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Hirosaki University Repository for Academic Resources Title チック症の箱庭療法 : イメージ変遷の法則性につい て Author(s) 安藤, 嘉朗, 熊谷, 輝, 小井田, 潤一 Citation 弘前医学. 37(4), 1985, p.730‐741 Issue Date URL 1985-10 http://hdl.handle.net/10129/1716 Rights Text version publisher http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/ 弘 前 医 学 37:730-741 ,1 985 チ ック症 の箱庭療法 - イ メージ変遷の法則性について一 安 藤 嘉 熊 朗* 谷 輝 ** 小 井 田 潤 一 *** チ ック症児 5例の箱庭療法の過程を報告 し, 法則定立的な見地か ら検討 した. 従来の箱庭療法の報告 は症例記述的方法によるものであるが, 5症例の箱庭療法の経過を法則定立的に見ると, 治療過程における 箱庭 イメージの変遷に,バ リエーシ ョンはあるものの次のような共通 した段階が見て とれた. 1) 問題の提示 ( 脅威 ・禁止の存在, 自由なェネルギーや攻撃性の封 じ込めの表現). 2)左右や内外の分割 と流動. 3)伯仲 した 「革い 」な どの対峠 ・均衡. 4) 「耕 し」 「工事」の表現,あるいは作 った り壊 した りの砂遊び. そ して, このよ うな箱庭 イメージの変遷 における法則性はチ ック症治療の一つの里程標にな りうる と思 わ れる. さらに, これ らの展開は, 箱庭表現に より息児の 自我が, 脅威にさらされ抑圧 されていた内的衝動や攻撃 性 と出会い,自律性を獲得 してい く過程である と考え られた. 弘前 医学 3 7:7 30-741 ,1 985 抄最 Eey words:t i cdi sor der s nomot het i c met hod p l a s nd y h r a a py i ma getra nsii on t e t heal i ng proces s SAND PLAY THERAPY OF TI C DI SORORS - No mot h e t i cs t udi e sont h ei ma get r ans i t i on- * YosHI AKIANDO ,AKI RA KUMAGAI * *a ndJUNI CHIKoI DA* * * Abs t r ac t I nt hi spape r we r e por tt he proc es s of s and pl a yt her apy i n 5C as esoft i cdi s or der s . f r om anomot het i cvi e wpol nt The pr e vi ouss t udi es on s and pl a yt he r apy haveappl i edt hei deogr aphi cme t hod.Us i ng t he nomot het i c met hod,we c an 丘ndc er t ai n common f eat ur esi ni maget r ans i t i on dur i ngt hehea l i ng pr OC eS S ・ W epol ntOutt hef ol l owi ng4s t agesi nt hei maget r ans i t i on: 1 )Pr es ent at i on ofprobl emanexpr e s s i on ofme nac e,prohi bi t i on,r e pr es s edene r gyoraggr es s i on. ,Hi n"and"out ",andamovementbet we e nt het wo. 2)Di vi s i on-l e f tandr i ght 3)Conf r ont at i on and bal a nc eaneve nl ymat c hed s t r uggl ebe t we ent hel ef tandr i ght . 4)Cons t r uc t i on-c ul t i vat i on,r oadcons t r uc t i on,orr epeat edcons t r uc t i ondes t r uc t i on. Tous et hi st r ans i t i onasar ef e r e nc ecan beofgr e atval uei n anal yz i ng t hes t ageoft heheaレ i ngpr oc es soft i cdi s or de r s ・ Fur t her mor e,wevi e wt hi st r ans i t i on asanexpr es s i onoft heego' sproc es st oac hi e veaut onomy overr e pr es s edi nne ri mpul s i on oraggr es s i on. Hi r os akiMe d.∫.3 7:73 0-741,1 9 85 弘前大学 医学部神経精神 医学教室 ( 主任 時治郎教授) *現在 ,大館 市立総合病院神経精神科 **現在 ,八戸市民病院神経精神科 ***現在,北陽病院 昭和 6 0年 3月 1日受付 佐藤 De par t me ntofNeur ops yc hi at r y,Hi ros aki Uni ver s i t y,Sc hoolofMedi ci ne( Di r ect or: Prof .T.SATO),Hi r os aki ,Ja pan. e De par t ment of Neur ops ychi at r y, Ohdat Muni c i palHos pi t al ,Ohdat e,J apan Depar t mentofNe ur ops yc hi at r y,Hac hi nohe Muni c i palHos pi t al ,Hac hi nohe,Japan HokuyoHos pi t al ,I c hi nohe ,Japan Rec e i ved f orpubl i c at i on,Mar c h 1,1 9 85 昭和 6 0 年 1 0月 弘前医学 3 7巻 4号 1. は チ ック症 の箱庭療法 じ め 7 31 に 箱庭療法 の症例 記 述 的 方 法 ( i deogr a phi c me t hod) か らの報告 は数多いが, 治 療 の 里 程標 を作 るよ うな 法 則 定 立 的 方 法 ( nomo- t he t i cme t hod) か らの研究 は, 臨 床 的 有 用 5 ) 性 の検討 を含 めて,今後 の課題 と思 われ る. また, チ ック症 に対 す る箱庭療法 に よる症例 報告 も比較 的多いが,その経過 につ いての比 較検討 は なされてい ない と思 われ る. このた 図 1-8 「 森の動物達 と狩人 」. び,われわれは トゥレ症候群 を含む チ ック症 児 5例 の箱庭療法 を経験 し, その治療 経過 に 守 , . 同 甘 仁 B 性 j ら 姐 甘 _ 胆 1 * = おけ る箱庭 イ メージの変遷 に共通性が見 て と れたので,症例経過 と共 に箱庭像 を提示 し, . 若干 の考察 を加 えて報告 す る. 2. 症 例 報 告 症例 l N君 , 9歳男子. X- 2年,妹 誕生時 に両眼険 を しはだたせ るチ ックが数週 間続 いた.X年 1月 よ り再 び 図 1-b 「 右半面のバ ス通 り」. 図 1-C 「対峠 した戦闘攻防」. 瞬 目のチ ックがお こ り, 3月末 には瞬 目や眉 間を しかめた り,右顔面がひ きつ るよ うなチ ックが 目立つ よ うになる. 父 は甲子 園に出場 した こともあ るスポ ーツ マ ンだが仕事 が 忙し く,休 日も家 を空 け る こ とが多い.母 は父 や弟 と比べ て太 って鈍感 な N君 をだ らしな く思 い,何か と干渉 し叱 りつ 母 は 怖 い, 塾 は 疲 れ け て しま う.N君 は 「 る」 と吐露 し,母親 の支配的過干渉 に よる情 緒的圧迫が認 め られ た. x年 4月 1 6日か ら 9月 8 日迄,外来 通院. 4月24日,箱庭第 1回 ( 図 1- a) 「森 の 以下,箱庭各 回のタイ トル 動物達 と狩人 」 ( は著者 に よるもので あ る) ≪ 中央 の森 の中に い る動物達 を左 下 の狩人が追 ってい る と言 う が,動物 に象徴 され る自由な本能衝動が超 自 我的 な脅威 に さらされ,封 じ込め られ てい る 表現 であ る と思 われ た.≫ 5月 1日,箱庭第 2回 ( 図 1- b) .「右半 」< 宅右半面 に道路や建物が置 か 面 のバ ス通 り れ,左右 に領域が分け られ るが,道 を左右 に 図 1-d 「 畑を掘 りおこし,種をまく夫婦」. 7 3 2 安 Oc t obe r ,1 9 8 5 Hi r os a kiMed.∫ .37 ( 4 ) 藤,他 交通 し,内界 と外界 の交流 のきざしを暗示 し てい る. 同時 に置かれた給油所 と病院は救済 願望 を示 してい ると思われた≫ 5月1 5日,箱庭第 3回 ( 図 1- C) . 「対峠 宅右側 に要塞,左 に戦車軍 を した戦 闘攻防」< 置 き,左右 に対峠均衡 した戦 闘場面 を作 る. 内的衝動が表面化 し,それを 自我が うけ とめ る とい う変化が感 じられた.≫ 5月2 9日,箱庭第 4回 ( 図 1- d) .「畑を 宅土をな らす男 掘 りお こし,種 をま く夫婦 」< 図 2-a 「 蛇,サソリ,クモのいる公園」 と女 をお き,砂 に丁寧 に 線 を 引 き, 畑 を 作 耕 され る土地」 は治療 の終結す る頃 に る. 「 ょ く現 われ るテーマ と言われてい るが,治療 に よ り未 開の土地が耕 された ことを示す と共 に,前 回の戦 闘で心 の中の攻防が一段落 し, 「 再生」 の準備段階にあるのでは と思われ, 期待が もてた.参, この後, N君 は箱庭 を作 りたが らず, 同時 に母か らチ ックが消失 した ことが語 られた. 生活場面では,母は過干渉 に気づ き,受容的 図 2-b 「円形の広場」 とな り,父は N君 と時 間を共 にす る ことで親 密 さを増 し, N君 は塾 をやめてサ ッカーのチ ームに入 る とい う変化があ った.その よ うな 外的変化 と共 に,箱庭上におけ る内的 な作業 が進み, チ ックが消退 した と考 え られ る. 症例 2 T君 , 8歳男子. x年 5月 と 8月に瞬 目のチ ックがあ り,同 年 の 2学期 に入 ると瞬 目と共 に首ふ りのチ ッ 2月初め よ り首ふ りが 目立 ち, クがお こる. 1 口元 をひね るよ うに動か した り鼻 をすす る動 作 を頻 回に示す.夜尿 も頻 回にある. 図 2-C 「海 と カ ー レ ー ス」 . 父 は子供好 きだが ,T君 を脅す よ うな対応 を し,家庭 内ではやや横暴 な面が ある.同席 面接 中に も 「 鼻 をすす った り, オネシ ョを し た ら注射だ」 とT君 を怖 が らせ , T君 に は 「・ -- していい」 と他人 に保証 を求め る口癖 が ある.威嚇的 な父親 に よる情緒的圧迫 の存 在 を思わせた. 2月2 9日か らⅩ 十 1年 2月2 5日迄,外 x年 1 来治療. 1月 5日,箱庭第 1回 ( 図 2- a) .「蛇, 図 2- 犬 の 散 歩 」 d「 道 路と 昭和 6 0 年 1 0月 弘前 医学 3 7 巻 4号 チ ック症 の箱庭療法 サ ソ リ, クモのい る公園」 く 宅家 の近 くの公園 て, 中央 の ブランコに T君 が乗 ってい る とい う場面 を作 る.公 園の周辺 には危険 な動物 で あ る蛇, サ ソ リ, クモが潜 み, T君 の周囲に ある脅威 の表現 と思われ る.≫ 1月 1 3日,箱庭第 2回 (図 2- b) .「円形 の広場 」< 宅円形 の プラレールを置 いて内外 の 領域 を画 し, 内側 には恐 竜や乗物 な ど様 々な ものが混沌 として置かれ,外側 にはお化けや 戦 いが示 され る.外 の脅威 に封 じ込 め られた 8 号 の戦い 」 . 図 2-e 「恐 竜 と鉄 人 2 自由 な内的衝動 の表現 と思 われた.≫ 1月21日,箱庭第 3回 (図 2- C). 「海 と カーレース」く 宅左右 に線 をひ き,上 にサ メと 熱帯魚,下 に レースカ ーを置 き, スタ ー トす る ところ とい う.き, 1月28日,箱庭第 4回 (図 2- d) .「道路 と犬 の散歩 」≪左右 に行 き交 う道路 に串 を走 b的 エネ/ レギ ーの流 らせ る.第 3回 と共 に,J 動, 内界 と外 界の交流 を暗示す る.≫ 2月 4 日,箱庭第 5回 ( 図 2- e). 「恐竜 図 2-f 「工事現場 」 . 8号 の戦 い」 く 宅サイボ ーグを くわ えた と鉄人2 8号 を対峠 させ,両者 が戦 ってお 恐 竜 と鉄人 2 り,それ を右上 に置か れた天使が止 め よ うと してい る ところだ と言 う. 内的衝動 と自我 と の均衡 を暗示 し,戦い を天使が救 うとい うの は,鎮魂 の願望 あ るいは治療状況 を示 してい る と思われた.夢, 2月25日,治療 当初 よ り夜尿 は消 え,前 回 以来 , チ ックも目立 た な くな り,通院 を終 え たい とい う父 と共 に来 院 す る. 箱 庭 第 6回 宅ブル ドー ザ ーや (図 2- f). 「=場現場 」 < 図 3-a 「人のいない部屋 」 . シ ョベル カ ーを置 き,土 を堀 ってい る と ころ だ と言い,建設 的 な再 生の イ メージが感 じら れた.き, 症例 3 M子, 9歳女子. X- 1年 6月 よ り左肩 を コキ ッと鳴 らした り, ピク ッと挙上 させ るチ ックが続 き,その 2月 よ 徳,肘や膝 も鳴 らす よ うに なる. 同年 1 り,「ア ー ツ」「オ ー ツ」 と叫んだ り,馬 のい ななきの よ うな大声 を発す る音声 チ ックも始 まる. 図 3-b 「泥棒 に荒 らされた家 」 . 7 3 3 73 4 安 Oc t obe r ,1 9 8 5 Hi r os a kiMed.∫ .3 7( 4) 藤,他 3歳時に父母が離婚 し,母の元で育ち,共 生的 な母子関係が うかがわれた.M子には母 を助ける良い子であらねはならない とい う構 えがあ り,母は何かにつけM子 に指示的に干 渉 してしま う面 がある. X年 1月 6日か ら 5月 1 3日迄,外来治療. 1月 7日,箱庭第 1回 ( 図 3- a). 「 人の 宅家具のみを置 き,形式的,抑 いない部屋 」く . 圧的で もの寂 しい印象を与える.茅, 2月 1 8日,箱庭第 6回 (図 3- b) .「泥棒 に荒 らされた家」く 宅家具類が倒れ,右下で犬 を砂 の中に体半分埋める.M子は家が泥棒に 入 られた ところ と述べ,家の混乱 と外的 な脅 威 を示唆す る.≫ 3月 11日,箱庭第 8回 ( 図 3- C).「森の 風景」く 宅中央 に池を作 り,内外を分ける.池 の真申に大樹 を立 て,大樹 の頂 きには鷲,池 の内側 には蛇,鰐,恐竜,サイな ど攻撃的 な 動物 を置 く. 自己の全体性 を表わす マ ンダ ラ 様 の作品であ り,内的衝動の開示 を示唆す る 図 3-C 「 森の風景」 句 詮 淘 応 #塾 盆 ー 琵冠 i t f ;: 主 L誓 L I , \ ヤ・ . . 図 3-d 「動物地獄 」. もの と思われた.≫ 3月1 8日,箱庭第 9回 ( 図 3-d) .「動物 地獄 」く 宅中央の木 の左右に動物 を向き合わせ て置 き, さらに左下に小山を作 り,そ こに 5 匹の動物 を埋め,牛 と属が体半分埋 まってい る.M子は小山を 「 動物地獄」 と呼び,動物 が呑み込 まれたのだ と言 う.動物地獄 とはM 子やその内的衝動を呑み込む否定的 な母親像 の表現 と思われた.≫ 4月 1 8日,箱庭第 1 2回 ( 図 3- e).「陸 と 宅砂 をか き出 し,残 った砂で左 に 海 の対立 」く 図 3-e 「 海 と陸の対立 」. 陸を作 り,陸の動物 と海 の中の攻撃的 な動物 との対立的 な表現 となる.≫ 4月1 5日,箱庭 の砂 をか き出 した り,砂 を まいて砂文字 を描 くことを繰 り返 して遊び, 箱庭作品は 「もう全部作 っち ゃった」 と作 り たが らな くなる.その後は毎回,主治医 とバ ドミン T lンで遊び, 5月 1 3日以後通院が中止 され る.音声 チ ックは 1月下旬 より消失,運 動性 チ ックも殆 ど目立たな くなっていた. 症例 4 K君, 5歳男子. 図 4-& 「左右 の川」. 昭和 6 0 年 1 0月 弘前 医学 37巻 4号 チ ック症 の箱庭療法 735 Ⅹ- 1年幕 よ り頭痛 を訴 え,頭 を押 さえる ことがあ り,Ⅹ年 3月初め よ り頭部 を前後 に 激 しく振 るよ うに なる. 同時に気 に入 らない ことが ある と大声 をあげ,時 に奇声 を発す る よ うになる. ひ と りっ子 で父母 との 3人暮 し, Ⅹ- 1年 4月 よ り幼椎 園に通 うが,甘 えん坊 といわれ る.母は子供時代 の怪我 に よる身体障害があ り, K君 をあま り外 に出 さない よ うに してい 図4-b 「 川」. る.父が一緒 に外 出 して も,家 の近所 に線路 や用水堰があるために 自由な遊 びを制限 し, 「 堰 にお ちれば死ぬ」 と注 意 す る こ と も多 く,活動能力 の高 まる時期 におけ る活動 の制 限が欲求不満 を来 た し, チ ックへ と身体化 し たのではないか と思われた. x年 3月23日か ら 5月 4日迄,外来治療. 3月3 0日,父 は意識 して K君 を 自由に外で 遊 ばせ るよ うにな り,首振 り と奇 声 は 減 る が,替わ って瞬 目のチ ックが出現す る. 4月 6日,箱庭第 1回 ( 図 4- a).「左右 図 5-& 「 水鳥の母 と 2羽の子 」 . 宅左右 に池 の よ うな 「川」 を作 り, 中 の川」< 央下 に家 と自動車,左 の枠 の上 に新幹線 を置 く.右側 の川で人形 を持 ちなが ら, 「この川 は段 々深 くな り人が入れは死 んで しま うか ら 怖い」 と言 う.左側 で ス ピー ドのある新幹線 が砂 の上 にお りれ ない ことは,川にまつわ る 禁止 ・恐怖 に よって内界 に こもった エネルギ ーの存在 を暗示 してい る.≫ 4月1 4日,父 に よれは,最近 の K君 は気 に 入 らない ことがあると, よ く父 の頭 を叩 くと 図 4-b) .「川」< 宅洋梨 い う.箱庭第 2回 ( 図 5-b 「三 日月湖の舟 と神社のある風景 」 . 型 の川 を作 り,その左淵に 自動車,左下 に舟 川 だ,川 におちれば死ぬ」 と新幹線 を置 き, 「 と言 う.前 回の二つ の川が癒合 した よ うに一 つ にな り,新幹線 は砂 の上 に降 り, 自動車が 水 の傍 を走 る.分割 していた内界 と外界が交 流す ると共 に,川 に対す る禁止 ・恐怖が減 っ てい るよ うに思われた.≫ 4月28日,箱庭第 3 回.< 宅砂 を こね ま わ し, 「川 だ 」 「山だ」 と言 って遊 んでい る.>, 5月 4 日,瞬 目のチ ックも消失す る.箱庭 図 5-C 「 人 のいない動物園」 . 7 3 6 安 Oc t obe r ,1 9 8 5 Hi ros a kiMe d.∫.3 7( 4) 藤,他 第 4回.≪上部 中央 の山か ら下へ川 の流れ を 作 り,水 を流 しては山を壊 し,作 りなおす こ とを繰 り返 して熱 心 に遊 んでい る.≫以後, 来 院 しな くなるが,その後 の連絡 で もチ ック は消失 していた. 4 歳女子. 症例 5 A子 ,1 X- 3年 ,小学 5年 時 よ り, 首 振 り, 瞬 き, 口を曲げ る,手 を動 かす仕草 が出現 , 同 時 に親 が弟 「ナツオ」 よ り自分 に厳 し くあた ると感 じ始 めた. X- 1年, 中 学 入 学 時 よ 図 5-d 「 森からの父の帰還」. り,「ア ッ」 「ウ ッ」 と声 を あ げ る よ うに な る.X年 4月 よ りは 「ナ ツオ,バ カナツオ, n_ ) ブタナツオ,行 ッテマ レ,死 ンデマ レ」 とか 「見 グ クネ,ノ\キダ メサ戻 ッテマ レ」 と繰 り 返 し大声 で叫び,弟 に唾 を は く こ と も加 わ り, Ⅹ年 7月には授 業 中に も叫ぶ よ うに なる ため,来 院.来 院前,両親 は反 抗的 に な って い る と思い折鑑 し, A子 は 自室 に 龍 城 し た り,家庭 内は険悪 な情況 であ り, A子 自身発 声 を抑 え るために頬部粘膜 を噛み,腫脹 が見 られた.初診時, A子 は涙 を流 して弟 との扱 図 5-e 風景構成法第 1回. われ方 の違 いにつ いて不満 を吐露 した.症状 的 には多発性 の運動性 チ ック,不 随意 な攻撃 的発語 や汚言 を含 む音声 チ ックを認 め, トゥ レ症候群 と診断 された. 2歳で小学 6年生 の弟 との 4 家族 は父母 と1 人暮 し,父母 は見合結婚 だが,父方祖 母が母 を嫌 い,母は何 か とつ ら くあた られ,金銭的 に も苦労 し, A子 の出産後 は食欲 が な く,ひ と月で乳 も出 な くな り, A子 は人工乳 で育 て られた. 1歳 2ケ月でおむつ は取れたが小学 図 5-f 「 小人の街を訪れた少女」. 5年 迄夜尿が続 いた.幼稚 園時か ら小学 2年 追,父母 の出稼 ぎに同行 し東京 で暮 したが, 帰省後友達 が少 な く,学校に仲 々な じめ なか った.小学 5年時 に担任が女性 の厳 しい教師 に な り,勉強 の ピ ッチ も早 く, この頃 よ り首 振 りな どが始 ま った. 母は父 を 「 仕事 は好 きだが,家 の ことは何 荏) 「マレ」は 「 -してしまえ」, 「ネ」は 「な い」とい う否定の意味の方言. 図 5-g 「 森 の中の会食」. 昭和 6 0 年 1 0月 弘前医学 3 7 巻 4号 チ ック症 の箱庭療法 もしない人」 と評 し, A子 は母 を 「父 に反抗 す る」 「弟はか り可愛 が る」 「自分 の ことを 分 って くれ ない」 と述べ る.母 は勝気 な性格 で A子 には きつい こともは っき りと言 う. 性格的 には陽気,凡帳面 で神経質 .お しゃ れ で茶 目っ気が あ る.A子 白身 は 「 短気で怒 りっぽい性格」 と言 う. X年 7月24日か らⅩ + 2年 3月29日迄外来 治療.ノ、ロペ リドールの少量投与 ,症状 の無 視 と受容的 な雰囲気作 りとい う家族指導 と共 図 5-h 「 森 の動物達 と狩人 」 . に,箱庭療法 を行 い,その経過 を計 32回の箱 庭 の展 開か ら 4期 に分 けた. 第 1期 ;Ⅹ年 7月か ら 8月迄.問題 の提示 の時期 . 7月30日,顎 を動か し,腕 のび くつ きが 目 立 ち, 「自分 は弟 と扱われ方 が違 う」 と訴 え 図 5- a). 「 水鳥 の母 と 2 る.箱庭第 1回 ( 羽 の子 」< 宅左下 の池 の中に 2羽 の水 鳥 を,岸 辺 に白い親鳥 を置 き,周囲 に ぐる りと線路 を 描 く.母 の愛情 をめ ぐる葛藤 を思わせ,反時 図 5-i 「 魔女が時間を止めた ところ」 . 計 回 りの汽車が今後 の無意識へ の運行 を暗示 した.き, 8月 6日,箱庭第 2回 ( 図 5- b) .「三 日 月湖 の舟 と神社 のあ る風景」< 宅中央 に三 日月 形 の湖,周辺 に塔,城,神社 を置 く.宗教 的 な作 品で あ り,湖 の中の舟は子宮 の中の胎児 を思わせ,主体性 を象徴す る塔 な どの男根的 6 ) イ メージ と共 に母 をめ ぐる依存 と自立 の葛藤 を考 え させ た.き, 箱庭終 了後, 「父 に 『くた ば って まれ,死 んで まれ』 と言われ る,弟 は 言われ ないのに」 と涙 を流 す. 図 5-j 「お化け屋敷 のお化け巡 り」 . 8月20日,箱庭第 3回 ( 図 5- C). 「人 の 」≪柵 で 6つ の囲いを作 り, 中 い ない動物 園 に動物 を入 れ る.動物 に象徴 され る内的衝動 や攻撃性 の抑圧,封 じ込 めを思わせ る.参, 1月迄.森 の中での 第 2期 ;Ⅹ年 9月か ら1 旅が展 開 され,脅威や攻撃性 の イ メージ化が な された. この時期, なお 弟 に 対 す る唾 は 普,汚言は続 き,弟 の部屋 の戸 を蹴 って壊す とい う攻撃的行為 もあ ったが, 9月21日よ り A子 自ら家 を離れて,近所 の母 の実家 で生活 図 5-k 「交通事 故 」. 7 3 7 73 8 Oc t obe r ,1 9 8 5 Hi r os a kiMe d.∫ .37( 4 ) 安 藤,他 す るよ うにな り,表情 も明 る くな った. 9月 4日,箱庭第 4回 (図 5- d) .「森か らの父 の帰還 」≪左半面 に森 を作 り,左右が 分割 され,道が右上 の家に向 う.森 に象徴 さ れ る無意識へ の旅が暗示 され,右下 の家庭 の 領域が耕 されてい る.≫ 9月1 6日,風景構成法第 1回 ( 図 5- e). ≪人 よ り大 きな居が家につ ながれ,大 きな内 l l ) 的衝動 の抑制 を思わせ る.) 9月3 0日,箱庭第 5回 ( 図 5- f) .「小人 図 5-1 「 三つ巴の戦いを止める魔女」. 宅森 の中の小人 の衝 に道 の筒 を訪れた少女」< 路が縦横 に作 られ,交通整理 され る.内面が 少 しずつ整理 され始めてい るのでは と思われ た.≫ 1 0月 7日,箱庭第 6回 ( 図 5- g) . 「森 の 宅森 の中で,前 回の少女が女の子 中の会食」< を訪れ,誕生 日のお祝いにテーブルを囲む場 面 を作 る.A子 の新たな 自己 との出会いを思 わせた.参, 1 0月2 3日,箱庭第 7回 ( 図 5- ら) .「森 の 図 5-m 動物達 と狩人」<一面 の森 の中に潜む様 々な 「 動物園」 . 動物 を,左上 の狩人 が銃 で ね ら って お り, 自由な内的衝動 を封 じ込 め る脅 威 を 示 唆 す る.≫ 1 0月28日,箱庭第 8回 ( 図 5- i) .「魔女 宅魔女が左上 の樹 の が時 間を止めた ところ」< 上で,衝 の時 間を止 めた場面 だ と言 う.時間 や動 きを止 め る魔女 とは否定的な母親像であ 7 ) り,そ して,その止 め られた時間を突 き破 る のがチ ックか もしれな い と思 え た.茅,この 頃, 自宅に戻 る と叫ぶ ことはあ ったが, T 弟 図 5-m 「 悪者の人質となった小人の救出」. に会 って もあま り腹が立たな くな った」 と語 られた. 11月 4日,箱庭第 9回 ( 図 5- j).「お化 宅右上 の門か ら †ンネ け屋敷 のお化 け巡 り」< ルを くぐると蛇, ク{,猿人,お化け, サ ソ リな どに出会 うとい うス トー リーを楽 しげに 箱庭 にす る. 自己の攻撃衝動 との出会いが戯 画化 され,表現 された もの と思われた.> 0回 ( 図 5- 良) .「交通 11月1 0日,箱庭第 1 事故」≪交通事故で道路上に倒れた怪我人 の 図 5-0 「フカの襲来 」 . 昭和 6 0年 1 0月 7巻 4号 弘前医学 3 チ ック症の箱庭療法 739 周 りに,人や救急車が集 まっている.新 しい 自我形成 のための 象 徴 的 な 『 死』 を 思 わ せ た.>, 1 1月2 6日,箱庭第 1 1回 ( 図 5- 1) .「三つ 巴の戦争 を止め る魔女」≪三つの軍隊が互い に戦い,第 7回迄は封 じ込め られていた内的 衝動が戦闘 とい う形で表現 されてい る.≫ これ らの経過中, 1 0月 9日に 自宅 が 半 焼 し,内面の変化 と共 に家の修復が共時的にな 2月初めの改築を待 って, A子は家 に され ,1 戻 った. 図 5-p 風景構成法第 2回. 2月か らⅩ+ 1年 5月迄.な 第 3期 ;Ⅹ年 1 ごやかな遊びのテーマが続 いた後, 自我 とエ が作 られ,攻撃性 の表現 は 見 られ な くな っ ネルギーの均衡 を思わせ る,対峠 した戦いが た. 8月か らは攻撃的発語 も消え,一時ノ、ミ 表現 され る. 自宅 に戻 った A子は弟 の前で も ングのよ うな発声があったが, 1 1月には症状 叫ぶ ことは少な く,母に注意 され ると 「 バカ は全 て消失 した. フエ コ ( 忠)死 ンデマ レ」 な どと小声 で言 う 1 2月23日,風景構成法第 3回.≪内的衝動 ち,唾は きゃ運動性 チ ックは 目立たな くな っ を象徴す ると思われ る動物は兎で人 と並び, た. 自我に親 しみのあるものにな っている.参, X+ 1年 2月1 0日, 箱 庭 第 1 6回 ( 図 5m).「動物園」 く 宅マ ンダ ラ様 に動物の柵囲い Ⅹ+ 2年 4月 よ り, A子は高校 に進学 し, その後 も経過は良好 である. を配置 し,中央 の池の中の赤 い水鳥が A子だ 本例 をまとめ ると, Kの母親は勝気 でやや とい う.母鳥が消 え,母か らの心理的 自立 を 攻撃的な面のある人だが,姑 に嫌われ,父へ 思わせた.参, の依存 も阻止 され,母の愛情欲求は A子 にお 3月1 7日,箱庭第 1 8回 ( 図 5- m).「悪者 きか えられ,拘束 と干渉 とい う形の未分化な 宅左右 に人が対 の人質 とな った小人の救出」 < 母子結合 を生んだ と思われ る.そ して, A子 峠 し,人質 となった右の小人 を救出す る戦い は自立 を方向づけ られ る前思春期 において情 が始 まるとい う.≫ 5月1 3日,箱庭第2 2回 ( 図 5- 0).「フカ 緒的緊張 を生 じ,本来は 自我支酉己の もとに表 8 ) 現 され るべ き内的衝動や攻撃性がチ ックや汚 宅海 と陸で左右が分け られ,右の海 の襲来 」く 言,加虐的態度 として病態化 した と推測 され で人が フカに襲われ,左 の陸か ら助けに出 る る.弟 に対す る攻撃 もA子が母か ら分離 して 所 とい う.第1 8回 と共 に左右 の対峠 した戦い い く際の不安を背景 にしてい る故の もの と思 であ り,攻撃性や内的衝動に対す る自我の均 われた.治療経過 をふ り返 ると,箱庭表現 に 衝 を思わせ る.≫ おいて,内的衝動 を抑圧 した母 と未分離な自 4月1 4日,風景構成法第 2回 (図 5-p). ≪女の子が道 で花 を見つけ,動物はパ ピョン 我が,未分化であった 自らの内的衝動や攻撃 性 と出会い,対峠 し, 自律性や主体性 を獲得 とい う犬で,なわ とびをして自由に遊 んでい してい く過程が,症状 の消 失 と共 に 見 て と る.規制が とれ,動 きのある自由な内的衝動 れ,風景構成法の変化 もそれを傍証す るもの を暗示 した.≫ と思われた. 第 4期 ;Ⅹ+ 1年 6月 よ りⅩ + 2年 3月 迄.公園や街 をテーマに した集団場面の箱庭 7 4 0 Oc t obe r ,1 9 8 5 .37 ( 4) Hi r os a kiMe d.∫ 安 藤,他 3. 考 察 9 ) てい くのを 目のあた りに した と述 べ て い る が,今 回のわれわれの経験 において も,箱庭 チ ック症 の箱庭療法 について, トゥレ症候 とい う 「自由に して保護 された空間」 におけ 群 1例 を含む 5例 のチ ック症児 の治療経過か るイ メージ表現 に よって,チ ック症 とい うJ b ら,次 に示す よ うな箱庭 イ メージの変遷が見 の停滞状態か ら,今回報告 した イ メージの変 て とれ るのではないか と思われ る. 遷 の よ うな新 しい発達 の道が育 て られ,心 の ( 1 ) 問題 の提示 (脅威 ・禁止 の存在, 自由 なエネル ギーや攻撃性 の封 じ込 め). ( 2 ) 左右や内外の分割 と流動. 変容がな された と考 え られ,箱庭療法がチ ッ ク症治療 に とって一つ の有用な治療法 である ことが確認 された. ( 3) 伯仲 した 「 戦い」 な どの対峠 ・均衡. さて,箱庭像 を規定す る変数 として, と り ( 4) 「 耕 し」 「 工事」 のテーマ, あるいは あえず治療者,治療 の場,玩具 の種類 が ある 作 った り壊 した りの砂遊び. と思われ るが,今 回の報告 では これ らに違 い 1 ) ,( 2) が圧縮 され, 症例 4では図 4- aに( が あ って も ( 症例 1, 2, 5は安藤,症例 4 ( 3) を欠 き,症例 5では( 4) を欠 くも,症例 1, は小井 田,症例 3は小井田 ・熊谷が治療 に当 2, 3は( 1 ) か ら( 4) の過程 を 順 に 経 過 し て い り,症例 1, 2, 5,症例 3,症例 4は各 々 る. そ して,以上の過程 は次 の よ うに読みか え ることがで きるのではないか と思われ る.つ ま り,箱庭 とい う創造的なイ メージ表現 の場 において,第一 にチ ックとい う病態 を生んだ 施設が異 なる),共通的な法則性が見て とれ, 2 ) 1 0 ) さらに文献的に比較 して も,大谷,山中,亀 4 ) 井 らの報告 におけ る経過 と類似 してお り, チ ック症児 に特有 な もの と思われ る. 1 2 ) しか し,米倉 の報告 との比較 では( 1 ) ( 2 ) の段 的衝動や攻撃性が表現 され る.次 に内界 と外 階においては類似 してい るものの,その他は 1 ) 3 ) 異 な り,青木,大場 らの報告 との比較 ではか 界 の分割 のテーマが表現 され, さらに封 じ込 な り様相 を異 に してお り,今 回の立論 はチ ッ め られていたエネル ギーに流動が起 こる.そ ク症 の全 てに言及 しえるものではない と考 え して,伯仲 した 「戦い」 とい う形 でそのエネ られ る. また,われわれの治療例 のみにおい ル ギーと自我 の均衡 に至 り,続 いて 「 耕 し」 て も,夜尿 を伴 う心因性頭痛 の男児例 で同様 「工事」 のテーマが再生を暗示す るよ うに表 のイ メージの変遷 を認 めてお り,抑圧 された 現 され, あるいは死 と再生 の儀式 とも思われ 内的衝動や攻撃性 を有す る症例 の発達的統合 る作 った り壊 した りの砂遊びが行われ,箱庭 のあ り方 の一つ と推測 もできるが,他の疾患 を作 る必要が な くな り終結 に至 るとい う共通 との比較 について も今後 の課題 と思われ る. 脅威や禁止 と,それ に よ り封 じ込め られた内 した変遷 である. 最後 に, イ メージ変遷 についての法則定立 要約すれば,箱庭表現 に よ り,患児 は脅威 的研究 の意義 に触れたい.治療者が治療 の展 に さらされ抑圧 され ていた内的衝動や攻撃性 開や推移 を知 る意味 で,疾患 の治療過程 にお と出会い,統合 し, 自律性 を獲得 してい くと け る里程標 を心得てい ることは有益 であると 言 うこともできよ う. 思われ る.今回のわれわれの報告 もその よ う さらに付け加 える と,息児が治療 中,次第 な視点 に立つ ゆえの ものであ り, ここに示 し に体 を動かす ことに関心を示 し, スポ ーツを たチ ック症 の箱庭療法におけ るイ メージ変遷 好 んです るよ うになることが認 め られたが, の法則性 は, チ ック症治療 を進め る上 での一 エネル ギーのまとま った運動へ の昇華 とい う つ の里程標 にな りうる と考 え られ る. た だ 観点か らみて興味深い ことである. し, 目安 は 目安 にす ぎないのであ り, 目安 を 山中はチ ック症児が箱庭 を置 くだけで治 っ もちなが らも表面的 な理解 に とどまらず,で 昭和 60年 1 0月 弘前医学 3 7巻 4号 チ ック症の箱庭療法 741 き うるか ぎ り先 入観 な しに息児 の世界 を共有 す るとい う二重 の見当識が必要 な ことは言 う まで もない ことであろ う. また,一般 に,表現 され るイ メージの変遷 過程 は患児 の病理性 のみな らず, 自己治癒力 あるいは健康 な潜在力,治療者が表現 を受け とめ る程度 な どの治療状況,その他 の種 々の 条件 に依拠す るもの と思われ るが, イ メージ の変遷過程 に関す る法則定立的な見地か らの 研 究 は諸精神疾患 の治癒 ・寛解過程 をめ ぐる 精神病理学 の知識 を豊かに してい くのではな いか と考 える. 4. ま と め トゥレ症候; 群 を含む,チ ック症児 の箱庭 を 1 ) 用いた治療経験か ら,その箱庭 イ メージに( 問題 の提示 ( 脅威 ・禁示 の存在, 自由なェネ ルギーや攻撃性 の封 じ込 め), ( 2) 左右 や 内外 の分割 と交流 ,( 3) 伯仲 した 「 戦い」 な どの対 峠 ・均衡 ,( 4)「 耕 し」 「工事」 の表現, ある いは作 った り壊 した りの砂遊び とい う 4段階 のテーマの変遷 が見て とれたので, 5例 の経 過報告 と共 に箱庭像 を提示,考察 し,治療 の 過程 を推 しはか る里程標 としての意義 につい て も触れた. 稿 を終 えるにあた り,ご校 閲いた だ いた弘前大学 佐藤時治郎教授,症例 5につ きご指導いただいた京 都大学 山中康裕助教投,症例 の診療 に際 して ご配慮 いただいた布施病院布施清一院長,三川博副院長に 4回東北児 深謝いた します.なお,本稿の要 旨は第 1 8年) で 発 表 し 童精神医学懇話会 ( 仙台市,昭和 5 た. 文 献 1) 青木 しのぶ :事例 1,闇の国の主,蛇 の変容. 河合隼雄 ・山中康裕編 ,箱庭療法研究 1:ト 22,誠信書房 ,1 9 82. 2)大谷不二雄 :事例 3,チ ック症,小学 6年生男 78,誠信書 子.河合隼雄著 「 箱庭療法 」:71 房 ,1 96 9. 3)大場 登,曽根岡祥子,渡辺弓子 : "弔い〝 ィ メ-ジを箱庭 に表現 した小児神 経 症 者 の 心 理療法過程 .芸術療法 ,8:3950,1 9 77. 4)亀井敏彦 ,山内惟光,西村洲衛男 :チ ック症 の 遊戯療法場面 における表現 の多 様 性 に つ い 72,1 9 80. て.芸術療法 ,ll:635)河合隼雄 :箱庭療法 の発展.河合隼雄 ・山中康 裕編,箱庭療法研究 1:Vi i ⅩVi i i ,誠信書房, 1 9 82. 6)西村洲衛男 :箱庭療法 を とりいれた遊戯療法 . 遊戯療法 」 ( 講座心 佐藤修策 ・山下勲編 . 「 81 201,福村 出版 ,1 9 78. 理療法 2):1 ,浪花博 ・岡田康伸訳 :子 ども 7) フォーダ ム,M. 9 76. の成長 とイメージ.誠信書房 ,1 8)森野礼- :泥 まみれの征服 【山中論文への コメ ン ト】.臨床心理 ケース研究 2:9 8-1 02,誠 979. 信書房 ,1 9) 山中康裕 :精神療法 としての箱庭療法.臨床精 648,1 979. 神医学 ,8:6391 0) 山中康裕 :多彩な症状移動 を呈 した 神 経 症 児 の箱庭療法 に よる象徴的心像変 遷 と治 癒 過 7,誠信書 程. 臨嵐 山理 ケース研究 2:83-9 房 ,1 979. ll ) 山中康裕 : 「風景構成法」事始 め. 山中康裕 編 ,H・NAKAI風景構成法 :1 -36,岩崎学 術出版社 ,1 98 4. 1 2)米倉五郎 :遺糞症,夜尿症,チ ック症 を もつ小 児神経症児の心理療法過程一箱庭,粘土, ゲ ームを介 して-. 臨床心理 ケース研究 4: 1 4 7-1 6 2,誠信書房 ,1 9 82.