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日消外会議 1 0 ( 2 ) : 2 0 7 ∼ 2 1 1 , 1 9 7 7 年
特集 3 ・
人工 肛 門患者 の愁訴 とそ の対策
愛知県がんセンター 外 科
森 本 岡J 史
山 田 栄 吉
加藤 三 千
中里 博 昭
加 藤 知 行
MANACEMENT OF PERMANENT COLOSTOMY
厳 MORIMOTO,Tolnoy胡
K比 減 ydtt KATO,Takes】
H缶 o封L NAKAZATC and速
脱 KAT09
劇賦dtt YAMADA
Departlncnt of Surgcry III,Aichi Canccr Center i工ospital,Nagoya
索引用語 人 工肛門 , 直 腸癌ヵ愁 訴, 流 腸
I. は じめに
最近 ,私 どもの施設 では直腸癌患者を以前 よ り多 く取
扱 うようになって来 ている.ま た,厚 生省 の人 口動態統
図 1 直 腸癌根治切除,術 後生存率
∼昭49(除 他病死)
計 で直腸癌 による死亡者数を見 ると,死 亡実数 も,全 死
亡あるいは全悪性腫瘍死亡中の割合 も,少 しずつ ではあ
るが年 々増加 の一路を辿 ってお り,今 後 ,こ の直腸癌患
者 は益 々増加す るのではないか と思われ る (表 1).
表 1 直 腸癌死亡の年次推移 (人 口動態統計 よ り)
40
41
42
43
44
45
46
47
48
0665.506
2 4 4 , 3 9 43 特
2 年1 ' 中6 6 ■
軒9 6 4 8 4 0 Ⅲ
直 B窟 死亡
ユ39 333 350 3S3 a68 3'5 386 範
ワ
亡
比
亡
650 CS, 061 α
, 402
64 066 066 073 0'4 078
ここで ,私 どもの施設 での直腸痛根治術後 の生存率を
見 ると,他 病死症例を除外 した実測生存率で ,術 後 8年
61.7%で あった (図 1)。すなわち根治切除を受けた患者
の約 6割 は再発す ることな く天寿を金 うす るのであ る.
これ らの直腸癌患者 に対 して行われた手術内容を見 る
と,根 治切除274例中233例 (85%)が 永久的人工肛門造
設を伴 う MileS手 術で あった 。 悪性腫易 に 対す る外科
* 第 9 回 日消外総会 シンポ I
人正肛門 とそ の A f t e r C a r e
手術 は ,安 全で しか も術後再発がない ように行われ るこ
とが一番必要な ことではあ るが,さ らに患者が術後快適
な身体状況で社会生活を営 んで ,始 めて満足され るべ き
ものであ ると言え よう。
今後増加す ると思われ る直腸癌患者 の過半数が人工肛
け
門を持つ ようになること , お よび現今 の再発防止 に対
す る努力に より将来は術後生存率が さらに向上す るであ
一
ろ うことを思 う時 ,人 工肛門 の管理 の重要性 は今後 層
大 きくなると考え られ る.そ こで ,ま ず この人工肛門保
持者 の状況を把握す ることに よ り,今 後 の人工肛門の管
理 の良い手段 ・方法を求め る手掛 りを得ん とした ,
II・対 象および調査方法
調査対象は名古屋地方の健心友 の会 と大阪地方 の友起
会 と呼ばれ る 2つ の人工肛門患者 の会 の協力を得 ,そ の
42(208)
人工圧門患 者 の愁訴 とそ の対策
会員を対象 とした,郵 送に よる記入方式 のアンケー ト調
が ,医 師が直接行 うよ り,よ りあ りのまま返答が得 られ
るか とも思われ る,
質問事項は,人 工肛門 に対す る愁訴,排 便状況を中心
とした もので , 151名の回答が得 られた ,未 記入 の部分
もかな りあ ったが ,患 者 の 術後状況の 一端を 知 り得 る
もの と考え,そ の一部 を あ りのまま述べ ,人 工肛門の
After Careに
ついて考えて見た .
III・調 査結果
(1)回 答者内訳 (表 2)
表 4 排 便状況
1 日 の排 便 回数
1 回 未満
1 ∼2 回
3∼ 5回
5回 ∼
通常 時 の便 の性状
硬
便
普 通 便
泥 状 便
水 様 便
下痢 の頻 度 ( 1 カ 月間に)
全 くな し
1 ∼2 回
3∼ 5回
6∼ 10回
1 1 日以上
表 2 回 答者 内訳
2号
0 5 9 9
0 0 6 1
3
2 2 3
1 4 4 2 2 1 1
6 “ ︲
︲
査を昭和50年5月 に行 った 。この ような患者組織を通 し
てのアンケー ト調査 は対象が偏 ると云 う短所 も あろ う
日消外会 議 1 0 巻
,行 役経過期目
1年 ‐
'8
2年 ∼
5'
な ど訴えはかな り多岐 にわたっている.人 前に出るのが
‐
51
8年 ‐
2,
‐
2
恥 しい と云 う訴えがかな りあるが,こ れは恐 らく上位三
愁訴 に よって もた らされ るもの と思われ る.
4年
16年
(3)排 便状況 (表 4)
訴え の多い排便回数 について見 ると, 1日 1回 未満 :
10, 1∼ 2回 :45, 3∼ 5回 :49で ,回 答のあった もの
の半数以上 が 1日 3回 以上あ り,こ の排便 の度毎の便 の
始末,排 便 に伴 う便臭 は確か に大 きな問題 である。この
50ヽ
便臭を気づか う余 り,人 前 に出る ことを嫌 い,さ らには
社会生活に適合で きな くなる患者 も存在す るつ.
表3 人
五肛門 に対す る現在 の感想
放屁 臭 ・便 臭 に因 惑
装具 に対 す る不 満
排便 回数の調節を望む
便 の性状 の調節を 望む
人前に 出た時恥 しい
美 容上 の 苦痛
人工圧 円周曖 のただれ
不便 な し
風 目で恥 しい
便 の性状 の調節を 望む と言 う声が かな りあるが (表
3)平 常時 の便 の性状は,上 部結腸 の人工肛門を持つ例
72
46
外的な者を除けば,通 常 の S字 結腸 に よる人工肛門では
それ程問題 にな らぬ よ うに思われ る。しか しなが ら,全
くの Incmtinenceの 為 に ,偶 々起 こる下痢はその始末
46
が大変 であることは誰 しも想像で きる。
30
この下痢 の頻度は, 1カ 月 に 全 くな し :63, 1∼ 2
日 :44, 3∼ 5日 :12, 6∼ 10日 :2, 11日 以上 :3
78
75
20
8
5
アンケー ト回答者 の術後年数は最短 1年 より最長23年
に及んでお り,年 齢構成 も老若男女 と多岐 にわた ってい
ることが判 った.
(2)人 工肛 門に対す る現在の感想 (表 3)
人工肛門に対 して現在如何なる苦痛を持 っているか と
問 うと,放 屁臭 ・便臭 の困惑,装 具 に対す る不満 ,排 便
で ,必 ず しもそれほ ど頻回なものではない。しか し半数
以上の患者 において 1カ 月に 1日 以上 の下痢 の 日が見 ら
れ ,こ の時 々起 こる下痢が,便 の性状 の調節を望む声 に
なると思われ る.一 方,硬 便 の場合 も自然肛門 と異な り
腹圧 のみでは排出 し難 く,便 秘 に陥 り,下 剤を服用 して
今度は下痢をす ると云 った厄介な こともあるのであ る。
回数の調節を望むの 3つ の訴えを回答者 の半数が持 って
(4)排 便 の回数 お よび性状 の調節 (衰5)
排使回数 ,使 の性状 ,排 ガスなどの調節 の為には ,ま
ず食事療法が考え られ る。私 どもは今迄,画 一的な食事
いた.そ の他 に便 の性状 の調節 ,人 工肛円周囲のただれ
指導は行わず ,た だ 「
排便 の様子を見なが ら,自 分 で ど
43(209)
1977年 2月
表5 便
の回数 ・性状 の調 節
漢 方薬
下 剤
止痢剤
その他
んな ものを,ど んな風に食 べ るのが調子が良いか とよく
注意 し,自 分 に合 った食生活 を見つ けるよう努力す るよ
り,食 品の質 に留意 しているものもかな りあ る.野 菜を
多 く摂 った り,乳 製品 の量を調節 した り色 々な努力がさ
れ てお り,相 当の効果が挙げ られ てい る。
薬品に よる調節 も過半数 の患者で行われ ている.消 化
剤 ・乳酸菌製剤 ・漢方薬が主な ものであ るが,時 々起 こ
る便秘あるいは下痢 に対 しての薬 の服用 は通常人 に比 し
どうしても多 くなる。
(5)人 工肛門部 の状況 〈表 6)
人工肛門周囲皮膚 のただれは月に 1∼ 3回 迄 の ものが
多 く,大 体 1∼ 2日 で治る。このただれ は便 の性状 より
む しろ装具 と関係があるようで,暑 い時や運動後 の発汗
時 に多 く見 られ ている.
愁訴 としては,そ れ程数 の上で大 きな も の で はない
が ,人 工肛門その ものの状態 について調 べて見 ると,出
血が しば しば見 られ ている。しか しこの腸粘膜あるいは
粘膜 と皮膚 の境か らの出血 は量 ・期間 ともに大 した もの
人工肛Flの状態
出 血
全 くない
あ る
54
32
の
か
ら
境
(ウ 鳥
出血頻度
│:!:!B
(号
l∼ 2日 間続 く
便 の性状 とは関係ない ものが 多 い
人InIF弓の形態
術後の大きさの変化
不 変
変化 した
現在の大きさ
小指が入 らぬ
小指が入る
示指が入 る
示指が楽に入る
jr■
指が楽に入る
粘藤の脱出
腹圧により腸がとび出る
″ 周 囲の皮膚が出る
″ 不 変
3 4
2 4
5
︲ 郷 師
︲ 拠 卸
0 革 うに」 と指導 してきた。しか し実際 に患者が どの ような
食生活を してい るかを見 ると,半 数以上 の81名は無頓着
に食事を している。一方食事 の量や食事時間を工夫 した
人工肛門周囲皮膚のただれ
い : 70
る: 6 3
年に 1∼ 6回 : 25
7∼ 12回 :3
月に 1∼ 3回 :2tl
4回 以上 :11
日間続 く
1∼ 2‐
下痢とは関係ない ものが多い
装具とは関係あるものが多い
夏期や運動後 に多い
5 ︲5
5
観範 2 第 ︲3 1
消化剤
乳酸菌製剤
あ
常用 してい る
来 の種 類
な
全 く服用せず
時 々服用
3 0
2052 0
64錫 卸 22 1︲ ︲
乳製品 の 量を調節
水分 を少 く
油類 を少 く
肉を少 く
薬 の服用
嶋 543 2
摂取 量を調節
食事時間を調節
食品 の質 に留意
野菜 ・線維質 を多 く
︲
0
8範2釣
食事 について
余 り考えてい ない
表 6 人 工肛門部 の状況
再手術を行 った もの もある。今回 のアンケ早 卜調査は他
施設 の手術症例 がかな り含 まれてお り,人 工肛門造設 の
・
術式 との関係はわか らないが ,こ の人工肛門の狭窄 腸
管 の脱出は多分に人工肛門造設 の術式 との関連を思わせ
るりt
(6)装 具 の使用状況 (表 7)
な くなる。
初項 で述べた三大愁訴 の 1つ であ る人工肛門の装具 の
使用状態 について 調べ ると,常 時装用者 :62,昼 間 の
問題 になるのは人工肛門 の 狭窄 と粘膜 の 脱出であろ
う。そ の程度が術後次第 に著 しくな り少数ではあ るが,
み :28,一 定時間 のみ :12,布 または紙のみ使用 し装具
を使用 しない もの :42であった ,
ではな く,初 めは忠者 も心配す るが,そ の うちに気 にし
44(210)
人工肛門患者 の愁訴 とそ の対策
表7 人
工肛門装具
2号
障害がかな りあると思われ るが,運 用 している者 では相
当の効果 が認め られている.止 めた理 由では面倒だか ら
2
2 釣
3
︲4
6郷 2
範2
麦具の使用状況 (普通便の とき)
昼夜 とも使 用
昼間のみ
一 定時間のみ
通常使用せず (布,紙 のみ)
装具の改良 について
現状 の ままで良い
常 に新 しい情報を求 めてい る
自分 で 改良 ,試 作 してい る
この よ うに回答者 の過半数が装具を常時用 いていない
のは ,排 便 の調節が ,食 事 ・薬剤あるいは浣腸 に よ り適
切 になっている場合 もあろ うが , 1つ にはその人 の社会
生活 に好都合な装具がなか った りあるいはあって も知 ら
なか った り,入 手 で きなか った りす る為 もある.事 実 ,
装具 の改良については ,78名 が常に装具 に関す る情報を
求めてお り,装 具を 自分 で種 々改良 している者 も23名に
のぼ ってい る。
(7)人 工肛 門 よりの浣腸
前述 の各種 の苦痛 の中で ,排 便 の調節 ・放屁臭 ・便臭
の調節 の一手段 として浣腸 が挙げ られている°.私 ども
も昭和45年以来 ,一 部患者に人工肛門 よ り浣腸 の指導を
して来た 。
器具には,指 導開始当時 ,何 処 で も入手 しやすい100
CCガ ラス製浣腸器 ,膿 盆 ,指 案を用意す る。 坐位 にて
まず指襲 に より自分 で腸管 の走行を確認後 ,浣 腸器 で徴
温湯100CC∼300CCを 静か に 注入 し,注 入後 5∼ 10分間
人工肛門を圧迫 し浣腸液 の漏出を防 ぐ,そ の後 ,楽 な姿
勢 で膿盆を受け便 の排泄を待つ 。30分前後 の時間を要す
るものである .実 際 の指導 は看護婦 に よってなされ ,退
院迄 に患者が独 りでで きるように指導 していると
この方法 に よる浣腸 の指導は,ア ンケー ト回答者中57
名 に行われ てお り,連 用 しているもの :20,適 宣行 って
いる もの 17,や っていないもの :30であった 。日本 の
住宅 とくに便所 の構造など,浣 腸を連 日行 うに当っての
表 8 浣 腸実施状況 (浣腸指導 を受けた者 のみ)
0 7
卸
2
毎 日現在もや っている
排便のない時のみ
止めた
1回 の俳便習慣になった
、 1日
, 面 倒
1 効 果がない
下剤で用が足る
日消 外会 誌 10巻
と云 う者 が過半数であるが ,中 には , 1日 1回 の排便習
慣 になったか らと云 う者 も少数なが らある。一方 この方
法 では排便 の調節がで きない ものがあ り,こ れは,今 後
浣腸 の方法を改良 しなければならないことを示す ものか
と考える (表 3).
IV:考 案
の
患者 人工肛門がある為 の愁訴 の大 きなものは ,前 述
の如 く,放 屁臭 ・便臭 ・装具の不満,排 便回数が主要 な
ものであ る。この愁訴を取 り除 く手段 としては ,① 食
事療法 ,② 浣 腸 の指導 ,③ 良 い装具 の開発 ・普及が
考えられ る。以下 この 3つ の手段について考えて見 る。
(1)食 事療法
食事 の内容 ・量などを注意す ることに よ り,人 工肛門
に よる者痛が取 り除 くことがで きれば ,こ れは容易に誰
もが実施 し得 て ,し か も自然で もあ リー番望ましいこと
であ る°.実 際 の方法 については ,理 屈で考えるよ り,
む しろ人工肛門を持 っている 患者 の 体験 より形作 るの
が ,よ り実際的であろ う。この為 には ,生 活環境 。年齢
などの幅広 い,で きるだけ数多 くの ,人 工肛門患者 の体
験を集積す る必要 がある.と い うのは ,排 便状況にはか
な りの個人差があ り,そ れ らの食事 に よる影響 の され方
に も個人差があるか らである.例 えばある患者は牛乳を
常用す ることに よ り良い排便状況を得 てお り,一 方あ る
患者 では牛乳を採 ると全 く排便状況が不都合にな ること
があ り,こ のよ うな ことには豆類 ,肉 類 において も見 ら
れている.故 に ,も っと沢山の息者 の体験 より,普 遍性
のあ るもの ,な い ものを区″Jして抽出 し,今 後 の食事指
導 の手掛 りを得たいものだ と思われ る.
(2)浣 腸 の指導
現今迄 ,私 どもの指導 して来たガラス製浣腸器に よる
洗腸 の効果 に就 ては ,昭 和49年8月 に愛知県がん セ ンタ
ー看護科 が行 ったア ンケー ト調査に よるとめ
浣腸を実施
している患者 では排便回数が 1日 3回 以上 の 者 は4/24,
実施 していない者 では17/32で
あ り,簡 易 な用 具を使用
して も排便 の回数調節 の効果は認め られている (表 9).
しか しやには毎 日浣腸を行 っても排便 回数 が 日に 3回 以
上で,そ の効果 のない者 があ ることを考え,最 近 はいわ
ゆる C010StOmy lrrigationの
器具 も市奴 され,容 易 に入
手 で きるようになって来たので ,こ の器具 による。液畳
を多 くした C。10StOmy IHigationに
変更 しつつあ る。
しか し,この人工肛門 よ りの浣腸 の適応は,人工肛門患
45(211)
1977年 3月
表 9 浣 腸 と排便回数
愛知 県 がん セ ンタ ー看護科
宣選択 して使用 で きる よ うにす べ きで あ る。
ー
今 1つ 大切 な こ とは ,前 述 の装具 についてのア ンケ
トの回答 に もあ った ごと く,新 しい情報 が人工肛門を持
つ者 へ 常 に達 して ,必 要 とす る装具が容易 に入手で きる
よ うな体勢 が要求 され るので あ る。この為 に も現在各地
にあ る人工肛門息者 の 組織 を 一 層発展 させ るべ く努力
が 望 まれ るが ,一 方医療機関 に おいて も,人 工肛門 の
Atter Careを
担 当す る部門や医療従事者 を用 意す べ き時
の全員 とは到底考えられない。即ち毎 日 1時 間近 くの時
間をさいて行 うのは息者 に とっては大 きな負担 であ り,
7).壮
それ相応 の Meritの ある者 に限 られ るべ きであ る
一
年 の社会 の第 線 で活躍 している者 ,と くに人前 にで る
機会 の多 い者 では随分有用 であろ うが,家 庭外へ でるこ
との少 ない者 にあ っては ,毎 日洗腸を行 うことはそれ経
の利益をもたらさない と思われ る.し か し,平 常 は家庭
内にあ る者で も,偶 々の外出の場合に この沈腸法 が 自分
でで きれば役立つ場合 もままあ るであろ う。この ような
考えか ら,人 工肛門 よりの浣腸は,理 解力があ り,自 分
一人 で行 うことので きる患者にはすべ て一応指導を し,
′
退院後実際 に行 うか否 かは患者 に選ばせ ると言 う方針が
妥当であろ う.
人工肛門 の自己浣腸は危険 も存在す る。私 どもは,退
院後 自宅 で 自分 で浣腸を行 い,腸 第孔を起 こし死亡 した
62歳女性 の 1例 を 経験 している.使 用 した 器具 の構造
上 ,器 具そ の ものに よる損傷 とは考えられず原因は判 ら
なか ったが,こ の患者 は結腸憩室症を有 していたので ,
あ るいはこの憩室が偶 々炎症を起 こしていてこの ような
事故 を惹起 した ものか とも考え,現 在憩室症を有す る息
者 には浣腸指導 は 行 っていない 。Cabrielゆも浣腸器 の
カテーテルに よる腸努孔 の死亡例を 8例 報告 してい る.
この ように人工肛門 の浣腸 は危険 を 伴 うもの で あ るの
で ,指 導は充分懇切 に慎重 に行 うべ きもので ,特 に理解
力 の乏 しい高齢者 は避け るべ きであろ う.
(3)人 工肛門装具 の改善
人工肛門の装具は現在国内で容易 に入手できるもだけ
で も70種類を超える.こ れ らの中には ,人 工肛門患者 の
立場 に立ち,か な り巧妙に 作 られた良質 の ものもあ る
が,明 らかな短所を有 し改善 の余地を残 しているものも
多 くあ り,ま た小規模 な生産の為 か,か な り高価格 にな
っているもの も見受け られ る。現在 ,人 工肛門装具改善
委員会 においては ,種 々の観点 より見 て理想的な装具を
開発す る努力が続け られ てお り,そ の成果 が待たれ る.
本来 ,人 工肛門 の装具 は ,そ れを使用す る人の体形 ,
生活環境 により,あ るいは同一人で も使用す る場 に よ り
それぞれ果 った///態・性能 を要求 され るものであろ う.
この故 に理想的な装具は数種類 が必要 で ,そ の中か ら適
はす でに来 てい るのであ る.
V 。ま と め
(1)人
工肛門 の After Careは 今後 そ の必要性 が 大
き くな ると思われ る。
(2)151名 のア ンテ ー ト調査 に よれ ば ,入 工肛門患
者 の愁訴は ,放 屁 臭 ・便臭 ,排 便 回数 の調節 ,装 具 に対
す る不 満 ,便 の性状 の調節 ,さ らには これ らの音痛 の総
合 され た ,人 前 に 出 る時恥 しい ,と 言 った ものが 主要 な
もので あ った 。
(3)解 決策 としては
① 食 事療法 を具体的 に確立す る.
② 浣 腸 を指導 し,排便 ・排 ガスの調節 をす る .但 し,
腸努孔 の危険 が あ るので充分慎重 に行 う必要 が あ る。
③ 理 想的装具 の開発を し,そ の情報 を息者 に行 きわ
た らせ る。
稿 を終 るにあた り, ご高閲 を賜 つた今永 一 総長,な ら
びに ご協 力を得 た看 護科諸姉,健 心友 の会 ・友起会 の諸
氏 に深 謝 す る.
なお本研究 の一 部 は厚生省 がん研究助成金に よつた。
文
献
1)笠 川恒夫 :人 工肛F弓の術後愁訴.外 科治療,24:
529--537, 1971.
2 ) 吉 雄敏文 ほか : 人 工肛門 の 機能 と ア フタ ー ケ
ア. 外科, 37: 353--359, 1975.
3)単 [aziCr, w.P, et al.: EfFective Colostomy
S=G,O. 142:905--909, 1976.
4 ) 鈴 木義雄 ほか : 人 工肛F 目の諸 問題一 人 工肛門患
者 の愁訴 と リハ ピ リテ ー シ ョンー . 外 科, 3 4 :
1277--1284, 1972.
5 ) 仲 野房子 ほか : 人 工肛門造設患者退院後 の実態
調査一 流腸 に関 して, 愛 知県 がん セ ンタ ー看護
8呼夕巳身書釜
設, 3 :68--72, 1976.
6 ) ゃ 川原儀 三 : 直 腸痛 の術後愁訴 について, と く
に人工肛門息者 の愁訴. 手 術, 2 9 : 2 6 9 - 2 7 2 ,
1975.
7)MacLcod, J・ H・: Colosttmy lrrigatim A
Transadandc Controvcrsy. Dis.CO10n &
Rect. 15: 357--360, 1972.
8)Gabricl, W.B.: Dお
cussion of thc managc‐
ment of pcmanent colostomy. Proc. R. Soc.
取[ed. 38: 692--694, 1945,
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