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(142ページから155ページまで)
【7】過去の包括外部監査における指摘事項の改善状況
(1)過去の包括外部監査における指摘事項の改善状況を調査する意義
平成 12 年度の包括外部監査のテーマは、「財政局主税部・区役所税務課
所管の徴税事務の執行について」であった。包括外部監査においては、そ
の指摘事項に対して措置を講じた場合には、監査委員に報告し、報告を受
けた監査委員は、措置状況を公表することになっており、平成 12 年度包括
外部監査の指摘等についても、平成 13 年 10 月に措置状況が報告されてい
る。しかし、時の経過とともに、外部社会環境や税務事務の体制も当時か
ら変化していることから、現在の環境において、下記の視点からその改善
状況を調査した。
(2)監査の視点
1.平成 12 年度包括外部監査の指摘等に対して、改善がなされているか。
2.過年度においては、適切に措置されていても、時代の変化による環境
変化とともに経済性、効率性、有効性の視点から再度見直す必要はな
いか。
(3)監査手続
平成 12 年度包括外部監査の主な指摘等に対して、その措置状況と現在の
状況について、担当者より説明を受け、関連文書の閲覧を行った。
(4)監査の結果及び意見
平成 12 年度包括外部監査の主な指摘事項についての、平成 25 年度現在
における改善状況は次のとおりであった。
① 総括的所感
平成 11 年度は、1,749 人であった税務職員数が、税務事務のアウトソー
シングにより平成 25 年度には 1,010 人になり、大幅削減されていることが
要因で、税務事務システムの再構築経費などを除くと徴税費も圧縮されて
いる。
一方で、平成 11 年度と比較して、徴収率が 2.6 ポイント向上し、96.8%
となっている点を考慮すると、平成 11 年度よりも大幅に少ない職員により
高い効果を挙げており、徴収率の向上と徴税コストの削減の両立が図れて
いるものと考える。
ただし、改善の途上ではあるものの、いくつか課題の残っている事項が
142
あり、これらについても引き続き改善されることが望まれる。
② 改善済の事項
平成 25 年度現在、改善済の事項は次のとおりであった。
関連す
平成 25 年度における
過去の包括外部監査の指摘事項
る事務
改善状況
◆徴収率について
全般
平成 25 年度の徴収率
平成 11 年度の徴収率は 94.2%である
は 96.8%であり、平成
(現年課税分及び滞納繰越分の合計)。
11 年度と比較して、2.6
ポイント向上している。
◆市税収納対策会議の充実
全般
平成 19 年から業務の
各区役所の市税収納対策部会(部会長は
集約化、効率化を図るた
区長)においては、「高額滞納分の早期処
め、各区役所の税務課を
理優先早期着手、個別交渉の充実」、「目標
財政局税務部の直轄組織
数値の設定並びに進行管理の徹底」、「課税
とし、市税事務所を新設
と収納の緊密な連携」、「現年度課税単独分
している。
の年度内整理の徹底」等の重点施策事項に
毎年徴収率を目標とし
ついて、区の具体的な運営方針を定めて、
ており、目標徴収率と実
滞納整理に取り組んでいるが、取り組み状
績徴収率を把握してい
況についてさらに充実・改善すべき事項が
る。
次のように見受けられる。
各重点推進事項が結果としてどの程度達
成されたのか具体的な数値で事後評価する
仕組ができておらず、そのため重点施策の
目標の達成に向けて適切なフォローが十分
に実施できる体制とする必要があると考え
る。さらに目標管理を徹底するためには、
担当者毎の達成目標と達成結果を把握する
必要がある。
各区役所の市税収納対策部会は、区長が
部会長となり、組織的に対応することに
なっているが、当該部会に区長が参加せ
ず、収納係中心とした取組に終わっている
ケースが見受けられる。組織的対応の徹底
のためにも区長を中心とした対応が必要で
ある。
143
関連す
る事務
◆全員主査制度の導入
滞納
平成 11 年度から収納担当者は、全員主 整理
査制度が採用されている。これは個別対応 事務
の実施に権限と責任のある主査クラスが収
納担当者として適切であるとして導入され
た制度である。
しかし、全員主査制度導入に伴い収納担
当者数は減少しており、一人当たりの担当
件数は増加している。そのため、担当件数
すべてに十分な対応を実施することが実際
上困難であり、特に早期対応が必要とされ
る当年度滞納発生分の収納に重きが置かれ
ている現状から累積滞納分についての個別
対応が遅れている事例も見受けられる。
◆人事ローテーションにおける専門性への 滞納
配慮
整理
区役所税務課の職員は、他の一般行政職 事務
員と同様に 3 年から 4 年の人事ローテー
ションにより異動するケースが多く見受け
られるが、特に滞納整理業務のように、高
度の専門性が要求される部署においては業
務の習熟にある程度の期間を要することと
なるため、これを考慮した人事ローテー
ションの期間を設定すべきである。
過去の包括外部監査の指摘事項
144
平成 25 年度における
改善状況
全員主査制度は廃止さ
れた。各市税事務所で
は、滞納事案を初期・中
期・後期の 3 グループに
分けて、専門性を高める
とともに、公権力の行使
を行わない初期グループ
の催告業務等については
外部委託化した納税推進
センターが実施してい
る。
市税事務所における特
別な人事ローテーション
は設けられていないが、
平成 13 年度に収納対策
特別チームが設けられ、
平成 19 年度には区役所
から市税事務所に事務事
業が移管される等、部門
の専門性は高められてい
おり、専門性向上への対
策はとられている。
関連す
る事務
◆専門性の向上と研修制度
滞納
収納事務に関して各種の研修制度を実施 整理
しているが、研修による習熟度をチェック 事務
したり研修成果を生かしたキャリアパスの
制度等が設けられていない。頻繁に行われ
る人事ローテーションのため短期間で専門
性を習得するためにも、研修の習熟度
チェックやキャリアパス制度を導入し、能
力向上の進行管理を行うとともに積極的取
組を図るべき。
過去の包括外部監査の指摘事項
◆不動産の状況の把握
滞納
固定資産の状況の把握についても差押等 整理
の処分に取りかかる時点で抵当権設定の状 事務
況等の調査を実施しているものが見受けら
れる。また、滞納者が大阪市以外に所有す
る不動産については時価の調査が不十分な
事例も見受けられる。高額滞納者について
は、多くの不動産を所有していることもあ
り、また第二次納税義務者を含めると収納
に結びつく不動産を所有していることも考
えられる。このため滞納者の不動産の所有
状況の調査をさらに充実させるとともに、
不動産の抵当権設定の状況や時価の調査を
進めることが必要である。
145
平成 25 年度における
改善状況
平成 13 年度に収納対
策特別チームが設けら
れ、平成 19 年度には区
役所から市税事務所に事
務事業が移管される等、
部門の専門性は高められ
ている。なお、習熟度
チェックについては、税
務部・収税課や各事務所
主催の研修の中で、研修
後の小テストやアンケー
トを通じて理解度の把握
が行われている。
また、キャリアパス制
度については、制度自体
の導入はないものの、滞
納整理に特化した研修
を、年齢や補職に応じて
重層的に組み合わせるこ
とで実施している。
不動産の差押について
は、差押に際して抵当権
設定権者等に「債権現在
額申立書」を同封するこ
とで抵当権等の残額把握
に努め、配当が見込める
不動産は公売を実施して
いるとのことである。差
押金額は債権額(収入未
済額)の減少に伴い減少
している年度もあるが、
差押件数は増加している
(【5】(2)4.滞納処
分についてを参照)。
関連す
る事務
◆先日付小切手の管理
滞納
滞納税額の回収の手段として納付委託の 整理
方法により、先日付小切手を領収した場合 事務
において、支払日が到来するまでの期間、
当該小切手は税務課収納係の管理する金庫
に保管されているが、これらの小切手の有
高について定期的な実査がなされていな
い。税務課責任者の立会いのもと毎月末に
は実査を行い有高を確認することが必要と
考える。またこの手続については、財政局
長通達等により各区役所税務課に対して実
施の徹底を図る必要があると考える。
◆納付受託証書の取り扱い
滞納
外勤(納税者の自宅等を訪問)により滞 整理
納税額の回収を行う場合において、手形又 事務
は領収日から一ヶ月を超えて支払日が到来
する先日付小切手を領収した場合には、納
付受託証書(手書き用)を交付することに
なっているが、当該納付受託証書を使用せ
ず、仮領収書(領収書のナンバー管理がな
されていないもの)を使用しているケース
が見受けられた。外勤時においては、必ず
納付受託証書(手書き用)を携帯し、手形
等を受領した場合、必ず当該納付受託証書
を発行すべきであると考える(平成 10 年
4 月 13 日 財第 45 号財政局長通達)。
◆庶務担当者と滞納整理担当者の兼務
滞納
区役所税務課収納係においては、庶務担 整理
当者が、滞納整理業務を兼務しているケー 事務
スが見受けられる。庶務業務と滞納整理業
務を兼務することは、内部牽制上好ましい
状況とはいえない。庶務業務と滞納整理業
務の兼務を解消するか、もしくは庶務業務
を税務課管理係に移管することが必要と考
える。
過去の包括外部監査の指摘事項
146
平成 25 年度における
改善状況
船場法人市税事務所に
て定期的に実査が行われ
ていることを確認した。
仮領収書の使用は禁止
されており、仮領収書を
使用している事案は発見
されなかった。
平 成 13 年 度 に お い
て、収入管理事務と滞納
整理事務の兼任は廃止さ
れており、各市税事務所
でのヒアリング、組織図
等の閲覧においてもその
ような状況は見受けられ
なかった。
関連す
る事務
◆一定時点を基準とした定期的な滞納者の 滞納
状況把握
整理
市では一件当たり 300 万円を超える高額 事務
滞納者について、「高額滞納者処理状況
調」を税務課収納係において定期的(5 月
末、12 月末)に作成し納税交渉の進捗管
理を実施している。今後、300 万円を超え
る高額滞納者以外に対しても一定時点を基
準とした納税交渉の進捗管理を進めるべき
である。
また、「高額滞納者処理状況調」の記載
欄における記載内容が、形骸化しており、
具体的な進捗管理に有効な管理資料となっ
ていない(滞納者の最近の所得や財産の状
況が記載されていない等。)。当該資料につ
いては、組織的な対応を進めるべき管理資
料として有効に活用すべきである。
◆課税事務におけるベストプラクティス 市 民 税
(優れた事例)の構築
及び固
収納事務については、全庁ベースでの取 定 資 産
組の中で収納に関するベストプラクティス 税 の 課
の事例として情報の共有化がなされてい 税事務
る。
一方、課税事務については、各区役所独
自の方法が採られているケースが多く、全
区役所ベースでの情報の共有化には至って
いない。区役所独自で工夫され、優れてい
ると考えられる手法については、全庁にお
いて情報の共有化を実現すべきである。
過去の包括外部監査の指摘事項
147
平成 25 年度における
改善状況
一件当たり 100 万円以
上の高額滞納者において
定期的に「一人別調進捗
管理表」を表計算ソフト
で作成し、より幅広い滞
納者に対して納税交渉の
進捗管理を実施するよう
になった。
(市民税)
課税事務のベストプラ
クティスについては、各
市税事務所担当者や課長
代理及び係長により構成
される全庁会議において
情報共有されている。
(固定資産税)
市民税と同様に、全庁
会議において情報共有さ
れている。なお、償却資
産については、平成 26
年度に各市税事務所から
船場法人市税事務所に集
約され、情報が共有され
ている。
過去の包括外部監査の指摘事項
◆実効のある実地調査(償却資産税)
実地調査の実施要領は詳細まで決められ
ているが、すべてについて実施要領のとお
り行うのは現状の人員体制では難しいので
はないかと思われる。実際にも、特定の区
において平成 11 年度に実施要領に基づい
た詳細な実地調査がほとんど実施されてい
ない事例がみられた。必要最小限の実施す
べき事項をまず取り決め各区役所の償却資
産担当者に徹底させる必要があると考え
る。
◆「評価区分連絡票」の作成(償却資産
税)
特定の区において平成 11 年度中、家屋
担当者から償却資産担当者への課税捕捉情
報となる「評価区分連絡票(家屋担当者が
把握した償却資産として課税の可能性があ
るものを記載したもの)」が作成されてお
らず担当者相互間の情報連絡が不十分な状
況となっていた事例がみられた。
◆課税客体・納税義務者の捕捉体制の実施
運用状況(捕捉漏れの事実)に係る指摘
事項
(a) 固定資産税(家屋)の地押調査での捕
捉漏れ
地押調査において、前年度と状況が変
わっておれば家屋見取図等を用いて異動を
記録し、後日、実地調査において訪問・実
測を行い課税客体を捕捉することになって
いるが、監査人(補助者)による現地調査
において捕捉漏れとなっている事例が発見
された。
(b) 固定資産税(償却資産)の捕捉漏れ
監査人(補助者)による現地調査におい
て捕捉漏れとなっている事例が発見され
た。
148
関連す
平成 25 年度における
る事務
改善状況
固定資
年度ごとに重点対象項
産税
目を決め、実地調査を
( 償 却 行っている。
資産)
の課税
事務
固定資
産税
(償却
資産)
の課税
事務
家屋担当とは事業用家
屋について「建物附帯設
備等に関する事務処理要
領」を定め、連絡票を用
いて情報連絡を行ってい
る。
固定資
産税
( 家
屋・償
却 資
産)の
課税事
務
年末年始を中心とする
現地での調査により、土
地・家屋の状況が網羅的
に課税台帳に反映されて
いることを確かめてい
る。
償却資産については、
家屋担当等と連携し、新
規開業法人等に課税すべ
き償却資産がないか調査
している。
過去の包括外部監査の指摘事項
◆固定資産税(土地)の非課税適用取消の
遅れによって課税漏れとなっていた事例
宗教法人Aの所有地について、平成 10
年になって初めて宗教法人の本来目的の家
屋が取り壊され平成 5 年には駐車場として
営業されていたことが判明したため、平成
6 年度まで遡って土地の非課税適用を取り
消し課税がなされた。しかし、時効によっ
て平成 5 年度については固定資産税(土
地)の課税ができない結果となった。家屋
担当者から土地担当者に当情報が速やかに
伝わる体制になっておれば課税漏れは防げ
たはずであるため、土地・家屋担当者相互
間の情報の連絡を密にする必要がある。
◆固定資産税(償却資産)と他の税目との
情報の共有化
固定資産税(償却資産)は、固定資産税
(土地・家屋)よりも、納税義務者が法人
である比率が高く、かつ申告制度が採用さ
れているという意味において、法人市民税
と性格が近いこともあり、出来る限り法人
市民税の情報の共有化に努める必要があ
る。
◆固定資産税(償却資産)の重点調査
固定資産税(償却資産)についての事務
処理が十分ではない。例えば、下記のよう
な調査を行うべきである。
① 家屋における地押調査と同様の調査を
実施し、テント倉庫・立体式駐車場等
の外観からでも容易に把握できる償却
資産を把握する。
申告書は提出しているものの前年度から
増減なしとの申告をしているケースが目立
つため、ある一定規模以上の納税義務者
(特に法人)で増減なしと申告した者につ
いて実地調査を行う。
149
関連す
る事務
固定資
産税
( 土
地)の
課税事
務
平成 25 年度における
改善状況
年末年始を中心とする
現地での調査により、土
地・家屋の状況が網羅的
に課税台帳に反映されて
いることを確かめてい
る。
固定資
産税
(償却
資産)
の課税
事務
固定資産税は、法人市
民税の情報をもとに課税
客体の捕捉に努めるなど
の情報交換が行われてい
る。
固定資
年度ごとに重点対象項
産税
目を決め、実地調査を
( 償 却 行っている。
資産)
の課税
事務
過去の包括外部監査の指摘事項
◆ 組織的な課税に向けての進捗管理
一部の区において家屋の地押調査・実地
調査に係る進捗管理が不十分である事例が
みられた。地押調査で捕捉した異動につい
ては、さらに実地調査により課税客体の確
定を行う必要があるが、一部の未登記の小
規模な増築については、担当者の判断に委
ねられ上席者が状況を知ろうにも課税に向
けて実地調査が行われたのかどうかわから
ない状態となっていた。担当者任せにする
のではなく、地押調査の結果については、
異動のすべてを網羅的に記録し上席者が課
税に向けての進捗状況を把握できる状態に
することにより組織的に進捗管理すべきで
ある。
関連す
る事務
固定資
産税
( 家
屋)の
課税事
務
平成 25 年度における
改善状況
各担当者による年末年
始の調査が行われてお
り、少なくとも 1 年に 1
回は全地域の地押調査が
行われている。また、航
空写真を使用した経年異
動判読による調査を行
い、その調査の記録を残
している。
③ 改善中の事項(一部改善済み事項を含む)
平成 25 年度現在において改善中の事項は次のとおりであり、引き続き改
善への対応をされることが望まれる。
関連す
平成 25 年度における
過去の包括外部監査の指摘事項
る事務
改善状況
◆収納マニュアルの整備
滞納
収納事務に関する専門
市では、「収納関係事務の手引き」など 整理
的能力を短期間で習得す
収納事務を行ううえでのマニュアルが整備 事務
るために、個々の事案に
されている。しかし、整備されているマ
対する処理にあたり、上
ニュアルの多くは、法令規則の解説や法的
席者が担当者の指導を
手続を進めるにあたっての手引書であり、
行ったり、収税課による
これに加え滞納者との交渉を具体的に進め
事例研修会を行う等の対
るにあたってのマニュアルの整備を進める
策を講じている。
必要がある。また、収納事務に関する専門
ただし、収納マニュア
的能力を短期間で習得するためにもマニュ
ルは作成されていない
アルの整備は必要不可欠であり、より実践
(【5】(6)1.滞納整
的なマニュアルの整備が必要である。
理マニュアルの作成を参
照。)
150
関連す
る事務
◆滞納者に対する財産調査の実施状況
滞納
収入歩合の改善には、滞納の発生から早 整理
期に対応することが有効であるが、現実に 事務
は滞納処分としての差押の段階になっては
じめて財産調査等が実施されるケースも見
受けられる。また一部の事案について決算
書等の入手が定期的に実施されておらず数
年間放置されており滞納者の財産状況等が
的確に把握されていないものが見受けられ
る。
今後、収益物件の収益状況、賃貸借関係
の調査、滞納者の実情・納税資金力の把握
などを通じて収納(滞納整理)の具体的手
法を検討していく必要がある。
過去の包括外部監査の指摘事項
◆滞納者の収入状況の把握
滞納
滞納者との納税交渉を進めるにあたっ 整理
て、納税計画を提出させる場合が多い。納 事務
税計画の提出にあたって納税計画作成の根
拠となった将来の収入に関する資料の入手
と検討が十分に行われていないものが見受
けられる。納税計画の実現可能性を検証す
るためにも、滞納者の収入状況を的確に把
握する必要がある。
151
平成 25 年度における
改善状況
各市税事務所におい
て、滞納事案を納税状況
に応じて初期・中期・後
期の 3 グループに分けて
対応し、財産調査の実施
においても必要に応じて
上席者が指示を行う等の
対応により、徴収率は向
上している。ただし、決
算書情報の活用が十分で
はなく、一部債権につい
て十分な財産調査が実施
されない等の課題が残っ
ている(【5】(6)5.
決算書を活用した滞納整
理、7.貸付金等に対す
る財産調査の徹底を参
照)。
決算書情報の入手が不
十分であり、市に提出さ
れた納税計画書について
も不十分な記載内容のも
の も 見 受 け ら れ た
(【5】(6)5.決算書
を活用した滞納整理、
11.納税計画書、生
活・財産状況申出書の不
十分な記載内容を参
照)。
関連す
る事務
◆納税交渉の充実
滞納
各収納担当者が実施する滞納者との納税 整理
交渉の経緯は「記事カード」に記載される 事務
が、記事カードは滞納者ごとに作成され、
納税交渉の都度、上席者に回覧される。し
かし、記事カードを査閲したところ納税交
渉が進展していないため記事カードが長期
間に渡り作成されていない滞納者の記事
カードが散見される。財産調査等をはじめ
とする納税交渉の充実をはかる必要があ
る。
過去の包括外部監査の指摘事項
◆記事カードでの上席者の指示事項の記載 滞納
の必要性
整理
収納担当者と滞納者との納税交渉の経緯 事務
は「記事カード」に記載され、記載の都度
上席者に報告される。上席者は報告を受け
今後の納税交渉に関する指示事項を記事
カードに記載することとされている。しか
し、記事カードに指示記載欄が設けられて
いないため上席者の指示事項の記載が徹底
されていない。また、記事カードは、実質
的に収納担当者が実施した納税交渉の経緯
を記録する唯一のものとなっているため、
一定時点を基準に記事カードの作成状況を
上席者が査閲し管理することが必要であ
る。
152
平成 25 年度における
改善状況
収納管理・滞納整理シ
ステムの記事一覧に納税
交渉の経緯が記録されて
いる。記事一覧はシステ
ムにより自動的に作成さ
れるため、作成漏れはな
いが、記事一覧の記載が
十分ではないケースが
あった(【5】(6)4.
同族名寄せ解除における
理由の明記、9.滞納額
に満たない評価額の差押
物件を参照)。
収納管理・滞納整理シ
ステムの記事一覧に納税
交渉の経緯が記録され、
上席者の指示事項が記録
されるほか、定期的に作
成される「一人別調進捗
管理表」においても上席
者の指示事項欄が設けら
れている点は改善されて
いる。ただし、進捗管理
表においては、上席者の
氏名や指示の日付を入力
する欄がなく、今後は上
席者の指示事項に上席者
の氏名と日付を残し、担
当者が迅速かつ適切な対
応を行っているかどうか
を定期的に確認すること
が望まれる(【5】(6)
3.進捗管理表における
上席者の指示を参照)。
関連す
る事務
◆事務作業の引継ぎの徹底
滞納
収納事務は、累積滞納事案については収 整理
納担当者が滞納者と納税交渉をはじめてか 事務
ら一定の成果が生じるまでに長期間を要す
ることが多い。これに対して収納担当者は
一般職員と同様の人事ローテーションのた
め、滞納が完納される以前に担当者が交代
することが多く、結果として同一の滞納者
に対して複数の収納担当者が納税交渉を行
うこととなる。過去の納税交渉の経緯につ
いて現在の収納担当者が十分に把握されて
いない場合があり、収納担当者間の業務引
継ぎが十分に行われているとはいえない事
例が見受けられたため、担当者間の事務の
引継ぎを徹底すべき。
◆外部情報の活用
滞納
滞納者の状況の把握に努めるため、他の 整理
市町村、国税庁、金融機関及び調査会社な 事務
ど外部情報の活用を行っている。しかし、
外部情報の活用は、収納担当者の判断に応
じて行っており、外部情報活用について統
一的な方針はない。そのため情報収集に遅
れが生じたり必要な情報の収集に漏れが生
じている。外部情報の活用にあたっては情
報収集範囲、収集時期及び活用方法等につ
いて「収納関係事務の手引き」に定められ
ているものの、その十分な活用が必要であ
る。
過去の包括外部監査の指摘事項
153
平成 25 年度における
改善状況
収納管理・滞納整理シ
ステムの記事一覧に交渉
経緯がすべて記載される
ようになったため、交渉
経緯の引継ぎについては
改善されている。ただ
し、書類の引継ぎについ
ては十分な管理がなされ
ていない案件が発見され
た(【5】(6)6.滞納
整理事務に関する資料の
管理を参照)。
個別事案について外部
情報の活用は見受けられ
るが、外部情報活用につ
いてのマニュアルは作成
されておらず、個人の判
断に委ねられている
(【5】(6)5.決算書
を活用した滞納整理を参
照)。
関連す
る事務
◆不納欠損処理を行う際の財産調査等の充 滞納
実と迅速な滞納処分の停止
整理
滞納処分の停止の要件に該当する滞納者 事務
については、その処理を進めている。その
結果、平成 11 年度においては市税収入未
済額が減少し収納事務の効率化が図られて
いる。しかし、滞納処分の停止の要件に該
当する滞納者であっても、その処理が行な
われていないものが見受けられる。速やか
に滞納処分の停止を行なえるよう、より迅
速な滞納者の実状把握に努めるべきであ
る。
過去の包括外部監査の指摘事項
◆ 固定資産税(償却資産)の減免申請書
について固定資産税(土地・家屋)の申請
書をコピーしたものを転用しており申請手
続が形骸化している事例
固定資産税の減免申請書は、土地・家
屋・償却資産のいずれであっても同じ様式
となっており予め印刷されたタイトル「固
定資産税(土地・家屋・償却資産)減免申
請書」のなかから該当項目を選択するよう
になっている。償却資産の減免に関しては
土地・家屋の減免申請書を担当者がコピー
し、そのまま償却資産に係る減免申請書と
して用いているケースが散見された。納税
者の手間を省くこと、及び事務処理の軽減
のためと思われるが、電話等で納税義務者
の意思を確認しているとしても再度申請書
は提出させるべきと考える。減免は、毎年
適用されるケースが多く昨年実績で償却資
産についても減免していたかどうか事前に
把握できるわけであるから前もって納税義
務者がどの資産(土地・家屋・償却資産)
を所有しているかを示す名寄せチェックリ
ストを作成しておくと同時に、償却資産の
申請漏れに注意を喚起するため、償却資産
の内容を記載する欄を拡充する等の様式の
変更を検討する必要があると考える。
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固定資
産税
(償却
資産)
の課税
事務
平成 25 年度における
改善状況
滞納処分の停止の要件
に該当する滞納者であっ
ても、滞納処分の停止の
決議がなされず、結果と
して不納欠損となった事
案、差押財産の換価処分
から 2 年後に滞納処分の
執行停止を行った事案が
発見された(【5】(6)
9.滞納額に満たない評
価額の差押物件、15.
速やかな滞納処分の執行
停止の実施を参照)。
市税条例施行規則第 4
条の 3 に定められる公衆
浴場については、市税条
例において、申請に基づ
き、減免する旨が規定さ
れている。平成 25 年度
減免申請書の綴りを閲覧
したところ、土地・家屋
に係る減免申請のみが行
われており、償却資産に
ついての減免申請が行わ
れていない場合、市の職
員が当該減免申請書類の
コピーに償却資産分も書
き足す形で申請書類を整
えている事例が 2 市税事
務所において数件発見さ
れた(【3】(7)6.①
公衆浴場に係る固定資産
税(償却資産)の減免申
請手続参照)。
過去の包括外部監査の指摘事項
◆固定資産税(償却資産)の減免に必要と
される添付資料が未入手となっていた事
例
固定資産税(償却資産)の一般粉塵設備
に係る減免申請書に毎年添付が必要な書類
(「公害防止施設届出書の写し」)が入手さ
れず、減免適用初年度において添付書類を
受け取っていたかどうかの事実も確認でき
なかったケースがみられた。減免適用初年
度は添付書類を入手すべきであり、その記
録を残しておくべきである。
関連す
る事務
固定資
産税
(償却
資産)
の課税
事務
平成 25 年度における
改善状況
市は、土地所有者が地
域振興目的の団体に対し
て無償で土地を貸し付け
る場合、土地所有者に対
する固定資産税を 100%
減免している。この場
合、土地の無償使用者か
ら、地域振興団体が無償
で借り受けている旨の証
明書を減免申請書に添付
して申請する必要があ
る。
平成 25 年度の減免申
請書綴りを閲覧したとこ
ろ、上記のケースで減免
を行っているものの、減
免申請書に「地域振興団
体が無償で借り受けてい
る旨の証明書」が添付さ
れていないものが 1 件発
見された。
(【3】(7)2.①「減
免申請書の根拠資料の未
入手」参照)。
以上
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