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資料1(PDF) - 株式会社エクセル

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資料1(PDF) - 株式会社エクセル
 アニマルバイオジェニックス座談会
動物の医療現場に於けるバイオジェニックスの今後
2010 年 12 月 9 日
人間の医療現場の様々なシーンで、プロバイオティクスを超
える最先端の考え方として脚光を浴びている「バイオジェニッ
クス」。このバイオジェニックスがこれからの獣医医療現場で
どのような活用の可能性があるか、各方面で活躍されている
先生方にお集まりいただきお話をお伺いしました。
――はじめに、今回のテーマ「バイオジェニックス」のお話しの前に、
現在の獣医医療に於けるプロバイオティクスについて、どのような現状
にあるのかを小方先生よりお話頂きたいと思います。お願い致します。
小方 プロバイオティクスで 1 番わかりやすいものは、ヨーグルトです。
ヨーグルトをペットに与えている飼い主の方が非常に多いのですが、本
的に下痢は止まっていきますが、下痢を止めることが最大の目的ではな
当に有効かという質問をよくいただきます。これについては、種によっ
く、下痢を起こしにくい状況あるいはその腸内環境に整えて、それにより
て消化管の中の働きがかなり異なるので、人間と同じような量で与えて
体全体が整っていくというのがこのプロバイオティクス・プレバイオティ
しまうと、時には消化管障害を起こすこともあります。特に犬は胃酸が
クスの考え方のベースにあります。ただ、どうしても犬、猫の場合には
強いので、せっかく与えた乳酸菌がそこで死んでしまい体外に排出され、
強力な胃酸があるので、乳酸菌を生きたまま腸管に送り届けることが難
結局良い菌の有効性が失われてしまいます。要するに、経口的に乳酸菌
しい。逆に直接腸の中に生きた乳酸菌を入れても、その乳酸菌自体が自
を与えてもあまり効果が期待できないということです。それならば、自
分のものではなく、結局腸内細菌叢や腸内環境にとっては外来菌なので、
分の体の中にある乳酸菌や善玉菌を活性化し増量していくことが理想的
短期間で死滅するか体外に排出されてしまいます。それよりも、取り入
ということになります。
れた乳酸菌の生成物質が二次的に腸内に働きかける作用の方が、むしろ
有効ではないかと考えています。そういう意味ではプロバイオティクス
――田向先生は臨床現場で、プロバイオティクスをどのように活用され
の生きた菌を送り込むという発想自体が、ペットの場合には限界な部分
ていますか?
があると考えています。もちろん良い点もあるのですが、ただ想像して
いる以上の効果が期待できないのではないでしょうか。
田向 外来診察で下痢や軟便の主訴はとても多いです。あとは皮膚疾患。
この 2 つが大体半分くらいは占めます。そして、お腹を壊す原因がウイ
――今プロバイオティクスを超える「バイオジェニックス」が注目され
ルスや細菌性の下痢だとかということではなく、やはり飼い主さんの飼
始めています。この理念は人の健康分野から誕生したということですが、
養管理の問題が原因となってお腹を壊してしまうケースが多いですね。
福井先生いかがでしょうか。
表 1:乳酸菌製剤の種類
エキゾチック系の草食動物で言えば食物繊維の不足などです。そういっ
た場合には、薬で治療していくよりプロバイオティクスの考え方を活用
して治療しています。
――佐草先生の病院ではいかがでしょうか?
佐草 最近のペットはストレス社会の中にいて、相当消化管が荒れて
いるんです。興味があったので、以前腸内細菌叢の数値的なデータを
取ってみたことがあるのですが、昔に比べて腸内細菌叢が貧弱になっ
乳酸菌製剤の種類
腸内細菌のバランスを改
プロバイオティクス 善することで有益に働く
生菌添加物
有用菌の増殖を促進した
り、その活性を高めるこ
プレバイオティクス とで健康に有利に作用す
る難消化性成分
生菌類(乳酸菌・納豆菌・酪
酸菌)、ヨーグルト
オリゴ糖、食物繊維、難消化
性デンプン
腸 内 フ ロ ー ラ を 介 さ ず、生理活性ペプチド、乳酸菌生
バイオジェニックス 直接生体機能を調整する 産物質、乳酸菌生成エキス、
食品成分
植物フラボノイド
ている子が非常に多いという現実が浮かび上がってきました。田向先
生が言うように、すぐにお腹壊す子や環境に左右されて体調を崩した
福井 プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックス
り、食事をちょっと変えただけで下痢してしまう。そういう子は、やは
というように分ける時代になったのはつい最近です。(表 1)平易に言う
り腸内細菌叢がものすごく貧弱なんですね。そのような状態からプロバ
と「生きた菌」それから、「菌の餌」、それと「菌が出した分泌物と菌体
イオティクスやプレバイオティクスを活用して、いかに良性の腸内細菌
物質が直に腸管にいる乳酸菌に働きかける」という分け方です。人間も
を活性化し、腸内細菌叢のバランスを良い状態に戻していくかという作
他の動物のように胃酸を持っているので、直接腸には届きにくいのです。
業が、臨床現場では非常に必要なことになってきます。よくプロバイオ
ソフトカプセルにいれて腸まで放り込めばいくらでも乳酸菌は入ってい
ティクスで期待されてしまうのが下痢止めとしての効果ですが、あく
きますが、これでは本人の元々持っている相性のいい乳酸菌が増えてこ
までもこれは下痢止めではないんです。腸内環境を整えることで二次
ない。その点バイオジェニックスは、お腹にすむ乳酸菌が住みやすい環
境を作り出し、その人が生まれた時から持っている自前の乳酸菌を活性
化し増やしていこうという考え方です。人間は雑食ですから腸内菌のバ
表 2:乳酸菌生成エキスがマウスの腸管免疫に及ぼす影響に関するデータ
新潟大学大学院 教授 安保 徹 先生の研究よ
ランスが崩れて時間とともに生活習慣病などを患ってしまう。その流れ
を止めて本来の姿に戻すには、自分の持っている乳酸菌などの善玉菌を
増やすことが一番なんです。それには、善玉菌だけが住みやすい環境を
作る乳酸菌生成エキスを直に取って、悪玉菌など他の菌が住みにくい環
境を作ることで健康的なバランスを保つことがベストだと考えています。
――バイオジェニックスはプレバイオティクスとプロバイオティクスと
どこが違うのですか?
マウスに乳酸菌生成エキスを 1 週間経口
摂取させ、腸上皮細胞間リンパ球(IEL)
、
腸の NK1.1+T 細胞の変化を測定
福井 基本的にプロバイオティクスは、外来の乳酸菌類を口から入れる
ことです。しかし、その外来の乳酸菌は異物と判断されて外へ出されて
[Fig.1] 腸上皮細胞間リンパ球が増加。腸管上
皮粘膜における免疫防御の増強を示唆
[Fig.2] 腸の NK1.1+T 細胞が増加。自己免疫
疾患や癌に対しての有効性を示唆
[Fig.3]Th1/Th2 バ ラ ン ス(Th1 優 位 ) が 改
善され、各種アレルギー疾患や癌治療におい
ての有効性を示唆
しまう。それで、プレバイオティクスというオリゴ糖など生きてる乳酸
菌の餌を入れますが、これはその腸が健康でしっかりしてれば多少は良
いかもしれないですけれども、その餌は乳酸菌だけでなく、悪玉菌の栄
養にもなってしまいます。その点バイオジェニックスは、善玉菌を元気
にするエキスを取り込むことで、いい菌だけを育てることができる。つ
いうことですね。それから、もう 1 つは福井先生がおっしゃっていたよ
まり環境をガラッと変えましょうということです。汚れた腸内をもとの
うに腸内の免疫機構、パイエル板に働きかけて免疫機能のバランスを取っ
腸内細菌叢に戻すのになるべく薬などに頼らず、その菌が住みやすい環
ているということ。今、獣医臨床現場で腸内細菌叢を改善していくため
境を作るのが理想ですね。それがバイオジェニックスの基本の考え方だ
には、消化 ・ 吸収の改善が必要だと考えられています。改善することで
と思います。話がそれますが、フグやカキなどの魚介類養殖現場では、
血液の浄化、そして肝臓あるいは腸内の異物を解毒する機能が向上しま
病気の予防として餌に抗生物質を混ぜ込んで使用します。でも、悪い菌
す。更に動物の免疫機能の異常が非常に多く、1 つは免疫の欠乏、もう 1
も良い菌も殺してしまう抗生物質で腸内を無菌にすると、その後結果的
つは自己免疫低下。このような場合にも、バイオジェニックス効果を持
に悪い腐敗菌が余計に増えますし、免疫は落ちてしまいます。しかし、
つ乳酸菌生成エキスは活用できるのではないのでしょうか。また、最近
バイオジェニックスの入った餌を使用すると、免疫力も向上することが
は動物でもアトピー性皮膚炎が非常に多い。ある程度軽減することは可
わかってきました。また、人の分野では 8 年ほど前から代替医療として、
能ですが、飼い主の方が満足いくような効果のある療法がないというの
多岐にわたって乳酸菌生成エキスが使われています。使用している先生
が現状です。人医の分野ではすでにバイオジェニックスを活用し IgE を抑
方に『何に効くのですか』と聞いてみると、アレルギーにもいい、癌に
えることが可能で、アトピーの患者さんに有効であるというデータもあ
もいいと様々なお答をいただきます。試験データも様々なものが出てお
りますので、それを今度は動物に用いて検査データを取り、そして使用
ります。たとえば、免疫調整機能については新潟大学の安保徹教授が海
図 1:乳酸菌生成エキスの機能・働き
外の専門誌に発表されていますし(表 2)、腎臓病、アレルギー、癌、肝
臓病などの治験データも数多くあります。
――獣医医療現場での、バイオジェニックスの活用の可能性はいかがで
しょうか?
小方 バイオジェニックス製剤である「乳酸菌生成エキス」は 16 種類の
乳酸菌(ラクトバチルス)を培養し熟成後、乳酸菌の発酵産物を抽出し
たものですが、その主成分は「菌の分泌物」と「菌体物質」であり、大
きく二つの機能・働きがあります(図 1)。1 つは善玉菌の増殖を促し、
悪玉菌を絶滅ではなくて抑制する。やはり悪玉菌もある程度は必要だと
小方 宗次 先生
福井 正信 先生
田向 健一 先生
佐草 一優 先生
麻布大学附属動物病院副院長
麻布大学獣医学部准教授
現在ヤマザキ学園大学准教授
長年小動物の医療現場の最前
線で活躍。
株式会社エクセル 代表取締役
NPO法人レックス ・ ラボ乳
酸菌生成エキス研究会 応用
研究部 顧問
コスモスラクトシリーズの製
造も手掛けている。
田園調布動物病院院長
エキゾチックアニマルの治療
を多く手掛けており、ウサギ
から爬虫類、両生類までを対
象としている。専門誌などで
も執筆を行っている。
のづた動物病院院長
日本畜犬遺伝性疾患協会 理事
年間 3 万件を超す一般診療を
行いながら、メディアなどで
も活躍中。
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