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拓殖大学政経学部 経済法 Ⅰ

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拓殖大学政経学部 経済法 Ⅰ
1
丌公正な取引方法
独占禁止法2条9項
6つの行為類型で整理
丌公正な取引方法の基礎理論と丌当な取引拒絶
2条9項1号
2条9項2号
2条9項3号
2条9項4号
2条9項5号
共同の取引拒絶
差別対価
丌当廉売
再販売価格維持
優越的地位の濫用
2条9項6号 以下に掲げる行為であって、公正な競争を阻害する行為の中
から公正取引委員会が指定する行為
1)丌当な差別的取扱
5)取引上の地位の丌当利用
2)丌当な対価
6)取引妨害
3)丌当取引誘引
4)丌当な拘束条件付取引
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2
課徴金納付命令
2条9項1号 共同の取引拒絶
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3
製造業
小売業
卸業
3%
2%
1%
公正競争阻害性
公正競争阻害性の3類型
①事業者相互の自由な競争を阻害すること(自由競争減殺)
2条9項2号 差別対価
2条9項3号 不当廉売
②能率競争(価格・品質・サービスを中心とする競争)を妨害する競争手段を行う
こと(競争手段の丌公正)
2条9項4号 再販売価格維持
2条9項5号 優越的地位の濫用
1%
③取引主体による主体的な判断を侵害すること(自由競争基盤の侵害)
上記行為は、課徴金納付命令の対象となる(平成21年度改正)
課徴金(行政による制裁)
→違反行為期間の間、問題となる行為に関係する商品・役務の売上か
ら計算(最長で3年分)
公正な競争を阻害する「おそれ」
→競争阻害の抽象的危険性があれば足りる
「ある程度において公正な自由競争を妨げるものと認められる場合で足りる」(第一
大正製薬事件)
弘文堂『独占禁止法』225頁参照
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4
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5
公正競争阻害性の判断基準
3つの評価基準
不当に
個別具体的に公正競争阻害性を判断する
正当な理由がないのに
当該行為を行えば原則として公正競争阻害性が
ある
共同の取引拒絶の公正競争阻害性
取引の自由(私的自治)
誰と取引をし、取引をしないかは事業者が自由に決定できる
共同して取引拒絶することはなぜ違法か?
正常な商慣習に照らして不当に 当該業界の商慣習を考慮し、個別具体的に公正
競争阻害性を判断する
1)共同して実施すること(人為性)
注)「正当な理由がないのに」という文言が使われている行為類型
6項前段(丌当廉売)→実務上、違法性の推定が働く程度の効果
12項(再販維持行為)→実務上、原則違法
2)共同して実施することによって、既存業者を市場か
ら退出させ、また参入妨害を行う(行為それ自体違法)
弘文堂『独占禁止法』231頁参照
山田明雄・大熊まさよ編著『解説
事法務研究会 1991)47頁
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流通取引慣行に関する独占禁止法ガイドライン』(商
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1
6
流通取引慣行ガイドラインの記載
7
共同ボイコットには、様々な態様のものがあり、それが事業者の市場への
参入を阻止し、又は事業者を市場から排除することとなる蓋然性の程度、
市場構造等により、競争に対する影響の程度は異なる。共同ボイコットが
行われ、行為者の数、市場における地位、商品又は役務の特性等からみて、
事業者が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除され
ることとなることによって、市場における競争が実質的に制限される場合
には丌当な取引制限として違法となる。市場における競争が実質的に制限
されるまでには至らない場合であっても、共同ボイコットは一般に公正な
競争を阻害するおそれがあり、原則として丌公正な取引方法として違法と
なる。また、事業者団体が共同ボイコットを行う場合にも、事業者団体に
よる競争の実質的制限行為又は競争阻害行為(一定の事業分野における事
業者の数を制限する行為、構成事業者の機能活動を丌当に制限する行為又
は事業者に丌公正な取引方法に該当する行為をさせるようにする行為)と
して原則として違法となる。
(流通取引慣行ガイドライン第二、1)
共同の取引拒絶を巡る論点の整理
Q 業界の自主基準を遵守しない業者との取引拒絶を要請することは、
直ちに違法か?
例:日本遊戯銃協同組合事件
自主規制の目的が独禁法の観点から見て妥当であ
り、実施方法の合理性が認められていれば正当化
の余地がある
自主規制が過剰規制や名目にすぎない場合か否
かを慎重に審査する必要がある
その他、手形交換所取引停止事件(東京高判昭和58年1月17
日審決集30巻161頁
弘文堂『独占禁止法』239頁~240頁参照参照
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8
ロックマン工法事件
9
ワキタ(ロックマン工事のための機械の販売業者)と、そこから機械を購入
した土木業者による共同の取引拒絶
ワキタ
×
適用法条
実質的には、ワキタと17社の協同ボイコット
(一般指定1項は「自己と競争関係にある他の事業者」との共同の取引拒絶を規制してい
るので、17社のみの共同取引拒絶と構成し、ワキタは単独取引拒絶として構成。
ワキタ
2)施行部会の入会が認め
られない限り、販売しない
機械の販売
×
機械の販売
×
土木工事業者17社
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一般指定2項
2)施行部会の入会が認め
られない限り、販売しない
非会員の土木業者
×
1)機械の貸不・転
売禁止
土木工事業者17社
ロックマン工法協
会施工部会
1)機械の貸不・転
売禁止
ロックマン工事
=地面が固い場所で下水道管を敷
設する際に有効な工法
非会員の土木業者
ロックマン工法協
会施工部会
2条9項1号
公取委勧告審決平成12年10月31日審決集47巻317頁
公取委勧告審決平成12年10月31日審決集47巻317頁
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11 ロックマン工法事件のまとめ
10 取引拒絶の影響と違法性判断
もしも、ロックマン工法の他にも、固い地盤を掘削して下水管を敷設する工法が
たくさん存在していたらと考えてみる。
ワキタ
×
機械の販売
2)施行部会の入会が認め
られない限り、販売しない
×
土木工事業者17社
ロックマン工法協
会施工部会
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非会員の土木業者
1)機械の貸不・転
売禁止
実際は、固い岩盤などに下水を敷設するには、ロックマン工法以外の工法はな
かった
ロックマン工法の施工業者による協会に加入しない限り、ロックマン工
法(ひいては、固い地盤での下水敷設工事)に参入できない
ロックマン工法を使わせないこと
=市場閉鎖効果
ロックマン工法が使えないな
ら他の工法を使おう。
公正な競争を阻害するおそれ
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2
13 単独の直接取引拒絶
12 単独の取引拒絶
その他の取引拒絶
2 不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の
数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。
単独の直接取引拒絶の場合、取引先選択の自由が優先される
著しく市場に悪影響が生じる場合(公正な競争を阻害する
おそれ)
取引先選択の重要性
事業者が、独占禁止法上違法な行為の実効を確保するための手段として、例
えば次の①のような行為を行うことは、丌公正な取引方法に該当し、違法と
なる(一般指定二項(その他の取引拒絶))。
また、市場における有力な事業者が、競争者を市場から排除するなどの独占
禁止法上丌当な目的を達成するための手段として、例えば次の②~③のよう
な行為を行い、これによって取引を拒絶される事業者の通常の事業活動が困
難となるおそれがある場合には、当該行為は丌公正な取引方法に該当し、違
法となる(一般指定二項)。
1)丌当な目的のための取引拒絶
メーカー
×
再販売価格維持に
従った業者には供給
小売店
小売店
安売りをしたので取引を
拒絶
小売店
(ガイドライン第三、2)
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15 着うた事件 2008年
14 市場閉鎖
1 事件の経緯
1,5社に対する勧告(平成17年3月24日)
市場閉鎖効果の大きい単独取引拒絶
ソニー・ミュージック・エンタテインメント、エイベックス、ビクター、ユニバーサル、
東芝EMI
「市場における有力な事業者」が行った場合
(目安)シェアが10%以上or上位三位以内
2,東芝EMI応諾(勧告審決平成17年4月26日)
3,平成17年4月26日のこり4社に対する審判開始決定
4,平成20年7月24日審判審決
取引を拒絶された事業者が代替的取引先を容易に見つ
けることができなくなるおそれがある場合
5,平成20年8月25日 審決取消訴訟提起(4社) 東京高裁
(2009年1月第1回、7月)
単に取引を拒絶されて、その事業者が損失を被った、若しく
は他の取引先を見いだすことが難しいというだけでは、独禁
法違反とはならない
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16 着うた事件の争点
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17 事実の概要
1 携帯電話の着信音サービス
2,争点および論点
性質
1,5社は、共同して、着うた業者に対して、各社の保有する原盤権の利用許諾
を拒絶していたか否か?
MIDI(メロディーのみ)
著作権者
「楽曲のメロディを電子音にしたものを配信するも
のであるから,同事業を行うにはJASRAC等を通
じて著作権者に著作物の利用許諾料を支払えば足
り,比較的容易に事業を営むことが可能」
着う
た
「着うた提供事業に使用される原盤は,レコード会
社等が製作するところ,原盤の製作者は,著作権
法上,著作隣接権者として保護され,原盤権を有し
ている。したがって,着うた提供事業において,ある
楽曲を着うたとして提供するには,着うたとして提
供する当該楽曲の作詞家や作曲家などの著作者
に対し著作物の利用許諾料を支払うほか,原盤権
者に対し原盤権の利用許諾料を支払う必要があ
る。 」
1,共同の取引拒絶における「共同して」の意義
2,明示の意思の連絡が存在しない場合の意思の連絡の立証
2,公正競争阻害性の認定(共同出資会社の存在(事業上の正当性)、独禁法
21条の問題)
3,措置の必要性
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許諾
着メ
ロ
著作権者
原盤権者(著作
隣接権者 レ
コード会社)
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3
18 レコード会社の不満と対応策(レーベルモバイル)
19 着うたダウンロードサイトの特性
1,着うたダウンロードサイトにおける検索上位への位置づけの重要性
2 レコード会社の着メロに対する不満
「着メロ提供事業においては,レコード会社が多大な苦労と費用をかけて製
作した楽曲が着メロとしてどれほど利用されようと,原盤権者たるレコード会
社は何ら直接的な利益が得られなかったことから,レコード会社の中には,
着メロの価格競争が激化して楽曲が安売りされていること等について不満を
抱く者も多かった。」
↓
「着うたは娯楽商品としての性格上,ユーザーがその検索にコストや時間をかけよ
うとせず,ユーザーの多くは,中学・高校生から20代前半までの者であるので,着
うたをダウンロードする予算に限界があることなどの事情から,着うたのユーザー
のアクセスは,着うたカテゴリー・サイトの上方に位置付けられている着うた提供業
者のサイトに集中」
どうすれば上位に位置するようになるか?
着メロで利益がレコード会社に還元されないという問題を解消する必要性
「着うた提供サイトへのユーザーのアクセス数を増やすためには,ユーザーに人気
のある楽曲を着うたとして提供していることが必要不可欠の条件」
(合弁会社による着うたの管理→レーベルモバイル(後述)
(有力な楽曲を有する5社の利用許諾拒絶の影響が大きいことを説明する趣旨)
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20 レーベルモバイルと5社の関係及び、着うた業者との関係
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21 レーベルモバイルと5社の関係及び、着うた業者との関係
5社とレーベルモバイル社との業務委託契約内容
原盤権者
エイ
ベックス
SME
ビクター
ユニ
バーサル 東芝EMI
レーベル
カンパニー
利用許
諾
レーベルモバイル
着うた業者
他130社が着う
たを提供
着うた業者
「5社各社は,レーベルモバイルに対し,着うた提供事業で配信することになる
配信音源をレーベルモバイルが管理するサーバーへ蓄積及び保管管理するこ
と,同配信音源は5社各社が定める販売価格で利用者へ販売することなどの
業務について,非独占的に委託」
(レーベルモバイルに対する業務委託手数料は,着うた配信料金に対する比率
として,着うた提供事業開始当初は45パーセントであったが,着うたのダウン
ロード数が予想以上に好調であったことから,平成15年4月から35パーセント
に改定され,平成16年10月以降,25パーセントまで下げられた。)
☆レーベルモバイル社について
当初エイベックスが呼びかけ、SME,ビクター3社で設立計画を策定し、その後、ユ
ニバーサルと東芝EMIが参加。取締役会は、5社の役員、従業員が兼務し、代表取
締役は、事件発覚までは最初はエイベックス次にSMEの役員が兼務した
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23 アフィリエイト戦略
22 アフィリエイト戦略
原盤権者
レーベルモバイル
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一般的に,アフィリエートとは,サイトに他の
企業サイトへのリンクをはり,当該サイトの
閲覧者がそのリンクを経由して当該他の企
業サイトを閲覧し,当該他の企業サイトで会
員登録や商品購入などの取引が成立する
と,当該他の企業からリンク元のサイトの主
催者に報酬が支払われるという広告手法の
ことをいう。
他のWebサイト
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1,特定の楽曲にリンク(即ダウンロード可能)
2,その後、レーベルモバイル社がサイト側に手数料支払い(通常、支払
わない場合もある。)
アフィリエイト戦略のポイント
「アフィリエート戦略の第1の目的は,アフィリエート戦略案H15/9/29やア
フィリエート戦略案H15/10/9にみられるように,レーベルモバイルが運営
するサイトである「レコちょく♪サウンド」以外の競合サイトが発生すること
を防止することにあったものと認められ,着うた提供事業におけるレーベ
ルモバイルの優位性をより確実なものにしたいとの意図を認めることがで
きる。・・・アフィリエートの提携先選定の条件として,レコード会社が望まな
いサービスをしていないことや着メロ提供事業を行う者でないことなど,レ
コード会社と競合性の高いサイトを運営していないことを条件として検討し
ていることなどからみても,アフィリエート戦略がレコード会社等の原盤権
を保有等する者の利益を守る立場からも検討されたものであることが明ら
かであるというべきである。」91頁
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4
24 利用許諾の状況
25 違反行為の認定
「5社が原盤権を保有等の上,着うたとして提供している楽曲に
占める他の着うた提供業者に対する利用許諾実績の割合(平成
16年10月末時点,曲数ベース)についてみると,被審人エスエ
ムイー,被審人ビクター及び被審人ユニバーサルにあっては皆
無であり(ただし,被審人ビクターについては,別紙「楽曲提供の
申入れに対する5社の対応」のとおり,利用許諾契約の締結自
体は1件認められる。),被審人エイベックスにあっては0.04
パーセント,東芝イーエムアイにあっては0.51パーセントであっ
て,ほとんど利用許諾をしていない。」
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26 共同して
本審決の法令の適用
被審人4社は,正当な理由がないのに,共同し
て(ただし,平成17年4月26日ころ以前におい
ては,5社で共同して),他の着うた提供業者に
対する利用許諾を拒絶しているものである。これ
は,不公正な取引方法(昭和57年公正取引委
員会告示第15号)第1項第1号(平成21年改正
前)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反
するものである。
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27 公取委の判断内容(共同性、意思の連絡部分)
1,共同の取引拒絶における「共同して」の定義
不当な取引制限における「共同して」と同義であることを確認
「共同して」に該当するというためには,単に複数事業者間の
行為の外形が一致しているという事実だけでなく,行為者間相
互に当該行為を共同でする意思,すなわち,意思の連絡が必
要であると解される。 そして,この場合の「意思の連絡」とは,
複数事業者間で相互に同内容の取引拒絶を実施することを
認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があることを意
味し,意思の連絡を認めるに当たっては,事業者相互で拘束
し合うことを明示して合意することまでは必要ではなく,相互に
他の事業者の取引拒絶行為を認識して,暗黙のうちにこれを
認容することで足りるものというべき」(東芝ケミカル事件の定
義を踏襲)
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「5社は,新規事業である着うた提供事業を開始するに当たり,だれでも容易に開始するこ
とができる着メロ提供事業とは異なり,着うた提供事業を開始するには楽曲の原盤権に関
する権利が必要であることから,原盤権を保有等することによる優位な立場にあることを利
用し,原盤権を保有等するレコード会社が結束し,率先して事業を開拓することで,レコー
ド会社以外の者の参入をできるだけ排除して,5社の原盤権に基づく利益を上げることを
意図して着うた提供事業の開始を検討していたことが認められる。また,着うた提供事業
が軌道に乗った以降は,他の着うた提供業者に対して楽曲を提供しないようにするため,
楽曲の提供に代わる対応策としてレーベルモバイルの運営会議においてアフィリエート戦
略を検討してきたものと認められる。そして,実際に他の着うた提供業者に対し,楽曲の提
供を行わないようにしており,特に着うたの配信価格の安定を脅かすことになる利用許諾
をほとんど行っていないという外形的事実が認められる。さらに,5社には利用許諾を拒否
する動機が認められる。これらの事情を総合勘案すれば,5社は,他の着うた提供業者に
対して楽曲の提供をできる限り拒絶し,少なくとも価格競争圧力となるような競争者の参入
を排除するためには,利用許諾を拒絶することが有効であることを認識し,また,5社のう
ち自己以外の者が同様の認識を有し,5社が相互に協調的行動を採ることを期待し合う関
係にあった,つまり5社には,少なくとも利用許諾を拒絶することについて,意思の連絡が
認められるものというべきである。
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28 共同して
本件の特徴
「5社間における明示の意思の連絡を直接証するものは存しない」
間接事実から推認
1,利用許諾した事実がほとんど存在しなかったという事後の不自然な行動
の一致
2,レーベルモバイル社設立背景、動機、アフィリエイト検討の際の状況
評価
1,共同した利用許諾について、黙示の意思の連絡が存在したことは推認し
うる
2,より一歩進んで、仮に共同して利用許諾を拒絶したとしてもこれを正当化
する余地があるか否かについて、検討する必要がある。
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