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ヒップホップダンスの指導法に関する研究

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ヒップホップダンスの指導法に関する研究
ヒップホップダンスの指導法に関する研究
∼指導言語に着目して∼
教科・領域・教育学専攻
生活・健康・総合内容系コース
M10226D
片桐義昭
で収録し,逐語記録に起こした、指導言語の分析に
I.日的
ダンスは平成24年度から中学校において必修と
ついては,吉川らの作成した分類項目表にあるその
なる.ダンス領域にあるr現代的なリズムのダンス」
他の用語のカテゴリーである,運動の質,擬態語・
として実践されているヒップホップダンスにおいて
擬声語,比倫,副詞を,学習・指導に関する用語に
未だに実践力と指導力を伴った教員は少ない.そこ
移動した新たな分類項目表を作成し,これを用いて
で本研究では,ヒップホップダンスインストラクタ
行った.指導言語の集計は,逐語記録に基づいて1
ーのレッスン時に発する指導言語の実態を把握する
レッスン時における指導香語の使用頻度をカウント
ために,レッスン時の指導言語を逐語記録に起こし,
し,ストレッチ等の準備運動の時間を除いた45分
分析することによって,ヒップホップダンス指導の
レッスンとしての使用頻度になるように補正した.
ための基礎資料としての指導言語を得ることを目的
毎レッスン後に指導者自身のレッスンを5段階で
とする.
評価する項目,レッスン場面で指導がうまくいった
点とうまくいかなかった点を振り返って自身の行
■.方法
動・言動について自由記述で回答する2項目の合計
対象者は指導歴3年のヒップホップダンスインス
3項目のアンケートを行った.
トラクターA(以後指導者A)と,指導歴7年のヒ
受講者に対しては3回目のレッスン後にレッスン
ップホップダンスインストラクターB(以後指導者
の目標であるFリズムを身体で感じて,楽しくダン
B)である.両指導者のレッスン受講者は,兵庫教
スを踊ることができる」を指導者が達成できていた
育大学大学院生のダンス経験のない平均年齢23歳
かを間う質問項目4項目からなるアンケートを実施
の4名とし, レッスンは受講者が動くのに必要な
し,回答については5件法で行なった.
スペースを確保できる場所で行った、
VTRで録画したレッスン場面を用いて,第三者の
両指導者の共通の目標を「リズムを身体で感じて,
ダンスインストラクターに各受講者の技術上達度を
楽しくダンスを踊ることができる」と設定し,45分
5段階評価で依頼した.1回目から2回目,2回目
のレッスンを3回行った.指導内容はリズム指導と
から3回目の各受講者の前回のレッスンからの技術
してのダウン,サイドステップ,グレープバイン,
上達度を評価してもらい,指導言語と同様に補正を
ボックスステップの基本的なものである.両指導者
打つだ.
にはレッスンの目標を達成するために指導内容が不
足していると判断した場合は,指導内容を増やして
皿、結果と考察
も構わないものとし,さらに指導の順序,時間配分
ストレッチ等の準備運動の時間を除いた指導時間
は両指導者に任せるものとした.使用するコンポ・
は指導者Bのほうが毎レッスン4分以上長かった、
曲は両指導者に依頼した.
設定した4項目の指導内容以外に指導者Aはリズム
指導言語については,両指導者の発言した内容を,
指導のアップを指導し,指導者Bはパドブレ,フリ
ボイスレコーダー(オリンパス社:voice・trekV65)
ークを指導した.両指導者とも設定した4項目を指
一416一
尊していることから,これらの指導内容は両指導者
指導者Aがr3.81」,指導者Bが「4.65」であった
がレッスンの目標を達成するために必要であると判
ことから,指導者Bの受講者の技術上達度のほうが
断したために新たに加えた指導内容であると考えら
指導者Aの受講者を上回ったと判断できた、これに
れる.
は指導時間,指導内容および指導言語として掛け声,
指導者Aの3日間の言語数の合計平均は9274.O
擬態語・擬声語や比倫などのカテゴリーの言語を用
語であった、指導言語については,運動を構成する
いることが影響したと考えられる.
要因に関する用語が最も多く,その中のカテゴリー
以上のことから,日常動作,時間性,空間性,評
である時間性の「カウント(1.2.3.4)」や「リズム」,
価,掛け声,擬態語・擬声語,比倫,副詞のカテゴ
次に言語数が多かった基礎的な身体運動に関する用
リーの言語を技術指導場面で使用することが有効で
語のカテゴリーである目覚動作の「踊る」やr伸ば
あると考えられる.
す」,学習・指導に関する用語のカテゴリーである評
体育の授業でヒップホップダンスを扱う場合には,
価の「そう」や「オッケー」,運動を構成する要因に
レッスン初目に比倫等の言語によってヒップホップ
関する用語のカテゴリーである空間性の「右」やギ上」,
ダンスの楽しさや面白さを生徒に理解させるために,
言語数は少ないが3日間増加し続けた運動生理に関
基礎技術を習得させる必要がある.技術指導場面で
する用語のカテゴリーである呼吸のr、自、」やr深呼
は,オリエンテーションでダンスのイメージを膨ら
吸」が多く用いられていた.
まし,本研究で得られた指導言語として、評価のrそ
指導者Bの3日間の言語数の合計平均は9989.7
う」「オッケー」や擬態語・擬声語の「スン」「ドン」
語であるが,1目目は11267.6語で2日目,3日目
の書語を用いることによって,生徒の学習意欲を高
と減少した.指導言語については,指導者Aと共通
めさらに動きをイメージさせることによって技能を
の時間性,空間性,日常動作のカテゴリーに加え,
上達させることができると考える.
運動を構成する要因に関する用語の次に多かった学
習・指導に関する用語のカテゴリーで,1目目の言
w.まとめ
語数が最も多かった副詞の「しっかり」や「こう」,
本研究では,r現代的なリズムのダンス」のヒップ
2日目と3目目に最も多かった擬態語・擬声語のrス
ホップダンス指導における指導言語の基礎資料を得
ン」や「ドン」,言語数は少ないが3胃間増加し続
ることを目的とした.
けた学習・指導に関する用語のカテゴリーである掛
指導歴の異なる2名のヒップホップダンスインス
け声のrヘイ」「ホイ」が多く用いられていた.さら
トラクターを対象としてレッスンを行い,指導言語
に比峨の「タワーレコードで翻意しているときにの
を分類・分析し,各種アンケートや技術評価と照ら
っている人」など動きをイメージさせるための言語
し合わせたところ,レッスン初日にヒップホップダ
を使用しており,さらに,指導者へのアンケートの
ンスのイメージを膨らませ,受講者のテンションを
1目目の記述内容に「ヒップホップダンスとはどう
向上させるrヘイ」のような言語を効果的に使用し
いうものか,もっと明確にイメージさせられる言語
たり,r踊る」のような動作を表す言語と共にrカウ
があってもよかった」の記述がみられたことから,
ント(1.2.3.4)」やr右」などのタイミングや方向
言語数は少ないが意識して用いたカテゴリーと考え
を示す用語を主に用いることや,動きのイメージを
た.
伝えるrスン」rこう」のような用語を交えて使用し,
受講者へのアンケートでは,指導者Aは,「楽し
「そう」などの受講者を的確に評価する言語を用い
くダンスを踊ることができましたか.」の項目の平均
ることで,ヒップホップダンスの技術を上達させら
が「5」であったことから,評価の言語を多く用い
れることが推測された.
て指導を行うことが,受講者の楽しさに影響するこ
とが示唆された.第三者による受講者の技術上達度
主任指導教員(山本 忠志)
の評価の結果,受講者の技術上達度の全体平均では,
指導教官(山本 忠志)
一417一
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