連載：素人映画論

教育学部助教授
中村 修也
バニー・マーシャル監督
況のもとで私がこの映画を一人で見ていたとご
なにげに真剣に見てしまったのだ。このような状
なかった。そして、一人旅の寂しさも手伝って、
しで見るのと変わらない状況で見なければなら
遊ぶトム・ハンクスの表情は文句なしである。
馴染みにくいが、デパートで子どもになりきって
ごす夜の演技は、見ている方もまだ違和感があり、
年がはじめて安宿で一人不安に駆られながら過
この映画の筋書きは、英語がわかろうがわかる
か。ならば大人になった主人公が子どもの世界で
いうファンタジーだけを描いているのであろう
この映画は小さな子どもが大人に変身すると
まいが、関係ないほど単純である。ある日突然、
活躍すればいい。ところが、逆に子どもが大人の
理解願いたい。
歳
わりまで通して見てしまったのが、このビッグで
日中映画を放映していた。その中で、最初から終
レビが映画専用のケーブルテレビかなにかで、一
全州の全州観光ホテルの一室。たまたまつけたテ
この映画を見たのも外国であった。場所は韓国
に大ヒット。それはそうだろう、考えているのが、
を尻目に、どんどん新企画を発表。これが子ども
の社長に見込まれ、特別入社。頭の硬い大人ども
を失っていない﹂青年に目をつけたおもちゃ会社
に困る。ところが、よくしたもので﹁子どもの心
されないまま、家を出なければならなくなり生活
の青年に成長してしまう。そして家族からも理解
全体評価としては受け入れられるものではない
も、それはあくまで大人社会の一部でしかなく、
大人の世界にはどんなにすてきな恋があって
象徴しているような気もする。
代社会で生きることは苦しすぎる、ということを
ある。しかし一方で、純粋な心を持った人間が現
跡を生み出す。ここではおもちゃ会社での成功で
世界で活躍してしまう。そのことは素晴らしい奇
歳の少年ジョッシュが、
あった。
実は﹁子ども﹂なのだから。そしてお定まりの恋
のだろう。青年は少年に戻ろうとする。
魔法にかかった
この日は、ハングルのわからないまま、一人旅
愛。しかしこれはまだ母親が恋しい年齢の子ども
ヒロインのスーザンは、
﹁このままでいて﹂と願
トム・ハンクス、エリザベス・パーキンス主演
を敢行して、身体は疲れきっていた。明日は朝早
と成熟したキャリアウーマン・スーザンとの不釣
なんとも切なさが残る一夜であった。
るべき世界に戻る。
くから智異山まで行かなければならない。よって
なんといっても光るのはトム・ハンクスの演技
う。美人の彼女の願いは観衆の願いでもある。ジ
まず、この時点で相当有名人であるトム・ハン
であろう。名探偵コナンと逆のパターンで、﹁身
合いな恋愛となる。さて、この恋の成り行きは？
クスを、私 は﹁見たことある俳優﹂程度にしか認
体は大人、頭は子ども﹂というのは、どうしても
早いうちに寝たほうがよいのだが、ついつい最後
識していなかった。それと、韓国のテレビである
不自然さが出てしまうものである。ジョッシュ少
ョッシュも一度は止まろうとする。しかし少年はあ
から字幕はハングル。それゆえアメリカで字幕な
と見ている者の好奇心をいやがうえにもそそる。
35
まで見てしまった。
12
図書館ホームページ:http//:www.bunkyo.ac.jp/faculty/lib/klib
(3)