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Page 1 Page 2 植物群落抽出の為の表操作方法とその能率化の基本 4

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Page 1 Page 2 植物群落抽出の為の表操作方法とその能率化の基本 4
横浜国大環境研紀要 23:13−46(1997)
植物社会学,植生学を基礎とした
植生調査法および植生図作製法*
Methodology ofVegetation Analysis and Mapplng
based on Phytosociology and Vegetation Science*
藤原 一姶**
Kazue FuJIWARA・事
SynopsIS
The materials of phytosociologicalfield surveys,the so−Called relev6s,COntribute
to classification of plant communities and to the comprehension and recording of
vegetation as basicunits ofnaturalenvironments・Thisin turn may assist various
otherscientificstudiessuchasunderstandingthevegetationcomposition,SPeCiesrich−
ness,etC.They also contributetotheideasforpotentialnaturalvegetation,reStOra−
tion ofharmoniouslandscapes and naturalvegetation.Practicalmethods for field
surveys,andforclassification and descriptionof vegetation are described hereinin
Japanese,basedonBraun−Blanquet(1964)andthe“Tiixenschool”of phytosociology・
And also vegetation mapping methods are described・Vegetation maps are the ac−
tualvegetationmap,Thedegree ofnaturalness vegetation,maP Of potentialnatural
vegetation,themap oforlglnalvegetation,themap of slgma−aSSOCiations・the map
of site potential,the functionalvegetation map,Vegetation complexes,the eco−
climatemap,the actualvegetationmap based onremotedsenslng・
互関係を知るのに有効である。また立地,地理他の自
はじめに
然環境と植生との関係を考察する際にも役立っ。さら
植生学,とくに植物社会学を基礎とした野外調査
にこの記録を基礎に潜在自然植生の考察,自然環境あ
は,自然環境や種々の科学的研究の基礎単位としての
るいは景観回復にまで応用,発展させることが可能で
植生の解明と,植物群落構造の詳細な記録として意義
ある。
をもつ。同時に,植物群落の分類体系化を行う基礎資
料となる。植物群落の分類体系は,各植物群落間の相
*Contribution、from the Department of Vegeta−
tion Science,Institute of Environmental Science
and Technology,Yokohama NationalUniver−
Sity.No.223
**横浜国立大学環境科学研究センター植生学研究室
本報では,野外調査の実際の方法や植生の分類と記
載が,Braun−Blanquet(1964)および現在まで日本
語で報告されていないTiixen学派(Tiixen,1974)の
植物社会学を基礎としてまとめられた。さらに著者が
1996年来,宮脇昭現横浜国立大学名誉教授(1996年当
時助教授)および大場達之前千葉中央博物館副館長
Department of Vegetation Science,Institute of
(当時横浜国立大学教育学部研究生)から学んだ日本
EnvironmentalScience and Technology,Yoko−
hama NationalUniverslty,Japan.
式改良型,その後30年間著者が野外調査を通して得た
(1996年12月10日受領)
実績を加え,1)野外における適正な調査地の選定,
2)総合優占度(被度および数度),群度の測定,3)
14
植物群落抽出の為の表操作方法とその能率化の基本,
(1987),Pott(1995,1996),Dierschke(1994)ら多
4)植物群落の記載,5)結果の展開と応用,6)植物
くの研究者が記述している。しかし,書かれている原
群落を具体的に地図上に示す現存植生図やその他の植
語がドイツ語や英語であるため読解が容易ではなく読
生図の作製について記述する。
んでいない研究者が多い。本報はBraun−Blanquet法
に従ってTiixen学派や多くの実践家によって修正さ
植物社会学(phytosociology)の概念は,植生の
れたものをFujiwara(1987)を基礎に和文にまとめ,
内的植物社会の種や個体間の関係と立地や隣接する植
生囲も含めた環境との関係を研究する。すなわち構成
さらにDierschke(1994)の方法論を加筆し,植生国
種群や植生が存在する立地との関連の研究を含み,植
作製法について書き加えたものである。
物群落の分類のみならずその構成分析,異なった群落
の比較による環境要因の分析の科学でもある。植物社
1.・埴生調査法
会学の調査票および基礎調査資料は生態学,地質学,
景観生態学,自然や景観の保全,回復,環境科学等に
1.野外作業:植生調査法
有用な基礎資料を提供する。基礎データを利用し,種
植生の基礎は「種」である。個生態を研究している
多様性の比較や生活形の分類まで幅広く応用可能であ
個々の植物や動物の種の研究から植生学を理解しよう
る。植生学は,植物社会学を含んだ,群落生態学すべ
とする研究者にとっては,植物が社会を形成している
てを包含し,さらに広い分野にわたる。
ということをイメージしにくいようである。河野は植
基礎資料としての植生調査はBraun−Blanquet法と
物社会はありえないと述べている(日高・河野1987)。
Braun−Blanquet(1928,u1932,1951,1964)は植物
も呼ばれ,自然やエコシステムの保全,遺伝子保護,
破壊された地域の自然回復のための自然環境の記録と
の社会生活を詳細に記述している。さらにTiixen
して応用できる。我々がある地域の植生タイプについ
(1977)は生物社会の七っの法則を示した:1)すべて
て理解し比較しようとすれば,具体的に地図上に植物
の生物にある社会的秩序,2)生態系にある外因的な
群落の広がりを示した植生図を使ったはうがわかりや
規制,3)空間の規制,4)時間的な規制,5)内的
すい。植物社会学の方法についてはBraun−Blanquet
(機能的)規制,6)生産量の規制,7)調和の法則。
(1928)以来,Ellenberg(1956),Mueller−Dombois
その中で植物群落は,一定の環境下で,種問や個体間
and Ellenberg(1974),宮脇(1967,1969),
Westhoff and van der Maarel(1973),Tiixen
で競争に勝つ種,我慢できる種また共存している種群
(1964),Knapp(1971),Miyawakiand Suzuki
制で示している。アメリカのように,遷移説
(1980),鈴木・伊藤・豊原(1985),Fujiwara
(Witakker1951)が支持されている国では,植物群
の組合せをもっ植物の共同体であるとことを,内的規
Slll川弄うnCtn亡1(In(If
n斥S.一つ
く==> ‥アメリカ派の遷移種
ブラウンーブロンキュの群集グループ
㌧ ∵ = = = ∵ ∵ ∵r = ∴∵ 」 ∴=∵ ト
ーし
ブラウンープロンキェの亜群集グループ
園= アメリカ方式の遷移説と植物社会学(ブラウンTブロンキェ)との違い
15
集や群落が独立していると考えるのは困難なようであ
調査”とは言えない。
る。すなわち,植生は連続しているものであり,区分
(4)植生調査域から異質な植分域を除外する。調査地
できないものとして考えられている。ヨーロッパ式に
は正方形に限らず,任意の形に行う。この任意の調
見方を変えれば独立した群集,群落を植生より抽出す
査枠により均質な植分を調査することができる(図
ることが可能であることが図1に示される。
植生調査に際してはできるだけ均一な植生立地を選
2,4)。
このような留意点は野外でトレーニングを積むこと
ぶ。この場合森林であればギャップや林縁の影響のな
でさらに良く理解できる。ライン トランセクト法を
い典型部を調査する。ギャップ部や林縁部はさらに別
使う場合でも,BraunpBlanquet法に従えば調査区は
の資料として調査を行う。これにより明瞭な相違点を
同面積でなくてもよい。均一な立地を選定した面積に
抽出することができる。また草原も同様で微地形によ
なるようにライン上に,自由に調査地域を選定する
り異なる植分は別々に調査する(図2)。ライン ト
(図2)。均質と不均質な立地両方を含む植生調査を行っ
ランセクト法で植生調査を行う際も同様に均質な植分
た場合は,その植生調査資料は群落表操作中で削除す
を選ぶことで,より的確に植物群落が区分できる(図2)。
ればよいが,時には混乱を招くこともあるので注意し
植生調査では調査地のすべての種をリストアップす
たい。
る(表1)。各種類の出現と優占度は被度と数度を合
わせた総合優占度(図6)と群度(図7)によって種
名の左側頭部に記載する。この手法がTiixenが用いた
2)調査区の最小面積
均質な立地では植生は図3の種面積曲線に示すよう
記録手法で,ヨーロッパで一般的に行われている種名
にほぼ同じような種数をもっ植分が群落を形成する。
の後尾に記載するよりも,野外調査中に記録の入れ忘
種々の植生タイプでの最小調査面積古まEllenberg
れを防ぐことができる。
(1956)やWesthoff&van der Maarel(1973)を
1)野外における植生調査地の選定
植生の高さが調査区の一辺の必要な長さの目安となる。
まとめ表2に示した。著者の体験から補足するならば
植生調査地は安定した相観と環境・立地条件の均一
たとえば自然林の高木層の高さはおよそ20m(温帯林
な立地を選定することが望ましい。たとえば急傾斜地
の大多数)から60m(熱帯多雨林)であり,調査区も
やミズゴケ湿原では,極めて狭い限られた区域しか選
20×20m,あるいは50×60m,ときには20×60mと植
定できない。ときには優占種が最良の調査区域を示す
分の均質部分に応じて設定する。調査地の一辺の長さ
こともあるが必ずしもそうとは限らない。個々に注意
は地形によって異なっても森林の最小調査面積は400
深く調査地を選定すべきである。
ポ(20mX20m,10mx40m),3600Ⅰぱ(60mX60m,
(1)調査区域の中に明らかな構成上の境界や変化がな
いこと。ギャップなどを避ける。
あるいはギャップ地の出現種は総合優占度と被度
を記録する際に()で示す。例:(+)のように
30mX120m)の単位で十分である。草地や丈の低い
植生では面積が背の高い植生に比較して小さくてもよ
いが,草丈よりも一辺が長い植生調査区を選定した方
がよい(図4、,表2)。
表示する。
(2)一様な植物相構成である場所を設定する。極端な
例では森林と草原を同一の調査区にしない。
これは森林を形成する環境要因と草原を形成する
環境要因が全く異なるためである。ただし,サバン
3)植生調査における測定法
植生調査票の一例が表1に示されている。
a.各層の高さおよび植被率
植生の階層の判定は極めて重要である。森林では通
ナなどのように,草原中に低木が疎生している場合
常高木,低木,草本,コケ層の4階層に区分でき,林
は,植生調査に際しては,気候的環境要因下の植生
床にコケ層がある場合は5階層区分になる。
として,均質な地形上において,同一の植生調査資
高木第1層(Tl):CanOPy treelayer
料(アウフナーメ)で記載する。
高木第2層 あるいは亜高木層(T2):under−
(3)量的(調査地の全ての植物の記録),質的(広く
StOrey treelayer
分布している種類)も含めて,景観の中の様々な植
低木層 (S):Shrublayer
生について地理的に広い地域を対象として,最低10
草本層 (H):herblayer
地点以上の植生調査を行う。単純な組成の植生調査
コケあるいは地衣層(M,時にL):
資料を同一の狭い地域で数多くとっても,‘科学的
moss/1ichenlayer
16
表1植生調査の一例
群落名 クヌギーコナラ群集
調査番号
調査年月日
調査地
調査者
卜52
高木第1層(Tl)
低木層(S)
13m80%
7m30%
4m30%
草本層(H)
0.4mlO%
95.5.29
下藤沢新田原
KF,YO,HS,且ヱ
高木発2層(T2)
蘇苫層(M)
ElO0
105m
53
方位・傾斜
海抜高度
出現種数
T14・4 コナラ僻立ち2∼5本≠17・5亡m)
下刈り管理良好
H l・1ノガリヤス
S 2・2エゴノキ
2・2エゴノキ(株立ち16本)
1一・2 アオハダ
+ ヤマザクラ
2・3クヌギ(1本立ち)
+ ヤマウルシ
+ サワフタギ
+ サワフタギ
1・2 ヒメカンスゲ
+ カキノキ
+・2ケチヂミザサ
+ ニワトコ
+ ヒカゲスゲ
+ ヒノキ
1・2ヘクソカズラ
+ コナラ
+ ウワミズザクラ
+・2スイカズラ
+ アオハダ
+ コプシ
+ ジャノヒゲ
十 シラカシ
+ ヤマウグイスカグヲ
T2 3・3エゴノキ
H
2・2 アズマネザサ
+ コプシ
+ ムヲサキシキプ
1・1ヤプラン
+ ムクノキ
1・1タチシオデ
十・2アオツゾラフジ
+ ヤマコウバシ
+ エノキ
+・2ニガナ
+ ヤマノイモ
+ ツルウメモドキ
+ サノ}トリイバラ
+ クズ
+ マユミ
+ メスビトハギ
+ イヌツゲ
+ トコロ
+ ムヲサキシキプ
+ コマユミ
+ コナラseedling
+ キンラン
+ カマツカ
+ ウメモドキ
+ ヤマコウバシ
+ サネカズヲ
+ ガマズミ
+ ノイバラ
+.ホソバヒカゲスゲ
+ ヒサカキ
+・2 フジ
+ エゴノキ
1・2 コテヂミザサ
+ シラヤマギキク
+ ウワミズザタラseedli喝
+ ツユクサ
+ アキノキリンソウ
+・2ツリフネソウ
+ ナワシロイチゴ
地形分類:頂部,尾根部,斜面(上部,中部,下部,凹部,凸部),谷部,
平地,窪状地,凹凸状有,洪水氾濫原,沖積地,湿地,低層湿原/高層湿原,
沼沢地,ハンモック,海岸線
土壌類型:ポドゾル,適塾赤色,黄色,墨塾 白砂(石英),富栄養砂,
灰色,還元土壌,砂質ローム,シルト,
砂レキ質,レキ岩質,岩石質,その他の土壌(
土壌深度:選史,浅い
風衝条件:強,中,壁
日照条件:陽当地,中,旦墜壁
土壌湿度:乾燥,適潤,、湿潤,過湿
落葉層‥(1∼10cm
》・竺 線状調査
i調査区
囲2 線状調査の植生調査区のとり方
m血ber of spe亡土色s
J2 〈5 βJO
J庁
フロ
25
、ヲ∼
area。f relev‘
図4 野外での調査区
図3 牧野や草原の種数面積曲線
表2 植生調査に必要な最小面積
自然林群落
400−1600Ⅰば
二次林群落
コケ植物群落
100−400
30−200
25−100
1−50
1−10
1−25
1−25
1−100
1−4
着生植物群落
0.1−1
低木林
ススキ草地
砂丘植生
塩沼地植生
牧野
シバ地群落
農耕地雑草群落
18
高木第1層(Tl)や高木第2層(T2)は植生高の
高い通常15m以上の森林の林冠部が区分される。1m
以上のような比較的背丈が高い草原,あるいは高茎草
原では2層に分け,草本第1層(Hl),草本第2層
気圧が変われば,標高表示も変化するので,常に注意
が必要である。
湿原では,流水あるいは滞水の有無,水深,凹状地
くぼ地,凸状地などの微地形も記録する。
(H2)と区分することもある。熱帯多雨林や樹高が高
い針葉樹林では時に超高木層(ST)がみとめられる。
低木層が2層の場合も低木第1層(Sl),低木第2層
(S2)と区分することもある。
階層が決定された後,植生高と植被率を各階層ごと
に記入する。植生高は最も高いものか,あるいは平均
4)各階層の出現種のリスト
植生調査地点内の全出現種を,同定し記録すること
は極めて困難なことである。芽生えや,花がないなど
で同定できなければ,より適当な時期に再度調査をす
る心構えが必要である。種の記録の際,調査者が位置
をとる。ある個体が特に突出していた場合平均の高さ
している所で,樹冠から草本層までをまず記録する。
を記録し,欄外に種名と高さを特記する。水生植物で
最初の記録が終了後,調査地内の移動を開始し,調査
は根元(水底)からの高さの測定値を記録する。その
者が歩く周辺の種を全てチェックする。調査区内すべ
際水深も忘れずに記録する。
てを踏査して調査し記録することで,種の見落としを
植生高は機械や道具なしに目測で行うことができる
防ぐことができる。調査区内を万遍なく歩き回り,全
が,初心者は樹高器を利用し,樹高測定のトレーニン
種をチェックする。つる植物はその達している階層に
グをする方がよい。様々な面積で調査するため,機械
記録する。高木層につるんでいる場合は高木層につる
や道具では総合的な判断が出来ないことが応々にある
植物を記録する。草本層に生育する小さな木は高木,
が,経験をっけさらに,目測が正確性に近くなること
低木に生長する種はできれば低木層にいれ,芽生えは
で測定可能となる。植被率は地表に対するその層の葉
草本層に入れる。着生種は,各層毎に記録する。ep.
の面積の比率で記録する。森林であれば樹冠の面積が
など略号を付加して記録する。
示される。
b.その他の記録事項
樹木では特に大きなものの胸高直径(DBH)を測
主な植物についての生活力の記録はBraun
−Blanquet(1932)より記録する(図5)。生物季節
および活力度もまた記録する:fl.開花,fr.結実,
定して記録する。その他にも枯死木や倒木の数および
あるいは言葉で結実とか枯死とかを種名の後に記録す
着生植物があ叫ば記録し,林床に対する様々な影響
る。さらにもし同じ条件の調査地外に生育している種
(放牧,下刈り,火入れなど)を記録する。
調査場所,調査年月日,海抜高度,方位,傾斜,水
も,さらに追加記録し(+・2)のように括弧でくくる。
後に表操作のときにこの挿入種が同グループに出現し,
深(水位があれば),地形条件(山頂,尾根,斜面:
ときには括弧をとって,グループ内に含めることも可
上部・中部・下部,凹状地,凸状地,谷部,平坦地,
能である。同グループに出現しない種であるならば削
くぼ地有,凹凸有,洪水域,沖積地,湿地,低層湿原,
ることもできる。最後に植生の断面図や配分図を描き,
高層湿原,沼地など),土壌条件(ポドゾル,褐色森
隣接群落との関連配分模式図も措く。
林土,黒色土,赤色土,黄色土,白砂,砂,有機質砂
土,灰色土,凝灰色土,シルト,瓦礫質,ローム土,
岩,泥炭,水中など),土壌の深さ(深い,浅い),土
1 ● よく発達しライフサイクル(種の生活環)を完成する
2(none)通常
壌湿度(乾・中・湿・過湿),地質条件(特別な岩質
3 く) 植生は繁殖可能
タイプ,例えば花崗岩,溶岩,蛇紋岩,石灰岩など),
4 0 偶然発生 ライフサイクルは未完成
水がある場合は水深を計測する,落葉層の堆積深,風
の強さ(強・中・弱),日射(強・中・陰),調査者や
5 00 時に発生するが繁殖しない
図5 活性度(BR.一BL.1932:1−4,1964:5)
記録者の名前などの必要な事項を記録する。調査者が
複数の場合,総合優占度・被度を与えた調査者名を最
5)総合優占度(totalestimate)と群度(sociability)
初に記録し,記録者は責任が最も重大であるため最後
総合優占度の概念はSchwicherath(1940)を基礎
に記名しアンダーラインなどでマークしておく。
としたBraun−Blanquet(1951)法による被度と数度
標高は高度計を使って測定するが器具は常に海岸や
の総合されたものである(表3,図6)。測定値は個
山頂(高度が分かる),あるいは地図上の等高線や標
人によって時にずれを生じるが,1段階程度の数値の
高のわかる地点で正確に合わせ調査地点を測定する。
差は,誤差の範囲に入ると考えてもよい。2段階以上
19
表3 総合優占度 Cover and abudance(Artmachtigkeit)
5:被度が調査面積の 3/4 以上を占めている。個体数は任意。
4:被度が調査面積の1/2∼3/4を占めている。個体数は任意。
3:被度が調査面積の1/4∼1/2を占めている。個体数は任意。
2:被圧が調査面積の1/10∼1/4を占める。または,それ以下であっても個体数がきわ
めて多い。
1:被度が調査面積の1/10以下であるが,個体数が多い。
+:きわめて低い被度で,わずかな個体数。
r:きわめてまれに最小被度で出現する。
脚注 数字の下に点線で示されているのは,どこかが欠けているか あるいは5よりオー
プンな場所があるものを示している。そのために数字の下にトソトでアンダーラインをい
れている。それぞれのレベルは 5:76%以上,4:5卜75%以上,3:26−50%を占めている。
表4 群度 Sociabilitylevels(Soziabilitat)
5:植生調査区内にカーペット状に一
面に生育している。
。4:大きい斑紋状。カーペットのあちこちに穴があいているような状態。
3:小群の斑紋状。
2:小群状。
1:単生。
5
4
2
1・1 2・1 2・ユI2・3
0r ユ●1 0ご 3・ユ
2
洋一二囁こ−−ヰ」ヰー1
SoC.;2
2−ユ
(1山IdlY.)
5 脚小川γ如上
1
十
r
5
4 帥一郎
園6 被度のパターン
4
3 ノ山…
の誤差は問題があるが,はとんど有り得ない。
群度は種の水平的な配列パターンを示している。小
さい植物で,単生している場合などは問題はない。し
三宝
2 …
かしばらばらに生育している樹木では群度測定では樹
冠の水平配分ではなく,樹冠の葉をつけた部分の水平
配分や群れぐあいなどを測定する。樹冠はこのように
空間を占める1単位となる。樹冠が完全に平面を覆っ
2
囲7 群度のパターン
山
20
ていれば群度は5である。もし調査地に1本か2本で
(1963)が記載しているが,植生調査表の中では,樹
あれば3・1あるいは5・3の総合優占度・群度を一
木は総合優占度のみ記載して群度が記載されていない。
般的に使う(図7)。調査区内に多くの樹木が生育し
同植生調査表中,草本植物については総合優占度・群
ていながら,ただ1種で1本の樹木が観測されれば1・
度ともに記載されている。本報ではじめて,野外にお
1と記録し,括弧で1本(1本)と記録する。散在し
ける森林調査の実用的植生調査方法が記載された。
ている優占種には数字の下へ点線を付け5や4とする
(Braun−Blanquet1964)。群度3および2は,小群
2.植生調査資料のまとめと植生分類
状,群状と規定されているため通常理解しにくい。わ
植生調査は,植物社会学を用いた総合的分析への出
かりやすい表現で群度を示すと,群度3はキャベツが
発点ではあるが,植生の一断面の記載に過ぎない。次
畑地に広がった状態であり,群度2はレタスが畑地に
の段階は多くの植生調査資料をまとめた表作業を通し
広がっている状態の群度を示す。この判定法は大場達
て各植生調査資料を比較することである。その結果は
之氏に1966年指導された方法だが,調査現場では,理
群集表あるいは群落表にまとめられる(図8,衰5)。
解しやすく有効な判断法である。一般に森林内におけ
このようにして種々の植生単位の標徴種および区分種
る植生調査法を記載した方法論はない。Scamoni
を決定して抽象化し,さらに具体的植生単位coena
国8 植生調査資料から完全な総合表作製までの手順表
21
表5 植物社会学的な体系構造
1tよ川d
仁王三三ヨ
オーダーとクラス
巨∃
圭封
肛皿群団
﹁﹂m組仙
コ現
標教程による質的分類
一
■一lll●ヽ
集 集
群 群
亜 変
____州・
’−一■−一 一
Lこ止
■・l
区分種による量を加味した下位区分
‡∵
二い・州・
典型的な部分(区分種のない部分)は区分種群の間にもっ
てくる。これを典型という。
標徴種およ
群集、亜群集、変群集、群団、オーダークラス、隋伴種の
順に種群を配置する。
種をはっきりと明示できなければそれを上級単位か隋伴種
に入れる。
L●_J J
仁て丁コ
頂
「:て ̄丁こ「
L二∴∴二鳥
りりr
い
罰
鞋ご] 鳥
与−蓑
∵∴一旗
﹁リJ
一
(Westhoff and van der Maarel1973)の体系化
には5皿方眼のグラフ用紙を使って室内の表作業を行
を行う。現在植物群落命名規約の検討が,チェコの
う。最近ではコンピューターを用いたデータ処理法が
Moravec博士を中心に委員会で討議されており,1997
多くのソフトで示されている。ここでは基本的作業を
年2月には検討会が開催されることになっている。最
示す。最初に植物の同定が終了した植生調査票を,一
後に印刷出版されている植物社会学命名規約では
緒に素表に組み入れる。素表の段階では,必ず植生調
(Barkman etal.,1986,植物命名規約委員会1995),
査票が正しく記入されたか再チェックが必要である’。
1つの群集を規定する植生調査の最少調査区数は10と
全ての生データが記入された後,再度データが正しい
している。植生調査資料は同じような植物群落構成あ
かどうかチェッ\クしておく必要がある。筆考がドイツ
るいは相観をもっ他の植生調査資料と比較し,そこか
のT亀Ⅹen教授を所長とする植物社会学応用研究所に
ら種々の標徴種や区分種が発見される。植生の総合化
滞在した1969年,ヨーロッパのミズゴケ湿原の素表を
22
組んだ際に,全ての解析が終了後,再度素表データの
列に記載される。各方眼はこのようにして種名と測定
チェックを行ったことをいまだ忘れられない。
値で輪郭がきめられるので,ここに総合優占度と群度
この素表は次に常在度表に並べ替える。常在度表を
を4階層に分けて埋めていけばよい(表6)。各方眼
Westhof&van derMaarel(1973)はpresence表
の上左にはTL層,右上にはT2層,左下にはS層,右
と称し,Mueller Dombois&Ellenberg(1974)
下には草本層を入れる。植生調査が1つ終わると各層
はconstancy表という。
の出現種数を数えて表の資料と比べる。調査表の種数
常在度表より,常在度のⅡ(21−40%)からⅣ(61−
(異なった階層で2重になったものを除く)を行の出
80%)までの種,すなわち21−80%出現する種群を選
現種数のところに記入する。各調査区内に出現した種
ぶ。これらの種群を使って部分表で再配列を繰り返す
数を入れる際には,必ず全層に出現した植物数を数え,
ことによって植生のタイプに相当する種の組合せを発
表に記載した数と一致するかチェックを行う。時に行
見できる。種の組合せを決定した後,区分表を常在度
を間違えることもあるので,このチェックは重要であ
クラス(表13)にしたがって作る。完成された表が総
る。その上でコラム数を数えると出現種数が確認でき
合常在度表である。部分総合常在度表と他の地域常在
る。
度表を1つの組成表で比較して最終的に群集が決めら
れる(群集表,表12)。さらに群集や上級単位の標徴
2つ目の植生調査資料は右の行に付け加え,新しく
出た植物種は左側の下へ付け加える。したがって表は
種を,すでに公表された他の調査報告と比較する。数
植物種の出現記載については上から下に,新しい植生
年前まで主に手作業により表操作が行われていたが,
調査資料は左から右に続く事になる。表作業が終了後,
コンピューターの発達により,様々なソフトが開発さ
さらに行ごとにオリジナルの植生調査資料と再チェッ
れコンピューターによる表作業が行われるようになっ
クをする。このようにして完成した素表で,すでに植
た。単に表作業を行うだけでなく,出来上がった結果
生調査資料とそこに出る植物種の間に類似性がみいだ
を,数量処理するためにはロータスやエクセルのソフ
せる。
トを利用した表作業が有効である。
コンピューター作業の際には,煩雑なこれらの作業
が少々楽になる(波田1985)。しかし,素表の段階で
1) 素表 Table of raw data(Rohtabelle:
は,記載誤記を常にチェックしなければならない。一
Braun−Blanquet1964,Ellenberg1956;Primary
度素表を組んだ後に,再度植生調査票と照合すること
table:Westh?ffandvan der Maarel1973)(表
が必要である。
6)
素表ではすべての種名を左側にリストアップする。
最初から一つの植生調査記載に1行を使い記載する。
2)常在度表Frequencytable(Stetigkeitstablle:
Braun−Blanquet1964,EllQnberg1956;“Presence”
野外での調査番号からすべてについて記録する。素表
あるいは“constancy”table:Westhoff&van der
に全植生調査票を記録後,新しく素表の通し番号をっ
Maarel1973)(表7)
けて,この番号を表操作中最後まで使うと,すぐに素
素表から常在度表を作成する。素表で出現種数の多
表に照合でき便利である。各行(植生調査表の記録)
少の順位をつけ,順位に従って植物名を常在度の高い
の最初に,種名の上の部分に以下のデータをまとめて
方から低い方に順番に並べ換える。すなわち各植物毎
入れる。すなわち素表通し番号,植生調査番号,調査
に出現回数を数え,回数の多い種から少ない種へ上下
年月日,調査地,調査面積,海抜高度,方位,傾斜,
に並べかえる。次に出現種数の少ない植生調査資料か
各階層の高さおよび植被率を記載する(表6)。植生
ら多いものへ順番をつける。新しい表には出現回数の
調査票を記録した際に,調査票に記録されている全出
少ない調査地から多い調査地に並べかえる。その際,
現種数を数え,表中に記録された全出現種を各階層ま
コンピューターを使わない場合は,紙テープに新しい
で含や数えて数量を確認する。全て記録されているこ
順番を書き新しい表のトップに合わせ,素表には素表
/J
とが確認された後,最後に各層のダブリを除いた調査
の中で同じ順番を書いたテープを合わせ,各行のデー
区内に出現した全種数を入れる。植生調査票にも種数
タを移動させて行く。このようにして,各列と各行を
を記入する。このことで調査票がすでに素表に記入さ
再配列させる。種の組合せをみるためには群度は省略
れたことが確認される。
これらが記入されると各植生調査資料は各1行に記
載されたことになる。それぞれの種の出現は表の横1
して作業を進めると仕事がしやすい。したがって,常
在度表では4階層のうちの最大の総合優占度(被度)
のみ書くことで簡略化できる。後の部分表までこの数
23
表6 素 表
調査地;1:葉山町堀田,2:横須賀市武山,3:境須賀 大桶
4:三浦市昆沙門,5−9:鎌倉市(5;小動神社 6,8,9:大
町 7:腰越)
各枠内の数字は4層を示している。
字を使い操作すると,比較的単純にグループがわけら
れる。
行と列の書換えと試行錯誤を繰り返すことで,種の
組合せが結果として合理的に表れる。このように,こ
れ以上細かく分類できなくなるところまで作業を続け
3)部分表 Partialtable(Teiltabellen:BraunT
Blanquet1964,Ellenberg1956)(表8∼9・)
常在度表から常在度Ⅱ(調査数の21−40%)からⅣ
る。植生の高さや標高,水深などの立地資料を付記し
ておくと種群のグループの普遍性をみるのに有効であ
る。作業中は,素表通し番号と出現種数を必ず記載す
(61−80%)の値をもつ種類を選び出す(表8)。種の
る。素表にもどってチェックができ,また調査地を検
組合せはこの範囲内に一致する種群を選び出す(少数
討できるからである。出現種数は,グルーピングした
のものやごく一般的なものを除く)。さらに組合せを
際に,異質か均質かをチェックする目安になる(図9)。
はっきりさせるために,同様に出現している種群を引
き出し,別表に作り直す(表8∼9)。種群の結びつ
4)区分表と総合常在度表 Differentiated table
きを見る際には,必ず互いに出現する場所が異なる種
and summary table (Differenzialtabelle,
群に注目すると明白な表になる。部分表作業も同時書
Ubersichtstabelle)(表10∼11)
換えの手法を用いる。すなわちテープを用い,書き写
してゆく。
区分表は種群のまとまりの概要だけを他の種類とと
もに表したものである(表10)。群落,群集を区分す
24
表7 常在度表
素衰通し番号
1頁現種数
タブノキ
アオキ
シログモ
イノデ
スグジイ
キヅク
ペニシダ
イヌビワ
ヤプニッケイ
ヤツデ
ヤプツ′ヾヰ
ヤプラン
クマワラビ
ヤマイ.クチシダ
テイカカ
5
25
4
+
4
田
3
2
9
十
岳
シュd
す亭
ヒサカキ
エノキ
ミゾシダ
ヰチジョウソウ
オオバノイノモトソウ
ビナンカズラ
1
イクビカズラ
オオバジャノヒゲ
マンリョウ
ナガバジャノヒゲ
イヌマキ
ヤプミョウガ
ネズミモチ
オオイタチシダ
リコウメンシダ
ツルグミ
イbハモミジ
由 H +
+
十
ツワプヰ
オニヤプソテツ
アズマネザサ
オカーバイポタ
づ一ツヅタ
カラスザ■ンショウ
アカメガシワ
十
十 十
十
十
十 ート + 6
十 +
+ 十
6
+ 2 山
ロ 切 5
2 十
5
口
+ 5
+ +
+ 十 十 5
十 十 十
+
⊥
5
2●
4
十
十 + 4
十
口 十
+ 十
十 ト
2 十
十
十 +
十
十
十
十 ・十
十 +
+
十
+
十
+
1.
十
十
十
+
+
十
十
3
3
十 十
+ 宮 ̄
十
1 2
+ 2
十
+
十
十
土 岬
十
十
土
十
」七 +
十
1 ̄
土
十
+
十
+
十
十
+
u
▲イワガネソウ
十
マテ′ヾシイ
量
十 十
十
.⊥
+
+
土
十
土
土_
‖
+ 十
十
十
十 十
H
十■
十
十
オオイタチシダ
リョウメンシダ
+ 2
T
十 H
十
十
十
+
+
十
イロハモミジ
十 2
十 十 2
3
十
.⊥
ツルグミ
㌻
十
十
土一 _土、 土{
+
カラタチバナ
3
十 十
入乙 土、
十
+ +
十 十
十
十
土、
ヤマグワ
フジ
イクビカズラ
カ ̄力・バジャノヒゲ
マンリ ョウ
ナガバシャノヒゲ
イヌマヰ
ヤプミョウガ
ネズミモチ
萱
十 十
+
十
+ 十
ホウチャクソウ
ナンテンショウ属の一種
+ 十 十
+ 十
40
3
+
キブシ
ムクノキ
十 3
口
2
6 8 ト
ムラサキシキプ
+
+
山
3
30
2
十
カ・カーシマザタラ
盲完バウツギ
2
+
+
5 4
キチジョウソウ
カ・カ・バノイノモトソウ 十
ビナンカズラ
十
マサキ
十
イヌガヤ
マルバグミ
十
口
2 口
十 3 7
+ 2 + 2 + + 2 7
+ +
十
+ 2
7
山 n 十 3
−2
口 十
+
十
十 十’
十 7
十
十. 十
十
*表7から常在度の高いものを除外
2
+
十
十 十
+
′〉 ∠■
2
+
十
十
2
+
十
十
㌻
2
十 十
+
2
十
2
十
十
口
山
+
十
十
*調査区の最高被度を使って比較している。
*出現1回の種は省略されている。
表9 部分表
2
十 十
*出現種全てを含む
**出現回数
+ 2
十 + + 8
2 n H n 十 十 用 十 口 十 山
十
イヌガヤ
ルバグミ
ォォシマザクラ
マ蒜バウツギ
、シワプキ
オエヤプソテツ
アズマネザサ
カ・オバイポク
ナツヅタ
カラスザンショウ
アカメガシワ
ムラサヰシキプ
ヰプシ
ムグノキ
イワガネソウ
マテパシイ
ホウチャクソウ
テンナンショウ属の一種
カケタチバナ
ヤマグワ
フジ
+
素衷通し番号
出現種数
ケヤキ
ヒサカキ
エノキ
ミゾシダ
口 3 十 十 2 + 2 十
2 十 十 十
カブダチジャノヒゲ
㌻ズキ
モチノキ
トベラ
カクレミノ
表8 部分表
7 2 3 9 6 8 山
27
30 3() 31
ロ 8 田 4 ,5 ロ 3 生
2 + 4 2 4 2
+
十
2
2
十
2
+
2
+ +
2
2
+
2
素表通番号
出現種数
カーオシマザタラ
ヤマグワ
マテバシイ
4 3 2
8 5
26
30 40
+
十 +
3
ホウチャクショウ
テンナンショウ属の一種
ヰチジ ョウショウ
十 +
十 +
3 2
イヌガヤ
オニヤプソテツ
アズマネザサ
マル′ヾウツギ
ツワブキ
オオバイポタ
ケヤキ
十
2
*表8から組みかえ
十
+
十
十
十
+ +
十 +
十 十 十
十 十
十
十 +
3 2
十 +
+
十 十
ヒサカキ
エノキ
ミゾシダ
オ・カ・ノイノモトソウ
ビナンカズラ
マサキ
マルバグミ
7
十
十
十
十
十 十 十
十
十
十 十
十 +
十
十 +
十
25
表11群落総合表(総合常在度表)
表10 区分種表
素表通し番号
調査原票番号
出現種数
区分可能種
オオシマザクラ
田 50 田
40 垂 j宣 Z;
_3l
ヱワ
群落区分
調査区分
平均出現種数
イノデ
ケヤキ
ミズキ
クマワラビ
オニヤプソテツ
トl 卜l
ヤマグワ
A I〕 C D E
3 14 6 34 29
29 33 313143
3 Ⅲ V
2 Ⅲ Ⅱ
2 皿 ⅠⅡ
2 Ⅰ Ⅲ
・ Ⅲ Ⅲ
オオシマザクラ
ヤマグワ
テンナンショウ属の一種
[u I ・・
ⅤⅣⅢⅡ
ⅤⅢⅢⅡ
Ⅱ + Ⅰ・
ヤブコウプ
アカガン
フジ
Ⅱ [] +・
l t − ■■ t−一一
一 ︰ⅣⅢⅢm二
キチジョウショウ
アズマネザサ
カ ̄カーバイポク
マルバウツギ
1
2
3=2
3
1
1
2
1
●
ⅢⅢⅤⅤⅤⅣ
3
● 十 十
﹁■■1−t●﹂
◆
1
■ ● ●
◆ⅤⅤⅤⅤⅣⅣⅤ
3
テイカカナラ
●
3
ヒサカキ
ペニシダ
ⅤⅤⅣⅣⅣⅤⅤⅤⅤⅤⅢⅤⅤ
ⅤⅣⅣⅣⅢⅤⅤⅤⅤⅣⅤⅣⅢ
イロハモミジ
●
●
ヤブツバキ
ヰヅク
r
●
ャブニッケイ
●
●
モナノキ
カクレミノ
ヤマイクチシダ
シログモ
アオキ
r
◆
クプノキ
スダジイ
●
●
カヤ
r
︳
●
アラカシ
ヒイラギ
ウラジロガシ
呵Ⅳ血叫︰ⅤⅤⅣⅣⅣⅤⅤⅣⅣⅤⅤⅤⅤ
クロガネモチ
26
表12 群集表(群落表)
】 2 3 4 5 6 7 8 9
菜裏道し番号
調査原票番号
T−LIT・4T・4T・4T・4
104 65 68 24 7 6 3 4 5
’79’79り9’79−72■72,72,72,72
11 7 7 5 111I1
2124 25 29 4 4 5 5 4
2003003006002001餌400140160
20刀0200 48 80 70 20 60 30
日U S NV NE SE 柑 N ・HE
.10 20 2515 30 35 35 ・ 2
181216161512141311
調査年月日
調査面胡(爪Xm)
r毎抜高度(m)
方位
傾斜()
高大第一層(Tl)の高さ(m)
高木第一盾(Tl)の崩被率用)
95 95 85 80 70 80 80 90 80
7 8 9 8 9 6 8 ・ −
高木誘二層(Tl)の高さ(m)
高木第二層(Tl)の機敏率(封
20 30 20 40 40 40 30 ・
23.5 4 3 4 3 4 3 4
30 60 50 40 那150」柑 70 50
0・30・30.60.60.80.70.40.50.8
50 30 S 50 50 30 50 15 30
2G 30 3010 30 35 25●3127
低木層(S)の高さ(m)
低木層(S)の捕被率(%)
草水屑(】t)の高さ(m)
草木暦(H)の柏被率は)
出現種数
十・2
1 2
1 へノー
+ ・‡2・21・2 +
1・21・22・2l・2 + +
・・1
1・1・・ 土
l・21・2・
2 2
2
2 3
2
2
T T ‖−〓H T Sh ‖11
T
3・25・53・33・24・34・34・35・42・2
l・2・l・1・
T
T
十
●
S
︼2
l=‖
・・■−−●3土
土十.2∴.
+一
川−‖n
‖‖−
S
1・いいい戸・−
+
T
±...+
2
+,●
S
−−−T
り〓1
1−.
■t■
T. T
ホウチャクソウ
テンナンショウ屈の一題
ヰチジョウソウ
アズマネザサ
オズ ̄パイポク
ツワプヰ
イヌカーヤ
‖−‖
H
5
T
H︻S
マルバウ7ギ
“
カ ̄エヤプソテツ
つ︼
■
2
2
2
Jへ
2
+
3
2
り・
4●4●
2・2・
2
●
◆
ユ丁
▲・
●
・
+
3
つー
・
●
●
2
2
2
・ナ
1
l
・T
・T
2
1
▲T
●
2
2
●
▲十
●
2
3
・丁
2
▲一
1
2
●
▲・
2
一丁
●
▲−
▲T
▲一
▲・
▲−
2
●
▲T ▲・
▲・
●
・J一
・†
⊥丁.
●
ヽ
●
・T
●
T
■爪﹁
●2
l・12・12・1+
32
●
4−
−−
▲−
●
・2・21・2
3●3 十 2・2 ±
2・2・
シャガIl−−2.ナンテン肛十;7:
サンゴジュT2−けヰリスゲH−+:
さ‥マユミS−÷.ニットコS−+;9ニ
ヒメカンスゲ1卜十. ヤマツツジIト†.
調査地:1:葉山町矧乱2:横須賀Hi武山3:横須賀市大楕血
4:三浦市昆沙門・5−9:鎌倉市(5:小勤利吸:6.8,9‥大恥7:渡越).
2
3
3
3
T︻
● 十 +・21・2
1・l・・1・2
S
ウマイスズクサH−+:3‥トコU−ト上
カンアオイ打−+;4;ヒメェズリハS−十−
ウラシマソウIH・ヤプソテツH−11・
ー1
●
●
エ▼
2
−●
1
3
1
つ一つー
つ︼
2
1・1
3
3
1
T‖︶T
スダジイ
2
アメ・キ
出現l回の機‥1‥フトウカラT2一Ⅰ・S−+川・づ3,ヤプニンジンIl−1.イヌショウマ
ネムノ辛目−+・ハラン什一+;2=7カガンTl−11・…2−アケビ…;5:スギTl−1.
イポクノヰT2−+・7オツケラフジH→・オオノ アラカシ5−+ コクサギ5−l.
2.
れちS=∼=−−S===S‖‖T
上級単位の燻徴補
および以分灘
ソロダモ
︼
2
▲l
之
27
る種群は表の上方に書き,その他の種は出現回数の順
にその下へ書く。
総合常在度表は区分表から常在度(表13)を基礎に
植物および
植生形態
森林群落
作成する(表11)。各グループの常在度Ⅱ以上(41%
以上)の種が識別種となる。各種群の数は B6tcher
低木群落
常緑広葉樹
混生林
火入れ
洪水
+落葉樹
常緑針葉樹
別な種群が生育し種数が他と異なり,一回出現種数が
落葉針葉樹
増加するので,このような植生調査資料は群集表内で
耕作
混交樹
は取り除き,最終的には論文中に記載すればよいと指
(針葉樹+広葉樹)
草本植物群落
浸食
1年生
多年生
度表であり,他方は広域に調査された植生調査資料を
高茎
1表にした広域的総合常在度表で,群集や上級単位の
低茎
認定に使われる。常在度の簡易換算表を,表13に示す
浮葉
(p.00)。
伐採
常緑広葉樹
あるいは何らかの影響を受けている立地の植生には特
総合常在度表は2種類ある。1つば局地的総合常在
定期的撹乱
落葉広葉樹
法(図9)で比較する。T弘Ⅹenは断片的な異質な立地,
導した(図9)。
植生の生活形
挺水
水生植物
抽水
沈水
5)群集表 Association table(Characterisierte
Tabelle,Assoziationstabelle:Ellenberg1956, 森林群落と草原群落は同じクラスに所属しないこと
Braun−Blanquet1964)(表12)
総合常在度表から標徴種や区分種を群落体系に従ら
て群集,亜群集,変群集,亜変群集および小グループ
に配列したのが群集表である(表12)。群集は植物社
が原則である。例外的には雪崩地に生育するダケカン
バ林が,林床に生育するミヤマキンポウゲで代表され,
草原の植物群落と森林が共存している(ダケカンバー
ミヤマキンポウゲクラス)。しかし湿地のハンノキ林
会学,植生学の基本単位であり群団,オーダー,クラ
はヨシ草原の種群を林床に多く持つが別である。ヨシ
スの基盤として位置する(図10)。群集表では時に標
は他の中性立地,乾燥立地の森林との区分種にはなる
徴種が下位区分種の1つとなる事もある。標徴種は常
がハンノキ林の標徴種にはならない。日本の夏緑広葉
に多数とは限らず,ときには1種のみの場合もあるが
樹林であるコナラを主とする二次林を例にみると,ク
下位区分種の識別は容易である。区分種は常在度41%
ヌギーコナラ群集は下草刈りによりススキ草原構成種
以上でなくてはならない。群集表の種群の順番,植生
を多く含む。しかしススキ草原構成種は標徴種や上級
調査資料の順番が完成したら素表から資料を清書する。
単位の種とはならない。このような種群は伐採,下草
さらに最も基礎となっている植生調査資料とあわせて
刈りや火入れ等の人間の管理の結果として侵入し,生
再チェックしなければならない。
育している。クヌギーコナラ群集はススキ草原起源で
はない独自のスゲ属の種や他の草本植物,木本植物に
6)植生分類と記載
基本単位である群集の本体は何かを決めることが困
難な場合がある。この場合には出来るだけ多くの地域
より特徴づけられる。しかし,ススキ草原起源の種群
は定期的管理を示す立地の反映として,亜群集や変群
集などの下位単位の区分種として認識される。
から集めた均質な植生調査結果を表作業で比較して決
それぞれの植生の構成種群にしたがい質的構成種群
定する。少なくとも日本全国と比べれば世界の各地の
の共通性から,同類の植生単位が群落体系として,系
記載資料と比較可能になる。
統化できる。たとえば木本植物群落では常緑広葉樹林
優占種の植生内における生活形もまた群落を分類す
る手掛かりとなる。これは以下に要約される。
の群落体系と夏緑広葉樹林の群落体系がまとめられる。
植生の基本的単位は,群集である。群集のまとまりが
さらに上級の単位の群団にまとめられる。群団は,よ
り広い生育地をもつオーダーおよび,最終的にはクラ
スにまとめられる(図10)。これらの種群は,一般的
に一定の類似した環境条件下や立地に出現する。
局地的な地域,すなわちローカルな地域の植生調査
28
A
日
c
・1 0 ・
′
′
−
群灘/
紺/
・15・
欄■耕1肝】絆
「絆骨〝
1脾1肝1餅餅1絆/
耳胡Ⅷ
・20・
劇:餅,餅1紗/
耳骨昔甜/
劇1絆,好/
︰25・
「■−.項り」/仰脚∬′樹 ぷ欄柑鮒紺甜鼎劇 朋
′
Il
/
・38︰・︰3510
′
′
′
劇1財1絆〝
甘許茸脚
J好/
1肝
勝】絆
〟〝
〃
〝
∬
,押肘
船脚
/
,碑〝
亜ケ
〟
〟
〝
/
謝査数 228
除外率 6.1%
平均種数 17
123
118
8β% 10.2%
17
22
図9 均一な植物社会学的表における均一調査選定方法
語尾変化
植生体系
クラス(群鋼) class(Klasse)
−etea
例
fagetea crenatae
ブナクラス
(群目) order(Ordnung)
オーダー
一etalia Saso−Fagetalia crenatae
ササーブナオーダー
alliance(Verband)
群団
ーetion Sasamorpho−Fagion crenatae
スズタケーブナ群団
association(Assoziation)−etum Fagetumcrenatae−japonicae
群集
ブナーイヌブナ群集
subassociation
亜群集
−etOSum Tsugetosum sieboldii
(Subassoziation)
ツガ亜群集
(typicum:典型亜群集)
variant(Variante)
変群集
Variant of Sasa nlPPOnica
ミヤコザザ変群集
亜変群集
subvariant
(Subvariante)
ファシス facies(Fazies)
国10 植生体系と植物社会学的単位の命名
typicalsubvariant
典型亜変群集
facis of乃′rOla]qPOnica
イチヤクソウファシス
29
表13 常在度クラス決定のための出現種数表
r + Ⅰ Ⅱ
1
1
5 6 -
Ⅲ・ Ⅳ
2
2
3
3
Ⅴ
4
4 5− 6
1
2 3− 4
5 6− 7
1 2− 3
4 5− 6 7− 8
1 2− 3 4− 5 6・7 8− 9
7 8 9 -
10 1
2 3− 4 5− 6 7− 8 9−10
12 1
2 3− 4 5− 7 8− 9 10−12
凹 1 2 3− 4 5−6 7・8 9rll
1
14 1
2 3− 5 6− 7 8−10 11−13
2 3− 5 6− 8 9−1112−14
15 1 2− 3 4− 6 7・8 9−1213−15
16 1 2−3 4−6 7
17 12− 3 4・6 7−101卜1314−17
18 1 2− 3 4− 7 8−10 1卜1415−18
19 1 2
20 1 2 3− 4 5− 8 9−1213−1617− 20
2l
22
1
1
2 3− 4 5− 8 9・1213−16 17− 21
2 3− 4 5− 8 9−1・314−1718− 22
24
1
2 3− 4 5− 910−1415−19 20− 24
23 1 2 3− 4 5− 910−1314−1819− 23
25 1 2 3− 5 6−1011・1415−20 2卜 25
26 1 2 3− 5 6・101l−1516・20 21・26
27−・ 1 2 3− 5 6−1011−1617・2122・27
.28 1 2 3− 5 6−1112−1617−22 23− 28
29 1 2 3− 5 6−1112−17 18−23 24− 29
30 12− 3 4− 6 7−1213−1819・24 25− 30
31 12■一 3 4− 6 7−1213−1819−24 25・31
32 12− 3 4− 6 7−1213−19 20−25 26− 32
33 12・3 4− 6 7・1314−19 20−26 27− 33
34 12− 3 4− 6 7−1314−20 2ト27 28− 34
5
56
57
58
1−2 3− 5 6−1112・22 23⊥33 34−44■ 45・56
1−2 3− 5 6−1112−22 23−34 35−45 46− 57
ト2 3− 5 6−1112−23 24−34 35−46 47− 58
59 卜2 3−5 6−1112・23 24−35
6℃ 1−3 4− 6 7・1213・24 25−36 37−48 49−60
61 l−3 4− 6 7−1213・24 25−36 37−48 49− 61
62 卜3 4・6 7−1213−24 25−37 38−49 50−62
63 1−3 4− 6 7−1213−25 26・37 38−50 51− 63
64 l−3・4− 6 7−12 13−25 26−38 39−5152− 64
65 1−3 4− 6 7・1:∋ 14−26 27−38 39−52 53− 65
66 卜3 4− 6 7−1:)14−26 27・39 40−52 5:】− 66
67 卜3 4・6 7−13 14−26 27−40 41−53 54・67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
卜3 4− 6 7−1314−27 28・40 4卜54 5ち− 68
l−3中 6 7−13 14−27 28−41 42−55 56− 69
l−3 4・7 8−14 15−28 29−42 43−56 57− 70
1−3 4− 7 8−14 15−28 29−42 43−56 57− 71
1−3 4− 7 8−14 15−28 29−43 44−57 58・72
1−3 4・7 8−14 15−29 30−43 44−58 59・73
l−3 4・7 8−14 15−29 30−44 45一59 60−74
ト3 4− 7 8・15 16−30 31一明 45−60 61− 75
l−3 4− 7 8−15 16−30 31t45 46−60 61− 76
77 卜3 4− 7 8−15 16−3031−46 47−6162−77
78 ト3 4− 7 8−1516−31 32−46 47−62 63−78
79
80
卜3 4− 7 8−15 16−31 32−47 48−63 64− 79
ト4 5− 8,9−16 17−32 33−48 49−64 65−80
81 卜4 5− 8 9−1617−32 33−48 49−64 65−81
82 1−4 5− 8 9−1617−32 33−49 50−65 66−82
83 卜4 5− 8 9−16 17−33 34−49 50−66 67−83
84
1−4 5− 8 9−16 17−33 34−50 51−67 68−84
35 12−3 4−7 8−1415−20 2卜28 29−35
85 卜4 5− 8 9・1718−34 35・50 51−68 69・85
36 12−3
8
87
88
37 12− 3 4・7 8−1415−22 23−29 30− 37
138 12− 3 4− 7 8−1516−22 23−30 3卜 38
39 12− 3 4− 7 8−1516−23 24−3132− 39
40 1−2 3− 4 5− 8 9−1617−24 25−32 33− 40
41. l−2 3− 4 5− 8 9−1617−24 25−32 33− 41
42 1−2 3− 4 5− 8 9−1617・25▲ 26−33 34− 42
43 l・2 3・4 5− 8 9・1718・25 26−34 35− 43
44 1−2 3− 4 5− 8 9・1718−26 27−35 36− 44
45二 卜2 3− 4 5− 910・1819・26 27−36 37・45
46 卜2 3・4 5・910−1819−27 28−36 37−46
47 卜2 3−4 5−910−1819−28 29−37 38−4†
48 ト2 3・4 5− 910−19 20−28 29−38 39− 48
49 1−2 3−4
50 ト2 3− 5‘6−101卜20 21T30 3ト40 41− 50
51 卜2 3− 5 6・1011−20 2l−30 3卜40 4卜 51
52 1−2 3− 5 6−101ト20 21−3132・4142− 52
53 1−2 3−5 6一川1卜2122−3132−42 43− 53
54 ト2 3
55 ト23−.5 6−1112−22 23⊥32 33−44 45− 55
1−4 5− 8 9−17 ほ−34 35−52 53−69 70・87
1−4 5− 8 9−1718−35 36−52 53丁70 7卜‘88
89 l−4 5− 8 9−17 18−35 36−53 54−7172−89
90
91
92
93
l−4 5・− 910−1819−36 37−54 55−72 73−90
ト4 5・910−1819−36 37−54・二。55一了2 73−91
1−4.5− 910−1819・36 37・55 56−73 74−92
l−4 5− 910−1819−37■ 38・55 56−74 75・93
94 卜4 5− 910−18 19−37 38・56 57−75 76−94
95
1−4 5− 910−19 2(ト38 39−56 57−76 77−95
由 1−4 5− 910−19 20’−38,39・57 58▼76 77−96
97
.ト4 5− 910・19 20−38 39−58■ 59−77 78−97
98 ト4 5−910−19 20−39 40・58
99
1−4 5− 910−19 20・39 40・59.60−79 80− 99
100 卜5 6−101卜20 2l−40 41−60 6卜80 8l−100
*植生調査が4以下の時、常在度クラスは決定できない。
この場合は実際は上のようになる。
100−81% V
80−61% Ⅳ
60−41% Ⅱ
40−21% Ⅱ
20−11% I
lO−6% +
5% r
30
資料は,表操作により単位を決定することは容易であ
る。立地や人の影響などが植物の種群のグループを形
成しやすい。広域の植生調査資料と比較する場合には,
地域のミクロな調査結果が明確に特徴づけられないこ
2.植生国
植生図は,植物社会学者が各種の研究から得た成果
を,総合的観点にたって実際にわかる言語に翻訳した
とが多い。広域で比較することにより,さらに抽象化
ものである(Ellenberg,H.1956)。植生図はその目
され,地域全体としての特徴が広域資料より示される。
的,性格により多くの類型が見られる。基本的には,
植生単位を決定する際には広域的な植生調査資料と比
植生図からは,その土台となっている土地,気候,土
較検討することば極めて重要である。
壌,地形,人為的影響などの環境要因を,植生の側か
さらに,標徴種をもたない群集が規定されているこ
とにも注意したい。植物社会学の命名規約では,必ず
ら判定することができる。優れた植生図は,さらに,
今後の科学の発展に寄与するとともに,自然保護・環
標徴種があるべきであると規定されているが,南限,
境保全・合理的な土地利用,同時に林業経営・農業経
北限あるいは山岳の標高ぎりぎりの場所では,隣接群
営・造園管理・緑地復元などの隣接諸分野への応用や
落との区分種をもつが,上級単位の種群から構成され
経済学的考え方の基礎にも利用可能である。
る植分が均一的に分布している。ドイツのLemnetum
minor・(コウキクサ群集)や日本のヤプコウジース
1)植生国の歴史と現在
ダジイ群集などがこれにあたる。人による破壊や遷移
植生図は初期の頃は植物区系図や栢観図のように,
途上の群集はしばしば種構成が貧弱になるが,これは
地域のフロラをまとめた,あるいは相観的な樹種によ
群集の断片とかフェーズ(相)と呼ぶ。クラスの標徴
り描かれていた。Ktichler(1988)は植生図の歴史的
種の中には,単純な一種群落を形成することがある。
スケッチの中で15世紀の始めには林業関係の必要性よ
例えばホロムイソウクラスの標徴種であるヤチスゲや,
り,森林の相観的植生図が描かれ始めたことを述べて
ヨシクラスのヨシがその例である。このようなどこに
いる。
でも生育している広域分布種1種の単純な群落はただ
ヨーロッパの概観を知るために植生図の必要性が論
一種で群集に規定できない。あくまでも断片であり,
じられたのは1930年ケンブリッジで開かれた国際植物
群集とはならないとT弘Ⅹenは指導したが,現在国際植
学会でとりあげられたのが最初である(藤原・宮脇
生学会のEuropean field surveyグループでは,群
1988)。各国から集まった植物地理学者の委員会でと
集として扱ってまとめようとしている。1997年2月に
りあげられ(Hueck1931,1932,1934,1939),Fischer
開催される群集命名規約第3版委員会での討議課題と
(1933)などが初期の植生図を措いている。さらに1935
なるであろう。
年のアムステルダムにおける国際植物学会では,委員
植物社会学の命名について2版の報文でBarkman
会に新しいメンバーを補充し,試作として二つのタイ
et al.(1986)は重要な原則を提示している。
プの植生図が提出された(Horvat,Ⅰ.1963),自然植
(1)ある特定の記載,位置,ランクをもつ分類された
生が復元されたいわゆる極相植生図と,現実に即した
植生にはただ1つの正確な名称だけを有するべきで
自然植生と人為的影響下の植生を含めた植生図である。
ある。
当時はまだ相観と生態学的な地図の考えからきており,
(2)syntaxonの正確な名称は植物社会学命名規約に
準じ,先取権の原則にしたがって最初に印刷する。
(3)syntaxonの名前の応用についてはその命名タイ
プによって決める。
Rilbel(1916)やBrockmann(1935)の説が基盤と
されていた。まだ植生図の原理,理論が確固としたも
のでばなかった。その後Oberdorfer(1936,1938),
Faber(1937−39),Schlenker(1940)はか多数の未
(4)群集はsyntaxaの階層制の基礎単位である。
印刷の植生図がつくられた。ドイツでは1939年に帝国
(5)命名の法則は厳密に守ること。
中央植生図研究所がハノーハ一につくられ,本格的な
衰14に,T弘Ⅹen教授がメモで示した群落の記載のモデ
植物社会学を基礎にした数百枚の植生図が,創立者で
ルを示す。英訳がFujiwara1987に記載された後,中
あり初代所長のR.Tiixen教授を中心につくられた。
村がドイツ語版より日本語訳を示している(中村
ヒトラーの時代(1933)から植生図をもとにアウトバー
1989)。
ン沿いの緑化・境界環境保全林の形成が行われている。
第2次世界大戦後はフランス・ベルギーの中央植生
図研究所をはじめ,その後オランダ・イギリス・東ド
イツ・イタリア・チェコスロバキア・ポーランドなど
31
表14 Tiixenによる植物群落記載のモデル
群落分類概観(植生分類学)クラス,オーダー,群団
群集の名前と命名者
表(随半種は常在度Ⅱ以上)(一般名と索引)(使用した資料および著者と共同研究者)
異名(改名をした理由)
研究の歴史(文献)
相観(生物相),景観上の位置
群落形態(一般名はここへ):相観,植被率,調査面積,最小面積,構造
種の組合せ
優占種,群度,活力度,平均種数
高常在度の種,標徴種
季節的相
調査の適当な季節
根系の構造
生活形
種のスペクトル(量的な記載)(クレメンツの指数)
地衣類,キノコ類(必要な文献から),着生植物
調査地域の分析
全出現種,必要なサンプル番号
相同性(平均種数/全種数×100)
生物共同体:動物,地中生物,生物,競争者,(動態)
分布:地図(日本,アジアなど),全地域,分布域の模式図
隣接群落境界の形態
潜在自然植生域との関係
シグマ群集(総和群集)
動態 盛衰
一時的群落,持続群落
自然および代償植生(自然度や人為的影響の程度)
一次あるいは二次遷移の位置
種の構造量(Bauwert,Br.TBl.)
分散生物学
飽和状態,他の帰化種の侵入状況(侵入種の%および集団量丁弘Ⅹen1965)
土地利用の周期,開放域の破壊状況,森林伐採.
地史学 群集の花粉分析による歴史
群落の活力の度合い(中生代の生態 Braun−Blanquet1964p.11)
\
その時点の景観上の位置
生態 決定的要因
一般的気候(相観,地域的な気候,風,雷,光量)
土壌水分,浸水(立地,林床)
結氷
凰
母材,土壌(断面)養分,塩分,窒素分,アンモニア,有機質潅漑
人や動物:種蒔き,植栽,火入れ,施肥,耕作ないしは土壌の移動,構成,踏み固め,排水,
指標度(容量)
生産量:生物学的な土壌活力,生物量,生産量(経済量),有毒植物
植物相
形態
chorologicalその偏り
動態
生態
生産
自然保護:植林
景観保護,耕作(生物栽培),指標植生(経済的度合い),刺激,公開質問
簡単な文献:記載され印刷されている論文,最も重要な論文の所在。この群集は日本においては誰によって19何年
に記載されている,あるいは末記載。どの著書の文献かも付記する。
1\
\1
群落分類学 亜群集(変群集),平均種数
32
代償植生
自然植生
(現在の潜在
時間の要素
自然植生)
→ 人間の干渉
囲11植生と人間・時間との関係(藤原・宮脇1988)
ヨーロッパ各国で多くの植生図の研究業績が出版され
分であるが,小縮尺で,植生の基礎がある研究者によっ
ている。とくに国土全域を見る目的で措かれる小縮尺
てはBlasco(1988)等の熱帯の植生分類のように,
の広域植生図は,トゥルーズフランス国立植生図研究
的確に把握できる。SPOTやNOAA他目的に応じディ
所のGaussen(1938)によるアフリカ大陸の植生図,
ジタル データとグランド トゥルースを組み合わせ
西ドイツのWalter(1964)による相観とクリモグラ
ることで,より客観的な植生図が期待できる(藤原
フを組み合わせたアフリカ大陸の植生図,東ドイツ科
1996)。
学アカデミーやi植物社会学者・生態学者を動員して作
製した東ドイツ植生図,チェコスロバキア科学アカデ
日本ではもっとも古くは本多静六(1912)による日
本森林帯図,早田(1910)の富士山植群図,有川
ミー作製のチェコスロバキア全域潜在自然植生図など
(1935)の蔵王山植群図などがあるが,植生図の名を
があげられる。さらに1960年代に入ってからは,アメ
つけたのは,鈴木(1954)の尾瀬ケ原湿原植生図,尾
リカでもK弘chler(1965)らにより全国土の潜在自然
瀬ケ原周辺森林植生図が最初である。1960年代に入り,
植生図が完成している。ソ連ではSochav中こより多
鈴木時夫,吉野みどり,山崎敬,宮脇昭,堀川芳雄ら
数の植生図の成果が出されている。西ドイツの国立植
により次々と各地で発表され,1969年代の文化庁によ
生図研究所(国立自然保護・景観生態学研究所)でも
る日本全国の植生図の年次印刷から,1981年,1982年
全国土の潜在自然植生図(1:200,000)を作製してい
の環境庁による現存植生図の印刷にいたるまで,1983
る。1959年に再度国際植生学会シンポジウムでこれら
年までにおよそ800以上の植生図が印刷されている。
植生図についてとりあげられ,国際植生学会で19カ国
そのうち379は宮脇らにより1964∼1983年に印刷され
が集まり討議されている(Tiixen1963)。現在ヨーロッ
た植生図である。その後環境庁による植生図見直しの
パの植生図を同一凡例で措くことを目的に,チェコの
機会はなくなり,1996年現在までに全国的にも100以
故Dr.Neuhausel博士,フランスのOzenda博士を中
上は増えていないものと考えられる。
心に作製・印刷が進んできた。
世界の植生図はSochavaやSchimper(1898)の
Formation(基系)により作製されている。最近で
はリモート センシグの技術が発達し,また衛星写真
2)埴生国の種類と応用
植生図は,古くはA.Ⅴ.Hunboldt(1805∼1816),
Drude(1885∼1928),Brockmann−Jerosch(1907∼
が正確に撮影されるようになり,ディジタル化による
1934),R弘bel(1912∼1939)により相観を主とする
植生図化が試みられている。残念なことに植生研究者
方法や優占種古∈よる方法などで作製されていた。
との共同研究がまだ十分ではなく,凡例の討議が不十
Braun−Blanquet,Tiixenらにより植物社会学が確立
33
[車重垂]
・]±二亘
(大)
(小)
人間の影響のかかわり度
神社林・屋敷林
耕作畑地
雑草群落 ←
自然に近い形で
残されている
施肥
耕作
図158
クヌギ・コナラの雑木林
オオバコ群落 ←
相観を主体とした
自然林と代償植生
15∼25年に一度の伐採
自然林
シラカシ林,シイ林,タブ林
植林,下草刈り,下枝打ち
などの管‡聖
よく踏まれ
の関連(藤原原図)
(矢印の方向は
1∼3年に一度の
刈り取り.あるいは
火入れ
馬の放牧
繁な刈り取り
ゴルフ場など
シバ草原
人間の影響の
大きさを示し
スギ・ヒノキ植林
マツ植林
モウソウチク林
ている)
ススキ草原
図12 自然植生に与えられる人為的影響および管理の度合と代償植生の関連模式(藤原・宮脇1988)
イノデータブノキ群集
シログモーケヤキ群落(二次林)
ニヤアカシア植林
ヒノムカショモギーヒメスイバ群落
(砂地の 跡群落あるいは耕作放 群落)
カラスビシャクーニシキソウ群集
クズーエビズル群落(マント群落)
カゼクサーオオバコ群集
ヤマブワーチガヤ群落(二次草原
(踏跡群落)
シバ群落 (二次草原)
図13 自然植生とその群落環(山形県酒田市におけるイノデータプノキ群集を例として;宮脇他1983,一部改変:藤原・宮脇1988)
されてから,種の組合せを主体とした群集・群団ある
自然植生(natnrlicheVegetation;naturalvege−
いは,その下位単位を基礎とした植生図が1939年釆措
tation)は,人間の影響をいっさい受けないで,気候・
かれてきた。
土壌・地形・水分などの自然環境要因に適応した植物
群が,環境や植物間で相互に働きあいながら成り立っ
(1)現存植生図 Actualvegetationmap;Realen
Vegetationskarte
現在,様々な自然環境安臥地史的要因,生物的要
ている,自然環境要因の総和として,その土地でもっ
とも発達した植物群落を示す(表14)。自然植生は,
地球上には,現在はとんど残されていない。日本でも
因,とくに人為的活動との総和として,それぞれの土
亜高山や高山,水際や海岸断崖地などの環境の厳しい
地に生育している植生を現存植生(reale Vegeta−
立地条件下に局地的に生育しているにすぎない。自然
tion;aCtualvegetation)という。現存植生は,人
植生は,自然林・原生林・天然林・自然草原などと,
間活動の影響下ではさらに自然植生と代償植生に区分
対象や相観によって細分され使われる。しかし,日本
することが可能である(図11)。とくに現実の野外に
では原生林と呼べる人類未踏の林分は皆無といってよ
生育している現存植生を対象に描かれた現存植生図は,
いだろう。自然林,あるいは自然に近い種類組成をもっ
人間の影響によってその土地本来の自然植生に置きか
た林分,自然草原などは,わずかに残されているにす
わっ−た代償植生を中心とした植生図ともいえる(図12,
ぎない(図13,藤原・宮脇1988)。
13)。
天然林と自然林は同じだが区別することもある。逸
34
自然植生‥・自然林・原生林・天然林・自然・甘原
現存植生
代償植生‥・萌芽林・二次林・二次草原・植林・
耕作畑地獅草群落・マント群蔀・
ソデ蹴落・踏跡群落
潜荏自然植生
原植生
く 植 生+;l←「一相観を逓蛙とした具体的例− −→
図14 植生の類縁とその種類
表15 日本のおもな自然植生
1)森林
a.ヤブツバキクラス:カシ,タブノキ,モミを主とした常緑広葉樹林と常緑広葉樹・常緑針葉樹混
生高木林。マサキ,トベラ,ウバメガシ,シャリンバイを主とした常緑広葉樹林低木林がある。
b.ブナクラス:山地帯の夏緑広葉樹主体の森林,ブナ,ミズナラ,コナラ,カェデ,ケヤキ,サワ
グルミなどが高木層の主とした構成種である。
c.コケモモートウヒクラス:亜高山性針葉樹林,トウヒ,シラビソ,オオシラビソ,エゾマツ,ト
ドマツ他亜高山性針葉樹を主体とする。
d.ハンキノクラス:低湿地に発達する夏緑広葉樹林,ハンノキを主構成種とする。現在の水田の大
部分がハンノキクラス域。
e.オノエヤナギクラス:河辺流域のヤナギ林。
f.ダケカンバーミヤマキンポウゲク.ラス:亜高山帯の雪崩斜面や不安定立地に発達すろ夏緑広葉樹
林。
g.オオハマポウーアダンクラス:砂丘上の森林。沖縄諸島,奄美諸島に分布する。
h.ノイバラクラス:森林の林線に一発達する低木林やツル植物群落。
i.コメッツジーハ
コネヨメッツジクラス:山地風衝低木林。
j.ミネズオウークロマメノキクラス:高山風衝矯生低木群落。
k.ハマゴウクラス:海岸砂丘上の矯生低木林。
l.ミツバノコマツナギクラス:隆起珊瑚礁上低木群落。
2)草原:草原はきわめて多く,日本では31オーダーが認められている。ここではクラス列記に
とどめる。
a.海岸:ハマハコペーハマニンニククラス,ハマポウフウクラス,オカヒジキクラス,ボタンポウ
フウ群団,ソナレムダラーウコンイソマックラス。
b.塩沼地:イソフサギクラス,一年生アツケシソウクラス,ウラギククラス。
c.水生:ヨシクラス,アマモクラス,コウキクサクラス,ヒルムシロクラス,ネジリカワッルモク
フス。
d.岩壁:アオチャセンシダクラス,ホウライシダクラス。
e.乾生草原:ススキクラス,オニシモツケーヨモギクラス,ヨモギクラス,オオバコクラスo
f.山地草原:チンダルマクラス,ホロムイソウクラス,ツルコケモモーミズゴケクラス,ヌマガヤ
群団。
g.耕作地:アゼナ群団,イネクラス,シロザクラス,タウコギクラス。
出した植林樹種が自然に生長し二次的に林分をっくっ
た場合や,植林地を自然に放置し,数十年経た林分も
天然林と呼ぶこともある。
厳密な意味では,その土地の終局(極相)群落
(SchluBgesellschaft;terminalcommunity:T弘Ⅹen,
R.,1956)を自然植生と呼ぶ。
自然植生は,東北地方南部より関東地方以西の低地,
丘陵地,低山地では,シイ林やタブノキ林,海岸のウ
バメガシ林,・山地のモミ林,カシ林あるいはツガ林,
低湿地のハンノキ林,ヤナギ林および大形スゲ湿原,
35
現地踏査による植生調査
現地調査による植生図
原図の作製
室内作業による群落単位
の抽出
空中写真による植分の
広がりの把撞
群落単位の決定
現存植生図
清 書
図15 現存植生図の作製工程(藤原・宮脇1988)
表16 植生自然度凡例(環境庁1993)
植生自然皮
概
備
要
市街地,造成地
考
植生のはとんど残存しない地区
2 農耕地(水田,畑地)
水田,畑地等の耕作地,緑の多い住宅地(緑被率60%以上)
3 農耕地(樹園地)
果樹園,桑畑,茶畑,百聞等の樹園地
4 二次草原(背の低い草原) シバ癖落等の背丈の低い草原
5 二次草原(背の高い草原) ササ群落,ススキ群落の背丈の高い草原
6 造林地
常緑針葉樹,落葉針葉樹,常緑広葉樹等の植生地
7
クリーミズナラ群集,クヌギーコナラ群集等,一般には二次林とよばれる代償植生地区
二次林
8 二次林(自然林に近いもの) ブナ,ミズナラ再生林,シイ・カシ萌芽等,代償植生であっても,特に自然植生に近い地区
9 自然林(極相林またはそれに 近い群落構成を示す天然林) エゾマツートドマツ群集,ブナ群集等,自然植生のうち多層の植物群落を形成する地区
10 自然草原(自然草原,湿原) 高山ハイデ,風衝草原,自然草原等,自然植生のうち単層の植物社会を形成する地区(⑨,⑩
自性高
は然のさにおいて同じランク)
河辺のオギ草原やツルヨシ草原,河口部の塩沼植生
響によって立地本来の自然植生が置き換えられた代償
(シオクグ群集,フクド群集,ハマボウ群集),海岸の
植生(Ersatzgesellschaft,anthropogeneVegeta−
砂丘植生(ハマグルマーコウボウムギ群集やチガヤー
tion(人為植生);Substitutevegetation)が発達し
ハマゴウ群集はか),東北地方以東や山地帯以上では,
ている(図12−14)。
ブナ林,ハルニレ林,シオジ林やサワグルミ林,砂丘
単一の自然植生であった立地でも,人為的干渉の質
のハマニンニクーコウボウムギ群集,亜高山帯のオオ
と量に応じ,様々な代償植生に置き換えられる。15∼
シラピソ林,シラピソ林やハイマツ群落,北海道を中
25年に一度伐採されることにより持続するコナラ林・
心とするエゾマツートドマツ林,高山帯のいわゆるお
アカマツ林などの二次林およびシイやカシの萌芽林,
花畑などが例としてあげられる(表15)。
植栽され下草刈りや下枝打ちなどの人為的管理により
現在残されている自然植生は人間の生活域に近いは
持続するスギ,ヒノキ,マツ,モウソウチクなどの植
ど,はとんど消失している。現存植生の大部分は,様々
林,1∼数年ごどに草刈りや野焼きが行われて維持さ
な人間の影響とつりあって持続している植物群落
れるススキ草原,牛馬の放牧,あるいは頻繁な刈り取
(Dauergesellschaft)である。すなわち,人間の影
りにより維持されるシバ草地,定期的な耕作,施肥,
図用 藤沢市現存植生図
1‥ヤプコウジースダジイ群集,2:マサキートベラ群集,3:シラカシ群集 ケヤキ亜群集,4:ハマダルマーコウボウム
ギ群集,イソギクーハチジョウススキ群集他,5:オニシバリーコナラ群集,7:クロマツ植林,8:スキ ヒノキ植杭 9‥
モウソウチク,マダケ林,10:アズマネザサーススキ群集,チガヤーススキ群集,11:シバ群団,12:カラスビシヤクーニシ
キソウ群集(耕作畑地雑草群落),13:落葉果樹園,苗園,14:ニワホコリーカゼクサ群集他(路上雑草群落),ミゾソバーア
シボソ群落(耕作放棄水田雑草群落),15:ウリカワーコナギ群集(水田雑草群落),16:住宅地,緑の植栽(屋敷林)の多い
地域,17:市街地,緑の植栽の少ない地域,18:造成地,工場地.
37
図17 藤沢市植生自然度図
38
図18 藤沢市潜在自然植生図
1:ヤプコウジースダジイ群集,典型亜群集,2:ヤプコウジースダジイ群集(表層土を復元した場合),3:イノデータブ
群集,典型亜群集,4:イノデータプ群集,ケヤキ亜群集,5:イノデータブ群集(表層土を復元した場合),6:マサキー
トベラ群集,7:シラカシ群集,ケヤキ亜群集,8:シラカシ群集,典型亜群集,9:ハンノキ群落,10:ハマダルマーコウ
ボウムギ群集,11:イソギクーハチジョウススキ群集
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ヽり‖ヽ、、ト′′′うト只も、
紳( も、卜、卜十ト∼卜氷セヽロ
軽米世 軒牒粥 ぺ恥キ1=トナ憤ト■トヽ
垂壮.←
凶ぜ書聖
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ペニ要
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ヽ−り\
♯
塙=Ⅱ ヽ十
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聖
1ヽミ
ヘヤト
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い卜も、小
=トムm H
∴や
二
;・ヽ祖→トロ
卜∴一」
ロ=、
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′/′ 辞せ− べヽ キー′/′ .バは′′J
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上トmセ⊇ 「\、\や\ キ・、、[Lくヽ トミミ =ヽ∴ や、でヽ
ぎー旨=・ヽ‥恰
や、ヽ−■ゝ {トいTl トト 卜 ′ゝ+、・k二」
;ト山へや
挙ぺ小へ♯てト≠辛
剥=畔様緋鶴桃l目高仁誌慄酎野山績小社P、T増−’卜蝶轢要へ髄1在朝て簑吏+、?ヽも峠祐高話家阜十範・トヽ−小へ」£育も、l苗嘲け\∧樹iⅡ∩ヽ増n℃矢も狸堆てKト顧i♯」←・Rl樺’卜も副一只K哨>lヽ咄辛皐⊥小華キK朝く1ト、−借】H十童胡ヽ祐{卜入ヰ、ー1巳ml寸巴く.⊂〉亡■・−の
∴
‖
く\
サ
ヽ
●卜幼く 鞘
畔
範珊
入社
や樹
l卜副
人名く
⊂n
40
国19 潜在自然植生図(ミンデン付近)(西ドイツ国立植生学自然保護景観管理研究所,1966)
1:きわめて小規模な自然の高層湿原群落を含めた,排水されたり,泥炭をとりさられたり,耕作されりたした高層湿原の植
物群落と植生段階.2:湿ったシラカンパ林への移行帯をもったシラカンパ沼沢林(小さなエリカのハイデをもったシラカバ
林を伴う).3:ハンノキーミズナラ林.4:ミズナラーシラカンパ林.5:ブナーミズナラ林.6:ハンノキ林.7:ハン
ノキートネリコ林.8:ミズナラーヤチダモ林.9:ミズナラーブナ林.10:ブナを混生したミズナラ林.11∴ヤマスズメノ
ヒエーブナ林.12:コメガヤーブナ林,ラン頬−ブナ林,カエデーシナノキ林.13:開放水域.
〈それぞれの種は日本の種と対応したヨーロッパの種である〉
除草により持続する耕作畑地雑草群落,絶えず踏みつ
階で示したのが日本における自然度図のはじまりであ
けられることにより生育するオオバコ群落など,様々
る。
な植物群落が代償植生に見られる(図12,13)。
代償植生は人為的影響とつりあって存続する持続群
(3)潜在自然植生図 Map of potentialnatural
落であり,人為植生(anthropogene Vegetation)
Vegetation;Karte der potentielle natiirliche
とも呼ばれる。
Vegetation
したがって自然がどこに残されているのか,人為的
潜在自然植生図は,T弘Ⅹen(1956,1957)により定
影響の度合い,また人間の影響の歴史を読み取ること
義づけられた潜在自然植生の概念を基礎に,現在人間
が可能であり,自然保護,学校での自然教育,開発や
の影響が一切停止した際にその土地が支えることがで
自然保護対象選択に対する指標にも用いられる(図15)。
きる理論的に考察される植生を,具体的に地図上に示
したものである。
(2)植生自然度図 Map of naturalness grade;
Karte der Natiirlichegrades
人為的影響により植生を区分したのが植生自然度図
であり,現存植生図より発展してより簡略化し,分か
潜在自然植生は各錘の人為的影響下に生育,現存し
ている様々な代償植生や,あるいは何が植栽されてい
るかに関係なく,人為的影響を一切停止したときに,
その立地が支えうる本来の自然植生をいう(図18)。
りやすく示されている(図16∼18)。植生自然度図の
潜在自/然植生(potentielle naturliche Vegeta−
凡例は環境庁による10段階が知られているが(表16),
tion;POtentialnaturalvegetation)の概念は,西
Miyawakiu.Fujiwara(1974)はシンプルに5段
ドイツのTiixen(1956a,b)により提唱された。し
ミズナラ
ミズナラーシテ林域
笹潤き‡lシラカンハ林域l駆;芸三召
■■トネリコー河辺林域
オオム車(
に耕作されたオオム
)
[ニコブナ林域
森林
図23 農業剰用図(1):適地作物
図20 自然植生域
■トネリコ巨窒≡ヨ湿った立地のトリネコとカエデ
ァヵマツ圃ドイツトウヒ
囲牧野匿≡ヨ畑(降水量の少ない年に減収する)
囚ドイツトウヒ(ひかげ他のみ可能)
■■牧野(降水量の多い年に減収する)
図21林業的立地評価図:植栽可能樹種
図24 農業利用図(2):収量の確実性
■ナナカマト群匪国典型的なハシバミ群
シラカンパ群
雷醒ミズキーハシバミ群
■最適の牧野利用のためには排水が必要
国国字‡貢;ド群匠詔ハシバ
.
最適の畑地利用には少なくとも暗きょ排水が必要
図22 景観管理利用図:環境保全に適した樹種
図25 農業利用図(3):水
42
かし現在,潜在自然植生の概念は,さらに拡大され使
以上高かった時代をすぎ,現在の気候とほぼ同じ安定
われていることも多い。研究者によっては,多少読み
した気候・地形になってからは,それぞれの地域で,
ちがえたり,拡大解釈されている場合もある。Tiixen
その土地の環境条件とつりあいをもった植生(原植生)
の最初の提案時には,埋め立て地などの大規模な地形
が発達していたと考えられる。したがって,気候・地
の変革地においては潜在自然植生を判定することばあ
形などが現在と変わらない土地では,原植生と現在の
まり考慮に入れられていなかった。
T弘Ⅹenは潜在自然植生図作製指針として,残存して
自然植生が一致する。海退・海進が著しい土地や,火
山・湿原や河辺などのように,植生にかかわる環境条
いる自然植生・残存木と,それに対応する代償植生・
件・立地条件が大幅に変わった土地では一致していな
土地利用形態(畑の作物の種類まで明示されている)・
い。
土壌(表層)の色・文化景観域の建物(馬小屋の形態
など)の建築様式・並木の種類などの関連を一覧表に
(5)立地図 Site potentiality map;Standorte
まとめ,潜在自然植生を判定している。
Karte
わが国では,自然植生の残存林・残存植生が見られ
立地図は立地のポテンシャ
リティーを植生を指標と
る場合は,代償植生などや地形・立地により潜在自然
して図面上に示し,農業利用図・景観管理利用図・林
植生を判定することが比較的容易に可能である(表17)。
業的立地評価図・植栽立地図など多くの種類がある
しかし,埋め立て地やその上に建設された市街地など
(図21−25)。
の表層土壌の欠如地では,表層土が復元した場合の自
然植生を潜在自然植生として考える宮脇らの提案があ
(6)総和群集図 SigmaTaSSOCiationmap;Sigma−
る。現在まったく自然植生が残存していない地域では,
Assoziationskarte
理論的に潜在自然植生を決定することが困難であると
総和群集図は日本で生まれた地図である。潜在自然
して,自然植生群として,現在生育している植生の結
植生が単一である地域において十分に広い面積を調査
びっきにより示す提案も大場・菅原(1977)によって
区として,そこに出現する植物群落を記載し,区分群
行われている。したがって単に潜在自然植生として示
落を組成表作業により抽出する。その区分群落により
されている場合においても,研究者により潜在自然植
現存植生図を転化したものであり,景観を区分するこ
生の概念の把握が多少異なることが多い。目的に応じ
とができる。1977年春にドイツのリンテルンにおける
潜在自然植生を理解することが必要となろう。
潜在自然植生図により,立地のポテンシャリティー
および生物的自然環境を判定することが可能となる
国際植生学会のテーマにとりあげられた。概念の創始
者TiixenおよびG6huもまだ総和群集図はつくってい
ない。日本で宮脇ら(1979,1980)により発表された。
(図19−25)。現在では,潜在自然植生図は一歩進めた
応用図的な立地の性格を一部示し措かれるようになっ
ている。Tilxenの示す終局群落ではなく,極相植生図
(7)機能図 Functionalmap;FunktionaleKarte
Ellenbergが,1974年経団連の講演で紹介したのが
になっている図面もあるが,目的により措きわけられ
はじめである。その後,藤原・宮脇(1988)が東京都
ているので,判断して利用しなければならない。潜在
小金井市を例に,現存植生図,潜在自然植生囲および
自然植生図の応用図として立地図および総和群集図が
植生調査結果から植生機能図を発展させた。都市,地
あげられる。
域により,土地利用,自然保護,保全,回復など自然
環境計画に重要な役割を持つ。現在までに大磯町,入
(4)原植生図Originalvegetationmap;Urspriing−
間市,佐倉市で作成されている(藤原他1996,1997)。
1iche Vegetationskarte
自然植生は,対象の時点により,原植生,過去の自
然植生,現在の自然植生に使いわけられる(図11),
(8)ビオトープ地図Biotopemap;Biotopskarte
1978年にビオートーブ地図として,ドイツや南アメ
原植生(ursprunglicheVegetation,Urvegetation;
リカを基準地としてEllenbergにより提唱・作製され
Originalvegetation)は,その土地で人間の影響が
ている。近年行政が自然保護に利用するため,作成し
及ぶ以前の植生を示す。一般的には今からおよそ一万
ている例がドイツ,オーストリア,オランダなどヨー
年前から数千年前,日本では縄文時代初期から歴史時
ロッパで見られる(Mii11er1997,P.00)。1996年に横
代初期,場所によっては中世迄の時期にあたると考え
浜国立大学キャンパスを中心に,日本ではじめてのビ
られる。縄文時代初期の,現在の平均気温より約6℃
オトープ地図が作成中である(p.47参照)。
43
おわりに
Braun−Blanquet法にTiixen法を加えた植生調査法
schaft,N.F.,13:225−226(Todenmann迫ber
Rinteln).
Braun−Blanquet,].1928.Pflanzensoziologie・
の応用には,野外の植物への鋭い科学的な観察力とと
Gr乙↓几dz堰e derl′ege£α£わ花Sゐ比花de.330pp・J・
もに,室内での入念で強力な表操作と,結果にたいす
Springer.Berlin.
る客観的,総合的な考察力が重要である。分類が終了
したら再度野外に出て結果と実際の自然とをチェック
しなおす必要がある。その他にも生き物に対する愛情
Braun−Blanquet,].1932.PlaTu Sociology・
439pp.New York.
Braun−Blanquet,].1951.PFlanzensoziologie・
と,研究への情熱,そして以下の事が要求される。
Gr乙↓花dz堰e der Vegeとαわ0花Sゐ比花ゐ・2nd edi−
1.自然のものか,あるいは人間の影響下にあるかど
tion.631pp.Sprlnger−Verlag,Vienna.
うかを理解し,植生と環境条件の相関関係を確認す
Braun−Blanquet,].1964.Pflanzensoziologie・
る。植生が均質なものか異質なものかを見分ける厳
Gr乙J花dz晦・e der Vege乙α£わ花Sゐ比花de.3rd edi−
密で注意深い鑑識眼のある観察力を養う。
tion.865pp.Springer−Verlag,Vienna/New
2.野外においては,調査対照地のローカルな分類学
者や土壌専門家,地質学者等,特別な専門家との共
同作業が重要な作業の一つとなる。
3.自然,特に植生への愛情に加えて,植物の種の差
異を認識する訓練が重要である。植物種の正確な同
定は植物社会学では極めて厳密さが要求され,それ
がないと結果は無意味というよりむしろ悪となる。
4.新しい植物社会学的単位(これには当然命名者の
名が記される)を公表するまでの忍耐と努力,提示
された新単位との率直なフランクな比較が重要であ
り,命名にこだわることを避けたい。
5.自然観察や自然のシステムの研究への好奇心が植
生生態学を研究する上では,重要な基礎となる。
York.
BrockmannTJerosch,H.1935.Vegetation der
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