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第58回 ヨーロッパ風の風情が残る青島

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第58回 ヨーロッパ風の風情が残る青島
第五十八回:
五十八回:
ヨーロッパ風の風情が残る青島
常陽銀行上海駐在員事務所
中国では、その土地の歴史的背景や風土から様々な街の特徴がでます。なかでもヨーロッパ
文化が入り混じり、「海上の都市、欧亜の風情」として異色の街を形成し、幅広い人々に親しま
れているのが青島です。
今回、業務トレーニーとして上海に赴任している高田が、週末の休みを利用して山東省青島
市を訪れましたので、この様子を紹介します。
1.青島の魅力
青島は黄海に面した山東半島の東に
位置する人口約800万人の大都市です。
周囲を海で囲む温暖湿潤の季節風大陸
気候に属し、夏は涼しく、冬は暖かい
気候で、中国西部からの黄砂もほとん
ど届かないため、昔から中国の避暑地・
避寒地として親しまれてきました。
青島が、なぜ傍題で「海上の都市、
欧亜の風情」と表現されたのでしょう
青い海に沿って、高層ビルと欧亜風の住宅が共存する
か。それには、青島の歴史的背景を振
り返る必要があります。実は、青島は
1897年から30年以上にもわたる間、ド
イツと日本の占領下にありました。そ
のため、多くの外地住民が青島に移り
住み、今でも街路樹が続く住宅街の随
所にヨーロッパの面影を残しています。
今回、欧亜の風情が残る旧市街や八大
関景区など、赤色に統一された石積み
の住宅街の周辺を歩いてみましたが、
赤レンガの建築物が続く街並み
緑々と木の生い茂る静かな公園で人々
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がベンチで読書をする風景は、ひと時、
大都会の喧騒を忘れさせてくれました。
必ずしも洗練された街並みではありま
せんが、ヨーロッパの素朴さを残した
まま時を刻んだ、どこか落ち着いた雰
囲気がありました。
青島では近年の人口増加と経済都市
への発展により、高層ビルやマンショ
ンの建設が相次いでいます。紺碧の海
に囲まれ、高層ビルと赤レンガのヨー
落ち着いた雰囲気の八大関景区の住宅街
ロッパ建築の家々が共存する風景は、
中国のどの地域でもなかなか見ることができない絶景です。
2.青島ビールの魅力
青島と言えば、誰もが思い浮かぶの
が中国を代表するビールメーカーの一
つ、「 青 島 ビ ー ル( チ ン タ オ ビ ー ル )」
です。毎年8月第2週目から始まる「青
島 国 際 ビ ー ル 祭(
)は
今年で22回目の開催となりますが、地
域の文化的イベントとして確実に定着
しています。
青島ビールの歴史は、青島が1898年
歴史を感じさせる青島ビール工場
よりドイツの租借地となり、租借地の
産業振興に向けてビール生産の技術移
転を行なったのが始まりです。その後、
1903年にドイツの投資家がビール醸造
技術を利用して、ドイツ式のビール製
造工場の操業を開始しました。
青島ビールは実は日本とも深く関係
しています。日本は1914年の第一次世
界大戦でドイツ権益であった青島を占
領し、後のヴェルサイユ条約(1919年)
青島啤酒街に並ぶビールバー
のなかでドイツから青島の租借権等を
引き継ぎました。この諸権益のなかに青島ビールも含まれており、日本の大日本麦酒が1945年
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の日本の第二次世界大戦敗戦まで経営権を取得することになったのです。
今や中国は世界の年間ビール消費量の4分の1を占める世界最大の市場となっており、発泡
酒などを含めた日本のビール類市場の7倍以上の規模です。この巨大市場で、青島ビールは燕
京ビール(北京)に次いで国内第2位のシェアを維持するとともに、世界各国で販売されるグ
ローバルヒットブランドに成長しました。特に上海では青島ビールのシェアは1位であり、名
実ともに一大ブランドとなっています。
青島にお越しの際は、是非、創業100周年を記念して造られた青島ビール博物館にも足を運
んでみてください。創業当初の姿を再現した工場にある博物館には、創業から現代に至るまで
の青島ビールの歴史を辿った各種展示品や工場内の製造工程を見ることができ、見学後は格別
な青島ビールを試飲できます。また、博物館の道沿いにはビールバーが軒を連ねる青島啤酒街
が続き、新鮮なビールを飲み歩くことができます。
3.青島市民の生活
青島市民は歴史上、他国の占領下に
あったためか、外来文化への受容度が
比較的高く、外国人に対しても寛容で
あると言われています。そのため、青
島から留学、就業、研修などで海外へ
飛び立つ若者も多いようです。
また、青島は貧富の差が少なく、か
つて日本が『1億総中流』と呼ばれた
時代と類似しており、今や贅沢品の消
バス停に集まる買い物客、公共バスが市民の足に
費は中国全土でもトップクラスです。
このような背景から、青島は日本の
ビジネスモデルを持ち込みやすいマー
ケットであると言われています。青島
の新市街に位置する香港中路地区には、
青島市民の活発な消費威力を掴もうと、
ジャスコ、マイカル、カルフール、陽
光百貨、海信広場、百麗広場、銀座セ
ンターなど、内外資の大規模商業施設
が乱立しています。
ジャスコの駐車場は朝から満車になる
このなかで勝ち組として連日多くの
人でごった返すのがジャスコです。ジャスコのローカルに徹した商品陳列が青島市民の嗜好に
マッチし、青島市内に3店舗を展開しています。最も売り上げの大きい店舗は、ジャスコの世
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界中の店舗のなかでもトップクラスの
売上を計上しているそうです。また、
ミニストップがジャスコと合資で設立
したコンビニ(迷你島)が市内で店舗
を急激に増やしています。
なお、青島には地下鉄がなく、市民
の日常の足は公共交通バスやタクシー
もしくは自家用車です。ジャスコでは
朝10時の開店と同時に駐車場が一杯と
なり、直結する大通りは大渋滞となっ
海信広場のエルメスとプラダの店構え
ていました。また、百貨店の前のバス
停には、公共バスを待つ市民で一杯になります。現在、市内では地下鉄の建設が続いていますが、
完成時には市民の足にも大きな影響を及ぼすでしょうし、地下鉄の駅周辺を中心に更なる発展
が見込まれると思います。
4.経済都市としても大きな飛躍を遂げる青島
どちらかと言うと青島は観光都市として有名ですが、近年は中国沿岸地域を引っ張る経済都
市としての一面も併せ持っています。今や青島は「企業が最も満足できる都市」において中国
全土で1位、また世界銀行より「投資環境金メダル都市」にも選出されるなど、外資企業にとっ
て現地法人設立の進出筆頭候補先として、今最も注目を浴びている都市なのです。
これら投資の魅力ランキングで上位に選出される主な理由としては、世界10大港湾の一つで、
年間4億トン近くの貨物を取り扱う港湾を有している点や、早くから国家級のハイテク産業開発
区を整備し、企業所得税などの優遇措置を設けるなど、企業の受け入れ態勢を確立してきた点
が挙げられます。そのため、中国家電最大手のハイアールや通信のハイセンスなどの一流企業
が青島に重要拠点を設立しました。日系企業においても既に約800社が青島に進出し、約3千人
の日本人が駐在していますが、開発区では継続して外資企業誘致に積極的であり、今後も日系
企業の進出が相次ぐと考えられます。
5.終わりに
青島にはあまり娯楽施設はありませんが、仲間と和気あいあい海鮮料理を食べ、出来立ての
青島ビールを飲むことが最大の至福です。また、紺碧の海ではマリンスポーツを楽しむことが
でき、ヨットの上で波に揺られながらゆっくりとした時間を過ごすのも良いかもしれません。
このように青島は経済都市としての位置づけとともに、歴史的に良い形で外地の文化を取り入
れ、共存するすばらしい都市です。ヨーロッパの素朴な風情が残る青島の魅力を感じに一度訪
れてはいかがでしょうか。
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