱源機器の部分負荷運転対策として熱源機器低負荷運転回
FCU
東系統
東系統
西系統
避制御が提案され、その効果が検証されている 2)。これによ
り、空調システムの制御上の設定値を最適化することによっ
バイパス弁
て省エネルギー化が図れる可能性があることが判ってきた
R-1
(ガス吸収式)
が、その検討範囲は熱源システムのみを対象としており、そ
CT-1
PCH-1
INV
の最適化が室内温熱環境に与える影響については十分に検
CT-2
PCD-1
INV
討されているとは言えない。
R-2
(ガス吸収式)
そこで本研究では、熱源機器低負荷運転回避制御も含めた
PCH-2
:温度センサ
空調システム制御の最適設定によって得られる省エネルギ
PCD-2
:差圧流量計
INV
:インバータ
ー効果と室内温熱環境への影響を、建物、空調システム、制
図 1 空調システム系統図
御のトータルなシミュレーションによって検討する。
表 1 対象建物概要
用途
延床面積
階数
構造
竣工
2. 建物概要
本研究で対象とした空調システム系統図を図 1、建物概要
を表 1、空調システム機器仕様を表 2 に示す。対象とした大
学施設の建物には、図書館、図書事務室、研究室等の各室が
大学キャンパス
2
22882m
地下1階, 地上7階
SRC造
1998年3月
表 2 機器仕様
含まれている。建物 6~7 階の個人研究室にはビルマルチ型
機器名
記号
のパッケージエアコンが導入されているが、それ以外の共用
ガス吸収式
冷温水機
RH-1, 2
冷却塔
CT-1, 2
温水機から冷温水が供給され 24 時間空調が行われている。
AHU と FCU では 2 方弁による冷温水の流量制御が行われる。
なお、熱源機器の装置容量が空調負荷に対して過大である
3
温水温度45-40℃, 冷房時定格ガス消費量 76.4Nm /h,
3
暖房時定格ガス消費量 76.3Nm /h
部を含めた全ての空調スペースには外気処理空調機(AHU)
とファンコイルユニット(FCU)が設置され、ガス吸収式冷
仕様
冷却能力 985kW, 暖房能力 823kW, 冷水温度7-12℃,
冷却能力 1822.7kW, ファン台数2台, ファン定格出力
3
5.5kW/台, ファン定格風量1240m /min
冷却水
ポンプ
PCD-1, 2 定格流量 282m3 /h, 定格軸動力 18.5kW, 定格揚程 15m
冷温水
ポンプ
PCH-1, 2 定格流量 120m3 /h, 定格軸動力 18.5kW, 定格揚程 30m
3
ことが明らかになっているため、現在は 2 台のガス吸収式冷
FCU-1
送風量5700m /h, 冷温水量219ℓ/min, 定格動力3.7kW,
全外気
3
送風量4400m /h, 冷温水量169ℓ/min, 定格動力3.7kW,
全外気
3
送風量480m /h, 冷温水量8ℓ/min, 定格動力0.015kW
FCU-2
送風量640m /h, 冷温水量10ℓ/min, 定格動力0.02kW
FCU-3
送風量960m /h, 冷温水量15ℓ/min, 定格動力0.03kW
AHU-1
温水機のうち 1 台(RH-1)のみが運転されている。また、本
空調機
建物は地上 7 階建であるが、簡単のため、基準階が複数層重
なっているものとして計算する。
53-1
AHU-2
3
3
還気湿度
の補正を行った。制御ロジックモデルは制御仕様書を基に作
還気温度
成した。室モデルには,HASP/ACLD/8501 の計算時間間隔を
給気温度
給気湿度
1 分に変更したプログラムを使用し、出力された仮想冷房負
荷を入力として与えた。図 3 に建物の基準階ゾーニング及び
給気ファン消費電力
室内温度SP
空調機区分を示す。
給気温度
シミュレーションの入力は外界気象条件、仮想冷房負荷、
給気温度設定値 θsa,SP、
熱源機器出口冷温水温度設定値 θwR,o,SP、
給気温度SP
AHU
AHU入口流量
入口流量
制御モデル
給気湿度
AHU
モデル
コイル出口
冷温水温度
冷却塔出口冷却水温度設定値 θwct,o,SP、冷却塔出入口冷却水温
冷温水流量
制御モデル
一次側
流量
ァン、冷温水ポンプ、熱源補機、冷却水ポンプ、及び冷却塔
ファンの電力消費である。シミュレーションの計算時間間隔
ガス吸収式
冷温水機
モデル
処理熱量
制御モデル
本シミュレーションに導入した制御を以下に示す。
熱源ガス消費
冷却水
冷却水流量 流量
制御モデル
冷却水ポンプ
モデル
CTファン CTファン
運転台数 運転台数
制御モデル
CTファン
消費電力
冷却塔出口
冷却水温度SP
冷却塔
モデル
気象条件
(外気温湿度)
ーションによる再現は困難なため、全ての FCU に関し
冷却塔出口冷却水温度
図 2 空調システムシミュレーションの概要
て同様の制御を行うものとする。
AHU は、給気温度が設定値となるようにコイルの入口
AHU-2
流量を PI 制御する。
FCU-2
×24台
バイパス弁開度は、実際には往還ヘッダ間差圧が設定値
となるように PI 制御を行っている。しかし本シミュレ
FCU-2
×14台
ーションでは簡単のために、空調機側の要求流量が熱源
4 FCU-3
×6台
FCU-1
×2台
3
側の流量になるものとし、その値が冷温水ポンプの最低
2
5
流量以下、あるいは定格流量以上となる場合にはその差
分をバイパスに流すことにする。
FCU-3 FCU-3
×9台 ×10台
N
熱源機器は、熱源機器出口冷温水温度が設定値となるよ
うに部分負荷率を調整する。ただし、部分負荷率が 100%
1
を超える場合は部分負荷率に 100%を与え、熱源機器出
※ゾーン 5 については、
AHU-1, 2 両方から給気されている。
口冷温水温度を計算する。
5)
冷却水ポンプ
消費電力
冷却塔出入口
冷却水温度差SP
の手元による ON/OFF 運転が行われているが、シミュレ
4)
冷温水ポンプ
消費電力
熱源消費電力
熱源出口
冷却水温度
FCU は室内温度が設定値となるようにコイルの入口流
量を PI 制御する。なお、実際は一部の FCU は室使用者
3)
冷温水ポンプ
モデル
熱源出口
冷温水温度
熱源出口
冷温水温度SP
は 1 分とした。
2)
給気風量
給気ファン消費電力
バイパス流量
度差設定値 Δθwct,SP であり、出力は熱源ガス消費及び空調機フ
1)
室モデル
給気風量
FCU
モデル
FCU
FCU入口流量
入口流量
制御モデル
冷却塔出入口冷却水温度差が設定値となるように冷却
FCU-1
×14台
AHU-1
図 3 基準階のゾーニングと空調機区分
水流量を PI 制御する。ただし、冷却水ポンプの定格流
群司令起動
量の 70%を最低流量とする。
6)
冷却塔出口冷却水温度が設定値となるように冷却塔フ
熱源機器運転
ァンの運転台数(0~2 台)を発停制御する。冷却塔出口
TS>TS,SP1
往水温度
判定
FQ>FQ,SP
部分負荷率
判定
冷却水温度が設定値より 1.5K 以上高くなった場合に冷
却塔ファンの運転台数を 1 台増段し、設定値より 1.0K
以上低くなった場合に 1 台減段する。効果待ち時間は 1
分とする。
熱源機器停止
TS>TS,SP2
4. シミュレーション結果
空調システム制御の最適設定による省エネルギー効果と
TS :往水温度
TS,SP1 :往水温度設定値
(熱源機器運転停止条件)
FQ :部分負荷率
FQ,SP :部分負荷率設定値
(熱源機器運転停止条件)
TS,SP2 :往水温度設定値
(熱源機器運転再開条件)
往水温度
判定
図 4 熱源機器低負荷運転回避制御のフロー
室内温熱環境への影響の推定をシミュレーションにより行
う。熱源機器低負荷運転回避制御のフローを図 4 に示す。本
を停止させ冷温水のみを循環させる制御で、効率の悪い低負
制御は、熱源機器の部分負荷率が小さくなった際にその運転
荷帯での運転を避けることを目的としている。
53-2
次の 5 ケースに関して検討を行った。
表 3 各ケースにおける設定値
・ Case0:従来運転を行うケース(比較対象)
Case0
7
θ wR,o,SP [℃]
32
θ wct,o,SP [℃]
5
Δθ wct,SP [K]
17
θ sa,SP [℃]
F Q,SP [%]
T S,SP1 [℃]
T S,SP2 [℃]
・ Case1:従来運転の設定値を最適化するケース
・ Case2:熱源機器低負荷運転回避制御を行うケース
・ Case3:熱源機器低負荷運転回避制御を行い、かつ
その設定値を最適化するケース
空調負荷
・ Case4:Case1 と Case3 を同時に行うケース
空調負荷[kW]
定値を表 3 に示す。ただし、ここでは当該時刻の境界条件を
300
250
200
150
50
0
いる。すなわち、この場合の省エネルギー効果は最大限の値
1
低負荷日1 低負荷日2 低負荷日3
1441
として算出されるが現実には実現不可能な値である。また、
3000
500
Case0
Case1
Case2
Case3
Case4
Case0
Case1
Case2
Case3
Case4
Case0
Case1
Case2
Case3
Case4
Case0
Case1
Case2
Case3
Case4
Case0
Case1
Case2
Case3
Case4
0
低負荷日1
低負荷日2
低負荷日3
中負荷日1
中負荷日2
中負荷日3
図 6 日積算一次エネルギー消費量の比較
Case1 では、θwR,o,SP、Δθwct,SP、θsa,SP を出来る限り上げる運転
表 4 日積算一次エネルギー消費量削減率
(Case3, 4 において左:Case1 比, 右:Case2 比)
、単位[%]
が最適解として得られ(図 7-a, c, d)
、約 21~27%の省エネル
低負荷日1 低負荷日2 低負荷日3 中負荷日1 中負荷日2 中負荷日3
26.8
24.4
21.4
23.4
24.0
23.6
Case1
Case2
34.3
34.6
34.2
0.0
0.0
0.0
Case3 35.5 1.9 48.4 21.1 37.7 5.3 13.2 13.2 7.5
7.5 19.9 19.9
Case4 60.0 39.1 64.0 45.0 54.0 30.1 30.1 30.1 29.8 29.8 31.3 31.3
ギーとなった(図 6, 表 4)
。ガス吸収式冷温水機は、全エネ
Case0, 2, 3
6
a) 熱源機器出口冷水温度θwR,o,SP
b) 冷却塔出口冷却水温度θwct,o,SP
10
9
8
7
6
5
4
3
2
21
給気温度設定値[℃]
7
33
32
31
30
29
28
27
26
25
24
冷却塔出入口冷却水温度差設定値[K]
Case4
8
冷却塔出口冷却水温度設定値[℃]
9
20
19
18
17
16
c) 冷却塔出入口冷却水温度差Δθwct,SP
d) 給気温度θsa,SP
図 7 空調システム従来制御の設定値
35
16
13
Case3
25
Case4
20
Case2
15
10
a) 部分負荷率(運転停止条件)FQ,SP
往水温度設定値[℃]
30
往水温度設定値[℃]
部 分負荷率設定値[%]
熱源出口冷水温度設定値[℃]
ルギー消費量のうちガス消費量の割合が非常に高いため、多
10
冷却塔ファン電力消費量
冷温水ポンプ電力消費量
1000
止時間をそれぞれ示す。
Case1
8641
1500
比較、表 5 に熱源機器低負荷運転回避制御による熱源機器停
11
7201
2000
熱源機器低負荷運転回避制御の設定値、図 9 に室内温湿度の
12
5761
2500
費量削減率、図 7、8 に空調システム運用における設定値と
13
中負荷日1 中負荷日2 中負荷日3
4321
図 5 空調負荷
Case0
Case1
Case2
Case3
Case4
次エネルギー消費量の比較、表 4 に日積算一次エネルギー消
日積算一次エネルギー消費量[MJ]
ないように室内温湿度によるペナルティをかけた。室内温度
2881
熱源機器電力消費量
冷却水ポンプ電力消費量
熱源機器ガス消費量
最適設定値を探査する際に、室内温熱環境に悪影響を及ぼさ
用いた。図 5 に検討対象日の入力空調負荷、図 6 に日積算一
負荷率30%
100
未知のものとして扱わず、すべて既知のものとして検討して
シミュレーションの外界気象条件には標準気象データを
負荷率25%
Case4
7~12(刻み1℃)
25~32(刻み1℃)
2~9(刻み1K)
13~20(刻み1℃)
10~30(刻み5%)
7~12(刻み1℃)
10~15(刻み1℃)
350
助走期間は各期間の前日 2 日間とした。各ケースにおける設
定値は除外される。
負荷率20%
Case3
7
32
5
17
10~30(刻み5%)
7~12(刻み1℃)
10~15(刻み1℃)
400
間を対象として、
一日毎に最適な設定値を1組求めた。
なお、
合、あるいは室内湿度が 75%以上になった場合には、その設
Case2
7
32
5
17
20
9
12
450
本検討では低負荷日と中負荷日に関して各 3 日間、計 6 日
が室内温度設定値(夏期:26℃)より 2K 以上高くなった場
Case1
7~12(刻み1℃)
25~32(刻み1℃)
2~9(刻み1K)
13~20(刻み1℃)
-
12
11
10
9
8
7
15
14
13
12
11
10
9
6
b) 往水温度(運転停止条件)TS,SP1
図 8 熱源機器低負荷運転回避制御の設定値
53-3
c) 往水温度(運転再開条件)TS,SP2
Case1
27.0
Case0
26.5
室内温度[℃]
室内温度[℃]
27.0
26.0
25.5
25.0
26.0
25.5
24.5
80.0
1441
2881
4321
5761
7201
8641
1
室内相対湿度[%]
1
75.0
70.0
65.0
60.0
55.0
1441
4321
5761
7201
8641
70.0
65.0
60.0
低負荷日1 1441 低負荷日2 2881 低負荷日3 4321
5761 中負荷日1 7201 中負荷日2 8641 中負荷日3
1
低負荷日1 1441 低負荷日2 2881 低負荷日3 4321
a) Case0 と Case1 の比較
5761 中負荷日1 7201 中負荷日2 8641 中負荷日3
b) Case0 と Case2 の比較
27.0
Case3
27.0
Case2
26.5
室内温度[℃]
室内温度[℃]
2881
75.0
55.0
1
26.0
25.5
25.0
Case4
Case0
26.5
26.0
25.5
25.0
24.5
80.0
24.5
80.0
1441
2881
4321
5761
7201
8641
1
室内相対湿度[%]
1
室内相対湿度[%]
Case0
25.0
24.5
80.0
室内相対湿度[%]
Case2
26.5
75.0
70.0
65.0
60.0
55.0
1441
2881
4321
5761
7201
8641
75.0
70.0
65.0
60.0
55.0
1
低負荷日1 1441 低負荷日2 2881 低負荷日3 4321
5761 中負荷日1 7201 中負荷日2 8641 中負荷日3
1
低負荷日1 1441 低負荷日2 2881 低負荷日3 4321
c) Case2 と Case3 の比較
5761 中負荷日1 7201 中負荷日2 8641 中負荷日3
d) Case0 と Case4 の比較
図 9 室内温湿度の比較
表 5 熱源機器低負荷運転回避制御による熱源機器停止時間
熱源機器停止回数[-]
熱源機器停止時間[min]
熱源機器停止平均継続時間[ min]
低負荷日1
低負荷日2
低負荷日3
中負荷日1
中負荷日2
中負荷日3
Case2 Case3 Case4 Case2 Case3 Case4 Case2 Case3 Case4 Case2 Case3 Case4 Case2 Case3 Case4 Case2 Case3 Case4
38
36
37
37
42
30
38
33
22
0
16
21
0
8
20
0
22
19
583
611
883
612
810
990
609
679
844
0
241
315
0
135
300
0
330
285
15.3
17.0
23.9
16.5
19.3
33.0
16.0
20.6
38.4
15.1
15.0
16.9
15.0
15.0
15.0
少他の電力消費量が増加してもガス消費量を減らす運転が
っており、二つの手法を併用することにより、より高いエネ
選択されている。また、θsa,SP が上がったために、室内相対湿
ルギー消費量の削減効果が得られることが判った。また、
度が Case0 に比べ高くなっている(図 9-a)
。なお、低負荷日
Case1 の結果と併せると、室内温熱環境、特に室内相対湿度
において夜間や早朝に室温が下がっているのは、外気温が室
に最も影響を与える設定値が θsa,SP であることが判った。
内温度設定値より低くなっているためである。
Case2 では、低負荷日に関して約 34%の省エネルギー効果
5. まとめ
が見られたのに対し、中負荷日では効果が見られなかった
空調システム制御の最適設定によって得られる省エネル
(表 4)
。これは、中負荷日において熱源機器停止条件の一つ
ギー効果及び室内温熱環境への影響を比較検討した。検討結
である FQ,SP(=20%)以下となる負荷帯がなかったためであ
果より、熱源機器低負荷運転回避制御を含めた空調システム
る(図 5)
。
制御の設定値を最適化することで、低負荷日において約 60%、
一方で Case3 では、FQ,SP を 25%、あるいは 30%まで上げる
中負荷日において約 30%のエネルギー消費量を削減可能で
ことにより熱源機器停止時間が増え(図 8, 表 5)
、低負荷日
あること、また、その際も室内環境に悪影響を与えないこと
で Case2 に比べ約 2~21%、中負荷日では約 7~20%の省エネ
を明らかにした。一方で、本研究で用いたようなトータルな
ルギーとなった(図 6, 表 4)
。なお、図 9-c において、いず
シミュレーションはその煩雑さのため、他の建物へそのまま
れのケースにおいても熱源機器の発停による室内温湿度の
適用することが困難である。今後は、実建物への実装を勘案
し、より汎用性を高めていくことが必要であると感じる。
振動が見られる。
Case4 では、低負荷日において、Case2、3 に比べ 1 回あた
【謝辞】
本研究を進めるにあたり、立命館大学および株式会社アレフネットの関係者の方々に
りの熱源機器停止時間が長くなった(表 5)
。熱源機器を一日
ご協力を頂きました。ここに記して謝意を表します。
の約 60~70%停止させることで、60%程度の省エネルギーと
【参考文献】
なった(図 6, 表 4)
。中負荷日においては、室内に悪影響を
1)吉田健一,他:空調用熱源システム運用におけるコミッショニングツールの開発(第 1
及ぼさない範囲で θsa,SP が上がり(図 7-d)
、熱源機器処理熱量
空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,pp. 1367-1370, 2009 年9 月
報)リアルタイム運用最適化ツールの概要とシミュレーションによる省エネ効果の推定,
2)李霽憲,他:空調用熱源システム運用におけるコミッショニングツールの開発(第 2 報)
が小さくなることにより熱源機器停止回数が増えた(図 9-d,
リアルタイム運用最適化ツールの実装と提案した熱源機器運転台数制御による省エネ効
表 5)
。結果として、Case0 に比べ約 30%の省エネルギーにな
果の検証,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,pp. 371-1374, 2009 年9 月
53-4
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