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Vol.018 - 公益財団法人 循環器病研究振興財団

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Vol.018 - 公益財団法人 循環器病研究振興財団
VoL.18 2003 7月
財団法人 循環器病研究振興財団
号
看護管 理 者 の真 の役割
∼改革の時、すぐれたリーダーを育てることとは∼
国立循環器病 センター
看護部長
豊田 百含子
赴任 して1年す ぎた。
国立循環器病 セ ンター看護部 の人材育成 の 目標 は、セ ンタ
ー設立の精神 を基盤 に して循 環器病制圧 のため、高度な治
とい うブラ ン ドにあ ぐらをか くことな く、医師、看護師、
コ ・メデ ィカル、研究者、そ して運営部が一 丸 となったセ
ンター全体 のチー ム医療 が必須である。 このチ ーム医療 が
療 を支援す る最高 の看護 が提供で きるスペ シャリス トの育
成 で ある。政策医療 に特化 した高度先駆 的 ・専 門医療 の推
進、臨床研究、教育研修、情報発信 にお いて、 高度専 門医
療 セ ンター として果 たすべ き役割 は重 要 である。そのため
実現す るキーポイ ン トはセ ンター職員 の半数 を占め、臨床
にお いて 24時 間息者 のそばに在 り、全職種 との協働 を腐
心す る看護師長 の実力 の有無 であ ろ う と考 える。 この実力
には高 い専 門的知識 と技能 を修得 し、 質 の高 い実践能力 を
有す る看護 の人材育成 の体行J化が急務 で あると考 え、平成
9年 よ リセ ンター独 自の循環器病 のエ キスパ ー トナース認
定 システムを検討 して きた。本年、そ の教育 シス テムが完
成 し実施 に至 った。
この システム コー ス は、心臓 ・血 管 コース、脳血管 コー
ス、小児 ・周産期 コースの三つ の コースか ら成 り立 ってお
り、受験 で きる対 象者 は 自 らコース を選択 す ることが 出来
る。 平成 15年 3月 、42名 の エ キ スパ ー トナ ー ス (NCEN)
が誕生 した。
この 目的は、「
循環器疾患患者 の看護分野 にお いて、臨床
経験 を通 して熟練 した知識や技術 を修得 した者 を一定 の レ
ベ ルで評価 し、認定する こ とによ り看護 の質の向上 を図る」
とした。
エ キスパ ー トナー ス とは、特定 の教育研修 を終了 し、循
環器病 の看護分野 にお い て熟練 した知識や技術 を持 つ水準
の高 い看護実践者 で、以下の項 目が実践で きる ことを 目指
す。具体的 には
①患者 さんのあらゆる問題領域に的を絞 り選択的に情報収
集でき、実践につなげることができる。
②専門的知識と経験を基に息者さん個々に応じた看護診断
ができ、看護計画を立案できる。
③息者 さん個々に応 じた社会資源の活用 とQOLを 考慮 し
た生 活 の 支援 がで きる。
④リーダーシップが発揮でき、後輩の教育 ・指導ができる。
とし、役害Jとしては次の3点とした。
①熟練 した知識 ・技術を看護現場で役割モデルとして実践
する。
②臨床現場での教育 ・指導を行う。
③専門看護の追求と研究及び情報発信に努める。
とは、単 に強気や積極性 によ り部下 を率 い るのではな く、
真 に自己実現 をしてい く集合体 を作 りあげ ることので きる
リー ダー シップの質 の高 さである。
質 の高 い リー ダー シップ育成 のためには、息者中心 のケ
アを行 うことを旗印 として、看護 の方向性 は示 されて きた
が、 これか らの看護職 はキ ュ アに対 し高 い理解力 を持 ち、
根拠 に基づ くケアを実践 し、ITを 利用 した研究 をも行わ
なければな らない。そのため、中間管理者である看護師長、
`
副看護師長 はす くれた リー ダー シップを取 るとともに、組
織横 断的 な視点で病 院運営 に も貢献 で きなけれ ばな らな
Vヽ
。
リー ダー に要求 される能力 は沢 山ある力S、特 にセ ンター
では使命感 を持つ ことと、感性 を磨 くこと、 コ ミュニケー
シ ョンの確 か さは欠 くことは出来ず、それには教育が臨床
の場 であ ることは大事 な ことであ ると言える。
この 1年 は激動 の 1年 で もあ った。一つ にはス タッフの
質 の 向上 のために認定 システムを作 り、 一 つ には看護師
長 ・副看護師長 の リー ダー シップの大切 さを問い続 けた。
人を見 る 目を養 うことが人材育成 の始 ま りで もあ り、根
本 である と考えてい る。つ ま り、一人ひとりの人間性が医
療 の質 を左右するとい う考え方 である。そのためには リー
ダーその ものが、 自 らを高 める 自己研鑽が大切 で あ り、 よ
り質 の高 い看護 の提供 を実現す るために、教育が必要 にな
って くるのである。多 くの看護職員 を育て、人材 として登
用 していかなければな らないが、その中核 は中間管理者 で
ある看護師長 の教育 である と確信 してい る。す ぐれ た看護
師長 を何人育成で きるかで、看護部が前進 で きるか どうか
が決 まって くる。 昨 年 の 3月 に看護師の名称変更 になっ
た大 きな理由 として、よ り専 門性 を追求 され、「
師」 の もつ
国民 の死亡率 30%を 占めて い る循環器病 にお いて、 国
民 は国立循環器病 セ ンター に対 して、最高 の医療、最高 の
責務 を明確 にされた と思 っている。多 くの若 い看護師を育
てていかなければな らない看護師長 こそ、 この ことの意味
を重大に受け止め、自己成長 していってほしい と願 っている。
セ ンター は魅力あ る医師達が多 く、教育 の環境 には最適
看護 の提供 を求 めて い ることは疑 う余地 はない。 国民か ら
選ばれ る病 院 として生 き残 るためには、今 こそ、 セ ンター
とも思 ってい る。夢 の実現 をかねそなえてい るセ ンター を
誇 りとして勤務 に励 みたい。
血管の流れ」。
表紙絵 :ウ ィルヘルム ・ボイエルマン作 「
ベ
ル
は1937年
リン生れ、心臓に関する詳細な図録をみて触発され、独自の芸術的イメージを展開した作品。
作者
平 成 15年 度 事 業 の 概 要
第 36回 理事会および第 17回 評議員会で決定された平成 15年 度事業
の概要 │よ
次のとお り。
I.研 究助成事業│(43,40‐
7万 円)
H . 好 中球活性 化抑 制 に よる心 ・肺移植 後虚
血 再濯流障害 の制御 に関す る研 究
(1)公 募研究助成
I . 標 準化可 能 な実験 的脳 卒 中あ る い は動脈
A.公 募研 究助成
全 国公募 に よる臨床 ・予 防医学 ・疫学 ・
硬 化病態 モ デ ルの 開発 とそれ らを用 い た
基礎 医学 の 中か ら10課題 に対 して研 究助
新規合成化合物 の薬効評価 に関す る研究
成 を行 う。
B.バ イエ ル循環器病研究助成
学識経験 者 に よ り研 究 テ ー マ を 「
不整脈
亜!学 会助成事業 (13,090万 円)
( 1 ) 第 1 5 回日本脳循環代謝学会総会
の 治療 」 と指 定 し、全 国公募 に よ り 3題
( 2 ) 第 2 4 回日本循環制御医学会総会
に対 して研究助成 を行 う。
( 3 ) 第 3 9 回日本移植学会総会
C.循 環器病疾患看護研 究助成
( 4 ) 第 1 0 4 回日本外科学会定期学術集会
公募 に よ り循 環器病 の看 護 に 関す る10課
究会
( 5 ) 第 2 2 回M i c r O w a v e S u r g e r y 研
題 に対 して研究助成 を行 う。
( 6 ) 第 5 回 国際造影超音波 シンポ ジウム
(2)指 定研究助成
A.血
管病 変 の早期診 断法 にお ける画像処理
町!研 究 1研修者助成事業 (400/円 )
情報技術 の 向上 に関す る研 究
国内外研修者助成
B。 電子血圧 計 を用 い た客観 的 な高血圧 治療
国内外 にお い て 実施 され る研 修 に派遣 さ
に 関す る研 究 :多 施設前 向 き無作為 結果
れる医療技術者 に対す る助成
近閉試験 (HOMED― BP)
国際協 同研究者助成
海外 で 開催 され る学 会 ・協 同研 究等 に派
C.慢 性 重症心 不 全息 者 (補助 人 工 心臓 離脱
不 能 伊Jを含 む )に 対 す る ヒ ト組 換 え型
IGF-1(メ
遣 される研 究者 に対す る助成
カセ ル ミ ン)の 臨床 的有用性
の検討
IVi普 及支援事業 (1ち
029万 円)
学術活動支援
セ ミナ ー等 の 開催 に対す る支援
のための調査研 究
移植 医療支援事業
E.
心筋梗 塞症 慢性期 の薬剤 を用 い た 治療 に
循環器病疾息 に 関す る移植医療 の 円滑 な実施
のための支援
F.
関す る大規模薬剤効果比較試験
心不全 ・不整脈診療 にお け る1231-MIBG
90
席仲陣亡
ぅ
氏まにおける心電図同期SPECT(QGS)
検 査 に 関す る 国内臨床 デ ー タベ ー ス作 成
D.
心臓 交感神経 イ メ ー ジ ング法 の 臨床応 用
ス タチ ン製剤 に よる心血管系 へ の 多面 的
作 用 一変性 に よる大動脈 弁狭 窄進展 と慢
性心 房細 動 にお け る脳 卒 中 に対 す るス タ
チ ン製剤 の効果
・
・パ ンフレッ ト
指針 の確 立
G。
予防啓発活動
・季報発行
《知 ってお きたい循環器病あれ これ》発行
・ホームペ ー ジ開設
(4)
刊行物編集
去 る6月17日、国立循環器病 センター新館講堂 において、当財回の平成 14年度循環器
疾患看護研究助成を受けた看護師 の方 々による研究成果 の発表会 が開催 された。
各演者 の熱 のこも つた発表 の後、当財団の川島理事長 による特別講演 が行われ た。看
護業務 の 日米比較など大変興味深 く、 かつ看護 の あり方を考 えるうえで示唆 に富 む内容
であったので 2回 に分 けて連載 させて頂 くことにな った。
平成 14年 度循環器疾患看護研究会研究助成 研 究発表会
特別講演
「
循環器病に携わる看護師に期待する」
財団法人 循 環器病研究振興財団
理事長 川 島 康 生
この講演の依頼を受けた時、もう10年も前 に臨床の現場 を離れていますのでお断 りしようかと思いました。
ところが、その時に豊田看護部長さんがお書 きになった 「
看護管理者の真の役割、改革の時」 とい う文章 を見せ
て頂 き、 これは素晴 らしい事が書いてある と思い感激 しました。それには、「
心臓血管 コース」岡酋血管 コース」
小児周産期 コース」 とい う3つの コースを作 って、既にセ名 ものエキスパー ト ナースが誕生 していると書いてあ
「
りました。私はこの看護部長 さんの話 に大いに共鳴するところがあ り、そのためにお話をする決心をしたのです。
まず最初 に、私が今迄 に見て きた日本 と米国の看護師さんについて思うところを少 し話 したい と思います。
医学部 を卒業 し、阪大病院で接す るようになった看護師さんは今 とはずいぶん違います。病棟看護師 さんの仕事
は、検温、配膳、医者の回診に付 いてまわるといったところは今 と余 り変わ りませんが、今皆 さんが直に息者さ
んを看護 されているようなことは今 よりは少なかったと思います。その代 わ りに医療機材を準備す るとい うのが
非常 に大きな仕事でした。
当時注射器 はディスポではあ りません。 ガラスの注射器で何回も使い ます し、注射針 も何回も使い ます。それ
らはすべ て各病棟 で煮沸消毒す るのです。輸液は経静脈の点滴ではなく大量皮下注射で、ブスッと大腿部 に注射
してイル リガー トルに入れた液を流 し込むのですが、そのイル リガー トル も毎回洗 って消毒するのです。
病棟 には掃除婦 さんもいましたが、看護師さん も掃除をしていました。 もっとも手術室の掃除は、医者 もやって
いた時代 です。病棟看護師さんの申 し継 ぎの時、一番大切なのは、「
体温計何本」 とい う申 し継 ぎです。体温計
はその頃病棟にあった唯一の医療機器だったからです。
10年近 くこういった看護師さんと一緒に仕事をしてから、アメリカのLos Angelesに
あるSaint Vincent病
院 と言
うことろに心臓外科の勉強のために留学 しました。約40年前ですが当時米国には既にICUが あ り、そ こでは沢山
の看護師 さんが働 いてい ました。最初 に驚 いたのはナースとナースエイ ド (看護師 と看護助手)の 関係でした。
日本では准看護師は今では随分少なくなりましたが、米国ではいろんな名前の看護職があ ります。勿論 レジスタ
ー ナース (RIW)とい うのが正規の看護師です。で、驚いたのはその人達がナースエイ ドに対 して命令 をす るの
です。私達医者がナースエイ ドに 「
あれをして くれ、 これをして くれ」 と言うと、「
それはRNに 言 って下さい」
と言われます。ナースが全ての権限を持 って、病棟、病室 を取 り仕切 る。医者 はRNに 指示をしてそれをRNが
秘書 とかナースエイ ドとかそ うい う人達 にオー ダーをす るのです。一方一般の病棟 にはICUと は違ってチャージ
ナース以外 はご く少数 しか看護師は居 りません。そして医者が回診をするときにはチャージ ナースが付いて来る
のですが、実によ く息者のことを知 っています。病棟 は全て看護師 さんが取 り仕切 ってお り、看護師さんの地位
が非常 に高いのです。
又、RllTの
中にも色々な種類があ ります。当時、ようや く使われ始めたレス ピレー ターを装着 して調整するのを
専門 とす るナースとか、Ivナース といって、静脈注射 をす る資格 を持ったナースなどです。又 こういった特別な
資格 をもった看護師の他に家庭の都合で夕方のシフ トだけ勤務す るとい う看護師な ど、色 々でした。その中で非
常 に権限をもっていたのは、イ ンフェクション ・コン トロールナースで、病院には所属せず、 コン トロール ・オ
フィサー とい う医師 とともにい くつかの病院を点検 して回るナースです。その人が 「こうしなさい。
」 と言えば、
い
それに従わなければ病棟 を閉鎖されてしまうと った権限を持 った看護師です。そういう看護師にな りたい人は、
勉強してその資格 を取 ります。 もちろん一般の看護師 よ りも高給のようでした。
もう一つ高給をとっていたのはスクラブ ナース即ち、手術場で手術 の介助 をする看護師です。 この人たちは公
立の病院の場合 は病院に所属 してい ますが、私的な病院の場合 は外科医に雇われてを り、外科医 と組 になって働
いてい ます。ですから多 くの場合、外科医のや り方 を十分知 ってお り、外科医は手術中には物 を言わな くても手
を出せば、必要な手術器具が手の中に入って くるといった】
犬態です。ですから手術はものす ご く早いのです。 日
本人は器用で手術が早い と言われていたのは昔の話で、今はもう日本の医者ほど手術が遅い外科医はいないでし
よう。国立循環器病センターのクト
科医たちは日本では非常 に手術の早い方ですが、外国に連れて行 ったらとて も
太刀打ちできないほど、外国のクト
科医は早いのです。それはいつ も同じスクラブ ナースとペアーになっているか
らで、技術の問題 とい うより体制の問題です。そしてこう云ったスクラブ ナースは、特別な高給 をとっています。
全 くの専門職なのです。 この様 に米国のRIWはもともとその地位は高いのですが、 よ り高い地位を求めて努力 して
いました。
2年後 に帰国して阪大病院に戻 りました。アメリカに行 くまではそうは思わなかったのですが、帰国 して思っ
…これは昭和41年 の話で、私が阪大病院を離れる時に
たのは、「
なんだ、 この人たちは ?こ れでも看護師か。
」・
は既に随分変 ってお りましたが、帰国当時のナースはナースエイ ドの仕事 ばか りしたがるのです。医者の仕事 を
取 りには来ない。アメリカではRITは、「ドクター、それは私たちで もで きる仕事ですから私がや りましょう。先
生は他の仕事 をして ください。
」 と云って仕事を取 りに来ます。当時の 日本の看護師は、「
それは先生の仕事です。
私たちの仕事 ではあ りません。
」 と言 って、米国ではナースエ イ ドがやっているような仕事 ばか りや りたがる。
この先進性 のなさ、向上″
いのなさにはがっか りしました。 しかも手術の最中に勤務時間が終わ りましたからと帰
ってしまう。人工心肺が回転 している最中に手洗い看護師が交替 してしまう。やむを得 ない場合 もあ りますが、
これが常態 となったのでは 「この人たちは、本当に看護 とい うことに情熱 を持 っているのかな。
」 と訪 ってしま
いました。
それから20余年、私は国立循環器病センターに移 って きました。その頃には阪大病院の看護師さん も随分良 く
なってい ましたが、それでも 「日本 にもこんなによく働 く、 こんなによく勉強す る看護師さんがいるのか !」 と
びっ くりしました。 しかし1つ だけ気 にい らないことがあ りました。スクラブナースが医者 とペアーでないから
手術 はどうしても早 く進まない とい うの も1つ でしたが、もっと気 に入 らないのは看護師が ローテー トす ること
です。一定の期間いたら別の部署 に替わってい くのです。「
やっと慣 れていい仕事が出来ると思ったのに何故番
えるのか。
」 と看護部長 に言うと、「
看護師は色 々な事 をみんな知 っておかなければな りません。何年か経 って別
の病院に移 った時に、どの病棟 でも働けるように全てのことを知 っておかなければな りませんから、順番に交替
させるのです。
」 と言われました。
それなら、看護師は自分のために部署 を替わるのだから、給料 を半分 にしなさい。卒業 したときから看護師
「
としての給料 を全額 もらっているのに、息者さんを犠牲 にして 自分の経験 を増やすために替わって行 くのはおか
しいのではないか。
」 と言 ったのですが、 日本中がそ うでしたから変え られなかったようです。 ところが、先 ほ
ど看護部長にその話をした ところ 「
それは止めました。 もう交替させていません。
」 と。「これは素晴らしい。
」と
思い ました。国立循環器病センターの看護業務 は遠からず 日本一 になるだろうと思います。あるいはすでに日本
一になっているのかもしれませんが、私は大感激 しました。
当時の 日本 とアメリカの違いは、やは り看護に対す る情熱 とい うか向上心 とい うか、それともう一つ はプライ
ドですね。当時のアメリカの看護師の給料 は、初任給が普通の会社員の平均給与 とだいたい同じだとのことでし
た。かなりの高給ですね。それだけの給与をもらうとプライ ドも出てきます し、そんな高い給与 を払っている看
護師さんに掃除などさせておけません。ですから、医者の仕事を取 りに行 くくらいの高い技術 を要す る仕事をし
て頂 く。その為 に看護師さんには看護助手をつける。雑用は全部その人たちにしてもらって看護師 さんには本当
の看護師 さんとしての仕事をして もらうとい うシステムが出来上がっている。 日本 にはそ うい う制度ができてい
ない。医者にも秘書がついていない国です し、何から何まで 自分でやらなければならない。 これでは医療 も看護
もなかなか進歩 してい くのはむつかしい と思います。
私がアメリカから帰国 した当時は、大阪大学の心臓外科担当の教授 は、目立循環器病センターの初代病院長で
あった曲直部先生でしたが、心臓手術 は週 1例 しかできませんでした。 これは看護師さんの不足 をはじめ、色 々
な制約があったためです。私 は、 曲直部先生の下で 「
週 1例 では絶対良い医療 はできない。最低週 5例 やろう。
」
と大号令をかけましたら、傍の人たちから 「5例 といったら、3例 くらいはできるかもしれないから、鯖を読ん
で言 っているのだろう。
」 と言われました。 しか し、実際に数年の間に阪大病院では週 5例 の心臓手術 をやるよ
うにな りました。 どうして出来たかとい うと、医者を無茶苦茶 に働かせたのです。私自身もそうですが、若い医
者は家 に帰 る暇がない くらい働かせて、そのため他 の教室の人たちから、「
あそ こは気違い部落である。
」 と言わ
ー
れました。国立循環器病センタ の北村総長も八木原部長もその気違い部落の住人でした。
しかし、医者がい くらがんばって も看護師さんがついて きて くれない と医療 はできません。必死になって看護
師さんを説得 しました。その頃はまだ国立循環器病センターがない頃で、心臓タト
科 をやっている施設は僅かでし
た。ですか ら、入院待ち、手術待ちの息者 さんが数百人にもなりました。週5例手術をしているのでは何年分 も
の数です。ですから、外来で待 っている間に動脈瘤が破裂 して患者さんが亡 くなってしまうといったことは珍 し
くはなかったのです。「こんなことでは息者さんの為の医療をしているとは云えない。
」 と言 って看護師 さんを説
得 したのですが、それに同調 して 「
働 きましょう。
」 と言 ってよ く働 いて くれた看護師さん もい ましたが、「
それ
は私たちの責任ではあ りません。看護師が足 りないのは病院や国の責任です。私たちには私たちの生活があるの
で、犠牲 になるのはお断 りです。
」 と言って冷た く突 き放された こともあ ります。みなさんがその立場 にいたら
どちらに付 きますか ? 私 は、 どちらでなければならない とは申 しません。要す るに心臓外科の学問は進んで も
環境が、体制が出来ておらなかったということです。 これは言うなれば管理者の責任 であ り、国の責任であった
とい うのは本当です。あるいは日本の医療体制その ものの問題であると云 うべ きかもしれません。
とい うことで、私が阪大病院の病院長になった時に、全国の大学病院の病院長会議で もこのこのを必死になっ
て言いましたが、心臓手術をやっているところはそんなに沢山あ りませんので、誰 も同調 して くれませんでした。
文部省 (現在の文部科学省)の お役人たちも、国家公務員の総定員法があって、毎年人員削減が言われている時
であ り、全然相手 にして くれませんでした。
その結果人手不足 でずいぶん危ない医療 もしました。けれども、外国で見てきたICUを 何 として も作 らなけれ
ば心臓手術 は危 なくてできない とい うことで、やっとのことで大学 にもICUを 作 りました。 しか しICUで の息者
管理は全部医者がやったのであって、看護師さんは殆んど何 もして くれません。 と云 うよ りそれだけの看護師さ
んは配属されていなかったのです。看護師さんが息者のケアをす る本当のICUが で きたのは、我が国ではこの国
立循環器病センターが初めだろうと思います。国立循環器病センターは、そ うい う新 しい医療のモデルを作 るた
めに特別 に国が作 った施設であ り、ICUだ けではなくCCUも NCUな どもそうです。先ほど申 しました曲直部先生
などが随分がんばられて、最初 に沢山の人員を確保 して下さったからそ ういうことがで きたのです。
以下は次号
平成 15年度研究助成対象者決 まる
11!│
循環器病 に関す る臨床、予防、疫学、基礎 の分野 に対す る 自由課題 の研究助成 で、今年度 は全 国か ら6 3
件 の応募があ り、6 月2 7 日開催 の選考委員会において次 の1 0 名が選考 された。
(1課 題 100万 円)
研 究 者
所属機 関 ・職名
沢村 達 也
国立 循環器病 セ ンター研究所
バ イオサ イエ ンス部 ・室長
酸化LDL受 容体LOX-1の 酸化 ス トレスおよび循環器疾患 における意義
高 木康 志
京都大学大学院医学研究科
脳神経外科 ・助手
霊長類ES細 胞 由来神経幹細胞 を用 い た脳梗 塞治療
武 田壮 一
国立循環器病 セ ンター研 究所
心臓 生理 部 ・室長
次世代 の心疾患 治療薬 開発 を 目指 した、ト ロポ エ ン ・薬物複合体 の結
中沢 一雄
国立循環器病 セ ンター研究所
研 究機器管理室 ・室長
バ イ ドメイ ン 3次 元心臓 シ ミュ レー タを用 い た電気 的除糸
日動 メ カニ ズ
永 谷 憲 歳
国立 循環器病 セ ン ター
心臓血管 内科 。医員
グ レ リ ン投与 に よる新 た な心不全 治療 の 開発 とそ の 臨床評価
西上和 宏
国立 循環器病 セ ン ター
心臓血管 内科 ・医長
微小血管造影装置 の臨床導入 と血管再生療法 の評価 にお ける有用性 の
検討
船橋 伸 禎
千葉大学 医学部附属病 院
第 3 内 科 ・助 手
16例マ ルチ ス ライ スCTを 用 い た心 筋症、心筋梗 塞、心筋炎 にお け る
心筋線維組織 の検 出
矢坂 正 弘
国立循環器病 セ ンター
脳 血 管 内科 ・医長
ワル フ ァリ ン療 法 にお け る脳 内出血 の病態 と治療 に関す る研 究
山本 一博
大阪大学大学院医学系研究科
病態情報内科 ・助手
拡張期心不全、収縮期心不全発症過程 にお け る細胞外 マ トリックス
リモ デ リ ング規定 因子 としてのphOsphollpase Dの
役割 と、新 た なる
ー
治療 タ ゲ ッ トとして の可能性 の検討
研
究
課
晶構 造解析
ムの解析 的研 究
大 阪市 立大 学大学 院
蔑 山 稔
医学研 究科
循環器病態 内科学 ・助教授
題
臨床研究による心筋梗塞予知因子 の検討
バ イエ ル薬品株式会社 か ら寄贈 された基金 による指定分野 の研究助成 で あ り、今年度 は 「
不整脈 の治療」
ー
の テ マ で全 国公募 に よ り課題 を募集 した ところ26課題 の応募があ り、5月 23日開催 の選考委員会 に よる
厳 正 な審査 の結果、約8.6倍の難関 を突破 して下 記 の 3名 の研究者へ の助成が決定 された。
(1課 題500万 円)
所属機 関 ・職名
研 究 者
岡山大学大学院医歯学総合研究科
中 村 一 文 循環器 内科
研
究
課
題
ペ ー ス メー カー細胞 の再生
助手
( 1 課 題2 5 0 万 円)
所属機 関 ・職名
研 究 者
国立循環器病 セ ンター研究所
相 庭 武 司 循環動態機能部
流動研究員
研
究
課
題
Brugada症候群に伴 う心室細動発生の細胞学的機序 の解明 と新 たな治
療法 の可能性 :1024×1024点仮想静止光マ ッピング計測法 の動脈濯流
心筋切 片 モデルヘ の応用
財 団法人心臓 血 管研 究所
山 下 武 志 第 3研 究部
心房細動治療標的分子 の解明 :個 別化治療 をめざして
部長
循環器病 の看護 に関す る 自由課題 の研 究助成 で、 今年度 は 6 月 6 日 開催 の選考委員会 で次 の 7 課 題が選
考 された。
(1課 題 20万 円)
研 究 者
高波 久 子
所属機 関 ・職名
国立 函館病 院
看 護 師長
研
究
課
題
ペ ー ス メー カー植 え込み術 を受 け る息者看護 の統 一 を 目指 して :ク リ
テ ィカルパ ス導入 の効果
( 1 課 題 3 0 万円 )
研 究 者
所属機 関 ・職名
研
究
課
題
岡 田美 子
国立 循環器病 セ ンター
看護 師長
国立循環器病 セ ンター新 人看護師 の妥 当 な夜勤 開始時期 の検討
幸 田知 子
国立循環器病 セ ン ター
副看 護師長
腹 直筋 の活動電位 の低 い布 団 か らの起 き上が り方法 の検討
坪 井志 穂
国立循環器病 セ ン ター
看護 師
植 込み型 除細動器 ( I C D I m p l a n t a b l e C a r d i o v e r t e r D e i b r i l l a t o r ) 装
着 のための適切 な看護 の検 討
堂本 知 沙
国立 循環器病 セ ン ター
看護 師
肺高血圧症患者 のヒックマ ンカテーテル挿入中における感染 の危険
因子 の検討
'
藤 原 恵 子
国立循環器病 セ ン ター
看護 師長
Fontan手 術後 の 日常生活援助 を決定す る看護 師 の視点 に関す る研 究
堀 由 美子
国立循環器病 セ ン ター
副看護 師長
心臓移植後息者 ・心臓 移植待機息者 のQ O L の 実態調査 : 心 l l d 移
植後
・心臓移植待機息者 の 医学 的緊急 度 ( S t a t u s I S・t a t u s I ) を比較
して
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品
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つじ
39
著
ル
脳卒 中予 防 の秘 けつ
36
38
ト
高脂 血症一 動脈硬化 へ の道
抗 血 栓療法 の話
抗血小版業、
抗凝回束を飲んでいる方ヘ
い まなぜ 肥 満 が 問題 な の か
発行年 月 日
作
国立 循環器病 セ ンター
脳血管内科
部長 峰 松 一 夫
回立循環器病 セ ンター 客 員研究員
慶応義塾大学 医学部 伊 勢慶応病 院内科
教授 都 島基夫
国立 循環器病 セ ンター
輸 血 管 理室 医 長 宮 田茂樹
輸 血 管理室 ・薬剤部 高 田雅弘
国立 循環器病 セ ン ター
動脈硬化代謝 内科
医長 洪 秀 樹
2003年 1月 1日
2003年 3月 1日
2003年 5月 1日
2003年 7月 1日
循環器病研究振興財団へ の ご寄付
平成1 5 年2 月 か ら平成1 5 年7 月 までにご寄付 を頂 い た方 々のご芳名 を記 し、心 よ り厚 く
お礼 申 し上 げ ます。
森
恵
子
山 下 ス ヅ ヱ
一
遠
藤
西
郷 英
男
松
治
株
田 隆 夫
式会社同本銘木店
井
上 苦
史
宮
越 外
次
第 5次 循環器疾患基礎調査 よ り (血圧の現状)
循環器疾患基礎調査 は、10年ごとに実施され、最新 の ものは平成12年11月に行われた。 これは、平成12年国民
生活基礎調査により設定された単位区から層別化無作為抽出により297単位区を抽出し、調査対象地区の即側世帯
の内満抑歳以上の者全員 (男性3脚7名、女性4510名)を 調査対象 としている。
循環器疾息の最大の危険因子 は高血圧 といわれているが、本調査 による全対象者の血圧の現状 は次のとお りで
あった。
・年齢階級別 、血圧 区分 一 日本高血圧学会分類 による
1.性
く男 性 〉
総数
14.0
30-39歳
17.9
29.2
32.9
40-49歳
23.7
1
24.2
60-69歳
70歳 以上
総
4,8
18,8
17.7
10.3
40%
20%
0%
く女 性 〉
4,0
35.4
22.7
15,8
4.5
13.9
25.6
50-59歳
0
1 9コ
80%
60%
数
100%
8.6
24.2
18,4
30-39歳
40-49歳
40.9
50-59歳
24.0
20.2
24.5
60-69歳
13.5
12.8
70歳 以上 7.5 1 11.9
0%
22.3
4.4
34.9
15.2
19.6
40%
20%
80%
60%
2 口 血圧 の分 類
100%
( 2 0 0 0 年 日 本高血圧 学会)
収 縮期 血 圧 (mmHg)
か
張期 血圧 (mmHg)
拡
つ
<80
つ
<85
至
適
血
圧
<120
正
常
血
圧
<130
正
常
高
値
130∼ 139
ま
たは
軽 症 高 血 圧
140∼ 159
ま
たは
90∼
99
中等 度高血圧
160∼ 179
たは
100∼
109
重 症 高 血 圧
≧180
たは
≧
110
か
ま
ま
85∼
89
注 第 5 次 調査 の血圧 測 定 は、 第 1 回 目測 定 の 1 ∼ 2 分 経 ってか ら第 2 回 目測定が行 われた。
上 記 1 の 図 は 2 回 の平均値 に よる区分 であ る。
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