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安全保障貿易管理に係る制度改正について

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安全保障貿易管理に係る制度改正について
資料3
安全保障貿易管理に係る制度改正について
経済産業省
貿易管理部
目 次
1.安全保障貿易管理を巡る現状認識
2.制度改正の全体像
3.技術取引規制の見直し
4.罰則強化等
5.仲介取引規制の見直し
6.企業の海外展開に伴う手続きの簡素化等の規制合理化
業 海外展開 伴う手続
簡素 等 規制合
7.貨物等リストの記述のあり方の見直し
…p.3
…p.4
…p.5
…p.12
…p.18
…p.21
p 21
…p.23
2
1.安全保障貿易管理を巡る現状認識
北朝鮮におけるミサイル発射・核実験、米国等における非対称脅威(テロとの
戦い)など、国際的な安全保障を巡る環境はますます厳しくなってきている。
国連安保理決議等へも適切に対応する必要がある。
高度先端材料など民生技術の高度化に伴い、軍事技術との境目はなくなりつ
つあり、民生技術の汎用性は拡大するという大きな流れがある。
企業活動のグローバル化に伴い、国境を越えるモノや技術の取引は増え、複
業活動 グ
化に伴 、国境 越え
や技術 取引は増え、複
雑化してきている。
情報技術の進歩により、技術情報の移転は容易かつ目に見えないものとなり、
そもそも税関を通らないものを適切に管理することは、グローバル化に伴う人の
移動の拡大と相俟って、急速に困難になっている。大学における輸出管理が不
十分との声もある。
我が国を代表する企業による不正輸出事件等が続発しており、外為法の抑止
力が近時の経済法と比して不十分ではないか。
3
2.制度改正の全体像
安全保障貿易管理に係る制度改正の全体像は以下のように整理される。これらは、
本小委員会の制度改正WGにおける、平成19年6月の中間報告や平成20年3月の
最終とりまとめにより既に方向性が示されており、その後本小委員会において更に検
討が継続されてきたもの。
このうち特に(1)∼(3)の項目について今通常国会への外為法改正法案の提出を念
頭に法制的な検討を早急に進めるとともに、(4)(5)についても引き続き検討を継続
することが適当。
1.現行法では対応不十分な規制の見直し(外為法改正が必要な事項)
(1)技術取引に係る規制の見直し
:従来の居住者・非居住者間取引のみの規制体系を見直し、特定技術を記録した媒体の国外
従来の居住者 非居住者間取引のみの規制体系を見直し 特定技術を記録した媒体の国外
持ち出しも規制対象に
(2)罰則強化等
:輸出、技術取引ともに罰則水準の引上げ等。適切な輸出管理体制を求める仕組みの整備
(3)仲介取引規制の見直し
:安保理決議1540号対応を踏まえ、仲介取引規制を貨物の売買に基づくもの以外にも拡大
2.規制のリバランス・合理化
(4)企業の海外展開に伴う手続の簡素化等の規制合理化
:海外子会社と本邦親会社間の輸出・技術取引について手続の合理化・簡素化等
(5)貨物等リストの記述のあり方の見直し
:規制リストの品目の整理の方法に関して、国際的な動向をも踏まえて検討
4
3(1).現行技術取引規制の不備と見直しの必要性
技術の特性
技術については、①無形、不可視であり人に化体 ②電子的な複製・移転が容
易 ③貨物とは異なり、税関による確認という手段を欠く、といった特性を持つた
め、取引の捕捉が難しく、一旦流出した場合の被害回復が著しく困難である。
居住者・非居住者取引規制の問題点
現行規制(外為法第25条第1項第1号)の規制目的は、国際的な平和と安全の維持
のため、特定技術が国外に持ち出され懸念用途に用いられることを防止することに
のため 特定技術が国外に持ち出され懸念用途に用いられることを防止することに
ある。
現行規制は、為替管理を主目的としていた昭和24年の外為法の延長上で昭和55
年に導入された体系を昭和62年改正においても踏襲したものであり、当時は、「居
住者-非居住者」間取引に海外への技術の持出しの蓋然性の有無を擬制することに
より、特定技術の海外流出が適切に防止できるものと期待されていた。
しかしながら、近年、国際的な人的交流が活発化し、自然人の居住者又は非居住
者のステータスが容易に変わり得、これまで規制対象外となっていた者による取引
であって規制すべき局面が増加している。また、情報技術の発展によりUSBメモリ
など小型で大容量の技術情報が記録可能な記録媒体の普及がこの問題を助長して
いる。このため、特定技術の国外流出懸念に適切に対応すべく、規制の見直しが求
5
められる。
3(2).現行技術取引規制の問題点と検討の方向性
現行制度で対応不十分な事例
持出し行為自体は規制していない。(このため、
居住者が自ら外国に持ち出した特定技術を非
居住者となってから提供する場合は規制対象
外。 )
見直しの方向性
例:日本企業を退職した外国人従業員が帰国後
に提供する場合
■
提供する者が「居住者」、提供を受ける者が
「非居住者」に限定されているため、非居住者
非居住者」に限定されているため、非居住者
が取得した特定技術を国外に送付する場合は
規制対象外。
例:短期滞在中の外国人が盗取することなどにより
入手した後、国外の第三者に提供する場合
特定技術が外国に持ち出されたことのみなら
ず、外国において非居住者に提供されたこと
が立証されない限り違反を問うことができず、
実効性が不十分。
例:日本企業に勤務する従業員等が週末や休暇
を利用して一時出国し、国外で提供する場合
◇国境を越えて特定技術を提供する
取引は、居住者・非居住者の区別に
取引は、居住者
非居住者の区別に
限らず規制対象に。
◇(提供を前提とした)特定技術の国
境を越えた持ち出しも規制対象に。
※ 主要国でも、技術について、貨物と同様
に、国外持出しを規制する体系を既に採用し
ており、こうした制度改正は、制度の国際的な
調和にも資するもの
6
(参考)現行の技術取引規制のイメージ
国
国内
境
外国
許可対象外
許可
対象外
非居住者
居住
居者
住者
許可対象
提供取引
「居住者」が、「非居住者」に国内で技術
提供することを含む
「居住者」が、「非居住者」に国外で技術
提供することを含む
非居住者
許可対象外
許可
対象外
※「居住者」とは、本邦内に住所又は居所を有する自然人及び本邦内
に主たる事務所を有する法人、「非居住者」とは、居住者以外の自然人
及び法人をいう。(外為法第6条第1項第5号)
誰でも
非居住者
提供取引
提供
7
3(3).改正案の具体的内容(案)
【改正案の概要】
1.居住者・非居住者の区別にかかわらず、誰から誰に対してでも、
国外に特定技術を提供する場合(媒体の提供、電子メール送信、
無形の技術提供)は、許可が必要。
(日本国内、国外において、居住者が非居住者に特定技術を提供
する場合を含む。)
2.上記1.の許可を取得せずに、国外に提供することを前提として
2
上記1 の許可を取得せずに 国外に提供することを前提として
特定技術を国外へ持ち出す場合(特定技術を記録した媒体の輸出、
電子メールでの国外送信など)、誰でも許可取得が必要。
※出張者による自己使用目的の一時持ち出し(持ち帰りを前提と
するもの)などについては許可不要。
上記の結果、記録媒体の国外への持ち出し等の時点までに許可
取得が必要になる。
8
改正案のイメージ
国 境
国内
外国
許可対象
誰でも
誰でも
(媒体の持出し等の時点まで
に許可取得が必要)
提供取引
「居住者」が、「非居住者」に国内で技術
提供することを含む
「居住者」が、「非居住者」に国外で技術
提供することを含む
誰でも
許可対象
提供
9
(参考) 技術提供に関する懸念(日本の事例)
日米の主要企業・大学等において外国人従業員・留学生等による技術情報の海外
への持ち出し事件が多く発生している。
・A社の会社員は、先端兵器等にも応用可能なエレクトロニクス部品に係る情報等を、メモリーカード等を介
し、在日X国通商代表部員へ不正に提供し、対価を受領した。当該部員は警察の出頭に応じず出国。なお、
在日X国通商代表部員及び日本人元会社員は背任容疑で送検されたが、起訴猶予処分となった。
・A社に勤務するY国人社員は、図面データを貸与パソコンにダウンロードし、繰り返し自宅に持ち帰ってい
た Y国の大学を卒業後 軍事関連企業に勤めていた経歴を持つ同社員は その後 同技術を本国に持ち
た。Y国の大学を卒業後、軍事関連企業に勤めていた経歴を持つ同社員は、その後、同技術を本国に持ち
出していた可能性が強い。当該社員は退職後、帰国。なお、同社員は横領罪で逮捕されるも、証拠が隠滅
されていたため証拠不十分により起訴猶予処分となった。
・A社から、防衛庁関連の地対空ミサイル開発に係るシミュレーションソフトの発注を受けたB社は、Z国関
連のソフト会社に下請け発注したところ、当該ソフト会社から地対空ミサイル開発に関する性能数値などの
関連データがZ国関連団体へ流出し、そこを通じてZ本国に持ち出され、ミサイル開発に用いられた疑いが
ある。
10
(参考) 技術提供に関する懸念(米国の事例)
・海軍の静音推進技術を研究する会社でサポートエンジニアとして勤務していたチー・マク(U国で生まれ、
米国に帰化)は、国際武器取引規則(ITAR)の規制データを不正に輸出したとして有罪判決を受けた。
ターゲットは米国の軍艦に関する推進力、武器、電子システムに関する技術であり、捜査当局が家宅捜索
した際、優先して取得する技術分野を記載したU国当局による二つの指示書が発見された。チー家族は収
集した情報を暗号化してU国当局に送っていた。
・中核的エンジニアであったノシル・ゴワディア被告は、輸出管理規則(EAR)の規制対象とされている巡航
ミサイルが探知・傍受される可能性を小さくする噴射ノズルの設計の技術を無許可でT国に提供した疑いで
告発された。
・シャオドン・シェルドン・メン被告は、米国の雇用主から軍パイロットのシュミレーションソフトプログラムの
ソースコードを盗みS国に提供した疑いで、経済スパイ法(EEA)及び武器輸出管理法(AECA)違反として
告発された。
・A社は、米国内にて、無線LAN用集積回路で用いる技術をR国の大学に属する教授・学生に移転。みな
し輸出規制違反となるが、最終的には商務省産業安全保障局(BIS)と和解し、民事上の罰金を支払った。
・国防総省をはじめとする米国の多くの省庁がQ国を発信源とするコンピューターネットワークへの攻撃に
さらされていることを踏まえ、米国では、こうしたサイバーアタックを支えるソフトウェアの撲滅やインターナ
ルセキュリティ(組織内部のセキュリティ)の充実が喫緊の課題として重視されている。
また、こうした事態は欧州でも同様、かつ企業もターゲットとなっており、英国では、情報当局が国内300
の金融機関に対してX国からのネットワーク攻撃に注意を呼びかける通知をしたとのこと。
11
4(1).罰則強化等
近年、外為法違反の無許可輸出事件等が続発しており、罰則強化による抑止
力の向上が不可欠。(具体的事案については、参考資料p.17参照)
また、法人の場合時効により自然人のみが処罰の対象となる事態が生じている。
意図的に輸出に係る書類を偽ることにより許可を取得する事例も発生している。
罰則強化に関しては、本小委員会の制度改正WG中間報告(平成19年6月)に
おいて既に整理がなされているところであるが、今後特に以下の措置について、
政府部内での調整を行うことが適当。
①無許可の輸出・技術取引、無承認の輸出入に対する罰則水準の引き上げ
②法人に対する罰金刑と自然人に対する懲役刑の時効を合わせる規定の導入
※この結果、法人に対する罰金刑の時効が延長されれば、罰金の算定対象となる貨物・技術の価格が増え 、
制度上当該貨物・技術の価格の5倍まで罰金を科すことができることから、その法人への罰則の強化が図ら
れることになる。
③不正な手段による許可等の取得に対する刑事罰の導入
12
(参考)安全保障貿易管理小委員会制度改正WGの中間報告(平成19年6月)における整理
<2.外為法違反行為に係る対応について>
外為法では、国際的な平和及び安全の維持をはじめ、その法目的を確保するため、違反事案に対する刑事罰のほか、輸出等の禁止を内容とす
る行政制裁が設けられており、これらが違反事案に対する抑止力として機能することが期待されている。刑事罰については、例えば安全保障貿易
管理に係る無許可輸出は、5年以下の懲役若しくは200万円以下(目的物の価格の5倍が200万円を超えるときは、価格の5倍以下)の罰金又
はその併科となっている。法人についても、同様の罰金が科される。また、行政制裁については、例えば安全保障貿易管理に係る無許可輸出は、
3年以内の輸出禁止処分が行われることがあるものとされている。
(1)罰則レベル等
・外為法の刑事罰については、昭和62年以降、見直しがなされていないが、最近、外為法違反容疑事案が続いている一方で、他の経済法でも違反に対する抑止力強
化のための刑事罰の引上げや、法人に対する重課の導入などが行われてきている。
・こうした状況の下、外為法においても、国際的な平和及び安全を確保するという法目的にかんがみ、無許可輸出等に対する抑止力強化のため、貿易を阻害しないとい
う視点にも留意しつつ、罰則レベル等について見直しを図っていくことが必要である。
・罰則レベルについては、近時の経済法における水準を参考にするとともに、安全保障に対する罪であるという側面を重視して設定される必要がある。なお、抑止力と
いう趣旨からは罰則に限らず、行政制裁の期間についても視野に加えることも考えられる。
・近年、違反を犯した個人とその個人が属する法人とを同内容に罰する単純な法人併科に対して、その罰則の与える抑止力の違いを原点として、法人重課方式が経済
事犯をはじめとして広く採用されるに至っている。外為法においても、こうした抑止力の視点から、法人重課方式を導入すべきである。
・その際、手続面からも法人に対する刑事罰が軽くなるものとならないよう、関税法などにおける取扱いと同様、法人に対する時効期間を行為者の時効期間に相当する
ように設定すべきである
ように設定すべきである。
・また、法人への併科に加え、法人の代表者個人に対する罪としていわゆる三罰規定を導入することについては、その代表者に求められる社内事務掌握の内容や罪と
なる範囲の明確化の観点から、その可否につきなお慎重な検討が必要である。
(2)不実申請への対応
・外為法においては、輸出許可申請の内容や審査資料の一部を偽る申請行為について罰則や行政制裁の対象としていない。
・しかし、輸出対象貨物の機能や需要者等に関する資料を偽った申請が行われた場合には、これに基づき輸出の可否について審査が行われ、その結果、無許可輸出
が行われる場合と同様に、法目的が損なわれることとなるおそれが大きい。このため、こうした不正により許可が取得されることを防止するという抑止力の確保の必要
性が認められることや、他法令においても虚偽などにより不正に許可等を取得することについて罰則の対象としているものが多いことを踏まえ、外為法においても不
実の許可申請に関する罰則や行政制裁などの抑止策を導入すべきである。なお、その場合、輸入者等他の者から入手した資料に偽りがある場合など、多様なケース
があることにかんがみ、申請者の不安を極力排除するよう、申請者側にその認識があった場合に限定すべきである。
・なお、不実申請に対する罰則のレベルについては、行政庁の審査を経るという要素もあるため、これを勘案し一段軽いものとなることが適当と考えられる。
(3)許可条件違反
・外為法に基づく輸出許可に際しては、その法目的に即して、許可に係る審査の上で不可欠の要素として、あるいは審査の結果をより確実に補強するための手段として、
積戻し報告条件などの許可条件が付せられることがある。
・現在、許可条件違反に対しては10万円以下の過料とされており、違反に対する抑止力は小さいものとなっている。
・こうした許可条件違反については、積戻し報告の場合をはじめ、許可条件が確実に履行されないとしたときには法目的が損なわれるおそれの大きいものも少なくない
一方、許可条件による報告の前提が相手方の行為にあり輸出者がコントロールできない場合も多いこと、包括許可の場合には内部管理規程の遵守という状態にあた
る性質の許可条件もあり、今後許可条件違反に対して刑事罰の導入を検討するに当たっては、許可条件の具体的内容に応じた慎重な検討が必要である。
13
4(2).罰則強化等
適切な輸出管理体制を求める仕組みの整備
昨今、貨物の輸出に係る該非判定に際してデータを改ざんする等の不正な行為
を行う事例が発生している。
S社は、平成12年から平成18年にかけて、同社が製作する工作機械の位置決め精度に
係るデータを改ざん・偽造し、数百台を欧米・アジア諸国に輸出。同社は、不適切な輸出管
理体制の下、輸出許可申請を免れるため7年にわたりデータの改ざん・偽造を繰り返してい
た。経済産業省から、厳正な輸出管理を徹底と再発防止を求める警告を昨年10月17日に
発出。
こうした事例には、無許可輸出として外為法違反にまでは問うことができないケ
こうした事例には
無許可輸出として外為法違反にまでは問うことができないケ
ースも存在することから、以下のような制度を外為法に設けることについて、法制
的観点などを含め検討することが適当。
(ⅰ)外為法の規制対象となる機微な貨物・技術を輸出・提供する者に対して、経済
産業大臣が該非判定等法令遵守のために必要となる業務に関して遵守すべき事
項(輸出等業務遵守事項(仮称))を定め、
(ⅱ)輸出者等において適切な輸出管理がなされていない場合に改善を求める仕
組みとして、指導・助言、勧告、命令、命令に従わない場合に罰則を科する。
14
輸出等業務遵守事項(仮称)の内容
■
前頁の経済産業大臣が定める「輸出者等が業務に関し遵
守すべき事項」の詳細は、仕組みの大枠の整備後に、産業
界における実務の実態などを踏まえて検討していくこととな
るが、概ね以下のような内容とすることを検討。
① 安全保障貿易管理の対象となる輸出・技術取引を業として行う者に、
安全保障貿易管理の対象となる輸出 技術取引を業として行う者に
該非判定及び需要者・用途確認の責任者を明確化すること、輸出管理
制度の社内周知に努めることなどを求める。
② 機微度の高い、又は、該非判定に特に注意を要する貨物・技術等の場
合には、その他の内容を加えることも検討。
15
(参考) 外為法違反等に対する現行制度
刑事罰
無許可輸出/
無許可技術提供
不適正な輸出・審査
許可条件違反
行政制裁
・ 3年以内の、貨物輸出・技術提供の禁止
公 表
不実の許可申請
・ 対象貨物/技術価格の5倍以下の罰金
・ 5年以下の懲役
経済産業省からの
違反企業に対する警告
不実申請企業等に対する警告
過料
・ 10万円以下の過料
16
(参考) 最近の外為法違反等事例
03年 4月
核兵器の開発に転用可能な直流安定化電源をタイ経由で北朝鮮向けに輸出(キャッチオール規制違反)
社長に懲役1年(執行猶予3年) 会社に罰金200万円
03年 6月
ミサイル推進薬の製造に転用可能なジェットミルをイラン向けに輸出
元社長に懲役2年6ヶ月(執行猶予5年) 会社に罰金1500万円
04年 2月
核兵器の開発に転用可能なインバーター(周波数変換器)を中国経由で北朝鮮向けに輸出(キャッチオール規制違反)
社長に懲役1年(執行猶予3年)共謀者に懲役10月(執行猶予3年) 周波数変換器没収
06年 1月
生物・化学兵器の散布に転用可能な無人航空機(無人ヘリコプター)を韓国、中国等向けに輸出未遂
会社に罰金100万円。
06年 9月
核兵器の開発等に転用可能な三次元測定機をマレーシア及びシンガポール向けに輸出
元副会長に懲役3年(執行猶予5年) 元社長に懲役2年8ヶ月(執行猶予5年)等 会社に罰金4500万円
08年 8月
真空ポンプ等(キャッチオール規制該当品)が台湾経由で北朝鮮に輸出され、北朝鮮の核関連施設で使用された。
警告
08年10月
工作機械の位置決め精度に係るデータを改ざん・偽造し、数百台を欧米・アジア諸国に輸出
警告
※ 日付は告発・警告を行った時点
17
5.仲介取引規制の見直し
国連安保理決議第1540号において、全ての国に対して、「大量破壊兵
器等の設計、開発、生産又は使用のために用いることができる物資、設
備及び技術に関して、不正仲介を探知し、抑止し、防止し及び対処する
ための適切で効果的な国境管理及び法執行の努力を策定し維持するこ
と」が求められていることを踏まえ、現在、貨物の売買に基づく仲介取引
のみを対象とする仲介取引規制を、売買以外の契約類型のものや技術
に関するものまで拡大することについて、その具体的範囲も含め検討す
ることが適当。
(参考)安全保障貿易管理小委員会制度改正WGの中間報告(平成19年6月)における整理
<5.国連安保理決議1540号に係る対応について>
大量破壊兵器の拡散を防止するための国連安保理決議1540号においては、関連貨物等の輸出や再輸出とともに、積
替(transshipment)、取引仲介(brokering)、通過(transit)に対する適切な規制が求められている。我が国では、すでに昨
年の中間報告を受けて、このうち大量破壊兵器等関連貨物に係る積替規制や取引仲介規制を導入し、本年6月から施行
に至っているところである。
このうち取引仲介については、現行外為法が「貨物の売買」に規制対象を限定しているものとなっている。このため、貨
物とともに技術の仲介も含むと明記し、しかも対象となる取引を売買に限定するものとされていない同安保理決議との関
係では、完全に対応したものとなっていない。このため、同決議の目的を踏まえれば、その趣旨に的確に対応するよう必
要な制度面の手当てが行われるべきである。
その場合、原則として輸出管理はその輸出元となる国の責任においてなされるべきであること、我が国の諸制度になじ
みのない外国人から許可申請に必要な情報を得なければならないこと、貨物自体は我が国国内に存在しないこと、取引
仲介に関しては多様な契約形態が存在すること、我が国からの輸出に対する規制と比較してより早い段階の規制となら
ざるを得ないことに留意し、我が国企業の国際的な活動を不当に阻害することとならない方法が採られるべきである。
18
仲介取引規制の見直し:<貨物>
(対象となる契約類型の範囲)
■
売買以外に如何なる契約類型に基づく仲介取引まで対象とするかは、
本小委員会の制度改正WG中間報告(平成19年6月)で既に整理されて
いるとおり、日本企業の国際的な活動を不当に阻害しないよう限定的に
検討することを前提とすべきであり、少なくとも単なる口利きのような行為
に基づくものは規制対象外とすることが適当。
■
リースなどの賃貸借に基づく取引はビジネス実態において少なからず
見受けられることや、通常の輸出においては、売買による輸出に限らず、
賃貸借による輸出もあることも踏まえれば 売買に加えて 賃貸借を対
賃貸借による輸出もあることも踏まえれば、売買に加えて、賃貸借を対
象とするとともに、贈与、使用貸借又は消費貸借といった契約形態を加
えることについても必要最小限の範囲で検討することが適当。
(仕組み)
■
現行の仲介取引規制が、貨物の外国相互間の移動を伴う売買に関す
る取引であって、1項武器を除いては、非ホワイト地域相互間、かつ、当
該貨物が大量破壊兵器開発等に利用される旨の連絡を受けた場合等
(用途要件)とインフォーム要件に限定していることを踏まえ、同様の仕組
みを採用することが適当。
19
仲介取引規制の見直し:<技術>
<許可対象となる事例>
外国
国
境
居住者
いずれにしろ、仕組みとしては、貨
ずれ
仕組 と
貨
物の仲介取引規制同様の仕組み(1
項武器を除いては、技術の調達元と
提供先の双方が非ホワイト地域であ
り、当該貨物が大量破壊兵器開発等
に利用される旨の連絡を受けた場合
等(用途要件)とインフォーム要件に
限定)を採用することが適当。
技術
非居住者
■
技術取引に係る仲介取引規制に関
しては、売買の契約類型を主として
念頭に、技術取引規制見直し全体の
中で整理されることが必要。
誰でも
■
国内
20
6.企業の海外展開に伴う手続きの簡素化等の規制合理化
近年、企業活動がグローバル化する中、世界中に広く展開する海外子会社と我が国
企業(親会社)間の取引が増大するなど、グローバルな企業活動を効率的かつ円滑に
行うための安全保障貿易管理規制の合理化ニーズが一層高まってきている。
一定程度の輸出管理体制が整備された企業については、当該社内管理のみで輸出の
可否を判断することについて問題ないと考えられる範囲(貨物・技術、仕向地)で、包括
許可を認める制度が存在しており、我が国企業が海外子会社に貨物を輸出する際や技
術の提供を行う際にも当該包括制度がこれまで活用されてきている。
【包括許可制度の概要】
・一般包括許可制度:リスト規制品のうち比較的機微度の低い貨物・技術と仕向地を対象
・特定包括許可制度:特定の相手との継続的かつ反復的な取引を念頭におき、指定した取引
相手に対する特定の貨物・技術の範囲を対象。一般包括許可制度と比
較して比較的機微な貨物・技術にも適用が可能。
他方、包括制度であっても、一定の社内管理コストがかかり、また、特定包括許可制度
については対象となる貨物・技術の個別品目ごとに取得することが必要であることなど
からその利用状況は限定的なものとなっているため、産業界からは海外子会社向けの
取引についての更なる手続きの簡素化が求められてきている。
21
具体的な緩和の方向性
日本の親会社が海外子会社における輸出管理により一層の影響力を行使する等を前提として、例え
ば以下のように一定の範囲で輸出管理手続きの合理化・簡素化を行うことがどこまで可能であるか更な
る検討を行っていくことが適当。
<技術取引>
・親会社によって適切に監督される海外子会社とのイントラネットによる情報の共有等、当該子会社内の使用にとど
まる技術情報の共有について、現行包括制度に基づく親会社内における管理コストが低減するよう、社内審査の合
理化について望ましい管理のあり方の明確化を検討。
<貨物>
・親会社によって適切に監督される海外子会社に対する輸出について、特定包括許可制度の要件の見直しを検討
親会社によ
適切に監督される海外子会社に対する輸出に
特定包括許可制度 要件 見直しを検討
・親会社により適切に管理される優良海外子会社に対する特別な包括許可制度の在り方についても、併せて可能
性を検討
他方、検討の際には、機微な貨物・技術については引き続き厳格な安全保障貿易管理が必要である
ことや海外子会社の事後的な資本関係の変化の可能性などを含めて十分な考慮が必要。
また、親会社・子会社間の取引にかかわらず、安全保障の観点で合理化可能なものについては、
産業界のニーズも踏まえ、一部申請に係る添付書類の簡素化等を行うことを検討することが適当。
22
7.貨物等リストの記述のあり方の見直し
我が国においては、他国同様、国際的な輸出管理レジームで毎年合意された
内容を、国内法令(政省令等)に反映させることにより、合意内容の履行を図っ
ている。
しかしながら、技術の急速な進歩や企業活動のグローバル化の中で、外為法
に基づく規制リストの規制品目の整理の方法に関して、国際的な動向も踏まえ
て時代の変化にあった対応の必要性も指摘されている。
このため、産業界のニーズを前提に、技術的側面・法制的側面から官民双方
が協力して、対応の方向性につき検討していくことが求められる。
23
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