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I ICG Report
I
ICG Report
2013年01月16日発行 第348号
発行:ICGインベストメント
ICGレポート編集部
沢井智裕/山本信幸/藤居玲子
北方領土は返ってくる!
~ロシアの思惑と日本の事情が一致~
何が起こっているのか?
自民党安倍政権には夏の参院選までにやっておかなくてはならないことがある。一つは消費
増税を確実にするための「デフレの脱却」で、このところの株高や円安傾向は、安倍政権の思
惑通りではないだろうか。そしてもう一つは外交で、中韓との関係改善である。そのためには
「ロシアとの友好」が重要になってくる。それにはどのような理由があるのだろうか?
どう対処すべきなのか?
中国包囲網ではなく、自然な外交
安倍首相の就任最初の外遊先は、本命のアメリカではなく、タイ、インドネシア、ベトナムと
いう親日国家のアセアン 3 カ国となった。オバマ大統領の二期目発足準備に忙しく、スケジュー
ルの都合がつかなかったということだ。
しかしアセアン訪問にも大きな意義がある。これまでアセアン諸国が日本にシグナルを送って
いたにもかかわらず、日本側は東南アジアを軽視してきた。アセアン諸国は領土問題を含めた中
国の脅威を取り除くためにも、日本のアセアン諸国に対する「本気度」を知りたかったに違いな
い。今回の安倍首相の外遊をきっかけにアセアン諸国との緊密な関係が構築できれば、中国にとっ
ては大きなプレッシャーになる。
中国は経済バブル崩壊懸念をなんとか免れたが、国内の貧富の格差問題は限界点に達している。
中国四川省の西南財経大学の調査によると、所得格差の代表的指標である「ジニ係数」は、2010
年に警戒水域である 0.4 はもちろん、社会不安に繋がる危険ラインと言われている 0.6 も突破し
て 0.61 に達しており、いつ一般大衆の格差に対する不満が大暴動に繋がってもおかしくない状
況である。中国以外に指数が 0.6 を超えている国は当然、先進国ではない。南アフリカ、ボツワ
ナ、ナミビアといった民族対立や紛争が活発な国々だけである。よって中国は外交においても、
昨年の反日デモ同様に強硬な態度を取らざるを得ない。最近の外交を見ていると良く分かる。ア
メリカ、ベトナム、フィリピン、日本、韓国など、どの国に対しても国益を最重視した強硬姿勢
を貫いており、諸外国の利益など考えることは出来なくなっている。その中国の動きに一番敏感
なのが、中国と世界最大の国境を接するロシアである。
中国よりも苦しいロシア
中東の原油に頼らずに自国でエネルギー資源の確保に努めてきたアメリカは昨年来、シェール
層から掘削できるシェールガスやシェールオイルの開発に余念がない。そのため中東産油に依存
する割合はわずか 9 %にまで低下し、今ではイラクやアフガニスタンから軍隊を引き揚げること
が可能なレベルに達している。
シェールガスやオイルの採掘には、もともと莫大な費用がかかるとされていたが、高止まりす
る原油価格が、シェール層の天然資源の掘削を可能にした。ただ欠点は、環境破壊の元凶となる
可能性が高いことである。採掘作業による地下水や河川の汚染だけでなく、地震を誘発するとい
う指摘もある。実際に地震が多発する地域が現れているようだ。
中国国内のシェール層にも大量の天然ガスや原油が埋蔵されており、中国はアメリカと実務者
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レベルでの情報交換を始めている。ただ現時点でも水質汚濁や大気汚染といった環境問題に悩ま
されている中国は、今後食糧問題だけでなく、飲料水の確保も容易にならない可能性が高まる。
一方でユーロ圏はシェール・エネルギーに関しては静観の構えである。環境問題に敏感なドイ
ツやフランス、オランダ、スペインは大きな副作用を伴うことを認識しているため、太陽光、風
力、波力・地熱といった自然エネルギーの開発に力を入れる。
背景にはロシアの存在がある。天然ガスの独占販売企業であるガスプロム社が以前、グルジア
向けの天然ガスの販売価格を1000立法メートルあたり110ドルから230ドルへ一気に2倍引き上げ
ると発表したことがあった。ロシア産天然ガス依存度の高いユーロ圏諸国にとっては、突然エネ
ルギー安保が脅かされたようなもの。それ以来、ユーロ圏では「脱・ロシア」志向が強まってい
る。そのためロシアが想定できる大口顧客と言えば日本しか残らなくなった。
ロシアは領土返還の「最後のチャンス」
その日本も東日本大震災以降、「脱・原発」に絡めて、自然エネルギーに向かって進み始めた。
しばらくの間、大半の原発の停止状態が続き、しかも将来的には原発が最小限に落ち着きそうな
日本に、ロシアは天然ガスを売り込みたい。日本なら長期契約で安定的に収入が確保出来る。し
かし日本はロシアとの間で「北方領土問題」を抱えてきており、ロシア産の原油や天然ガスを大
量に購入することには二の足を踏まざるを得ない。しかも日本でさえ最近は、近海に埋蔵が確認
されたメタンハイドレート(石油・天然ガスに代わる次世代資源)を掘り始めたり、自然エネル
ギーに傾倒しており、このままではロシアは世界の有力な大口顧客を全て失うことになる。
そこで2012年に起こった日中間、日韓間の「領土に関する問題」が重要になってくる。日本人
がこれほどまでに領土に関する問題に関心を持ったことは、戦後初めてと言っても過言ではない
だろう。ロシアはこの時期を利用して、日本に小出しに領土を返還していき、バーターとして天
然ガスや原油の長期売却契約を結びたいというのが本音だろう。
世界銀行の資料でロシアのジニ係数を見ると2009年で0.404で、その後もリーマンショックの
後遺症で、貧富の格差は拡大しているものと思われる。モスクワや大都市ではプーチン政権に対
する大規模デモが発生している。昨年の中国における「反日デモ」を見ているプーチン大統領と
しては、経済のテコ入れと富の平準化に力を入れざるを得ない。しかし大口顧客のユーロ圏、ア
メリカ、中国に見放されかねないロシアだけに、日本市場はのどから手が出るほど欲しい市場な
のだ。
一方で日本にとってのメリットは何なのか?
「領土返還」機運の高まりで安倍政権は、参院
選を有利に戦うことが出来る。そして何と言ってもロシアとの関係強化により、中国に対して強
硬姿勢をとることが出来る。ロシアは信用ならない国ではあるが、ロシアは中国を最も信用して
いない。有名無実化している中国との「上海協力機構」は、対欧米諸国のものだったが、内政に
忙しい中国に今やロシアと共闘するメリットは何もない。
「北方領土」が3島でも返還されれば、尖閣諸島問題や竹島問題も違った動きが出てくる。内
政に全神経を使う中国、円安に不安を覚える韓国。日本にとってもロシアにとっても最大にして
最後のチャンスかもしれない。
このような安倍政権を取り巻く環境が有利な方向へ進めば、日本の株価は、安倍政権時代の最
高値、2007年7月21日の1万8240円を目指すだろう。
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Q&A
Q. 残高不足に陥るのを防ぐためにHSBC(香港)のアドバンス口座を格下げしたいのですが可能
ですか?
A. 書面にて「アドバンス口座からスマートバンテ―ジ口座」への変更が可能です。最低預金金
額は1万香港ドル(約12万円)と手ごろです。もちろんネットバンキングにも対応しています。
Q. プライベートバンクに口座で保有しているファンド証券の名義を個人に変えることは出来ま
すか?
A. 所定の用紙があります。手続きには約1カ月程度を要しますが、管理銀行(ファンド証券を保
管する銀行)を変更せずに名義の書き換えが出来ます。共同名義でも保有が可能です。
Q. 円高の是正はどこまで進みますか?
A. 安倍首相の言われている「90円」が一つの目標になるのでしょう。ただ大きな転換期に来て
いるので、円安トレンドは長期化すると思います。年初の欧米の英字紙で目立つのは、対日本円
に限らず、他通貨(ユーロや新興国通貨)に対しても「ドル高」という論調が多いことです。
NEWS
急落エジプトポンドの意味
エジプトのムバラク前大統領の退陣後、エジプトは政情不安に陥った。イスラム勢力中心に支
持を得ているムハマドモルシ新大統領は12月下旬に新憲法案の是非を問う国民投票を行い、63.8
%の賛成多数で承認されたものの、新大統領の正当性に疑いを持つ国民は反発を強めており政情
不安は深刻化している。「アラブの春」以降、海外からの投資や観光客は激減しており、エジプ
トの外貨準備高は150億ドル程度まで減少し、ムバラク政権時の250億ドルから60%減となってい
る。通貨エジプト・ポンドは、2010年初は1ドル=5.4エジプトポンドだったが、12年は通年で6.
0ポンド近辺で推移していた。13年は年明け後の9日までに6.48ポンドに急落している。12年末に
外貨準備の減少を防ぐために、エジプト中央銀行が新しい外貨入札制度で米ドルの売買を行うシ
ステムを導入し、事実上の変動相場制へ移行した。
「第二のギリシャ化」を懸念する国際通貨基金(IMF)は、48億ドルの緊急支援に乗り出す意
向をエジプト側に伝えた。エジプト中央銀行は同国の法人企業に対して金融機関の口座から引き
出すエジプトポンドの限度額を1日あたり3万エジプトポンドまでとして、また個人による外貨へ
の交換に対しては1-2%程度の手数料を徴収することを発表している。資金の流出を防ぐ政策に
奔走している様子がうかがえる。
中東の政治大国エジプトの経済規模(GDP)は、2010年時点で2168億ドルであり、ギリシャの2
987億ドルよりも小さいが中東全体に波及して投資が引き上げたり、滞ったりすることがあれば、
政情不安や経済不安に繋がる。(ICGヨーロッパ
ヨハブ・リウィット)
今年のNY株は弱い
「大統領選挙の年はNY株は強い」とよく言われているが、それでは大統領が新しくなる年はど
うなのだろう? 1926年からのS&P500における統計では、オバマ大統領のように現職の大統領が
再選した最初の年は、パフォーマンスが平均-0.3%と比較的悪い。
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一方で大統領の一期目で3年目のパフォーマンスは、平均+24.9%と高利回りとなっている。
大統領がゆとりを持って経済政策を実行し、当初の苦い薬も効き目を発揮するからでないかと考
えられる。そして二期目、つまり再選に向かってアクセルを吹かすことが出来るからだろう。
しかし大統領二期目の3年目、つまりオバマ大統領の3年目(2015年にあたる)は、平均+18・
7%と分がいい。これらの株価サイクルを鵜呑みにする必要はないが、一定の法則に沿って動い
ているようにも見える。
ただ例外もあってブッシュ前大統領の二期目の1年目の2005年のようになるかもしれない。こ
の時のパフォーマンスは+4.9%であった。1997年のクリントン元大統領の二期目最初の年も+3
3.4%であった。また1973年は特殊な年だった。中東危機があるその前の6年間、株価は高値を更
新し続けていた。そして中東危機がぼっ発して株価は73年に-14.7%、74年には-26.5%と大幅
なマイナスを経験している。有事はともかく平時であればある程度過去の経験則が当てはまるの
かもしれない。今年は、仕込みの年として、来年以降に期待すると良いかもしれない。
(香港 アジア太平洋ファンドマネジャー)
ヘッジファンドの平均利回りは5.5%
2012年の平均的なヘッジファンドの利回りは年率5.5%であった。ヘッジファンドリサーチ(H
FR)社によると、従来型の割安銘柄に投資するバリュー型投資のリターンが年率10.3%、企業の
合併や買収、再編や業務提携、新商品開発などの企業の流れを変える大きなイベントが発生する
ことを予想してポジションを取る「イベントドリブン型」の運用手法も、年率7.3%のリターン
を上げている。
在スイスの英系シュローダーズ・プライベートバンクは、それでもヘッジファンドに投資する
ことを優先する。というのも運用手法の多様化で、マーケットのボラティリティ(乱高下)を利
用した利益、確定利回り商品のマクロ戦略、コンピューターを使ったシステム売買、クレジット
(CDS等の保険商品)の売買と相場に左右されずに収益を上げるものが多いためである。
190億ドルの資産を運用する米ブラックロック社も、金融当局による規制により資金の融通が
効かなくなった金融機関に対して、比較的マーケットよりも高い金利で資金を提供したり、ボラ
ティリティを利用した裁定取引によって利益を上げる工夫をしている。リーマンショック後にヘッ
ジファンドは大きく資産を減らしたが、新規の資金の流入によって全体の運用資産はリーマンショッ
ク前の2兆ドルの水準に戻っている。
相場が好調な時は良いがいざ株価が高い位置に来たり、債券利回りが最低水準にある今は、逆
にヘッジファンドの多様な運用手法のほうが、プロの投資家には好まれるのかもしれない。
(シンガポール ポートフォリオマネジャー)
人民元建て資産の保有に異変
1月10日現在、1ドル=6.22人民元レベル。2005年の限定的変動相場制に移行してから最高値に
位置する。円安により人民元高圧力は一時的に緩和されているが、人民元高圧力はもっと違うと
ころに現れている。これまで人民元の保有と言えば「投機」の対象と見られていたが、長期で人
民元を保有する動きが顕著になってきている。もちろん世界第2位の経済規模を誇る中国の通貨
ということもあるが、長期保有の背景には欧米のプライベートエクイティファンドの存在がある。
これらのファンド群は、中国の成長企業に長期投資し、将来的にM&Aや株式新規公開(IPO)を通
じて大きな果実を得る。
2011年プライベートエクイティファンドの投資額は176億だったが、2012年はユーロ危機や中
国バブル崩壊懸念の影響もあって102億ドルに留まった。中国系のプライベートエクイティファ
ンドがファンドの設定に二の足を踏む一方で、欧米系のファンドは11年の12億ドルから12年は14
億ドルにアップしている。これら外資系ファンドの全体に占める割合は、11年の7%から12年に
は14%とシェアを伸ばしている。なおかつ、これら外資系ファンドは完全自由化の実現していな
い人民元の調達に苦労する。
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今後も欧米系を中心とした外資系のプライベートエクイティファンドが増加し、人民元を調達
する。それは人民元の長期保有を意味し、長期に渡って人民元の価値を下支えすることになるだ
ろう。(上海
為替トレーダー)
FUND
アベノミクスがいつまで続くか
早い円高是正のピッチもさすがに90円台に差し掛かれば、達成感から一服するだろう。しかし
日本の株価は「脱・民主党相場」から「アベノミクス相場」に入りつつある。円高是正による企
業業績の回復がいよいよ本格化する可能性があるからだ。もうひとつの好材料は、世界のリスク
マネーが完全に息を吹き返したことによる。
ユーロ圏ではスペイン国債の利回りが5%割れ(価格は上昇)、通貨ユーロも対米ドルで持ち
直し、日本円に対しては過去3カ月で13%も上昇した。東南アジア諸国に滞留していたリスクマ
ネーはタイ、フィリピン、インドネシア、マレーシアから、今年に入って物色対象を拡大し、ベ
トナム、インド、中国に流入し始めている。世界で最も割安感のある先進国市場は日本で、今後
は株式投資に加えて日本企業を対象としたM&Aも活発に行われるだろう。問題はこの相場の持続
性だが、昨年後半からのラリーが続いており当面は続きそう。
JF Vietnam Opportunities
短期★★★★★
昨年来安値に放置されていたベトナム株式に欧米系の資金が流入している。フィリピン、イン
ドネシア、マレーシア等の東南アジア株に投資していたファンドによるポートフォリオの組み替
えによるものと思われる。年初から既に10%程度上昇しているが、短中期的に上昇が見込める。
長期★★★★★
貿易赤字やベトナムドンの通貨安等を外資系資本の流入がカバーしそうだ。東南アジアの周辺
諸国ではインドや中国でも同じような外資系の動きが見られ、これら3市場に資金が流入しそう。
消費関連、金融機関、原材料を扱う企業に投資。ベトナム市場は3年余調整しているので値ごろ
感があるのも有利。
総評★★★★★
TOKYO
OSAKA
ICGファンドの運用成績
本レポートは十分に注意深く編集していますが、完全に誤りがないことを保障するものではあり
ません。本レポートはあくまで投資決定上のひとつの材料とお考えください。
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