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Topics 「第 38回環境安全講演会」を開催

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Topics 「第 38回環境安全講演会」を開催
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2014年7月号 No.162
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Topics
「第38回環境安全講演会」
を開催
「第38回環境安全講演会」が、2014年4月18日にアルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)
で開催されました。同講演会
では、警察大学校 警察政策研究センター 教授の樋口晴彦氏が「組織の失敗学」、東京都市大学 環境情報学部 教授
の涌井雅之氏が「自然を守れば自然が守ってくれる」
と題して講演をし、製薬協会員会社の約60名が聴講しました。そ
の講演の概要を報告します。
組織の失敗学 警察大学校 警察政策研究センター 樋口 晴彦 教授
失敗学とは
「失敗学」
とは、過去の事件・事故における失敗の原因を解明し、それを未然に防ぐ
対策を提供することです。今回の講演においての事例は、皆さんの仕事と直接関係
ないかもしれませんが、
「他山の石」
となり得ます。重大な不祥事の背景には、組織的・
構造的な問題が存在しているケースが通例で、事業が異なっていても、こうした問題
には共通している点が少なくありません。ポイントとなるのは、自分の状況に置き換
えて教訓をつかもうとする姿勢が重要ということです。
[事例1]東京電力福島原発事故
東北地方太平洋沖地震により、福島第一原子力発電所で稼働中の1∼3号機は自動停止しました。原子炉停止後も核燃料
は崩壊熱を出し続けるため、冷却する必要があります。同原発では外部電源が途絶するとともに、所内の非常用発電施設
も被害を受け、電源喪失状態に至り、核燃料を冷却できずにメルトダウンに至りました。外部電源の喪失は、津波の襲来と
は関係なく、もっぱら地震の揺れによって引き起こされました。
「外部電源がつぶれても、原発に非常用発電施設があるから
大丈夫」
という心理があり、非常用発電という
「最後の砦」に寄りかかり、外部電源の安全対策を突き詰めることを怠りました。
[事例2]三菱重工客船火災事故
2002年10月、三菱重工長崎造船所で建造中の客船「ダイヤモンド・プリンセス」で火災が発生し、36時間後に鎮火するま
でに、船体床面積の約4割を焼損、損害額は300億円を超えました。デッキで行われた溶接作業の熱が階上に伝わり、家具
などの可燃物に引火したことが出火原因でした。溶接箇所は天井部の梁とされていましたが、天井面に溶接する「直溶接」
の実施に必要な申請を出さず、上層の可燃物を除去しないまま作業を行いました。本事故に先立って、本船内では4件の
失火事件が発生(初期消火に成功)
しており、そのすべてが直溶接する際の確認ミスを放置したことが原因となっています。
造船業界では韓国との受注競争が激化しており、利潤の高い豪華客船分野への進出が急務となっていました。三菱重工は、
海外の海運会社から豪華客船の発注を受けたのは今回が初めてで、このプロジェクトを成功させて市場を開拓したいと懸命
となり、本船の引き渡しを予定より2ヵ月も早めていました。その組織的な焦燥が本件事故の背景にあり、三菱重工が市場
開拓のために重ねた無理が今回の火災事故を引き起こしました。
結び
現場では『事情』があって不適切な行為に至りました。不祥事をなくすにはこの『事情』=原因メカニズムを解消することが
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「 第 3 8 回 環 境 安 全 講 演 会 」を 開 催
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必要です。
「現場にコンプライアンス意識がないからだ」
という結論ありきの発想では、何も学べません。同種の違反行為が
散発している場合、社内制度や管理手法に問題があることが多く見受けられます。一時の間に合わせの策に満足せずに、
不祥事の背景要因となった組織的・構造的問題を直視することが大切です。
(環境安全委員会 環境部会 平野 靖幸)
自然を守れば自然が守ってくれる 東京都市大学 環境情報学部 涌井 雅之 教授
自然を守れば自然が守ってくれる
このスローガンは、2012年にインドのハイデラバードで開催された生物多様性条約
第11回締約国会議のスローガン「Nature Protects if She is Protected」としてインド政
府が掲げたものです。
われわれは今、人間の欲望の集積に原因した地球温暖化問題などにより、持続的
未来を確実にできるか否かの大きな岐路に立たされています。地球の環境容量の臨
界点は目の前にあります。さらに、地震などの自然災害が加わるため、自然との付き
合い方が大いに問われることになります。
温暖化問題が気候変動、さらには生物多様性を滅失させるという深刻な事態を引き起こしています。この現象を引き起こ
している原因を一言で言えば、われわれの世界認識の薄さだともいえます。われわれはこの地球の支配者であるかのよう
な顔をしていますが、このことが大きな問題であることに気がつかなければなりません。
とりわけわが国は、陸地面積が地球上の0.25%でしかないにもかかわらず、世界で起きているマグニチュード6以上の地
震の約2割が発生しているなど、世界の中でも特筆すべき自然災害多発の国土条件を有しています。
レジリエンスあるいは「いなし」
このような特異性をもつ日本であればこそ、災害と地域社会の関係は独特のハード・ソフト両面の英知を進化させてきま
した。
東日本大震災が起きた2011年の秋、東京でGEA(地球環境行動会議)が開催されました。その目的は「復興を通じた持続
可能な社会づくり∼日本の再生を世界と共に∼」であり、私は「日本の国土が自然の恩恵とその応力つまり災害が背中合わ
せである国土ゆえに、自然に逆らうという発想は少なく、常に自然と共生する発想が前提となり、力には力をではなく、常
に柳に風という方向、つまり
『いなし
(レジリエンス)』の知恵があった」
という主旨で講演を行いました。
結び
わが国は、世界に冠たる伝統「自然と共生する社会」を当然とした歴史を誇ってきました。しかし、最近の風潮は、このよ
うな歴史・文化に背を向け、産業革命の延長線上で考え、相変わらず、多大な資金と科学技術を前面に押し出した装置や
構築物で自然に対抗しようとする施策や政策(グレーインフラ)が講じられようとしています。
しかし、環境悪化の最大の要因である地球人口の膨張の大半が最貧国・途上国であることを考えると、このような対応策
が不可能であることが容易に想定されます。従って、自然の力を借りるわが国を支えてきた「いなしの思想」、つまり持続的
未来を希求する環境革命を念頭に置いた「自然を守れば、自然が守ってくれる」
という思想に基づき、自然と共生する知恵と
対応策(グリーンインフラ)を随所に具現化する以外に策はないでしょう。
(環境安全委員会 副委員長 小林 智)
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