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大腸癌症例における栄養指数の検討

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大腸癌症例における栄養指数の検討
日消外会誌 21(4)11068∼
1074,1988年
大腸癌症例 にお ける栄 養指数 の検討
福島県立会津総合病 院外科
島貫 公 義
浅野 宏
千
葉
浜
惇
田 修 三
板 橋 邦 宏
萩 原 賢 一
PROGNOSTIC NUTRIT10NAL INDEX IN COLORECTAL CANCDR
Kimiyoshi sHIMANUKI,Atushi CHIBA,KunihirO ITABASHI,
Hiroshi ASANO,Osami HAMADA and Kenichi HAGIWARA
Departrnent Of Surgery Aizu Prefectural General HOspital
大腸癌 110症47Jに
対 し小野寺 らの栄 養指数 (PNI)を 用 いて,部 位別 ,年 齢別 ,Dukes分 類進行
度別
に術前 ,術 後 の PNIの 変動 を検 討 した。術前 PNIは 左側大腸癌例
(S状 結腸癌33例,直 腸癌37例)に
比較 し,右 側大腸癌pll(盲腸,上 行結腸癌 30例)で 有意 に低 下 し,加 齢 に い
伴 低下 していた.特 に高
齢者盲腸 ,上 行結腸癌 8例 では術前 PNIの 低 下 が著 しく,術 後 の改善傾
向 も不 良であ った ,Dukes分
類進 行度 に伴 い PNIの 低 下傾 向を認めた。術後 1カ 月以内死亡15例は
,術後 PNIの 改善 は 明 らか に抑
制 されていた。高齢者大腸 癌症例 において,小 野寺 の PNIは ,加 齢 に伴 う
栄養状 態 の低 下,高 齢者 に
お け る易 感染性 の評価 に有効 と思われた。
索引用語 i大 腸癌症例栄養指数
緒 言
最近,高 齢者 の大腸癌手術症 例 が増加 してい るが,
これ ら高齢 者 につ いて み る と右側大腸癌症 例 では左側
大腸癌症例 に比 較 して術前栄養状 態 が不良 な場合 が 多
く経 験 されてい る.以 前 よ り右 側大腸癌症 例 は,大 腸
内容物 が流動性 で あ るため,腸 閉塞症状 の発現頻度 が
少 な く,病 悩期間が長 く,初 診時 に右側腹部腫 瘤 とし
て触知 され ることが多 い と言われ てい る。今回,高 齢
者右側大腸癌症 例 と左 側大揚癌症例 とにつ き,小 野寺
ら1)の栄養指数 (prOgnostic nutritional index t以
下
PNIと 略)を 用 い て,栄 養状態 を比較 検討 した 。 また
Dukes分 類 に よる進 行度 別 に PNI変 動 を術 前,術 後
において比較 し, さ らに術 後 1カ 月以内死亡 例 と耐 術
pllにつ いて も検討 した.今 回の検討 で は75歳 以上 を高
齢者 として あつか った 。
対 象 お よび方法
対象 は昭和56年 よ り61年 までの間 に 当院 で手術施行
され,病 巣切除を行 った大腸癌症例 110例で あ る。これ
らの患者 は緊急手術症 例 以外 は術前 4∼ 5日 前 よ り術
<1987年 12月9日 受理>別 刷請求先 :島 貫 公 義
〒965 福 島県会津若松市城前10-75 福 島県立会津
総合病院外科
前 2日 目まで低 残澄食 お よび流動食 を摂取 し, さ らに
経 静脈 的 に800∼ 1,200Kca1/日 の輪 液 を施 行 し,総 投
与 カ ロ リーは2,200∼ 2,800Kca1/日 が 投 与 され た 。術
前 2日 前 よ りKanamycin l,ooomg/日
, MetrOnid―
azole l,Ooomg/日 を経 口投与 し,下 剤,浣 腸 に よる機
械的処置 に よる大腸術前処 置 を行 った。術前 1日 目は
絶食 とし経 静脈 的 にほぼ1,200Kca1/日 が投与 され た。
術後 1∼ 2日 日は経 静脈 的 に800∼ 1,200Kca1/日 が 投
与 され,術 後 の経 口摂取開始時期 の差 は あ るが,術 後
7日 目で1,200∼ 1,600Kca1/日 の輪 液 が 施行 され た。
直腸切 断術例 では,術 後 7日 目にほぼ全例 が経 口摂取
を開始 し,総 投 与 カ ロ リーは2,200∼ 2,800Kca1/日 で
あ った。
病変部位別 には,盲 腸 ―上 行結腸癌30例 夕横行結腸
癌 6例 ,下 行結陽痛 4例 ,S状 結腸癌33例 ,直 腸癌37例
(31例 が直陽切 断術例 ,6例 が低立前方 切除例)で あ り,
年齢別 には,75歳 以上30例 ,61∼ 74歳 が49例 ,60歳 以
下31例 で あ った (表 1).
これ らの組 織型 分類 は,高 分化型腺癌67.3%,中
分
化型腺癌 25.5%で 分化型腺癌 は全体 の92.8%で あ った
(表 2).
Dukes分 類 に よる進行度 は,症 例全体 では Dukes A
73(1069)
1988年 4月
表 3 D u k e s 分 類に よる進行度
表 1 対 象症例
大腸癌
O部 位別
0
3
9
4
︲
3
2
︲
0
3
18
3
3
1
7
3
6
・
13
4
2
6
2
︲
腸
直
3
陽
結
4
状
7
15
2
癌
1
14
17
31例
盲腸,上 行結腸癌
横 行 結 腸 癌
7
下 行 結 腸 癌
S 状 結 陽 癌
3
腸
12
14
体
49例
横 行 結 腸 癌
下 行 結 腸 癌
S 状 結 腸 癌
直
14
22
8
盲腸,上 行結腸癌
直 腸
60歳以下
8
︲
癌
S
全
2
︲
直 腸
61-74歳
腸
7
11
行 結
8
S 状 結 腸 癌
3
下
一
( ―)
盲腸,上 行結腸
横 行 結 腸
一 横 行 結 腸 癌
下 行 結 腸 癌
部位別
8
60歳以下
5
盲陽 上行結陽癌
61-74歳
C
304列
年齢別
75歳以上
癌
B
A
7
直 腸
〇年齢別
75歳以上
計
例
9
下 行 結 腸 癌
S 状 緒 腸 癌
Dukes分 類
症
4
盲腸,上 行結腸癌
横 行 結 腸 癌
33
7
0643
脚 3
対
癌
1
8
12
表 2 組 織型別頻度
組織型
(%)
高分化型腺癌
67 3
中分化型腺癌
25 5
低分化型腺癌
2 7
粘 液
2 7
癌
未 分 化 癌
1 8
100 0
各群 間 の有 意 差検 定 には,nonparametric method
で あ る,Mann‐ Whitneyの U―testを用 い た。数 値 は
meantt SDで 表 わ した。
結 果
1)年 齢別 PNIの 変動 i PNIは 全例,術 後 1∼ 2日
目に術前値 よ り低下 し, 7日 目にな る と術前値 に近 づ
く傾 向 を 示 した。60歳以 下 症 例 で の PNIは ,術 前
51.7±5.0(meanttSD),術 後 1∼ 2日 目45.5±5.6,
術後 7日 目51.9±7.3,61∼74歳症例 での PNIは ,術前
46.5±7.1,術 後 1∼ 2日 目41.2±5.8,術 後 7日 目
439± 7.2,75歳以上症例 での PNIは ,術前 43.4±8.2,
術 後 1∼ 2日 目42.8±7.0,術 後 7日 目46.1±8.1で
あ った。
60歳以下 の症例 に比較 して,75歳 以上 の症例 の,術
前,術後 7日 目の PNIは 60歳以下 のそれ らの値 よ りも
有意 に低下 していた (2<0.01)。 また ,61∼ 74歳の症
例 において も PNIは ,術 前,術 後 1∼ 2日 日,術 後 7
日目に60歳以下症例 に比較 して,有 意 に低下 して いた
(″<0.01)(図 1).
あ り,盲 腸,上 行結腸
った
の60%が
Dukes
Cで
く
表 3).
あ
癌例
これ ら症例 に対 して,術 前(入院時),術 後 1∼ 2日
日,術 後 7日 目に血 清 アル ブ ミン,末 精血 中 リンパ球
18.2%,B38,2%,C43.6%で
し,小野寺 らの算出式 :PNI=10× (血清 ア
総数をull定
ル ブ ミン g/dl)+0.005× (末精 血 中 リンパ 球 総 数/
mm3):末 給 血 中 リンパ球 総数/mm3=自 血 球 数 × リ
ン パ 球 数 の 百 分 率/ 1 0 0 : を
用 い て P N I を算 出 し
1
)
.
た
一
術後 7日 目の経 口摂取 時期,摂 取量 は必ず しも 定
せず,今回 の検討 では術式 に よる検討 は行 わ なか った。
2)部 位別 PNIの 変動 :横 行結腸癌,下 行結 腸癌 は
症例 数 が 少 な く検討 しなか った。盲腸,上 行結腸癌症
例 での PNIは ,術前 43.6±7,7,術後 1∼ 2日 目39.6士
5.3,術 後 7日 目42.7±8.8,S状 結腸癌 症例 で の PNI
は,術 前 48.0±6.5,術 後 1∼ 2日 目45.3±7.0,術 後
7日 目48.1±6.1,直 腸 癌 症 例 で の PNIは ,術 前,
483± 5.5,術 後 1∼ 2日 目42.5±5.4,術 後 7日 目
46.1±8.8であ った 。
右側結腸癌 で あ る,盲 腸,上 行結腸癌症例 と左側結
腸癌 で あ る S状 結腸癌,お よび直腸癌症例 と比較す る
と,S状 結 腸癌症例 の PNIで は,3点 ともに右側結腸
74(1070)
大腸癌症例における栄養指数の検討
図 1 年 齢別 栄 養指 数 の 変動 。 ( 本 : α < o . 0 1 , 6 0 歳 以
下症例 と7 5 歳 以上 , お ょび6 1 ∼7 4 歳症例 との比 較 )
PNI
日消外会誌 21巻
4号
図 2 部 位別栄養指数の変動。(*:α <0.01,盲腸,
上行結腸癌症例 とS状 結腸癌,お よび直腸癌症例 と
の比較)
6 0 歳 以下症例
75錦
例
61-74歳
症例
-o-
盲腸 、上帥
S帥
徹町
確
捌
1 - 2 日
能
卜2 日
例 よ りも高値 で あ ったが,特 に,術 後 1∼ 2日 目,術
後 7日 目に PNIは 有意 に高値 を示 した (2く 0.01)。
直腸癌症例で は術前 の PNIは 盲腸 ,上行結腸癌症例
に比 較 して有意 に高値 を示 した (α<0,01)(図 2).
3)部 位別 にみた年齢変化 に伴 うPNIの 変動 :75歳
以上症例 で部位別 に検討 した。各部位 での PNIは ,盲
腸,上 行結腸癌症 例 では術前38.3±8.7,術 後 1∼ 2日
目37.5±5。
7,術 後 7日 目36.0±6.1,S状 結 腸癌 例 で
は,術 前 47.2±5.4,術 後 1∼ 2日 目486± 5.3,術 後
7日 目48.9±4.1,直 腸痛例 では,術 前47.7±4.9,術
後 1∼ 2日 目43.1±5。7,術 後 7日 目48.9±5.8であ っ
た.盲腸,上行結腸 癌例 に比較 して,S状 結腸癌例 で は,
術前,術後 のいずれ の時期 において も PNIは 有意 に高
値 を示 した (2<0.05).直 腸癌例 では,盲 腸,上 行結
腸癌例 に比 較 して,術 前,術 後 7日 目に有意 に高値 を
示 した (2く 0.05).
61∼74歳例 では,部位別 には PNIに 有意差 は認め な
か った。
60歳以下症例 の各部位 での PNIは ,盲 腸,上 行結腸
癌例 では術前45.8±3.7,術 後 1∼ 2日 目39。
9±3.9,
術後 7日 目47.6±8.4,S状 結腸痛例 では,術 前 53.1±
4.4,術後 1∼ 2日 目48.3±5,4,術後 7日 目52.3±5.1,
直腸癌 例で は,術 前51.9±4,9,術 後 1∼ 2日 目45.4±
5.2,術 後 7日 目51.1±7.8であ った。60歳以下 症例 で
徹
7 日
は,盲腸,上行結腸 癌例 に比較 して,S状 結腸癌例 では
,
術前,術 後 1∼ 2日 目に,直 腸癌例 では,術 前 の PNI
が 有意 に高値 を示 した,
盲腸,上 行結腸癌症例 で年齢別 に検討す る と,75歳
以上 の症例 に比較 して,60歳以下症例 の術前 PNIは 有
意 (α<0.01)に 高 値 を示 し,60歳 以 下 症 allおよ び
61∼74歳症例 では,術 後 7日 目の PNIは 高値傾 向を示
したが有意差 は認め なか った。S状 結腸癌 ,直 腸癌症例
では,年齢別 の PNIに 3点 のいづ れ の時期 において も
有意差 は認め なか ったが,60歳以下症例 で PNIの 高値
傾 向を認 めた。
術後 7日 目の PNIは ,75歳以上 と60歳 以下 の盲腸,
上行結腸 痛症例 との比 較 において,75歳 以上 では術前
値 以下 の状態 で あ り,60歳 以下では術 前値 以上 に改善
していた (2<0.05)。 S状 結腸癌例 と直 腸癌例 では術
後 7日 日の PNIは 各年齢 で有意差 を認 め なか った (図
3).
4 ) D u k e s 分 類進行 度別 にみた。部位別 , 年 齢別 , 術
前 P N I の 検 討 : 年 齢 別 に D u k e s 進 行 度 に よ る術 前
P N I を 比較す る と, 進 行度 に よる有意差 は認 め なか っ
たが, 各年齢 で進行度 に ともない術前 P N I の 低 下傾 向
を認 め た。 同様 に, 部 位 別 の 比 較 で は, 直 腸 癌 例 で
75(1071)
1988年 4月
図 3 各 年齢別 にみた,部 位別栄養指数の変動。(*:α <0.05, 各年齢別 に,盲 腸,
上行結腸癌症例 とS状 結腸癌,お よび直腸癌症例 との比較)
_← 盲腸、勤
: 1 : │
ほ
: じ
王
│::│;│
︱
。キ
1卜
l
│キ
5
7
一
蜘
帥
一
価
価
陥
嗣 陥
幣
Dukes B例 は A例 と比較 して有意 に術前 PNIは 低下
していた。盲腸,上 行結腸癌例 では進行度別 に有意差
を認め なか ったが,進行度 に ともない術前 PNIは 低下
図 4 年 齢別 にみた,Dukes分 類 に よる術前栄養指数
の比較
術前P N I
PNI
2
︲︲︲ ・ 11,1
︲ ,
傾 向を示 した。 同部位 の Dukes C例 と S状 結腸癌例,
直腸癌例 の Dukes C例 と比較す る と,術 前 PNIは 有
鰭
6 0 点惑以下症例
6 1 - 7 4 歳 症例
意 に低下 して いた .高 齢者右側大腸癌症例 の Dukes C
例 は術前 よ りPNIが 低下 し,手 術 侵襲直後 の PNIの
低下 も他 の部位 に比較 して著 し く,術 後 7日 目の PNI
の改善 が不 良な症例 が多 く,加 齢 に ともな い,そ の傾
向 が著 し くな った (図 4∼ 6).
以上 110例の検 討 を行 った が,15例 の 死 亡 例 を除 い
た ,検 討 において も同様 の結果 であ った。
5)術 後 1カ 月以内死 亡例 の検討 :死 亡例 は15例で,
15例中,緊 急手術 8例 (平均年齢 75.8歳),予 定手術 7
例 (平均年齢 65.0歳)で あ り,15例 中 6例 に縫合不全
を認めた。15例の うち,術 前 PNIが 40以下 を示 した も
のは 6例 で,す べ て緊急手術 であ り,そ の 3211に縫合
不全 を認めた(表 4).予 定手術例 と緊急手術例 の PNI
を比較す る と,術前 PNIは 有意 に緊急手術例 で低 下 し
ていたが,術 後 では有 意 差を認 め なか った。縫合 不全
の有無 に よる差 は認 め なか ったが,縫 合不全例 での術
後 7日 目の PNIは 著 し く低値 を示 した (表 5).15例 全
75帥
61-74歳
症例 60融
下症例
大腸癌症例における栄養指数の検討
図 5 部 位別にみた,Dukes分 類別による術前栄養指
数の比較。(キ:2<0.01,各部位での Dukes C例 と
の比較,お よび直腸癌例におけるDukes Aと B例
の比較)
日消外会誌 21巻
表 4 術 後 1カ 月以内死亡症例
症例 年 齢 病 変部位 合 併症
1)
横行結腸 ス テ ロイ ド術前
大量使用例
縫合不全, 敗 血症
上行結腸 肝 転移
52
N
P
術前PNI
2)
r-a
l2
l3
..,
16
14
叫
58
直
腸
3)
59
4)
64
5)
68
6)
71
直
腸
7)
83
直腸
塞
,
榮
蟹閉
響
上行結腸 縫 合不全
上行結腸 縫 合不全,腎 不全
,
甥
鶴盪
栗塞
術
緊急 手術 例
・
︺
ド一
1,illll●11111111
↓ ︲
ta
8)
70
S状 結腸
9)
72
上行結腸
10)
75
盲腸
12)
76
横行結腸
1 4 )
15)
N
P
図 6 年 齢別,部 位別,Dukes分
血
症
,
諮例敗
鰹審
鞣塞
血
斉敗
症
S状 結腸 穿孔例,ARDS
11)
13)
盲
鑑韻畷藤静` 直 鵬鹿例
警推議露 sり
72
後上部消化管出血
78
穿孔例,ARDS,
敗血症
,肺
炎
,
響蕨擦
堅塞
血症
塞
,敗
鰹審
鞣塞
血症
塞,敗
,
鰹審
梁塞
穿
孔例.ARDS
横行結腸
8 1 S状 結腸
82
S状 結腸
類別にみた,術 前, 術後栄養指数値
.
8 ヤ
● │
・ 9
・台・
け
・
r
8
告
年掛
▲
。
▲▲泉
。
・
・。
・・
: ・:
96
▲
▲9
A ▲
8
。
。
・
4 0
●8
0
60蝕
抑
溝幣
溝陥
症例
浦鯛
61-74歳
c
B
A
︺
町
確
猛陥
一捌
罵価
C
B
一A
盲腸、帥
S帥
帥
溝鰭
。
日
C2
^
。
S
。
・
A
一
縫︲
。 。
▲
75帥
● 。 ▲
●2 。
●
▲
▲ A .
^ 1 伊
幹 r O ぃ3 4
・
, 一
食▲島
,つ
4号
77(1073)
1988年4月
表 5 術 後 1カ 月以内死亡症例の栄養指数 の変動
術
術後 7日
5
2 8
4
8
3
6
9 9
3
6
3
4
6 3
3
5
3
0 8
4
6
2 0
4 ︲
8
3
︲ 6
4
十 一 十 一 十 一 十 一 十 一
5
十一
十一
十一
十一
十一
0 9
4
7
3
5
縫合不全( 一)
n=9/15
6
3
縫合不全4 7 1
n=6/15
6 5
4
緊急手術1 / 1
n=8/15
十 一 + 一 十 一 + 一 十 一
予定手術例
n=7/15
︲ 7
4
全体
n=15
術後 1-2日
前
(Ⅲ:α<0,01 予定手術例と緊急手術例との比較)
体 で の PNIの 変動 を部位別,年 齢 別 の PNI変 動 と比
較す る と,75歳 以上 の盲腸,上 行結腸癌症例 (8例 中
1例 が 1カ 月以内死 亡 )で は,術 前,術 後 7日 目の PNI
は死 亡 例 よ りも低値 を示 した。そ の他 の部位別,年 齢
別 PNIは 死 亡例 と比較 して高値 を示 していた。
考
察
栄養 指 標 と手術 後 合 併 症 の 関 係 につ い て の BuZby
2)の
広 く知 られ て
Prognostic Nutritional lndexは
ら
い るが,そ の 因子 が 多 く,測 定誤差 が生 じやす いため ,
簡便 で容易 に 日常臨床 で測 定 で き る小野寺 の栄養指数
を用 いて検討 を行 った。小野寺 らの PNIは 栄養障害 の
な い controlで53.6±2.9,ほぼ50∼60の値 を示す と報
告 し,手 術適応 の判断 として,PNIが 45以上 は手術可
能,45∼ 40では注意 ,お よび危険 で あ り,40以 下 では
切除,吻 合 は禁忌 として い る。 また ,直 腸切断術 を除
おいて PN140以 下 では,約 40%に
いた,大 腸癌症4/1に
縫合不全 を認めた と報告 してい る。今 回 の検討 で は,
術前 PNI値 (平均値)が 40∼45であ った ものは,75歳
以上 の症例,と 盲腸,上 行結腸癌症例 で,術 前 PN140
以下 で あ った ものは,75歳 以上 の盲 腸,結 腸癌 の 8例
で,そ の 1例 に縫合不全 を認 めた 。そ の他 の部位別,
年齢別 での術前 PNIは 45以上 を示 した,術後 1カ 月以
内死 亡例 15例の うち,術前 PNIが 40以下 を示 した もの
は 6例 で,そ の50%に 縫合不全 を認 めた 。予定手術例
で術前 PNIは 45以上 であ り,緊急手術例 では40以下 の
値 を示 し, 8例 中 3例 に縫合不全 を認 めた。
年齢別 の PNIの 変動 で は,75歳 以上 の術前 PNIは
60歳以下 の症例 に比 較 して有意 に低下 してお り,加 齢
に伴 う栄養状態 の低下 を示 してい るもの と思われ る。
PNIの 因子 は,ア ル ブ ミン と末精 リンパ球数 で あ り,
加齢 に ともない, これ らの 因子 の低下 を来す もの と思
われ る。Lipschutzらりは,低 蛋 白飼 育高齢 マ ウスにお
いて,好 中球 の貧食能,殺 菌能 の低下 を認め,高 齢 の
場合 には,蛋 白質欠乏状態 が貧食能,殺 菌能 に影響 を
お よばす と報告 して い る。栄養状態 の悪化 は末裕 リン
パ球総数,T細 胞 数 の低下 を来 し,生 体防御機能 を低
下 させ る ことが知 られ てお り,老 年者 の蛋 白摂取 不足
は好 中球 の貧食能,殺 菌能 の著 しい低下 を まね くと報
告。されて い る。PNIの 低下 は,加 齢 と蛋 白摂取 不足 に
よる好 中球機能低 下 を反映 し,老 人 の易感染性 を示 し
てい る もの と思われ る。
部位別 の PNIの 変動 では75歳以上 の盲腸,上行結腸
癌 症例 において75歳以上 の S状 結腸癌,直 腸癌症pllに
比較 して有意 に PNIは 低下 して いた 。これ は,高 齢者
右側大腸癌症例 での術前 の栄養状態悪化,術 後 の栄養
状態 の回復 の不 良 を示 してお り,病 悩期 間 の遷延,病
変 の進 行度 を反映 してい るもの と思われ る。今 回,検
討 した Dukes分 類 に よる進行度 は,Dukes Cが ,S状
39.4%,直 腸癌例 で37.8%で あ るのに対 し
結腸癌711で
て,盲 腸,上 行結腸癌例 で は60%と 進行例 が 多 く認 め
られた。 さ らに,Dukes Cの 高齢者右側大腸癌 での術
一
前 PNIは ,同 進行度 の S状 結腸,直 腸癌症例 と比較
して有意 に低値 を示 してお り,進 行 した病変 に よる栄
養状態 の低下 を反映 してい るもの と思われた。
以前 よ り,左 側結腸 は管腔 が狭 く,固 形 に近 い腸 内
容 が通 過す るため腸閉塞症状 が 出現 しやす く,早 期 に
病変 が発見 されやす いのに対 して,右 側結腸 は管腔 が
広 く,腸 内容 が液状 で あ るため,腸 閉塞症状 を示す こ
とが少 な い と言われ てい る。 この よ うな病態 であ る右
側結腸癌症例 での PNIの 低値 は,栄 養状態 の不 良,お
よび進行 した病変 を客観的 に示す指標 と思われ る。
右側結腸癌 に対す る結腸切除後 の回腸 結腸吻合 は血
流障害 が少 な く縫合 不全 が 少 な い と言われて い るが,
術前 の栄養状態 は不 良 で あ り,特 に,高 齢者 において
は他 の いず れ の部位 の結 腸癌 よ りも PNIが 低 値 を示
す ため,ま た術後 1カ 月以内死 亡 の緊急手術 例 とほぼ
同様 の PNI値 で あ り,術前 の十 分 な栄養状態 の改善後
に手術 を施行す る必要 が あ る と思わ れ る。穿孔症例 以
外 の緊急手術 は,術 前腸閉塞状態 を示 し,症 例 9は 絞
掘性 イ レウス と判 断 され,症 例 12,13,14は 大量下血
にて緊急手術 とな り,術 前 の十 分な栄養管 理 は行 わ れ
ていなか った。
60歳以下 の盲腸,上行結腸癌 症例 で も術前 PNIの 低
下 が認 め られ たが,術後 7日 目の PNIの 改善 は 良好 で
あ り,手 術侵襲 か らの回復予備能 は 良好 で あ る ことを
示 してい る。さらに,術前 PNIの 低下 は年齢 に よらず ,
右側大腸癌症例 では術前 の栄養状態 の悪化 が,他 の部
78(1074)
大腸癌症例における栄養指数の検討
位 の大腸癌4 2 1 1 り
よも著 しい こ とを示 してい る もの と思
われ る。 これ は, 単 に進行度 のみ な らず , 右 側結腸癌
の主 病巣 が他 の部位 に比 較 して大 き く, そ の表 面積 が
大 きいため, 質 自の漏 出, 出 血 に ともな う貧血 な ども
P N I の 低下 に影響す る もの と思われ る。
高齢者右側大腸 癌 において, 今 回の検討 では, 術 前
P N I は 3 8 . 3 ±8 . 8 で小野寺 らに よれば, 切 除, 吻 合 は禁
忌 の 分類 に あて は まるが縫合不全 は 8 例 中, 緊 急手術
の 1 例 で あ り, 必ず しも術前 P N I 値 のみか ら手術 適応
日消外会誌 21巻
結
4号
語
1)大 腸癌 症 例 に お け る術 前 PNIは ,60歳 以 下 症 例
で517± 5.0,61∼74歳 で46.0±7.1,75歳以上 で43.4土
8.2と加 齢 に伴 い 有 意 に低 下 して い た 。
2)部 位 別 にみ た 術 前 PNIは ,盲 腸 ,上 行 結 腸癌 例 で
43.6±7.7,S状
結 腸 癌 例 で48.0±6.5,直 腸 癌 711で
48.3±55と 右 側 大 腸 癌 例 で 低 下 して いた 。
3)術 前 PNIの 低 下 は75歳 以上 の 盲 腸 ,上 行 結 腸 癌
症 例 で38.3±8.7と 著 し く,術後 1カ 月以 内死 亡 例 の 術
を判 断で きる とは思われ ないが, P N I 低 値症例 では好
中球機能低下 , 易 感染性 の状態であ り, 術 後合併症 を
前 値 (414± 7.3)と ほ ぼ 同 じ値 を示 した 。
引 き起 こ しや す い状態 で あ る と判 断 して術後管理 を施
良 で あ った 。
行 しな ければな らな い と思われ る。 また, 術 後 1 カ 月
以内死亡 では, 術後 7 日 目の P N I は 術前値 まで 改善 せ
向 を示 した 。
ず, 特 に, 縫 合不全例 では, 術 直後 の P N I 低 下状態 と
同様 の P N I 低 値 を示 してお り, P N I の 改善傾 向 の 遅
6)高 齢 者 大 腸癌 症 例 に お け る術 前 ,術後 の 栄 養 状 態
の 評 価 に PNIは 有 効 な指標 と思 わ れ る。
延 が著 明であ った。右側大腸癌症例 で は, 術 後 7 日 目
の P N I の 改善傾 向 は7 5 歳以上 例 で 明 らか に低 下 して
お り, 6 0 歳 以下例 では有意 に改善傾 向が 良好 で あ り,
高齢者 の栄養改善能 の不 良 な こ とを示 してい る もの と
思わ れ る。 7 5 歳以上 の直腸癌症例で は, 各 年齢 にお け
る直 腸癌 例 と同様 に術後 7 日 目の P N I の 改善 が 良好
で あ った 。 これ は, 今 回の検討 で, 直 腸切 断術症例 が
多 く, 比 較的早期 に術後経 口摂取 が 開始 されて い る影
響 に よる もの と思われ る。 一 般 に高齢者 は重要臓 器 の
予備能や組織 代謝活性 が低下 してお り, 手 術侵襲 か ら
の 回復 が遅れ, さらに術後 に合併症 を来 た した場合 に
は, そ の回復 は著 明に遅延す る と言われてお り" , 術 前
の P N I の 検討 は栄養状態 の評価 に有益 で あ り, 術後 の
P N I 値 の変 動 を観 察 す る こ とは術 後 経過 の 予後 を予
測で きるもの と思われ る。
4)高 齢 者 大 腸癌 例 で は術 後 の PNIの 改善 傾 向 が 不
5)Dukes分
類 の 進 行 度 に 伴 い PNIは 低 下 す る傾
文 献
1)小 野寺時夫,五 関謹秀,神 前五郎 i Stage IV,v(V
は大腸癌)消化器癌 の非治癒切除,姑 息手術 に対す
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5 ) 玉 熊正悦, 望月英隆 : 老 人外科の進歩. 医 の あゆみ
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