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清酒消費量と清酒製造企業数の将来予測について
ビジネスクリエーター研究学会 第9回大会 2012年12月2日 於 立教大学 池袋キャンパス 清酒消費量と清酒製造業数の 将来予測について 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 後期課程 右田 圭司 問題意識 清酒製造産業の経営は一般的に低迷状態にある。昭和 50(1975)年以降、企業数、製造量、売上、利益のいずれにおい ても、長期の低迷状態を続けており、1998(平成10)年以降は、 業界全体の60%以上が欠損または低収益の経営状況である にも関わらず、清酒産業や個々の企業には接続可能性に対す る警鐘を鳴らす雰囲気が感じられない。 目的 清酒製造産業が持続可能な産業であるか否かを、予測モデル によって検証することを目的としている。 清酒製造業の業績推移(全企業平均) 全企業平均 1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 清酒売上高(百万円) 400,000 200,000 0 清酒製造業の業績推移(専業区分90%以上) 専業区分90%以上 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 清酒売上高(百万円) 平成11年 平成10年 平成9年 平成5年 平成4年 平成3年 平成元年 昭和63年 昭和62年 昭和60年 昭和59年 昭和58年 昭和55年 昭和54年 昭和53年 昭和51年 4 平成21年 平成20年 平成19年 平成18年 平成17年 平成16年 平成15年 平成14年 平成13年 平成12年 平成21年 平成20年 平成19年 平成18年 平成17年 平成16年 平成15年 平成14年 平成13年 平成12年 平成11年 平成10年 平成9年 平成5年 平成4年 平成3年 平成元年 昭和63年 昭和62年 昭和60年 昭和59年 昭和58年 昭和55年 昭和54年 昭和53年 昭和51年 昭和50年 昭和48年 △ 50,000 昭和50年 昭和48年 清酒製造業の業績推移(全企業平均) 全企業 150,000 100,000 50,000 税引前純利益(百万円) 0 △ 100,000 清酒製造業の業績推移(専業区分90%以上) 専業区分90%以上 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 税引前純利益(百万円) 5,000 0 日本酒メーカーの倒産推移 引用:東京商工リサーチ http://www.tsrnet.co.jp/news/analysis/2012/1219627_2004.html S50~H21年清酒製造業者 製造数量規模企業タイプ (収益企業・低収益企業・欠損企業)の推移① 2,500 2,233 2,000 1,774 1,700 1,678 1,508 1,489 1,484 1,462 1,500 1,407 1,367 1,000 500 0 欠損企業数 低収益企業数 収益企業数 1,338 1,324 1,289 1,266 1,241 S50~H21年清酒製造業者 製造数量規模企業タイプ (収益企業・低収益/欠損企業)の推移② 全体 900 社 837 846 806 800 社 700 社 855 829 798 785 757 652 765 756 656 638 578 600 社 539 540 512 532 510 500 社 476 400 社 300 社 200 社 100 社 0社 200~300kl 低 収 益 欠 損 企 業 数 H16 300~500kl 収 益 企 業 数 低 収 益 欠 損 企 業 数 収 益 企 業 数 H17 500~1000kl 低 収 益 欠 損 企 業 数 H18 収 益 企 業 数 低 収 益 欠 損 企 業 数 H19 1000~2000kl 収 益 企 業 数 低 収 益 欠 損 企 業 数 H20 2000~5000kl 収 益 企 業 数 低 収 益 欠 損 企 業 数 / H15 収 益 企 業 数 / 100~200kl 低 収 益 欠 損 企 業 数 / H14 収 益 企 業 数 / 低 収 益 欠 損 企 業 数 / H13 収 益 企 業 数 / 100kl以下 低 収 益 欠 損 企 業 数 / H12 収 益 企 業 数 / / 低 収 益 欠 損 企 業 数 / 収 益 企 業 数 H21 5000kl 超 損益状況財務分析(全企業と専業90%以上企業比較) 全企業 財務分析専業区分90%以上 清酒製造業の業績推移(全企業平均) 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 清酒売上高総利益率(%) 20.0% 総資本総利益率(%) 自己資本比率(%) 10.0% 0.0% 清酒製造業の業績推移(専業区分90%以上) 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 清酒売上高総利益率(%) 20.0% 総資本総利益率(%) 10.0% 自己資本比率(%) 0.0% トレンドによる将来予測 近年の動向が将来にわたって大きく変化しないと仮定 値段,品質,消費者の嗜好,他消費財との競合,経済状況など 利用データ 国税庁(酒税,時系列データ,2 製成数量及び消費数量) 推定の概要 5カ年の現況再現(2006~最新2010年度データ※2006.5,改正酒税法施行) 酒類別消費量(年)=f西暦),最も説明力の高い指数型を採用 2015~2040年度を推定 対象酒 清酒,焼酎,ビール,その他ビール(リキュール類,雑酒,発泡酒の合計),ウイスキー類,果実酒(ワイン) 酒類の需要予測について 2006(H18)年度から5年間の区分別消費量データを被説明変数に,西暦年を説明変数として,指数型関 数による消費量モデルの推定を行った. 指数型関数 区分別消費量(千kl/年度) = β0×exp(β1×西暦) 酒類別関数別消費量モデル推定結果(係数・t値ならびに決定係数) 種類別酒類の購入金額 購入金額(円/年/世帯) 30,000 25,000 20,000 ビール 15,000 10,000 5,000 0 清酒 発泡酒・ビール風アルコール飲料 焼酎 他の酒 ワイン ウイスキー 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 二人以上の世帯の種類別年間購入金額の推移では,ビール,清酒の減少と, 発泡酒・ビール風アルコール飲料,焼酎の増加傾向が見られる. 種類別酒類の単価の推移 単価(円/720ml) 1400 1322 1276 1200 ウイスキー 1230 1241 1152 600 400 200 1128 1130 1036 1000 800 1142 843 624 875 853 894 897 612 608 602 468 479 366 363 焼酎 480 489 479 ビール 255 251 594 366 364 363 239 246 247 852 1016 989 871 868 1028 820 993 ワイン 810 591 592 583 573 573 569 483 483 485 494 487 488 559 487 369 370 375 375 378 379 377 244 231 231 768 清酒 発泡酒・ビール風アルコール飲料 248 242 242 247 0 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 ウイスキーの減少が顕著であるが,他はほぼ安定的 年齢階層別酒類購入金額の推移(円/年/世帯) 70,000 60,000 50,000 40,000 50歳代 60歳代 40歳代 70歳代 30歳代 30,000 20,000 20歳代 10,000 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 1.10 1.05 1.00 0.95 0.90 0.85 0.80 0.75 0.70 20歳代 0.65 30歳代 0.60 40歳代 0.55 50歳代 20歳代 30歳代 40歳代 0.50 60歳代 0.45 50歳代 60歳代 70歳代 0.40 70歳代 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 ・世帯主の年齢階層別に区分(年令による世帯人数に差異が存在) ・20歳代の減少が大きい(約50%) ・50,60歳代が金額が高いが,減少傾向が60,70歳代より大きい. 年齢階層別酒類別シェア(金額)の推移(1) 0.6 0.6 ビール 0.5 0.5 20歳代 0.4 その他のお酒 0.4 年 齢 30歳代 0.3 40歳代 50歳代 0.2 20歳代 0.3 30歳代 40歳代 50歳代 0.2 60歳代 0.1 70歳代 60歳代 0.1 0 0.40 0 0.20 清酒 0.18 0.35 20歳代 0.25 30歳代 0.20 0.10 焼酎 0.16 0.30 0.15 70歳代 年 齢 0.05 40歳代 50歳代 年 齢 0.14 0.12 0.10 経年的減少傾向 30歳代 40歳代 0.08 50歳代 0.06 60歳代 0.04 60歳代 70歳代 0.02 70歳代 0.00 0.00 20歳代 経年的増加傾向 年齢階層別種類別シェア(金額)の推移(2) 0.10 0.09 0.10 ウイスキー 0.09 0.08 0.08 0.07 20歳代 0.06 30歳代 0.05 40歳代 0.04 50歳代 0.03 0.02 0.01 0.00 ワイン 年 齢 60歳代 70歳代 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 0.02 60歳代 0.01 70歳代 0.00 傾向が見られない酒類 酒類の消費量将来予測 基準年(1.0) 消費量(千Kl) 10000 9500 9000 合計 8500 8000 7500 対2010年度比 合計:0.61 7000 6500 6000 5500 ビール ビール,リキュール,雑酒,発泡酒合計 5000 ビール類:0.68 4500 果実酒:2.49 ビール:0.22 焼酎:0.53 ウイスキー:2.45 清酒:0.30 4000 3500 3000 発泡酒 2500 2000 清酒 リキュール 1500 焼酎 1000 雑酒 500 0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 果実酒 2010 ウイスキー類 2015 2020 2025 2030 2035 年度 清酒 1656千Kl(1973)→977(2000)→589(2010)→396(2020)→264(2030)→174(2040) 焼酎 734千Kl(2000)→1005(2007)→923(2010)→749(2020)→608(2030)→493(2040) 2040 清酒製造企業数の推定 基準年(1.0) 3,500 700 免許場数(軒,左目盛) 3,000 600 免許場1ヶ所あたり生産量 (Kl/軒,右目盛) 2,500 500 2,000 400 免許場1ヶ所あたり生産量: (1736軒) 1,500 1,000 300 200 消費量(千kl,左目盛) 免許場数:0.30(514軒) 500 100 消費量:0.30 0 0 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 年度 ・国税庁(酒税,時系列データ,2 製成数量及び消費数量,3.製造免許場数及び販売免許場数) ・免許場数を清酒製造会社数と仮定. ・1免許場当たりの生産量は,1990年頃最大値→近年は低下傾向 ・将来の企業数=消費量推定値/ 1免許場当たりの生産量(2010年.固定) として算出. 17 ・企業数は,消費量の減少割合と類似した傾向(規模の大小を考慮する必要あり) 参考HP:日本の将来推計人口 http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401top.html 参考HP:日本の将来推計人口 http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401top.html 参考HP:日本の将来推計人口 http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401top.html まとめ 酒類の消費量将来予測(2040年) 減少傾向:ビール(0.22),清酒(0.30),焼酎(0.53) 増加傾向:果実酒(2.49(2040/2010比)),ウイスキー(2.45)・・・? 清酒製造企業数の将来予測 基本的に,消費量と同様の傾向 近年は小規模製造企業が増加→需要減による影響? 世帯の購入量データから すべての年齢階層で酒類購入額,清酒選択率が減少傾向 イノベーションのリミットは迫っている。 2040年以降の飲酒人口が本格的に減少