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顆粒球吸着療法の 新しい可能性

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顆粒球吸着療法の 新しい可能性
The 56th Congress of
the Japanese Society for
Dialysis Therapy
第56回(社)日本透析医学会学術集会・総会
ランチョンセミナー11
2011年6月17日
パシフィコ横浜
顆粒球吸着療法の
新し い可 能 性
司会
札幌北楡病院
米川 元樹 先生
演題
安 全 な 体 外 循 環 治 療 の た め に ー た か が D H P、され ど D H P ー
演者:社会保険中央総合病院 臨床工学部
炎 症 性 腸 疾 患 治 療 に お ける G M A の 位 置 付 け
司会挨拶
演者:札幌厚生病院 IBDセンター
山家 敏彦 先生
田中 浩紀 先生
炎 症性 腸 疾 患(I B D)に対 する顆 粒 球 吸着療 法(G M A)は、有用性を示す成 績 が増えるなか
で 適 用症 例が拡 大しつつある。本セミナーではG MAの安 全 性確 保とIBD 治療におけるG MAの
役 割をテーマとして、二人の専 門 家に お 話しいた だくことにした。ここで 示されるG M Aのエビ
デンスや施行 法に関する貴重な情 報を、今後のIBD 治療に活かしていただければ幸いである。
米川 元樹
先生
共催 第56回(社)日本透析医学会学術集会・総会
株式会社 JIMRO
顆粒球吸着療法の新しい可能性
講演1
安 全な体外循環 治療のために
― た か が D H P、さ れ ど D H P ―
社会保険中央総合病院 臨床工学部
山家 敏彦
先生
体外循環による治療としては透析が良く知られる。炎症性腸疾患の治療に用いられる顆粒球吸着療法(GMA)は直接血液灌
流法(DHP)であり、透析に比べるとシンプルであるが、安全に実施するためには幾つか知っておくべきことがある。ここでは
我々の経験から得た知見を紹介したい。
アダシステムの特徴と注意点
路では血液ポンプの上流側が陰圧を、下流側が陽圧を呈す
るが、当院でのGMAの圧測定では回路全体で陰圧が持続
していた。このためシリンジポンプの押子が外れると抗凝
アダカラム 専 用 の 体 外 循 環 装 置(アダモニター)と 血
固薬の流入が加速する恐れもあり、注意が必要である。
液 回 路( アダサー キット)を 用 いた 治 療 システムをアダ
体外循環開始前に回路内から空気を排除 することはい
システムという。
うまでもない。アダカラムには血 液回路に対する国の基 準
GMAで は 静 脈 から 体 外 へ 導 いた 血 液 に 抗 凝 固 薬 を
(厚生省薬務局長通知「透析型人工腎臓装置承認基準に
加えて白血 球 吸 着カラム(アダカラム)へ送り、顆 粒 球・
ついて」昭和58年6月20日 薬発第494号)に則り目開き
単 球 を 選 択 的 に 吸 着 除 去した 血 液 を 体 内 へ 戻 す。当 院
210μmのメッシュフィルターが装着されており、空気が抜
で は バ スキュラーアクセ スに 用 い る 穿 刺 針 は 、サイドホ
け難い場合がある。空気が抜け難いことを頭におき、念を
ール が 4 個 の 透 析 用17G を 用 いて い るが、サイドホール
入れてプライミングを行っていただきたい。
2 個 の18 Gで もアダカラムに 必 要な 3 0 m L /m i n の 流 量
を 得 ることは 十 分 可 能 であ る。穿 刺 針 の サイズ は 外 径
表 示 が 国 際 基 準 とな って おり、包 装 に 外 径と内 径 が 併
アダカラムの吸着特性と治療時間
記されてい る場 合 があるので 注 意していた だきたい。例
えば「外 径18 G( 内 径 2 0 G )」といった 表 記 の 内 径 のみ
G M Aに お ける適 正な 血 流 量 は 3 0 m L /分とされてい
が 記 憶 に 残り、誤って外 径 2 0 G を 使 用 すると十 分な 血
る。一 般 的には 血 流 量を 低 下させるほどカラム 出 入り口
流 量 が 得られ な い可 能 性 があ る。また、透 析と異 なり、
部 で の 吸 着 効 率 は 向 上するが、凝 固 活 性 は 亢 進して 回
アダサー キットで は ニードルレスのアクセ ス ポートを 使
路 内 凝 固のリスクが上 昇する。流 量を変 更した場 合 の 有
用 で きな い 。検 体 採 取 時 の 穿 刺 事 故 に よる 感 染 を 防ぐ
効 性、安 全 性につ いては エビデ ンスもな いことから、現
には ニードルレスの 完 全 化 が 望ましいが、そ れ が 実 現す
時点では 3 0 m L /分を標 準とするのが 妥当である。
るまでは 取り扱いに 細 心 の 注 意を払う必 要がある。
抗 凝 固 薬 にヘ パリンまたはナファモスタットメシル 酸
透 析との 違 い はもうひと つ あ る 。標 準 的 な 透 析 回 路
塩を使 用するが、ほとんどの 症 例はヘ パリンで 治療 が 可
には エアトラップチャンバーが 動 脈 側 、静 脈 側 の2ヵ所
能 である。当 院 ではヘ パリンは初 回 8 0 0 U (単位 )を投与
に備えられてい るが、アダサーキットのエアトラップチャ
し、その 後は 5 0 0 U/10 0 m L / 時 の ペースで 持 続 注 入す
ンバーは静脈 側にしか設 置されていない。D HPでは、血
る。これを基 本とするが、凝 固 能の 抑 制は活 性化 凝 固 時
液 凝固の状 態を判断するためにはカラムの入口圧と出口
間を治療前値の1.2倍程 度に延長するように調節する。
圧の差をモニターする必要がある。圧差はほぼ一定に推移
顆 粒 球 が アダカラムのビーズに 吸 着 するためには 、最
するが、乱れが生じる場合は要注意である。一般に透析回
初に免疫グロブリンや 補 体 がビーズに吸 着されている必
2 安全な体外循環治療のために ―たかがDHP、されどDHP―
要がある。顆 粒 球はこれらの蛋白に特異的に結 合するこ
とにより捕 捉され る。補 体 がビーズに 吸 着 するためには
*P < 0 . 0 01
図1 アダカラムの経時的な吸着 特性
カラム入口 カラム出口
Ca イオン が 必 要 であ るため、Ca イオンをキレ ートする
抗 凝 固 薬は使 用できない。
G M Aの 適 応 疾 患は潰 瘍 性 大 腸 炎とクローン 病 である
が、潰 瘍性 大 腸炎の使 用成 績調査において治療中に発 生
した 操 作 関 連トラブル の 種 類と頻 度を 表1に 示 す。症 例
10 0
ラブル 発 生率は2 .3%であった。トラブルに対しては血 流
量の 変 更やカラムの 交 換、再 穿 刺などの 処置により対処
されていた。ほとんどの場 合、治療 継 続が 可能であり、凝
固21件(0.40%)、静脈 圧上昇18件(0.34%)、血管確
全白血球
%
14 0
12 0
数あたりのトラブル 発 現 率は8. 2%、施 行回数あたりのト
*
NS
12 0
NS
*
‡
16 0
止を要することは極めて少ないことが解る。
14 0
*
開 始 時 15 分 3 0 分 6 0 分 終了時
総施行回数:5,287回
発現症例数:57例(発現率8.2%)
不 具合 種 類 * 症 例 数(%)* *
*
NS
21( 0 . 4 0 )
12(1.7 )
18 ( 0 . 3 4)
血管 確 保 が 困 難
24 (3 . 4)
4 2( 0 .7 9 )
脱 血不良
3 8 (5 . 5 )
74 (1. 4 0 )
返 血不良
1( 0 .1)
1( 0 . 0 2 )
同 一 症 例 に お いて 重 複 あり
発 生 症 例 数 / 解 析 症 例 数 X10 0
* * * 発 生件 数 / 総 施 行 回 数 X10 0
リンパ 球
%
14 0
NS
#
12 0
*
NS
‡
*
10 0
NS
80
NS
NS
NS
60
NS
#
開 始 時 15 分 3 0 分 6 0 分 終了時
40
0
開 始 時 15 分 3 0 分 6 0 分 終了時
n =21 平均血 液 処 理 時 間:112分±19.8分
件 数( %)* * *
静脈 圧上昇
**
開 始 時 15 分 3 0 分 6 0 分 終了時
社 会保 険中央 総合病院 臨 床 工学 部
凝 固 14 ( 2 . 0 )
*
0
NS
60
0
*
NS
80
20
*
#
単 球
10 0
40
80
60
12 0
解析症例数:697例 NS
40
%
不良1件(0.0 2%)と、トラブル の 発 現 率は低く、治療 中
発生件数及び回数:156件/122回(発生率2.3%)
#
40
18 0
NS
*
10 0
60
0
好中球
%
14 0
NS
#
80
保困難42件(0.79%)、脱 血不良74件(1.4 0%)、返 血
表1 潰瘍 性大腸炎に対する使用成 績調査
における体外循環操作上の問題
# P < 0 . 01
‡P < 0 . 0 5
P a i r e d t- t e s t
19 9 9 年10月2 9日∼2 0 0 6 年10月2 8日
JIMRO社内資料
短期集中型治療の安全性
これまでGMAは週1回の治療を5から10週継続するの
が標 準的方法 だが、近 年の 保険改 定により実 施間隔の縛
りがなくなり、臨床効果の改善を目指し短期集中型治療の
有用性が検討されている。当院でGMAを2週間に10回施
治 療 中止の 判 断とも関 連 するため、アダカラムの吸 着
行する方法を試みたところ、従 来の方法と、観察期間中の
特 性を 理 解しておくことは 重 要 であ る。当 院 にてカラム
全白血 球とその各成分の数に有意 差はみられ なかった。
通 過 前 後 の白 血 球 数の 変 化を 経 時 的 に 追 跡した 成 績を
副 作用発 現 率は週1回治療で 61.1%、2 週間短 期 集中治
図1に 示 すが、全 白 血 球 、好 中 球 、単 球 、リンパ 球とも、
療で83.3%であった。副作用はいずれの方法でも比 較的
開 始15 分 後までは 吸 着 率が 低 い。したがって、最初の 約
高頻度であったが、これは副作用収集の時間を治療日の翌
15分はアダカラムの吸着 性能をフルに発揮させるための
日までと長めにとり、治療との関連が不明確な症状も拾い
準 備 時 間と 考えられ る。例 えば 3 0 分 程 度 で 中止した 場
あげたためと考えられる。副作用として訴えられた症状の
合、最初の15分は吸着 作用がほとんど働かず、作用が 発
9 0%以 上は頭痛であり、鎮痛薬で対処可能、あるいは無
現するのは後半15分だけとなり、治療 効果は不十 分にな
治療でも忍容できるものであった。なお治療を中断あるい
る可 能 性 があ る。トラブル が 起こっても 必 要 な 処 置をと
は拒否した症例は皆無であり、2週間短期集中治療の安全
り、現状では60 分 継続することが 望ましいと考える。
性に問題はないと考えられた。
3
顆粒球吸着療法の新しい可能性
図2 各種針固定法の固定力
施行時の工夫と注意点
さきに 治 療 中 の 操 作 関 連トラブル は 少な い と 述 べ た
が、抜 針 事 故 のリスクを 無 視 する わけ に は いかな い 。そ
こで テ ープ 固 定 の 強 度 を 幾 つ か の 方 法 で 比 較してみた
ところ 、固 定 力 は 我々 が 新 た に 考 案した 方 法 が 最 大 で
α字固定
あった。当 院 の 新 固 定 法を図 2 に 示 す(右 から2 つ目)。
固 定 する の が 一 般 的 だ が、新 固 定 法 で は 約5㎝ 四 方の
テープを2枚 用いて針を固 定 する。この方 法を 個 々の施
設 で 採 用してい る方 法と 比 較し、より抜 けにくい方 法を
模 索して 頂くことをお薦 めする。
最 後 に 駆 血と 加 温 の 問 題 にも ふ れてお き た い 。血 流
量 が 不 十 分 な 場 合 の 処 置として 駆 血 と 加 温 があ るが、
駆 血と 加 温 を 同 時 に 行 うと 熱 が 局 所 に 鬱 滞して低 温 火
傷 を 誘 発 する 恐 れ があ る。駆 血と 加 温 の 同 時 併 用 は 避
けるべきであることを強 調しておきたい。
4 固定力
細 かく切 った テ ープ を4∼ 5 枚 以 上 貼って 針とラ インを
(N)
70
60
50
40
30
20
10
0
U字固定 4ヶ所固定
貼付面積5,000mm 2
当院の
当院の
新固定 法 固定 方法
8,750mm 2
社 会保 険中央 総合病院 臨 床 工学 部
炎症性腸疾患治療におけるGMAの位置付け
講演2
炎症性 腸 疾 患治療におけるG MAの 位置 付け
札幌厚生病院 IBDセンター
田中 浩紀 先生
消化管に慢性の炎症を引き起こす疾患として潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)があり、炎症性腸疾患(IBD)と呼ぶ。
IBDは原因不明の難病であり、現在のところ根治療法はない。治療の目標は、速やかに寛解導入し可能な限り長期に維持するこ
とであるが、最近、それを可能にする治療法のひとつとして顆粒球吸着療法(GMA)が注目されている。ここではGMAの臨床成
績を紹介し、IBD治療におけるその位置付けを検討したい。
顆粒球吸着療法(GMA)の奏効機序と安全性
潰瘍性大腸炎治療におけるGMAの位置付け
近 年 、I B D の 患 者 数 は 右 肩 上 が りに 増 加して お り、
UCは大腸粘膜に炎症が起こる疾患であり、直腸だけに
2 0 0 9 年に おける患 者 数はU C が 約113 , 0 0 0人、C D が
病 変がみられる直 腸 炎型、炎症が左側大 腸に拡がる左側
約 3 0,0 0 0人と推 計されてい る。この10 年間で U Cの患
大 腸 炎 型、病 変 が大 腸 全 域を 侵す全 大 腸 炎 型の3タイプ
者 数は 2 倍、C D の それは1. 5 倍に 増 加した。発 症には 遺
がある。これらのうち直 腸 炎 型には局所 療 法 が 有 効であ
伝、環 境 、免 疫 異常 の 3 因 子 が 関 係すると 考えられてい
り、全身的 治療の対 象となるのは左側大 腸 炎 型と全 大 腸
るが、治療 の標 的となるのは免 疫 異常である。
炎型である。潰瘍性大腸炎の診療ガイドラインに記載され
活 動 期 I B D 患 者 の 病 変 部 位の 組 織 には 顆 粒 球 、単 球
た段階的治療法を図1に示す。
などの 炎 症 性 細 胞 が 浸 潤 すること が 報 告 されて お り、
G M A は こ れら の 細 胞 をアダカラムで 吸 着して 除 去、あ
るい は カラムを 通 過して 活 性 の 低 下した 白 血 球 を 体 内
に 戻 す こと に より 炎 症 を 抑 制 す ると 考 えら れて い る 。
G M Aの 特 長 は安 全 性 が 極 めて 高いことである。当 院 に
お けるG M A 副 作用 発 生 率 を 表1に 示 すが、副 作用が 発
生したのは 計 6 4 4 回 の 施 行 のうち 31件、発 現 率 は 4 . 8
%であった 。発 現 率が 低 いだけ でなく、重 篤 な 症 状 がみ
られ なかったことも注目に値 する。
全大腸炎型
左側大腸炎型
5-ASA 製剤
サラゾピリン ®・ペンタサ®・アサコール®
経口・経直腸投与
改善なし or 迅速な治療必要
経口 PSL30∼40mg/ 日
改善 or 寛解
白血球除去療法
PSL60mg/ 日は 40mg より
効果的だが副作用は多い
表1 GMAの副作用発 生率
ステロイド不応例・
離脱困難例
頭痛
5件
(0.8%)
発熱・悪寒
1件
(0.2%)
嘔気・嘔吐
17件
(2.6%)
8件
(1.2%)
31件
(4.8%)
めまい
図1 軽症∼中等症の潰瘍 性大腸炎
(左側・全大腸炎型)の寛解導入 治療
白血球除去療法
免疫調節薬
(AZA・6−MP)
栄養補助療法
(魚油脂肪酸・GBF)
寛解維持治療に移行
「6.7 重傷潰瘍性大腸炎
の寛解維持療法」
図 5 参照
推奨グレード A
推奨グレード B
推奨グレード I
※これらの保存的治療により効果が得られない例では外科治療を考慮する
PSL: プレドニゾロン
エビデンスとコンセンサスを統合した潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン(2006年1月)より引用改変
初期治療では5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤が有効
であり、5 0%以 上の症 例が 寛 解に到達するといわれる。
問題は初期 治療が奏 効しない 場 合であるが、第二 段階の
計
総施行回数:644
札 幌 厚生 病院 IBDセンター
治療には長い間ステロイドが用いられてきた。ステロイド
はIBDに優れた効果を発揮するが、骨粗鬆症、糖尿病、緑
5
顆粒球吸着療法の新しい可能性
内障、高血 圧、精神障害、小児における成長障害など重篤
な副 作用を引き起こす。このため、ステロイドの長 期投与
や治療抵抗例におけるステロイド増量は避けるべきという
のが共通認識になっている。
ス テ ロ イド へ の 依 存 を 減らす 手 段として 期 待 され た
GMA であるが、最近まで、治療選択肢としてステロイドと
同列に評価されることは少なかった。その理由は GMA の
効果発現が遅く、寛解に 1 ヵ月程度を要することである。
図3 GMAの集中治療成 績
(ステロイド反応性ごとの寛解率)
%
10 0
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
これは最初に保険適用された GMA の治療法が週 1 回と
対象:潰瘍性大腸炎
100%
63%
55%
全体
抵抗
依存
ナイーブ
(n=3 0) (n=5) (n=11) (n=14)
ナイーブ:未 投与
札幌厚生病院IBDセンター
定められていることによる。そこで、速効性のある方法を求
め、週1回法に対する週 2 回法の有効性と安全性が医師主
導の臨床研究で検討された。その結果、寛解到達日数は週
2 回群において著明に短縮し(P<0.0001)、寛解率は週
1回群 54%、週 2 回群 71%であり、後者で有意に高かっ
た(P=0.029)。また集中治療による副作用発現率は週 1
回法と有意差はなく、忍容性は良好であった(Sakuraba A,
et al. Am J Gastroenterol. 2009;104:2990-2995)。このよ
うなエビデンスをふまえ、GMA の保険上の施行頻度に関
図4 GMAの集中治療成 績
(寛解率に影響する患者背景 ― 性別)
%
10 0
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
する規定が改められ、2010 年 4 月より集中治療が施行で
対象:潰瘍性大腸炎
75%
63%
40%
全体
(n=3 0)
男性
(n=2 0)
を行い、寛解導入率は 63%、寛解導入に要した期間は平均
表2 GMAの集中治療成 績
(寛 解 率に影 響する患者背景 ― 年齢と罹病期間と重 症 度)
対象:潰瘍性大腸炎
11.1日という治療成績を得ている(図 2)。
図2 GMAの集中治療成 績(寛解率)
対象:潰瘍性大腸炎
寛解率63.3%
(n=30)
無効
11/30
女性
(n=10)
札幌厚生病院IBDセンター
きるようになった。
当院ではこれまでに 30 例の UC 患者に対し集中治療
57%
全体
(n = 30)
年齢
罹病期間
(年)
CAI
41.3 ± 17.3
寛解
(n = 19)
無効
(n = 11)
35.4 ± 13.9 51.6 ± 18.4
表2
t-test
P=0.011
4.3 ± 6.4
3.4 ± 4.4
5.8 ± 9.0
NS
9.7 ± 2.7
9.1 ± 2.5
10.7 ± 2.8
NS
平均 値± 標 準 偏 差
札幌厚生病院IBDセンター
寛解
19/30
寛解までに要した期間
クローン病治療におけるGMAの位置付け
11.1 ± 6.6日
札幌厚生病院IBDセンター
CDは病 変が大 腸にのみ生じるUCと異なり、全消化 管
に炎症を生じうる疾患である。初期病変はびらんや浅い潰
また、ステロイド使用歴のない症例の 57% で寛解導入
瘍であるが、病態が進行すると深い縦走潰瘍に変じ、さら
が可能であった(図 3)。GMA の寛解率に影響する患者背
に増悪すると狭窄、瘻孔を形成する。治療は病態の進行度
景として男性、若年、軽症、罹病期間の短い患者に著効例が
に応じ、初期には5-ASA製剤投与とアミノ酸、糖質を主体
多い傾向を示した(図 4、表 2)。また、ステロイド抵抗性が
とする栄養 療 法を行い、ある程 度 病 態が 進行した段階で
認められた患者は 5 例であったが、全例寛解に到達した。こ
はステロイドを使用、それでも増悪が抑えられない場合は
の結果からみて、UC に対する GMA は発症後早期からの
免疫調節薬と抗 TNF-α抗体を併用する。このような治療
施行が望ましく、また、ステロイド使用を回避する有力な治
の流れのなかで、GMAがどのような役割を担うか、GMA
療法と考えられる。
の臨床成績に基づき、検討した。
6 炎症性腸疾患治療におけるGMAの位置付け
CDに対する GMA の有効性は国内の多施設共同試験で
響を及ぼす背景因子を検 討したところ、寛 解 率は罹 病 期
検討されている。この試験では、大腸に主病変を有し、栄養
間が5年未満と短く、治療前のCDAIスコアが30 0未満の
療法が無効であった CD 患者 21 例を対象に、GMA を週1
群で高いことが明らかになった。しかし、有効率は罹病期
回ずつ 5 週間治療を行った。この結果 CD の活動指数であ
間、CDAIスコアに関わりなく、ほぼ同等であった。
る CDAI、IOIBD スコアが有意に低下し、QOL(Quality of
GMAが著 効した症例を図6に示す。潰瘍性病変は軽 度
Life)を示す指標であるIBDQスコアが著明に改善した。
であったが、発熱、炎症所見が強く、ステロイドを使用して
寛解率は 29%、有効率は 52%であった(Fukuda Y, et al. J
もCR P高値が持 続した。そこで G MAを施 行したところ、
Gastroenterol. 2004; 39:1158-1164)。
この成績をふまえ、厚
発熱、炎症が消退するとともに、内視鏡所見も著明に改善
生労働省は CD に対する GMA の効能追加を承認したが、
した。
同時に保険適用の条件を、栄養療法及び既存の薬物治療が
無効又は適用できない、大腸の病変に起因する明らかな臨
床症状が残る中等症から重症の活動期 CD 患者の寛解促
進に使用することとした。治療法は週1回の頻度とされてお
り、集中治療は保険適用外である。なお、上記の試験が実施
された時点では、抗 TNF-α抗体であるインフリキシマブ
図6
症例報告:10 代男性
消化管広範にアフタ+肛門病変を有するクローン病
罹患期間:3年未満
内視鏡所見は軽微だが、発熱・CRP高値、膵炎を合併
プレドニゾロン40mg 2週間投与で CRP正常化しない
→ GMAにより寛解
G MA 治療前
(IFX)はまだ使用されておらず、IFX 無効例における GMA
の有効性は明らかになっていない。
当院では20 0 9 年からCDに対 するG MAを開始し、こ
れまで20例に実施した。この20例中13例はIFX抵抗性で
G MA1クール 終了後
あり、1例はI F Xを投与できない 不 耐 例であった。全症 例
及びIFX未投与例、IFX抵抗・不耐例におけるGMAの寛解
率、及びCDAI改善効果を図5に示す。
札 幌 厚生 病院 IBDセンター
図5 クローン病に対するGMAの効果
%10 0
(a)寛解率
80
60
35%
40
20
0
C DA I
400
300
の役割は次のようになるであろう。寛解導入目的の場合に
21%
(7/20)
(4/6)
(3/14)
全体
I F Xナイーブ
I F X 抵 抗・不 耐
(b)IFX反応性ごとのCDAI改善効果
P=0.001
P=0.0001
312
P=0.067
225
200
10 0
0
以 上の成 績からみて、難 治 性CDの治療におけるGMA
67%
246
340
247
173
GMA前 GMA後
GMA前 GMA後
GMA前 GMA後
全体
(n=2 0)
I F Xナイーブ
(n= 6)
I F X 抵 抗・不 耐
(n=14)
P a i r e d t- t e s t
は、罹病 期間が5 年 以内であり、またCDAIが3 0 0を超え
ない時期にGMAを施行することが望ましい。しかし、罹病
期間が長く活動性が高いCDでもGMAは臨床症状を改善
しうるので、QOLを改善するという意味で有用性が期待で
きる。また、G M AはI F X 抵 抗例においても症 状を改 善す
る。IF Xの有 効性は確 立しているが、症 例によっては十 分
な効果が得られないこともある。また、感染症や悪性疾患
などを合併していると、IFXのような生物学的製 剤は使 用
できない。さらにIFXには、長期投与に伴い寛解維持 効果
I F Xナイーブ:I F X 未 投与
が 減 弱する二 次 無 効という現 象 がみられる。このように
札 幌 厚生 病院 IBDセンター
IF X 治療に問題 が 生じても、G MAはその 代 替 手段として
寛解率は全体の35%に対しIFX抵抗・不耐群では21%
有用性を発揮しうる。要約すると、GMAにより寛解導入を
と低かったが、この群においてもCDAIスコアは治療前 後
目指すには早 期、軽 症から中等症の段 階での治療が 望ま
で平均340から247へと有意に改善した。CDAIスコアが
しいが、症 状 緩和とQOL改善は病期や重症 度に関わりな
70以 上低下した症例の比 率(有 効率)は全体 65%、IFX
く効果が期待できる。
抵抗・不耐群64%と同等であった。GMAの治療効果に影
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The 56th Congress of
the Japanese Society for
Dialysis Therapy
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2011年11月作成
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