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不動産市場の専門家(JAREC16)

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不動産市場の専門家(JAREC16)
№ 16
平成 23 年 11 月 4 日
1. ス キ ル ア ッ プ 研 修 ( 資 格 更 新 義 務 研 修 ) の お 知 ら せ
NPO 法 人 移 行 後 5 年 を 経 過 し 、 資 格 認 定 会 員 の 方 の 更 新 時 期 を 迎 え ま し た 。
今 回 の 研 修 は 義 務 研 修 と し て 資 格 認 定 会 員 の 方 に 参 加 し て 頂 く た め 、当 日 の 研 修
を 三 部 構 成 と し 、第 一 部 は 基 調 講 演 、第 二 部 は パ ネ ル デ ィ ス カ ッ シ ョ ン 、第 三 部
は講師を交えた交流会を開催いたします。
詳細は同封のチラシでご確認ください。
≪研修内容≫
テーマ
;「 不 動 産 カ ウ ン セ ラ ー の 価 値 創 造 と マ ー ケ テ ィ ン グ 戦 略 」
−有望な不動産カウンセリング業務分野とスキルアップ−
開 催 日 時 ; 平 成 24 年 2 月 29 日 ( 水 ) 午 後 1 時 ∼ 午 後 5 時 ( 研 修 会 終 了 時 間 )
場 ; JA 共 済 ビ ル
会
カンファレンスホール
東 京 都 千 代 田 区 平 河 町 2-7-9
会
費
JA 共 催 ビ ル 1 階
;
JAREC 会 員
10,000 円
不動産戦略アドバイザー
12,000 円
その他
15,000 円
※ 交 流 会 費 用 は 別 途 5,000 円 徴 収 い た し ま す 。
お 申 込 み 方 法 ; 同 封 の 申 込 書 を FAX に て ご 送 付 く だ さ い 。
2. CRE( 米 国 不 動 産 カ ウ ン セ ラ ー ) 称 号 の 取 得 の 勧 め
米 国 不 動 産 カ ウ ン セ ラ ー 協 会 -The Counselors of Real Estate は 、 高 度 な 不 動
産 ア ド バ イ ス を 業 務 と し て 行 う 専 門 家 の 団 体 で す 、 1953 年 に 設 立 さ れ 、 CRE の
称 号 を 有 す る 会 員 約 1100 名 (内 米 国 、カ ナ ダ を 除 く 外 国 の 会 員 は 約 50 名 )に よ っ
て 構 成 さ れ て い ま す 。小 規 模 で す が 、CRE は 米 国 内 の 不 動 産 関 連 業 界 で 非 常 に 名
誉 あ る 称 号 と 位 置 づ け ら れ て い ま す 。近 年 は グ ロ ー バ ル に 会 員 を 増 強 す る 政 策 が
取 ら れ て い ま し て 、 日 本 か ら も 現 在 4 名 が CRE の 称 号 を 授 与 さ れ て 活 躍 し て い
ます。
不動産カウンセラー協会とも長い信頼関係の歴史があります。
-1-
麗 澤 大 学 の 清 水 教 授 は 、 本 年 、 日 本 の 研 究 者 と し て は 始 め て CRE の 称 号 が 授
与 さ れ ま し た 。 JAREC 会 員 の 皆 さ ん に お か れ て も 、 CRE 称 号 の 取 得 を 目 指 し て
はいかがでしょうか。
以 下 に 、 CRE に な る た め の 大 ま か な フ ロ ー を ご 紹 介 し ま す 。
CRE− < 米 国 不 動 産 カ ウ ン セ ラ ー > に な る に は
① 既 存 会 員 -CRE に よ る 推 薦
推 薦 者 は 当 人 の ス ポ ン サ ー と な り 、 CRE と し て ふ さ わ し い 人 物 か ど う か に つ
いて、学歴、職歴等も含んだ報告書をシカゴの事務局にまずは提出します。
② 推薦に際しての基本的な要件
大 学 卒 業 以 上 の 学 歴 と 最 低 10 年 以 上 の 不 動 産 カ ウ ン セ リ ン グ 実 務 実 績 は 必 須
の 条 件 で す が 、 実 績 に 関 し て は 無 報 酬 (社 内 業 務 )で も か ま い ま せ ん 。
③ 予備審査
CRE の 資 格 審 査 委 員 会 が 上 記 の 推 薦 人 レ ポ ー ト 内 容 を チ ェ ッ ク し た 後 、 申 請
資 格 が あ る と 認 め た 場 合 に 、 本 人 に 対 し て 申 請 依 頼 の Invitation が 送 付 さ れ
ます。
④ 申請書
本 人 は 以 下 の 内 容 を 含 む 申 請 書 類 <英 語 >を 記 入 し 送 付 し ま す 。
<業 務 実 績 >
3-4 件 の カ ウ ン セ リ ン グ 実 績 − 英 語 に 翻 訳 の 上 、 提 出 す る 必 要 が あ り ま す 。
3-4 社 (者 )の 依 頼 人 に 対 し て 、CRE 事 務 局 が 直 接 ヒ ア リ ン グ す る 場 合 も あ り ま
す。
<社 会 貢 献 活 動 >
どのような活動をしているかを報告するよう要請があります。
⑤ 面接
上 記 の 書 類 審 査 に パ ス し た 場 合 に 、 既 存 の CRE 会 員 に よ る 面 接 が 実 施 さ れ ま
す 。か つ て は 、米 国 に お い て 英 語 で 実 施 さ れ ま し た が 、昨 今 は 、日 本 人 の 既 存
会員により日本語で行われることもあります
⑥ 以上のプロセスを経て、約半年で合否が決定されます。
次 い で 、 本 年 CRE の 称 号 を 付 与 さ れ た 麗 澤 大 学 の 清 水 千 弘 教 授 か ら の 称 号 取
得について寄稿をいただいたので、紹介します。
-2-
不 動 産 市 場 における専 門 家
清水千弘
1)
1.専 門 家 (Expert,Specialist and Professional)とは?
不動産市場には,多くの専門家と呼ばれる人たちが活躍している。不動産鑑定士
にはじまり,宅地建物取引主任者,建築士や測量士,広義にとらえれば,税理士・
弁護士なども,不動産市場を支える人たちである。それらの専門家と呼ばれる人た
ちは,彼らが持つ専門性を提供し,その対価としての報酬を得て生計を立てる。
2000 年 代 初 頭 に お い て 小 泉 政 権 下 で 行 わ れ た 総 合 規 制 改 革 会 議 で は ,士 業 に 対 す
る問題が取り上げられた。そのなかでは,とりわけ不動産鑑定士の報酬の高さが問
題になった。また,宅地建物取引主任者の,不動産仲介における手数料の高さもま
た議論の対象となった。
専門家が得る報酬が高いからといって問題になるわけではない。専門家が提供す
る 専 門 性 と み ら れ て い る も の が ,実 は 規 制 に よ っ て 生 み 出 さ れ て い る の で は な い か ,
または官によって創出された業によって社会的な適正水準よりも高い報酬として移
転しているのではないか,といったことが議論の対象となっていた。
ここでは,二つの問題が浮かび上がる。どのような専門性を習得し,そして,そ
の専門性が時代の中で必要とされ続けているのかどうか,加えて,その対価として
支払われているものが,規制によって市場が歪められているものではないか,自由
競争になっていないのではないか,ということである。
2)
不動産鑑定士を例にとれば,鑑定士として業務を行うためには,最低限度の専門
性を持ち得ていなければならないということを前提として,国家試験が課せられて
い る 。 試 験 を 通 じ て , 最 低 限 の 専 門 性 (Specialty)を 具 備 す る 。 し か し , そ れ だ け で
は業として報酬を得ることはできない。一定の実務を通じてのさまざまな技量を習
得 す る 必 要 が あ る 。 そ の よ う な 実 践 や 訓 練 を 通 じ て 習 得 さ れ た 専 門 性 (Expertise)が
あってこそ,報酬をようやく得ることができる。
し か し , 本 当 の プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル (Professional)と し て 専 門 家 で 居 続 け る た め に
は,市場の変化に応じて要求される専門性を常に持ち続けていなければならない。
以下,専門性とその対価として支払われる報酬の問題に焦点を当てて,国際比較
と合わせて議論を進めたい。
1 )ブ
リティッシュコロンビア大学経済学部客員教授,麗澤大学経済学部教授
2 )仲
介 手 数 料 が ,6 万 円 プ ラ ス 契 約 価 格 の 3%と 上 限 が 設 定 さ れ ,実 質 的 に は 上 限 に 張 り 付 い て い る こ と が
問題となった。
-3-
2.報 酬 と介 在 価 値
それでは,専門性を提供した対価としての報酬とは,いったい,どのように決ま
っているのか。報酬を,専門家としての賃金としてとらえれば,経済学で言う賃金
の決定理論が利用できる。経済学の教科書では,実質的な賃金は,限界生産性で決
定 さ れ る (限 界 生 産 力 仮 説 ), ま た は , 仕 事 の 特 性 , と り わ け 労 働 力 を 提 供 す る こ と
に よ っ て 被 る 限 界 不 効 用 に 応 じ て 決 定 さ れ る (補 償 賃 金 仮 説 ), と 考 え ら れ て き た 。
しかし,これでは,日本で一番賃金が高いといわれる損害保険会社や広告代理店の
賃金の高さは説明ができない。
一般的に経営者は効率を重視するために,実質賃金は限界生産性よりも高くなる
という。つまり,高い賃金を得ている雇用者は,不正などをすることによって失職
す る こ と も 機 会 費 用 が 高 い た め に ,限 界 生 産 性 よ り も 高 い 賃 金 を 支 払 っ た と し て も ,
監 視 費 用 や 企 業 の さ ま ざ ま な レ ピ ュ テ ー シ ョ ン ・ リ ス ク ( Reputation Risk) を 回 避
するための監視費用を節約できることで,帳尻が合うというのである。
3)
このような説明だけでは,鑑定士の報酬は説明ができない。不動産専門家の仕事
が , け し て 3K と 呼 ば れ る よ う な 仕 事 の 人 た ち よ り も 限 界 不 効 用 が 大 き い わ け で は
ない。また,基本的には,個人として活動する方がほとんどであるために,効率性
仮説からでも説明できない。そうすると,官によって生み出された大きな需要と国
家試験制度という中で業が行われるパイをコントロールしてきたことによって,限
界生産性が吊り上げられていたと考えるべきであろう。
しかし,近年において,このような構造が急速に崩れ始めたことによって,改め
て専門家としての市場への介在価値が問われるようになったのである。
3.グローバル社 会 における専 門 家 -RICS, CREそれでは,全体としての市場の縮小が続く中で,不動産の専門家はどのような専
門性を発揮していけばいいのであろうか。ここで米英に目を向けてみよう。米国に
は , 日 本 の 不 動 産 鑑 定 協 会 と 単 純 に は 比 較 で き な い も の の , Appraisal Institute(AI)
と い う 組 織 が あ る 。 さ ら に , AIと は 直 接 的 な 関 係 は な い が , 選 り す ぐ ら れ た 専 門 性
を持つ一部のプロフェッショナルで構成される米国不動産カウンセラー協会
(Counselors of Real Estate: CRE) 4 ) と い う 組 織 が あ る 。
一 方 , 英 国 の 不 動 産 鑑 定 協 会 に な る Royal
Institution
of
Chartered
Surveyors :RICS) 5 ) に は ,Member of RICSと Fellow of RICSな ど と い っ た カ テ ゴ リ ー が
あ る 。 ま ず は , Memberと な り , 専 門 家 と し て 活 動 し た の ち に (MRICS), 高 い 専 門 性
3 )不 動 産 鑑 定 業 界 で は , 近 年 , 高 い 報 酬 を 得 て い た 時 代 に は , 起 こ り え な か っ た よ う な 問 題 が 発 生 し , 国
や 協 会 に よ る 監 視 や シ ス テ ム 投 資 な ど が 要 求 さ れ て い る 状 況 を 考 え れ ば ,社 会 全 体 の 中 で 新 し い 制 度 設 計
が必要になってきていることを予感させることが続いている。
4 ) htt p://w ww.cre.org/
5 ) htt p://w ww.ric s.org/
-4-
が 認 め ら れ た 場 合 に 限 り , Fellow(FRICS)と な っ て い く 。
こ こ で ,ま ず 二 つ の 組 織・資 格 (CRE, FRICS)の 共 通 点 を 見 て み よ う 。両 者 と も に ,
単なる資格制度などといったものではなく,より高い専門性が広く認知されたとき
に , Invitation や Recommendation に よ っ て は じ め て メ ン バ ー と し て の 資 格 を 持 つ 。
これが意味するところは,試験などといった取り決められた一定の標準的な専門性
を座学によって習得すればなれるというのではなく,実際の不動産市場でどのよう
な 仕 事 を し た の か , そ の 仕 事 が プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル (Professional)な も の と し て 広 く
求められたのか,その卓越した専門性とは何かが問われる。そして,それを評価す
るのは,国際的な専門家であり,顧客なのである。そのため,メンバーの業務範囲
も広い。もちろん日本の不動産鑑定士が行うような仕事もするが,環境,金融,開
発など,さまざまな専門性を発揮している。
も う 一 つ は ,グ ロ ー バ ル 化 で あ る 。も ち ろ ん 公 用 語 は 英 語 と な り ,RICS の ロ ゴ の
横 に は ,「 the mark of property professionalism worldwide」 と 書 か れ て い る 。 RICS は
英国において設立された組織であったが,今では,欧州,米国,オセアニア,アラ
ブ諸国,そして,アジアに拠点ができつつあり,ネットワーク化が進んでいる。不
動産市場を含む経済市場のクロスボーダー化,グローバル化が進むなかで,より不
動産市場の専門家も,グローバル化を図っていくことが重要となる。その時に大切
になるのが,研ぎ澄まされた専門性を持ち得ているのかどうかということである。
さ ら に ,こ れ ら は 相 乗 効 果 を 持 つ 。と り わ け CRE で は 強 い ネ ッ ト ワ ー ク が 作 ら れ
ており,日常的にビジネス機会の提供や情報提供が行われている。それぞれの専門
性が融合した時に,より大きなビジネスを推し進める力となっているのである。筆
者 は ,最 近 CRE の 称 号 を 授 与 さ れ た 。そ の こ と で 今 ま で 学 会 や 国 際 会 議 で ご 一 緒 し
た 方 々 の 何 人 か が ,CRE の メ ン バ ー に な っ て お り ,さ ら に ネ ッ ト ワ ー ク の 輪 が 世 界
中に広がっていくことを確信している。実務界ではなくアカデミックなポジション
にいるものにおいてすら,その有用性と将来の発展性を強く実感しているところで
ある。
4.専 門 家 に求 められる要 件
わが国の不動産鑑定ビジネスは,大きな内需と官需に支えられながら,一度試験
に 合 格 し て し ま え ば ,一 生 仕 事 が で き る 時 代 が 長 く 続 い た 。し か し ,内 需 は 縮 小 し ,
官需も期待できない中では,専門性の幅を広げ,新しいビジネス機会を創造してい
くことと,活躍の場を限定するのではなく,地理的にも広い市場を対象として事業
を展開していくことが要請される。
そのためには,そのような市場で活躍できる専門性を身に着けていかなければな
ら な い 。不 動 産 鑑 定 士 の 試 験 科 目 に あ る の は ,民 法 ,行 政 法 規 ,鑑 定 評 価 理 論 な ど ,
国内の知識だけである。会計学や経済学では,その他のプロフェッショナルな専門
-5-
家と比較すれば,必ずしも優位性を持っているわけではない。これらだけでは,複
雑化する市場とグローバル化する市場の中では,専門家として生き残っていくこと
は難しくなるのではないか。
これからの市場の中で生きていくためには,金融,統計,国際財務などの知識も
要求されよう。しかし,何よりも強く要求されるのが,顧客視点に立ったプロフェ
.
.
.
.
.
.
.
.
...
.
ッ シ ョ ナ ル な 行 動 で あ ろ う 。 CRE の ホ ー ム ペ ー ジ を 見 る と ,「 The professional
.
.
..
.
.....
.
...
.
organization for the most trusted advisors on Real Estate」と あ る 。こ こ に 書 か れ て い る
一文字一文字の意味をしっかりと考えなければならないものと感じている。
そ し て ,一 人 で も 多 く の 日 本 人 の 専 門 家 が ,CRE や FRICS と な っ て 国 を ま た が る
専 門 家 と 協 業 し , 国 際 的 に 活 躍 さ れ る こ と を 願 っ て い る 。 (バ ン ク ー バ ー に て )
[謝 辞 ]
CRE,FRICS の 日 本 で の パ イ オ ニ ア は , 磯 部 裕 幸 氏 で あ る 。 同 氏 に は , 本 稿 へ の 執 筆 の
機 会 を い た だ く だ け で な く , 筆 者 を CRE の メ ン バ ー に し て い た だ く た め に 多 大 な 尽 力
をいただいた。ここに記して御礼申し上げます。
以
≪ 発 行 ; NPO 法 人 日 本 不 動 産 カ ウ ン セ ラ ー 協 会 広 報 委 員 会 ≫
〒 105-6016
東 京 都 港 区 虎 ノ 門 4-3-1 城 山 ト ラ ス ト タ ワ ー 16 階
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