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フランス都市・交通政策視察報告 フランス都市・交通政策視察報告

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フランス都市・交通政策視察報告 フランス都市・交通政策視察報告
2012/12
フランス都市・交通政策視察報告
(12/712/7-12/11 ディジョン・リヨン)
一般社団法人カーフリーデージャパン
望月真一/谷本文子
●はじめに
12 月 8 日のフランス・ディジョン Dijon のトラム開通式に参加してきました。また、そ
の翌 9 日は、リヨンで光の祭典を堪能してきました。
今回の視察経緯は、ディジョンのトラム2路線の沿線デザイン全てを、市長から直接、
依頼されたデザイナーの Alfred PETER 氏に、そのお披露目会へお誘いを受けたためでした。
Alfred PETER 氏は、ストラスブールのトラム沿線のアーバンデザインで、一躍、第一人者
となった方です。
実は、10 年ほど前にも、フランス派のトラムにかかわるデザイナー達が、Traminos(ト
ラム運転手の古い語)というグループ名でヘルシンキに集まり、私もお誘いを受け、参加
しました。彼らの仲間がデザインしたトラムの開通時には、みんなで集まって祝っている
ので今回はぜひとも経験をしたいと思ったわけです。
●ディジョンのトラム開通とまちなか整備について
フランスのトラム導入は、ついに 2-30 万人都市にまで及んできました。かつて、トラ
ムがある都市が 3 都市までに追いやられた状態から、今では、そろそろ 30 都市に迫ろうと
しています。最近のトラム導入では、都市規模的に無理をしているためか、様々な方法で
ローコスト化が図られています。
ディジョンのトラムも同様で、すでに導入されたブレストと同じ車両を共同注文してい
ます。しかし、ブレストとは色違いで、ディジョンの顔となるようカシス色のトラムにし
ています。整備はローコストですが、デザイン的な工夫を織り込みながら十分に美しいト
ラムの町並みに一新されました。
以前は、ディジョンは、25 万人都市ではトラムを持つには規模が小さいと考え、バスネ
ットワークを充実させていました。バスだけで毎日5万人を中心部に運んでおり、街中の
狭い道路では、沿道の土地利用や施設立地に応じて、様々な歩車共存の交通形態が観察さ
れるところでもありました。こうしたことから、私は、世界でも注目すべき、公共交通に
よる中心市街地活性化の解決法の代表として、必ずディジョンを紹介してきました。それ
だけに、今度は、トラムの威力がどのように発揮されているのかと興味津々でした。
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開通されたばかりのトラム第二路線。試乗の人々で溢れる。この日は運賃無料
開通したトラム 2 路線は、一部同じ部分を走りますが、2 路線の延長 20km に 35 駅の駅が
あり、毎日 9 万人が、バスとトラムの公共交通ネットワークを利用します。トラムは一路
線 3.5-4.0 万人/日の乗降客があるので、小都市としては、何とか、及第点の利用だと思
います。今後、沿線の整備が進むと、乗降客も相当増えることは間違いありません。現状
で、トラム沿線 500mの範囲内に居住人口の 32%、就労人口の 37%をカバーするという効率
的な設定になっています。
まちなかに目を移しますと、個人利用の公共交通であるコミュニティバイクも、2010 年
から設置されていて、自転車 800 台、40 のステーションあります。これぐらいですと、小
都市なので、何とか使える規模だと言えます。ただ、当日は休日だったので、仕事、買い
物ともに利用者がいませんでした。
また、以前は、町の中心部の歩行者専用道路のトランジットモール部分は、最も人々が
行き交うところであるとともに、バス路線が集中し、常にバスが連なっているほどの多さ
でしたが、トラム導入に伴い、バスを通さずに、完全な歩行者専用道路化となりました。
トラムは、その町の中心軸のトランジットモールから、少し離れた道路に平行して走らせ
ているのですが、少し歩かなければならなくなったので、中心部の賑わいが損なわれてい
ないか、気になっていました。しかし、真冬にもかかわらず、ゆったりと歩けるためか、
かえって、より多くの人でにぎわう歩行者空間に変わったことを確認し、安心しました。
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CarFreeDayJAPAN
かつてはバスが渋滞するほどのトランジットモールだったが、今は完全歩行者専用道路化され、人々で溢れる中心部
車回しや駐車スペースの車のために使われていたオープンスペースが、トラム導入にあ
わせ、駅前広場を含め、3 ヶ所の主要なオープンスペースがトラムと人のための広場に変わ
りました。トラムとバスや鉄道との結節点として、人々の行き交う広場へと大きく変えた
ことは、交通計画の賜物であるとともに、改めて、デザインの重要性に気付かされました。
トラム導入都市としてフランスでそろそろ 25 番目ぐらいになる都市の経験を学んでおき
たいということと、将来、日本でもあるかもしれないと淡い期待を持ちながら、トラム開
通式にも参加し様子を観察しました。トラム開通にあたり、どのような広報やイベントを
行っているのだろうかという点と、市民の人々の反応を見るのが楽しみでした。
第 2 路線の開通日には、まちのイベントが行われ、トラムは無料で乗れて、人々がトラ
ムで移動しながら、様々な場所でイベントを楽しめるようになっていました。開通日がク
リスマスに近いこともあって、トラムのイメージを活用したクリスマス商戦とあわせて、
さらに大きな催しのような効果を挙げていました。昨年も、アンジェのトラム開通直後の
一週間の無料サービスの時に訪れ、3 世代の一家総出の物見遊山の人たちが目立っていまし
たが、新しいトラムがわが町にも来たことを楽しんでいた興味深い印象が強く残っていた
ので、今回も、開通日の様子を体験できたことは大変いい機会となりました。
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中心部の広場でのトラム開通式。モチーフのカシス色でイルミネーションが施される。
●リヨン 光の祭典について
様々な都市で光の祭典を行っていますが、おそらく、リヨンが、都市レベルで行った最
初の都市と思います。3 日間、夜間に、中心部で人が溢れているという、想像をはるかに超
えた、大規模ですばらしい一大都市イベントでした。
リヨンは、1989 年から、公共空間整備政策を進め、市域全体で 300-400 ヶ所のほぼすべ
てのオープンスペースを、車から人中心の広場、公共空間に転換してきました。これは、
一大アーバンデザインプロジェクトで、美しく快適な街に転換を果たしてきました。
もともと、近世、近代の歴史的町並みは、すばらしかったものの、以前は建物も黒ずん
だままで、アスファルトと車が目立つ大都市で、中心部には人が少なくすさんでいました。
しかし、先の政策により、瞬く間に見違えるほどに美しい街となり、さらに、都市交通政
策においても先進都市となり、この 20 年で大きな都市改造が成功し、豊かな都市生活の舞
台となっています。
こうした美しい都市空間だからこそできる、観光イベントと言えますが、それよりも、
市民全体の都市文化イベントだと思います。
人気のライティングプログラムを展開する会場(広場)にたどり着くには、大きく迂回
をしなくてはならないほど、人がいっぱいで、人ごみの中を 30 分以上歩いてようやくひと
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つのスペクタクルが鑑賞できました。日が落ちてから真夜中まで、ずっとお祭りです。
実は、この光の祭典の時にも、いろいろと工夫がなされています。店舗照明は落とされ、
住宅からも光が漏れないようにし、まちなかにある街路灯は、ほぼすべて、真っ赤な光に
演出されました。そして、10%ほど消費電力を落としているということでした。そのため、
中心部いたる所で、様々な色彩の光の演出がされているにもかかわらず、全体の消費電力
は日常と大差ないということに驚きました。
まちなかの歴史的建造物が至る所でライトアップされる
●終わりに
パリにも少しだけ立ち寄ったのですが、トラムの工事も進んでおり、また、ちょうど一
年前から始まった EV パブリックカーの AUTOLIB’も、パリ市内、郊外にステーションを配
置し、現在はおそらく 2000 台ほどの規模になっていると思いますが、電気自動車のブルー
カーのサービスを見ることができました。
来るたびに、想像を超えて展開しつづけるフランスの都市交通ですが、そろそろ進化も
一息つくだろうと思ったのですが、今回の視察から、衰えを見せないどころか、さらに加
速度がついて、さらに先に進んでいっている印象を受けました。この先もどうなっていく
のか、興味が尽きません。
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