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学生による幼児を対象としたリズム体操の考案
目次に戻る 学 生 に よ る幼 児を 対 象と し た リ ズ ム 体 操 の 考 案 The Invention of Rhythmic Exercises for Young Children by Students 高 徳 希 N oz om i TA K ATO K U キ ーワ ー ド : 幼児・リズム体操・体育・身体 表現 1.はじめに 体力要素(身体的要素・精神的要素)が未分化な幼児期では,様々な動きに対して身体を巧みに コントロールする能力である調整力を高めることが重要であり,走・跳・投をはじめとする多くの 基 本 動 作 を 習 得 し て い か な け れ ば な ら な い。 体 育 ・ ス ポ ー ツ 科 学 領 域 に お い て は , こ れ ら の 向 上 を 目 指 し た 様 々 な 運 動 や ト レ ー ニ ン グ が 開 発 さ れ て い る が , 今 回 は , そ の 中 で も「 リ ズ ム 体 操 」 に 着 目した。 「 体 操 」 に は , 日 常 生 活 で 必 要 な 姿 勢 , 動 作 を さ ら に よ り 大 き く 極 限 ま で 動 か す こ と で, 総 合 的 な 体 力 を 高 め ,様々 な 動 きを体 験 す るこ とに よ り ,動 き に 対 す る認 識 を 深 める 2) と い う 効 果が ある 。 ま た , 体 操 を 含 む 徒 手 的 運 動 に は ,「 よ り 強 く 」,「 よ り 早 く 」,「 よ り 上 手 に 」 と い っ た , 勝 敗 や 競 争とは異なり,子どもの心と身体をリラックスさせ,目標の達成感を感じ取る効果がみられる 2) 。 よって,体つくり,動きつくりをねらいとした比較的簡単な動きをリズムに合わせて行う体操を体 験 さ せ る こ と で ,「 楽 し さ 」,「 お も し ろ さ 」 を 感 じ な が ら, 多 種 多 様 な 動 作 の 習 得 に つ な が る と 考 え ら れ る 。 す で に 様 々 な リ ズ ム 体 操 が 開 発 さ れ, 定 期 的 に 実 施 し て い る 保 育 現 場 も 多 い 。 し か し な がら,どの部位を,どのように動かし,どのような効果をねらっているのかということが適切に理 解 さ れ て い る と は 言 い 難 い 。 も ち ろ ん, 幼 児 に と っ て は , 体 操 そ の も の が , 身 体 活 動 の 楽 し さ, 心 地よさを感じることができる活動であればよいが,保育者が単にリズムに合わせて「振り」を覚え るといった理解で実施してしまうと,前述したようなリズム体操の効果は半減してしまう可能性も あ る 。 従 っ て , 将 来 , 保 育 現 場 に 携 わ る こ と を 目 指 す 学 生 自 身 が, 幼 児 期 に お け る 調 整 力 や 基 本 動 作 を 獲 得 す る こ との 重 要 性 と リ ズ ム 体 操 のね ら いを 適切 に 理 解 して お く 必 要 が あ る とい え る 。 そこで,保育者志望学生を対象とした体育および身体表現に関する授業内の取り 組みの一つとし て ,学 生 自 身 が 幼 児 を 対 象 と し た リ ズ ム 体 操 を 考 案 す る と い う実 践 を 試 みた 。さ ら に ,今 回 の 実 践は, 今 後 の 体 育 お よ び 身 体 表 現 に 関 連 す る 授 業 に お い て,「 リ ズ ム 体 操 の 考 案 」 を 主 要 な テ ー マ と し た 授業展開の方法論を確立することにつながると考えられる。本稿では,幼児体育および身体表現を 卒業研究のテーマとして選択した保育者志望学生を対象とした 5 回の授業で実践した内容について 報告する。 2.リズム体操の考案の手順 1) 対 象 幼 児 体 育 お よ び 身 体 表 現 を 卒 業 研 究 の テー マ と して 選択 し た 保 育者 志 望 学 生 2 1 名 2 ) 運 動 形 態 お よ び 方 法 の 解 説 (1 回 目 ) ラジオ体操 3) に 用 い ら れて いる 動 き を例に 挙 げ て , 各運 動の 形 態 ( 首 の 運 動 , 肩 の 運 動 , 胸の運 動,手 指 の運 動 ,腕 の 運動 ,上 肢 の 運動 ,下 肢 の 運 動 ,足 先 の 運動 ,全 身 の 運 動 な ど ) や 方 法 ( 屈 伸 , 1 27 振動,挙下,挙上,回旋,捻転,跳など)を分類 1) しながら解説を行った。また,幼児期に獲得す べ き 調 整 力 や 基 本 動 作 に つ い て も 解 説 し, そ の た め に 必 要 な 工 夫 に つ い て 考 え な が ら 運 動 遊 び を 提 供 す る こ と の 重 要 性 につ いて の 理 解を促 し た 。 3) リ ズ ム 体 操 の 考 案 ① 運 動 形 態 お よ び 方 法に よ るグル ー プ づくり ( 2 回 目 ) 解 説 し た 運 動 形 態 およ び方 法 か ら,学 生 が 着 目 した 4 種 類 ( 全 身 運 動,上 肢の 運動 ,下肢 の 運動, ス テ ッ プ 運 動 ) を テ ー マと して , 5 ∼ 6 名で 構 成 さ れ る グ ル ープ に 分 か れて 取 り 組 んだ 。 ② 一 人 一 案 制 に よ る 体 操の 考案 ( 2 回 目) 各 グ ル ー プ の テ ーマ に基 づ い て,一 人 一 案 制 で 8 呼 間 の 動 き を 考案 した 。 ③ 曲 に 合 わ せ た 動 き の 構成 の 検討 (3 ∼ 4 回 目 ) 各グループのテーマに沿って一人一案制で考案した動きとねらいを発表し,学生間のディスカッ ションによって,幼児を対象とした体操に相応しいと思われる動きを選択した。その後,幼児用の 楽 曲 を 選 び , 楽 曲 に 合 わ せ た リ ズ ム 体 操 の 構 成 を 考 え た 。 1 曲 の 前 半 部 分 の み( 32 呼 間 × 5 回 ) の 構 成 を 考 え, 後 半 部 分 は 同 様 の 動 き の 繰 り 返 し と し た。 全 身 運 動 , 上 肢 の 運 動, 下 肢 の 運 動 に つ い て は各 3 2 呼間 , ステ ッ プ 運 動につ い て は 32 呼間 × 2 回と し た 。 ④ 発表お よび 学 生 の 振り 返 り ( 5 回目 ) 考案 したリ ズ ム 体操 の 発 表を 行 い, お互 い の動 きの 評 価 と と も に考 案過 程 の振 り返 りを 行っ た 。 3 .実践 報告 1)各 グル ープ に お ける リ ズム 体 操 の原案 ① 全身運 動 全身を伸ばす動き,胸を開く動き,上肢や下肢を前後方向,左右方向に開く動きなどが多くみら れた。両腕を交差したり,胸の前に構えて,一旦全身を小さくした状態から伸ばしていくことを意 識し てい る よう であ っ た 。 表 1 全身運動グループ(6 名)の原案 動きの原案 ねらい A 上肢を肩から真上に伸ばし,左右に振る。同時に腰を左 右に振る。 肩関節の可動域を広げ,体側を伸ばす。 協応性を高める。 B 右腕を伸ばしながら,右足の爪先を上げて踵を床につけ る。反対側も同様に行う。 脚部裏面の筋肉を伸ばす。 平衡性を高める。 C 上体を右方向に捻りながら,顔の高さで両手の拳を回す。 体幹を捻転しながら,両腕を回旋する。 反対側も同様に行う。 柔軟性,協応性を高める。 D 上肢を肩から真上に伸ばしながら,全身を伸ばす。両腕 と両足を左右に開いた後,下肢を深く曲げて小さくなる。 全身を伸ばし,上肢および下肢関節の可動域を広げる。 再び,元の姿勢に戻る。 E 両手を胸の前で拳にし,やや膝を曲げた後,右足を前に踏 み出し,右腕を前方に,左腕を後方に伸ばしながら胸を開 く。 腕の振りを利用して,胸を開く。 柔軟性,協応性を高める。 F 両手を胸の前で交差して,下肢を深く曲げた後,小さく 跳躍して,両足を前後方向に開く。 下肢関節の可動域を広げ,脚力を養う。 リズム感,平衡性を高める。 1 28 ②上肢の運動 上 肢 の 屈 伸 や振 動,体 幹 の 捻転な ど が 多 か っ たが ,上 肢 の み の動 きに 偏 る傾 向が みら れ た 。 また , 左 右 で 同 じ 動 き, 異な る 動き と い ったよ う な 協 応 性 を 高 める こ と を 意識 し て い るよ うで あ っ た 。 表 2 上肢の運動グループ(5 名)の原案 動きの原案 ねらい A 両腕の振りを利用して,上体を後方に捻る。正面に戻した後, 体幹を捻転,上肢を屈伸する。体幹の柔軟性を高め, 上肢を肩から真上に伸ばす。反対側も同様に行う。 上肢関節の可動域を広げる。 B 顔の高さで両手を拳にし,右方向から拳を回し,頭上を通して, 体側を伸ばしながら,両腕を回旋する。 左方向まで動かす。 柔軟性,協応性を高める。 C 両手を掌にして小さく振りながら,両腕の屈伸を繰り返す。 上肢関節の可動域を広げる。協応性を高める。 D 右腕を肩から真上に伸ばし,左腕は左方向に伸ばす。反対側も 同様に行う。 上肢を屈伸する。協応性を高める。 E 両腕の振りを利用して,上体を後方に捻る。左右交互に繰り返す。 体幹を捻転する。体幹の柔軟性を高める。 ③下肢の運動 下肢の屈伸,大腿の筋肉を伸ばす動きがみられた。1 歩踏み出す動き,足を上げる動きは,歩行 や 走 行 と い っ た移 動 運 動をイ メ ー ジし て いる よ う で あ っ た。 表 3 下肢の運動グループ(5 名)の原案 動きの原案 ねらい A 右方向に 1 歩進んで両足を揃え,下肢を深く曲げてから立つ。 下肢関節の可動域を広げ,脚力を養う。 反対側も同様に行う。 B 右足の膝関節を伸ばしたまま,爪先をあげて踵を右方向の床に つける。反対側も同様に行う。 脚部裏面の筋肉を伸ばす。 C 右足を右方向に開き,左足を前で交差する。左足を左方向に開 いて,右足を前で交差する。 股関節の可動域を広げる。 D 左方向を向いて,右下肢を上げる。右下肢を下して右方向を向き, 下肢関節の可動域を広げる。 左下肢を上げる。 平衡性を高め,脚力を養う。 E 下肢を深く曲げた姿勢から,左右に捻りながら立つ。再び,左右 に捻りながら下肢を深く曲げた姿勢に戻る。 下肢を屈伸する。 柔軟性,平衡性を高める。 ④ステップ運動 ケ ン パ , ス キ ッ プ, ボ ッ ク ス ス テ ッ プ と い っ た ス テ ッ プ に 合 わ せ た 動 き が 多 く み ら れ た 。 リ ズ ム 感 や 平 衡 性 を 高 める こ と を意識 し て いる よう で あ っ た 。 表 4 ステップ運動グループ(5 名)の原案 動きの原案 ねらい A 右足を上げて,前方に左足でケンケンパを行う。左足を上げて, リズム感,平衡性を高める。 後方にケンケンパを行う。 B ボックスステップをしながら,ステップのリズムに合わせて上 肢を順番に斜め上に伸ばした後,片手ずつ胸の前で交差する。 C 右足を上げて膝関節を曲げ,軽く跳躍しながら前に振り出す。 リズミカルなステップ運動,下肢を屈伸する。 反対側も同様に行う。 リズム感,平衡性を高める。 D 小さくスキップをしながら,その場で回る。 リズミカルにステップ運動を行う。リズム感を養う。 E 両足の膝関節を軽く曲げてリズムをとり,右足の膝関節を伸ばし たまま,爪先を上げて踵を床につける。右足を元の位置に戻して から,反対側も同様に行う。 脚部裏面の筋肉を伸ばす。 リズム感を養う。 1 29 リズミカルなステップ運動,上肢を屈伸する。 リズム感,協応性を高める。 2) 考 案 し た リ ズ ム 体操 の ねら いと 動 き の 説 明 1) に 示 し た 動 き の 原 案 か ら, 幼 児 を 対 象 と し た 体 操 に 相 応 し い と 思 わ れ る 動 き を 各 グ ル ー プ か ら 2 種 類 ず つ 選 び , 曲 の リ ズ ム に 合 う 動 き に な る よ う に 修 正 を 加 え た 。 ま た, 曲 の 構 成 に 合 わ せ て 全 体 の 流 れ を 考 慮 し な が ら , そ れ ぞ れ の 動 き の 順 番 を 検 討 し た 。 考 案 し た リ ズ ム 体 操( 前 半 部 分 ) を 図 1 ∼ 4 に 示す 。 曲の 後 半部 分は , 前 半 部 分の 動 き を 繰 り 返し て 行 っ た。 ① 全 身 運 動 ( 3 2 呼 間) 全身を伸ばす動き,胸を開く動きを意識し,上肢および下肢関節の可動域を広げ,柔軟性や四肢 の 協 応 性 を 高 め る こと を ねらい と し た。 図 1 に 示 し た ⅰ ∼ ⅳを 2 回 繰 り 返 して 行っ た。 ⅰ . 両 腕 を 伸 ば し, 頭上 で 掌 を合 わせ る 。 両 腕 と 両足 を 左 右 に 大 きく 開 く。 ⅱ . 胸 の 前 で両 手 を拳 に して, 下 肢 を 深 く 曲げ る 。 両 腕 と 両足 を 左 右 に大 きく 開 く 。 ⅲ.両腕を伸ばし,頭上で掌を合わせる。右足を前方に踏み出し,左方向を向きながら両腕を左 右 に 開く 。 ⅳ . 両 腕 を 伸 ば し, 頭 上 で 掌 を 合 わ せ る 。 左 足 を 前 方 に 踏 み 出 し , 右 方 向 を 向 き な が ら 両 腕 を 左 右に 開 く。 図 1 全身運動ⅰ∼ⅳ(図中の数字は 8 呼間のカウントを示す) ②上 肢 の運 動( 3 2 呼 間 ) 上肢を屈伸する動き,手首を振動させる動きを意識し,上肢関節の可動域を広げ,左右の協応性 を 高 める こ とを ね ら い とした 。 図 2 に 示し た ⅰ ∼ ⅳ を 2 回 繰 り 返 し て 行 っ た 。 ⅰ . 両 腕 を 肩 か ら 真 上 に 伸 ば し , 手 首 を 振 動 さ せ る 。 右 足 の 爪 先 を 上 げ て 踵 を 床 に つ け な が ら, 両 腕は 右方 向 に 出す 。 ⅱ. 両 腕 を 肩 か ら 真 上 に 伸 ば し , 手 首 を 振 動 さ せ る 。 左 足 の 爪 先 を 上 げ て 踵 を 床 に つ け な が ら , 両 腕 は左 方向 に 出 す。 ⅲ . 胸 の 前 で 両 手 を 拳 に し, 下 肢 を 軽 く 曲 げ る 。 右 腕 を 右 方 向 に 伸 ば し , 左 腕 は 肩 か ら 真 上 に 伸 ば して ,右 足 の 爪先 を 上げ て踵 を 床 に つけ る 。 ⅳ. 胸 の 前 で 両 手 を 拳 に し , 下 肢 を 軽 く 曲 げ る 。 左 腕 を 左 方 向 に 伸 ば し , 右 腕 は 肩 か ら 真 上 に 伸 ば し て, 左足 の 爪先を 上 げ て踵 を床 に つ け る 。 図 2 上肢の運動ⅰ∼ⅳ(図中の数字は 8 呼間のカウントを示す) 1 30 ③ 下 肢 の 運 動 ( 3 2 呼 間) 走 行 の 姿 勢 に 見 立 て た 下 肢( 大 腿 ) を 上 げ る 動 き , 下 肢 を 屈 伸 す る 動 き を 意 識 し , 平 衡 性, 柔 軟 性 を 高 め る こ とを ねら い とし た 。 図 3 に示 し た ⅰ ∼ ⅱ を 2 回 繰 り 返 した 後 , ⅲ , ⅳ を 行 っ た。 ⅰ .左方向を向き,右下肢の膝関節および股関節を屈曲して大腿を上げ,正面を向きながら大腿を下す。 ⅱ . 右方向を向き,左下肢の膝関節および股関節を屈曲して大腿を上げ,正面を向きながら大腿を下す。 ⅲ . 左 右 に 捻り な がら , 徐々に 下 肢 を 深 く 曲げ る 。 ⅳ . 下 肢 を 深 く 曲 げ た 姿 勢 か ら , 左 右 に 捻 り な が ら 立 つ。 胸 の 前 で 両 手 を 拳 に し て , 下 肢 を 深 く 曲 げ た 後 , 両 腕お よ び両 足 を 左右に 広 げ て 立 つ 。 図 3 下肢の運動ⅰ∼ⅳ(図中の数字は 8 呼間のカウントを示す) ④ ス テ ッ プ 運 動 (3 2 呼 間× 2 回 ) リ ズ ム に 合 わ せ た様 々 な ステッ プ 運 動を意 識 し ,リ ズム 感 や 平 衡 性 を高 め る こ とを ねら い と した 。 図 4 に 示 し た ⅰ を 2 回 繰 り 返 し た 後 ( 2 回 目 は 速 く ), ⅱ, ⅲ の 順 に 行 っ た 。 さ ら に , 2 人 組 で 手 を つ な い で ⅰ を 2 回 繰り 返 し た 後 ( 2 回 目 は速 く ), ⅳ , ⅴ の順 に行 っ た 。 図 4 ステップ運動ⅰ∼ⅴ(図中の数字は 8 呼間のカウントを示す) 1 31 ⅰ . 手 を 腰 に あて , 大 きく足 踏 み をす る。 2 回 目 は や や 速 く行 う ( 1 呼間 ず つ )。 ⅱ . 右 足 を 上 げて 膝 関 節を曲 げ , 軽く 跳躍 し な が ら 前 方に 振 り 出 す 。 反対 側 も同 様 に 行 う。 ⅲ . 手 を 腰 にあ て, 大 き く足踏 み を し た 後, 下 肢 を 2 回 屈 伸 する 。 ⅳ . 右 足 の 膝関 節 を 伸ばし た ま ま,爪 先 を 上 げ て踵 を 床 に つ け る。 右 足 を 元の 位置 に戻 して から , 反 対 側 も 同 様 に 行う 。 ⅴ . 頭 上 で 手 拍 子 を 4 回 行 う。 両 手 を 振 り な が ら 下 す と 同 時 に, そ の 場 で 足 踏 み を し な が ら 1 回 転する。 3) 学 生 の 振 り 返 り 一人一案制で考案した動きの原案から,学生間のディスカッションによって幼児を対象としたリ ズム体操として相応しいと考えられる動きを選択し,試行錯誤を重ねていく中で,改めて身体へと 意 識 を 向 け , ど の 部 位 を, ど の よ う に 動 か し , ど の よ う な 効 果 を ね ら っ て い る の か と い う こ と を 理 解 し よ う と す る 姿 勢 が み ら れ た 。 ま た,「 幼 児 」 を 対 象 と し た 体 操 の 動 き と し て , 動 き の 速 さ や 四 肢の協応 性に配慮して複雑な動きにならないようにすること,リズムを意識させること,同じ動き を繰り返すこと,といった点への気付きもあった。さらに,動きのねらいを意識しながら,学生自 身が考案したリズム体操をお互いに発表したことによって,わかりやすい四肢の高さや角度,メリ ハリのある関節の曲げ伸ばしといった幼児の見本となる動きのポイントを見出し,自身が高い意識 を 持っ て 幼児 へ と 働 きか ける こ と の 重要 性 を 再 確 認 す る 様 子 も み ら れ た 。 4 . 今後 の課 題 今 回, 幼 児 体 育 お よ び 身 体 表 現 を 卒 業 研 究 の テ ー マ と し て 選 択 し た 保 育 者 志 望 学 生 を 対 象 に, 学 生による幼児を対象としたリズム体操を考案するという実践を試みた。対象とした学生は,運動・ スポーツに対する肯定感が高く,自らの身体を動かすことを比較的好む傾向にはあるが,身体運動 の 仕 組 み に 対 す る 理 解 や 他 者 の 身 体 に 対 す る 意 識 は あ ま り 高 い と は い え な か っ た 。 し か し な が ら, 勝 敗 や 競 争 を 伴 う 運 動 ・ ス ポ ー ツ で は な く ,「 楽 し さ 」,「 お も し ろ さ 」 を 感 じ な が ら, 多 種 多 様 な 動 作 を 習 得 す る こ と が で き る 「 リ ズ ム 体 操 」 の 体 験 を 通 し て, 自 ら の 身 体 と 他 者 の 身 体 に 対 す る 意 識 や 高 い 意 識 を 持 っ て 身 体 を 動 か す こ と の 効 果 だ け で は な く, リ ズ ム に 合 わ せ て 身 体 を 動 か す こ と の 楽し さを改め て学 ぶ こ と がで き た ので は な いか と 考 え られ る。 今 回 の 実 践 に よ っ て ,「 学 生 に よ る リ ズ ム 体 操 の 考 案 」 を 授 業 で 展 開 し て い く 方 法 論 が あ る 程 度 確 立 さ れ た と 考 え ら れ る が , さ ら に, 身 体 に 対 す る 刺 激 が 偏 ら な い よ う に 動 作 の 変 化 を つ け る, 日 常 的 な 動 作 や 幼 児 が 好 む 動 物 の 動 き の 模 倣 も 取 り 入 れ る こ と の で き る テ ー マ を 設 定 す る, 幼 児 が 親 しみやすい音やリズムを選択するといった点が課題となるだろう。これらの課題解決を念頭に置き な がら,今後 も 多く の学 生 を 対 象 とし た 授業 で の 実践 に 取 り 組ん で い き た い 。 【参 考文 献】 1) 江 刺 家 由 子 : 授 業 に お け る 創 作 リ ズ ム 体 操 に つ い て の 一 考 察 . 帯 広 大 谷 短 期 大 学 紀 要 ,5 0: 5 1-5 7, 2 01 3. 2) 村 松 正 之 ( 河 田 隆 編 著 ): 幼 児 体 育 教 本 . 同 文 書院 : 東 京 ,p p.5 7 -6 6, 2 0 07 . 3 ) 日 本 放 送 協 会 ・ N HK 出 版 : こ れ が 正 し いラ ジ オ体 操. NH K 出 版 : 東 京 , 20 1 3. 1 32