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2015年01月13日リサーチ 米雇用者数は着実に増加し失業
米国経済 2015 年 1 月 13 日 全4頁 米雇用者数は着実に増加し失業率は低下 2014 年 12 月の米雇用統計:賃金は低下したが一部の業種では上昇 ニューヨークリサーチセンター シニアエコノミスト 土屋 貴裕 [要約] 12 月の非農業部門雇用者数は前月から 25.2 万人増加し、過去分も上方修正されて、雇 用者数の増加ペースは加速している様子である。失業率は 5.6%と前月から 0.2%ポイ ント低下したが、主に労働市場から退出した人が増えたことに因る。 業種別の雇用動向は、サービス業で主に企業向けサービスと教育・医療で雇用が増えた。 詳細に見ると雇用が減少している業種や増加ペースが鈍っている業種もあるが、総じて 幅広い業種で雇用が増加した。 労働時間は横ばいで時給は減少した。一部の業種における賃金や労働時間の上昇は、所 得拡大の一助となるだろう。1 月の FOMC(連邦公開市場委員会)では、雇用者数の増加 や失業率の低下が賃金を上昇させ、インフレ率の押し上げにつながるか、議論されるこ とになろう。 株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2/4 雇用者数は幅広く着実に増加 2014 年 12 月の非農業部門雇用者数は 25.2 万人増加し、市場予想(Bloomberg 調査:24.0 万 人増)を上回った。10 月分は 24.3 万人増から 26.1 万人増へ、11 月分は 32.1 万人増から 35.3 万人増にそれぞれ上方修正され、過去分は合計で 5.0 万人分の上方修正となった。過去 6 ヵ月 平均は 26.4 万人の増加、3 ヵ月平均では 28.9 万人の増加となる。 部門別では、政府部門、民間部門ともに揃って雇用が増加した。政府部門は連邦政府と州政 府、地方政府で揃って雇用者数が増加した。民間部門で増加した 24.0 万人の雇用のうち、サー ビス業が 17.3 万人を占めるが、その増加ペースは鈍化し、2014 年 2 月以来の増加幅にとどまっ た。生産部門では、建設業の雇用が増えたことなどを背景に 6.7 万人の雇用が増え、製造業は 1.7 万人増だった。 サービス業では、主に企業向けサービスと教育・医療で雇用が増えた。一時雇用を含む企業 向けサービスは 5.2 万人、教育・医療は在宅看護などを中心に 4.8 万人の雇用が増えた。この 他、娯楽・レジャーは 3.6 万人増、金融は 1.0 万人増などとなった。4.8 万人の雇用が増えた建 設業は 2014 年1月以来の増加幅となり、2014 年1月はその前月に雇用が減少していた反動増の 面が含まれていたとすると、12 月は堅調だったと言えるだろう。詳細に見ると雇用が減少して いる業種や増加ペースが鈍っている業種もあるが、12 月は総じて幅広い業種で雇用が増加した と言える。 2014 年に雇用者数は 295.2 万人増加した。このうち、企業向けサービスで 73.2 万人、教育・ 医療で 48.2 万人、娯楽・レジャーで 42.1 万人増加するなど、サービス業中心の雇用増となっ た。生産部門では建設業で 29.0 万人の雇用が増え、製造業では輸送用機器、機械などの雇用の 増加が目立った。 図表1 雇用統計の概要 600 (%) 11 (千人) 400 10 200 9 0 8 -200 7 -400 -600 非農業部門雇用者数増減 失業率(右軸) -800 6 5 4 -1,000 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (出所)BLS、Haver Analytics より大和総研作成 3/4 失業状況は改善 失業率は 5.6%と前月から 0.2%ポイント低下し、事前の市場予想(Bloomberg 調査:5.7%) も下回った。2008 年 6 月以来の水準となった。労働参加率は 62.7%で、前月から 0.2%ポイン ト低下した。失業率の低下は、雇用者の増加もあるが主に労働市場から退出した人が増えたこ とに因る。 失業者数は 38.3 万人減少し、このうち、失業期間が 5 週未満の失業者数と 15-26 週の失業者 数がそれぞれ 13.0 万人、12.9 万人減少し、失業期間は、中央値が 11 月の 12.8 週から 12.6 週 に、平均値は 33.0 週から 32.8 週にそれぞれ短期化した。27 週以上の長期失業者数は 3.7 万人 減少したが前月比では 1.3%減で、より失業期間が短い失業者の減少率ほどではなかった。この 結果、失業者に占める失業期間が 27 週以上の長期失業者の比率は 31.9%に上昇した。失業理由 では、前月増加していた会社都合での失業者が再び減少に転じ、前向きな転職活動が含まれる と考えられる自己都合での失業者も減少した。 経済的理由でパートタイム就業者となっている人の数は 679 万人で、緩やかながら 6 ヵ月連 続で減少している。12 月は非経済的理由のパートタイム就業者も減少して、パートタイム就業 者の総数は 3 ヵ月ぶりに減少した。パートタイム就業者数は 2014 年に微増となったが、経済的 理由のパートタイム就業者数は 97.6 万人減少した。ただフルタイムの雇用が増えた割には、そ れほど減っていると言い難い。また、職探しを諦めた人や、フルタイムの職を得られないパー トタイム労働者を含めた広義の失業率(U-6)は、前月の 11.4%から 11.2%に低下した。5 ヵ月 連続の低下で、2014 年は 1.9%ポイント低下した。 図表2 (%ポイント) 0.8 失業率の要因分解と経済的理由のパートタイム就業者 失業率(前月差)の要因分解 非労働力人口要因 16歳以上人口要因 就業者数要因 失業率(前月差) 0.6 0.4 0.2 0.0 -0.2 (千人) 10,000 経済的理由のパートタイム就業者 9,000 122,000 8,000 120,000 7,000 118,000 6,000 116,000 5,000 114,000 4,000 112,000 3,000 -0.4 経済的理由のパートタイム就業者 2,000 -0.6 13/3 13/6 13/9 13/12 14/3 14/6 14/9 14/12 (年/月) 110,000 108,000 フルタイム就業者(右軸) 106,000 1,000 -0.8 (千人) 124,000 104,000 0 00 02 04 06 08 10 12 14 (年) (注)失業率の要因分解の 2014 年 1 月以降は、それ以前とデータが連続していない。失業率(前月差)は小数 点第 2 位以下を求めた失業率の前月差であり、小数点第 1 位までの公表値とは異なる。 (出所)BLS、Haver Analytics より大和総研作成 4/4 賃金は低下 民間部門で雇用されている人々の週平均労働時間は、金融危機後では最も長期化した前月の 34.6 時間と変わらなかった。平均時給は前月から 5 セント減って 24.57 ドルとなった。時給が 前月から減少したのは 2013 年 7 月以来となる。時給の前年比伸び率は 1.7%と市場予想 (Bloomberg 調査:2.2%増)を下回り、2012 年 10 月以来の低い伸び率となった。11 月のインフ レ動向は 1%台前半の伸びで、これをわずかに上回る程度の伸びだった。12 月分の雇用者数の 増加や失業率の低下その他の指標と、時給の減少は整合的ではなく、アトランタ連銀のロック ハート総裁は、時給の減少は統計上のノイズとの考えを示した。 業種別の時給の前年比伸び率を比較すると、時給は娯楽・レジャーや情報通信で伸び率が高 く、週平均労働時間は娯楽・レジャーや建設などで伸びが高まった。このうち、娯楽・レジャ ーは、他の業種よりも時給の伸びと労働時間の伸びが高い。娯楽・レジャーでは、経済的理由 のパートタイム就業者の比率が高く、希望するフルタイムの職に就けることが望ましいが、賃 金や労働時間の上昇は、所得拡大の一助となるだろう。 12 月の雇用統計は、雇用者数の増加が続き失業率は低下した。長期失業や労働参加率の低下 という問題はあるが、失業の問題は緩やかに改善していることが示された。一方で、賃金は低 下し雇用環境の改善は一部にとどまる。一時的かどうか確認する必要があるが、12 月の雇用統 計からはインフレ率が大きく上昇する可能性は低い。1 月の FOMC(連邦公開市場委員会)では、 雇用者数の増加や失業率の低下が賃金を上昇させ、インフレ率の押し上げにつながるか、議論 されることになろう。 図表3 週平均労働時間と時給の伸び率 時給と労働時間の関係 経済的理由のパートタイム就業者比率 (前年比の10-12月平均) 16 4.0% (季節調整前) 14 ( 3.5% 娯楽・ レジャー 情報通信 製造業・ 非耐久財 ) 時 3.0% 給 の 伸 2.5% び 2.0% (%) 小売 10 建設 金融 民間部門 8 公益 1.5% 娯楽・レ ジャー 12 全体 6 教育・医療 鉱業・林業 1.0% 4 運輸・倉庫 0.5% 0.0% -1.0% 2 -0.5% 0.0% 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (週平均労働時間の伸び) (注)左図では、描画の都合上、全ての業種名は表示していない。 (出所)BLS、Haver Analytics より大和総研作成 (年)