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拡大床矯正治療~ Biobloc ~について

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拡大床矯正治療~ Biobloc ~について
総説
生涯研修コード 29 05
■ 拡大床矯正治療~ Biobloc ~について ■
拡大床矯正治療~ Biobloc ~について
清水正裕
1)船橋歯科医師会
Key Word
Biobloc、頭蓋顔面複合体、オーラルポスチャー、上顎前方成長、下顎の成長誘導、vertical control
Summary
不正咬合は歯並びやかみ合わせといった口腔領域だけの問題ではなく、成長過程での頭蓋顔面複合体全
図1 不正咬合を有するヒトは、成長過程で頭蓋顔面複合体が大きく歪ん
でいると考えられる2)。こうした歪が二次元ではなく三次元的に起きてい
る。
図2 不正咬合を有するヒトは、鼻上顎複合体の前方成長が不足し、美し
い顔貌が得られない。下顎は後方回転し気道を狭めるので、それを拡張
するための代償行為として頚部を後屈させる姿勢をとる。その結果、顎
顔面を取り巻く軟組織からの張力が作用して、頭蓋顔面複合体の骨格形
態は特徴的な変貌を遂げる。
図3 拡大の力は頭蓋顔面複合体のさまざまな成長部位・縫合部に作用
し、成長方向や形態を変化させる。
図4 6歳から16歳までの成長と発育の概括。セラで重ね合わせた側方セ
ファロ6)。図5、6とあわせて、脳頭蓋底、顎顔面骨格の成長変化を確認。
体における歪の問題であると捉えることもできる。拡大床矯正治療における上顎歯列弓を拡大する力の作
用は、単に歯列弓だけにはとどまらず複合体全体に及ぶ。Bioblocによる拡大療法は、頭蓋顔面複合体に
対する治療法として最も有効と考えるため、今回紹介する。
■ はじめに ■
一般的な拡大床矯正治療は、歯列
Ⅰ.目指すは前方成長
膜の反応が主たる対象と考えればよい。
それに対して拡大矯正の場合では、上
弓を拡大し、歯列弓周長を増大させて
Bioblocによる自然成長誘導を唱えて
顎骨の範囲にとどまらず、脳頭蓋底を
歯を 並 べ る( available arch lengthが
いるJohn Mewは、
「 ヒトの顔面の成長
含めた頭蓋骨全体の変化・移動、成長
required arch lengthよりも小さい状態
は前下方であるが、その前方方向への
方向の変更が行われるので、頭蓋顔面
を改善する)だけ、という単純な視点か
成長成分が不足することで垂直的な発
骨縫合部被膜ならびに骨全体の添加・
ら行われることが多い。
育傾向を呈し、それが不正咬合の大部
吸収の場となる骨膜を対象に加えるこ
3)
Ⅱ.オーラル
ポスチャーが重要
しかしながら不正咬合という病態は、
分をもたらしている」と主張している
とになる。単に歯列弓を平面的に拡大
の癒合は、女性では12~13歳、男性
単に歯並びやかみ合わせに限局した問
( 図2)
。また治療後の安定した予後は、
しているだけではなく、頭蓋顔面複合
では14~15歳からはじまり、いずれも
題ではない。頭 蓋 顔面複合体全体に
オーラルポスチャーの獲得により保証さ
体全体を三次元的にダイナミックに変
20歳までに外面の骨化が完了する。こ
おいて、その成長過程で何らかの歪 が
れるとして、彼はそうした内容の仮説を
化させることになるので、その意義を正
のように頭蓋冠と顔面骨格の頭蓋底に
オーラルポスチャーとは、安静時に
前方への成長、それに伴う堀の深い美
生じた結果、歯列不正という形で口腔
臨床症例を通して50年近く実証し続け
しく理解して拡大することが求められる
対する依存関係は、頭蓋の最終的な形
おける下顎の位置および舌・口唇・頬な
しいプロファイルへと導くのである。
領域に表れた一つの症状であると捉え
ている。
( 図3)。しかも10歳頃における頭蓋顔
と大きさを決定し、歯列の咬合を含む
どの軟組織の適切な状態である。歯列・
骨の形態は、それを取り巻いている
ることができる( 図1)
。したがって矯
つまり矯正治療を行う際の大きな目
面部の成長量は、神経頭蓋で95%、顔
頭部全体の形態を決める成長活動にお
咬合や骨格は軟組織との力学的平衡状
軟組織からのわずかな張力に影響を受
正治療の方法論としては、単に歯並び
標としては、一つは広い舌房を確保し
面骨格では65%程度の発育段階にあ
いて、非常に重要な役割を果たすので
態の確立によって安定するので、オーラ
ける。たとえば、猫背のヒトは生まれな
を治すという現象への対症療法として
てオーラルポスチャーを身につけさせる
り5)、歯列弓を拡大する力の作用は頭蓋
あるが( 図5、6)
、不充分な軟骨頭蓋
ルポスチャーの獲得は重要なテーマで
がらにして背骨が曲がっていたわけでは
ひずみ
4)
7)
常時舌がそれを下から支え、弱い力で
押し上げているような状態である。舌
から口蓋への微弱な力が、顔面頭蓋の
ではなく、複合体全体の歪を取り除く
こと 、そして顔面頭蓋を反時計回りに
顔面複合体全体のその後の成長に大き
の成長により上顎骨の成長が不足する
ある 。
なく、常時前屈みの姿勢をとっているこ
原因療法となるよう努めるべきである。
回転変化させ、前方方向へ成長させる
く影響していくことになる( 図4)
。
場合には、歯が萌出するための充分な
具体的に列挙すれば、①舌は口蓋に位
とで、骨に加わる微弱な力が脊椎を屈
Bioblocによる拡 大 療 法を適 用するの
vertical controlが挙げられる。
拡大する力は脳頭蓋底にも作用する。
スペースが得られなくなる( 図6)
。
置し、②口唇は閉鎖し、③上下歯牙は
曲させてしまったのである。ポスチャー
は、まさにそのためであり、拡大するこ
歯のみを動かすことによって歯並び
特に蝶後頭軟骨結合での成長は、成人
通常、下顎骨は上顎と咬合を確立さ
軽く接しているかいないかの状態を保
( 姿勢)がいかに重要な因子であるか、
とで生理的な成長方向へと誘導できる
を治療するのであれば、歯と歯槽骨部
期初期まで続くため、そこへも影響が
せながら、上顎に追随するかたちで成
つ、という口腔領域の姿勢である。
の位置を調整するのであるから、歯根
及ぶに違いない( 図4)。その大脳面で
長・形成されていく。
口蓋をドームの天蓋に例えてみれば、
1)
可能性が高まると考えるからである 。
18
容易に理解できよう。
THE JOURNAL OF CHIBA DENTAL ASSOCIATION FOR DENTAL SCIENCE Vol.4 No.1 2012 19
総説
■ 拡大床矯正治療~ Biobloc ~について ■
図7 初診時、8歳6カ月、AngleⅠ級、IL=40mm。
図8 Biobloc StageⅠ、上顎装着開始約1カ月後。下顎に装着をする。
図5 いろいろな部位における顔面骨の成長・吸収の方面と頭蓋底の骨縫合部での成長方面。これらの部位における成長の総合的な組み合わせの結果、
頭蓋底がさまざまな方向へ拡大し、頭蓋底に対して顔面が前下方へ位置移動される8)( 図4)。
a
図9 StageⅠでの治療が終了した約4カ月後の口腔内、IL=34mm。拡大
量は11mm。拡大治療を施した場合、上顎骨はナジオン付近を回転中心
として、矢状面・前頭面で三次元的に扇を開くように展開するので、歯牙
の傾斜・挺出ともあいまって、咬合高径ならびに下顔面高は増大傾向を呈
す。急速拡大ではそれが著しい10)。将来、乳臼歯が脱落した時点で前歯
部および臼歯部のオープンバイトは消失し、vertical controlをなし遂げる
ことができる。大臼歯は咬合に参加せず自浄性が低下するので、クリー
ニングとフッ素洗口を日課として励行させる。
b
図6 a:頭蓋底は、軟骨結合部での増加成長に加えて、吸収と添加による選択的な改造を受ける。斜
台は、その大脳面が吸収されるが、後頭骨の鼻咽頭面( 下面 )と大後頭孔の前縁で付加成長
する。このことは蝶後頭軟骨結合の癒着後も斜台の長さが増加することも可能にしており、
鼻上顎複合体の前方成長として影響が及ぶ( 図4 )。
b:成人に達した後の上顎骨と下顎骨の成長変化。骨格的な成長は、一生を通して続くプロセス
である9)。
Ⅲ.拡大矯正について
構成している骨全体が拡大・改造して
ても過言ではない。つまり拡大床矯正
いく。つまり、骨は周囲軟組織の増大
治療の成否は、安静時における軟組織
拡大矯正は術後の後戻りが問題、と
に伴って拡大するのである。
の状態、すなわち『 オーラルポスチャー』
いう否定的な意見を述べる人もいるが、
軟組織と骨が機能的および生体力学
が重要な鍵を握ることになる。
それは骨の性質を理解していないこと
的な平衡状態に到達すると、骨格の成
そして、歯列弓ならびに上顎骨を拡
に起因することが多く、そのような誤解
長を引き起こす刺激は停止する。しか
大する力は、頭蓋顔面複合体のあらゆ
は払拭されるべきである。
しながら環境因子からの作用は常に変
る骨縫合部にも伝播して、縫合部で骨
ところで骨の成長パターンのイメージ
化していくので、骨は生涯にわたって最
としては、それ自体の特定の部分に成
Ⅳ.Biobloc療法の
実際
・StageⅠ( 図7 〜 9)
正中口蓋縫合部での成長そのものは
治療後は創傷の治癒過程を経るうえに、
1~2歳に終わり、線 維 縫合の消失は
咬合状態も崩壊しやすいので避けるべ
青年期に始まり、その完全な癒合は30
きであると考えている。Biobloc療法で
8)
歳以前にはあまり見られない 。そのこ
はセミラピッドの速度( 毎日0.1mm=8
主目的:オーラルポスチャーを習得さ
とから、拡大による分離する力の作用
分の1回転 )で拡大するため、良好な経
のリモデリングを発生させながら、顔
せて上顎骨を前方成長促進させるため
は成 人においても十分に期待できる。
過をたどることが確認されている。
終的形態に到達することはなく、変化
面頭蓋のおのおのの骨が位置移動しや
に、
上顎骨を拡大・延長して舌房を確保。
縫合部は加齢とともに、より複雑に入
具体的な拡大量は、上顎左右の第一
長部位が存在し、そこで成長・拡大し
し続けるわけである( 図6b)。
すい状況を作り上げている。その結果、
上顎:側方拡大・前方拡大( 前歯前上
り組んだ形状を呈し、縫合部の鋸歯突
大臼歯間内側幅径で42mmを目安とす
ていくようなイメージを描きやすいが、
術後の後戻りは、正にこの摂理が形
上顎歯列弓を側方に拡大する力は、上
方再配列、下方へドリフトした上顎を
起が嵌合した状態になるため( 図10)
、
るが、目的は軟組織と調和がとれる状
それはほとんどの場合において間違い
に表れたものである。言い換えれば、
顎骨それ自体を反時計回りに回転させ
戻す準備 )
反応の仕方に違いは生じるが、成人で
態であり、発語時などの舌のポジション、
である。実際には、骨を取り巻くすべて
周囲の軟組織との力学的平衡状態さえ
ながら位置移動させる、ということを認
下顎:第一大臼歯の頬側移動と圧下・
も基本的には縫合部が拡大する方向で
オーラルポスチャー、プロファイルなど
の筋、上皮、結合組織、およびほかの
確立できれば、骨をどのように拡大しよ
識する必要がある。
側方拡大・前方拡大( 前歯部の前下
改変されていくと考えられる。急速拡
で総合的に判断することになる。
軟組織が成長・拡大するにつれて、そ
うとも、いかなる年齢においても、そ
方への再配列 )
大( ラピッド)では縫合部が開く前に突
骨口蓋部で側方への付加成長は7歳
の刺激に骨膜、内骨膜、軟骨が反応し、
の形態を維持することができる、と言っ
起物の微小骨折が起きてしまい、拡大
頃まで続くが、それを過ぎると口蓋は
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THE JOURNAL OF CHIBA DENTAL ASSOCIATION FOR DENTAL SCIENCE Vol.4 No.1 2012 21
総説
■ 拡大床矯正治療~ Biobloc ~について ■
図10 正中口蓋縫合の典型的な組織学的模
式図11)。顔面骨のほかの縫合部と同じように、
正中口蓋縫合も加齢とともにますます複雑に
入り組んだ状態になる。
A:乳児期。縫合はほぼ直線状である。B:
幼児期( 混合歯列前期 )。C:青年期前期。
図11 方円形の歯列弓12)。より前方に配列さ
れた側切歯と、側方歯群の充分な歯間幅径。
Buccal corridorはコーカソイド特有のもので、
本来モンゴロイドにはないものである。
図12 萌出時にワイヤーを歯肉に沿わせて歯
牙切縁に当てることにより、萌出とともに歯牙
は前方移動し、結果的に前方拡大へとつなが
る。
図15 StageⅢ装着状態。食事以外は常時装着する。開口ポスチャーをと
ろうとすると、ソフトロックが痛み刺激を与えることで、開口しないよう
警鐘を鳴らす仕組みである。StageⅠ終了時に歯牙が傾斜移動であったと
しても、ポスチャーさえ確立できれば、経時的に歯牙は整直していくので
問題はない。
図13 側切歯を前方に移動した距離の約1.5倍の長さが歯列弓周長で増加
する。側切歯が前方に位置することで舌房は広くなり、加えて下顎はより
前方位をとりやすくなる。
図14 大臼歯部のみの拡大では、側方歯群まで拡大した量の半分程度し
か歯列弓周長は増加しない。表記した値は、図7の症例で拡大の仕方によ
る歯列弓周長の増加量。それ以上に舌房の拡大は意義深く、❶→❹の拡
大で15%程度面積が増大する。前方部の拡大がいかに大切かを認識する
必要がある。
その最終的な幅に達してしまうので、拡
が期待できる( 図2、20)。
Ⅲで構成咬合をとらせようとしても結果
大床矯正は大きさを補正する有用な手
日本人の理想的な歯列弓形態は、き
は得られず、Biobloc療法に失敗するこ
段である。側方への成長が終わった後
れいな歯列を有する成人や乾燥頭蓋を
とになる。Bioblocに取り組むほとんど
でも後方への付加成長は続き、その等
観察することで確認できる。一般的に
の歯科医師がつまずくのは、正にその
量分だけ上顎は前方に移動する 。
イメージされている正常歯列弓よりも、
点であり、それは理想とする到達目標
拡大により左右の上顎骨は口蓋骨を
方形に近い方円形であることに気づかさ
のイメージが異なることに気づかない
基底として扇状に開く。その際、頬骨・
れる( 図11)。日本人を矯正治療する場
からである。特に矯正専門医は、それ
口蓋骨などの周囲を取り巻く骨の存在
合には、モンゴロイド特有の形態を作
までに自分の中に構築してきた既成概
により、上顎骨に対しては前方へ移動
りあげるべきであり、犬歯小臼歯部の
念に囚われてしまい、そこから脱却す
させる方向で力のベクトルが作用する。
側方歯群をより拡大するとともに、側
るのが難しく、スタンダードなエッジワ
その結果、上顎骨のA点は10mmの側
切歯を前方に出しながら前方拡大する
イズ法との違いが理 解できないため、
方拡大で2~3mm前方へ移動すると言
よう心掛けることが非常に重要なポイン
Bioblocが使いこなせないようである。
われている。それに伴い、下顎は前方
トと考えている( 図12 〜 14)。
StageⅠは、それに続くBiobloc療法の
回転して追随するので、プロファイルや
StageⅠの段階で、その治療目標が十
成否を分ける、正に重要なステップで
気道の容積、咬合関係を改善すること
分に達成されていなければ、次のStage
ある。
8)
22
図16 StageⅢ継続使用により、下顎骨の成長が誘発される( 図18)
。両
側顎関節と前歯部の3点で顎位が決められた状態の口腔内。摂食上の
支障を訴えることはなく、栄養状態に問題が生じることもない。Lateral
open biteは舌癖によるものではなく、下顎枝の成長により出現する理想
的な状態であり、この咬合関係が出現しない場合には、指示通りに装置
を使用していない非協力を疑う。口を閉じたまま発語する習慣やプロファ
イルの変化も判断基準となる。筋力が強くて長時間咬合しているような
AngleⅡ級2類の症例などでは、lateral open biteの出現量は必然的に少
なくなる。
図17 治療終了後、約1年経過時。Biobloc療法の場合、軟組織と自然の
調和を図るので、リテーナーは全く使用しない。正中のズレを修正するに
は、再度少量の拡大調整を行う。
図18 成長運動の2つの基本型13)。はじめのaの位置から、すべての顔
面の軟組織の拡大に伴って、下顎骨全体は前下方に位置移動を行い、b
に示すように頭蓋底との関節から離れる。同時に下顎頭と下顎枝は、c
に示すように位置移動と等しい分だけ後上方に拡大するように刺激が与え
6)
られ、改造によってdに示す状態がもたらされる( 再配置 )
。Biobloc治
療でのStageⅢ装着時では、下顎を前方位に移動させた構成咬合を保持
し、下顎頭への負荷をなくすので、この理論通りに下顎枝と下顎骨体の
成長が誘導される。
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総説
図19 顎関節の前方転移。下顎の前方移動に
より下顎頭の添加・吸収、側頭骨下顎窩のリ
モデリングによる改造も行われる5)。
・StageⅢ( 図15 〜 19)
図20 顔面部は前方に成長し、美しいプロファイルが獲得できる。
左:7歳8カ月( 初診時)。右:13歳1カ月。
Ⅴ.まとめ
機能の改善も求められ、将来的には一
層健康に寄与する矯正治療が要求され
主目的:オーラルポスチャーの獲得。
2~3年の継続使用で、上下顎の生理
現 時点では、Bioblocによる拡 大 床
る世の中になることが予想される( 図
的な前方成長へと導き、頭蓋顔面複
矯正治療が不正咬合の原因療法に最も
20)。
合体の歪を修正する方向へと向かわせ
近い矯正治療であり、成長過程で生じ
稿を終えるにあたり、日頃ご指導賜っ
ること。
た頭蓋顔面複合体の歪に対処しうる可
ておりますオルソフリークの鎌田勝之
15)
上顎:上顎骨の前方成長促進
能性が高い医療であると考えている 。
先生、オーソトロピクス研究会の北總
下顎:下顎枝・下顎体の成長促進、下
一般の矯正歯科医が取り組んでいる歯
征男会長、三谷 寧先生、篠原戴詞先生、
顎の前方回転
列や咬合といった口腔内の形態も大切
恩師である鶴見大学短期大学部後藤仁
さて、成長に伴い呼吸器機能は向上
である一方、美しい顔貌、さらには呼
敏先生、そしてDr. John Mewに心より
し、鼻上顎複合体は拡大していく。し
吸や嚥下といった生命に直接かかわる
感謝の意を表します。
かしながら鼻呼 吸 が正常に行われな
い場合には、その成長量は乏しく、鼻
気 道は未 発 達なサイズのままとなる。
15mm拡 大した症 例 では、 上顎 洞 が
体 積 比で 約2.04倍 に増 大した( 比 較
症例では1.23倍 )という報告もあり14)、
Biobloc療法により鼻機能などの改善が
参考文献
期待できる。
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また下顎が反時計回りに前方回転す
3)Mew J.北總征男ら訳.バイオフロック・セラピー―自然成長誘導法―.東京:学建書院;2001.
2)McLachlan JC.Spatio-temporal Pattern Formation in Biology.Wiley.2000:346.
ることで、下咽頭腔も拡大する。耳鼻
4)北總征男.機能的矯正装置を考える―2 フェイシャルオーソトロピクスとバイオブロック装置.矯正
咽喉科より紹介された小児の無呼吸症
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候群症例で、拡大するにつれて改善し、
6)Enlow DH.Handbook of Facial Growth.Philadelphia:W.B.SANDERS;1975.
数カ月で症状が消失した症例も存在す
8)Sperber GH.後藤仁敏監訳.清水正裕他訳.頭蓋顔面の発生学.第2版.書林;1976.
る。口呼吸から鼻呼吸への変化は、鼻
粘膜より放出されるNOの作用で肺胞の
臨床ジャーナル.2008;24(6):11-26.
7)三谷 寧.軟組織を考慮した歯列矯正バイオブロック療法.小児歯科臨床.2009;14(7):53-54.
9)Proffit WR.高田健治訳.新版 プロフィトの現代歯科矯正学.東京:クインテッセンス出版;2004.
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expansion therapy.Am J Orthod Dentofacial Orthop.1994;106(3):322-328.
酸素交換能力を増大させる。これらの
11)Melsen B,Melsen F.The postnatal development of the palatomaxillary region studied on human
さまざまな効用により、拡大治療を適
12)藤田恒太郎.歯の解剖学.東京:金原出版;1971.
用することで総合的に呼吸機能を改善
13)Ten Cate AR編著.川崎堅三ら訳.Ten Cate 口腔組織学 第5版.東京:医歯薬出版;2001.
させることが期待できる。
15)清水正裕.バイオブロックによる矯正治療.千葉県歯科医学会誌.2009;3(1):39-44.
24
autopsy material.Am J Orthod. 1982;82(4):329-342.
14)熊谷光剛.顔の成長と脳の機能2.構造医学.2006;12(3):3-19.
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