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第3章 健康を支える環境づくり
第3章 健康を支える環境づくり 第1節 医薬品等の適正使用対策 現状 ○ 医薬品及び医療機器等は、生命及び健康の保持や疾病の治療に不可欠なもので、その開発か ら製造、流通、使用の各段階において品質、有効性及び安全性の確保を図ることが必要である。 保健所では、薬局や医薬品等販売業者に対して薬務課と連携し立入監視や指導を行っている。 ○高齢化社会の進展や疾病構造の変化に伴い、医薬品の多剤併用や長期服用が増加している。 ○全国的に、従来の薬物事犯に加え、規制薬物に類似した化学構造を有し、人の精神に作用し健 康に被害を生ずる恐れがある薬物を含む違法ドラッグの乱用が問題となっている。これらはイ ンターネットで入手可能なことから、若者を取り巻く危険性が増大しており、保健所では、徳 島県薬物乱用防止美馬保健所管内協議会を中心に、薬物乱用防止指導員及び関係機関・団体と 連携し、若年層や地域住民への正しい知識の普及啓発活動を実施している。なお、平成24年 12月21日、薬物乱用の無い健全な社会の実現をめざして 、「徳島県薬物の濫用の防止に関 する条例」が公布された。 ○平成23年度、災害時に、医薬品や医療機器の供給と薬剤師支援を円滑に行うため、災害時 の薬務コーディネーター( CN)が配置され、体制整備をすすめている。 課題 ○医薬品の多剤併用や長期服用が増加する中、それらの相互作用や副作用などを確認し、患者 等が医薬品の特性を理解し、適正使用のために薬局、医薬品販売業者が情報提供、服薬指導 等を適切に行うよう指導する必要がある。 ○県民の健康に対する意識や関心が高まる中、医薬品等を適正に使用し、健康被害の発生を未 然に防止するための県民への知識の普及啓発が求められている。 ○巧妙化、潜在化する薬物事犯に対して、薬物乱用の悪影響について低年齢からの普及啓発が 求められる。管内では、高校卒業後は都市部に進学・就職する者が多いため、家庭・学校・ 地域が連携して薬物についての正しい知識の普及・啓発活動を引き続き行うことが必要であ る。 ○災害時の薬務CNの活動には、平常時から総括薬務 CN(薬務課)と管内の地域薬務CNや 地区薬務CNの連携を整備しておくとともに、災害時の医療 CN と連携した体制づくりが重 要である。 施策の方向 ○薬事法の一部改正( 平成18年法律第69号)により 、薬局等において医薬品を販売する際、 医薬品のリスクに応じ薬剤師等が適正な使用のために必要な情報を提供する規定が導入され ており、引き続き薬局や医薬品等販売業者に対し適切な従事者教育を含む情報提供体制につ いて指導を行う。 ○出前講座、啓発資材の活用等により県民に対する医薬品等に関する知識の普及啓発を行う。 ○今後とも小中学校等を対象とした薬物乱用防止教室の開催や、地域における文化祭、イベン トなどをとおして、薬物乱用防止地区協議会、団体等と連携し薬物乱用防止のための啓発に 努め、「薬物乱用を許さない」社会環境づくりを推進する。 ○災害時の薬務 CN 研修への参加などにより、災害時の医薬品等の供給や薬剤師派遣に係る調 整機能の強化に努めるとともに 、災害時 CN「 圏域内連絡調整会議 」や「 研修会 」を通じて、 医療 CN 等ほかの災害時CNと連携した体制の整備に努めていく。 第2節 快適な環境衛生の確保 現状 ○理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業等の生活衛生関係営業施設は、住民の日常生活 に密着し、生活水準の維持及び公衆衛生の向上に重要な役割を果たしているが、管内では個人 経営が多く、営業者の高齢化等の状況もあり住民の多様なニーズや高度な衛生水準を確保する のが厳しい状況にある。 ○生活衛生関係営業者には、衛生措置基準の確実な実施の指導により、利用者のみならず従事者 自身の感染症予防を図っている。公衆浴場業等の入浴施設の監視指導では、レジオネラ症対策 の感染防止措置を重点に指導しているが、平成23年に徳島市で発生した、入浴施設に併設さ れた熱気室における死亡事例も踏まえ、利用者の健康に関する事故防止の注意喚起も進めてい る。理容・美容業では、所外業務(出張業務)での衛生確保のほか、エステサロン等における 美容類似行為、まつ毛エクステなど、新たな課題も生じている。 ○生活衛生関係営業施設の監視指導には、科学的根拠に基づく監視指導が求められる。 課題 ○生活衛生関係営業施設の衛生水準の維持向上のため、計画的な巡回指導を実施し、現状の把握 と衛生指導の強化を図り、業者自身による自主衛生管理体制の確立と維持について指導・支援 する必要がある。また従業者の高齢化や施設の老朽化に伴い、適正な衛生基準の維持が困難と なっているものには 、(公財)徳島県生活衛生営業指導センター等と連携した対策も図ってい く必要がある。 ○不特定多数の人が利用する旅館、公衆浴場、遊泳用プール 、「建築物の衛生の確保に関する法 律」に規定される特定建築物などの施設については、利用者が安心して利用できる衛生的な安 全性が求められる。営業者・施設管理者、従業者の自主的な衛生管理意識の向上とそれに関す る知識の普及が重要である。 ○監視指導時の簡易検査と必要に応じた室内試験検査のための検討も行っていく必要がある。 ○「東日本大震災」を契機に、大規模災害時の避難所等における衛生指導に、保健所環境衛生監 視員にもその役割が期待されているが、保健衛生分野や環境分野との連携体制が必要である。 施策の方向 ○平成25年度から、生活衛生関係営業施設の保健所監視指導計画を策定し、効率的な立入監視 指導を実施する。公衆浴場等の入浴施設におけるレジオネラ症の発生防止対策は、引き続き重 点的な監視指導を図り、感染症の発生防止に努めていく。 ○保健所監視指導計画に基づき、生活衛生関係営業施設に対する衛生講習会を実施し、事業者等 への衛生知識の普及啓発を図るとともに、生活衛生営業指導センターの協力も求め、法令に基 づく衛生措置基準の遵守と自主衛生管理体制の確保を図っていく。 ○科学的な根拠に基づいた衛生監視指導のために、実施可能な簡易検査項目について検討を進め ていく。 ○大規模災害時には、保健所健康危機管理マニュアルに従い、所内連携により適切に対応すると ともに、西部総合県民局保健福祉環境部環境担当に協力を求めて対応していく。 【環境衛生監視員】 理容師法、美容師法、クリーニング業法、公衆浴場法などの生活衛生関係法令に基づき任命する職 員のことで、生活衛生関係営業施設の立入監視業務のほか、地域保健法により、プール等の環境衛生 に関する指導業務も行っている。美馬保健所では6名(兼務)の職員を任命している。 第3節 食品等の安全確保 現状 ○「徳島県食品衛生監視指導計画」に基づいて食品関係施設への立入指導を実施している。給食 施設や製造業者等には重点的な監視を行い、施設の拭き取りや食品の収去等により細菌等検査 を行い、科学的根拠に基づいた衛生指導に努めている。 ○許可を要しない農産物加工品等の製造者や販売者も含めて、製造管理指導と「食品衛生法」や 「 健康増進法 」に基づく表示を指導をするとともに、適宜 、 「 徳島県食品衛生広域監視機動班」 と連携した監視指導により、管内で製造・流通・販売される食品の安全性確保を図っている。 ○(一社)徳島県食品衛生協会が行う、食品衛生指導員による食品営業施設への巡回指導、衛生講 習会を支援するほか、消費者を対象とした消費者懇談会や 1 日相談窓口に協力し、食品に関す る衛生知識の普及啓発に努めている。また、調理従事者、消費者等に対して、食品衛生監視員 による出前講座も実施し、食中毒の予防を図っている。 ○生食用食肉、食品中の放射性物質、輸入食品の農薬等の残留など、住民の食品の安全性に対す る不安や関心はますます増大している。 課題 ○「徳島県食品衛生監視指導計画」に基づいた巡回指導や衛生講習会により、食品等営業者の自 主衛生管理を指導しているが、徳島県食品衛生協会支部等と連携して、業界が一体となった自 主衛生管理を推進していく必要がある。 ○食肉の加熱不足による O157 をはじめとする腸管出血性大腸菌、カンピロバクター等の細菌の ほか、調理従事者からの2次汚染等によるノロウイルスによる食中毒事例等、食中毒の広域化 や大規模化が問題となっている。また、生のヒラメ・馬肉から食中毒の原因となる寄生虫の確 認、生食用食肉、牛肝臓の生食禁止、放射性物質の規格基準設定など、新たな知見や対策等が 情報提供されており、これらを踏まえた関係事業者への食中毒発生防止のための情報提供と指 導が求めらている。 ○試験検査に関しては、厳密に精度管理を行い、信頼のおける検査結果を得ることによって科学 的根拠を明確にした監視指導の一助とするほか、食品の異常や異物苦情などに、様々な情報を 蓄積し駆使することで、消費者の食に対する不安や不信の解消を図る必要がある。 ○食に関する様々な問題の発生により、住民の食への関心が高まる一方で、誤りも含む食情報の 氾濫に対して、一般消費者への食品衛生に関する正しい知識の普及啓発を図る必要がある。 施策の方向 ○引き続き「徳島県食品衛生監視指導計画」に基づく監視指導を実施していくとともに、徳島県 食品衛生協会支部との連携により、食品衛生に関する情報の提供や営業者の自主衛生管理を進 めていくことにより 、「食中毒ゼロ」を目指していく。 ○営業許可業者以外の加工品製造者、販売者等に対しても、食品の取り扱い、表示等について必 要な指導を行う。なお「にし阿波・産直市セーフティーフードサポート事業」を契機に、産直 市で販売する食品の自主的衛生管理の向上を促進し、食の安全安心を図っていく。 ○今後とも、高度化・多様化する食品衛生に対応できるよう、食品衛生監視員の資質向上に努め るとともに、試験検査機能の活用により、営業者への指導や、消費者から寄せられる食品苦情 等に、科学的な根拠に基づく対応ができる体制の整備につとめていく。 ○消費者に対して、出前講座等により食品衛生に関する知識の普及啓発を進めていく。 【食品衛生監視員】 食品衛生法に基づき知事が任命した職員で、食品関係施設の監視指導、試験に必要な食品等の収去 及び食品衛生上の教育などの業務を行っている。なお、美馬保健所では、生活衛生担当に試験検査担 当も含め6名(兼務)が配置されている。また健康増進担当にも、管理栄養士職員1名が任命されて おり、健康増進法に基づく 特別用途食品の検査及び収去並びに表示等の業務を担当している。 第4節 安全な水の確保 現状 ○管内の水道普及率は、平成 22 年度末現在、美馬市が 95.4 %、つるぎ町は 86.7 %(徳島県全体 の水道普及率は 95.8 %)であり、未普及地域は、水道の敷設が困難な山間部であり、谷水や 湧き水等を利用した自家用水道( 飲用井戸等 )や集落における共同給水施設( 飲料水供給施設) により飲料水や生活用水を確保しており、水質衛生についても自己管理している。 ○水道原水の衛生対策では、クリプトスポリジウムの汚染防止対策が重要である。 ○四国山系においても、しばしば異常少雨により長期間の渇水状態が続き、県民生活や地域の経 済活動等への影響も生じることがある。 ○「南海トラフを震源域とする巨大地震」がひっ迫するなか、市町水道事業体においては、計画 的な整備等に努め、地震や災害に強い水道の実現に向けて努力している。 ○美馬保健所は西部圏域の保健衛生検査を担当する施設であるとともに、本県で唯一の内陸部に ある保健衛生試験検査機関であるため、大規模災害時に必要と予測される試験検査が、実施で きるように努めている。 課題 ○水道により供給される水の衛生を確保するため 、施設への計画的な立入り指導を行うとともに、 水質の水道原水の衛生確保のため、平常からの水源監視や水源情報が把握できるように、関係 機関との連携が重要である。また、飲料水に起因する健康危機管理事象の発生時の迅速かつ適 確な対応には、平常時から市町や県関連部局の連携体制を整備する必要がある。 ○水源のクリプトスポリジウム汚染防止対策では、水源上流域における不法投棄や汚染源となる 施設の把握のほか、昨今、著しく増加した野生動物による影響も考慮した指導が求められる。 ○管内における渇水等の発生状況と、資源としての水の有効利用の観点も踏まえ、節水に対する 啓発は必要である。また、渇水時には、飲料水の水質衛生上の問題が生じやすくなるため、水 質検査の実施指導と衛生管理に関する知識の普及啓発は時節を失しないことが重要である。 ○災害時にも、安全で良質な水道水を安定的に供給できるよう、地震や災害に強い水道の実現の ために関係機関の連携を図っていくことが重要である。また、震災等災害発生時の迅速な応急 給水等対応のため、平常時より関係機関との連携を強化しておく必要がある。 施策の方向 ○水道事業体に対する施設の巡回指導を実施し、施設の維持管理や水質衛生管理の徹底を図る。 ○市町と連携し、クリプトスポリジウム感染症等の水系感染症の発生防止のため、水質検査の励 行と水質衛生管理に関する知識の普及向上を図るとともに、節水の啓発など限りある水資源の 有効利用についても啓発していく。 ○地震等の災害に強い水道づくりや、災害時における飲料水の確保等の迅速な対応のほか、水道 を巡る問題の解決の一助として、管内水道事業体や県関係部局との連携を図っていく。 ○災害や危機管理事象の発生時に、必要と予測される試験検査が、適確で迅速に実施できる検査 体制の整備を図っていく。 【クリプトスポリジウム】 人や家畜の消化管に寄生して下痢を起こす原生動物である。飲料水を消毒する塩素濃度では、死滅さ せることはできないが、浄水場出口の濁度管理を徹底することによりクリプトスポリジウムを除去する ことができる。飲料水の衛生対策では、水源域の汚染防止と高度な浄水技術が重要である。 第5節 動物由来感染症の予防 現状 ○狂犬病は、世界中で毎年数万人の人の命を奪っている重大な動物由来感染症であるが、わが国 では、狂犬病予防法(昭和 25 年)の施行により、昭和 32 年以降その発生はみられず、世界で も数少ない清浄国となっているが、平成 18 年 11 月、フィリピンで、犬による咬傷後に帰国し た2名の方が、相次いで狂犬病を発症し死亡した輸入感染症事例も記憶に新しいところである。 また、輸入動物の増加や、外国船内で飼われている動物が動物検疫を経ずに不法に上陸する事 例もあることなどから、日本でも発生する危険性は増大している。 ○ペット動物の家庭内での位置づけの変化による動物との接触の濃密化により、動物由来感染症 の発生の危険性は増大している。 ○管内においても動物愛護思想の高揚にともない 、ペット動物は「 飼養する 」から「 共に暮らす 」 対象へと変化している。一方では、多頭飼育による周辺環境への影響、放し飼いによる迷惑行 為、身勝手な理由による動物遺棄など、動物をめぐる問題も依然として多い。 ○飼い主とペット動物の絆が深まっていることから、大規模災害時の避難所におけるペット動物 対策の必要性は高まっている。 課題 ○狂犬病の予防措置の根幹である犬の狂犬病予防注射の実施率は低下している 。その原因として、 町村合併による広域化にともない、細やかな集合注射の実施が困難になったこと、飼育者が清 浄国であることに対する根拠のない安心感や 、狂犬病に対する知識不足があると見られている。 ○不適正に動物と接触し、動物由来感染症に感染することがないよう、正しい知識の啓発、指導 が必要である。また、動物由来感染症の発生防止と発生時の迅速な対応のため、関係機関相互 の情報や課題の共有と連携の強化を図る必要がある。 ○家庭動物に対する意識は、家族としての地位を獲得して久しいが、飼育者が動物の習性等を理 解した飼育や、的確なしつけ方についての知識を習得する必要があり、放し飼い、泣き声によ る被害、糞害のほか、飼育放棄をなくすよう、飼育者のモラルを向上させていく必要がある。 ○大規模災害時に避難所へ同行避難したペット動物の対策は、避難所を管理運営する市町等と、 動物愛護管理と動物由来感染症対策をあわせた情報共有を図る必要がある。 施策の方向 ○犬の登録・狂犬病の予防注射の徹底のため、市町や予防注射実施獣医師と連携を強化し、地域 の実態に合わせた集合注射の実施について検討していくとともに、飼育者には狂犬病に関する 知識や予防注射等の必要性について啓発していく。 ○動物由来感染症連絡会議の開催を通じて関係機関との連携を進め、平常時からの情報共有体制 の構築と動物由来感染症発生時の具体的な連携体制を整備する。 ○動物愛護管理センターや市町等の関係機関と連携し、住民に、動物由来感染症に関する正しい 知識と動物の特性に応じた飼育管理の啓発や愛護意識の醸成を図るとともに、不適正な飼育者 には直接指導するなど、飼育に起因する迷惑行為の防止と動物の終生飼育を推進していく。ま た、動物取扱業者には、計画的な監視指導により法令遵守と適切な動物愛護管理を指導する。 ○災害時のペット対策について、市町や関係機関と連携し、動物愛護対策と動物由来感染症対策の両 面から検討するなど、災害時にも「人と動物がともにくらせる社会環境づくり」を推進していく。