...

5.トレーニングプログラムの作成

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

5.トレーニングプログラムの作成
5.トレーニングプログラムの作成
1)集団プログラムと個別プログラムの作成にあたって
参加者全員の身体状況にあった集団プログラムと参加者一人一人にアプローチした個別プログラ
ムを作成し、
誰であっても諸機能が向上していくようにプログラムを決定することが望ましいです。
① 集団プログラム
ウォーミングアップ、
(呼吸法、ストレッチ、軽運動)
筋力トレーニング、バランストレーニング、クールダウン
〇 楽にできるトレーニングから、徐々にレベルアップをして自己達成感をもてるようにしま
しょう。
〇 グループ内に身体機能の高い人と低い人で差がある場合があることから、回数や負荷量を
個人的に検討する必要があります。
〇 レベルの低い方へは、スタッフが補助につくとか、椅子等の補助具を使う、他の運動を考
えるといった考慮が必要になる場合もあります。
② 個別プログラム
個別プログラムは情報収集した内容や体力測定結果の内容から、日常生活動作の円滑化や安
定性の獲得など、虚弱な高齢者が自立した生活を維持することに目的を置いたものです。です
から理学療法士等の専門職に依頼することが望ましいです。
〇理学療法士等による個別対応
高齢者の身体機能は低下の度合いに差があります。虚弱高齢者の場合は単独に一つの機能が
低下していることはまれで、さまざまな要因が絡んで生活の不具合を呈していることが多くな
っています。
まず全体像を把握し、理学療法評価や問診などで個々の問題点を分析し、対象者の身体状況
やニーズに合わせた対応をする必要があります。この場合、カンファレンスで個々の目標を設
定しプログラムに反映していくことが望ましいです。また設定にあたっては、事業終了後のこ
とも視野に入れ、ホームエクササイズ等の方法もとるべきです。
以下、P24~P56 までは「弘前市筋力向上マニュアル」より引用または参考とさせていただき
ました。
23
2)トレーニングプログラムの実際
具体的な集団トレーニングのプログラムの流れです。参考にしてください。
①ストレッチ(準備運動)
体力測定結果の「柔軟性」や関節の痛み等を考慮
可動範囲の修正
プログラム名
種目の取り止め
種目の変更
種目名
体勢の変更
伸ばされる筋肉
ウォームアップⅠ(足踏み) 大腿直筋・大腰筋
ウォームアップⅡ(お尻歩
大腰筋・腹横筋等
き)
ストレッチ
① 胸のストレッチ
大胸筋
② 背中のストレッチ
菱形筋等
③ わき腹のストレッチ
前鋸筋
④ 腰周りのストレッチ
腹斜筋等
⑤ 股関節のストレッチⅠ
大臀筋下部
⑥ 股関節のストレッチⅡ
内転筋群
⑦ 太もも裏のストレッチ
ハムストリング
⑧ 首のストレッチ
僧帽筋等
⑨ ふくらはぎのストレッ
ヒラメ・腓腹筋
チ
⑩ 太もも表のストレッチ
大腿四頭筋
<アドバイス>
伸ばす筋肉を頭の中にイメージさせながら、ゆっくりとストレッチを行わせてくださ
い。筋肉は伸ばし始めてから十分ストレッチされるまで時間がかかります。
24
②筋力トレーニング(主運動)
体力測定結果や関節の痛み等を考慮
可動範囲の修正
種目の取り止め
スタート時は原則基本種目を選択
種目の変更
体勢の変更
体力測定結果が4種目以上標準を上回る場合は一部(③・④・⑥)発展種目からの
スタートも検討する
プログラム名
種目名
主に使用される筋肉
① レッグエクステンション(膝伸ばし) 大腿四頭筋
② スクワット・ポジティブ(立ち上がり) 大臀筋・ハムストリング等
筋力
トレーニング
(基本)
③ トゥレイズ(つま先あげ)
前頸骨筋
④ カーフレイズ(かかとあげ)
ヒラメ筋・腓腹筋
⑤ アダクション(膝閉じ)
内転筋群
⑥ アブダクション(膝開き)
中臀筋
⑦ クランチ・正面(腹筋)
腹直筋
⑧ ラテラルレイズ(肘あげ)
三角筋
⑨ ローイング(船こぎ)
菱形筋・肩甲下筋・前鋸筋
⑩ キャットロール(背中曲げ伸ばし)
大腰筋・腹直筋
① レッグレイズ・立位(ももあげ)
大腿直筋・大腰筋
② スクワット(しゃがみ立ち)
大臀筋・ハムストリング
③ トゥレイズ・立位(つま先あげ)
前脛骨筋・姿勢維持筋
④ カーフレイズ・立位(かかとあげ)
筋力
トレーニング
(発展)
⑤ アダクション・立位(膝閉じ)
⑥ アブダクション・立位(足横あげ)
ヒラメ筋・腓腹筋・姿勢維持
筋
内転筋群・大臀筋・姿勢維持
筋
中臀筋・腰方形筋・姿勢維持
筋
⑦ クランチ・斜め(腹筋)
腹直筋・内外腹斜筋
⑧ プッシュアップ(壁押し)
大胸筋・上腕三頭筋・三角筋
⑨ ローイング(船こぎ)
菱形筋・肩甲下筋・前鋸筋
⑩ バックエクステンション(おじぎ起
脊柱起立筋・大臀筋
き)
25
③クールダウン(整理運動)
腰痛等で仰臥位が無理な場合は、座位を検討する。
プログラム名
クールダウン
種目名
使用される筋肉
① 腹式呼吸(基本)
****
② 尿失禁予防運動
骨盤底筋群
③ 股関節周辺ストレッチ(基
股関節周辺の筋群
本)
④ 全身緊張&脱力(基本)
****
⑤ 肩回し(基本)
肩甲骨周辺の筋群
⑥ 肩たたき・肩もみ(基本) 僧帽筋等
クールダウンでは、軽度の腹筋関連運動を併せて行う。
膝に痛みがある場合のフロー
YES
椅子からの立ち上がり時膝に痛みがある
NO
通常の組み立て
立ち上がり動作の修正
膝の痛みが出ない
レッグエクス(膝伸ばし)時膝に痛みがある
レッグエクス
代替種目でスタート
スクワットなしで
通常の組み立て
仰臥位の確認
椅子から立ち上がり
再チェック(1ヵ月後)
26
3)全体のトレーニングの流れ
プログラムについては、ストレッチ、筋力トレーニング(基本)、筋力トレーニング
(発展)、クールダウンから構成されるプログラムを週一回、※3ヵ月間(12週間)
継続して実施します。
また、その期間を、①「フォーム習得やトレーニングに慣れるための導入期」、②「回
数・負荷の目標を設定し筋力の強化を図る維持期」、③「負荷の調整を行い、筋力やバ
ランス能力及び日常生活動作の拡大を図る発展期」の1ヵ月ごと3期に分けます。
ただし、対象者個々の虚弱度(体力の状況)に応じて明確に「導入期」・「維持期」
「発展期」の3期に分ける必要はありません。
※欠席等を考慮し最大14週まで延長可能。
3ヵ月
1ヵ月
1ヵ月
1ヵ月
導入期
維持期
発展期
運動に慣れる
フォーム・動作の習得
実施種目の調整
回数等の目標を設定し実施
筋トレ(基本)
回数等の目標を設定し実施
筋トレ(発展)
トレーニング種目・強度の変更
プログラムの実施(ストレッチ・筋力トレーニング・クールダウン)
1回のトレーニング時間は60分間程度とします。次に示した各期別のトレーニング
に要する時間を目安として、対象者の虚弱度によっては若干の増減が必要となる場合が
あります。
プログラム開始前後には十分な水分補給や休憩をとることとし、種目の合間にも必要
に応じて随時水分を補給することが重要です。
① 導入期(1ヵ月)
ストレッチ、筋力トレーニングとも、基本となるフォームを習得することが大切で
す。時間や回数をこなしたとしても、間違ったフォームでは目的とする作用筋を効果
的に鍛えることはできません。
このため、筋力トレーニングでの故障を防ぐ意味からも、ストレッチの手法をしっ
かりと習得するとともに、筋力トレーニングに関しては、低負荷(少ない回数・可
動域を狭く・実施スピードの調整)により、トレーニングフォーム並びに呼吸方法
の習得に主眼をおくことが大事です。
なお、フォーム習得後の導入期の後半には、維持期からのトレーニングを念頭にお
き、連続した動作で実施することが可能です。
27
導入期プログラム 60分の場合
ストレッチ
15分
クールダウン
10分
筋力トレーニング
25分
フォーム・動作の習得及び実施種目の調整を図る
時間・回数にこだわらず 随時説明を入れながら実施する
学習時間
10分
問題点の確認
運動効果の説明
等
② 維持期(1ヵ月)
維持期においては本格的にトレーニングを行っていくことになります。筋力トレ
ーニングにおける負荷量(回数・可動域・実施スピードを調整)を上げ、自覚的な
運動強度によりそれぞれの適正負荷(実施後ややきつい)を定めるとともに、目標
回数を15回×1セットとし、原則基本種目の実施を目指します。ストレッチにお
いても各種目の秒数やセット数を定めます。
個別の状況を判断しながら、回数・セット数の変更や発展種目への移行を検討し、
包括的な筋力トレーニングに変換していくことが必要です。
《ストレッチ強度変更パターン》
10 秒×2
(2回目強)
10 秒×2
(導入期)
15 秒×2
(柔軟性が著しく低下の場合)
《筋力トレーニング強度変更パターン》
15 回×1
10 回×2
20 回×1
発展種目
への移行
15 回×1
なお、回数やセット数の変更により生じる恐れのあるフォームの崩れや、痛みの管
理に十分に留意する必要があります。
維持期プログラム 60分の場合
ストレッチ
10~15分
筋力トレーニング
25~30分
クールダウン
10分
ストレッチ : 秒数やセット数を種目ごとに定め実施 立位検討
筋力トレーニング : 目標回数を決め運動強度を調整しな
がら実施
28
学習時間
10分
問題点の確認
日常生活での注意
ホームトレーニング
③ 発展期(1ヵ月)
発展期では維持期で獲得された筋力の強化を、自覚的運動強度や身体状況を見な
がらさらに推し進めます。筋力トレーニングにおいては、回数・セット数の増減や
発展種目への移行(日常生活動作の機能向上)を実施します。ストレッチにおいて
は、持続時間やセット数の調整を、柔軟性の改善を見極めながら随時行います。
なお、発展期においても回数やセット数の変更により生じる恐れのあるフォーム
の崩れや、痛みの管理に十分に留意する必要があります。
発展期プログラム 60分の場合
ストレッチ
10~15分
筋力トレーニング
25~30分
クールダウン
10分
ストレッチ : 種目ごとに柔軟性を確認しながら強度を調整 立
位検討
筋力トレーニング : 進行度に合わせて種目の移行を検討する
学習時間
10分
問題点の確認
発展種目の説明
ホームトレーニング
4)トレーニングにおける留意事項
①動作に関する留意点
筋力トレーニングやストレッチを安全に行い、最大限の効果をあげるためには何より
もまず、適切なフォームを習得する必要があります。誤ったフォームでトレーニングを
実施すると、効果が上がらないばかりか、関節痛などを引き起こす恐れがあります。
適切なフォームで筋力トレーニングやストレッチを行うためには、「スタートポジシ
ョンの理解」、「動作とリズムの流れをつかむ」、「呼吸方法」の3段階に分けて行う
と高齢者でも無理なく習得できます。
動作中には、体調の変調にも十分留意する必要があります。
②トレーニング時のカウント方法
〇集団で一斉に行う場合、初期は指導者が声をかけながら行います。
〇筋力トレーニングでの往復時間は同じ時間とし、「イチ、ニー」で持ち上げ(の
ばす、引く等)、「サン、シー」で下ろす(曲げる、戻す等)。原則 2秒・2
秒 計4秒で実施。 動作に合わせたカウント方法として、「上げて」・「戻し
て」、「曲げて」・「戻して」等でも良いでしょう。
〇動作時に呼吸を止めないよう対象者にもカウントしてもらいながら行うのも良
いでしょう。
〇可動域の狭い者には、最終カウントで最終可動域に達するようゆっくりとした動
作を行うか、無理にカウントに合わせないようにしましょう。
※原則胸が開くときに「息を吸う」 胸が狭くなるときに「息を吐く」
29
③指導者の立ち位置
指導者は対象者が行う運動の見本となるよう一緒に運動を行い、対象者全体から動
きが見えやすい位置に立って(座る)行いましょう。指導者と対象者が対面する場合
は、対照的な動きで混乱を与えないよう指導者は対象者と反対方向の動きを行うよう
に配慮する必要があります。
また、動作が理解しにくい対象者には、同一方向を向いて運動を示すなどの工夫も
必要に応じて行います。
対象者同士の動きが見やすいよう円型で運動を行い、指導者が適宜、動作を確認し
ながら実技を行うのも良いでしょう。
④負荷の見極め
マシン以外による筋力トレーニングにおいても負荷を徐々に増加させることで筋力
増強の優れた効果が得られるため、維持期からは適正負荷で筋力トレーニングを実施
することが望ましいです。ただし、道具を用いない運動では負荷の調整は難しく、実
施テンポや回数増、交互連続動作の切り替えによって自覚的な運動強度が、「ややき
つい」にあたる運動強度を目安として設定する必要があります。
ただし、高齢者は体調変動が大きいことから、負荷はその都度、変動してもかまい
ません。
⑤トレーニングの順番
基本はストレッチ、筋力トレーニング、クールダウンの順に行います。
筋力トレーニングの順番は、一般的に大筋群から小筋群、下肢から上肢の順番に行
うのが良いとされています。
実施場所の状況により、椅子や立位の運動と床上の運動に分け、筋力トレーニング
の順番の変更も可能です。姿勢の変化が少ないようプログラム内で順番を変更するな
どの組み立ても良いでしょう。
⑥使用している筋肉を意識させる
トレーニング時の見回りや観察の際に、使っている筋肉に軽く触れ、「○○の筋肉
に効いている(伸びている)のが分かりますか?」などと声がけをします。
何気なく運動を繰り返すのではなく、使っている筋肉をしっかり意識しながら行う
ことによって、筋活動量を上げることができ、筋力トレーニングやストレッチにとっ
て非常に効果的です。
⑦可動域の確認
トレーニング前に対象者個人ごとの可動域を把握することは、トレーニング期間を
通じ必要です。
また、極端に可動域が狭くトレーニング効果が十分発揮されないと判断した場合に
は、柔軟性の確保の優先、別種目への変更等、その者に適した代替の個別のメニュー
を作成します。
30
⑧学習時間
プログラムを提供する時間も重要ですが、むしろ家にいる時間等生活場面に、いか
に運動を取り入れるかが重要です。学習時間はこのような行動を定着させ、習慣化す
るための時間として位置づけられます。
⑨ホームトレーニング
本サービスは、週1回のボリュームであるため、種目の一部を家庭で行うよう指導
し、本サービスと合わせてトレーニング頻度を週2回以上とすることが必要です。
ホームトレーニングを実施する場合には、対象者本人にホームトレーニング用紙(別
添)を記入してもらうことで実施状況を確認できるとともにトレーニング継続の意欲
を保つことができるような工夫をすることが大切です。
最初はストレッチのみのプログラムから開始し、種目ごとに正しいフォームを確実
に習得できるように指導することが大切です。
1ヵ月目
ストレッチ
2ヵ月目
3ヵ月目
ストレッチ
ストレッチ
筋力トレーニング(基本) 筋力トレーニング(発展)
10回・2セット
10~20回・2セット
⑩事後アセスメント
実施計画をもとに、目標の達成状況や日常生活活動能力等を含めた事後アセスメン
トを行う必要があります。目標の達成と客観的な運動器の機能向上の状態を評価しま
す。
31
Fly UP