...

沖縄タイムスは、「ひめゆりの証言「退屈」/東京の私立高入試問題

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

沖縄タイムスは、「ひめゆりの証言「退屈」/東京の私立高入試問題
沖縄タイムスは、「ひめゆりの証言「退屈」/東京の私立高入試問題」について
次のように伝えた。−050610
東京の私立進学校、青山学院高等部が今年二月に実施した入学試験の英語科目で、元ひ
めゆり学徒の沖縄戦に関する証言が「退屈で、飽きてしまった」との英文を出題していた
ことが九日までに、分かった。生徒の感想文の体裁になっているが、教員が試験のために
書き下ろした。元ひめゆり学徒らは「つらい体験を明かしている語り部をむち打つもの」
と憤った。同校は「大変申し訳ない」と謝罪している。
英文は三種類の入試のうち一般入試で出題され、千五十七人が受験した 。「修学旅行で
沖縄に来た生徒」の感想文を読んで、設問に答える形になっている。
英文の中で 、「生徒」は壕に入って暗闇を体験した後、ひめゆり平和祈念資料館で語り
部の証言を聞く 。「正直に言うと彼女の証言は退屈で、私は飽きてしまった。彼女が話せ
ば話すほど、洞窟で受けた強い印象を忘れてしまった」と記した。
さらに 、「彼女は繰り返し、いろんな場所でこの証言をしてきて、話し方が上手になり
過 ぎ て い た 」 な ど と “ 論 評 ”。 設 問 で は 、「 生 徒 」 が な ぜ 語 り 部 の 話 を 気 に 入 ら な か っ た
のかを問い、選択肢から正解として「彼女の話し方が好きではなかったから」を選ばせる
ようになっている。
入試問題に目を通したひめゆり平和祈念資料館の本村つる館長は「八十歳近くになって
も、話したくないつらい体験を話しているのは、むごい戦争を二度と起こさないよう若い
世代に伝えるためだ。それをむち打つような文章は許せない」と、沈んだ様子で話した。
「感想は百人百様でも、試験に出題して正解を決めるようなことはすべきでない」と強調
した。
石原昌家沖国大教授は「この入試問題は、極限状況の戦争を生き抜き、身を粉にして語
る体験者を思いやれないような、教師の資格を失った者が教壇に立っている事実を証明し
ている」と批判 。「このような教師に指導される生徒の中には、似たような感想が再生産
される」と危惧した。
【学校側は謝罪】
青山学院高等部は本紙の取材に対し 、「戦争体験を語り継ぐ努力を訴えようと出題した
もので、ひめゆり学徒を非難する意図はなかった。配慮を欠く言葉で不愉快な思いをさせ
てしまい、大変申し訳ない」と述べた。
沖縄タイムスはこのことに関して続けた。
東京の私立進学校、青山学院高等部の今年二月の入学試験の英語科目で、元ひめゆり学
徒の沖縄戦の証言を「退屈で飽きた」とする内容の英文が出題された問題で、稲嶺恵一知
事は十日午前の定例記者懇談会で「がくぜんとした。心に重荷を背負う証言者の努力に冷
水を浴びせるようなもの。大変ショック」と述べた。中山成彬文部科学相は同日の記者会
見で「第二次世界大戦が遠くなりつつあるのかなと思う。歴史を学び、当時の状況を想像
するような力もつけてもらいたい。そういうところに思いがいくような教育が大事だ」と
指摘した。
入試問題の英文は 、「修学旅行で沖縄に来た生徒」がひめゆり学徒の証言を聴いた感想
文の形となっているが、実在する生徒の感想文ではなく、同校教員が試験のために書き下
ろしていた。
一般入試で出題され、千五十七人が受験した。
稲嶺知事は「報道を読み、心がひんやりした」と述べ 、「学徒のほとんどは最初、口を
閉ざしていたが、忘れられない体験を多くの人に話すことで、一日も早く平和が来るよう
努力してくれている。その感情を逆なでするもので、大変ショック」と話した。
-1-
同校への対応については「報道で知ったばかり。今後、考えていく」と話している。
青山学院高等部(東京都渋谷区)は十日、大村修文部長らが近く来県し、糸満市のひめ
ゆり平和祈念資料館や県庁などを訪れ、関係者に謝罪する意向を示した。大村部長は「沖
縄県民や関係者の皆さまの心を傷つけ、大変申し訳ない。できるだけ早く沖縄に出向き、
おわびしたい」と話している。
沖縄タイムス続報−050611
青山学院高等部(東京都渋谷区)の今年二月の英語入試問題で、元ひめゆり学徒の沖縄
戦に関する証言は退屈とする英文が出題されたことを受け、元学徒の女性五人が十日、糸
満市のひめゆり平和祈念資料館で会見した。元学徒らは「怒りと悲しみで眠れなかった」
「今までやってきたことを否定されたようでショックだ」などと胸中を語った。青山学院
高等部は十三日、部長(校長)らが沖縄を訪れ、関係者に謝罪する。
ひめゆり平和祈念資料館長の本村つるさん(79)は「さまざまな感想を持つことは仕
方ないが、それを入試問題にし、自分の考えを正答に選ばせるのは許せない」と静かな口
調に怒りをにじませた 。「これを答えだと教えられた子どもたちがどう受け止めたかが心
配だ」と話した。
証言員の島袋淑子さん(77)は、言葉を選びながら「生徒の反応がよくない、と感じ
ることが年々、少しずつだが増えている」と指摘 。「若い世代に、二度と私たちのような
体験をしてほしくないという思いで証言してきた。怒りと悲しみで複雑な思いだ」と胸中
を明かした。
宮城喜久子さん( 76 )は「 一喜一憂したくない 。今後も信念は変えない 」とした上で 、
「証言に涙を流すだけでなく、今の時代への教訓として生かしてほしいと願っている。問
題を作った先生と、心情を理解してもらえるまで話し合いたい」と語った。
一方 、青山学院高等部の大村修文部長は十三日 、ひめゆり平和祈念資料館や県庁を訪れ 、
関係者に謝罪する。試験問題作成を担当した四人の英語教員のうち一人も同行する。
同校によると、試験問題は昨年七月から半年間かけて作成。ひめゆりに関する英文は、
教員の一人が自身の高校時代の修学旅行で同館を訪れた際の感想を基に書いた。その後、
他の三人の教員とともに検討 、部長が決裁した 。大村部長は「 表現に疑問の声もあったが 、
全体の意見にならなかった。英語として適当かどうかの検討に時間を割いてしまった」と
釈明 。「報道を見た東京や沖縄の方々からも『沖縄の歴史や現状を知らないのか』と多く
の厳しいおしかりを受けた」と説明した。
同校中等部は今年五月、初めて修学旅行で来県、同館も訪れた。大村部長は「子どもた
ちに罪はないので、お許しをいただければ来年以降も続けたい」と話した。
【語り部
落胆/高校入試「ひめゆり退屈」問題】
「平和学習の質が問われている 」「同じ語り部として許せない」―。元ひめゆり学徒の
証言が東京の私立高校の入試問題で「退屈」と表現された問題で、多くの修学旅行生が訪
れる広島・長崎・沖縄の平和学習関係者らは、教師側の意識改革と学習の質の向上を口々
に訴えた。
【長崎・被爆伝える渡邉さん/「心ない教師増えた 」】
長崎市で一九九五年から一人芝居で自らの被爆体験を伝えている元小学校教諭の渡邉司
さん( 73 )は「 平和の大切さを伝える語り部の一人として 、決して許すことはできない 。
出題者の常識を疑う」と憤った。
渡邉さんは八年前、修学旅行生から心ない罵声を浴びせられ、菓子を投げつけられる体
-2-
験をした。
「指導する教師にこそ問題があると思う。思いやりのない教師が増えているのかと思う
と寂しい気がする」と話した。
渡邉さんのナレーションを手伝う妻の妙子さん(70)も「平和教育を十分に受けてい
ない先生が問題を作ったのでは」と述べ 、「戦争の悲惨さを訴える活動がますます大切に
なっている時代なので、これからも頑張ってほしい」と、ひめゆりの証言員にエールを送
った。
【広島平和記念資料館/「証言重み教えて 」】
年間約百万人が訪れ、うち三割を修学旅行生が占めるという広島平和記念資料館。
学校の依頼があれば、同館から委嘱された被爆者が約一時間、体験を語る。
生徒の聞く態度や事前学習がしっかりしているかは、学校によって差があるという。
同館の浜岡克宣さん(47)は「証言者には巧みな話術よりも、被爆の事実と平和のメ
ッセージに重きを置いて話してもらっている。こうした証言は退屈でないとはいいきれな
い部分もあるが 、教師が生徒に興味を持たせるような指導も必要ではないか 」と強調した 。
【教師熱意低さ
そのまま露呈/平和ネットワーク
旅行社任せ「安直 」】
沖縄平和ネットワーク共同代表の村上有慶さん(55)は「商業ベースで来る修学旅行
が増え、真剣な思いが伝わらなくなった。話を聞かなかったり、ガマで騒いだりなどが、
頻繁になった」と話す。
村上さんは「私たちが案内を引き受ける場合、教師からの依頼に限り、どれだけ事前学
習してきたか確認する 。(一方で、旅行社任せの)安直な学校も増えており、教師の姿勢
は生徒にそのまま伝わってしまう」と批判 、「量より質が問われている」と訴えた。
沖縄タイムス社説−2005.6.12
【想像力が欠如している】
東京にある青山学院高等部の入試で、元ひめゆり学徒の沖縄戦に関する証言が「退屈だ
った」という趣旨の英語の読解問題が出題されていた。
出題文は修学旅行で沖縄に来た生徒が、壕で暗闇体験をした後、ひめゆり平和祈念資料
館で語り部の証言を聞くという設定。
生徒は「正直に言うと彼女の証言は退屈で飽きてしまった 」「彼女はその話を何度もし
ていて、とても話し上手になっていた」と印象を記述する。
設問では「なぜその話が好きでなかったか」を四つの選択肢から選ばせ 、「彼女の話し
方が好きでなかった」を正解とする。
沖縄戦体験者ならずとも、心がひんやりする話だ。
十数年前にも似たようなことがあった。
戦跡めぐりをした本土の大学生が、ひめゆり資料館を「被害者顔をしている 」、証言員
が自分の語りに「 酔っている 」など感想をつづった報告書をまとめ 、ひんしゅくを買った 。
戦跡を案内した沖縄国際大学の学生が 、
「 大きな誤解と認識不足 」として反論集を出し 、
議論にもなった。
-3-
沖縄戦を知らない若い人たちが、駆け足で戦跡を回ると、そういう感想を持つこともあ
るだろう。
認識不足は残念ではあるが、個人の感想を否定することはできない。
しかし今回は問題の質が違う。
なぜあえて入試問題で取り上げたのか、どういう意図で作成したのか。
戦争を現実のものとして受け止めきれない生徒たちに、問題と向き合うための受け皿を
つくるのが、教師の役割ではないか。
ひめゆりの語り部たちは、自分のつらく、壮絶な戦争体験を次世代へつなごうと努力し
てきた。当初、口を閉ざす者も多かったが、実相を伝えることで平和を築こうと重い口を
開いた。
彼女たちを突き動かしているのは、あの時代を生きた者の責務と使命感だ。
戦後六十年が経過し、日本人の四人に三人は戦後生まれになっている。子どもの親だけ
でなく、祖父母までが戦後世代という家庭も少なくない。
だからこそ体験者の言葉や見方が重要になってくる。戦争や平和の問題をわが身に引き
寄せる平和学習の意義もそこにある。
資料館に身を置いて、六十年前の戦争、将来を奪われた学生、子を失った親の気持ちを
想像してみよう。
亡くなった人や体験者の「思い」を受け止める感性を身に付けることが、平和を享受す
る世代の責務である。
沖縄タイムス−050613
【元学徒、謝罪受け入れ/「ひめゆり」入試問題
平和教育の充実要望】
青山学院高等部が入学試験で元ひめゆり学徒の沖縄戦に関する証言は退屈だとする英文
を出題した問題で、糸満市のひめゆり平和祈念資料館の本村つる館長ら元学徒八人は十三
日午後、同館で記者会見し、大村修文部長(校長)らの謝罪に理解を示した 。「この経験
をきっかけに良い方向にいくよう期待している」と、同校の平和教育の充実を要望した。
大村部長らは県庁や糸満市役所、那覇市議会も訪れたが 、「もっと真剣に沖縄の立場を考
えるべきだ」などと厳しい指摘を受けた。
本村館長らは「学校側はこれ以上追及することもできないくらい反省しており、問題発
覚後すぐに沖縄に来てもらうなど誠意を感じた」と述べた。
同校の大村部長ら四人が同館を訪れ、約一時間半にわたって本村館長ら八人の元ひめゆ
り学徒に経過を説明、謝罪した。
本村館長によると、大村部長らは「証言者を侮辱するつもりはなかった。意識の低い生
徒には話が届かないという設定で、どんなに良い話でも聞く側の意識で言葉の羅列になっ
てしまうという、歴史の事実を継いでいく大切さと難しさを表したかった」と語ったとい
う。
同校では中等部が今年五月に初めて修学旅行で来県、同館も訪れており、同校は来年以
降も継続したいと希望。同館もこれを受け入れた。
宮良ルリさん(78)は「私たちの話を聞いた生徒の百パーセントが理解を示してくれ
-4-
るとは思っていないが、生徒たちを信じて、今後も続けていきたい」と話した。
面談を終えた大村部長は「『 もう一度しっかりやり直してほしい』という(同館側の)
言葉を真摯に受け止め、再出発したい」と決意を示した。十日には全校生徒に経過を説明
したほか、今後の理事会で部長や教員の処分が検討されることも明らかにした。
-5-
Fly UP