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非塩化物型凍結防止剤を用いた現道散布効果試験

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非塩化物型凍結防止剤を用いた現道散布効果試験
非塩化物型凍結防止剤を用いた現道散布効果試験
独立行政法人土木研究所 新潟試験所 所 長 武士俊也
研究員 ○小林一治
高田河川国道事勝所 建設監督官(滴儲翻) 林 健一
1.はじめに
我が国では、スパイクタイヤ.による粉塵問題を解決するため、平成2年度に「スパイク
タイヤ粉じんの発生の’防止に関する法律」が施行された。それ以降、積雪寒冷地において
冬期路面管理のため、凍結防止剤の使用量が年々増大する傾向にあり、過剰散布による雪
寒事業費への経済的圧迫及び道路沿道環境への影響が懸念され、環境に優しく持続性のあ
る新たな凍結防止剤の開発及び効率的・効果的な散布方法の確立が望まれている6
平成14年度に土木研究所及び民間薬剤製造会社3社との共同研究で開発した、,非塩化物
型凍結.防止剤(酢酸ナトリウム)を直轄国道に薬剤散布し道路管理者が標準散布している凍結防
止剤(塩化カルシウム)と薬剤散布効果の現道実証試験を行った。本報告は、薬剤散布後の散布
効果比較試験結果について報告する。
2.掛麹概要
本試験は、関東地方整備局長野国道事務所管内の一般国道18号長野県上水内郡信濃町野
尻地先において、非塩化物型凍結防隼剤(酢酸ナト動ム)散布区間L=1,8kmを設定し通常散布の
凍結防止剤(塩化加シウム)散布区間と区分して、試験観測を合計7回延べ69時聞実施した,
なお、薬剤散布は、道路管理者が実際に薬剤散布を行うタイミングで実施砥計測箇所
幽(2区間)に同時薬剤早舞(標準散布量20g/m2)を行った。’
2.1計測観測項目
1・)路面すべり測定車による計測
薬剤散布後1路面すべり測定車により1時間までは30分間隔、その後は1時間間隔で
にすべり摩擦係数を測定した。なお、計測時の路面すべり測定車は、走行速度を40km/h
とした。
表一1 路面詳細観測項目,
a)現地観測員による路面詳細観測
二一1の8項目を上記時間で計測を行った。
観測項目
酢酸ナトリウム 塩化競シウム
U布区間 散布区間
1箇所で同時計測
走行部観測で各々3点計測
2.2 非塩化物型凍結防止剤に関.するアンケート調査
走行部観測で各日3点計測
薬剤散布除雪業者に本試験期間内で酢酸ナトリウム
層走行部観測で各々3点計測
降雪量:
1箇所で同時計測
を取り扱っ’たオペレータを対象に薬剤散布後の雪
1箇所で同時計測
交通量
氷路面への薬剤の効き方についてアンケート調査を行 目視による路面性状 走行部観測で各々3点計測
1箇所で同時観測
除雪車通過時刻
った。
気温
雪氷路面温度
路面雪氷厚
残留薬剤濃度
2.3 酢酸ナトリウムの臭気計測
酢酸ナトリウムを取り扱う上で、道路管理者から「酢酸系薬剤を散布すると酢の臭いがきつ
い」と沿道住民から臭気の苦情が届くのではないかと道路管理者から指摘されている。
酢酸ナトリウムの臭気計測は、薬剤散布車格納庫内で酢酸ナトリウムを薬剤散布車へ投入する時及
一341一
び、薬剤散布区間の道路脇で散布後に実施した1
3.試験結果
平成14▽年度冬期旧く平成15年1月∼2月).に薬剤散布効果を一般国道一18号において、
薬剤散布比較試験を行った結果、次の特徴的な傾向が得られた。
3.1.現道散布比較試験結果
布区間より雪氷路面上の雪氷が溶けに
くい状況が7回調査中2回確認された。
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・第2回目の調査結果からは、塩化カルシ
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(図一1)
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1)酢酸ナトリウム散布区間は、塩化加シウム散
、需.._.
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ウム散布区間の路面が氷野からシャーベット
ビ フ ちほコ む ぬぬ ほく へと変化しているのに対し、酢酸卦リ 1 翻
ウム散布区間は路面上に氷膜や氷板が 図.1第2回目詣査結果:雪氷路面状態とすべり
残ったままとなっていた. 摩擦係数の経時変化
2)すべり摩擦係数は、上記1)の様な雪氷路面となった場合には、酢酸ナトリウム散布区間
のすべり摩擦係数が小さくなっていた。(図一1)それ以外の場合においては、両散布区
間共、顕著な差異は確認出来なかった。,’
・7回調査中3回の調査結果からは、塩化カルシウム融布区間の雪氷路面がシャーベットの時、
酢酸ナトリウム散布区間の雪氷路面が氷膜等となり、すべり摩擦係数も酢酸ナトリウム散布区
間の方が低い値となっていた。
3)雪氷路面温度は、両散布区間共、.顕薯な差異は確認出来ながつた。
・7回調査中2回の調査結果からは塩化加シ弘散布区間より酢酸ナト艸ム散布区間の雪氷
路面温度が低い値となることが確認されたものの、その他の調査では両散布区間共
顕著な違いは確認されなかった。
4)残留薬剤濃度は、酢酸ナトリウム散布区間の方が低い値となる場合が確認された。(図一2)
・今回調査実施した7回の調査では、塩化カルシウム散布区間より酢酸ナトリウム散布区間の薬
剤濃度が低い値となる場合が多く出現した。.こ.の薬剤濃度の違いが、上記1)、2)で
示したような西下カルシウ職布犀間と酢酸ナト1ウム散布区間の雪氷路面状況、すべり摩擦
係数の違いに影響を与えている要因ではないかと考えられる。
5)、路面雪氷厚については、塩化カルシウム散布区間より酢酸ナト艸ム散布区間の雪氷厚が厚く
なる状温が7回調査中3回確認された。(図一3)
漁
髄三韓
図一3第4回目調査結果:路面雪氷厚の経時変化
四一2 第1回目調査結果:薬剤濃度の経時変化
一342一
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厨渦
轡鳩
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ロ山繭鎌賦角笛蹴り紬
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6)本試験:では、薬剤の散布目的別(事前散在・事後散布)の違いによる薬剤の効き方(す
べり摩擦係数)に明確な差異は確認出来なかった、
7・)薬剤散布後のすべり摩擦係数による即効性・持続性の評価
本試験の薬剤による、即効性及び持続 酢謝助ムのすべ腱欄緻(散布首後∼1隈凝の平均㈲
・即効第一 (式司)
性の評価は、式一1,式一2により整理した。㌧ 三巴励ムのすぺり摩擦融二布直後噛後までの二二
この結果、酢醗ト1ウム散無間より塩化.持続性.醐ウムのす蠣麟(散布廿里緬平均㌦)
カルシウム散布区問の方が若干上回っていた 塩化力励ムのすべり摩擦轍画布罐陶轍までの平均働
が、酢酸ナト艸ム散布区間の方が高い評価の 麹薬剤散布後の即効性・持続性
1回目調査
・即効性は、平均0.92
・持続性は、平均0.95
今回使用した非塩化物型凍結防止剤(酢
酸ナト艸ム)については、更なる即効性・持
続性が向上する薬剤に改良する必要があ
る。
0.95
0.90
0.85
0、96
tO2
1.00
0.96
0.99
073
0.82
1、02
0.91
0.89
092
tO8
095
布
備
即競
場合も認められた。(表一2)・
事前散布
32
非塩化物型凍結防止剤に関するアンケート結果
除雪業者による薬剤散布効果の目視による評価は、酢酸ナトリウムより塩化カルシウムの方が雪氷
路面の溶解性・即効性・効果の持続性で優れているという回答が多かった。
事前・事後散布別の薬剤の効き方に対する回答は、次のとおりであった。
1)事前散布時の薬剤の効き方
・酢酸ナ団ウム散布区間・塩化カルシウム散布区間とも薬剤の効き方は同様である(7割回答),、
又、持続時間も両区間共2時間程度(7割回答)。
2)事後散布時の薬剤の効き方 一
・塩化カルシウム散布区間の効き方が早い(6割回答)。薬剤の効き方は同様である(4割回
.答)。 ・ 』 、
3.3酢酸ナトリウムの臭気計測結果
酢酸ナト艸ム二布後の道路沿道と薬剤投入時の薬剤散布車格納庫内の臭気を採取し、酢酸
濃度分析と臭気濃度(臭気指数)の分析を行った。
1)試料採取日
試料採取日の条件は、表一3のとおりであった。採取日は、低気圧が発達し風速もや
や強風で、薬剤散布車が薬剤散布を行っても臭いが気にならない状態であった、
表・3 試料採取臼の条件
試料採取日時 計測場所 天候 気皿 相対湿度 風向・風速
平成15年2月20日19時∼20時 薬剤散布車格納庫屋外は雪 一1.2DC 72%・格納庫内密閉状選
平成15年2月20日19時∼21時 道路沿道(歩道上)雪(吹雪) 一2.0℃ 93% 北東3∼5m/s
平成15年2月27日O時 道路沿道(歩道上) 雪(吹雪) 0.4。C 96% 東 1∼3m/s
2)計測結果
計測結果は、三一4のとおりであった.
(1)作業員への影響につ・いては、薬剤散布車格納庫を密閉状態とし作業環境が一番厳し
一343一
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い三態で計測塗行った結果、酢酸濃度0,090ppm,臭気拳数15と検出された。
、・・労働安全衛生法第65条(作業環境測定)及び安衛施工令第21条(作業環境測定を行う
べき作業場)から1今回の計測値を当てはめると酢酸ナトリウムが特定化学物質等に該
写していない。これは、人.体等に影響を及ぼさない(作業疾病が起きないと思∼)れ
る)ことから規定を設けていないと思われる。
(2)道路沿道で住民への影響については、微量な酢酸が検出されたが臭気指数が10未満
であることから、特に問題になることはないと考えられる。
・悪臭防正法により規制基準を定めた、地方公共団体における嗅覚測定法の採用状
況で、一番厳しい第1種区域でも臭気指数10となっている。しかし{臭いが生じ
ることが確認出来たので、酢酸ナトリウムを薬剤散布を行う時は、事前に酢の臭いが生
じることを沿道地域住民に情報提供を行う必要があると思われる。『
表.4 計測結果
試料採取日時 .計測場所 酢酸濃度(ppm)臭気濃度臭気指数
平成15年2月20日19時・》20時 薬剤散布車格納庫 0,090 32 15
平成15年2月20日19時∼21時 ら O.012 10未満 10未満
平成15年2月27日0時 ■ 道路沿道(歩道上) 0.006未満 10未満 10未満
(3)本計測は、限られた条件での測定のため、’路面状態が湿潤、乾燥、雪氷状態や融雪
時にどう変化するかは計測していないので一結果と考えているが、薬剤散布車格納庫
内で計測した酢酸濃度より高くはならないと推定される。
4.まとめ
本試験で『は、非塩化物型凍結防止剤(酢酸ナト助ム)と長野国道事務所管内における標準散
布凍結防止剤(塩化加シウム)の薬剤散布効果試験を定められた場所と限られた時期及び薬剤
散布量での比較を行った。
1)標準散布凍結防止剤(塩化カルシウム)の方が同程度か優れている結果が多かったが、今
回共同開発した非塩化物型凍結防止剤(酢酸ナトリウのは、塩化畑シウムと同程度(即効性0.9
2、持続性0.95)の薬剤散布効果も一部確認出来た。
2)酢酸ナトリウムの臭気に.ともなう、作業員への影響・道路沿道への散布後の影響は、特
に大きな問題なる臭気漂度・臭気指数偉計測されなかった。
今後は、非塩化物型凍結防止剤(酢酸卦リ払)を聖なる即効性・持続性が向上する薬剤に
改良し、薬剤散布量及び散布間隔を調整した比較試験を行い、薬剤散布効果を判断する必
要があると考えられる、
また、非塩化物型凍結防止剤(酢酸ナト勤ム)の特徴を生かした散布箇所等、散布方法の提
案に向けた研究を実施して行く必要がある。
謝辞
本研究を実施するに当たり、国土交通省長野国道事務所より試験フィール・ドを快く提供
して頂いた。また、岩澤建設㈱に比較薬剤を散布して頂き。現地試験観測においては、開
発技建㈱及び(財)上越環境科学センターに厳寒の中、路面詳細観測等を協力して頂き、関
係者の皆様に深く感謝の意を表します。
一344一
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