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東日本大震災による児童館の状況について

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東日本大震災による児童館の状況について
2012.3.28
東日本大震災による児童館の状況について
財団法人児童健全育成推進財団
1.被災した児童館の状況 (平成 23 年 12 月 12 日まで育成財団把握情報より)
岩手県
宮城県
1
1
14
3
2
3
13
2
地震による全壊
地震による半壊・一部破損
津波による流出・水没
3
地盤沈下
1
床上浸水
避難所・ボラセンとして一時使用
給水所として一時使用
福島県
栃木県
茨城県
1
2
東京都
2
8
放射能による閉館
1
地震を原因とする廃館
2.震災発生直後から平成 23 年度までの当財団の支援活動
3.11 東日本大震災直後より、当財団では被災県の児童館の被害状況について情報収集
を始めた。岩手県、宮城県、茨城県の児童館連絡協議会に連絡を取りながら、現地の方々
に負担をかけないように被害状況の把握に努めた。福島県は児童館連絡協議会の事務局
が南相馬市に置かれていたため、県全域の児童館の状況把握は困難な状況が続いた。
また、早々に全国の児童館・放課後児童クラブ等の健全育成・子育て支援関係者より、物
資提供やボランティア等被災地支援活動についての照会や調整の要望が相次ぎ、当財団
に「復興支援プロジェクトチーム」を立ち上げた。被災地の子どもの居場所に関する情報を精
査するとともに、「必要なところへ適切なタイミングで適当な量だけ届ける」ことを基本的な姿
勢に中間支援をおこなうこととした。
あわせて、同月より東日本大震災「児童館活動支援募金」を立ち上げ全国に呼び掛けた。
平成 23 年
4月
○被災地調査(岩手県、宮城県)
○岩手県社会福祉協議会児童館部会「いわて子ども遊び隊」活動支援
(物品提供、支援金、寄贈品コーディネート、車両提供)恒常的活動
○寄贈品のコーディネート 恒常的活動
○福島県広野町避難所プレイルーム運営支援(アドバイザー派遣)
5月
○児童館再開支援(備品等整備等)恒常的活動
○被災地情報報告会(東京)
○企業寄贈品のコーディネート(被災児童館への遊具)
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6月
1
○移動児童館車両「ぱんぷきん号 」派遣
○福島県児童厚生員・放課後児童指導員研修会への職員派遣
7月
○CCC2「Tカード提示で被災地に児童館を」プロジェクト協力 恒常的活動
8月
○南相馬市子ども支援プログラム・夏休みコンサート実施
○移動児童館車両「ぱんぷきん号 1」派遣支援
○企業寄贈品のコーディネート(いわて GINGA ネットへの遊具)
○気仙沼市児童館への児童館建具寄贈
9月
○南三陸町みんなの児童館(宮城県南三陸町)竣工・運営協力
(CCC2Tカード・児童館プロジェクト)
○児童館職員によるボランティアキャラバン「SEPTEMBER CARAVAN」
(岩手県 6 市町・宮城県 9 市町・福島県 3 市)
10 月
○写真集「こどもえがお」(仮)プロジェクト開始 恒常的活動
○被災地状況報告会(京都)
11 月
○松屋銀座・銀座三越「GINZA FASHION WEEK」チャリティ・読み聞かせ企画
(宮城県塩竃市・仙台市)
○岩手県釜石市での仮設児童館建設準備 恒常的活動
○東日本大震災中央子ども支援センター3 協議会参画 恒常的活動
12 月
○仙台市子ども支援プログラム(朗読劇上演)
○日産プレジデント基金「あそびプラス One」プログラムのコーディネート
恒常的活動
○被災地の放課後児童クラブのための冬休み支援プログラム
(新潟県にて劇団派遣)
平成 24 年
1月
○被災地状況報告会(東京)
○釜石市児童館の備品寄贈の全国呼び掛け
○福島市放課後児童クラブ等子どもの居場所視察調査
○福島市放課後児童クラブ・児童館職員研修会協力
○宮城県児童厚生員等研修会協力
2月
○被災地状況報告スタッフ派遣(三重)
○釜石市「唐丹児童館」竣工・運営協力(CCC2Tカード児童館プロジェクト)
○岩手県・宮城県・福島県の児童館連絡協議会に支援金配分
3月
○釜石市「鵜住居児童館」建設、什器備品等提供
○松屋銀座・銀座三越「GINZA FASHION WEEK」チャリティへの協力
※1 ぱんぷきん号・・・かぼちゃのカラーリングを施した2tトラックの荷台の内部で、おもちゃで遊んだり、絵本やDVDを
みたりできる子育て支援カー。北海道士幌町の中士幌児童ステーションが所有。
※2 CCC・・・TSUTAYA などを運営する企業。
※3 東日本大震災中央子ども支援センター・・・被災地の子どもに関する民間団体などを組織して専門家の派遣や専門的
な助言等の支援を継続的に行う厚生労働省関係組織。平成23年10月27日に設置された。
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3.今後の取組の方向性
大震災から 1 年が経とうとする今、災害支援を中心とするNPO・NGO等ボランティアが被
災地より撤収していくことが予想されている。しかし、被災地の子どもたちの支援については、
子どもや子育ての支援を専門とする支援する団体の継続的な活動がこれからもさらに必要
だと考えている。
当財団においては、震災直後より実施してきた取組を引き続き継続していくとともに、ゆる
やかに変わっていく現地・現場ニーズを追いかけながら、長期的な観点から支援活動を創
出していくこととしている。
また、東日本大震災中央子ども支援センター3 協議会の加盟団体等との連携のもとに、児
童館・放課後児童クラブ等地域における遊び場や居場所づくりの後方支援をおこない、あわ
せてソーシャルワークの観点によるプログラムについても試行していきたいと考えている。
4.児童館に求められる役割
3.11東日本大震災発生後から間もない平成23年3月31日、厚生労働省より地方自治体に向
けて『児童館ガイドライン』(雇児発0331第9号)が発出された。それは、児童館の運営や活動が
地域の期待に応えるための基本的事項を示し、望ましい方向を目指すものとした通知である。
昨今、児童館行政が自治体の財政難や既存施設の老朽化等により全国的に低調な活動状
況が危惧されていたため、その活動や運営の向上を図るために重要な国からの打ち出しとなっ
た。被災した地域の児童館にとっても“嵐の中の羅針盤”となることが期待された。
以下、児童館に求められる普遍的役割について、『児童館ガイドライン』の内容に照らしなが
ら整理するとともに、阪神・淡路大震災や能登半島地震の際に児童館が果たした事例から緊急
的役割にも言及することとする。
(1) 子どもの遊びの場・居場所として必要性
①子どもの遊び場として、常時異年齢交流や仲間づくりが図られる居場所となる。
②子どもの日頃の様子を把握し、家庭と連絡をとり適切な支援をおこなう。
③子どもに遊びの方法やプログラムを提供して、その発達を支援する。
④子どもが自分の気持ちや思いを気軽に話せる場となる。
⑤留守家庭児童や要保護児童が安心して過ごせるよう見守り、適切に支援する。
⑥子育ての交流の場の提供や保護者の相談援助をおこなう。
⑦地域の子どもの問題の発生予防、早期発見等のソーシャルワークに努める。
⑧保護者や子どもにかかわる人に向け、関係情報の収集・発信をおこなう。
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(2) 子ども・子育てのコミュニティセンターとしての必要性
地域には多くの社会資源があるものの、子どもや子育てに長期的、継続的、横断的に関
わるものは極めて少ない。0~18 歳未満のすべての子どもを対象とする児童福祉施設の児
童館は、子どもや子育て支援に関する中核施設となりうる。乳幼児や小学生、中高生の多様
な子どもが利用し、その保護者や地域住民、ボランティア等が自然に集まるため、その触媒
となる。児童館に設置される運営委員会は、地域の関係者で構成されており、そもそもその
運営には社会資源が活用されている。地域における子育ての当事者グループや支援者グ
ループの中間支援の役割も可能となる。
公営児童館では行政システムとしてのネットワークの拠点に適しており、例えば、東京都
杉並区では「地域子育てネットワーク」が各小学校区に立ち上げられ、児童館がその事務局
となっている。保育園、幼稚園、学童クラブ、父母会、青少年育成委員会、民生児童委員、
主任児童委員、母親クラブ、町会、PTA 等で構成され、次のような取組をおこなっている。
①子育てを通じた人と人との交流、つながりづくり
②子育て情報の交換・提供
③子ども自身のネットワーク参加
④子育て機関を地域に開く
⑤個別ケースでの連携対応
⑥行政部門間の連携強化
(3) 災害時の児童館の役割
児童館は、日頃から子どもの安全確保の観点から、地元の警察や消防、学校、病院等と
セーフティネットを組んでいることが多い。市区町村担当課や管理運営団体事務局への緊
急通報や連絡網もあり、事件、事故、災害発生時に機能するために一応の体制を整えてい
ると思われる。
また、地域の子どもたちと継続的な関わりをもっており、その家族関係や生活状況を把握
していることも少なくない。子どもや保護者にとって学校外での避難場所として認識しやすい
地域施設であると思われる。
阪神・淡路大震災では、神戸市のいくつかの児童館が支援物資の保管・配布場所やボラ
ンティアの活動の場所となったが、日頃から地域のネットワークが活発であったところのほう
が、物資の整理や分配、ボランティアの調整なども円滑だったと報告されている。
能登半島地震では、輪島市の児童館が避難所となった。避難所生活を強いられた子ども
に遊びを提供しストレスを発散させたり、ひとり親の育児レスパイトをおこなったり、精神的に
不安定になった親の相談などにも当たったとの報告がある。
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その他、児童館が災害時に果たせる役割を列記する。
【初期(緊急)対応】
①地域児童の一時避難・保護・安全確保
(※子どもにとって「いつも行く場所」の安心感がある)
②地域の広域避難場所・指定避難場所への誘導
③保護者・学校・行政・関係機関等への連絡
④地域利用児童・登録児童の安否確認
⑤応急手当てや緊急対応
⑥災害関連情報の収集・提供
⑦水・食料等の配給、炊き出し
⑧トイレ、電話等設備・備品等緊急物資の貸出
⑨救援物資の保管・配給場所
⑩避難所としての施設開放
(※避難場所として指定されていなくても結果的に児童館には近隣の住民が集まる。
特に、子どものいる家庭には、体育館等より生活用品、空調などの整った児童館が好まれる傾向があった。)
【中・長期(復興期)対応】
①地域の被害状況の把握・情報整理
②子ども・子育て関係のニーズ把握
③ボランティアや外部支援者の調整
④児童の健康・衛生面の管理・予防
⑤遊び場・居場所の提供
⑥遊びを通した児童・家庭の問題の早期発見、発生予防
⑦児童の情緒安定、グループワーク
⑧児童・保護者への相談対応、継続的見守り、ケースワーク
⑨地域の被災者への支援活動、コミュニティワーク
⑩仮設住宅等へのアウトリーチ活動
5.児童館と他の専門職が連携して実施する被災地域児童支援の可能性
被災地域の児童館では、まず子どもや子育て家庭の情報を行政や他の専門職と共有する
ことが課題となる。児童館に配置されている児童厚生員(児童の遊びを指導する者)は、地域
児童の性格や家庭状況などを把握している場合があり、遊びの活動や生活の支援を通して
築かれた人間関係を基盤に、被災した地域の子どもや保護者を支援していくこともできる。地
域の気軽な居場所として、また子どもを中心としたコミュニティセンターとしても大いに期待で
きる。
児童館が地域での身近な窓口となって、子ども・子育てにかかるニーズをワンストップで受
け止めていくことができれば理想的であるが、遊びや生活の場面で表出された子どもやその
親の福祉課題に対して、心理面、医療面、経済面等での専門的支援(ソーシャルワーク)に限
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界があることは否めない。児童館の機能や児童厚生員の役割を超える問題に関しては、必要
に応じてその分野ごとの専門機関に橋渡ししていくことも大切である。
地域のさまざまな社会資源がそれぞれの専門性を活かして児童館の利用者を直接的に支
援していくこととあわせて、当該地域の子ども・子育て支援者のための研修やスーパービジョ
ンなど、“支援者を支援する”間接的な支援活動も重要である。
児童館が連携・協働する社会資源例
福祉資源
教育資源
地域関係資源
人的資源
その他の資源
(2012 依田)
福祉事務所(家庭児童相談室)、社会福祉協議会(都道府県、市町村、地区・学区)、
児童相談所、保健所・保健センター、保育所、母子生活支援施設、放課後児童クラブ、
子育て支援センター、子ども家庭支援センター、ボランティアセンター、
ファミリーサポートセンター、勤労青少年ホーム
幼稚園、小学校、中学校、高校、専門学校、大学・短大、公民館、図書館、PTA、
教育センター
母親クラブ、地域女性会、町内会・自治会、老人クラブ、子ども会、育児サークル、
子ども文庫
主任児童委員、民生・児童委員、保健師、助産師、少年補導委員、交通安全指導員、
医師(小児科、児童精神科)、看護師、弁護士、保護司、児童福祉司、
スクールソーシャルワーカー、
ボランティア(主婦、会社員、保護者、高齢者、学生等)
行政各部局、警察署(交番)、消防署、病院、青年会議所、商工会、体育振興会、
農業協同組合、地元企業・会社・商店 等
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