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12 浄水ケーキ利用上の注意点
12 浄水ケーキ利用上の注意点 (1) 湿式造粒脱水ケーキ(さがみ粒土)から加圧脱水浄水ケーキ(新さがみ粒土)への切り替え 浄水ケーキは、原水を水道水に浄化する過程で発生する鉱物質主体の沈殿物を、何らかの方 法 で 脱 水 処理 して 得 られた 固 形 物 で ある。良質 な 粘土 鉱 物を含 み 、床 土の 原土 や 客土 として 利 用されてきた。 こ れまでイチゴ の育 苗等 に利 用した 浄水 ケーキは、高分 子凝 集剤と水ガラスを添加 し造 粒し、 品 温 200℃ で 乾 燥 した 湿 式 造 粒 脱 水 ケー キ で あ り、「さが み 粒 土 」 とい う名 称 で 流 通 し てい た。 し かし、この 方式 の浄 水 ケー キは、施 設の 更新 により生産 が打 ち切られ、異 なる方式の 脱水法 、す な わ ち加 圧 脱 水 法に よる浄 水 ケー キに切 り替 わ る。この 加圧 脱 水 浄 水 ケーキは「新さ がみ 粒土 」 とも呼 ば れ 、凝 集 剤 を 使用 せ ず に 加圧 脱水 し、間 接式 乾 燥機 内 で100℃で 乾 燥後 、破 砕 機で 細 かく砕いたものである。旧さがみ粒土とは性状が異なるため、利用には注意が必要である。 (2) 加圧脱水浄水ケーキ(新さがみ粒土)の使い方 加圧脱水浄水ケーキ(新さがみ粒土)のイチゴ育苗培土としての利用法を要約すると以下のとお りである。 ア 半年から1年間降雨にあてたものを利用する。 イ 単 体で は利用 せず 、必ず他 の資材 を混合 する(与 作V1号を混合 する場合 は25%程度 混 合)。 (3) 加圧脱水浄水ケーキ(新さがみ粒土)の特徴 加 圧 脱水 式 と湿 式 造粒 脱水 式の 新 ・旧 さがみ 粒 土の化 学 性を 表12-1に示す 。どちらもアンモ ニ ア 態窒 素 を 多く 含 む 。また 新 さがみ 粒 土 は水 ガラス を 添加 して い ない た め 、さがみ 粒 土 と比 べ てpHが低い。 表12-1 新・旧さがみ粒土の性状 脱水方式 pH (名称) (H 2 O) 加圧脱水浄水ケーキ (県内広域水道企業団資料) EC NH 4-N (ds/m) (mg/100g) 可給態燐 形状 (mg/100g) 6.8±2.0 0.39±0.16 11.6±5.1 1.2±1.0 扁平な角塊状∼粒状 7.2±0.3 0.43±0.10 11.6±5.8 2.5±2.2 粒径0.5∼3mmの粒状 (新さがみ粒土) 湿式造粒脱水ケーキ (旧さがみ粒土) 2001年∼2006年の平均値±標準偏差 脱水方法が異なっても、浄水ケーキは交換性マンガンと無機態窒素を多量に含んでいるた め、マンガン過剰症 や濃度 障害が発生する恐れがある。とくに、新さがみ 粒土は従来のさがみ粒 土 に 比 べ て 雨 ざら し 後 の マ ン ガ ン 濃 度 低 下 が 少 な い の で (表 12-2)、 こ れ ま で 以 上 に 、使 用 前 に 水 溶 性 成 分 を十 分 に 除 去 してお く必 要 がある 。また 単 独 で の利 用 は避 け、他 の資 材 と必 ず 混 合 する。 新 さがみ粒土の利用法として期待されているイチゴ育苗培土としての利用法は、従来のさがみ - 112 - 粒 土 とは異 なり、新さ がみ 粒 土 単 独 で の利 用 は上 述の ように 避 け る。単独 で イチ ゴ苗を 育苗 した 場合、ランナー切り離 し時及び定植時において生育が劣る。また、第一花房の花芽分化が著しく 遅 れ る と とも に 、年 内 収 量 の 低 下 、ある いは 総 収 量 の 低 下 が み られ る (図 12-1、2 )。イチ ゴ 育 苗 用土 として使用す る場合は、上記のリスクを回避す るために、新さがみ粒土単独で の利用は避け て 、必 ず 市 販 培 土 ( 与 作 V 1 )や くん 炭 を 25% 程 度 混 合 して 使 用 す る か 、また はリ ン酸 肥 料 を 3.5 号ポット(450ml)当たり、成分(P 2 O 5)で1g程度混合することが有効である(図12-3、4)。 表12-2 雨ざらし処理前後のEC、アンモニア態窒素および交換性マンガンの変化 EC 脱水方式 アンモニア態窒素 (ds/m) 交換性マンガン (mg/100g) (mg/kg) 前 後 前 後 前 後 加圧脱水浄水ケーキ① 0.52 0.25 9.9 7.5 193 168 加圧脱水浄水ケーキ② 0.79 0.24 25.6 4.3 137 108 湿式造粒脱水ケーキ 0.48 0.20 17.4 1.6 129 8 加圧脱水浄水ケーキ①:綾瀬浄水場産 加圧脱水浄水ケーキ②:相模原浄水場産 湿式造粒脱水ケーキ:伊勢原浄水場産 神奈川県農業技術センター研究報告(太田ら2009)より 3.0 t 100 % 12月 3月 2.5 80 1月 4月 2月 2.0 60 1.5 40 1.0 単独使用 +市販培土*(25%) +くん炭(25%) 20 0 10/16 10/26 11/5 11/15 11/25 0.5 0.0 12/5 単独使用 図12-1 第一花房の累積開花率(イチゴ) * 与作V1 (平成14年度 +市販培土*(25%) +くん炭(25%) 図12-2 10a当たりの総収量(イチゴ) 試験研究成績書(野菜)より) 25 4 20 4 15 3 10 2 ab cd abc 2 a 10 地上部重(g/FW) 3 bcd 15 生理障害程度 地上部重(g/FW) 20 1 5 5 1 地上部重 生理障害程度 0 0 なし あり なし なし あり バーミキュライト 25% なし 0 あり 0 0 1 2 3 4 5 リン酸含量(g/pot) パーライト 25% 図12-3 資材とリン酸の影響 図12-4 リン酸含量の影響 注) 資材の混合率は体積当たり、各肥料要素混合区は1ポット(3.5号)当たり、 成分で窒素は62mg、リン酸は550mgを混合。 整理障害程度は葉の観察により、0:障害なし、1:葉に黄変あり、2:葉縁が 褐変、3:葉脈が赤紫変、4:葉脈が褐変の5段階で評価。 異なるアルファベット間にはTukeyの多重検定により5%水準で有意差あり。 バーは標準偏差を示す。 - 113 - 注)全区に窒素を成分で62mg混合 生理障害程度は、図12−3参照 生理障害程度 d