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及川委員参考資料

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及川委員参考資料
及川委員参考資料
2015年11月27日
東日本大震災以降の日本盲人会連合の対応
社会福祉法人日本盲人会連合
副会長
及川
清隆
日本盲人会連合は都道府県・政令都市における61の視覚障害者団体の
連合体になり、視覚障害者自身の手で「自立と社会参加」を実現しようと
組織された全国組織になります。
2 0 11 年 3月 11 日 に発 生 した 東日 本 大震 災 をう け、本 連合 で は国 や
各 都 道 府 県 に 対 し て 視 覚 障 害 者 の 要 望 事 項 の 陳 情 、独 自 調 査 を 通 し て 視 覚
障害者と防災に関する情報の公開を行い、視覚障害者の防災に関する環境
の向上に努めています。
つ き まし て は、以下 に 本連 合 が行 った 国 や自 治 体へ 提出 を した 要 望事 項
の 内 容 、東 日 本 大 震 災 後 に 行 っ た ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 を 記 載 い た し ま す 。
Ⅰ
国に提出した要望事項
毎年5月に開催する「全国盲人福祉大会」において決議された内容を元
に 、各 府 省 庁 に 陳 情 を 行 っ た 要 望 事 項 。掲 載 内 容 は 防 災 関 連 に 関 す る 事 項 。
2012年
・ 国 、都 道 府 県 、市 町 村 の 障 害 福 祉 計 画 に 、視 覚 障 害 者 避 難 路 及 び 避 難 場
所等の防災に対する具体的対応計画の明文化を要望する。
・ 東 日 本 大 震 災 で 被 災 し た 障 害 者 に 、期 限 を 決 め て 障 害 者 年 金 の 増 額 等 を
要望する
・ 東日本大震災において視覚障害被災者が経験した命の危険と避難所等
に お け る 困 難 が 繰 り 返 さ れ る こ と の な い よ う 、十 分 な 事 前 策 と し て の 安
全対策の推進やマニュアルの作成とその周知徹底を図っていただきた
い。
・ 東日本大震災において視覚障害被災者が経験した命の危険と避難所等
に お け る 困 難 が 繰 り 返 さ れ る こ と の な い よ う 、十 分 な 事 前 策 と し て の 安
全対策の推進やマニュアルの作成とその周知徹底を図っていただきた
い。
1
2013年
・ 災 害 時 に お い て 、福 祉 施 設 を 福 祉 避 難 所 に 指 定 し 、そ の 周 知 を 図 る と と
も に 障 害 別 に 配 慮 し た 避 難 所 と な る よ う に 一 定 数 の 物 品( 白 杖 、防 災 ベ
スト、ルーペ、携帯ラジオ等)を備えていただきたい。
・ 災 害 発 生 時 に お い て 、視 覚 障 害 者 が 避 難 先 で 、生 活・移 動・心 身 の ケ ア
をサポートしてもらえるよう配慮した障害者災害福祉専門員を創設し
て い た だ き た い 。ま た 、障 害 者 災 害 福 祉 専 門 員 に お い て は 、資 格 ま た は
認定制度として創設していただきたい。
・ 災 害 時 、障 害 当 事 者 の 情 報( 血 液 型 、緊 急 連 絡 先( 電 話 番 号・メ ー ル 等 ))
を統一した書式で作成するとともに、必要な部分を加筆できるような
「災害カード」のようなものを作成していただきたい。
・ 東 南 海 地 震 災 害 に 備 え て 、視 覚 障 害 者 へ の 避 難 情 報 を 迅 速 か つ 的 確 に 伝
えるためのシステムづくりを確立するよう国から各自治体に働きかけ
ていただきたい。
・ 災 害 発 生 時 に お い て 、視 覚 障 害 者 の 安 否 確 認 が 円 滑 に 行 わ れ る よ う 、各
自治体における「個人情報」の開示をしていただきたい。
2014年
・ 災害時における視覚障害者に対する支援体制の充実を要望する。
・ 災 害 時 に お い て は 、視 覚 障 害 者 の た め の 2 次 避 難 所 を あ ら か じ め 確 保 さ
れるよう要望する。
2015年
・ 災 害 時 に お け る 初 期 緊 急 避 難 の 際 、視 覚 障 害 者 が 近 隣 の 住 民 の 支 援 を 受
けられるためのマニュアルの作成を要望する。
Ⅱ
自治体に提出した要望事項
2013年4月~5月に岩手県、宮城県、福島県、仙台市に対して提出
した要望事項。
1.安否確認について
( 1 ) 早 急 な 被 災 者 の 実 態 把 握 の た め 、障 害 者 計 画 の 中 に 要 援 護 者 名 簿 の
作成を明確に記すこと。
(2) 個別の避難計画策定推進を図ること。
( 3 ) 災 害 時 要 援 護 者 登 録 し た 障 害 者 に つ い て は 、そ の 個 人 情 報 を 必 要 な
2
福祉団体及び支援団体へ速やかに開示すること。ただし、管理責任
は団体が持つことを原則とする。
( 4 ) 安 否 確 認 等 に つ い て は 、視 覚 障 害 者 が 、電 話 不 通 時 で も 利 用 可 能 な
携帯端末を開発促進し、配布すること。
2.防災・避難
( 1 ) 要 援 護 者 を 速 や か に 避 難 所 へ 誘 導 で き る よ う 、町 内 会 単 位 の 民 生 委
員等の派遣システムを構築すること。
(2) 視覚支援学校(盲学校)及び視覚障害者福祉施設・公共施設を、福
祉避難所として利用できるよう避難所指定をし、その指定施設を広
報等の媒体で啓発、周知徹底を図ること。
( 3 ) 福 祉 避 難 所 が 確 保 で き な い と き は 、避 難 所 内 に 視 覚 障 害 者 用 の 専 用
スペースを確保すること。
( 4 ) 各 地 域 に お け る 身 近 な 施 設 と 自 治 体 と が 、視 覚 障 害 者 等 障 害 者 緊 急
避難拠点として利用可能となるよう、支援体制の連携強化を図るこ
と。
(5) 防災災 害救助 法に 位置付 けられ る、 避難所 及び在 宅で の生活 ・移
動・心身のケア等をサポートできる障害者災害福祉支援専門員及び
支援員の資格制度を創設すること。また、制度創設に伴う、地域災
害派遣福祉チームの組織化の構築化と共に、その人材育成を推進す
ること。
(6) 避難所内での文字情報提供時には必ず音声案内もすること。
( 7 ) 視 覚 障 害 者 等 障 害 者 や 防 災 弱 者 を 対 象 と し た 地 域 ぐ る み の 防 災 、避
難訓練の実施を推進すること。
( 8 ) 町 内 会 単 位 等 で 視 覚 障 害 者 等 障 害 者 の 存 在 を 把 握 し 、そ れ に 応 じ た
防災・避難マニュアルを作成すること。
( 9 ) 警 報 ・ 注 意 報 が 出 さ れ た 場 合 、要 援 護 者 へ の 緊 急 避 難 の 情 報 及 び 避
難移動等の人的支援の行政指示系統等の明確化を図ること。
(10)
避 難 所 に は 視 覚 障 害 者 が 必 要 と す る 白 杖 、点 字 機 、ル ー ペ 等
を備えること。
3.仮設住宅・復興住宅支援
( 1 ) 仮 設 住 宅 建 設 に 当 た っ て は 、視 覚 障 害 者 等 障 害 者 の 利 便 性 に 配 慮 し
たユニバーサルデザイン住宅となるよう、一定割合の仮設住宅数を
確保すること。
( 2 ) 災 害 公 営 住 宅 建 設 に 当 た っ て は 、設 計 段 階 か ら 視 覚 障 害 者 等 障 害 者
3
の意見聴取を行うと共に、完成前にユニバーサルデザイン点検が可
能となるよう配慮すること。
(3) 復興住 宅や災 害公 営住宅 への視 覚障 害者等 障害者 の入 居希望 に当
たっては、優先的に入居とすること。
( 4 ) 仮 設 住 宅 設 置 に お い て は 、地 域 気 候 に 対 応 し た 断 熱 材 等 の 建 設 資 材
や設備備品を整備し、住みよい居住環境の構築を図ること。
4.公共交通機関・視覚障害者の移動
( 1 ) 地 下 鉄 構 内 表 示 等 の 消 灯 を や め 、弱 視 者 等 に 配 慮 し た 最 少 の 減 灯 を
すること。
( 2 ) 視 覚 障 害 者 の 自 立 歩 行 が 困 難 と な ら な い よ う 、公 共 施 設 や 商 店 街 周
辺の誘導ブロックの破損及び歩道の陥没等は、早急に補修整備を図
ること。
( 3 ) バ ス 路 線 の 変 更 及 び 時 刻 表 等 の 情 報 提 供 が な い た め 、視 覚 障 害 者 等
障害者の利用が困難となっている。よって、広報等で早急に情報提
供を図ること。
( 4 ) 岩 手 県 内 の J R 大 船 渡 線 が 、震 災 に よ り 、盛 駅 か ら 気 仙 沼 駅 間 が 寸
断されている。代替交通手段としてBRT方式での開通となってい
る 。交 通 弱 者 と し て の 私 た ち は B R T 方 式 を 暫 定 と し 、2,3 年 内 を
目処とする、早い時期の鉄道方式の復活整備を図ること。
5.雇用就労
(1) 震災により、自宅や仮設住宅でのマッサージ・鍼・灸業は、患者数
が減少しており、収入が激減し、生活に困窮している。よって、民
間企業や県市町村などの公的機関にも震災臨時雇用支援職員枠の中
で、視覚障害者の機能訓練指導員・ヘルスキーパー等の雇用を図る
こと。
( 2 ) 仮 設 住 宅 で の 開 業 は 、部 屋 が 狭 隘 な た め 、生 活 ス ペ ー ス や 治 療 ス ペ
ースの確保が困難である。よって、空いている仮設住宅を専用の施
術室として開設できるようにすること。
( 3 ) 被 災 者 健 康 維 持 の た め の マ ッ サ ー ジ が 行 わ れ て い る 。し か し 、無 資
格者と有資格者マッサージ業とが混在している。よって、有資格者
(視覚障害者を含む)マッサージ業が脅かされることのないよう周
知徹底を図ること。
6.地域生活支援
4
(1) 生活物資の出張販売者、出張金融サービスの促進を図ること。
(2) 視覚障害者は外出困難者であることから、心身の維持増進のため、
外出支援ガイドヘルパーサービス料の柔軟な対応を図ること。
( 1 ) ( 3 )「 視 覚 障 害 者 用 防 災 グ ッ ズ セ ッ ト 」 を 日 常 生 活 用 具 に 加 え る
こと。
(3) 心身のケアなどをサポートする相談員の派遣の充実を図ること。
( 4 ) ガ イ ド ヘ ル パ ー ・ ホ ー ム ヘ ル パ ー の 利 用 に 当 た っ て は 、視 覚 障 害 者
等障害者の利用時間を、震災特例として拡大を図ること。
( 5 ) 視 覚 障 害 者 の 健 康 管 理 の 目 安 と し て 開 発 さ れ た 、空 間 線 量 を 音 声 で
知らせる「しゃべる線量計」を日常生活用具給付対象品に加えるこ
と。
( 6 ) 震 災 直 後 は 、生 活 物 資 の 配 給 及 び 購 入 支 援 等 は 視 覚 障 害 者 等 障 害 者
には充分でなかったため、今後は在宅要援護登録避難者への自宅支
援強化を図ること。
(7) テレビ字幕での情報提供には必ず音声を付加すること。
( 8 ) テ レ ビ ・ ラ ジ オ の 難 視 聴 地 域 が 多 い 岩 手 県 沿 岸 地 区 に 対 し て 、中 波
をFM波に変換する装置を設置することが可能なら、富山県の例に
倣ってその手立てを講じ、難視聴地域の解消を図ること。
(2) 以上要望する。
Ⅲ
当事者へのアンケート調査
1.調査の目的
東日本大震災で、特に被害が大きかった岩手県・宮城県・仙台市・福島
県に在住する視覚障害者の災害発生時とその避難生活でどのような状況
に置 か れた の か、また 困 った こ とは 何か を 分析 す るこ とを 目 的と し た調 査。
2.調査の実施方法
日本盲人会連合加盟団体(岩手県・宮城県・仙台市・福島県)の会員に
対して、墨字と点字調査票によるアンケート調査を実施。
調 査 期 間:平 成 2 3 年 1 2 月 2 7 日( 火 )か ら 平 成 2 4 年 1 月 2 5 日( 水 )
調査依頼数:80件
3.アンケート調査結果(分析)
(1)調査結果
5
有効回答数78件(回答率97.5%)
県別内訳
岩手県13件 福島県16件 宮城県29件 仙台市20件
性別内訳
男
48名(62%)
女30名(38%)
家族に晴眼者の方はいるかどうかの内訳
いる
57名(73%)
いない
20名(26%)
※無回答1名
(2)災害時の個人情報について
アンケート調査結果からは、78名中、76名(97%)の視覚障害者
が 、個 人 情 報 を 開 示 し て も よ い と い う 回 答 で あ っ た 。東 日 本 大 震 災 発 生 後 、
視覚 障 害者 団 体で は安 否 確認 の ため に個 人 情報 の 開示 を求 め たも の の、個
人情報保護法と、障害者手帳が県の管轄であること等の理由から、被災し
た自 治 体に 住 む視 覚障 害 者の 名 簿を 入手 す るこ と はで きな か った 。その た
め、視覚障害者団体の会員以外の多くの方が、どのような被害を受けてい
るの か 正確 な 情報 を得 る こと が でき なか っ た。1 人で も多 く の被 災 した 視
覚障 害 者が 、適切 な支 援 を受 け られ るよ う にす る ため に は 個 人情 報 の開 示
が必要である。
一方、個人情報の開示については、自分の名簿が流れることに不安を感
じる人もあるが、何よりも大切な命を守ることを最優先するためにも、災
害時には、個人情報を開示する必要性について、理解を求めていくことも
重要である。
(3)災害の発生状況の入手先について
災害の発生情報の入手について、テレビ・ラジオからの放送により入手し
た人が48名(62% )と最も多かった。緊急時に、視覚障害者に情報
を提供するときに最も確実な情報提供手段は、テレビ・ラジオではないか
と考えられる。
今 回 の 災 害 発 生 及 び 状 況 を ど の よ う に し て 知 っ た か に つ い て 、自 治 体 か
らの広報で知った人は、9名(12%)であった。日常的に自治体の広報
を情 報 源と し てい る人 が 少な い 中、今回 の 災害 に 対す る当 事 者か ら の要 望
では、自治体に情報提供の拡充として、ホームページなどによる情報提供
の み で は な く 、音 訳 や 点 訳 に よ る 個 別 の 情 報 提 供 を 行 っ て 欲 し い と い う 意
見がみられた。自治体の視覚障害者への情報提供について、自治体が行っ
ている情報提供と、視覚障害者が求めている情報提供には差があり、視覚
障害者は自治体による情報提供を頼りにしたくても頼りにしにくい点が
伺える。
(4)避難所生活で困ったことについて
避 難 所 生 活 に お い て 、ト イ レ に 行 き た い と き に ど う す る か と い う 問 題 が
6
一番 に あげ ら れ、その 問 題点 は トイ レの 場 所や ト イレ への 移 動が 最 も多 く、
それぞれ約50%の回答であった。それ以外の問題として、トイレの使用
方法による回答が22名(28%)あり、その他、トイレが汚れている、
断水のため不衛生という意見もあった。以上のことから視覚障害者は、ト
イレに行くことが大変で、さらにトイレにたどり着いても、使用方法がわ
からずに大変であり、トイレに関しては非常に問題が多かった 。避難所で
の食事では、情報入手について困った人が24名(31%)おり、避難所
での情報がうまく入手できない人もいた。
ま た 、食 事 を 入 手 で き て も 、食 事 の 袋 を 開 封 す る こ と が で き な か っ た り 、
食事をうまく受け取れなくてこぼしてしまったりした人もいた。
トイレや食事について、トイレに連れて行けば終わり、食事を渡せば終
わりではなく、どうしたらトイレをきちんと使うことができるか、食事を
きちんと食べられることができるかまで、配慮が必要となる。
(5)第2次避難所(福祉避難所)について
今 回 の 災 害 に あ た り 、視 覚 障 害 者 の 避 難 先 と し て 第 2 次 避 難 所 の 存 在 の
必要 性 がク ロ ーズ アッ プ され た が、実際 に 第2 次 避難 所に 避 難し た 人は ど
れ く ら い い る の か 、第 2 次 避 難 所 の 存 在 を 知 っ て い た か に つ い て 調 査 を 行
ったところ以下の結果が出た。
第2次避難所に避難した人は、15名(19%)で、避難しなかった人
は54名(69%)だった。また、塩原や国リハなどの視覚障害者関連施
設 が 避 難 所 に 指 定 さ れ た こ と を 知 っ て い た 人 は 7 名( 9 % )の み で あ っ た 。
さらに、上記施設が避難所に指定されたことを知っていても、実際に避難
をした人は1 人もいなかった。
ほと ん どの 人 が、避難 所 に視 覚 障 害 者関 連 施設 が 指定 され て いた こ とを
知ら な かっ た こと から 、視覚 障 害者 への 情 報提 供 が十 分に さ れて い ない こ
と が 伺 え る 。ま た 、存 在 を 知 っ て い て も 避 難 し た 人 が い な か っ た こ と か ら 、
視 覚 障 害 者 関 連 施 設 を 避 難 所 に 指 定 す る の み で は な く 、実 際 に 被 災 し た 視
覚障害者が避難しやすいようにすることが必要である。
Ⅳ
自治体へのアンケート調査
1.調査の目的
東日 本 大震 災 にお いて 行 政が 、地域 の視 覚 障害 者 やそ の支 援 団体 に 対し
て、どのように支援したのかを分析するための調査。
7
2.調査の実施方法
岩手県・宮城県・仙台市、福島県の自治体に、調査票を郵送し、回答を
メールまたはファックスで受けた。
調 査 期 間:平 成 2 3 年 1 2 月 2 7 日( 火 )か ら 平 成 2 4 年 2 月 1 5 日( 水 )
調査依頼数:124件
3.アンケート調査結果(分析)
(1)調査結果
有効回答数86件(回収率69.3%)
各自治体別
岩手県
2 4 /3 1 件 ( 回 収 率
仙台市
1/
77%)
1件(回収率100%)
宮城県
2 9 /3 4 件 ( 回 収 率
85%)
福島県
3 2 /5 8 件 ( 回 収 率
50%)
(2)視覚障害者の支援団体からの要望について
アンケート調査結果から、65件(76%)の自治体が、視覚障害者の
支援団体から援助は求められなかったという回答があった。
また、要望があった団体に関しては、名簿の開示・提供に応じた自治体
が ( 8 9 % )、 支 援 物 資 を 配 付 し た 自 治 体 が ( 1 0 0 % ) と い う 高 い 割 合
で要望に応じているという結果になっている。各視覚障害者団体からは、
自治体に対し、名簿の開示・提出を求めても要求に応じてくれなかったと
いう意見が多数あった。自治体と、視覚障害者団体との双方の間に認識の
違いがあることが見られる。以上のことから、団体と自治体間での認識の
差を埋めることが必要であると考えられる。
(3)避難所における支援について
避難所における支援について、各自治体では、視覚障害者にどのように
情報提供を行い、どのような支援を行っていたか調査を行った。
その結果、担当者によるアナウンスを行った自治体が46件(53%)と
最も多く、次いで、掲示板などに案内を貼りつけたが34件(40%)だ
った。担当者によるアナウンスも、掲示板に貼ったときのみでは、十分な
情報提供といえず、また、掲示板などに案内を貼りつけるのみでは、視覚
障害者は情報を得ることができない。
ま た 、 避 難 所 内 に 福 祉 の ス ペ ー ス を 設 け た 自 治 体 は 4 件 ( 5 % )、 移 動
時 に お け る 個 別 援 助 者 の 配 置 を し て い る 自 治 体 は 8 件 ( 9 % )、 食 事 や 支
援物資を直接配付している自治体は16件(19%)と避難所において視
覚障害者に支援を行っている自治体は少なかったことわかる。
(4)第2次避難所について
8
視覚 障 害者 は 通常 指定 さ れて い る避 難所 で は、長 い間 生活 す るこ と が困
難であり、そのため要援護者は、各自治体に、第2次避難所の設置を求め
ている。
このことから、各自治体が第2次避難所を設置しているのかどうか、ま
た、第 2次 避 難所 にお い てど の よう な施 設 を提 供 して いる か 調査 を 行っ た
結果、第2次避難所を設置している自治体は31件(36%)のみであっ
た。第 2次 避 難所 とし て 設置 さ れて いた 施 設の 多 くが 社会 福 祉施 設 等1 4
件(45%)であり、視覚障害者が望む第2 次避難所として適している
場合 が 多か っ たこ とか ら も、第 2次 避難 所 の設 置 を自 治体 に 強く 求 めて 行
くことが重要だといえる。
Ⅴ
当事者及び自治体アンケートを合わせた分析結果
1.災害に関する情報提供について
視 覚 障 害 者 が 災 害 の 状 況 を 知 る 方 法 と し て 、自 治 体 か ら の 広 報 に よ り 情
報を得た人は、全体の12%と少ない数字だった。主な情報源としては、
やはり、テレビ、ラジオが62%と最も多かった。
避難所内での食事について配給等の情報がわからずに困った人が3
1 % と 最 も 多 か っ た こ と に 対 し 、避 難 所 で の 情 報 提 供 は 担 当 者 に よ る ア ナ
ウン ス が5 3 %と 最も 多 く、次 いで 掲示 板 など に 案内 を貼 り 付け た 自治 体
が40%であった。
また、第2次避難所については、知らないと答えた視覚障害者は全体の
81%であった。第2次避難所を設置している自治体は36%と、低いこ
ともあり、多くのの視覚障害者が第2次避難所を知らなかった。墨字で作
成された広報誌や張り紙による情報収集が難しい視覚障害者にとっては
厳しい状況であった。
避難所内での情報提供としてアナウンスが最も多かったところを見る
と、自治体は災害時に視覚障害者に対し、情報提供が重要であることを十
分理解していることがわかる。アナウンスによる情報提供は、視覚障害者
に と っ て は 有 効 な 情 報 提 供 の 方 法 で は あ る も の の 、実 際 は そ の 場 に い な か
った 人 は聞 く こと がで き ない た め最 も有 効 であ る とは 言え な い。課 題と し
て自 治 体と 視 覚障 害者 と が日 頃 から コミ ュ ニケ ー ショ ンを と り、お 互い を
知ることが必要である。
2.個人情報の開示・提供について
9
当事者アンケートの結果から、個人情報について、76名(97%)が開
示 し て も よ い と 回 答 し た 。多 く の 視 覚 障 害 者 が 災 害 な ど の 緊 急 時 に は 個 人
情 報 を 開 示 し て も か ま わ な い こ と が 結 果 と し て 出 た が 、東 日 本 大 震 災 で は
多くの自治体が開示には消極的であった。
また、自治体が視覚障害者の支援団体から求められた協力は、団体から
名簿の開示・提供を求められた自治体は9件(10%)のみであり、団体
から何も要求がなかったと回答した自治体は65件(76%)であった。
自治体は、団体からの名簿の開示要求に8件(89%)応じることができ
たとしている。
こ の ア ン ケ ー ト と は 別 に 、多 く の 視 覚 障 害 者 団 体 が 地 域 の 安 否 確 認 の た
め自 治 体に 個 人情 報の 提 供を 求 めた こと に 対し 、回答 を得 ら れて い ない 中
で、このアンケート結果からは、自治体は、視覚障害者の支援団体に情報
を十分提供しているということになる。自治体と視覚障害者との間で、意
見や考えの相違が出てきている。個人情報の開示や提供については、個人
情報保護法や、障害者手帳が県の管轄であること等、難しい問題が多いた
め、一足飛びにはいかないが、今後の大きな課題の1つである。
3.避難所での支援について
避 難 所 で は 障 害 の 有 無 に 限 ら ず 、す べ て の 方 が 満 足 な 支 援 を 受 け る こ と
は で き な い が 、視 覚 に 障 害 が あ る こ と か ら 支 援 が 受 け ら れ な い こ と は あ っ
てはならない。避難所では視覚障害者の多くが、トイレに行くことができ
ない、トイレの使い方がわからない、食事の配給場所がわからない、移動
することができない等、目が見えない、見えにくいことにより、生活する
上で、必要最低限の支援を満足に受けられずに困っていた。
今回 の 視覚 障 害当 事者 か らの 避 難所 での 意 見と し て、避難 所 で基 本 的な
生活 が でき な いこ とか ら あえ て 避難 所に 行 かな か った 人や 、視覚 障 害者 は
晴 眼 者 と 違 う こ と を 理 解 し て 欲 し い と 願 う 意 見 が あ げ ら れ た 。避 難 所 内 に
お い て も 、 周 囲 に 援 助 を 求 め て も 、「 万 が 一 怪 我 を さ せ た ら い け な い の で
手伝えない」と言われた人もいた。
避難所での支援のあり方について、視覚障害当事者は、個別支援員の配
置 3 9 名 ( 5 0 % )、 個 別 の 情 報 伝 達 3 9 名 ( 5 0 % ) を 求 め て い る 。 自
治 体 で 実 施 し た 避 難 所 内 で の 支 援 は 、避 難 所 内 に 福 祉 の ス ペ ー ス を 設 け る
4 件 ( 5 % )、 移 動 時 に お け る 個 別 援 助 者 の 配 置 8 件 ( 9 % )、 食 事 や 支 援
物資を直接配付16件(19%)であった。避難が一時的なものであった
としても、トイレ、食事といった、生きることに最低限必要な支援は、視
覚障害の特性に配慮が必要である。
10
避難 所 では 生 活が 困難 な 視覚 障 害者 のた め に、第 2次 避難 所 の設 置 を自
治体に求めている。第2次避難所の設置件数が少ない理由として、自治体
は 第 1 次 避 難 所 で 対 応 可 能 で あ っ た た め と い う 意 見 や 、多 く の 人 が 自 宅 へ
戻ることができたためとしている。
自治体には、第2次避難所の必要性を理解していただくとともに、第2
次避 難 所に 関 する 視覚 障 害者 へ の情 報提 供 を十 分 に行 い、被 災し た 人が 第
2 次避難所に避難しやすいように環境を整えていただく必要がある。
ア ン ケ ー ト 結 果 か ら 、自 治 体 と 視 覚 障 害 者 と の 意 見 の 相 違 が 多 く 見 ら れ
た。問題を解決するためにも、自治体と視覚障害者とでコミュニケーショ
ンをとり、お互いに理解を深めていく必要がある。
11
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