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10代の母親への妊娠期からの子育て縦断調査と 自立支援システムの開発

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10代の母親への妊娠期からの子育て縦断調査と 自立支援システムの開発
東洋大学人間科学総合研究所 2012 年度活動報告
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■研究プロジェクト②
10代の母親への妊娠期からの子育て縦断調査と
自立支援システムの開発
研究所プロジェクトの研究課題名
10代の母親への妊娠期からの子育て縦断調査と自立支援システムの開発
研究期間
2011年4月~2014年3月(予定)
予算額
1,035,000円
研究代表者およびチームリーダー
森田 明美(社会学部社会福祉学科・教授)
研究分担者名
研究員
中原 美恵(ライフデザイン学部生活支援学科・教授)
杉田 記代子(ライフデザイン学部生活支援学科・教授)
客員研究員
上田 美香、唐田 順子
院生研究員
小川 晶
研究計画の概要
(1)10 代で出産した母親の子ども調査(オフ会)
:オンラインおよびオフラインで交流を深めて
いる 10 代親グループに対して本研究の協力を依頼し、2か月に1度の日曜日、2 か月~5 歳の子ども
を連れて集まってくるメンバーに人間科学総合研究所のフロアをオフ会の会場として提供、おもちゃ
や昼食を用意し、子育ての状況のインタビューや親子の観察、支援の試行および意見交換を行った
(2012 年 4 月から 2013 年 3 月までに7回実施)
。
(2)埼玉県飯能市の協力を得て、10 代親たちの居場所づくり事業を作り上げるための準備をした。
方法としては、市内の地域子育て支援センターの協力を得て、10 代で出産した母の個別相談を保育士
が実施するのを専門的にサポートしながら、その場を利用する 10 代親のグループ活動やグループと個
人との関係性の変容等の観察を行った。
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東洋大学人間科学総合研究所 2012 年度活動報告
(3)東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町からの避難した人たちが多数暮らす登米市に開設
されたとめ女性支援センターと中高生自習室 SUKOYAKA の開設に協力し、
被災地で急増している 10
代の出産を予防するための設備の整備や、スタッフの研修、設備の配置、運営の方法などの相談に乗
り、これまで蓄積してきた青年たちや、10 代で出産した母や子どもへの関わり方などについて助言を
した。
<倫理的配慮>
学内の倫理委員会の審査を受け承認を得ている。
当該年度の研究活動
(1)24 年度に実施した7回のオフ会を含めた平成 22 年 3 月から 21 回行った継続的なグループ
活動とその調査からは、次のようなことが明らかになった。①継続的な支援を行いながら実施する調
査によって、妊娠・出産・子育ての時期に女性が遭遇する課題である自己実現と妻・母・嫁役割、子
どもの成長発達、双方の実家からの独立、就職や転職、保育園入所や子どもを預けること、夫や親族
との関係調整、第 2 子の妊娠や子育てなど、日常的な状況の変化がどのように関連して発生している
のかということについて、10 代の母親の固有性として把握することができた。②当初、研究者側から
近況を尋ねる形で行ってきたインタビューが、10 代の母親からの報告や相談という形に変化しており、
先行研究が少なく、構造化しにくい対象者である集団について、生活支援をすすめるための生活理解
の機会に変化させることができるようになった。③新しいメンバーが加わりながら集団としても安定
し、親子が育ち合う場所、支え合う場所になっていくという、当事者グループの展開過程として不安
定な集団を支える方法の開発を確認することできた。④10 代の母親たちが相談して活動の内容や流れ
を決めたり、市民団体との交流活動に参加したりすることにより、調査への協力という形から主体的
な活動へと変化の兆しがみられる。⑤行政支援、地域の子育て支援の利用状況や感想をグループの中
で議論することで、自分たちの抱える固有な条件に気付き、子育て支援の新たな課題について考え、
語る力を得ている。⑥調査方法や項目に当事者側としての意見を述べるなど、当初はまったく興味を
示さなかった地域支援や研究開発について興味を示すようになった。
このように調査への協力という形で、研究者と協同で 10 代の母親グループのオフ会が開催される
ことにより、調査から得られる内容や結果の変化と共に、10 代母親の女性としての生きる力を支える、
10 代親の中の子ども性を理解して大人になることを支えるという視点を持つなど、研究者側の変容と、
10 代の母親自身が力を得て成長していく様子が見られた。市民的な発言力を持ち得ない社会福祉課題
をもつ対象者に対して、当事者たちの生活の相談に乗り、グループ活動をも支えるという「支援型調
査」をさらに一段進めた「当事者参加型調査」-当事者が参加して新しい支援を開発する調査の方法
という、当事者参加型調査の可能性を見出すことが出来た。これまでの子育て支援に参加してこなか
った 10 代親について、研究者が 10 代親に徹底的に寄り添い、当事者たちが参加して一緒に子育て支
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援のモデル開発実践に展開し始めている。
(2)また、飯能市においては、月に 1 回程度のグループ活動や個別相談をサポートしながら、10
代親のグループ活動やグループと個人との関係性の変容等の観察し、人間科学総合研究所で実施して
いるオフ会での継続調査で得られている 10 代親の固有性を確認することができた。飯能市子育て支
援システム再編成および保育所と総合子育て支援センターの機能を持つ総合保育施設が 2013 年 4 月
に開設することになったことにより、子育て支援センター職員などの参加を求め、事業を自治体で実
施できるように 10 代親支援等を含む事例を用いながら飯能市の保育士の専門性の向上のために、研
修プログラムを開発し、土曜日の午後 4 時間を使い、2 回全職員を対象に実施することができた。
(3)登米市では、本格的に事業実施される 2013 年度に向けて、若者たちの性の問題を取り上げる講
座、DV 防止との組み合わせや、10 代を含む若年親子のランチの集いなどを開催しながら、10 代で
の出産への支援と予防的な支援ができるように検討をすることができた。
今後の研究における課題または問題点
10 代で出産した親たちは、当事者同士のグループを組むことすらできなかったが、多くの社会福祉
の援助を必要としていることがわかってきた。これまでの研究によって、それぞれの問題を解決する
ための有効な支援の方法を、システムとしてまとめて整理する事ができる段階に到達したものが出て
きており、非常に難しいがそれを先行研究や実践などをもとに検証して仮設を作り出せるようにした
い。そのことが、社会的に求められている。
研究発表
(1)学会および口頭発表
①唐田順子、上田美香、中原美惠、森田明美「地域で暮らす 10 代母親の社会的背景」第 31 回日本
思春期学会総会・学術集会 2012.9
②唐田順子、上田美香、中原美惠、森田明美「地域で暮らす 10 代母親の妊娠期の特徴」第 31 回日
本思春期学会総会・学術集会 2012.9
③森田明美・唐田順子・上田美香「10 代子育て家庭への妊娠期からの福祉的支援に関する研究(3)
」
-当事者参加型調査の可能性と課題-」日本社会福祉学会第 60 回秋季大会 2012.10
④中原美惠『ケーススタディ:被災地から転校した10代女性の支援について』日本学校教育相談
学会岩手支部研究会 2012.11
⑤小川晶 「子育てにかかわる価値観の変容を促す保育士による母親支援ーZ 保育所の保育士と子育
て課題を持つ母親へのインタビュー調査からー」日本社会福祉学会第 60 回秋季大会 2012.10
⑥小川晶「子育て課題を持つ母親の役割をめぐる保育士支援」 日本社会福祉学会関東地域部会
2012 年度研究大会 2013.3
⑦小川晶「見え方の操作と保育―感情・表情・化粧―」 (共同) 日本発達心理学会第 24 回大会
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東洋大学人間科学総合研究所 2012 年度活動報告
ラウンドテーブル(指定討論者)2013.3
(2)論文等著作物
①森田明美「子どもの権利条約の理念を踏まえた保育実践」全国社会福祉協議会 2012.6
②「10 代母親の現状と支援の課題ー共感的支援を地域につくりだす」全国社会福祉協議会 2012.11
③乳幼児期の子どもの居場所と子育て支援『子どもの権利研究第 22 号』
(査読有)日本評論社
2013.2
④中原美惠 「文部科学書委託復興教育支援事業 『教育相談コーディネーター育成』
」 一般社団
法人学校心理士認定機構 2013.3
⑤小川晶 「保育士の母親支援における母親の肯定感と養育態度の改善との関係」
(査読あり) 植
草学園大学研究紀要第 5 巻
2013 年 3 月 植草学園大学 印刷中
⑥木戸彩恵・戸田有一・小川晶・小川房子・奈良修三・諏訪きぬ 「見え方の操作と保育-表情・感
情・化粧をどう考えるのか-」
(共著)
(査読あり) エデュケア第 33 号
2013 年 3 月大阪教育大学
幼児教育学研究室 印刷中
(3)その他
・2012 連合三多摩ブロック地域協議会政策・制度検討会の第 2 分科会において、
「子ども・若者支
援にどう取り組むか?~10 代親/被災地の子ども・若者たちを手がかりに考える~」をテーマに、上
田美香が「10 代親の妊娠・出産・子育て」の事例報告を行い、森田明美が課題提起者として討論会を
行った(2012 年 10 月 11 日)
。
・埼玉県飯能市子育て支援システム再編成の庁内作業部会におけるアドバイザー(2013 年 6 月・7
月)および・飯能市の保育士の専門性の向上のため、研修プログラムの開発および実施(2012 年 7 月
21 日・2013 年 2 月 23 日)
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