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効果的な板書の工夫について
平成 17 年度広島県道徳教育実践研究指定事業 第 3 回定例報告会 実践報告 「効果的な板書の工夫について」 呉市立三津口小学校 1 上口さゆみ 本年度の取組み 児童の実態より ○昨年度の児童の意識調査から,「自然や崇高なものとのかかわり」については全体的に高い数値(自 然愛動植物愛護91.4ポイント)を示しているが,「自分自身に関すること」(節度節制77.1 ポイント・思慮反省74.7ポイント)や「他の人とのかかわりに関すること」(礼儀74.8ポイ ント)に,数値が低いものがある。 ○「道徳の時間は楽しい。」(全学年対象)と感じる児童の割合は10ポイント増えているが,「道徳の 時間はためになる」(5・6年生対象)は4ポイント減っている。また,道徳の時間に学んだことを 日常生活まで生かしきれない生徒指導上の実態もある。 ○価値に迫るための中心発問後,活発な意見交流が難しい学年がある。資料の中に含まれる価値と自己 とをどのように向かい合わせるか,考えたことをどのように表現していくかが課題である。 研究主題 自己を見つめ,よりよく生きるための道徳教育 ―子どもの多様な考えを引き出すしなやかな授業の創造― 研究仮説 体験的な活動と道徳授業の関連を図りつつ,子どもの多様な考えを引き出す工夫をすれ ば,道徳的価値の自覚がより深まり実践力へとつながるであろう。 指導の重点 ①「自分自身に関すること」及び「他の人とのかかわりに関すること」に重点を置いた指導を 行う。 ②道徳的価値を深め実践化を図るために,日常生活・他教科・総合的な学習の時間・特別活動 等体験的な活動と関連を図った指導を行う。 ③学んだ価値と自己の生活を重ね合わせて考え,今後の生活に生かそうとすることができるよ う,展開後段を充実・工夫する。 ④多様な考えが引き出せるよう発問等児童への働きかけを工夫すると共に,複線的な指導過程 を持って臨む。 2 多様な考えを引き出すための指導過程 価値に迫る資料提示の工夫 展開前段 本時のねらいに基づき資料に含まれる価値について考える。 中心発問 資料で考えた価値をもとに,自分の生活を ふりかえり自己を見つめる 展開後段 多様な考えを引き出すために 複線的な 児童の 実態分析 経験・体験の把握 ① ② ③ ④ ふりかえって考える静寂な時間を持つ。 発問の工夫 ゆさぶり ー自己を見つめる。 きりかえしー個に焦点をあてた発問 つなぐ −経験を思い出させる。 発表からディスカッションへ ねらいにつながるよう視点をずらさない。 ・発問の工 夫 ・ 表 現 方 法 の き り かえ ・ 形 態 の き り かえ 指導過程 板書の工夫 しなやかな道徳教育 自己を見つめよりよく生きようとする 3 板書についての基本的な考え 板書はその時間のねらいである道徳的価値の自覚に向け,重要な要素の一つである。時には資料 提示のための劇場となり,あるいは個々の考えを理解し類型化するための場となり,また道徳的価 値の自覚に向けての道しるべともなる。 本校では板書について 4 月当初次のような共通認識をした。 (1) (2) (3) 子どもの思考を深める共通のノートとしての役割を果たす。 1 時間の中で子どもたちの「心の動き」を示す働きをもたせる。 教師の意図だけで構成せず,自由度のある板書計画を作成する。 4 板書の工夫例 (1)資料の内容を把握させるための工夫 展開後段を充実させるには,子どもたちによって資料に含まれる道徳的価値が明らかにされる必 要がある。道徳的価値が明らかにされるためには,資料の内容把握が前提条件になる。この内容把 握のために,国語のような読解指導になっては時間ばかり取り,ねらいから離れていく。 そこで,子どもたちがより短時間で内容把握できるように,資料の語りに合わせ,キーポイント になる絵や言葉,文を黒板に掲示した。 〔語りに合わせた場面絵や言葉,文の掲示〕 5学年 主題名「自由を大切に」1-(3) 資料名「遠足の子どもたち」 (2)授業の構成が分かるための工夫 指導の重点である展開後段を充実させていく取組みの一つとして,展開前段の中心発問をピンク, 後段の発問を黄色の色画用紙に記入し掲示している。こうすることで話合いの中心部分をクローズ アップし,子どもたちの考えを深めたり引き出したりすることが,より可能となる。 指導の内容によっては前段に重きを置く場合もあり,同じような板書構造にはなっていない。児 童の反応により中心発問を変える場合は,その場で板書し色チョークで周りを囲んでいる。 さらに中心発問を二通り考えている場合は,表,裏に書いておき,学習の流れや児童の反応によ り選んで掲示する。 〔発問の掲示〕 後段発問 4学年 前段中心発問 主題名「時間の決まり」1-(1) 資料名「目ざまし時計」 (3)資料提示で利用した場面絵やペープサートを生かすための工夫 低学年では,よく場面絵や紙芝居,お面にペープサート等を利用する。これをそのまま板書に生 かすことで,子どもたちの興味や意欲を引き,思考の流れを切らずに話し合いに入ることができる。 〔ペープサートを利用して〕 2年生 主題名「正直な心」1-(4) 資料名「金のおの」 〔巨大絵を利用して〕 1年生 主題名「じかんをまもる」1-(1) 資料名「ちゃいむがなりました」 (4)意見の違いを捉えやすいようにするための工夫 話し合いを深めるために,まず自分の考えや立場を色カードや番号カード,ネームプレート等を 用いて表す場合がある。 本校でも黒板にネームプレートを貼って自分の立場を明らかにする方法を取る場合がある。そし て,なぜその立場を選んだのかその理由を話し合う中で,友だちの様々な考えに触れ,自分のもっ ている価値観との違いに気づいたり,今の自分でいいかと考えたりする。「∼さんの意見を聞いて ∼思ったので意見を変えます。」と黒板に出てネームプレートを貼りかえる子もある。 また,ネームプレートは,教師にとっても児童の実態把握や評価を容易にし,次の展開を考える 一つの目安にもなる。 〔ネームプレートを活用して〕 3学年 主題名 「思いやりの心を表そう」2-(2) 資料名「学校の帰り道」 〔ネームプレートを利用して〕 2学年 主題名「たすけあう家族」4-(2) 資料名「だっておにいちゃんだもん」 前段 2回目の ネームプレート 1回目の ネームプレート 5 成果と課題 (1)成果 ○語りに合わせた場面絵やキーポイントになる言葉の提示は,資料内容の把握に要する時間を 短縮することができる。 ○発問を掲示することにより,何について考えたらいいのか,何について話し合ったらいいのかを, 子どもたちがより強く認識できる。 ○前段と後段の発問を掲示することにより,発問内容をより吟味し前段と後段のつながりを考えるよ うになる。 ○ネームプレートの掲示は,自分と友だちの考えや価値観の違いを知ったり,話し合いを深めていっ たりできる一つの方法である。 (2)課題 ●型にはまった板書にならないよう,ねらいや資料に合わせ,工夫していく。 ●複線的な指導過程に合わせ,複線的な板書を計画する。 ●視聴覚機器を利用し,児童が意欲や興味を持てるよう工夫する。 ●教師の意図だけで構成せず,子どもたちの心の動きを大切にした板書になるようにする。 ●展開後段の時間が十分もてるよう,前段でのタイムテーブルや板書を考える。