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141. 新しい人工心臓の開発 - Hollow-Rotor Pump

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141. 新しい人工心臓の開発 - Hollow-Rotor Pump
 上原記念生命科学財団研究報告集, 24(2010)
141. 新しい人工心臓の開発 - Hollow-Rotor Pump -
南 和友
Key words:turbo pumps,axial pumps
*日本大学 医学部 心臓血管外科
緒 言
従来の植え込み型人工心臓が体格の小さな東洋人には不適切な場合があったが,新しい小型人工心臓の開発で重症心不全
の患者に低侵襲の外科治療が可能になる.
方 法
この空洞型軸流ポンプ (hollow rotor axial pump) は新開発製品であるためにその性能に関して未知なところが多い.しか
しその理論的根拠は従来の軸流型ポンプ(axial-, turbo pumps) に類似するところが多い 1,2).
まずこの軸流ポンプ本体の流出, 流入部に装着される回転翼 (rotor blade) の角度は従来の軸流ポンプと類似して作られた 3).
このポンプのハウジングの部分も軸流ポンプの性能に大きな役割をすることから Fig.1 に示される実験シェーマで水力学的な種
々の計測を行った.
Fig. 1.test bench.
ポンプ流出部の拍出係数 (out-put),流量 (flow), ポンプ回転スピードはオンラインでデジタル集計された.回路には清浄水
が使用された.計測値の正確さを図るためと回路内の空気抜きの目的で図にあるごとくバイパス回路を作成した.実験用に作
成したプロトタイプのポンプをこの回路に接続し抵抗血管を疑似する目的で抵抗弁を装着した.すべての計測値は LabView®
の集積ソフトで解析を行った.
*現所属:北関東循環器病院
1
1.実験用プロトタイプの作成
プロトタイプはデジタルコンピューター分析 (CAD-system) にて高画質プリンターを使用して作成された.ポンプの素材はプラ
スチックでこの作成方法にて 0.05 mm の精密度でポンプの作成が可能であった (Fig. 2).
Fig. 2.test rotor.
2.実験計画
プロトタイプのポンプを使用しての実験は過去9カ月を費やし行われた.第一段階では作成したプロトタイプのポンプが必要な
流量を出すことができるか (feasibility test), 第二段階ではどのようなポンプの形態がもっとも有効か (validation test) を検
証した (Table 1).
Table 1.Experiment plan
2
3.実験のプロトコール
第一の実験目標は 100 mmHg の抵抗圧で 6 L/分の流量を出すためにはポンプのローターの形態を理想的なものに近づける
必要があった.従来の軸流ポンプではそのパーフォーマンスは次第に減速すために種々の工夫が必要とされた.ローターのデザ
イン,回転翼の角度そして螺旋曲線の有無などが主な課題となり浮き上がってきた.それらは今後の実験目標である.
結 果
本実験は新型ポンプの技術面での考察が目的であってポンプの機能評価ではない.従来型のものと違い拍動数からの流量を推
定することは不可能であり,実験用の回路には生理食塩水を使用した.
今回の実験ではポンプの流量と圧力をポンプ速度を変化させることによって計測しプロットした.
1.ベンチテスト
ポンプの回転は 20,000 rpm まで可能なように設計されている.回転計測機は Endress + Hauser Flowtec を使用した.流
量は Promag 55S を使用して電磁流量測定の原理に基づいて行った. 圧測定の誤差は Deltabar S PMD 70 であった.
アナログのシグナルは National Instruments によってジギタル化され両者のデーターは LabView® measurement プログラ
ムで処理された.
2.Hollow-rotor
本軸流型ポンプのデザインで主たるものを列挙する.これらの要点は医学的特性,文献的考察そして実験経験から考慮された
ものである.
デザイン:
- ローターの長さ
- ローター外側径
- ローター内側径
- 回転羽(blade)の外方向角度
- 回転羽(blade)の内方向角度
- 回転羽(blade)の非回転角度
- 回転羽(blade)の非回転角度とローターの長さの比率
CAD デザイン:
ローターは上記のパラメーターを熟考し作成されたものである.CADによる実験ローターモデルの作成は実に有意義なもので
あった (Table 2).
Table 2.main dimensions of rotor Nr. 26
考 察
本実験では hollow-rotor が想定した流量の拍出と定量の制御が可能であることを立証できた.回転速度の変化に伴う定量測
定は実験NR.26でプロットされたデーターで示された (Fig. 3).
3
Fig. 3.head-capacity curve.
水力学的パフォーマンスはローターの回転数 11,000 to 12,000 rpm’s で得られることが判明した.今回の実験ではローターの
形状を観察することができたが,流れの強さ,方向性に関しては考慮されてはいない.
総括としてこの新型 Hollow-Rotor ポンプの原理は多くの将来性を持ち,今後の改良でより良いものができることが期待される.
共同研究者
本 研 究 の 共 同 研 究 者 は Bykut, D., Associate Professor, Cardiovascular Surgery CSO Coras Medical Inc.,
Schkommodau, E., Professor, Head, Institute of Medical Technology および,Ruppli, T., CEO Coras Medical Inc.
である. 文 献
1) Marseille, O.:Entwicklungs- und Bewertungsverfahren für Rotationsblutpumpen. RWTH Aachen,:
1-54, 2001.
2) Kink, T. C.:Konzept einer berührungslosen Lagerung für Rotationsblutpumpen. RWTH-Aachen, :
28-36, 2005.
3) Li, H. & Chan, W. K.:Inverse design and CFD investigation of blood pump impeller, Crit. Rev.
Biomed. Eng., 28:75-80, 2000.
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