...

科学教育の深化と拡充

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

科学教育の深化と拡充
資料6
2015/5/27
科学技術・学術審議会人材委員会 次世代人材育成検討作業部会(第1回)
科学技術・学術審議会
人材委員会
次世代人材育成検討作業部会
(第1回)H27.5.27
科学教育の深化と拡充
~‘one model fits all’ approachを超えて~
愛媛大学教育学部
隅田 学(SUMIDA, Manabu)
1
概 要
1. ‘one model fits all’ approachによる科学教育の限界
2. 21世紀の科学教育を取り巻く環境
3. 未来を生きる探究能力と科学力を育む科学教育へ向
けて-
2
1. ‘one model fits all’ approachによる
科学教育の限界
3
わが国の子どもたちは理科の達成が高い(例えば、
TIMSS2003:6/46(中2)3/25(小4))。
理科の勉強が楽しいと思わない子どもの割合が高い
(例えば、TIMSS2003:3/26(中2)9/25(小4))。
よくできる子にとって退屈な授業?
4
K学年(5歳児)の子どもでも3桁の足し算・引き算をし
たり,大統領の話をしたりする。
そのまま小学校へ入学したら?
5
日本式よい授業?
才能教育コースの生徒と通常教育コースの生徒が
一緒に授業を受けるコース:TT形式
天秤、水、メスシリンダー、石やネジ等を使った密度
の実験:身近な素材を使った実験活動
才能教育コースの生徒たちの反応は?
6
日本の一般的な中学校理科授業の特徴
(National Center for Education Statistics, 2006)
日本の中学2年の理科授業は,物理や化学の少数の概念を理解
することに重点が置かれ,探究重視の帰納的な手法を通じて科
学概念と証拠とを関連づけることが多い。そこでは,データを収集
して解釈し,一つの科学的な考えや結論を導き出す。・・・・・学習
活動を行う前に,教師が,これから調べて明らかにする問いを生
徒に提示することが多く,予想を求めることもある。・・・・・活動の
後に行われるクラス全体の話し合いでは,通常,一つの結論,つ
まりその授業の主要な科学的な考えを導出する。日本の理科授
業では,限られた数の一般的で標準的な科学概念を扱い,生徒
にとって挑戦的であったり難易度が高い理論的なものは扱ってい
ない。・・・・・
7
「才能(Gifted/Talented)」とは何か?
「才能豊かな学習者」とは,知的,創造的,芸術的
分野での卓越した能力,並外れたリーダーシップ能
力,あるいは特定の学問分野で卓越した能力を示
す児童生徒である。彼ら/彼女らには,自分たちの能
力を最大限に伸長させるために,学校で通常は提
供されない指導や活動が必要である。
(米国合衆国教育省, 2001)
8
科学才能教育に関わる調査研究結果
13歳の時点で数学で才能があると認定されていた(そして学問的
なコンテスト,専門家との連携研究,学問的なクラブ活動,サマー
プログラム,先取りクラス等の特別教育機会を経験した)生徒
1467名の追跡調査結果:33歳時点で,科学技術・数学領域での
顕著な達成(博士号の取得,特許取得,テニュア取得等)
(Wai, 2010)
科学オリンピック入賞者の特徴の一つ:「幼児期における科学技術
の体験」・「生物オリンピック入賞者の科学への強い興味関心が7
歳までに生じている」( Rena & van Tassel Baska, 2004 )
1901年から1972年までにノーベル賞を受賞した92名のアメリカ
人を対象としたインタビュー調査結果:半数以上がノーベル賞受
賞者から学ぶか共同研究を行っていた。(Zuckerman, 1977)
9
「才能児」と認定されている児童生徒の割合
約6% (米国の場合:National Association for
Gifted Children, 2013より)
約6% (特別支援教育対象児童生徒の割合)
平成26年度
幼稚園:1,557,461, 小学校:6,600,006, 中学校:3,504,334, 高
校:3,334,019 (人)
10
毎年約90万人の才能ある日本の子どもたちが….
Two Forms and Contexts of Gifted Education
Programme in Science (Sumida, 2015)
Formal
Informal
Skipping grade, Early entrance,
Dual enrolment, Home tutoring,
Special class,Advanced
Science Club
Acceleration learning in a specific subject,
Dual enrolment, AP/College
credits, differentiation
Enrichment
Personal learning, Project
learning, Learning center
approach, Cooperation with
companies or museum/zoo
Saturday/Summer/Winter
science programme/camps,
Science fair/contest, Science
Olympic, Special programme in
companies or museum/zoo
11
諸外国の才能教育に関する政策動向
オースト
リア
法律に明
記
〇
法的なガイ
ドライン
〇
特別カリ
キュラム
〇
企業や
NPOとの
連携
〇
特別学校
の存在
〇
ベル
ギー
〇
スイス
ドイツ
〇
〇
〇
〇
〇
〇
フィンラ
ンド
英国
ハンガ
リー
ポーラ
ンド
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
〇
12
Monks & Pfluger, 2005
我が国の才能教育に関する政策動向
第3期科学技術基本計画(2007)
「才能ある子どもの個性・能力の伸長」
第4期科学技術基本計画(2011)
「次代を担う才能豊かな子どもたちの継続的,体系的な育成」
「優れた素質を持つ児童生徒の発掘とその才能を伸ばすための一貫した取
り組みの推進」
第2期教育振興基本計画(2013)
2.未来への飛躍を実現する人材の養成
成果目標5(社会全体の変化や新たな価値を主導・創造する人材等の養成)
基本施策14 優れた才能や個性を伸ばす多様で高度な学習機会等の提供
13
我が国の「伸びる子を伸ばす」事業
「学校内」:「スーパーサイエンスハイスクール」(2002~)
「学校外」:「国際科学技術コンテスト」
「サイエンスキャンプ」(1995~2014)
「未来の科学者養成講座」(2008~2013)
「科学の甲子園」(2011~)
「次世代科学者育成プログラム」(2012~)
「科学の甲子園Jr.」(2013~)
「グローバルサイエンスキャンパス」(2014~)
科学技術振興機構 (2010)
「才能教育分科会報告書-科学技術イノベーションを支
える卓越した才能を見出し,開花させるために-」
日本科学教育学会学会誌「科学教育研究」36(2), 2012
特集「科学才能教育-児童生徒の多様なニーズに応じる
科学教育の新展開-」
14
Top 10 Countries (OECD Members) of PISA2012
Science Literacy
Education System
1 Japan
2 Finland
3 Estonia
4 Korea, Rep. of
5 Poland
6 Canada
7 Germany
8 Netherlands
9 Ireland
10 Australia
Average Score
Population (Million)
547
545
541
538
526
525
524
522
522
521
127.1
5.4
1.3
50.0
38.5
35.4
80.9
16.9
4.6
22.9
15
Japan
Singapore
Trends of the Percentage of the High and Low Proficiency
Group in PISA 2006/2009/2012 Science Literacy
(Sumida, Saruta, & Inada, in press)
16
Comparison of Mean Score of Boys and Girls in
TIMSS2011 and in PISA 2012
(Sumida, Saruta, & Inada, in press)
17
2. 21世紀の科学教育を取り巻く環境
18
①
②
③
④
19
21世紀の科学教育を取り巻く環境
① 自然科学の急速な進展と構造変化
20
科学の進歩のスピード
SCOPUSとWeb of Scienceにおける各国の論文数
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
韓国
中国
全世界
SCOPUS
89607
320698 78701 68972
48831 26818
136559
1255477
Web of
Science
67805
235243 55938 54624
38894 22641
62160
916534
※ 2004-2006の平均値
文部科学省,2010
21
1900-1950
1951-2000
Figure The number of Nobel
Laureates in chemistry and the
country of their affiliation at the
time of the award
(Sumida & Ohashi, 2015)
2001-
22
Table The distribution of fields of Chemistry
Laureates (Sumida & Ohashi, 2015)
1901-1950
(n=73)
1951-2000
(n=65)
2001-2012
(n=18)
Physical Chemistry
(20.0)
Organic Chemistry
(20.0)
Nuclear Chemistry
(13.8)
Natural Products
Chemistry (12.3)
Biochemistry (21.9)
Biochemistry (33.3)
Physical Chemistry
(13.7)
Organic Chemistry
(12.3)
Structural Chemistry
(22.2)
Organic Chemistry
(16.7)
(%)
23
Table The distribution of shared and
unshared Nobel Prizes in chemistry
(Sumida & Ohashi, 2015)
One Laureate only
from the
same country
More than
one Laureate from different
countries
1901-1950
(n=42)
1951-2000
(n=50)
2001-2012
(n=12)
81.0
52.0
25.0
11.9
14.0
25.0
7.1
34.0
50.0
(%)
24
21世紀型の科学研究スタイル
協働
国際ネット
ワーク
領域交差
25
世界科学会議が宣言した
「21世紀における4つの科学像」
世界科学会議「科学と科学知識の利用に関する世界宣言」1999
26
21世紀の科学教育を取り巻く環境
② 高度化・多様化が進む高等学校の
理科教育
27
28
Key Characteristics
of the Super Science
High School Projects
(Sumida, in press)
科学オリンピック参加者数:
5,883名(2007年)→
14,555名(2013年)
Intel ISEF 2015
日本代表4プロジェクトが優秀賞
29
21世紀の科学教育を取り巻く環境
③ 幼い子どもの科学有能性の再評価
-人生の始まりこそ力強い理科教育を-
30
Heckman, 2008
31
小中学校理科の授業時数の変遷
小 学 校
中 学 校
学年
1
2
3
4
5
6
計
1
2
3
計
S33
68
70
105
105
140
140
628
140
140
140
420
S42
68
70
105
105
140
140
628
140
140
140
420
S52
68
70
105
105
105
105
558
105
105
140
350
H元
0
0
105
105
105
105
420
105
105
105140
315350
H10
0
0
70
90
95
95
350
105
105
80
290
H20
0
0
90
105
105
105
405
105
140
140
385
32
愛媛大学 Kids・Academia(2009~)
幼年期から子どもの個性を伸ばし挑戦する心を
育む科学者体験活動
33
自由研究発表会/閉講式
34
35
36
37
38
21世紀の科学教育を取り巻く環境
④ 家庭環境から再生される教育格差
39
Figure Intelligibility of the Japanese Primary Children at School (Grade 5 40
and 6) by Social Class(data from Kariya, 2012)
3. 未来を生きる探究能力と科学力を育
む科学教育へ向けて
41
科学教育の深化と拡充へ向けた提案(1)
・「幼年期」から「世界基準」で「質の高い」科学教育の再構築
→幼い時期から科学に出会う質の高い教育機会の保障
→幼・小・中・高・大と長期的な視座からのデザイン
→法的整備-理科教育振興法(1953)・才能教育振興法
・学校・家庭・社会の連携
→自由研究の組織的拡充-地域・地区・全国・世界
→地域の科学教育講座の支援
→オープンラボ・サイエンスキャンプ
→ICT等を含めた様々な科学教育支援ツールの開発
→科学情報の公開促進と情報へのアクセススキルの教育
42
科学教育の深化と拡充へ向けた提案(2)
・児童生徒による学習
→個人・小グループによる21世紀型探究・発見学習
→オープンラボ・サイエンストリップ
→科学図書の充実
→食糧・エネルギー問題,気候変動,感染症対策等の地
球規模の問題・テーマに関わる教育(個人/地域・全国
/地球という「文脈」)
→理科以外の教科(数学や技術等)との連携
→科学に関わる歴史・哲学・倫理の教育
43
科学教育の深化と拡充へ向けた提案(3)
・教員養成・研修
→理系の素養を持った保育士・幼稚園教諭・小学校
教諭や博士号を持つ中等理科教員の拡充
→多様な個に応じた授業方略や評価,教材の開発
→学校内・学校間の協働的ネットワーク化
→理科教員の学会入会・発表支援
→全国的な科学教育研究拠点センターの設置
44
Fly UP