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「ありがとう」それが私 の生きる力
六年 田之畑 「ありがとう」それが私の生きる力 徳之島町立神之嶺小学校 「ありがとう 果奈子 」葉 で 生 き る 力 が わ い て き た 。 チ チ チ チ 私 は 、 そ の。言 ……。小鳥のさえずりと共に、私は朝ご飯探しへ出 食べなくても、十分生きていけるのだ。 草のしげみから、私の仲間のハブがやってきた。ハ ブの中でもきょう暴なやつらで、いつも私に悪口を 言ってくる。 「やい、おく病者。年老いたアマさんも食べること ができないなんて、情けない れがでそうなのをがまんしながら、アマさんにかけ 向いていた。私は、さっと木のかげにかくれ、よだ 毛が、風になでられ、ふっくらとしたおしりが私に 年寄りだ。私の大好物のえさでもある。やわらかい て、自分の体験話を仲間のウサギに聞かせているお が頭の中でとぐろをまくようにぐるぐる回っていた。 ウサギを食べないといけないのか。このことばかり か。おだやかな性格ではだめなのか。アマミノクロ 私は、おく病なのか。ハブは強くないといけないの 今日、あいつらが言ってきたことが頭から離れない。 その夜、私は、自分のことについて考えていた。 」み に 去 っ て い っ た 。 そ う 私 に 言 い 残 す と 、 草 の し。 げ るあいさつを必死で探した。 夜中になっても眠れず、私は、家の外へ出た。夜の かけた。ガジュマルの根の奥にひっそりとある私の 「今日もやっぱりだめだ 森は、暗やみに包まれた世界で、きのこがあやしげ もの悲しいカラスの鳴き声が聞こえた。気がつくと、 。」。 朝 食 を の が し た 私 を 責 め どうしても食べられない に光っていた。 家からはい出る。にょろにょろと小道を歩いている る自分が、少しおかしく思えてきた。私は、めずら 「やい。おく病なやつ 夕焼けが黒い雲につつまれながら、海の水平線へと しいハブだ。自分でも何となく気付いている。もと 。」 とがった声が聞こえた 。あいつらだ。どうしよう。 と、ほら穴に住んでいるアマミノクロウサギのアマ もとハブは夜行性だが、私は朝が大好き。朝の空気 私はこわくなり体がふるえた。 しずんでいった。私も、とぼとぼと家へ向かった。 は気持ちがいい。しかも、この島の森の空気は、特 「なぜ、お前がこんな時間にいるんだ さんにばったり出会った。木の枝をつえ代わりにし に新鮮で、おいしく、ネズミやウサギなどの動物を 。」 もかまれた。痛かった。くやしかった。体よりも心 そう言われながら、首や腹、しっぽ、どこもかしこ た。 あいつらは、いつの間にか、風のように去っていっ 気に吹き飛ぶようなひびきだった。私の心は、焼き 「ありがとう こ れ ま で 、 人 間 が 住 ん で い る 町 に 行 っ て。」 、つかまっ たてのパンのようにほかほかになった。今まで聞い の中に強い痛みがズキズキとはしった。 てしまったり、もどってこられなくなったりした仲 たこともなかった、ま法の言葉。そのたった一言が、 。」 アマさんが、 私に言った。もやもやした気持ちが一 間はたくさんいる。いっそのことハブの世界から逃 私に生きる力をあたえてくれた。 「私は、このハブの世界にいていいのかな げ出し、人間の世界で一生を終えよう。冷たい雨が、 アマさんは続けて口を開いた。 「あいつらは、私を助けているあなたの姿を見て、 降っていた。葉っぱのつゆに、うつむいた顔が写っ ていた。 「 え っ 、 私。」 が勇かん た てのぞいてみると、アマさんが苦しそうに、横たわ 」った感情が、一気にあふれた。 お ど ろ き と 喜 び が 混。ざ おく病ではなく、勇かんなんだと思って助け っていた。先ほどの雨で、杖をすべらせて転んだよ こんな私でも、相手から感謝されること、自分の存 「だれか助けて うだ。すりきずが痛々しく見える。私は、ガジュマ 在を認めてくれる仲間がいること、それが、何より んじゃよ ルのつたをつたって、ほら穴に飛びこんだ。穴の中 もうれしく思えた。 。」 だれかの声がし た。奥のほら穴からだった。近づい は、真っ暗で、虫の目が光って見える。しけった土 に力を入れる。そのとき、だれかが私のしっぽを上 げようとしても、ぬれていて岩のように重い。全身 がら、今日も、私は、アマさんのおしりを追っかけ 」の 光 に 包 ま れ な 朝 の さ わ や か な 空 気 と ま ぶ し い 太。 陽 「ううん。朝の空気は、気持ちいい 夜が明けた。 から引き上げてくれるのが分かった。あいつらだ。 ている。たまに、よだれをたらしながら。 のにおいが生ぐさく感じた。アマさんの体をおし上 今まで、悪口を言っていたあいつらが、私を助けて くれている。ようやく、はい上がることができた。