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Hirosaki University Repository for Academic Resources
Title
チック症の箱庭療法 : イメージ変遷の法則性につい
て
Author(s)
安藤, 嘉朗, 熊谷, 輝, 小井田, 潤一
Citation
弘前医学. 37(4), 1985, p.730‐741
Issue Date
URL
1985-10
http://hdl.handle.net/10129/1716
Rights
Text version
publisher
http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/
弘
前
医 学
37:730-741
,1
985
チ ック症 の箱庭療法
- イ メージ変遷の法則性について一
安
藤
嘉
熊
朗*
谷
輝 **
小 井 田
潤
一 ***
チ ック症児 5例の箱庭療法の過程を報告 し, 法則定立的な見地か ら検討 した. 従来の箱庭療法の報告
は症例記述的方法によるものであるが, 5症例の箱庭療法の経過を法則定立的に見ると, 治療過程における
箱庭 イメージの変遷に,バ リエーシ ョンはあるものの次のような共通 した段階が見て とれた.
1) 問題の提示 (
脅威 ・禁止の存在, 自由なェネルギーや攻撃性の封 じ込めの表現).
2)左右や内外の分割 と流動.
3)伯仲 した 「革い 」な どの対峠 ・均衡.
4) 「耕 し」 「工事」の表現,あるいは作 った り壊 した りの砂遊び.
そ して, このよ うな箱庭 イメージの変遷 における法則性はチ ック症治療の一つの里程標にな りうる と思 わ
れる.
さらに, これ らの展開は, 箱庭表現に より息児の 自我が, 脅威にさらされ抑圧 されていた内的衝動や攻撃
性 と出会い,自律性を獲得 してい く過程である と考え られた.
弘前 医学 3
7:7
30-741
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985
抄最
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弘前大学 医学部神経精神 医学教室 (
主任
時治郎教授)
*現在 ,大館 市立総合病院神経精神科
**現在 ,八戸市民病院神経精神科
***現在,北陽病院
昭和 6
0年 3月 1日受付
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昭和 6
0
年 1
0月
弘前医学 3
7巻 4号
1. は
チ ック症 の箱庭療法
じ め
7
31
に
箱庭療法 の症例 記 述 的 方 法 (
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hod) か らの報告 は数多いが, 治 療 の 里
程標 を作 るよ うな 法 則 定 立 的 方 法 (
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hod) か らの研究 は, 臨 床 的 有 用
5
)
性 の検討 を含 めて,今後 の課題 と思 われ る.
また, チ ック症 に対 す る箱庭療法 に よる症例
報告 も比較 的多いが,その経過 につ いての比
較検討 は なされてい ない と思 われ る. このた
図 1-8
「
森の動物達 と狩人 」.
び,われわれは トゥレ症候群 を含む チ ック症
児 5例 の箱庭療法 を経験 し, その治療 経過 に
守
,
.
同
甘
仁
B
性
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甘
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胆
1
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おけ る箱庭 イ メージの変遷 に共通性が見 て と
れたので,症例経過 と共 に箱庭像 を提示 し,
.
若干 の考察 を加 えて報告 す る.
2. 症 例 報 告
症例 l N君 , 9歳男子.
X- 2年,妹 誕生時 に両眼険 を しはだたせ
るチ ックが数週 間続 いた.X年 1月 よ り再 び
図 1-b
「
右半面のバ ス通 り」.
図 1-C
「対峠 した戦闘攻防」.
瞬 目のチ ックがお こ り, 3月末 には瞬 目や眉
間を しかめた り,右顔面がひ きつ るよ うなチ
ックが 目立つ よ うになる.
父 は甲子 園に出場 した こともあ るスポ ーツ
マ ンだが仕事 が 忙し く,休 日も家 を空 け る こ
とが多い.母 は父 や弟 と比べ て太 って鈍感 な
N君 をだ らしな く思 い,何か と干渉 し叱 りつ
母 は 怖 い, 塾 は 疲 れ
け て しま う.N君 は 「
る」 と吐露 し,母親 の支配的過干渉 に よる情
緒的圧迫が認 め られ た.
x年 4月 1
6日か ら 9月 8 日迄,外来 通院.
4月24日,箱庭第 1回 (
図 1- a) 「森 の
以下,箱庭各 回のタイ トル
動物達 と狩人 」 (
は著者 に よるもので あ る) ≪ 中央 の森 の中に
い る動物達 を左 下 の狩人が追 ってい る と言 う
が,動物 に象徴 され る自由な本能衝動が超 自
我的 な脅威 に さらされ,封 じ込め られ てい る
表現 であ る と思 われ た.≫
5月 1日,箱庭第 2回 (
図 1- b)
.「右半
」<
宅右半面 に道路や建物が置 か
面 のバ ス通 り
れ,左右 に領域が分け られ るが,道 を左右 に
図 1-d
「
畑を掘 りおこし,種をまく夫婦」.
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藤,他
交通 し,内界 と外界 の交流 のきざしを暗示 し
てい る. 同時 に置かれた給油所 と病院は救済
願望 を示 してい ると思われた≫
5月1
5日,箱庭第 3回 (
図 1- C)
. 「対峠
宅右側 に要塞,左 に戦車軍 を
した戦 闘攻防」<
置 き,左右 に対峠均衡 した戦 闘場面 を作 る.
内的衝動が表面化 し,それを 自我が うけ とめ
る とい う変化が感 じられた.≫
5月2
9日,箱庭第 4回 (
図 1- d)
.「畑を
宅土をな らす男
掘 りお こし,種 をま く夫婦 」<
図 2-a
「
蛇,サソリ,クモのいる公園」
と女 をお き,砂 に丁寧 に 線 を 引 き, 畑 を 作
耕 され る土地」 は治療 の終結す る頃 に
る. 「
ょ く現 われ るテーマ と言われてい るが,治療
に よ り未 開の土地が耕 された ことを示す と共
に,前 回の戦 闘で心 の中の攻防が一段落 し,
「
再生」 の準備段階にあるのでは と思われ,
期待が もてた.参,
この後, N君 は箱庭 を作 りたが らず, 同時
に母か らチ ックが消失 した ことが語 られた.
生活場面では,母は過干渉 に気づ き,受容的
図 2-b
「円形の広場」
とな り,父は N君 と時 間を共 にす る ことで親
密 さを増 し, N君 は塾 をやめてサ ッカーのチ
ームに入 る とい う変化があ った.その よ うな
外的変化 と共 に,箱庭上におけ る内的 な作業
が進み, チ ックが消退 した と考 え られ る.
症例 2 T君 , 8歳男子.
x年 5月 と 8月に瞬 目のチ ックがあ り,同
年 の 2学期 に入 ると瞬 目と共 に首ふ りのチ ッ
2月初め よ り首ふ りが 目立 ち,
クがお こる. 1
口元 をひね るよ うに動か した り鼻 をすす る動
作 を頻 回に示す.夜尿 も頻 回にある.
図 2-C
「海 と カ ー レ ー ス」 .
父 は子供好 きだが ,T君 を脅す よ うな対応
を し,家庭 内ではやや横暴 な面が ある.同席
面接 中に も 「
鼻 をすす った り, オネシ ョを し
た ら注射だ」 とT君 を怖 が らせ , T君 に は
「・
-- していい」 と他人 に保証 を求め る口癖
が ある.威嚇的 な父親 に よる情緒的圧迫 の存
在 を思わせた.
2月2
9日か らⅩ 十 1年 2月2
5日迄,外
x年 1
来治療.
1月 5日,箱庭第 1回 (
図 2- a)
.「蛇,
図
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犬
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歩
」
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道
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昭和 6
0
年 1
0月
弘前 医学 3
7
巻 4号
チ ック症 の箱庭療法
サ ソ リ, クモのい る公園」 く
宅家 の近 くの公園
て, 中央 の ブランコに T君 が乗 ってい る とい
う場面 を作 る.公 園の周辺 には危険 な動物 で
あ る蛇, サ ソ リ, クモが潜 み, T君 の周囲に
ある脅威 の表現 と思われ る.≫
1月 1
3日,箱庭第 2回 (図 2- b)
.「円形
の広場 」<
宅円形 の プラレールを置 いて内外 の
領域 を画 し, 内側 には恐 竜や乗物 な ど様 々な
ものが混沌 として置かれ,外側 にはお化けや
戦 いが示 され る.外 の脅威 に封 じ込 め られた
8
号 の戦い 」 .
図 2-e 「恐 竜 と鉄 人 2
自由 な内的衝動 の表現 と思 われた.≫
1月21日,箱庭第 3回 (図 2- C). 「海 と
カーレース」く
宅左右 に線 をひ き,上 にサ メと
熱帯魚,下 に レースカ ーを置 き, スタ ー トす
る ところ とい う.き,
1月28日,箱庭第 4回 (図 2- d)
.「道路
と犬 の散歩 」≪左右 に行 き交 う道路 に串 を走
b的 エネ/
レギ ーの流
らせ る.第 3回 と共 に,J
動, 内界 と外 界の交流 を暗示す る.≫
2月 4 日,箱庭第 5回 (
図 2- e). 「恐竜
図
2-f 「工事現場 」 .
8号 の戦 い」 く
宅サイボ ーグを くわ えた
と鉄人2
8号 を対峠 させ,両者 が戦 ってお
恐 竜 と鉄人 2
り,それ を右上 に置か れた天使が止 め よ うと
してい る ところだ と言 う. 内的衝動 と自我 と
の均衡 を暗示 し,戦い を天使が救 うとい うの
は,鎮魂 の願望 あ るいは治療状況 を示 してい
る と思われた.夢,
2月25日,治療 当初 よ り夜尿 は消 え,前 回
以来 , チ ックも目立 た な くな り,通院 を終 え
たい とい う父 と共 に来 院 す る. 箱 庭 第 6回
宅ブル ドー ザ ーや
(図 2- f). 「=場現場 」 <
図
3-a
「人のいない部屋 」 .
シ ョベル カ ーを置 き,土 を堀 ってい る と ころ
だ と言い,建設 的 な再 生の イ メージが感 じら
れた.き,
症例 3 M子, 9歳女子.
X- 1年 6月 よ り左肩 を コキ ッと鳴 らした
り, ピク ッと挙上 させ るチ ックが続 き,その
2月 よ
徳,肘や膝 も鳴 らす よ うに なる. 同年 1
り,「ア ー ツ」「オ ー ツ」 と叫んだ り,馬 のい
ななきの よ うな大声 を発す る音声 チ ックも始
まる.
図 3-b
「泥棒 に荒 らされた家 」 .
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3歳時に父母が離婚 し,母の元で育ち,共
生的 な母子関係が うかがわれた.M子には母
を助ける良い子であらねはならない とい う構
えがあ り,母は何かにつけM子 に指示的に干
渉 してしま う面 がある.
X年 1月 6日か ら 5月 1
3日迄,外来治療.
1月 7日,箱庭第 1回 (
図 3- a). 「
人の
宅家具のみを置 き,形式的,抑
いない部屋 」く
.
圧的で もの寂 しい印象を与える.茅,
2月 1
8日,箱庭第 6回 (図 3- b)
.「泥棒
に荒 らされた家」く
宅家具類が倒れ,右下で犬
を砂 の中に体半分埋める.M子は家が泥棒に
入 られた ところ と述べ,家の混乱 と外的 な脅
威 を示唆す る.≫
3月 11日,箱庭第 8回 (
図 3- C).「森の
風景」く
宅中央 に池を作 り,内外を分ける.池
の真申に大樹 を立 て,大樹 の頂 きには鷲,池
の内側 には蛇,鰐,恐竜,サイな ど攻撃的 な
動物 を置 く. 自己の全体性 を表わす マ ンダ ラ
様 の作品であ り,内的衝動の開示 を示唆す る
図 3-C
「
森の風景」
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主
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.
図 3-d
「動物地獄 」.
もの と思われた.≫
3月1
8日,箱庭第 9回 (
図 3-d)
.「動物
地獄 」く
宅中央の木 の左右に動物 を向き合わせ
て置 き, さらに左下に小山を作 り,そ こに 5
匹の動物 を埋め,牛 と属が体半分埋 まってい
る.M子は小山を 「
動物地獄」 と呼び,動物
が呑み込 まれたのだ と言 う.動物地獄 とはM
子やその内的衝動を呑み込む否定的 な母親像
の表現 と思われた.≫
4月 1
8日,箱庭第 1
2回 (
図 3- e).「陸 と
宅砂 をか き出 し,残 った砂で左 に
海 の対立 」く
図 3-e
「
海 と陸の対立 」.
陸を作 り,陸の動物 と海 の中の攻撃的 な動物
との対立的 な表現 となる.≫
4月1
5日,箱庭 の砂 をか き出 した り,砂 を
まいて砂文字 を描 くことを繰 り返 して遊び,
箱庭作品は 「もう全部作 っち ゃった」 と作 り
たが らな くなる.その後は毎回,主治医 とバ
ドミン T
lンで遊び, 5月 1
3日以後通院が中止
され る.音声 チ ックは 1月下旬 より消失,運
動性 チ ックも殆 ど目立たな くなっていた.
症例 4 K君, 5歳男子.
図 4-&
「左右 の川」.
昭和 6
0
年 1
0月
弘前 医学 37巻 4号
チ ック症 の箱庭療法
735
Ⅹ- 1年幕 よ り頭痛 を訴 え,頭 を押 さえる
ことがあ り,Ⅹ年 3月初め よ り頭部 を前後 に
激 しく振 るよ うに なる. 同時に気 に入 らない
ことが ある と大声 をあげ,時 に奇声 を発す る
よ うになる.
ひ と りっ子 で父母 との 3人暮 し, Ⅹ- 1年
4月 よ り幼椎 園に通 うが,甘 えん坊 といわれ
る.母は子供時代 の怪我 に よる身体障害があ
り, K君 をあま り外 に出 さない よ うに してい
図4-b 「
川」.
る.父が一緒 に外 出 して も,家 の近所 に線路
や用水堰があるために 自由な遊 びを制限 し,
「
堰 にお ちれば死ぬ」 と注 意 す る こ と も多
く,活動能力 の高 まる時期 におけ る活動 の制
限が欲求不満 を来 た し, チ ックへ と身体化 し
たのではないか と思われた.
x年 3月23日か ら 5月 4日迄,外来治療.
3月3
0日,父 は意識 して K君 を 自由に外で
遊 ばせ るよ うにな り,首振 り と奇 声 は 減 る
が,替わ って瞬 目のチ ックが出現す る.
4月 6日,箱庭第 1回 (
図 4- a).「左右
図 5-&
「
水鳥の母 と 2羽の子 」 .
宅左右 に池 の よ うな 「川」 を作 り, 中
の川」<
央下 に家 と自動車,左 の枠 の上 に新幹線 を置
く.右側 の川で人形 を持 ちなが ら, 「この川
は段 々深 くな り人が入れは死 んで しま うか ら
怖い」 と言 う.左側 で ス ピー ドのある新幹線
が砂 の上 にお りれ ない ことは,川にまつわ る
禁止 ・恐怖 に よって内界 に こもった エネルギ
ーの存在 を暗示 してい る.≫
4月1
4日,父 に よれは,最近 の K君 は気 に
入 らない ことがあると, よ く父 の頭 を叩 くと
図 4-b)
.「川」<
宅洋梨
い う.箱庭第 2回 (
図 5-b
「三 日月湖の舟 と神社のある風景 」 .
型 の川 を作 り,その左淵に 自動車,左下 に舟
川 だ,川 におちれば死ぬ」
と新幹線 を置 き, 「
と言 う.前 回の二つ の川が癒合 した よ うに一
つ にな り,新幹線 は砂 の上 に降 り, 自動車が
水 の傍 を走 る.分割 していた内界 と外界が交
流す ると共 に,川 に対す る禁止 ・恐怖が減 っ
てい るよ うに思われた.≫
4月28日,箱庭第 3 回.<
宅砂 を こね ま わ
し, 「川 だ 」 「山だ」 と言 って遊 んでい る.>,
5月 4 日,瞬 目のチ ックも消失す る.箱庭
図 5-C
「
人 のいない動物園」 .
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7(
4)
藤,他
第 4回.≪上部 中央 の山か ら下へ川 の流れ を
作 り,水 を流 しては山を壊 し,作 りなおす こ
とを繰 り返 して熱 心 に遊 んでい る.≫以後,
来 院 しな くなるが,その後 の連絡 で もチ ック
は消失 していた.
4
歳女子.
症例 5 A子 ,1
X- 3年 ,小学 5年 時 よ り, 首 振 り, 瞬
き, 口を曲げ る,手 を動 かす仕草 が出現 , 同
時 に親 が弟 「ナツオ」 よ り自分 に厳 し くあた
ると感 じ始 めた. X- 1年, 中 学 入 学 時 よ
図 5-d
「
森からの父の帰還」.
り,「ア ッ」 「ウ ッ」 と声 を あ げ る よ うに な
る.X年 4月 よ りは 「ナ ツオ,バ カナツオ,
n_
)
ブタナツオ,行 ッテマ レ,死 ンデマ レ」 とか
「見 グ クネ,ノ\キダ メサ戻 ッテマ レ」 と繰 り
返 し大声 で叫び,弟 に唾 を は く こ と も加 わ
り, Ⅹ年 7月には授 業 中に も叫ぶ よ うに なる
ため,来 院.来 院前,両親 は反 抗的 に な って
い る と思い折鑑 し, A子 は 自室 に 龍 城 し た
り,家庭 内は険悪 な情況 であ り, A子 自身発
声 を抑 え るために頬部粘膜 を噛み,腫脹 が見
られた.初診時, A子 は涙 を流 して弟 との扱
図 5-e
風景構成法第 1回.
われ方 の違 いにつ いて不満 を吐露 した.症状
的 には多発性 の運動性 チ ック,不 随意 な攻撃
的発語 や汚言 を含 む音声 チ ックを認 め, トゥ
レ症候群 と診断 された.
2歳で小学 6年生 の弟 との 4
家族 は父母 と1
人暮 し,父母 は見合結婚 だが,父方祖 母が母
を嫌 い,母は何 か とつ ら くあた られ,金銭的
に も苦労 し, A子 の出産後 は食欲 が な く,ひ
と月で乳 も出 な くな り, A子 は人工乳 で育 て
られた. 1歳 2ケ月でおむつ は取れたが小学
図 5-f 「
小人の街を訪れた少女」.
5年 迄夜尿が続 いた.幼稚 園時か ら小学 2年
追,父母 の出稼 ぎに同行 し東京 で暮 したが,
帰省後友達 が少 な く,学校に仲 々な じめ なか
った.小学 5年時 に担任が女性 の厳 しい教師
に な り,勉強 の ピ ッチ も早 く, この頃 よ り首
振 りな どが始 ま った.
母は父 を 「
仕事 は好 きだが,家 の ことは何
荏) 「マレ」は 「
-してしまえ」, 「ネ」は 「な
い」とい う否定の意味の方言.
図 5-g
「
森 の中の会食」.
昭和 6
0
年 1
0月
弘前医学 3
7
巻 4号
チ ック症 の箱庭療法
もしない人」 と評 し, A子 は母 を 「父 に反抗
す る」 「弟はか り可愛 が る」 「自分 の ことを
分 って くれ ない」 と述べ る.母 は勝気 な性格
で A子 には きつい こともは っき りと言 う.
性格的 には陽気,凡帳面 で神経質 .お しゃ
れ で茶 目っ気が あ る.A子 白身 は 「
短気で怒
りっぽい性格」 と言 う.
X年 7月24日か らⅩ + 2年 3月29日迄外来
治療.ノ、ロペ リドールの少量投与 ,症状 の無
視 と受容的 な雰囲気作 りとい う家族指導 と共
図 5-h
「
森 の動物達 と狩人 」 .
に,箱庭療法 を行 い,その経過 を計 32回の箱
庭 の展 開か ら 4期 に分 けた.
第 1期 ;Ⅹ年 7月か ら 8月迄.問題 の提示
の時期 .
7月30日,顎 を動か し,腕 のび くつ きが 目
立 ち, 「自分 は弟 と扱われ方 が違 う」 と訴 え
図 5- a). 「
水鳥 の母 と 2
る.箱庭第 1回 (
羽 の子
」<
宅左下 の池 の中に 2羽 の水 鳥 を,岸
辺 に白い親鳥 を置 き,周囲 に ぐる りと線路 を
描 く.母 の愛情 をめ ぐる葛藤 を思わせ,反時
図 5-i
「
魔女が時間を止めた ところ」 .
計 回 りの汽車が今後 の無意識へ の運行 を暗示
した.き,
8月 6日,箱庭第 2回 (
図 5- b)
.「三 日
月湖 の舟 と神社 のあ る風景」<
宅中央 に三 日月
形 の湖,周辺 に塔,城,神社 を置 く.宗教 的
な作 品で あ り,湖 の中の舟は子宮 の中の胎児
を思わせ,主体性 を象徴す る塔 な どの男根的
6
)
イ メージ と共 に母 をめ ぐる依存 と自立 の葛藤
を考 え させ た.き,
箱庭終 了後, 「父 に 『くた
ば って まれ,死 んで まれ』 と言われ る,弟 は
言われ ないのに」 と涙 を流 す.
図 5-j
「お化け屋敷 のお化け巡 り」 .
8月20日,箱庭第 3回 (
図 5- C). 「人 の
」≪柵 で 6つ の囲いを作 り, 中
い ない動物 園
に動物 を入 れ る.動物 に象徴 され る内的衝動
や攻撃性 の抑圧,封 じ込 めを思わせ る.参,
1月迄.森 の中での
第 2期 ;Ⅹ年 9月か ら1
旅が展 開 され,脅威や攻撃性 の イ メージ化が
な された. この時期, なお 弟 に 対 す る唾 は
普,汚言は続 き,弟 の部屋 の戸 を蹴 って壊す
とい う攻撃的行為 もあ ったが, 9月21日よ り
A子 自ら家 を離れて,近所 の母 の実家 で生活
図 5-k
「交通事 故 」.
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3
7
73
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,1
9
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5
Hi
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kiMe
d.∫
.37(
4
)
安 藤,他
す るよ うにな り,表情 も明 る くな った.
9月 4日,箱庭第 4回 (図 5- d)
.「森か
らの父 の帰還 」≪左半面 に森 を作 り,左右が
分割 され,道が右上 の家に向 う.森 に象徴 さ
れ る無意識へ の旅が暗示 され,右下 の家庭 の
領域が耕 されてい る.≫
9月1
6日,風景構成法第 1回 (
図 5- e).
≪人 よ り大 きな居が家につ ながれ,大 きな内
l
l
)
的衝動 の抑制 を思わせ る.)
9月3
0日,箱庭第 5回 (
図 5- f)
.「小人
図 5-1
「
三つ巴の戦いを止める魔女」.
宅森 の中の小人 の衝 に道
の筒 を訪れた少女」<
路が縦横 に作 られ,交通整理 され る.内面が
少 しずつ整理 され始めてい るのでは と思われ
た.≫
1
0月 7日,箱庭第 6回 (
図 5- g)
. 「森 の
宅森 の中で,前 回の少女が女の子
中の会食」<
を訪れ,誕生 日のお祝いにテーブルを囲む場
面 を作 る.A子 の新たな 自己 との出会いを思
わせた.参,
1
0月2
3日,箱庭第 7回 (
図 5- ら)
.「森 の
図 5-m
動物達 と狩人」<一面 の森 の中に潜む様 々な
「
動物園」 .
動物 を,左上 の狩人 が銃 で ね ら って お り,
自由な内的衝動 を封 じ込 め る脅 威 を 示 唆 す
る.≫
1
0月28日,箱庭第 8回 (
図 5- i)
.「魔女
宅魔女が左上 の樹 の
が時 間を止めた ところ」<
上で,衝 の時 間を止 めた場面 だ と言 う.時間
や動 きを止 め る魔女 とは否定的な母親像であ
7
)
り,そ して,その止 め られた時間を突 き破 る
のがチ ックか もしれな い と思 え た.茅,この
頃, 自宅に戻 る と叫ぶ ことはあ ったが, T
弟
図 5-m
「
悪者の人質となった小人の救出」.
に会 って もあま り腹が立たな くな った」 と語
られた.
11月 4日,箱庭第 9回 (
図 5- j).「お化
宅右上 の門か ら †ンネ
け屋敷 のお化 け巡 り」<
ルを くぐると蛇, ク{,猿人,お化け, サ ソ
リな どに出会 うとい うス トー リーを楽 しげに
箱庭 にす る. 自己の攻撃衝動 との出会いが戯
画化 され,表現 された もの と思われた.>
0回 (
図 5- 良)
.「交通
11月1
0日,箱庭第 1
事故」≪交通事故で道路上に倒れた怪我人 の
図 5-0
「フカの襲来 」 .
昭和 6
0年 1
0月
7巻 4号
弘前医学 3
チ ック症の箱庭療法
739
周 りに,人や救急車が集 まっている.新 しい
自我形成 のための 象 徴 的 な 『
死』 を 思 わ せ
た.>,
1
1月2
6日,箱庭第 1
1回 (
図 5- 1)
.「三つ
巴の戦争 を止め る魔女」≪三つの軍隊が互い
に戦い,第 7回迄は封 じ込め られていた内的
衝動が戦闘 とい う形で表現 されてい る.≫
これ らの経過中, 1
0月 9日に 自宅 が 半 焼
し,内面の変化 と共 に家の修復が共時的にな
2月初めの改築を待 って, A子は家 に
され ,1
戻 った.
図 5-p 風景構成法第 2回.
2月か らⅩ+ 1年 5月迄.な
第 3期 ;Ⅹ年 1
ごやかな遊びのテーマが続 いた後, 自我 とエ
が作 られ,攻撃性 の表現 は 見 られ な くな っ
ネルギーの均衡 を思わせ る,対峠 した戦いが
た. 8月か らは攻撃的発語 も消え,一時ノ、ミ
表現 され る. 自宅 に戻 った A子は弟 の前で も
ングのよ うな発声があったが, 1
1月には症状
叫ぶ ことは少な く,母に注意 され ると 「
バカ
は全 て消失 した.
フエ コ (
忠)死 ンデマ レ」 な どと小声 で言 う
1
2月23日,風景構成法第 3回.≪内的衝動
ち,唾は きゃ運動性 チ ックは 目立たな くな っ
を象徴す ると思われ る動物は兎で人 と並び,
た.
自我に親 しみのあるものにな っている.参,
X+ 1年 2月1
0日, 箱 庭 第 1
6回 (
図 5m).「動物園」 く
宅マ ンダ ラ様 に動物の柵囲い
Ⅹ+ 2年 4月 よ り, A子は高校 に進学 し,
その後 も経過は良好 である.
を配置 し,中央 の池の中の赤 い水鳥が A子だ
本例 をまとめ ると, Kの母親は勝気 でやや
とい う.母鳥が消 え,母か らの心理的 自立 を
攻撃的な面のある人だが,姑 に嫌われ,父へ
思わせた.参,
の依存 も阻止 され,母の愛情欲求は A子 にお
3月1
7日,箱庭第 1
8回 (
図 5- m).「悪者
きか えられ,拘束 と干渉 とい う形の未分化な
宅左右 に人が対
の人質 とな った小人の救出」 <
母子結合 を生んだ と思われ る.そ して, A子
峠 し,人質 となった右の小人 を救出す る戦い
は自立 を方向づけ られ る前思春期 において情
が始 まるとい う.≫
5月1
3日,箱庭第2
2回 (
図 5- 0).「フカ
緒的緊張 を生 じ,本来は 自我支酉己の もとに表
8
)
現 され るべ き内的衝動や攻撃性がチ ックや汚
宅海 と陸で左右が分け られ,右の海
の襲来 」く
言,加虐的態度 として病態化 した と推測 され
で人が フカに襲われ,左 の陸か ら助けに出 る
る.弟 に対す る攻撃 もA子が母か ら分離 して
所 とい う.第1
8回 と共 に左右 の対峠 した戦い
い く際の不安を背景 にしてい る故の もの と思
であ り,攻撃性や内的衝動に対す る自我の均
われた.治療経過 をふ り返 ると,箱庭表現 に
衝 を思わせ る.≫
おいて,内的衝動 を抑圧 した母 と未分離な自
4月1
4日,風景構成法第 2回 (図 5-p).
≪女の子が道 で花 を見つけ,動物はパ ピョン
我が,未分化であった 自らの内的衝動や攻撃
性 と出会い,対峠 し, 自律性や主体性 を獲得
とい う犬で,なわ とびをして自由に遊 んでい
してい く過程が,症状 の消 失 と共 に 見 て と
る.規制が とれ,動 きのある自由な内的衝動
れ,風景構成法の変化 もそれを傍証す るもの
を暗示 した.≫
と思われた.
第 4期 ;Ⅹ+ 1年 6月 よ りⅩ + 2年 3月
迄.公園や街 をテーマに した集団場面の箱庭
7
4
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,1
9
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5
.37 (
4)
Hi
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os
a
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d.∫
安 藤,他
3. 考
察
9
)
てい くのを 目のあた りに した と述 べ て い る
が,今 回のわれわれの経験 において も,箱庭
チ ック症 の箱庭療法 について, トゥレ症候
とい う 「自由に して保護 された空間」 におけ
群 1例 を含む 5例 のチ ック症児 の治療経過か
るイ メージ表現 に よって,チ ック症 とい うJ
b
ら,次 に示す よ うな箱庭 イ メージの変遷が見
の停滞状態か ら,今回報告 した イ メージの変
て とれ るのではないか と思われ る.
遷 の よ うな新 しい発達 の道が育 て られ,心 の
(
1
) 問題 の提示 (脅威 ・禁止 の存在, 自由
なエネル ギーや攻撃性 の封 じ込 め).
(
2
) 左右や内外の分割 と流動.
変容がな された と考 え られ,箱庭療法がチ ッ
ク症治療 に とって一つ の有用な治療法 である
ことが確認 された.
(
3) 伯仲 した 「
戦い」 な どの対峠 ・均衡.
さて,箱庭像 を規定す る変数 として, と り
(
4) 「
耕 し」 「
工事」 のテーマ, あるいは
あえず治療者,治療 の場,玩具 の種類 が ある
作 った り壊 した りの砂遊び.
と思われ るが,今 回の報告 では これ らに違 い
1
)
,(
2)
が圧縮 され,
症例 4では図 4- aに(
が あ って も (
症例 1, 2, 5は安藤,症例 4
(
3)
を欠 き,症例 5では(
4)
を欠 くも,症例 1,
は小井 田,症例 3は小井田 ・熊谷が治療 に当
2, 3は(
1
)
か ら(
4)
の過程 を 順 に 経 過 し て い
り,症例 1, 2, 5,症例 3,症例 4は各 々
る.
そ して,以上の過程 は次 の よ うに読みか え
ることがで きるのではないか と思われ る.つ
ま り,箱庭 とい う創造的なイ メージ表現 の場
において,第一 にチ ックとい う病態 を生んだ
施設が異 なる),共通的な法則性が見て とれ,
2
)
1
0
)
さらに文献的に比較 して も,大谷,山中,亀
4
)
井 らの報告 におけ る経過 と類似 してお り, チ
ック症児 に特有 な もの と思われ る.
1
2
)
しか し,米倉 の報告 との比較 では(
1
)
(
2
)
の段
的衝動や攻撃性が表現 され る.次 に内界 と外
階においては類似 してい るものの,その他は
1
)
3
)
異 な り,青木,大場 らの報告 との比較 ではか
界 の分割 のテーマが表現 され, さらに封 じ込
な り様相 を異 に してお り,今 回の立論 はチ ッ
め られていたエネル ギーに流動が起 こる.そ
ク症 の全 てに言及 しえるものではない と考 え
して,伯仲 した 「戦い」 とい う形 でそのエネ
られ る. また,われわれの治療例 のみにおい
ル ギーと自我 の均衡 に至 り,続 いて 「
耕 し」
て も,夜尿 を伴 う心因性頭痛 の男児例 で同様
「工事」 のテーマが再生を暗示す るよ うに表
のイ メージの変遷 を認 めてお り,抑圧 された
現 され, あるいは死 と再生 の儀式 とも思われ
内的衝動や攻撃性 を有す る症例 の発達的統合
る作 った り壊 した りの砂遊びが行われ,箱庭
のあ り方 の一つ と推測 もできるが,他の疾患
を作 る必要が な くな り終結 に至 るとい う共通
との比較 について も今後 の課題 と思われ る.
脅威や禁止 と,それ に よ り封 じ込め られた内
した変遷 である.
最後 に, イ メージ変遷 についての法則定立
要約すれば,箱庭表現 に よ り,患児 は脅威
的研究 の意義 に触れたい.治療者が治療 の展
に さらされ抑圧 され ていた内的衝動や攻撃性
開や推移 を知 る意味 で,疾患 の治療過程 にお
と出会い,統合 し, 自律性 を獲得 してい くと
け る里程標 を心得てい ることは有益 であると
言 うこともできよ う.
思われ る.今回のわれわれの報告 もその よ う
さらに付け加 える と,息児が治療 中,次第
な視点 に立つ ゆえの ものであ り, ここに示 し
に体 を動かす ことに関心を示 し, スポ ーツを
たチ ック症 の箱庭療法におけ るイ メージ変遷
好 んです るよ うになることが認 め られたが,
の法則性 は, チ ック症治療 を進め る上 での一
エネル ギーのまとま った運動へ の昇華 とい う
つ の里程標 にな りうる と考 え られ る. た だ
観点か らみて興味深い ことである.
し, 目安 は 目安 にす ぎないのであ り, 目安 を
山中はチ ック症児が箱庭 を置 くだけで治 っ
もちなが らも表面的 な理解 に とどまらず,で
昭和 60年 1
0月
弘前医学 3
7巻 4号
チ ック症の箱庭療法
741
き うるか ぎ り先 入観 な しに息児 の世界 を共有
す るとい う二重 の見当識が必要 な ことは言 う
まで もない ことであろ う.
また,一般 に,表現 され るイ メージの変遷
過程 は患児 の病理性 のみな らず, 自己治癒力
あるいは健康 な潜在力,治療者が表現 を受け
とめ る程度 な どの治療状況,その他 の種 々の
条件 に依拠す るもの と思われ るが, イ メージ
の変遷過程 に関す る法則定立的な見地か らの
研 究 は諸精神疾患 の治癒 ・寛解過程 をめ ぐる
精神病理学 の知識 を豊かに してい くのではな
いか と考 える.
4. ま
と
め
トゥレ症候;
群 を含む,チ ック症児 の箱庭 を
1
)
用いた治療経験か ら,その箱庭 イ メージに(
問題 の提示 (
脅威 ・禁示 の存在, 自由なェネ
ルギーや攻撃性 の封 じ込 め), (
2)
左右 や 内外
の分割 と交流 ,(
3)
伯仲 した 「
戦い」 な どの対
峠 ・均衡 ,(
4)「
耕 し」 「工事」 の表現, ある
いは作 った り壊 した りの砂遊び とい う 4段階
のテーマの変遷 が見て とれたので, 5例 の経
過報告 と共 に箱庭像 を提示,考察 し,治療 の
過程 を推 しはか る里程標 としての意義 につい
て も触れた.
稿 を終 えるにあた り,ご校 閲いた だ いた弘前大学
佐藤時治郎教授,症例 5につ きご指導いただいた京
都大学 山中康裕助教投,症例 の診療 に際 して ご配慮
いただいた布施病院布施清一院長,三川博副院長に
4回東北児
深謝いた します.なお,本稿の要 旨は第 1
8年) で 発 表 し
童精神医学懇話会 (
仙台市,昭和 5
た.
文
献
1) 青木 しのぶ :事例 1,闇の国の主,蛇 の変容.
河合隼雄 ・山中康裕編 ,箱庭療法研究 1:ト
22,誠信書房 ,1
9
82.
2)大谷不二雄 :事例 3,チ ック症,小学 6年生男
78,誠信書
子.河合隼雄著 「
箱庭療法 」:71
房 ,1
96
9.
3)大場 登,曽根岡祥子,渡辺弓子 : "弔い〝 ィ
メ-ジを箱庭 に表現 した小児神 経 症 者 の 心
理療法過程 .芸術療法 ,8:3950,1
9
77.
4)亀井敏彦 ,山内惟光,西村洲衛男 :チ ック症 の
遊戯療法場面 における表現 の多 様 性 に つ い
72,1
9
80.
て.芸術療法 ,ll:635)河合隼雄 :箱庭療法 の発展.河合隼雄 ・山中康
裕編,箱庭療法研究 1:Vi
i
ⅩVi
i
i
,誠信書房,
1
9
82.
6)西村洲衛男 :箱庭療法 を とりいれた遊戯療法 .
遊戯療法 」 (
講座心
佐藤修策 ・山下勲編 . 「
81
201,福村 出版 ,1
9
78.
理療法 2):1
,浪花博 ・岡田康伸訳 :子 ども
7) フォーダ ム,M.
9
76.
の成長 とイメージ.誠信書房 ,1
8)森野礼- :泥 まみれの征服 【山中論文への コメ
ン ト】.臨床心理 ケース研究 2:9
8-1
02,誠
979.
信書房 ,1
9) 山中康裕 :精神療法 としての箱庭療法.臨床精
648,1
979.
神医学 ,8:6391
0) 山中康裕 :多彩な症状移動 を呈 した 神 経 症 児
の箱庭療法 に よる象徴的心像変 遷 と治 癒 過
7,誠信書
程. 臨嵐 山理 ケース研究 2:83-9
房 ,1
979.
ll
) 山中康裕 : 「風景構成法」事始 め. 山中康裕
編 ,H・NAKAI風景構成法 :1
-36,岩崎学
術出版社 ,1
98
4.
1
2)米倉五郎 :遺糞症,夜尿症,チ ック症 を もつ小
児神経症児の心理療法過程一箱庭,粘土, ゲ
ームを介 して-. 臨床心理 ケース研究 4:
1
4
7-1
6
2,誠信書房 ,1
9
82.
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