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美術科学習指導案

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美術科学習指導案
美術科学習指導案
日
時
場
所
学
級
指 導 者
ゲストティーチャー
平成21年9月15日(火)第2校時
大和中学校 美術室
3年3組 36 名(男 21 名,女 15 名)
教育センター所員 江島 裕章
県立美術館 学芸員 野中 耕介
授業の概要
本講座授業のテーマは,「グループ討議を取り入れ,コミュニケーションを中心とした鑑賞授業」で
す。今回の授業は,鑑賞授業に慣れていない生徒でも気軽に取り組むことができる対話型の授業を提
案します。
1 題材名 「1枚の絵から」
2 題材設定の理由
○題材観
鑑賞の授業の多くは,教科書や資料集などに掲載されている作品及びコンピュータやスクリーンに映し出
された作品など,印刷物や映像を見て鑑賞するケースがほとんどである。本来ならば美術館へ行き,展示さ
れている本物の作品をじっくりと鑑賞するほうがよいことは明らかである。逆にいうならば,教室で実際の
作品をじっくりと鑑賞するということは生徒にとってとても新鮮で,これまでにない感動をあたえると思わ
れる。作品から得られる新たな発見や感動の力を,今回の授業のねらいである「コミュニケーション」への
意欲に結びつけたい。
また,B鑑賞について,新学習指導要領では第3,2,(2)において,
各学年の「B鑑賞」の題材については,日本及び諸外国の児童生徒の作品,アジアの文化遺産に
ついても取り上げるとともに,美術館・博物館等の施設や文化財などを積極的に活用するようにす
ること。(中学校学習指導要領:文部科学省 平成20年3月)
と,内容の取扱いと指導上の留意点を記している。
生徒が思い描くイメージをいかにして言葉で表現し,他者に伝えるかということが重視されている。しか
し,周囲の目を気にする思春期の生徒にとって,作品から受けたイメージや感想を自分の言葉で積極的に表
現し,グループ批評するなどのコミュニケーション主体の授業展開は,ハードルが高く,難しい面もあ
る。そこで今回はアメリア・アナレス1)らが唱える「対話型鑑賞法」と呼ばれる手法をベースにした鑑賞授
業に取り組むこととした。この手法は従来のピクチャースタディとは一線を画すもので,鑑賞者が純粋に絵
から読み取るものだけを基に,それぞれが思い思いにイメージを膨らませることを基本とする手法であ
る。今回はアメリア・アナレスの手法と,このメソッドの背景にあるアビゲイル・ハウゼン2)のVTC3)
という考え方を基に,気軽に取り組める初歩的な対話型の鑑賞授業を提案したい。
○生徒観
先にも述べたが,思春期の中学生,特に中学校2~3年生くらいになると必要以上に友達の視線を意識し
たり,自由な発言や目立つ行動を控えたりする傾向がある。特に自分が感じた感想や考えなどを発表するこ
とに対しては強い抵抗感を持つ場合が多い。「対話型鑑賞法」を進めてきたアメリカなどと違い,学校教育
の中で小さい時から自分の考えを発表する場があまりないことが影響しているものと考えられる。最初
に,自分が感じたことを遠慮することなく発言できるような受容的な雰囲気づくりを行い,お互いに感じた
ことを話し合えるような授業展開にしていきたい。
○指導観
今回の授業は,新学習指導要領の中で言われている「コミュニケーション能力の育成」を中心に取り組み
たい。中学校美術科の鑑賞授業において,コミュニケーション活動を中心とした授業を行うには,まず生徒
の意識を変える必要がある。そこで,グループ討議を中心に,連想ゲームのような活動をとおして,自己表
現への意欲と言語による表現技能を養いたい。また,作品を見たときに連想するものを思い浮かべ,その2
つの関連性を説明する学習をとおして,学力向上の鍵と言われる非連続型テキスト読解力4)を美術科にお
いて育成する手法を提案したい。
また,ゲストティーチャーとして県立美術館の野中学芸員を招き,TTの形式で授業を行うことで,グル
ープ討議を行う生徒の活動をきめ細やかに支援する体制を整え,より生徒が自由な発想をできるようにした
い。
3 題材の目標
○ 作品等を見て,自分が感じたことや考えたことを言葉で書いたり,発表したりすることができる。
(鑑賞の能力)
4 準備
【教師】・作品1「赤・青・黄のコンポジション」(ピエト・モンドリアン 1921 年作):印刷物
・作品2「雲の製造Ⅰ」(野村 昭嘉 1988 年作):実物
・資料1「三色ねじり棒の写真」
・資料2(野中学芸員の資料)
・作品2を覆う布,ワークシート(2種類),プロジェクター,パソコン,スクリーン
5 本時の展開(全1時間)
過
程
学習活動
教師の働きかけ・指導上の留意点
導
入
1 作品1を見て,感じたり,連
想したりする。
指導者(T)
○ 作品1を見せ,第1印象や連想したこ
とを発表させる。
【 作品を鑑賞し,自分なりの言葉で感想
を発表することができるか 】
評価【
】
ゲストティーチャー(G)
2 学習のめあてを知る。
作品等を見て,自分が感じたことや考えたことを,どんどん書いたり,発表したりしよう。
○ 発言しやすい雰囲気づくりに心がけ
る。
T 作品を見て,自分が感じたことを発表
するにあたり次のことに注意させる。
展
開
3 作品1と資料1の関連要素を
考える。
・気軽にイメージや感じたことや考えたこ
とを発表させる。
・うまく言えなくてもよいから,言葉にさ
せてみる。
・他人の感想を大切にさせる。
・他の人に分かりやすいように,発表させ
る。
○作品1から連想した資料1を紹介し,生
徒に2つの関連性を想像させ,発表させ
る。
・造形要素やよさ,美しさに関する発言を
意図的に取り上げる。
【 自分なりの言葉で考えたことを発表す
ることができるか 】
T 次に,なぜ,これを連想したのかを説
明する。
4 ゲストティーチャーと出会
う。
○自己紹介をする。
5 作品1と資料2の関連要素を
考える。
○作品1から連想した資料2を紹介
し,生徒にその関連性を想像させ,発
表させる。
【 自分なりの言葉で考えたことを発表
することができたか 】
・造形要素やよさ,美しさに関する発言
を意図的に取り上げる。
6 作品1について知る。
展
開
○作品1の題名や作者名などを紹介す
る。
7 作品1を見て,感じたり,連
想したりする。
(1) 短時間の鑑賞
T 尐し距離を置いた位置に絵を置き,10
秒程度,作品を見せ,第一印象としてな
にを感じたかを発表させる。
【 自分なりの言葉で考えたことを発表す
ることができるか 】
(2) じっくりと時間をかける
鑑賞
T ワークシート1に第一印象を文章で書
き,可能ならば連想するものを1つ挙げ
させ,ワークシート2に書かせる。
【 自分なりの言葉で考えたことを書くこ
とができるか 】
G 机間巡視し,連想したものをワーク
シートに書けない生徒がいれば支援す
る。
T 絵に近づいて時間をかけて細部まで鑑
賞させ,感想をワークシート1に書かせ
る。全体的に鑑賞したときに連想したも
のを1つ,細部を見たときに連想するも
のを1つ,ワークシート2に書かせる。
【 自分なりの言葉で考えたことを書くこ
とができるか 】
G 机間巡視し,連想したものをワーク
シートに書けない生徒がいれば支援す
る。
9 学芸員さんの言葉
10 活動の反省
G 今日の活動をワークシートに書かれ
てある造形要素を示すキーワードを中
心にまとめてもらう。
T 今日の学習を言語活動の様子を中心に
振り返り,生徒が書いたワークシートの
造形要素を示す言葉を取り上げ,賞賛す
る。
6 評価規準
学習活動における評価規準
(評価資料)
評価基準及びCの生徒に対する支援(→)
A 十分に満足
B おおむね満足
C 努力を要する
【鑑賞の能力】
作品を鑑賞し,自分なり
作品を鑑賞し,自分なり
作品の鑑賞に関心が持て
作品を鑑賞し,自分なり の言葉で,感想を造形的な の言葉で感想を言葉で書い ず,活動が停滞している。
の言葉で感想を言葉で書い 視点で分かりやすく言葉で たり,発表したりすること → 作品に描かれているも
たり,発表したりすること 書いたり,発表したりする ができる。
のを1つ1つ確認しなが
ができる。
ことができる。
ら,思い浮かぶものを聞
く。
7 参考文献
・ 「なぜ,これがアートなの?」 アメリア・アナレス 淡交社
・ 「みる・かんがえる・はなす」 アメリア・アナレス 淡交社
・ 「対話による鑑賞教育」
上野 行一
光村図書
1998 年
2001 年
平成 20 年
8 解説
1) アメリア・アレナスの対話型美術鑑賞
MoMAの教育部講師。VTCの開発にも携わり,独自の「対話による美術鑑賞」を広めている。1998
年に出版された著書『なぜ,これがアートなの?』や同名の展覧会,NHKで放送された番組「最後の晩
餐ニューヨークを行く」で高く評価され,日本各地の美術館で実践されている対話型ギャラリートークに
も大きな影響を与えた。
2) アビゲイル・ハウゼン
VTCの開発に携わった人物。フィリップ・ヤノワインとともに非営利団体VUE(Visual
Understanding in Education)を立ち上げた。
3) VTC
1980 年代後半に,ニューヨーク近代美術館(MoMA:the Museum of Modern Art )で開発された鑑
賞教育。学校で実施されることを前提に組み立てられたもので,その目的は,美術について話し合うこと
によって,生徒たちが「考える」方法を学ぶ手助けをすることにある。美術作品を見て考える力をつける
と,生徒の学力や社会的なスキルも向上するというハーバード大学による研究結果もあり,世界各地で行
われるようになった。
4) 非連続型テキスト読解力
読解力とは,一般的には文章などを読み解く能力を指す。とりわけ日本では,国語教育を想定した上
で,「教材としての文章の内容を正確に読み取る」という意味合いで用いられることが従来より多かった。
しかし近年,PISA の調査結果から,日本は国際的に見て読解力が高い水準にないことが明らかとなって
いる。この調査における,「読解力」に相当する分野は"Reading Literacy"と呼ばれるものであ
り,「PISA 型読解力」などの表現で従来の用法と区別されている。文部科学省によれば,この両者の違
いを踏まえ,後者の「PISA 型読解力」の特徴を次のようにまとめている。
1.
2.
テキストに書かれた情報を理解するだけでなく,「解釈」し,「熟考」することを含む。
テキストを単に読むだけでなく,テキストを利用したり,テキストに基づいて自分の意見を論じ
たりすることが求められている。
3.
テキストの内容だけでなく,構造・形式・表現法も評価の対象となる。
4.
テキストには,文学的な文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけでなく,図・グラフ・
表などの「非連続型テキスト」を含んでいる。
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